抗CD40抗体の使用
FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であるヒト患者を、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法を提供する。FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であるヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害する方法も提供する。これらの方法は、治療または予防有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗CD40抗体の新規使用、特に、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療における抗CD40抗体の新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リガンドの腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーの多数のメンバーおよびそれらの対応する受容体は、アポトーシスの誘導または細胞生存および増殖の増進により、正常な細胞の成長を調節する。アポトーシスシグナルと生存および増殖シグナルとのこのバランスが、正常な細胞の恒常性を維持する。少なくとも26のTNFファミリー受容体および18のTNFファミリーリガンドが、今日までに同定されている。前記受容体と前記リガンドの両方の生物活性形は、自己組織化タンパク質三量体である。前記受容体と前記リガンドの両方の膜貫通および可溶性型が同定されている。前記受容体の細胞内ドメインは、配列相同性を共有しないが、それらの細胞外ドメインは、40のアミノ酸、システインリッチリピートを含む。それらの細胞質テールは、細胞内タンパク質の2つの主要グループ[TNF受容体関連因子(TRAF)およびデスドメイン(DD)含有タンパク質]との相互作用によりシグナル伝達する。少なくとも6つのヒトTRAFとこれらの受容体の一部の細胞質テール上のTRAF結合部位との相互作用が、AKT(プロテインキナーゼBまたはPKBと呼ばれるセリン/トレオニンキナーゼ)、核因子−κB(NF−κB)およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)をはじめとする幾つかのシグナル経路を開始させる。例えば、Younes and Kadin(2003)J.Clin.Oncol.18:3526−3534による論評を参照のこと。
【0003】
TNFファミリー受容体メンバーCD40は、正常および新生物性両方のヒトB細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、CD8+T細胞、内皮細胞ならびに単球性および上皮性細胞の表面に存在する、50−55kDa細胞表面抗原である。CD40抗原は、活性化T細胞、活性化血小板、炎症化した血管平滑筋細胞、好酸球、関節リウマチの際の滑膜、皮膚線維芽細胞、および他の非リンパ球系細胞型上でも発現される。CD40を発現する細胞型に依存して、ライゲーションが細胞間接着、分化、活性化および増殖を誘導し得る。例えば、CD40のその同族リガンド、CD40L(CD154とも呼ばれる)、への結合は、B細胞増殖および形質細胞への分化、抗体生産、アイソタイプスイッチング、ならびにB細胞記憶生成を刺激する。B細胞分化中、CD40は、プレB細胞上で発現されるが、形質細胞に分化されると失われる。
【0004】
CD154としても公知のCD40リガンド(CL40L)は、32−33kDa膜貫通タンパク質であり、これは、より小さな2つの生物活性可溶性型であって、それぞれ18kDaおよび31kDaででも存在する(Grafら(1995)Eur.J.Immunol.25:1749−1754;Mazzeiら(1995)J.Biol.Chem.270:7025−7028;Pietravalleら(1996)J.Biol.Chem.271:5965−5967)。CD40Lは、活性化CD4+Tヘルパー細胞上では発現されるが、休止CD4+Tヘルパー細胞上では発現されない(Laneら(1992)Eur.J.Immunol.22:2573−2578;Spriggsら(1992)J.Exp.Med.176:1543−1550;およびRoyら(1993)J.Immunol.151:1−14)。CD40およびCD40Lの両方は、クローニングされ、特性付けされている(Stamenkoviら(1989)EMBO J.8:1403−1410;Armitageら(1992)Nature 357:80−82;Ledermanら(1992)J.Exp.Med.175:1091−1101;およびHollenbaughら(1992)EMBO J.11:4313−4321)。ヒトCD40Lを記載している特許文献1も参照のこと。CD40L遺伝子でトランスフェクトされ、表面でCD40Lタンパク質を発現する細胞は、B細胞増殖を誘発することができ、ならびに他の刺激シグナルと一緒に、抗体生産を誘導することができる(Armitageら(1992)上記を参照のこと;および特許文献1)。自己免疫疾患を有する患者は、健常な被検者では見られない、可溶性CD40L(sCD40L)の高い血清中レベルを有する。CD40Lの過発現は、齧歯動物モデルにおいて、全身性エリテマトーデスに類似した自己免疫疾患を引き起こす(Higuchiら(2002)J.Immunol.168:9−12)。対照的に、活性化T細胞上の機能的CD40Lの不在は、X連鎖高IgM症候群の原因となる(Allenら(1993)Science 259:990;およびKorthauerら(1993)Nature 361:539)。さらに、CD40/CD40L相互作用の遮断によって、非ヒト霊長類モデルにおいて、移植拒絶反応を予防することができる。例えば、Weeら(1992)Transplantation 53:501−7参照。
【0005】
APC上でのCD40発現は、これらの細胞の活性化において重要な補助刺激的役割を果たす。例えば、アゴニスト性抗CD40モノクローナル抗体(mAb)は、B細胞活性化においてTヘルパー細胞の効果を模倣することが証明されている。FcγRIIを発現する付着細胞上に提示されたとき、これらの抗体は、B細胞増殖を誘導する(Banchereauら(1989)Science 251:70)。さらに、IL−4の存在下、IgM、IgGおよびIgEの分泌のために、Tヘルパーシグナルの代わりにアゴニスト性抗CD40 mAbを用いることができる(Gascanら(1991)J.Immunol.147:8)。さらに、アゴニスト性抗CD40 mAbは、リンパ節から単離されたB細胞のプログラム細胞死(アポトーシス)を防止することができる。
【0006】
これらおよび他の観察は、CD40とCD40Lの相互作用が、体液性免疫反応と細胞媒介免疫反応の両方の調節において中心的役割を果たすという現行の理論を支持する。より最近の研究は、多様な生理および病理プロセスにおけるCD40/CD40L相互作用のさらにはるかに広範な役割を明らかにした。
【0007】
CD40シグナル伝達経路は、多くの細胞内因子の協調調節に依存する。TNF受容体ファミリーの他のメンバーと同様に、CD40は、CD40とCD40L(膜結合CD40Lまたは可溶性CD40Lのいずれか)の係合後、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、c−junアミノ末端キナーゼ(JNK)、p38 MAPKおよびNF−κBをはじめとする様々なシグナル経路をアップレギュレートする、TRAF−2、−3、−5および−6をはじめとするTRAFを活性化する(例えば、YounesおよびCarbone(1999)Int.J.Biol.Markers 14:135−143;van KootenおよびBanchereau(2000)J.Leukoc.Biol.67:2−17参照)。
【0008】
CD40経由のシグナル伝達が、アポトーシスからの細胞死を防止することは証明されている(Makusら(2002)J.Immunol.14:973−982)。アポトーシスシグナルは、プログラム細胞死を協調して誘導するために必要である。細胞死シグナルは、小胞体ストレスなどの細胞内からの内因性刺激を含み、またはFasLもしくはTNFαの受容体結合などの外因性刺激を含み得る。このシグナル経路は、複雑であり、Caspase−3およびCaspase−9などのカスパーゼの活性化、ならびにポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性化を含む。このカスケードの間に、抗アポトーシスシグナル伝達タンパク質、例えばmcl−1およびbcl−x、ならびにタンパク質のIAPファミリーのメンバー、例えばX連鎖アポトーシス阻害因子(XIAP)は、ダウンレギュレートされる(Budihardjoら(1999)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.15:269−290)。例えば、樹状細胞において、CD40細胞シグナル伝達は、FasLによって伝達されるアポトーシスシグナルを遮断することができる(Bjorckら(1997)Intl.Immunol.9:365−372)。
【0009】
従って、CD40LによるCD40係合およびその後のCD40シグナル伝達の活性化は、正常な免疫反応に必要な段階であるが、CD40シグナル伝達の調節不良が死をもたらし得る。CD40シグナル経路が、自己免疫疾患に関与することは証明されている(Ichikawaら(2002)J.Immunol.169:2781−2787およびMooreら(2002)J.Autoimmun.19:139−145)。加えて、CD40/CD40L相互作用は、炎症プロセスにおいて重要な役割を果たす。例えば、ヒトおよび実験的アテローム性動脈硬化症病巣では、CD40とCD40Lの両方が過発現される。CD40刺激は、アテローム関連細胞型、例えば内皮細胞、平滑筋細胞およびマクロファージ、において基質分解酵素の発現および組織因子の発現を誘導する。さらにCD40刺激は、炎症性サイトカイン、例えばIL−1、IL−6およびIL−8、ならびに付着分子、例えばICAM−1、E−セレクチンおよびVCAM、の生産を誘導する。CD40/CD49L相互作用の阻害は、動物モデルにおいて、アテローム発生を防止する。移植モデルにおいて、CD40/CD40L相互作用の遮断は、炎症を防止する。CD40/CD40L結合は、アルツハイマーアミロイド−ベータペプチドと相乗的に作用して小グリア細胞の活性化を促進し、従って、神経毒性をもたらす。
【0010】
関節リウマチ(RA)を有する患者の場合、関節軟骨細胞上でのCD40発現が増加され、故に、CD40シグナル伝達は、障害性サイトカインおよびマトリックスメタロプロテアーゼの生産に寄与する可能性が高い。Gotohら(2004)J.Rheumatol.31:1506−1512参照。さらに、RA患者からのCD14+滑膜細胞上でのCD40のライゲーションによるMAPKおよびNF−κBの活性化により、滑膜炎症反応が発生する(Harigaiら(2004)Arthritis.Theum.50.2167−2177)。RAの実験モデルにおいて、抗CD40L抗体治療は、疾病誘導、関節炎症および抗コラーゲン抗体生産を予防した(Durieら(1993)Science 261:1328−1330)。最終的に、臨床試験において、Rituxan(登録商標)(一般に、B細胞リンパ腫に対して適用される)の投与によるRA患者のCD20+陽性細胞の枯渇により症状が改善されることが証明された(Shawら(2003)Ann.Rheum.Dis.62(Suppl.2):ii55−ii59)。
【0011】
T細胞への抗原提示中のCD40/CD40L相互作用の遮断がT細胞耐性を誘導することも証明されている。従って、CD40/CD40L相互作用の遮断は、初期T細胞活性化を防止し、ならびに抗原への再暴露に対する長期的な耐性を誘導する。
【0012】
ヒト抗CD40モノクローナル抗体およびその多数の使用は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、および特許文献8として公開されている共同所有特許出願に開示されている。これらの出願には、ヒトIgG1重鎖遺伝子座およびヒトκ軽鎖遺伝子座を有するトランスジェニックマウス(XenoMouse(登録商標)technology;Abgenix、カリフォルニア州)の免疫処置によって産生されたヒトIgG1抗CD40モノクローナル抗体(本明細書中でCHIR−12.12と呼ばれている)が特に開示されている。
【0013】
FACS分析によって証明されたように、CHIR−12.12は、ヒトCD40に特異的に結合し、CD40−リガンド(CD40L)結合を防止することができる。CHIR−12.12は、細胞表面CD40に予め結合されたCD40Lと競合し、排除することができる。CHIR−12.12モノクローナル抗体は、強力なアンタゴニストであり、正常および悪性B細胞のインビトロCD40L媒介増殖を阻害する。CHIR−12.12モノクローナル抗体は、正常ヒトBリンパ球においてCD40Lによって媒介される生存およびシグナル経路を直接阻害する。インビトロでは、CHIR−12.12は、ADCCによりNHL患者からの原発性癌細胞を死滅させる。異種移植ヒトリンパ腫モデルにおいて、用量依存性抗腫瘍活性が見られた。CHIR−12.12は、現在、B細胞悪性疾患についての第I相試験中である。
【0014】
CD20は、B細胞分化の初期に発現される細胞表面抗原であり、B細胞が成長する間、細胞表面に留まる。CD20は、B細胞活性化に関与し、新生物性B細胞上で非常に高レベルで発現され、ならびに臨床的に認知されている治療ターゲットである(例えば、Hooijbergら(1995)Cancer Research 55:2627参照)。CD20をターゲットにする抗体、例えばリツキシマブ(Rituxan(登録商標))、は、非ホジキンリンパ腫の治療用に米国食品医薬品局に認可されている(例えば、Boyeら(2003)Ann.Oncol.14:520参照)。Rituxanは、軽度、中等度および高度悪性非ホジキンリンパ腫(NHL)に対する有効な治療薬であることが証明された(例えば、Maloneyら(1994)Blood 84:2457−2466)、McLaughlinら(1998)J.Clin.Oncol.16:2825−2833、Maloneyら(1997)Blood 90:2188−2195、Hainsworthら(2000)Blood 95:3052−3056、Colombatら(2001)Blood 97:101−106、Coifferら(1998)Blood 92:1927−1932)、Foranら(2000)J.Clin.Oncol.18:3l7−324、Andersonら(1997)Biochem.Soc.Trans.25:705−708、またはVoseら(1999)Ann.Oncol.10:58a参照)。Rituxan(登録商標)は、炎症性および自己免疫疾患において一定の役割を果し得る正常なB細胞も枯渇させる。それらは、自己免疫疾患について臨床試験中である。
【0015】
正確な作用メカニズムは不明であるが、証拠は、Rituxsan(登録商標)の抗リンパ腫効果が、補体媒介性細胞障害(CMC)、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)、細胞増殖の阻害に、一部、起因し、最終的にはアポトーシスの誘導を命令することを示している。しかし、一部の患者は、Rituxan(登録商標)での治療に対して耐性を有するようになった(Witzigら(2002)J.Clin.Oncol.20:3262、Grillo− Lopezら(1998)J.Clin.Oncol.16:2825、またはJazirehiら(2003)Mol.Cancer Ther.2:1183−1193参照)。例えば、一部の患者は、抗CD20抗体療法後、悪性B細胞上でのCD20発現を喪失する(Davisら(1999)Clin.Cancer Res.5:611)。さらに、軽度悪性NHLを有する患者の30%〜50%は、このモノクローナル抗体に対する臨床反応を示さない(Hainsworthら(2000)Blood 95:3052−3056;Colombatら(2001)Blood 97:101−106)。NHLにおけるリツキシマブの臨床活性が、患者のFcγRIIIa遺伝子型と相関することも証明された。V/VまたはV/FのFcγRIIIa 158aa多型を有する患者は、F/Fを有する者よりリツキシマブに対して反応性が高い(例えば、Cartronら(2002)Blood 99(3):754−758、またはDall’Ozzoら(2004)Cancer Res.64:4664−4669参照)。このモノクローナル抗体に対する耐性を発現している患者、またはこの抗体での初期療法に対して耐性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者には、別の形の治療介入形態が必要である。
【0016】
さらに、Rituxan(登録商標)は、患者における正常なB細胞を枯渇させる。従って、B細胞依存性自己免疫および炎症性疾患を治療するためにそれを使用することができる。
【特許文献1】米国特許第5,945,513号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/044854号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/044304号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2005/044305号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2005/044306号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2005/044855号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2005/044307号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2005/044294号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このように、炎症性疾患および自己免疫疾患のための新規治療薬および新規治療戦略が、引き続き必要とされている。特に、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))などの抗CD20抗体での治療に対して難治性の患者を治療するための新規治療戦略が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の簡単な概要)
FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であるヒト患者を、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法を提供する。前記方法は、治療または予防有効量の抗CD40抗体を前記患者の投与することを含む。本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための薬物の製造における、治療または予防有効量の抗CD40抗体の使用にも備えている。
【0019】
FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害する方法も提供し、前記方法は、前記ヒト患者に有効量の抗CD40抗体を投与することを含む。本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害するための薬物の製造における、有効量の抗CD40抗体の使用にも備えている。
【0020】
抗CD40抗体で治療することができ、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対しては難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するための方法およびキットも提供する。一部の実施形態において、前記方法は、a)CD40発現性細胞と関連があり、かつリツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定することを含み、そのヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、その炎症性疾患または自己免疫疾患を抗CD40抗体で治療することができる。本発明は、この方法を使用して特定された患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与する段階をさらに含み得る。抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者の特定に備える本発明のキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む。
【0021】
本発明は、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するための方法およびキットも提供する。一部の実施形態において、前記方法は、a)CD40発現性細胞と関連があり、かつリツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定することを含み、 そのヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、その炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に、抗CD40抗体が選択される。本発明は、この方法を使用して特定されたヒト患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与する段階をさらに含み得る。CD40発現性細胞と関連のある炎症性または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法の選択に備える本発明のキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む。
【0022】
本発明は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患についてヒト患者を治療するための方法も提供し、前記方法は、緩徐内在化型抗体を前記ヒト患者に投与することを含む。1つのそうした実施形態では、抗CD40抗体がその投与後にCD40発現性細胞によって有意に内在化されないように、治療または予防有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与する。もう1つのそうした実施形態では、抗CD40抗体がその投与後にCD40発現性細胞の表面に実質的に均一に分布したままであるように、治療または予防有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与する。さらにもう1つのそうした実施形態では、ヒト患者において治療または予防有効量の抗CD40抗体がその投与後にCD40発現性細胞の表面に存在するように、抗CD40抗体をヒト患者に投与する。
【0023】
本発明に従って使用するための抗CD40抗体は、CD40抗原に特異的に結合する。一部の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体、特にモノクローナル抗体は、ヒトFcγRIIIa−158Vに対する強い結合親和性、ヒトFcγRIIIa−158Fに対する強い結合親和性、またはヒトFcγRIIIa−158VとFcγRIIIa−158Fの両方に対する強い結合親和性を示す。これらの実施形態の一部において、抗CD40抗体は、効力のある抗体依存性細胞障害(ADCC)を生じさせるために十分な結合特性で、ヒト患者のナチュラルキラー(NK)細胞上の2つのFcγRIIIaアミノ酸158アロタイプ(VまたはF)のいずれかに結合することができる。好適な抗CD40抗体としては、例えば、CD40発現性細胞でのCD40−CD40Lシグナル伝達のアンタゴニストである抗CD40抗体を含む、有意なアゴニスト活性がない抗CD40抗体が挙げられるが、これに限定されない。一部の実施形態において、抗CD40抗体は、a)モノクローナル抗体CHIR−12.12;b)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体;c)配列番号2に示す配列、配列番号4に示す配列、配列番号5に示す配列、配列番号2および配列番号4に示す両方の配列、ならびに配列番号2および配列番号5に示す両方の配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;d)配列番号1に示す配列、配列番号3に示す配列、ならびに配列番号1および配列番号3に示す両方の配列から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;e)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;f)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;g)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;h)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;i)前記項目a)のモノクローナル抗体または前記項目c)−h)のいずれか1項目のモノクローナル抗体(この場合、前記抗体は、組換え生産される);ならびにj)前記項目a)−i)のいずれか1項目のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体(この場合、前記フラグメントは、ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する)から成る群より選択される。
【0024】
本発明の方法は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に使用することができる。例としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状狼瘡、ループス腎炎、サルコイドーシス、炎症性関節炎(若年性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎および痛風性関節炎を含む)、臓器もしくは組織移植の拒絶反応、超急性、急性もしくは慢性拒絶反応および/または移植片対宿主疾患、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性大腸炎、クローン病、セリアック病(グルテン過敏性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、強皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、免疫複合体疾患、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎および皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、間質性肺線維症、I型およびII型糖尿病、1、2、3および4型遅延型過敏症、アレルギーまたはアレルギー性疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない/意図されたものでない免疫反応、喘息、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性および刺激性接触皮膚炎、じんま疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、および慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、肺の炎症(肺移植片拒絶反応、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎および肺のアレルギー性疾患、例えば過敏性肺炎、好酸球性肺炎、骨髄および/または肺移植または他の原因に起因する閉塞性細気管支炎、移植片アテローム性動脈硬化症/移植片静脈硬化症ならびに膠原病、血管疾患および自己免疫疾患(例えば、関節リウマチおよびエリテマトーデス)に起因する肺線維症を含むが、これらに限定されない)、ならびにCD20発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法は、CD40とCD20の両方を発現する細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患に対して特に有利である。このように、本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してホモ接合性またはヘテロ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である患者のための抗CD20抗体をはじめとする他の治療薬での療法に対して反応しないまたは難治性である炎症性または自己免疫疾患を有する患者の治療を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、CHIR−12.12などの抗CD40抗体が、他のADCC媒介抗体があまり有効でないまたは比較的無力である条件下で、CD40発現性ターゲット細胞の効力のある抗体依存性細胞障害(ADCC)を媒介することができるという驚くべき発見をした。リツキシマブ(Rituxan(登録商標))などの他の抗体とは異なり、本発明に従って使用する抗CD40抗体は、効力のあるADCCを生じさせるために十分な結合特性で、ヒト患者のナチュラルキラー(NK)細胞上の2つのFcγRIIIaアミノ酸158アロタイプ(VまたはF)のいずれかに結合することができる。この発見は、予想外であり、全患者断面にわたって炎症性疾患または自己免疫疾患を治療する本発明者らの能力の進歩を意味する。
【0026】
従って、CHIR−12.12などの抗CD40抗体は、FcγRIIIa−158Vに関してホモ接合性(遺伝子型V/V)のヒト患者に加えて、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に使用することができる。
【0027】
従って、本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であるヒト患者を、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法を提供し、この方法は、治療または予防有効量の抗CD40抗体を前記ヒト患者に投与することを含む。本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための薬物の製造における、治療または予防有効量の抗CD40抗体の使用も提供する。
【0028】
上で述べたように、NHLにおけるリツキシマブの臨床活性が、患者のFcγRIIIa遺伝子型と相関することは証明されている。F/FのFcγRIIIa 158aa多型を有する患者は、V/VまたはV/Fを有する者よりリツキシマブに対する反応が小さい(例えば、Cartronら(2002)Blood 99(3):754−758、またはDall’Ozzoら(2004)Cancer Res.64:4664−4669参照)。上で述べたように、Rituxan(登録商標)は、自己免疫疾患について臨床検査中である。従って、本発明は、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))などの抗CD20抗体での治療に反応しない炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に有利である。さらに、抗体−毒素共役を使用する必要がないこうした効力のあるターゲット細胞死滅により、結果として、製造に費用がかからず、副作用がより少ない薬物が得られるであろう。
【0029】
CHIR−12.12などの抗CD40抗体は、FcγRIIIa−158Vに関してホモ接合性(遺伝子型V/V)のヒト患者に加えて、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害するための方法に使用することができる。
【0030】
従って、本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害する方法を提供し、この方法は、有効量の抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12、を前記ヒト患者に投与することを含む。本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害するための薬物の製造における、有効量の抗CD40抗体の使用も提供する。
【0031】
当業者は、FcγRIIIa−158Fに関して、ヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者においてB細胞による抗体生産を阻害できるとは予想し得なかったであろう。
【0032】
本発明によって、ADCC媒介性抗CD40抗体を投与することにより、個々のヒト患者のためにその患者のFcγRIIIa−158遺伝子型に基づいて治療計画を選択することができる。
本発明は、抗CD40抗体で治療することができ、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対しては難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するための方法を提供し、この方法は、
a)CD40発現性細胞と関連があり、かつリツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および
b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定すること
を含み、
前記ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、前記炎症性疾患または自己免疫疾患を治療することができる。本発明は、この方法を使用して特定されたヒト患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与する段階をさらに含み得る。
当業者は、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するこの方法を、好適な診断キットを使用して容易に行うことができる。このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な試薬を含むはずである。従って、本発明は、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するためのキットも提供する。好適なキットは、本明細書の他の箇所でより詳細に説明する。
本発明は、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するための方法も提供し、この方法は、
a)CD40発現性細胞と関連があり、かつリツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および
b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定すること
を含み、
前記ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、前記炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に抗CD40抗体が選択される。特に、抗CD40抗体は、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に優先して選択することができる。本発明は、この方法を使用して特定されたヒト患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与する段階をさらに含み得る。
【0033】
当業者は、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法のこの選択方法を、好適な診断キットを使用して容易に行うことができる。このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な試薬を含むはずである。従って、本発明は、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するためのキットを含む、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するためのキットも提供する。
【0034】
