説明

抗酸化材及びこれを含有した食品

【課題】天然食品成分を有効成分として含有する新規な抗酸化材及びこれを含有した食品を提供する。
【解決手段】天然食品成分からなる乳酸発酵卵白を有効成分として含有する、抗酸化材及びこれを配合した食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、天然食品成分を有効成分として含有する新規な抗酸化材及びこれを含有した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、食品が保存中に酸化される結果、風味の変化が生じたり、退色等の性状の変化が生じることがある。従来、酸化を防止する方法として、例えば卵白加水分解物(特許文献1)や、エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム塩(以下、EDTA)等の化学物質からなる食品添加物(非特許文献1、2)等の抗酸化材を添加することが知られている。
【0003】
しかしながら、卵白加水分解物は、卵白加水分解物特有の風味が食品本来の風味を損ねる場合があるため用途や使用量が限定される。また、EDTA等の化学物質からなる食品添加物は、一般に作用が強力であるため、生体内においても有用ミネラル類(カルシウム、マグネシウム等)との間で結合状態を維持し、有用ミネラル類がキレート化され、栄養成分として生体内に吸収、利用されるのを阻害する。このため、近年では、生体内に及ぼす影響を考慮して、合成キレート材のような化学物質の使用をできる限り避けることが求められている。このように、上記物質は消費者の要望を十分に満足するものではないことより、食品本来の風味を損ねない天然食品成分を用いた新たな抗酸化材が要望されている。
【特許文献1】特開2006−187277号公報
【非特許文献1】シャーロット ヤコブセン他,「魚油を豊富に含むマヨネーズにおける脂質の酸化:エチレンジアミンテトラ酢酸・カルシウム・2ナトリウム塩は酸化的分解を強く阻害するが、没食子酸は酸化的分解を強く阻害しない」,ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー,米国化学会,2001年,第49巻,p.1009−1019(Charlotte Jacobsen et al, “Lipid Oxidation in Fish Oil EnrichedMayonnaise: Calcium Disodium Ethylenediaminetetraacetate, but Not Gallic Acid,Strongly Inhibited Oxidative Deterioration”, Journal of Agricultural and FoodChemistry, American Chemical Society, 49, 1009-1019, 2001)
【非特許文献2】シャーロット ヤコブセン他,「牛乳及びマヨネーズにおける脂質の酸化に及ぼす金属キレート材の影響」,第95回米国油化学会年会及び展示会予稿集,p.83−84,米国油化学会,2004年(CharlotteJacobsen et al, “The Effect of Metal Chelators on Lipid Oxidation in Milk andMayonnaise”, 95th AOCS Annual Meeting & Expo, American Oil Chemists’Society, 83-84, 2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、天然食品成分を有効成分として含有する新規な抗酸化材及びこれを含有した食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、天然食品成分からなる乳酸発酵卵白を有効成分として含有することにより酸化の進行を抑制できることを見出し、この知見に基づいて本願発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本願発明は、