本発明者は、CHIR−12.12などの抗CD40抗体が、投与後にCD40発現性細胞によって有意に内在化されないという驚くべき発見もした。その代わり、CHIR−12.12などの抗CD40抗体は、投与後、有意な期間、CD40発現性細胞の表面に実質的に均一に分布している。これは、他の抗体、特に、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))などの抗CD20抗体とは対照的である。
【0035】
CD40発現性細胞表面でのCD40結合の継続期間、およびCD40発現性細胞表面での抗CD40抗体の均一な分布によって、抗CD40抗体は、ナチュラルキラー(NK)細胞上のFcγRIIIaなどのFcRへの結合によりCD40発現性ターゲット細胞の効力のある抗体依存性細胞障害(ADCC)を媒介することができる。
従って、本発明は、抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞によって有意に内在化されないように、治療または予防有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与することを含む、ヒト患者をCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法を提供する。
【0036】
本発明は、抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞の表面に実質的に均一に分布したままであるように、治療または予防有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与することを含む、ヒト患者をCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法も提供する。
【0037】
本発明は、ヒト患者において治療または予防有効量の抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞の表面に存在するように、抗CD40抗体をヒト患者に投与することを含む、ヒト患者をCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法も提供する。
【0038】
従って、本発明のこれらの態様は、緩徐内在化型抗体を患者に投与することを含む。「緩徐内在化型抗体」とは、有意な期間にわたって細胞表面に配置されたままである抗体を意味する。当業者はわかるであろうが、この特性は、治療が意図した効果を生ずるために抗体−受容体複合体の内在化を実際に必要とする多くの治療用途に有利だと考えられる特性と対照をなす。この文脈で、有意な期間は、一般に、3時間、好ましくは6時間、さらに好ましくは12時間、さらに好ましくは24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間以上である。
【0039】
好ましくは、CD40発現性細胞の表面に最初に配置された抗体の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%。少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、以上が、上の有意な期間の後、その細胞の表面に配置されたままである。
【0040】
抗体の内在化は、様々なアッセイによってアッセイすることができる。例えば、Daudiリンパ腫細胞株またはARH77 MM細胞株などの細胞株を使用して、内在化に対する候補抗体結合の効果を評価することができる。氷上で(内在化を阻止するために0.1%アジ化ナトリウムと共に)、または37℃で(アジ化ナトリウムを伴わずに)、一定期間(好適適切には3時間)、細胞をヒトIgG1(対照抗体)または候補抗体と共にインキュベートする。低温の染色用バッファ(PBS+1%BSA+0.1%アジ化ナトリウム)で洗浄した後、例えば、氷上で30分間、ヤギ抗ヒトIgG−FITCで細胞を染色する。その後、染色度をアッセイすることができる。この例では、幾何平均蛍光強度(MFI)を、例えばFACS Caliburにより、記録することができよう。他の好適なアッセイは、当業者には公知である(例えば、http://www.abgenix.com/documents/SBS2003%20poster.pdf参照)。
【0041】
本明細書中の実施例4および5において述べる実験では、アジ化ナトリウムの存在下、氷上で、またはアジ化ナトリウム不在下、37℃で、CH12.12と共にインキュベートした細胞間に、MFIの有意な差は観察されなかった(図7−10参照)。これらのデータは、CH12.12が、CD40に結合すると、内在化せず、細胞表面上に提示され続けることを示している。
【0042】
本発明を役立たせるために利用することができる標準的な技術および手順の概要を下に与える。本発明が、説明する特定の方法論、プロトコル、細胞株、ベクターおよび試薬に限定されないことは、理解されるであろう。本明細書において用いる専門用語が、特定の実施形態の説明のみを目的とするものであり、この専門用語が、本発明の範囲を限定するためのものでないことも理解されるはずである。本発明の範囲は、添付のクレームの項によってのみ限定される。
【0043】
ヌクレオチドおよびアミノ酸については標準的な略語を本明細書において用いている。
【0044】
本発明の実施には、別の指示がない限り、当業者の技能の範囲内である、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術および免疫学の従来の技術が利用されるであろう。
【0045】
そうした技術は、文献で十分に説明されている。参照に特に好適なテキストの例としては、次のものが挙げられる:Sambrookら(1989)Molecular Cloning;A Laboratory Manual(2d ed.);D.N Glover,ed.(1985)DNA Cloning,Volumes I and II;M.J.Gait,ed.(1984)Oligonucleotide Synthesis;B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization;B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984)Transcription and Translation;R.I.Freshney,ed.(1986)Animal Cell Culture;Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning;the Methods in Enzymology series(Academic Press,Inc.),特に、volumes 154 & 155;J.H.Miller and M.P.Calos,eds.(1987)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory);Mayer and Walker,eds.(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press, London);Scopes(1987)Protein Purification:Principles and Practice(2d ed.;Springer Verlag,N.Y.);およびD.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.(1986)Handbook of Experimental Immunology,Volumes I−IV。
【0046】
本発明の方法は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療における抗CD40抗体の使用を含む。
【0047】
「CD40」、「CD40抗原」または「CD40受容体」は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーの50−55kDa膜貫通糖タンパク質を指す(例えば、米国特許第5,674,492号および同第4,708,871号;Stamenkovicら(1989)EMBO 8:1403;Clark(1990)Tissue Antigens36:33;Barclayら(1997)The Leucocyte Antigen Facts Book(2d ed.;Academic Press,San Diego)参照)。この遺伝子の選択的スプライスを受けた転写変異体によってコードされているヒトCD40の2つのアイソフォームが同定されている。第一のアイソフォーム(「ロング・アイソフォーム」または「アイソフォーム1」としても公知)は、最初の19の残基によって表されるシグナル配列を有する、配列番号8(GenBankアクセッション番号X60592およびNM_001250)によってコードされている、277アミノ酸の前駆体ポリペプチド(配列番号9;GenBankアクセッション番号CAA43045として最初に報告され、GenBankアクセッション番号NP_001241でアイソフォーム1として同定された)として発現される。第二のアイソフォーム(「ショート・アイソフォーム」または「アイソフォーム2」としても公知)は、同様に最初の19の残基によって表されるシグナル配列を有する、配列番号6(GenBankアクセッション番号NM_152854)によってコードされている、203アミノ酸の前駆体ポリペプチド(配列番号7;GenBankアクセッション番号NP_690593)として発現される。ヒトCD40のこれら2つのアイソフォームの前駆体ポリペプチドは、それらの最初の165残基(すなわち、配列番号7および配列番号9の残基1−165)を共同で共有する。ショート・アイソフォームの前駆体ポリペプチド(配列番号7に示す)は、翻訳フレームシフトをもたらすコーディングセグメントを欠く転写変異体(配列番号6)によってコードされ、結果として生じるCD40アイソフォームは、CD40のロング・アイソフォーム(配列番号9の残基166−277で示すC末端)に含まれているものからの、より短い別個のC末端(配列番号7の前記166−203)を含有する。本発明のために、用語「CD40」、または「CD40抗原」、「CD40細胞表面抗原」、または「CD40受容体」は、CD40のショート・アイソフォームとロング・アイソフォームの両方を包含する。CD40抗原は、完全にグリコシル化されるか、または部分的にグリコシル化され得る。
【0048】
本明細書の他の箇所で述べているように、CD40は、正常および新生物性両方のヒトB細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、CD8+T細胞、内皮細胞、単球性および上皮性細胞、活性化T細胞、活性化血小板、炎症した血管平滑筋細胞、好酸球、関節リウマチの際の滑膜、皮膚線維芽細胞、および他の非リンパ球系細胞型の表面で見出される。
【0049】
本明細書における「CD40発現性細胞」は、検出可能なレベルのCD40抗原を発現する任意の正常または悪性細胞を指す。好ましくは、CD40発現性細胞は、検出可能なレベルの細胞表面CD40抗原を発現する細胞である。細胞におけるCD40の発現を検出するための方法は、当該技術分野において周知であり、PCR法、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、ELISAなどを含むが、これらに限定されない。これらの方法により、CD40 mRNA、CD40抗原および細胞表面CD40抗原を検出することができる。細胞表面CD40発現の検出は、本明細書中の実施例3において説明するとおり、または他の好適な方法により、行うことができる。
【0050】
「CD40リガンド」または「CD40L」は、主として32−33kDa膜貫通タンパク質を指し、これは、より小さな2つの生物活性可溶性型であって、それぞれ18kDaおよび31kDaででも存在する(Grafら(1995)Eur.J.Immunol.25:1749−1754;Mazzeiら(1995)J.Biol.Chem.270:7025−7028;Pietravalleら(1996)J.Biol.Chem.271:5965−5967)。ヒトCD40Lは、CD154またはpg39としても公知である。「CD40リガンド」または「CD40L」は、1つ以上のCD40シグナル経路に結合し、それらを活性化することができる、任意の他のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質も指す。従って、「CD40リガンド」は、CD40発現性細胞上のCD40に結合し、CD40シグナル伝達を刺激する機能を実行するために十分な活性を保持する、完全長CD40リガンドタンパク質ならびにそれらの変異体およびフラグメントを含むが、これらに限定されない。天然CD40リガンド、例えばヒトCD40L、への修飾としては、置換、欠失、トランケーション、伸長、融合タンパク質、フラグメント、ペプチド模倣体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
「CD40シグナル伝達」は、細胞表面CD40と、CD40リガンドまたは他のアゴニスト、例えばアゴニスト抗体、との相互作用の結果として生じる任意の生物活性を意味する。CD40シグナル伝達の例は、CD40発現性細胞の増殖および生存ならびにCD40発現性細胞内の1つ以上のCD40シグナル経路の刺激をもたらすシグナルである。CD40「シグナル経路」または「シグナル伝達経路」は、CD40受容体と、CD40リガンド、例えばCD40L、との相互作用の結果として生じる、ならびにそのシグナル経路を通して伝達されたときにそのシグナル伝達カスケードにおける1つ以上の下流分子の活性化をもたらすシグナルを生成させる、少なくとも1つの生化学反応または一群の性化学反応を意味する。シグナル伝達経路は、シグナルを細胞表面CD40受容体から、細胞形質膜を越えて、一連のシグナル伝達分子のうちの1つ以上まで、その細胞の細胞質まで、および場合によってはその細胞核へと伝達することとなる、多数のシグナル伝達分子を含む。本発明にとって特に関心が高いのは、AKTシグナル経路[AKTの活性化をもたらし、最終的にはNF−κBシグナル経路によりNF−κBの活性化をもたらす]およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル経路[ERKおよびp38の活性化をそれぞれもたらす、MEK/ERKシグナル経路およびMEK/p38シグナル経路を含む]をはじめとするCDシグナル伝達経路である。
【0052】
上で述べたように、本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であるヒト患者を、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療する方法を提供し、この方法は、前記ヒト患者の治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与することを含む。
【0053】
「ヒト患者」は、CD40発現性細胞と関連のある任意の炎症性疾患または自己免疫疾患に罹患している、または前記疾患を発現もしくは再発するリスクを有する、人間の患者を意味する。
【0054】
「CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患」は、CD40発現性細胞と関連のある任意の炎症性疾患または自己免疫疾患を意味する。CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患は、CD40発現性細胞での望ましくないCD40シグナル伝達レベルと関連のある炎症性疾患もしくは自己免疫疾患であってよく、またはCD40発現性細胞とは間接的にしか関連のない炎症性疾患もしくは自己免疫疾患であり得る。「望ましくないCD40シグナル伝達レベルと関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患」は、その発現または進行が望ましくないCD40シグナル伝達レベルと関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を意味する。
【0055】
「望ましくないCD40シグナル伝達レベル」は、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者におけるCD40発現性細胞において発生し得る、任意の生理学的に望ましくないCD40シグナル伝達レベルを意味する。
【0056】
炎症性疾患は、炎症および組織破壊またはこれらの組み合わせを特徴とする。「炎症性疾患」は、免疫反応の開始事象またはターゲットが、例えば、同種抗原、異種抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、未知の抗原またはアレルゲンをはじめとする非自己抗原(単数または複数)を伴う、任意の炎症性免疫媒介プロセスを含む。
【0057】
本明細書で用いる場合、用語「自己免疫」は、一般に、「自己」抗原を含む炎症性免疫媒介プロセスを包含すると解釈する。自己免疫性疾患において、自己抗原(単数または複数)は、宿主免疫反応を誘発する。
【0058】
本発明は、組織移植拒絶反応と関連のある炎症の治療において使用することができる。「移植拒絶反応」または「移植片拒絶反応」は、HLA抗原、血液型抗原などをはじめとする(しかし、これらに限定されない)、移植片に対する任意の宿主誘発免疫反応を指す。
【0059】
本発明は、例えば、骨髄移植と関連のあるものなどの移植片対宿主疾患を治療するために使用することもできる。こうした移植片対宿主疾患におけるドナー骨髄としては、リンパ球、およびリンパ球へと成熟する細胞が挙げられる。ドナーのリンパ球は、レシピエントの抗原を非自己と認識し、炎症性免疫反応を誘発する。従って、本明細書で用いる場合、「移植片対宿主疾患」または「移植片対宿主反応」は、ドナーリンパ球が宿主の抗原に反応する任意のT細胞媒介免疫反応を指す。
【0060】
本発明の方法に従って治療することができる炎症性疾患および自己免疫疾患としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状狼瘡、ループス腎炎、サルコイドーシス、炎症性関節炎(若年性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎および痛風性関節炎を含む)、臓器もしくは組織移植の拒絶反応、超急性、急性もしくは慢性拒絶反応および/または移植片対宿主疾患、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性大腸炎、クローン病、セリアック病(グルテン過敏性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、強皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、免疫複合体疾患、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎および皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、間質性肺線維症、I型およびII型糖尿病、1、2、3および4型遅延型過敏症、アレルギーまたはアレルギー性疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない/意図されたものでない免疫反応(例えば、米国特許出願番号US2002/0119151、およびKorenら(2002)Curr.Pharm.Biotechnol.3:349−60参照)、喘息、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性および刺激性接触皮膚炎、じんま疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、および慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシーなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法は、肺移植片拒絶反応、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎および肺のアレルギー性疾患、例えば過敏性肺炎、好酸球性肺炎、骨髄および/または肺移植または他の原因に起因する閉塞性細気管支炎、移植片アテローム性動脈硬化症/移植片静脈硬化症、ならびに膠原病、血管疾患および自己免疫疾患(例えば、関節リウマチおよびエリテマトーデス)に起因する肺線維症をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、肺の炎症の治療においても有用である。
【0061】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患であり得る。抗体依存性自己免疫疾患の例としては、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、またはシェーグレン症候群が挙げられる。
【0062】
さらに、B細胞および他のCD40保有細胞の枯渇は、CD40リガンド結合によるシグナル伝達によるT細胞活性化を制限し得る。従って、B細胞および他のCD40保有細胞の枯渇を利用して、T細胞媒介自己免疫および炎症性疾患、例えば、多発性硬化症、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病または糖尿病を治療することができよう。骨髄移植にも有用であろう。
【0063】
本発明は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患に関して特に有利である。本明細書において開示するCHIR−12.12は、本明細書の他の箇所でより詳細に説明しているように、Rituxan(登録商標)などの抗CD20抗体をはじめとする他の治療薬での療法に対して難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者を治療するために使用することができる。
【0064】
「治療」は、本明細書では、被検者への抗CD40抗体の適用もしくは投与または被検者からの単離された組織または細胞株への抗CD40抗体の適用もしくは投与と定義し、この場合、前記被検者は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患と関連のある症状、または自己免疫疾患および/または炎症性疾患を発現する素因を有し、その目的は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患の任意の関連する症状、または自己免疫疾患および/または炎症性疾患を発現する素因を治す、癒す、緩和する、和らげる、改変する、軽減する、改善する、向上させる、またはそれらに作用することである。「治療」は、被検者への抗CD40抗体を含む医薬組成物の適用もしくは投与、または被検者から単離された組織もしくは細胞株への抗CD40抗体を含む医薬組成物の適用もしくは投与も意味し、この場合、前記被検者は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患と関連のある症状、または自己免疫疾患および/または炎症性疾患を発現する素因を有し、その目的は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患の任意の関連する症状、または自己免疫疾患および/または炎症性疾患を発現する素因を治す、癒す、緩和する、和らげる、改変する、軽減する、改善する、向上させる、またはそれらに作用することである。
【0065】
「抗炎症活性」は、炎症の低減または予防を意味する。本明細書の他の箇所で定義する抗CD40抗体での療法は、CD40抗原を発現する細胞を伴う自己免疫疾患および/または炎症性疾患の治療に関して有益である生理反応を生じさせる。本発明の方法が、増殖、活性化などのような細胞の表現型変化の防止に有用であり得ることは理解される。
【0066】
本発明の治療方法では、本明細書の他の箇所で定義するとおりの少なくとも1つの抗CD40抗体を使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患に関する陽性治療反応を促進する。
【0067】
炎症性疾患または自己免疫疾患に関して、「陽性治療反応」は、抗体の抗炎症活性と関連のある疾患の改善、および/または前記疾患と関連のある症状の改善を意味する。すなわち、抗増殖効果;CD40発現性細胞のさらなる増殖の予防;炎症性サイトカイン、接着分子、プロテアーゼ、免疫グロブリン(CD40保有細胞がB細胞である場合)、これらの組み合わせなどの分泌減少をはじめとする(しかしそれらに限定されない)炎症反応の低減;抗炎症性タンパク質の生産増加;自己反応性細胞数の減少、免疫寛容性の増加;自己反応性細胞の生存の抑制;および/またはCD40発現性細胞の刺激によって媒介される1つ以上の症状の低減を観察することができる。そうした陽性治療反応は、投与経路に限定されず、ならびにドナー、ドナー組織(例えば、臓器潅流など)、宿主およびこれらの任意の組み合わせなどへの投与を含むことができる。
【0068】
臨床反応は、スクリーニング技術、例えば、磁気共鳴撮像(MRI)スキャン、X線撮影イメージング、コンピュータ連動断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリーまたは蛍光細胞分析分離装置(FACS)分析、組織学、肉眼的病理および血液化学(ELISA、RIA、クロマトグラフィーなどによって検出できる変化を含むが、これらに限定されない)などを用いて評価することができる。これらの陽性治療反応に加えて、抗CD40抗体での療法を受ける被検者は、その疾患と関連のある症状の改善という有益な効果を経験することができる。
【0069】
「治療または予防有効用量」または「治療または予防有効量」は、投与されたとき、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者の治療に対して陽性治療反応を生じさせる抗CD40抗体の量を意味する。好適な用量は、本明細書の他の箇所でより詳細に説明する。本治療方法は、本明細書の他の箇所でより詳細に説明するように、抗CD40抗体の治療有効用量の単回投与を含むこともあり、または治療有効用量の多数回投与を含むこともある。
【0070】
本発明の方法は、炎症性または自己免疫疾患のための1つ以上の公知の療法に対して難治性である、上に列挙したものをはじめとする炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に、特に有用である。そうした療法としては、本明細書の他の箇所でより詳細に説明するような、外科手術または外科手術手順(例えば、脾臓摘出術、リンパ節切除術、甲状腺切除術、血漿分離交換法、白血球フェレーシス、細胞、組織または臓器移植、腸の処置、臓器潅流など);放射線療法;ステロイド療法および非ステロイド療法などの療法;ホルモン療法;サイトカイン療法;外皮用剤(例えば、アレルギー、接触皮膚炎および乾癬などの皮膚の状態を治療するために使用される局所用薬剤)での療法;免疫抑制療法;および他の抗炎症性モノクローナル抗体療法などが挙げられるが、これらに限定されない。「難治性」とは、特定の炎症性疾患または自己免疫疾患が、特定の療法に対して耐性である、または反応しないことを指す。炎症性疾患または自己免疫疾患は、特定の療法に対して、その特定の療法での治療の開始から難治性である(すなわち、その療法への最初の暴露に対して反応しない)場合もあり、またはその療法に対する耐性発現の結果として、その療法での最初の治療期間の経過と共に、もしくはその療法での後続の治療期間中に、難治性となり得る。従って、本発明は、炎症性または自己免疫疾患のための治療に対して難治性であるヒト患者の治療に、前記ヒト患者が前記療法に対して耐性であるまたは反応しないとき、有用である。
【0071】
本発明の方法は、抗CD40抗体の使用を伴う。「抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から成る約150,000ダルトンのヘテロ四量体型糖タンパク質である。それぞれの軽鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結されているが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。重鎖および軽鎖それぞれは、規則正しい間隔の鎖間ジスルフィド結合も有する。それぞれの重鎖は、一方の末端に1つの可変ドメイン(VH)、それに続いて多数の定常ドメインを有する。それぞれの軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)を、およびもう一方の末端に定常ドメインを有し、その軽鎖の定常ドメインが、重鎖の第1定常ドメインとアラインされ、軽鎖可変ドメインが重鎖の可変ドメインとアラインされる。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの界面を形成すると考えられている。用語「可変」は、可変ドメインの一定の部分が、抗体間で配列の点で大いに異なることを指す。可変領域が抗原結合特異性を付与する。定常領域は、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば、Fc受容体(FcR)結合、抗体依存性細胞毒性への抗体の関与、補体依存性細胞障害の開始およびマスト細胞脱顆粒を示す。
【0072】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明瞭に異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0073】
それらの「重鎖」の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。ヒト免疫グロブリンには5つの主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgFおよびIgMがあり、これらの幾つかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2、にさらに分けることができる。前記異なる免疫グロブリンクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。前記異なる免疫グロブリンクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は、周知である。異なるアイソタイプは、異なるエフェクター機能を有する。例えば、ヒトIgG1およびIgG3アイソタイプは、ADCC(抗体依存性細胞媒介性障害)活性を有する。IgG1抗体、特にヒトIgG1抗体は、本発明の方法において特に有用である。
【0074】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を果たす白血球である。好ましくは、前記細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、抗原依存性細胞媒介性障害(ADCC)エフェクター機能を遂行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、好酸球および好中球が挙げられ、PBMCおよびNK細胞が好ましい。ADCC活性を有する抗体は、典型的に、IgG1またはIgG3アイソタイプのものである。IgG1およびIgG3抗体の単離に加えて、そうしたADCC媒介抗体は、非ADCC抗体からの可変領域または可変領域フラグメントをIgG1またはIgG3アイソタイプ定常領域に遺伝子工学で作ることによって、作ることができることに留意すること。
【0075】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するために使用する。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体(これらの受容体の対立変異体および選択的スプライスを受けた形を含む)を含む。FcγRII受容体は、主として細胞質ドメインが異なる類似したアミノ酸配列を有する、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含む。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron(1997)Annu.Rev.Immunol.15:203−234参照)。FcRは、RavetchおよびKinet(1991)Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991);Capelら(1994)Immunomethods 4:25−34;およびde Haasら(1995)J.Lab.Clin.Med.126:330−341において論評されている。将来同定されるものを含む他のFcRは、本明細書における用語「FcR」に包含される。この用語は、母体IgGの胎児への移動に責任を負う新生児受容体、FcRn(Guyerら(1976)J.Immunol.117:587、およびKimら(1994)J.Immunol.24:249(1994))も含む。
【0076】
用語「抗体」は、本明細書では最も広い意味で使用し、完全に組み立てられた抗体、CD40抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fvおよび他のフラグメント)、1本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体キメラ、ハイブリッド抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体など)、および前述のものを含む組換えペプチドを包含する。用語「抗体」は、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を包含する。
【0077】
本明細書で用いる場合、「抗CD40抗体」は、CD40抗原を特異的に認識する任意の抗体を包含する。一部の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体、特に、モノクローナル抗CD40抗体は、CD40抗原に対する強い単一部位結合親和性を示す。そうしたモノクローナル抗体は、Biacore(登録商標)などの標準的なアッセイを使用して測定したとき、少なくとも10−5Mの、少なくとも3×10−5Mの、好ましくは少なくとも10−6Mの、または少なくとも10−7Mまでの、さらに好ましくは少なくとも10−8Mの、または少なくとも10−12Mの親和性を示す。Biacore分析は、当該技術分野において公知であり、その詳細は、「BIAapplications handbook」に提供されている。WO 01/27160に記載されている方法を使用して、結合親和性を調整することができる。
【0078】
「特異的に認識する」または「に特異的に結合する」は、抗CD40抗体が、CD20抗原などの関連のない抗原には結合しないことを意味する。
【0079】
一部の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体、特に、モノクローナル抗体は、ヒトFcγRIIIa−158Vに対して強い結合親和性を示す。好ましくは、本発明において使用するための抗CD40抗体は、Biacore(登録商標)などの標準的なアッセイを使用して測定したとき、少なくとも約0.5μMの親和性(KD)で、ヒトFcγRIIIa−158Vに結合する。本明細書の実施例6において開示するように、CHIR−12.12抗体は、492nMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Vに結合する。
【0080】
一部の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体、特に、モノクローナル抗体は、ヒトFcγRIIIa−158Fに対して強い結合親和性を示す。好ましくは、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、Biacore(登録商標)などの標準的なアッセイを使用して測定したとき、少なくとも約12μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Fに結合する。好ましくは、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、少なくとも約10μM、少なくとも約8μM、少なくとも約6μM、少なくとも約5μM、少なくとも約4μM、または少なくとも約3μMの親和性(KD)で、ヒトFcγRIIIa−158Fに結合する。本明細書の実施例6において開示するように、CHIR−12.12抗体は、2.8μMの親和性(KD)で、ヒトFcγRIIIa−158Fに結合する。
【0081】