(1)乳酸発酵卵白を有効成分として含有する抗酸化材、(2)(1)記載の抗酸化材を含有する食品、(3)製品に対し抗酸化材を乳酸発酵卵白固形分換算で0.05〜5%含有する(2)記載の食品、(4)食品が酸性食品である(2)又は(3)記載の食品、である。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、風味の変化及び退色等の性状の変化等、酸化の進行を抑制することができることより、食品市場における抗酸化材の更なる利用拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本願発明について詳細に説明する。なお、本願発明において「%」は、特に規定しない限り「質量%」を意味する。
【0009】
本願発明の抗酸化材は、乳酸発酵卵白を有効成分として含み、EDTAに匹敵する高い抗酸化作用を有することにより、これを配合した食品に高い抗酸化作用を付与することができる。
【0010】
本願発明の有効成分である乳酸発酵卵白は、鉄イオン等の金属イオンとキレートを形成していると考えられる。すなわち、乳酸発酵卵白によって金属イオンが捕捉されるため、金属イオンによる触媒作用が制限される。これにより、後述の酸化メカニズムにおいて2次酸化生成物の産生が中断され、3次酸化生成物(アミノカルボニル反応生成物)の産生を抑制し、風味の変化及び退色等の性状の変化等、酸化の進行を抑えることができる。
【0011】
ここで、乳酸発酵卵白とは、液状の卵白に乳酸菌を添加して発酵させることにより得られるものである。このような乳酸発酵は一般的に栄養源として乳酸菌資化性糖類を用いて必要に応じ酵母エキス等の発酵促進物質を添加し、乳酸菌を1mLあたり好ましくは10〜10、さらに好ましくは10〜10供し発酵されており、本願発明も同様な方法で得られたものを用いるとよい。
【0012】
上記乳酸発酵卵白に用いる卵白としては、例えば、鶏等の鳥類の卵を割卵し卵黄を分離したものであり工業的に得られるもの、またこれを殺菌、凍結したもの、濃縮または希釈したもの、特定の成分(リゾチームやアビジン等)を除去したもの、乾燥させたものを水戻ししたもの等が挙げられる。また効果に影響を及ぼさない程度に卵黄やその他の卵由来の成分を含んでいても差し支えない。
【0013】
上記乳酸発酵卵白に用いる乳酸菌としては、一般的にヨーグルトやチーズの製造に利用される、例えば、ラクトバチルス属(Lactobacillus bulgaricus等)、ストレプトコッカス属(Streptococcus thermophilus、Streptococcus diacetylactis等)、ラクトコッカス属(Lactococcus lactis等)、ロイコノストック属(Leuconostoc cremoris等)、エンテロコッカス属(Enterococcus faecalis)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium Bbifidum等)等が挙げられる。
【0014】
上記乳酸発酵卵白に用いる乳酸菌資化性糖類としては、例えば、単糖類(グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、N−アセチルグルコサミン等)、二糖類(ラクトース、マルトース、スクロース、セルビオース、トレハロース等)、オリゴ糖類(特に3〜5個の単糖類が結合しているもの)、ブドウ糖果糖液糖等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて液状の卵白に添加することができる。
【0015】
上記乳酸発酵卵白に用いる発酵促進物質としては、本発明の効果を損なわない範囲で発酵を促進するものであれば、特に限定するものではない。例えば、アミノ酸やペプチド等の蛋白質分解物、酵母エキス、ビタミン類、ミネラル類等が挙げられる。
【0016】
上記乳酸発酵卵白の代表的な製造方法を以下に示す。卵白たんぱく質2〜8%、乳酸菌資化性糖類1〜15%、及び発酵促進物質0.5〜10%を水に加え、乳酸、塩酸等の酸剤を用いてpH5〜7.5にpH調整する。なお、風味の面から乳酸を用いるのが好ましい。得られた仕込み液を60〜110℃で5〜120分間加熱した後、乳酸菌スターターを1mLあたり10〜10になるように添加し、25〜50℃で8〜48時間発酵し乳酸発酵卵白が得られる。また、必要に応じて上記乳酸発酵卵白を加熱殺菌し、高圧下で均質化処理を施してもよい。
【0017】
本願発明の抗酸化材に含まれる乳酸発酵卵白の含有量は、抗酸化作用が発現される程度であれば特に限定されず適宜設定することができるが、乳酸発酵卵白を固形分換算で0.5%以上、好ましくは1%以上含有することが好ましく、乳酸発酵卵白をそのまま用いても良い。乳酸発酵卵白の含有量が5%未満では、満足な抗酸化作用が得られない恐れがある。
【0018】
本願発明の抗酸化材の形態は、種々の形態(例えば、液状、粉末状、マイクロコロイド状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状)を有することができる。すなわち、配合する食品の性状に応じて、適切な形態に加工し使用することができる。
【0019】
本願発明の抗酸化材は、公知の抗酸化材を含有することができ、使用量も特に限定されない。公知の抗酸化材として、例えば、ローズマリー抽出物、ポリフェノール、フラボノイド、カテキン、プロアントシアニジン、フィチン酸、トコフェロール、セサモール、γ−オリザノール、アスコルビン酸、クエン酸、ヤマモモ抽出物、羅布麻抽出物等を挙げることができる。
【0020】
本願発明の抗酸化材を含有する食品は、特に限定するものではない。含有量は、使用する食品等に応じて適宜調製できるが、本願発明の抗酸化材を乳酸発酵卵白固形分換算で0.05〜5%含有することが好ましく、0.1〜3%であるのがより好ましく、0.3〜3%であるのがさらに好ましい。本願発明の抗酸化材が乳酸発酵卵白固形分換算で0.05%未満であると、酸化抑制効果が認めらない場合がある。一方、本願発明の抗酸化材が乳酸発酵卵白固形分換算で5%を超えると、それ以上の効果が得られず経済的でない場合がある。本願発明の乳酸発酵卵白固形分換算とは、乳酸発酵卵白に含まれる固形分質量を指す。
【0021】
本願発明の酸性食品とは、pHを3〜4.6に調整することにより、微生物の増殖を抑制し保存性を高めた食品をいう。酸性食品は、遊離の金属イオンが発生しやすい場合があり、抗酸化作用を発揮するのに好適である。酸性食品にすることによりレトルト処理等の高温高圧加熱処理を施さなくとも常温での流通、保存が可能となり、食品の風味、食感の変化を最小限に留めることができる。例として、マヨネーズやドレッシング等の調味料類、ジャム、フルーツ等のゼリー類、デザート類、清涼飲料等の飲料、もしくは酢やトマトソースを用いた調理食品等が挙げられる。特に、マヨネーズ等の卵黄を含む酸性食品で高い抗酸化作用を有し好適である。
【実施例】
【0022】
以下に本願発明の抗酸化材及びこれを含有した食品を実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本願発明の抗酸化材及びこれを含有した食品は、これに限定するものではない。
【0023】
〔実施例1〕液卵白34%(卵白固形分換算4%)、ぶどう糖果糖液糖4%、酵母エキス0.05%、50%乳酸0.15%及び清水61.8%からなる卵白水溶液を攪拌、調製した。得られた卵白水溶液を90℃で10分間加熱した後、乳酸菌スターター0.02%(Lactococcus lactis subsp. lactis、Leuconostoc mesenteroides subsp.cremoris、Streptococcus diacetylactis、Lactococcus lactis subsp.cremoris)を添加し、30℃で24時間発酵を行った後、70〜90℃で加熱殺菌し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて10MPaの圧力で処理し、本願発明の乳酸発酵卵白を製し、そのまま抗酸化材として用いた。次いで、本願発明の抗酸化材5%(乳酸発酵卵白固形分換算で0.4%)、卵黄固形分1% 、pH4.0(酢酸で調整)の試験液を調製し、10ml容のネジ口試験管に10mlずつ充填した。振とう撹拌後、ネジ口をわずかに開けた状態(大気の供給有り)で、液温55℃の遮光下で5日間保存し、経時的な酸化進行の程度を調べた。その結果、ほとんど酸化劣化臭がなく、高い抗酸化作用を示した。