一部の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体、特に、モノクローナル抗体は、ヒトFcγRIIIa−158VとFcγRIIIa−158Fの両方に対して強い結合親和性を示す。好ましくは、本発明において使用するための抗CD40抗体は、Biacore(登録商標)などの標準的なアッセイを使用して測定したとき、少なくとも約0.5μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Vに、少なくとも約12μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Fにおよび結合する。
【0082】
本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、当業者には公知の任意の好適な抗体生産法を使用して生産することができる。
【0083】
本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、ポリクローナル抗体であってもよい。例えば、ポリクローナル血清は、従来の方法によって作製することができる。一般に、先ず、対象となる抗原(この場合、CD40抗原)を含有する溶液を使用して、好適な動物、好ましくは、マウス、ラット、ウサギまたはヤギを免疫する。得ることができる血清の容量、および標識された抗ウサギおよび抗ヤギ抗体の入手可能性のため、ポリクローナル血清の作製にはウサギまたはヤギが好ましい。
【0084】
免疫された動物からの血清を初期抗原に対する抗体反応についてスクリーニングすることができる。リンパ球をリンパ節または脾臓細胞から単離することができ、さらに、CD138陰性およびCD19陽性細胞についての選択により、B細胞について選択することができる。1つの態様では、本明細書中で詳述するように、そうしたB細胞培養物(BCC)を骨髄腫細胞に融合させて、ハイブリドーマを生成することができる。
【0085】
ポリクローナル血清は、トランスジェニック動物、好ましくは、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスにおいて作製することもできる。好ましい実施形態では、対象となるタンパク質(この場合、CD40抗原)を発現するSf9細胞を免疫原として使用する。免疫処置は、食塩水中で、好ましくはフロイント完全アジュバント中で、抗原含有溶液を混合または乳化し、その混合物またはエマルジョンを非経口的に(一般には皮下的にまたは筋肉内的に)注射することによって行うこともできる。一般に、50−200μg/注射の用量で十分である。免疫処置は、一般に、2−6週間後、前記食塩水中のタンパク質の1回以上の注射で、好ましくはフロイント不完全アジュバントを使用して、追加免疫する。あるいは、当該技術分野において公知の方法を使用するインビトロ免疫処置によって抗体を産生させることもでき、これは、本発明の目的には、インビボ免疫処置と等価であると考えられる。ポリクローナル血清は、免疫した動物から採血してガラスまたはプラスチック容器に入れ、その血液を1時間、25℃でインキュベートし、その後、2−18時間、4℃でインキュベートすることによって得る。その血清を遠心分離(例えば、10分間、1,000×g)によって回収する。ウサギからは1回の採血につき約20−50mLを採取することができる。
【0086】
Sf9(Spodoptera fungiperda)細胞の生産は、米国特許第6,004,552号(本明細書に参照として組み込まれている)に開示されている。CD40の場合、簡単に言えば、ヒトCD40をコードする配列をトランスファーベクターを使用してバキュロウイルスへと組み換えた。それらのプラスミドを野生型バキュロウイルスDNAでSf9細胞へとコ・トランスフェクトした。組換えバキュロウイルス感染Sf9細胞を同定し、クローン精製した。
【0087】
本発明の方法において使用する抗CD40抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。用語「モノクローナル抗体」(および「mAb」)は、本明細書で用いる場合、抗体の実質的に均一な集団から得られた抗体を指し、すなわち、前記集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然突然変異を除き、同一である。この用語は、抗体の種に関する限定を受けず、任意の特定の方法による抗体の生産を必要としない。
【0088】
種々の抗原決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を一般に含むポリクローナル抗体の作製とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基(エピトープ)に対するものである。
【0089】
「エピトープ」は、抗体が生産され、抗体が結合することとなる、抗原分子の一部を意味する。エピトープは、線状アミノ酸残基(すなわち、エピトープ内の残基が、逐次的に次々と線形に配列されている)、非線状アミノ酸残基(本明細書では「非線状エピトープ」と呼ぶ;これらのエピトープは、逐次的に配列されていない)、または線状および非線状、両方のアミノ酸残基を含むことができる。本発明の方法における使用に好適な抗CD40モノクローナル抗体は、ヒト細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原上のエピトープ、すなわち細胞の外部に暴露されるエピトープ、に特異的に結合することができるであろう。
【0090】
本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって作ることができる。モノクローナル抗体は、例えば、McCaffertyら(1990)Nature 348:552−554(1990)および米国特許第5,514,548号に記載されている技術を使用して産生された抗体ファージライブラリから単離することもできる。Clacksonら(1991)Nature 352:624−628およびMarksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597には、ファージライブラリを使用するマウスおよびヒト抗体の単離がそれぞれ記載されている。後続の出版物には、鎖シャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の生産(Marksら(1992)Bio/Technology 10:779−784)、ならびに非常に大きなファージライブラリを構築するための戦略としての組換え感染およびインビボ組換え(Waterhouseら(1993)Nucleic.Acids Res.21:2265−2266)が記載されている。このように、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代案である。
【0091】
Kohlerら(1975)Nature 256:495−496の伝統的な方法では、一般に、抗原を含有する溶液でマウスを免疫する。免疫処置は、食塩水中で、好ましくは、フロイント完全アジュバントなどのアジュバント中で、抗原含有溶液を混合または乳化し、その混合物またはエマルジョンを非経口的に注射することによって行うことができる。当該技術分野において公知の任意の免疫法を使用して、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。動物を免疫した後、その脾臓(および場合によっては幾つかの大きなリンパ節)を除去し、単個細胞へと分離する。それらの脾臓細胞は、対象となる抗原でコーティングしたプレートまたはウエルに細胞懸濁液を塗布することによって、スクリーニングすることができる。その抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞は、そのプレートに結合し、すすぎ落とされない。その後、結果として生じたB細胞、すなわち、すべての分離された脾臓細胞を、骨髄腫と融合してハイブリドーマを形成するように誘導し、選択培地中で培養する。結果として生じた細胞を系列希釈によってプレーティングし、対象となる抗原に特異的に結合する(および関連のない抗原には結合しない)抗体の生産についてアッセイする。その後、それらの選択されたモノクローナル抗体(mAb)分泌性ハイブリドーマを、インビトロで(例えば、組織培養ビンもしくは中空繊維反応器内で)またはインビボで(マウスにおいて腹水として)培養する。
【0092】
もう1つの態様において、B細胞培養物は、好ましくは、初期抗原に対する反応性についてさらにスクリーニングすることができる。そうしたスクリーニングとしては、ターゲット/抗原タンパク質での酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、対象となる抗原に結合する既知抗体との競合アッセイ、および一過的にトランスフェクトされたCHOへのまたはターゲット抗原を発現する他の細胞へのインビトロ結合が挙げられる。
【0093】
本発明の方法において使用するための抗CD40抗体を、組換えDNA法を使用して作製する場合、モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離され、配列決定される。本明細書に記載するハイブリドーマ細胞は、そうしたDNAの好ましい供給源として役立つ。単離したら、そのDNAを発現ベクター内に配置することができ、その後、それを、別様には免疫グロブリンタンパク質を生産しない宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞、にトランスフェクトして、前記組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を達成する。抗体をコードするDNAの細菌内での組換え発現に関する総説としては、Skerraら(1993)Curr.Opinion in Immunol.5:256、およびPhickthun(1992)Immunol.Revs.130:151が挙げられる。あるいは、抗体は、米国特許第5,545,403号、同第5,545,405号および同第5,998,144号(本明細書に参照として組み込まれている)に開示されているように、CHO細胞株などの細胞株において生産することができる。簡単に言えば、軽鎖および重鎖をそれぞれ発現することができるベクターで、前記細胞株をトランスフェクトする。別個のベクター上の2つのタンパク質をトランスフェクトすることにより、キメラ抗体を生産することができる。もう1つの利点は、抗体の正しいグリコシル化である。
【0094】
「宿主細胞」は、本明細書で用いる場合、組換えベクターまたは他のトランスファーポリヌクレオチドのためのレシピエントとして使用することができまたは使用されている、微生物または真核細胞、または単細胞単位として培養された細胞株を指し、トランスフェクトされた原細胞の後代を含む。単個細胞の後代が、自然な、偶発的な、または意図的な突然変異のため、形態の点でまたはゲノムもしくは全DNA補体の点で、必ずしも原親と完全に一致しない場合があることは、理解される。
【0095】
一部の実施形態において、CHIR12.12などの抗CD40抗体は、グルタミンシンセターゼをマーカーとして使用する、GS遺伝子発現系(ニューハンプシャー州、ポーツマスのLonza Biologics)を使用して、CHO細胞において生産される。例えば、米国特許第5,122,464号、同第5,591,639号、同第5,658,759号、同第5,770,359号、同第5,827,739号、同第5,879,936号、同第5,891,693号および同第5,981,216号(これらの内容は、本明細書に参照として組み込まれている)も参照。
【0096】
CD40に対するモノクローナル抗体は、当該技術分野において公知である。例えば、McMichael,ed.(1987;1989)Leukocyte Typing III and IV(Oxford University Press,New York);米国特許第5,674,492号、同第5,874,082号、同第5,677,165号および同第6,056,959号;WO 00/63395;国際公報番号 WO 02/28905およびWO 02/28904;Gordonら(1988)J.Immunol.140:1425;Valleら(1989)Eur.J.Immunol.19:1463;Clarkら(1986)PNAS 83:4494;Paulieら(1989)J.Immunol.142:590;Gordonら(1987)Eur.J.Immunol.17:1535;Jabaraら(199O)J.Exp.Med.172:1861;Zhangら(199I)J.Immunol.146:1836; Gascanら(1991)J.Immunol.147:8;Banchereauら(1991)Clin.Immunol.Spectrum 3:8;およびBanchereauら(1991)Science 251:70(これらのすべてが、本明細書に参照として組み込まれている)におけるB細胞抗原に割り当てられたセクションを参照のこと。
【0097】
上で述べたように、用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、キメラ抗体を包含する。「キメラ」抗体は、最も好ましくは、組換えデオキシリボ核酸法を使用して誘導され、ヒト(免疫学的に「関連のある」種、例えばチンパンジー、を含む)と非ヒトの両方の成分を含む抗体と解釈する。従って、キメラ抗体の定常領域は、最も好ましくは、天然ヒト抗体の定常領域と実質的に同一であり、キメラ抗体の可変領域は、最も好ましくは非ヒト源由来のものであり、対象となる抗原(CD40)に対する望ましい抗原特異性を有する。前記非ヒト源は、CD40抗原に対する抗体を産生させるために使用することができる任意の脊椎動物源であり得る。そうした非ヒト源としては、齧歯動物(例えば、ウサギ、ラット、マウスなど;例えば、本明細書に参照として組み込まれている米国特許第4,816,567号参照)および非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など;例えば、本明細書に参照として組み込まれている、米国特許第5,750,105号および同第5,756,096号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
上で述べたように、用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、ヒト化抗体を包含する。「ヒト化された」とは、非ヒト免疫グロブリン配列に由来する最小限の配列を含有する形態の抗体を意味する。殆どの部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(相補性決定領域またはCDRとしても知られている)からの残基が、望ましい特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。「相補性決定領域」というフレーズは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性および特異性を協力して規定するアミノ酸配列を指す。例えば、Chothiaら(1987)J.MoI.Biol.196:901−917;Kabatら(1991)U.S.Dept.of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242参照)。「定常領域」というフレーズは、エフェクター機能を付与する抗体分子の部分を指す。ヒト疾患の療法において使用するための非免疫原性抗体の生産に向た以前の研究では、マウス定常領域が、ヒトと定常領域によって置換された。被験体ヒト化細胞の定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来するものであった。しかし、これらのヒト化抗体は、ヒトにおいて望ましくない、潜在的に危険な免疫反応を惹起する場合があり、親和性が失われていた。
【0099】
ヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法(Jonesら(1986)Nature 321:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyenら(1988)Science 239:1534−1536)に従って、ヒト抗体の対応する抗体を齧歯動物または突然変異齧歯動物CDRまたはCDR配列で置換することにより、行うことができる。米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、同第5,859,205号(本明細書に参照として組み込まれている)も参照。場合によっては、ヒト免疫グロブリンの1つ以上の可変領域のフレームワーク領域内の残基が対応する非ヒト残基によって置換される(例えば、米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号および同第6,180,370号参照)。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においておよびドナー抗体において見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに洗練するために(例えば、所望の親和性を得るために)行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つ、の可変ドメインの実質的にすべてを含むであろう(この場合、超可変領域のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、ならびにフレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である)。ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域、の少なくとも一部分も含むであろう。さらなる詳細については、Jonesら(1986)Nature 331:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−329;およびPresta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(本明細書に参照として組み込まれている)を参照のこと。従って、そうした「ヒト化」抗体は、無損傷ヒト可変ドメインより実質的に少ないドメインが、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている抗体を包含し得る。実際には、ヒト化抗体は、典型的に、一部のCDR残基およびことによると一部のフレームワーク残基が齧歯動物抗体における類似の部位からの残基によって置換されているヒト化抗体である。例えば、米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、同第5,859,205号参照。ヒト化抗体、および所定の抗原に対する親和性が改善されたヒト化抗体の生産技術が開示されている、米国特許第6,180,370号および国際公報番号WO 01/27160も参照のこと。