【0024】
〔実施例2〕液卵白50%(卵白固形分換算6%)、スクロース6%、卵黄0.5%、酵母エキス0.05%、50%乳酸0.15%及び清水43.3%からなる卵白水溶液を攪拌、調製した。得られた卵白水溶液を75℃で10分間加熱した後、乳酸菌スターター0.01%(Lactobacillus bulgaricus、Streptococcus thermophilus)を添加し、42℃で24時間発酵を行った後、70〜90℃で加熱殺菌し、次いで高圧ホモゲナイザーを用いて30MPaの圧力で処理し、本願発明の乳酸発酵卵白を製し、そのまま抗酸化材として用いた。次いで、本願発明の抗酸化材2%(乳酸発酵卵白固形分換算で0.2%)、卵黄固形分1%、pH4.0(酢酸で調整)の試験液を調製し、10ml容のネジ口試験管に10mlずつ充填した。振とう撹拌後、ネジ口をわずかに開けた状態(大気の供給有り)で、液温55℃の遮光下で5日間保存し、経時的な酸化進行の程度を調べた。その結果、ほとんど酸化劣化臭がなく、高い抗酸化作用を示した。
【0025】
〔試験例1〕pHが3〜5の酸性条件下で卵黄から鉄イオンが遊離し、酸化反応が進行することを利用して、官能試験結果及び相対蛍光強度による3次酸化生成物(アミノカルボニル反応生成物)の測定結果を評価項目にして調べた。以下に、酸化メカニズムと評価項目について説明する。
【0026】
酸化反応により生じる過酸化物と、銅、鉄、マンガン、クロム、ニッケル等の金属のイオンとが共存すると、(i)過酸化物がレドックス分解することによりラジカルを生じ、(ii)このラジカルが不飽和結合を攻撃することで、(iii)さらに過酸化物が生成する、という(i)〜(iii)の反応の連鎖が生じる。この場合、過酸化物が重合したり、反応部位において炭素鎖が切れてカルボニル化合物等の2次酸化生成物を生じる。
【0027】
さらに、2次酸化生成物であるカルボニル化合物のうち、アルデヒド類が周囲のタンパク質等のアミノ基と反応することにより(アミノカルボニル反応)、3次酸化生成物(アミノカルボニル反応生成物)が生じる。この3次酸化生成物は、風味の劣化及び退色等の性状の変化の原因物質の一つである。一般に、過酸化物自体は特徴ある風味や臭気は有さないため、官能試験の評価結果から、抗酸化作用の程度を推定することができる。
【0028】
卵黄は、通常約60ppmの高濃度の鉄イオンを含有している。卵黄のpHは、通常pH6〜7であり、このpH範囲においては、卵黄中に含まれるリンタンパク質(ホスビチン)が鉄イオンと強力にキレートを形成しているため、鉄イオンによる酸化反応が進行しにくい。
【0029】
一方、pH3〜5の酸性条件下では卵黄ホスビチンの3次構造が変化する結果、卵黄ホスビチンにキレートされている鉄イオンの一部が遊離し、この遊離の鉄イオンにより酸化が促進し、さらに風味の変化及び退色等の性状の変化等、酸化の進行が生じる。本願発明の抗酸化材が卵黄から遊離した鉄イオンを捕捉すれば、上記3次酸化生成物(アミノカルボニル反応生成物)の産生が抑制され、風味の変化及び退色等の性状の変化等、酸化の進行を抑制できる。この3次酸化生成物の測定結果と官能試験結果は、ほぼ相関関係を有するので、官能試験の評価結果からも抗酸化作用の程度を推定することができる。
【0030】
本願発明の抗酸化材(実施例1)とEDTAの抗酸化作用を比較した。抗酸化作用の程度は、官能評価と3次酸化生成物(アミノカルボニル反応生成物)の含量を示す相対蛍光強度の値を指標に調べた。
【0031】
表1の配合表にしたがって各試験液を調製し、10ml容のネジ口試験管に10gずつ充填した。振とう撹拌後、ネジ口をわずかに開けた状態(大気の供給有り)で、液温55℃の遮光下で5日間保存し、経時的な酸化進行の程度を調べた。
【0032】
卵黄は、殻付き鶏卵から卵白及び卵殻を分離して得られたものを使用した。卵黄をイオン交換水に希釈し、液温60℃に達するまで加熱殺菌した後、10℃以下に冷却することにより、pH6.9の卵黄希釈液を調製した。さらに、この卵黄希釈液の一部を分取し、氷酢酸(食品添加物)を用いてpH4.0、卵黄固形分10%の卵黄希釈液を調製した。本願発明の卵黄固形分とは、卵黄に含まれる固形分の質量を指す。卵黄の固形分は通常、約50%であることから、本願発明の卵黄固形分とは、卵黄において固形分の割合が50%であるとして換算されたをいうものとする。
【0033】
EDTAは、市販の食品添加物(抗酸化材;商品名「キレストF−CA」、キレスト(株)製、分子量410)を用い、2.5mMになるようにイオン交換水にて希釈し調製した。
【0034】
各試験液は、卵黄が同濃度になるように調製した(固形分1%、鉄イオン25μM)。比較例1において、EDTAは、理論上等モル数の鉄イオンをキレートするので25μM配合した。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例1及び比較例1〜2で調製された液温55℃の遮光下で5日間保存後の試験液について、10名の成人男女によって、ブラインドで評価を行なった。点数の付け方は、表2に従い、対照として液温5℃の遮光下で5日間保存したものの風味を3点として、酸化劣化による風味の変化を指標に点数を付けた。すなわち、本官能評価においては、点数が高いほど、風味劣化の度合いが少ないといえる。
【表2】

【0037】
次いで、液温55℃の遮光下で5日間保存した各試験液を200μlずつ採取し、ジエチルエーテル:エタノール(1:3)の混合液を加えて振とう抽出した。3,000rpmで5分間遠心分離した後、その上清を試料溶液とした。
【0038】
蛍光強度は、石英セルにいれ、蛍光分光光度計(型名「U−3210」、(株)日立製作所製)にてEx360nm,Em440nmを測定した。相対蛍光強度は、標準溶液(標準溶液は、1μgの硫酸キニーネを0.05M硫酸水溶液1mlに溶解させて得られた)の同条件での蛍光強度を1,000とした場合の相対値で示した。
【0039】
【表3】

※パネラー n=10名
【0040】
官能評価による抗酸化作用の評価結果を表3に、相対蛍光強度測定による評価結果を図1に示す。表3及び図1によれば、本願発明の抗酸化材及びEDTA(比較例1)は、pH4の卵黄希釈液(固形分1%、鉄イオン25μM)の酸化を抑制していた。さらに、本願発明の抗酸化材はEDTAに匹敵する高い抗酸化作用を有してした。
【0041】
〔試験例2〕本願発明の抗酸化材の含有量による抗酸化作用の程度を調べるため、本願発明の抗酸化材を乳酸発酵卵白固形分換算で0.08%、0.16%及び2.4%含有する試験液を調製し抗酸化作用を調べた。
【0042】
表4の配合表にしたがって、卵黄希釈液(固形分1%、鉄イオン25μM)に対し、実施例1で用いた本願発明の抗酸化材を0.08%、0.16%及び2.4%配合し、試験例1と同様に保存サンプルの調製を行った。
【0043】
【表4】

【0044】
官能評価及び相対蛍光強度は、試験例1と同様に調べた。
【0045】
【表5】

※パネラー n=10名
【0046】
官能評価による抗酸化作用の評価結果を表5に、相対蛍光強度測定による評価結果を図2に示す。表5及び図2によれば、本願発明の抗酸化材を乳酸発酵卵白固形分換算で0.08〜2.4%含有する場合、含有量の増加と共に抗酸化作用が高くなる傾向を示した。特に、本願発明の抗酸化材を乳酸発酵卵白固形分換算で0.16〜2.4%含有する場合、半数以上の評価者がほとんど酸化劣化臭がしないと高い評価を示した(実施例4、5)。本願発明の抗酸化材が乳酸発酵卵白固形分換算で2.4%を超えると、それ以上の効果が得られず経済的でない場合があると考えられた。
【0047】
〔試験例3〕本願発明の抗酸化材を含有した食品において、本願発明の抗酸化材の抗酸化作用を調べた。