【0100】
ヒト化抗CD40抗体は、Human Engineering(登録商標)記述(カリフォルニア州、バークレーのXoma Ltd.)を使用して生産することもできる。
【0101】
ヒト化抗CD40モノクローナル抗体としては、マウス抗CD40抗体SGN−14(Franciscoら(2000)Cancer Res.60:3225−31)のヒト化形であるSGN−40(Taiら(2004)Cancer Res.64:2846−52;米国特許第6,838,261号)、および米国特許出願公開第2004/0120948号に開示されている抗体などの抗体が挙げられ、前記文献は、それら全体が本明細書に参照として取り入れられている。
【0102】
本発明は、不活性化された内因性免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を特徴とする非ヒト哺乳動物宿主、さらに特にトランスジェニックマウス、において生産される異種または修飾抗体を使用して実施することもできる。そうしたトランスジェニック動物において、宿主免疫グロブリンの軽および重サブユニットの発現に有能な内因性遺伝子を非機能性にし、類似のヒト免疫グロブリン遺伝子座で置換する。これらのトランスジェニック動物は、宿主免疫グロブリン軽または重サブユニットが実質的に不在の状態で、ヒト抗体を生産する。例えば、米国特許第5,877,397号および同第5,939,598号参照(本明細書に参照として組み込まれている)。
【0103】
従って、一部の実施形態において、CD40に対する完全ヒト抗体は、例えば、トランスジェニックマウスに免疫することによって得られる。あるそうしたマウスは、XenoMouse(登録商標)技術(カリフォルニア州、フリーモントのAbgenix)を使用して得られ、米国特許第6,075,181号、同第6,091,001号および同第6,114,598号(これらのすべてが、本明細書に参照として組み込まれている)に開示されている。例えば、CHIR−12.12抗体を生産するために、ヒトIgG1重鎖遺伝子座およびヒトκ軽鎖遺伝子座について遺伝形質転換されたマウス、ヒトCD40を発現するSf9細胞で免疫した。マウスを他のアイソタイプについて遺伝形質転換することもできる。本発明の方法において有用な完全ヒト抗CD40抗体は、CHIR−12.12モノクローナル抗体によって示されるものに類似した結合特性を特徴とする。
【0104】
上で述べたように、用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、抗原に結合することができる抗体フラグメントも包含する。「抗体フラグメント」は、無損傷抗体の一部分、好ましくは、その無損傷抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab、F(ab’)2、およびFvフラグメント;二重特異性抗体;線状抗体(Zapataら(1995)Protein Eng.10:1075−1062);1本鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント(それぞれが、単一抗原結合部位を有する)、および「Fc」フラグメント(その名前は、容易に結晶化するその能力を反映している)を生じさせる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができるF(ab’)2フラグメントを生じさせる。
【0105】
「Fv」は、完全抗原認識および結合部位を含有する最小抗体フラグメントである。この領域は、緊密な、非共有結合性の会合状態にある1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの二量体から成る。この構造では、それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH−VL二量体の表面の抗原結合部位を規定している。集合的に、6のCDRが、抗体に抗原特異性をもたらす。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含む、Fvの半分)であっても、抗原を認識し、全結合部位より低い親和性でではあるが、抗原に結合する能力を有する。
【0106】
Fabフラグメントは、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一定常ドメイン(CH1)も含有する。Fabフラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での少数の残基の付加が、Fab’フラグメントと異なる。Fab’−SHは、定常領域のシステイン残基(単数または複数)が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書における呼称である。Fab’フラグメントは、F(ab’)2フラグメントの重鎖ジスルフィド架橋を還元することによって生成される。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも公知である。
【0107】
抗CD40抗体のフラグメントは、完全長抗体の望ましい親和性を保持する限り、本発明の方法での使用に好適である。従って、例えば、抗CD40抗体のフラグメントは、CD40抗原に結合する能力を保持するであろう。そうしたフラグメントは、対応する完全長抗体に類似した特性を特徴とする。従って、例えば、完全長アンタゴニスト抗CD40抗体のフラグメントは、好ましくは、ヒト細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合することができるであろう。そして、ヒトCD40発現性細胞上のCD40抗原に結合すると、有意なアゴニスト活性はなく、アンタゴニスト活性を示す。そうしたフラグメントを、本明細書では、「抗原結合性」フラグメントと呼ぶ。本発明の方法において使用するための抗CD40抗体のフラグメントは、好ましくは、単数または複数の適切なFcRに結合する能力も保持しているであろう。従って、例えば、抗CD40抗体のフラグメントは、FcγRIIIaに結合する能力を保持し得る。従って、例えば、完全長抗CD40抗体のフラグメントは、細胞表面CD40抗原に特異的に結合することができてよく、ナチュラルキラー(NK)細胞などのヒトエフェクター細胞上のFcγRIIIaに結合することができてもよい。そうしたフラグメントを、本明細書では、「FcR結合性」フラグメントと呼ぶ。そうしたフラグメントは、一般に、重鎖の定常領域の少なくとも一部を含むであろう。
【0108】
抗体フラグメントを生産するための様々な技術が開発された。伝統的には、これらのフラグメントは、無損傷抗体のタンパク質分解性消化によって誘導された(例えば、Morimotoら(1992)Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)、およびBrennanら(1985)Science 229:81参照)。しかし、今ではこれらのフラグメントを組換え宿主細胞によって直接生産することができる。例えば、上で論じた抗体ファージライブラリから抗体フラグメントを単離することができる。あるいは、Fab’−SHフラグメントを大腸菌から直接回収し、化学的にカップリングさせて、F(ab’)2フラグメントを形成することができる(Carterら(1992) Bio/Technology 10:163−167)。もう1つのアプローチによると、F(ab’)2フラグメントは、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。抗体フラグメントを生産するための他の技術は、当業者には明らかであろう。
【0109】
抗体の好適な抗原結合フラグメントは、完全長抗体の一部分、一般には、その抗原結合または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、F(ab’)2、およびFvフラグメントならびに1本鎖抗体分子が挙げられるが、これらに限定されない。「Fab」は、軽鎖と重鎖の一部とから成る免疫グロブリンの一価抗原結合フラグメントを意味する。F(ab’)2は、両方の軽鎖と両方の重鎖の一部とを含有する免疫グロブリンの二価抗原結合フラグメントを意味する。「1本鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVHおよびVLドメインを含むフラグメントを意味する(この場合、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する)。例えば、米国特許第4,946,778号、同第5,260,203号、同第5,455,030号および同第5,856,456号参照(本明細書に参照として組み込まれている)。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それによって、sFvは、抗原結合のために望ましい構造を形成することができる。sFvの論評については、Pluckthun (1994) in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol.113,ed.Rosenburg and Moore(Springer−Verlag,New York),pp.269−315を参照のこと。本明細書において下で説明するように、本明細書に開示するアンタゴニスト抗CD40抗体の抗原結合フラグメントを細胞毒素に共役して、ターゲット細胞を死滅させることもできる。
【0110】
本発明の一部の実施形態において、抗CD40抗体は、アンタゴニスト抗CD40抗体である。そうした抗体は、ヒトB細胞などのヒト細胞の表面に提示されたCD40に結合したとき、有意なアゴニスト活性を生じさせない。一部の実施形態において、ヒト細胞の表面に提示されたCD40へのそれらの結合は、結果として、これらのヒト細胞の増殖および分化を阻害する。本発明の方法において使用するために好適な抗CD40抗体は、細胞表面CD40抗原を発現する正常および悪性ヒト細胞に対してアンタゴニスト活性を示すことができる抗体を含む。
【0111】
「アゴニスト活性」は、ある物質がアゴニストとして機能することを意味する。アゴニストは、細胞上の受容体と化合し、その受容体の天然リガンドによって開始されるのと同様または同じである反応または活性を開始させる。CD40のアゴニストとしては、次の反応のうちのいずれかまたはすべてが挙げられるが、それらに限定されない:B細胞増殖および/または分化;ICAM−1、E−セレクチン、VCAMなどのような分子による細胞間接着のアップレギュレーション;IL−1、IL−6、IL−8、IL−12、TNFなどのような前炎症性サイトカインの分泌;TRAF(例えば、TRAF2および/またはTRAF3)、MAPキナーゼ、例えばNIK(NF−κB誘導性キナーゼ)、I−カッパB(IKK α/β)、転写因子FN−κB、RasおよびNEK/ERK経路、PI3K/AKT経路、P38MAPK経路などのような経路によるCD40受容体を通したシグナル伝達;XIAP、mcl−1、bcl−xなどのような分子による抗アポトーシスシグナルの伝達;Bおよび/またはT細胞記憶生成;B細胞抗体生産;B細胞アイソタイプスイッチング、MHCクラスIIおよびCD80/86の細胞表面発現のアップレギュレーションなど。
【0112】
「有意な」アゴニスト活性は、B細胞反応アッセイにおいて測定され、天然物質または陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性より少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を超えるアゴニスト活性を意味する。好ましくは、「有意な」アゴニスト活性は、B細胞反応アッセイにおいて測定して、天然物質または陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性より少なくとも二倍を超えるまたは少なくとも3倍を超えるアゴニスト活性である。従って、例えば、対象となるB細胞反応が、B細胞増殖である場合、「有意な」アゴニスト活性は、天然物質または陰性対照によって誘導されるB細胞増殖レベルより少なくとも2倍を超えるまたは少なくとも3倍を超えるB細胞増殖レベルの誘導であろう。1つの実施形態において、C40に結合しない非特異的免疫グロブリン、例えばIgG1は、陰性対照として役立つ。「有意なアゴニスト活性がない」物質は、B細胞反応アッセイにおいて測定して、天然物質または陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性の約25%以下、好ましくは、天然または陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性の、約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%以下、またさらには約0.1%以下のアゴニスト活性を示すであろう。
【0113】
「アンタゴニスト活性」は、その物質がアンタゴニストとして機能することを意味する。CD40のアゴニストは、アゴニストリガンド、特にCD40L、へのCD40受容体の結合によって誘導される任意の反応の誘導を防止または減少させる。アンタゴニストは、アゴニスト結合に対する反応のいずれか1つ以上の誘導を、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、好ましくは40%、45%、50%、55%、60%、さらに好ましくは70%、80%、85%、および最も好ましくは90%、95%、99%または100%減少させることができる。抗CD40治療薬、例えば、抗CD40抗体、のCD40リガンド結合特異性およびアンタゴニスト活性を測定するための方法は、当該技術分野において公知であり、標準的な競合結合アッセイ、B細胞による免疫グロブリン分泌をモニターするためのアッセイ、B細胞増殖アッセイ、Banchereau様B細胞増殖アッセイ、抗体生産についてのT細胞ヘルパーアッセイ、B細胞増殖の共刺激のアッセイ、およびB細胞活性化マーカーのアップレギュレーションについてのアッセイを含むが、これらに限定されない。例えば、WO 00/75348および米国特許第6,087,329号(本明細書に参照として組み込まれている)に開示されているようなアッセイを参照のこと。WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294WOも参照のこと(これらのそれぞれの内容は、それら全体が、本明細書に参照として組み込まれている)。
【0114】
アゴニスト活性のアンタゴニスト/欠如は、CHIR−12.12がアゴニスト活性を欠くことを証明するアッセイによって評価することができる。好適なアッセイは、US 5677165(Chiron Corporation)に記載されているアッセイに示されている。
【0115】
本発明の1つの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体には、1つの細胞の反応に関して有意なアゴニスト活性がない。本発明のもう1つの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体には、1つより多くの細胞の反応(例えば、増殖および分化、または増殖、分化、およびB細胞について、抗体生産)のアッセイにおいて有意なアゴニスト活性がない。
【0116】
特に対象となるのは、ヒトB細胞上のCD40抗原に結合したとき、本明細書において定義するような有意なアゴニスト活性がなく、アンタゴニスト活性を示す、アンタゴニスト抗CD40抗体である。本発明の一つの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体には、1つのB細胞反応に関して有意なアゴニスト活性がない。本発明のもう1つの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体には、1つより多くのB細胞反応(例えば、増殖および分化、または増殖、分化、および抗体生産)のアッセイにおいて有意なアゴニスト活性がない。
【0117】
当該技術分野において公知の任意のアッセイを使用して、抗CD40抗体が1つ以上のB細胞反応のアンタゴニストとして作用するかどうかを判定することができる。一部の実施形態において、抗CD40抗体は、B細胞増殖、B細胞分化、抗体生産、細胞間接着、B細胞記憶生成、アイソタイプスイッチング、MHCクラスIIおよびCD80/86の細胞表面発現のアップレギュレーション、ならびにIL−8、L−12およびTNFなどの前炎症性サイトカインの分泌から成る群より選択される少なくとも1つのB細胞反応のアンタゴニストとして作用する。特に対象となるのは、ヒトB細胞の表面のヒトCD40抗原に結合したときにB細胞増殖に対して有意なアゴニスト活性がない、アンタゴニスト抗CD40抗体である。
【0118】
1つのそうした実施形態において、抗CD40抗体は、B細胞増殖アッセイにおいて測定すると、可溶性または細胞表面CD40Lによって誘導されるB細胞増殖のアンタゴニストである。好適なB細胞増殖アッセイは、当該技術分野において公知である。好ましくは、アンタゴニスト抗CD40抗体は、天然物質または陰性対照によって誘導されるB細胞増殖の約25%以下、好ましくは、天然物質または陰性対照によって誘導されるB細胞増殖の約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%以下、またさらには約0.1%以下のレベルで、B細胞増殖を刺激する。
【0119】
他の実施形態において、抗CD40抗体は、B細胞増殖に関して測定すると、別の抗CD40抗体、例えばS2C6抗CD40抗体、によって誘導されるB細胞増殖のアンタゴニストであり、アンタゴニスト抗CD40抗体の存在下で他の抗CD40抗体によって刺激されるB細胞増殖レベルは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下で他の抗CD40抗体によって誘導されるB細胞増殖の約25%以下(すなわち、少なくとも75%阻害)、好ましくは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下で他の抗CD40抗体によって誘導されるB細胞増殖の約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%以下、まさらには約0.1%以下である。
【0120】
さらに他の実施形態において、抗CD40抗体は、B細胞活性化アッセイにおいて測定すると、細胞株EL4B5によって誘導されるB細胞増殖のアンタゴニストであり、アンタゴニスト抗CD40抗体の存在下でEL4B5細胞によって刺激されるB細胞増殖レベルは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下でこの細胞株によって誘導されるB細胞増殖の約25%以下(すなわち、少なくとも75%阻害)、好ましくは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下でこの細胞株によって誘導されるB細胞増殖の約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%以下、またさらには約0.1%以下である。
【0121】
さらに他の実施形態において、抗CD40抗体は、B細胞による抗体生産についてのヒトT細胞ヘルパーアッセイにおいて測定すると、ヒトB細胞によるヒトT細胞誘導抗体生産のアンタゴニストである。このように、アンタゴニスト抗CD40抗体の存在下でT細胞によって刺激されるB細胞によるIgG抗体生産、IgM抗体生産、またはIgGとIgMの両方の抗体生産のレベルは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下でT細胞によって刺激されるB細胞によるそれぞれの抗体生産の約50%以下(すなわち、少なくとも75%阻害)、好ましくは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下でT細胞によって刺激されるB細胞によるそれぞれの抗体生産の約25%、20%、15%、10%、5%、1%、0.5%以下、または約0.1%以下でさえある。さらなるアンタゴニスト抗CD40抗体としては、5D12、3A8および3C6と呼ばれるモノクローナル抗体が挙げられ、これらは、それぞれ、ATCCアクセッション番号HB 11339、HB 12024およびHB 11340を有するハイブリドーマによって分泌される。例えば、米国特許第6,315,998号参照(その全体が本明細書に参照として組み込まれている)。
【0122】
アンタゴニスト抗CD40抗体は、当該技術分野において公知である。例えば、米国特許出願公開番号20020142358および20030059427(それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)に開示されている、F4−465と称するハイブリドーマによって生産されるヒト抗CD40抗体を参照のこと。F4−465は、HACマウス(Kuroiwaら(2000)Nature Biotech.10:1086(2000))から得られたものであり、従って、ヒトラムダ軽鎖を発現する。WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294WOも参照(これらのそれぞれの内容は、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)。
【0123】
アンタゴニスト活性に加えて、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、好ましくは、ターゲット細胞に対するもう1つの作用メカニズムを有するであろう。例えば、抗CD40抗体は、好ましくは、ADCC活性を有するであろう。あるいは、抗CD40抗体の可変領域を、ADCC活性を有する別の抗体アイソタイプを用いて発現させることができる。本明細書の他の箇所でさらに説明するように、抗CD40抗体の天然形、組換え形または抗原結合フラグメントを、細胞毒素、治療薬または放射性金属イオンもしくは放射性同位体に共役することも可能である。
【0124】
本明細書の他の箇所で説明するように、本発明者らは、他の抗体とは異なり、CHIR−12.12などの抗CD40抗体が、ヒト患者のナチュラルキラー(NK)細胞上の2つのFcγRIIIaアミノ酸158アロタイプ(VまたはF)のいずれかへの結合により、CD40発現性ターゲット細胞の効力のある抗体依存性細胞障害(ADCC)を媒介することができるという驚くべき発見をした。従って、CHIR−12.12などの抗CD40抗体は、FcγRIIIa−158Vに関してホモ接合性(遺伝子型V/V)のヒト患者に加えて、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に使用することができる。本発明は、NHLにおけるリツキシマブの臨床活性が患者のFcγRIIIa遺伝子型と相関することは証明されているため、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して反応しない炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に特に有利である。
【0125】
従って、本発明の方法において使用するために特に好ましい抗CD40抗体は、アンタゴニスト活性に加えて、FcγRIIIaを発現するナチュラルキラー細胞(NK細胞)などのヒトエフェクター細胞によるCD40発現性細胞のADCCを媒介することができるものである。本明細書の他の箇所でさらに説明するように、FcγRIIIa−158FとFcγRIIIa−158Vの両方に高い親和性で結合することができる抗CD40抗体が、最も好ましい。
【0126】
特に好ましい抗CD40抗体は、WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294WO(これらのそれぞれの内容は、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)に開示されているものである。
【0127】
本発明にとって特に関心が高いのは、WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294WOに記載されているCHIR−12.12モノクローナル抗体の結合特性を共有するアンタゴニスト抗CD40抗体である。そうした抗体としては、次のものが挙げられるが、それらに限定されない:
a)モノクローナル抗体CHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号2に示す配列、配列番号4に示す配列、配列番号5に示す配列、配列番号2および配列番号4に示す両方の配列、ならびに配列番号2および配列番号5に示す両方の配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号1に示す配列、配列番号3に示す配列、ならびに配列番号1および配列番号3に示す両方の配列から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
e)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
f)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
i)前記項目a)のモノクローナル抗体または前記項目c)−h)のいずれか1項目のモノクローナル抗体(この場合、前記抗体は、組換え生産される);ならびに
j)前記項目a)−i)のいずれか1項目のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体(この場合、前記フラグメントは、ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する)。
【0128】
モノクローナル抗体CHIR−12.12は、本発明の方法において使用するために特に好ましい。
【0129】
モノクローナル抗体CHIR−12.12は、WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294に詳細に記載されている。CHIR−12.12抗体は、ハイブリドーマ細胞株153.8E2.D10.D6.12.12(細胞株12.12と呼ぶ)から生産されるIgG1アイソタイプの完全ヒト抗CD40モノクローナル抗体である。この細胞株は、ヒトIgG1重鎖遺伝子座およびヒトκ鎖遺伝子座を含有する、免疫処置された異種型マウス(XenoMouse(登録商標)technology;Abgenix;カリフォルニア州、フリーモント)からの脾臓細胞を使用して作られた。それらの脾臓細胞は、マウス骨髄腫SP2/0細胞(Siera BioSource)と融合された。結果として生じたハイブリドーマは。数回サブクローニングされて、安定なモノクローナル細胞株12.12が作られた。本明細書の他の箇所で説明するように、ヒト免疫グロブリンについて遺伝形質転換したマウスを使用して、本発明の方法での使用に好適な他の抗体を同様に作製することができる。
【0130】
CHIR−12.12モノクローナル抗体は、ELISA型アッセイにおいて可溶性CD40に結合し、CD40リガンドの細胞表面CD40への結合を防止し、ならびにフローサイトメトリーアッセイによって判定すると、前に結合したCD40リガンドを置換する。抗体CHIR−5.9およびCHIR−12.12は、CD40への結合について互いに競合するが、15B8[2000年10月2日に出願された「Human Anti−CD40 Antibodies」と題する米国特許仮出願番号60/237,556、および2001年10月2日に出願され(代理人整理番号PP16092.003)、WO 2002/028904として公開された、同じく「Human Anti−CD40 Antibodies」と題するPCT国際出願番号PCT/US01/30857(これらの両方は、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)に記載されている抗CD40モノクローナル抗体]とはしない。正常なヒト被験者からのB細胞の増殖に対する効果についてインビトロで検査すると、CHIR−12.12は、アンタゴニスト抗CD40抗体として作用する。さらに、CHIR−12.12は、正常な被検者からのヒトリンパ球の強い増殖を誘導しない。この抗体は、抗体依存性細胞障害(ADCC)によりCD40発現性ターゲット細胞を死滅させることができる。ヒトCD40に対するCHIR−12.12の結合親和性は、Biacore(登録商標)アッセイによって判定すると、5×10−10Mである。
【0131】
CHIR−12.12抗体の可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を本明細書において提供する。より詳細には、mAb CHIR−12.12の軽鎖および重鎖のリーダー、可変および定常領域についてのアミノ酸配列を、配列番号2(mAb CHIR−12.12の軽鎖についての完全配列)、配列番号4(mAb CHIR−12.12の重鎖についての完全配列)、および配列番号5(配列番号4に示すmAb CHIR−12.12のについての重鎖の変異体についての完全配列;この場合、前記変異体は、配列番号4の位置153のアラニン残基に対するセリン置換を含む)に示す。mAb CHIR−12.12の軽鎖および重鎖をコードするヌクレオチド配列を、配列番号1(mAb CHIR−12.12の軽鎖についてのコーディング配列)および配列番号3(mAb CHIR−12.12の重鎖についてのコーディング配列)に示す。CHIR−12.12抗体を発現するハイブリドーマは、PTA−5543の特許寄託番号でATCCに寄託されている。
【0132】
本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、CHIR−12.12モノクローナル抗体とは異なるが、CDRを保持している抗体、および1つ以上のアミノ酸付加、欠失または置換を有する抗体を含む。本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、例えば、国際公開番号WO98/52976およびWO0034317(本明細書に参照として組み込まれている)に記載されているように生産することができる脱免疫抗体、特に、脱免疫アンタゴニスト抗CD40抗体であってもよい。このように、本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体の中の残基を修飾して、抗体をヒトに対して全くまたは然程免疫原性でないが、ヒトCD40発現性細胞に対するそれらのアンタゴニスト活性を保持しているようにし、この場合、そうした活性は、本明細書の他の箇所で述べるアッセイによって測定される。対象となる抗体、例えばアンタゴニスト抗CD40抗体もしくはアンタゴニスト抗CD40L抗体、またはそれらのフラグメントを含む融合タンパク質も本発明の範囲に包含され、これらの融合タンパク質は、当該技術分野において公知であるように、対応するポリヌクレオチドベクターから合成または発現させることができる。こうした融合タンパク質は、本明細書の他の箇所で述べるような抗体のコンジュゲーションに関連して説明する。
【0133】
対象となる結合特異性を有する任意の公知抗体は、例えば、特許公開番号EP 0983303 A1、WO 00/34317およびWO 98/52976(本明細書に参照として組み込まれている)に記載されている方法を使用して生成される配列変異を有し得る。例えば、CDR内の配列が、MHCクラスIIに結合する抗体を生じさせ、望ましくないヘルパーT細胞反応を誘発し得ることは証明されている。保存的置換により、抗体に結合活性を保持させ、しかし、望ましくないT細胞反応を誘発するその能力を喪失させることができる。いずれのそうした保存的または非保存的置換も、本明細書の他の箇所で述べるものなどの当該技術分野において認知されている方法を使用して行うことができ、結果として生じる抗体も本発明の方法において使用することができる。それらの変異抗体は、本明細書において説明する方法を使用して、特定の活性、例えばアンタゴニスト活性、親和性および特異性、についてルーチンテストすることができる。
【0134】
例えば、アンタゴニスト抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12モノクローナル抗体、のアミノ酸配列変異体は、対象となる抗体をコードするクローニングされたDNA配列における突然変異によって作製することができる。突然変異誘発法およびヌクレオチド配列交替は、当該技術分野において周知である。例えば、 WalkerおよびGaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York);Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.ScL USA 82:488−492;Kunkelら(1987)Methods Enzymol 154:367−382;Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor,New York);米国特許第4,873,192号;およびそれらに引用されている参考文献(本明細書に参照として組み込まれている)を参照のこと。対象となるポリペプチドの生物活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Atlas of Protein Sequence and Structure(ワシントンD.C.のNatl.Biomed.Res.Found.)(本明細書に参照として組み込まれている)におけるDayhoffら(1978)のモデルにおいて見出すことができる。保存的置換、例えば、あるアミノ酸の類似した特性を有する別のアミノ酸での置換が好ましい場合がある。保存的置換の例としては、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、およびPhe⇔Trp⇔Tyrが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
対象となる抗体の変異体、例えば、対象となるアンタゴニスト抗CD40抗体ポリペプチド、を構築する際、変異体が、望ましい活性、すなわち類似した結合親和性、を継続して有するように、ならびにアンタゴニスト抗CD40抗体の場合には、ヒト細胞の表面で発現されたヒトCD40抗原に特異的に結合することができ、ヒトCD40発現性細胞上のCD40抗原に結合したときに有意なアゴニスト活性がなく、アンタゴニスト活性を示すように、修飾することができる。明らかに、変異ポリペプチドをコードするDNAになされるいずれの突然変異も、リーディングフレーム以外の配列で行われてはならず、好ましくは、二次mRNA構造を生成し得る相補領域を作らないであろう。EP特許出願公開第75,444号参照。
【0136】
加えて、抗体(例えばアンタゴニスト抗CD40抗体)の定常領域は、多数の方法で、エフェクター機能を改変するように突然変異させることができる。例えば、Fc受容体に結合する抗体を最適化するFc突然変異を開示している、米国特許第6,737,056号B1および米国特許出願公開第2004/0132101号A1を参照のこと。
【0137】
好ましくは、参照抗体、例えばアンタゴニスト抗CD40抗体、の変異体は、その参照抗体、例えばアンタゴニスト抗CD40抗体分子、例えば本明細書に記載するCHIR−12.12.モノクローナル抗体、のアミノ酸配列と、またはその参照抗体分子のより短い部分と、少なくとも70%または75%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%または85%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。さらに好ましくは、それらの分子は、少なくとも96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する。本発明のために、配列同一性パーセントは、12のギャップ開始ペナルティーおよび2のギャップ伸張ペナルティー、62のBLOSUMマトリックスでのアフィンギャップ検索を使用するSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムを用いて決定する。このSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、Smith and Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482−489において教示されている。変異体は、例えば、1から15ほどの少数のアミノ酸残基、1から10ほどの少数、例えば6−10、のアミノ酸残基、5ほどの少数の、4、3、2または1ほどもの少数のアミノ酸残基が、参照抗体、例えばアンタゴニスト抗CD40抗体、と異なる。