【0048】
下記配合のタルタルソースを調製した。つまり、攪拌機(ヤマギワ社製、ホバートミキサー)に、乳酸発酵卵白、清水、醸造酢(酸度4.2%)、ぶどう糖果糖液糖、卵黄、みじん切り茹で卵、みじん切り玉ねぎ、みじん切りパセリ、辛子粉及び食塩を5分間混合撹拌してスラリーとし、このスラリーを撹拌しながらサラダ油440gを除々に注加して粗乳化した。次いでコロイドミルに移して仕上げ乳化後、品温が70℃になるまで加熱して殺菌を行った後冷却しタルタルソースを得た。得られたタルタルソースを150g容のポリエチレン袋に150g充填後、液温35℃の遮光下で8週間保存した。保存後のタルタルソースは、乳酸発酵卵白(実施例2)を用いなかったものに比べ、抗酸化作用が高く、油脂や卵黄由来と思われる酸化劣化臭を感じず、大変好ましかった。また、風味についてもタルタルソース本来の風味を損なうことなく、大変好ましいものであった。
【0049】
〈タルタルソースの配合〉
本願抗酸化材(実施例1) 150g
清水 54g
醸造酢(酸度4.2%) 30g
ぶどう糖果糖液糖 70g
卵黄 50g
みじん切り茹で卵 45g
みじん切り玉ねぎ 175g
みじん切りパセリ 5g
辛子粉 1g
食塩 20g
サラダ油 400g
――――――――――――――――――――――――――――――
合計 1000g
【0050】
下記配合の乳化液状ドレッシングを調製した。つまり、均質機(プライミクス社製、TKホモミクサー)に、乳酸発酵卵白、菜種油、醸造酢(酸度4.2%)、ぶどう糖果糖液糖、卵黄、食塩、香辛料、キサンタンガム及び清水を投入し3000rpmで5分間混合撹拌してスラリーとし、このスラリーを撹拌しながらサラダ油を除々に注加し、3000rpmで3分間攪拌し乳化させた。次いで、品温が75℃になるまで加熱して殺菌を行った後冷却し乳化液状ドレッシングを得た。得られた乳化液状ドレッシングを200g容の光透過性のある透明なPET容器に200g充填後、液温25℃の蛍光灯照射(700ルクス)下で2週間保存した。保存後の乳化液状ドレッシングは、本願抗酸化材(実施例1)を用いなかったものに比べ、食酢の酸味が作りたて同様にマイルドで、酸化劣化臭を感じず、大変好ましかった。また、風味についても乳化液状ドレッシング本来の風味を損なうことなく、大変好ましいものであった。
【0051】
〈乳化液状ドレッシングの配合〉
本願抗酸化材(実施例2) 20g
菜種油 220g
醸造酢(酸度4.2%) 170g
ぶどう糖果糖液糖 30g
卵黄 10g
食塩 30g
香辛料 2g
キサンタンガム 2g
清水 516g
―――――――――――――――――――――――――――
合計 1000g
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本願発明の抗酸化材の抗酸化作用について、試験例1で行ったEDTAと比較した相対蛍光強度Sの測定結果を示す。
【図2】本願発明の抗酸化材の抗酸化作用について、試験例2で行った本願発明の抗酸化材の含有量を変えた時の相対蛍光強度の測定結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸発酵卵白を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化材。
【請求項2】
請求項1記載の抗酸化材を含有することを特徴とする食品。
【請求項3】
製品に対し抗酸化材を乳酸発酵卵白固形分換算で0.05〜5%含有する請求項2記載の食品。
【請求項4】
食品が酸性食品である請求項2又は3記載の食品。






















【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−263398(P2009−263398A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97757(P2008−97757)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】