【0138】
2つのアミノ酸配列の最適なアラインメントに関して、変異体アミノ酸配列の連続セグメントは、参照アミノ酸配列を基準にして追加のアミノ酸残基を有することがあり、またはアミノ酸残基の欠失を有することがある。参照アミノ酸配列との比較に使用される連続セグメントは、少なくとも20の隣接するアミノ酸残基を含み、30、40、50以上のアミノ酸残基であり得る。保存的残基置換またはギャップに関連した配列同一性の補正を行うことができる(Smith−Waterman相同性検索アルゴリズム参照)。
【0139】
特にターゲット細胞上のCD40抗原に結合したときの、CD40に特異的に結合することができ、アンタゴニストを保持することができるポリペプチドの正確な化学的構造は、多数の要因に依存する。イオン化可能なアミノおよびカルボキシル基が分子内に存在する場合、特定のポリペプチドを酸性もしくは塩基性塩として、または中性形態で得ることができる。好適な環境条件に置かれたときにそれらの生物活性を保持している、すべてのそうした製剤が、本明細書において使用するアンタゴニスト抗CD40抗体の定義に包含される。さらに、前記ポリペプチドの主アミノ酸配列は、糖部分を使用する誘導体化(グリコシル化)により、または脂質、リン酸塩、アセチル基などのような他の補足分子により、増やすことができる。糖類とのコンジュゲーションによって増やすこともできる。そうした増加の一定の態様は、生産宿主の後翻訳プロセッシングシステムによって遂行され、他のそうした修飾をインビトロで導入することもできる。いずれにせよ、そうした修飾は、抗CD40抗体のアンタゴニスト特性が破壊されない限り、本明細書において使用する抗CD40抗体の定義に包含される。そうした修飾は、様々なアッセイにおいて、そのポリペプチドの活性を強化または減少させることでその活性に量的にまたは質的に影響し得ると予想される。さらに、鎖内の個々のアミノ酸残基を酸化、還元または他の誘導体化によって修飾することができ、ならびにポリペプチドを切断して、活性を保持するフラグメントを得ることができる。アンタゴニスト活性を破壊しないそうした改変により、そのポリペプチド配列が、本明細書において使用する抗CD40抗体の定義から除かれることはない。
【0140】
当該技術分野は、ポリペプチド変異体の作製および使用に関する実質的なナガイダンスを提供している。抗CD40抗体変異体を作製する際、当業者は、天然タンパク質ヌクレオチドまたはアミノ酸配列へのどの修飾が、本発明の方法において使用する医薬組成物の治療活性成分としての使用に好適な変異体を生じさせることになるかを容易に決定することができる。
【0141】
本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、好ましくは、次のインビトロおよび/またはインビボ生物活性のうちの少なくとも1つを有する:T細胞により刺激される正常ヒト末梢B細胞による免疫グロブリン分泌の阻害;CD40L発現性細胞または可溶性CD40リガンド(sCD40L)により刺激される正常ヒト末梢B細胞の生存および/または増殖の阻害;ジャーカットT細胞により刺激される正常ヒト末梢B細胞の生存および/または増殖の阻害;sCD40Lまたは固相CD40Lにより刺激される任意の細胞における「生存」抗アポトーシス細胞内シグナルの阻害;ならびにsCD40Lまたは固相CD40Lとのライゲーション、CD40保有ターゲット細胞またはCD40に対する同族リガンドを保有する細胞(T細胞およびB細胞を含むが、これらに限定されない)の欠失、アネルギーおよび/または寛容性導入、CD4+CD25+調節T細胞の増幅または活性化の導入(例えば、donor alloantigen−specific tissue rejection via CD40−CD40L interference,van Maurikら(2002)J.Immunol.169:5401−5404参照)、任意のメカニズム(抗体依存性細胞媒介性障害(ADCC)、補体依存性細胞障害(CDC)、増殖のダウンレギュレーション、および/またはターゲット細胞におけるアポトーシス)による細胞障害、ターゲット細胞サイトカイン分泌および/または細胞表面分子発現の調整、ならびにこれらの組み合わせに基づく、任意の細胞におけるCD40シグナル伝達の阻害。
【0142】
そうした生物活性についてのアッセイは、本明細書において説明するように、ならびに2003年11月4日、2003年11月26日および2004年4月27日に出願され、それぞれ、米国特許出願番号60/517,337(代理人整理番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人整理番号PP20107.002(035784/271525))および60/565,710(代理人整理番号PP20107.003(035784/277214))を付与された「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」と題する仮出願;ならびに2004年11月4日に出願された、同じく「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」と題する、WO 2005/044854として公開された国際特許出願番号PCT/US2004/037152(代理人整理番号PP20107.004 (035784/282916))(これらのそれぞれの内容は、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)に記載されているように行うことができる。Schultzeら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci USA 92:8200−8204;Dentonら(1998)Pediatr.Transplant.2:6−15;Evansら(2000)J.Immunol.164:688−697;Noelle(1998)Agents Actions Suppl.49:17−22;Ledermanら(1996)Curr.Opin.Hematol 3:77−86;Coliganら(1991)Current Protocols in Immunology 13:12;Kwekkeboomら(1993)Immunology 79:439−444;および米国特許第5,674,492号および同第5,847,082号(本明細書に参照として組み込まれている)に記載されているアッセイも参照のこと。
【0143】
本明細書において特定するCD40抗原エピトープに特異的なアンタゴニスト抗CD40抗体を検出するための代表的なアッセイは、「競合結合アッセイ」である。競合結合アッセイは、標識された既知リガンドのその特異的抗体への結合を阻害する能力によって未知のものを検出および定量する血清学的アッセイである。これは、競合阻害アッセイとも呼ばれる。代表的な競合結合アッセイでは、標識されたCD40ポリペプチドを、例えば、本発明のモノクローナル抗体の1つ以上のエピトープに対して産生させたモノクローナル抗体と併用で、サンプル中の候補抗体により沈殿させる。対象となるエピトープと特異的に反応する抗CD40抗体は、CD40タンパク質、または関心のあるCD40タンパク質の特定のエピトープを含むタンパク質のフラグメントに対して作製された一連の抗体をスクリーニングすることによって同定することができる。例えば、ヒトCD40について、対象となるエピトープとしては、ヒトCD40のショート・アイソフォーム((GenBankアクセッション番号NP_690593参照)配列番号9に記載する配列によってコードされている、配列番号10に記載するもの;GenBankアクセッション番号NM_152854も参照)の、またはヒトCD40のロング・アイソフォーム(ゲンバンクアクセッション番号GAA43045およびNP_001241参照、配列番号11に記載する配列によってコードされている、配列番号12に記載するもの;GenBankアクセッション番号X60592およびNM_001250参照)の線状および/または非線状アミノ酸残基を含むエピトープが挙げられる。あるいは、以前に同定された好適なアンタゴニスト抗CD40抗体との競合結合アッセイを使用して、その以前に同定された抗体に匹敵するモノクローナル抗体を選択することができよう。
【0144】
そうしたイムノアッセイにおいて用いる抗体は、標識されてよく、または非標識であってもよい。非標識抗体は、凝集反応において用いることができ、標識抗体は、多種多様な標識を利用する多種多様なアッセイにおいて用いることができる。抗CD40抗体と対象となるエピトープとの抗体−抗原複合体の形成の検出は、検出可能な物質を抗体に取り付けることによって助長することができる。好適な検出手段としては、放射性核種、酵素、補酵素、蛍光剤、化学発光剤、色原体、酵素基質または補因子、酵素阻害剤、補欠分子団複合体、遊離ラジカル、粒子、色素などのような標識の使用が挙げられる。好適な酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;好適な補欠分子団複合体の例としては、ストレプタビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;蛍光物質の例は、ルミノールであり;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ;ならびに好適な放射性物質の例としては、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。そうした標識された試薬を、様々な周知アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、例えばELISA、蛍光イムノアッセイなど、において使用することができる。例えば、米国特許第3,766,162号、同第3,791,932号、同第3,817,837号および同第4,233,402号参照。
【0145】
増加したADCC活性を有する抗体を遺伝子工学で作ることもできる。特に、CH2ドメインのカルボキシ末端側半分は、FcRIII受容体によって媒介されるADCCにとて非常に重要である。CH2およびヒンジ領域は、エフェクター機能において役割を有するので、余分なCH2および/またはヒンジ領域を含有する一連の多ドメイン抗体を作り、エフェクター効力の任意の変化について調査することができる(Greenwood,J.,Gorman,S.D.,Routledge,E.G.,Lloyd,LS.& Waldmann,H.,Ther Immunol.1994 Oct;1(5):247−55参照)。代替アプローチは、例えばキメラIgのH鎖にシステインを遺伝子工学で作ることにより二量体を作ることによって、遺伝子工学で余分なドメインを並行して作るアプローチであり得る(Shopes B.(1992)J.Immunol.1992 1;148(9):2918−22参照)。さらに、ADCC活性を増加させる変化は、Fc領域への突然変異の誘導(例えば、米国特許第6,737,065号B1参照)、フコシルトランスフェラーゼ欠損細胞株における細胞の発現(例えば、US2003/0115614参照)、または抗体グリコシル化に他の変化をもたらすこと(例えば、米国特許第6,602,684号参照)により、巧みに実行することができる。
【0146】
本発明は、特に、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))耐性患者における、さらに特に、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である者における、CD20発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に特に有利である。
【0147】
本明細書で用いる場合、「抗CD20抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、1本鎖抗体およびそれらのフラグメント、例えばFab、F(ab’)2、Fv、ならびに親抗CD20抗体の抗原結合機能を保持する他のフラグメントを含む、CD20細胞表面抗原を特異的に認識する任意の抗体を包含する。本発明の方法に関連して特に対象となるのは、IDEC−C2B8モノクローナル抗体(マサチューセッツ州、ケンブリッジのBiogen IDEC Inc.)によって示される結合特性を有する、抗CD20抗体またはそれらの抗原結合フラグメントである。
【0148】
一部の実施形態において、本発明の方法において使用する抗CD40抗体は、キメラ抗CD20モノクローナル抗体IDEC−C2B8より効力の高い治療活性を示し、この場合の治療活性は、適切な実験モデルにおいて等量のこれらの抗体を用いてアッセイする。IDEC−C2B8(カリフォルニア州、サンディエゴのIDEC Pharmaceuticals Corp.;商品名Rituxan(登録商標)で市販されており、リツキシマブとも呼ばれる)は、マウス抗CD20モノクローナル抗体、IDEC−2B8、から単離されたマウス可変領域とヒトIgG1およびカッパ定常領域を含有するキメラ抗CD20モノクローナル抗体である(Reffら(1994)Blood 83:435−445)。リツキシマブは、再発したB細胞低悪性度または濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療について認可されており、自己免疫疾患については臨床試験中である。リツキシマブと比較して優れた治療活性を有する抗体の発見は、炎症性疾患または自己免疫疾患のための治療方法を劇的に改善するであろう。
【0149】
下で説明するように、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、炎症およびアテローム性動脈硬化症、移植およびアルツハイマー病における活性について試験するために好適なモデルが存在する。
【0150】
例えば、SLE患者からの末梢血単核細胞(PMBC)をSCIDマウスに移植する、ヒト全身性エリテマトーデス(SLE)における効能についての試験。例えば、Duchosal et al.(1990)J.Exp.Med.172:985−8参照。SLE患者からSCIDマウスにPBMCを移入した後、治療が、自己抗原および自己抗体生産ならびに腎炎などの疾患発現に対するTリンパ球の反応に影響を及ぼすかどうかを判定する。
【0151】
マーモセットモンキー実験的自己免疫性脳炎(EAE)は、ヒト多発性硬化症のモデルである。例えば、Raineら(1999)Ann.Neurol.46:144−60、およびHartら(2004)Lancet Neurol.3:588−97に記載されているモデルを参照のこと。
【0152】
抗体は、CD40Lによって誘導される基質分解酵素の生産、組織因子発現、前炎症性サイトカイン、および接着分子のアップレギュレーションを阻害するそれらの能力について、インビトロで試験することができる。その後の研究では、ヒトCD40および/またはCD20を発現するトランスジェニックマウスを使用して、インビボで抗炎症活性を示す抗体の能力を試験している。例えば、Yasui(2002)Int.Immunol.14:319−29に記載されているモデルを参照のこと。
【0153】
抗体は、非ヒト霊長類モデルにおいて、移植拒絶反応を予防するそれらの能力について、試験することができる。カニクイザル同種移植腎レシピエントを抗体で治療して、追加の免疫抑制薬、例えば、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、コルチコステロイド、CTLA4−Igおよび抗Bリンパ球刺激抗体などを用いまたは用いずに移植片受容に対する効果を実証する。例えば、Weeら(1992)Transplantation 53:501−7に記載されているモデル参照。
【0154】
アルツハイマー病については、抗体を、ミクログリア活性化を阻止するそれらの能力について、インビトロで試験することができる。ヒトCD40および/またはCD20を発現し、アミロイド−ベータペプチドを過剰生産する、二重トランスジェニックマウスにおいて、抗体でのインビボ効能試験を行うことができる。例えば、Tanら(2002)Nat.Neurosci.5:1288−93に記載されているモデルを参照のこと。
【0155】
本発明の抗CD40抗体およびRituxan(登録商標)の「等量」は、重量ベースで同じまたはそれより少ないmg用量が投与されることを意味する。従って、抗CD40抗体が、そのモデルにおいて使用されるマウスの体重1kgにつき0.01mgで投与される場合、Rituxan(登録商標)も、そのマウス体重1kgにつき0.01mgで投与される。同様に、抗CD40抗体が、そのモデルにおいて使用されるマウスの体重1kgにつき0.1、1または10mgで投与される場合、Rituxan(登録商標)も、そのマウス体重1kgにつき、それぞれ、0.1、1または10mgで投与される。
【0156】
抗体効能のもう1つの相違は、NK細胞の存在下、インビトロでターゲット細胞の最大溶解を達成するために必要な抗体の濃度のインビトロでの測定である。例えば、本発明の抗CD40抗体は、Rituxan(登録商標)の1/2未満、好ましくは1/4未満および最も好ましくは1/10未満の濃度のEC50で、Daudi細胞の最大溶解に到達する。このタイプの測定は、本明細書中、実施例においても説明する。
【0157】
上で説明したアッセイにおいて等量のRituxan(登録商標)より有意に大きい効能を有することの恩恵を受ける抗CD40抗体としては、次のものが挙げられる:
a)モノクローナル抗体CHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号2に示す配列、配列番号4に示す配列、配列番号5に示す配列、配列番号2および配列番号4に示す両方の配列、ならびに配列番号2および配列番号5に示す両方の配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号1に示す配列、配列番号3に示す配列、ならびに配列番号1および配列番号3に示す両方の配列から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
e)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
f)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
i)前記項目a)のモノクローナル抗体または前記項目c)−h)のいずれか1項目のモノクローナル抗体(この場合、前記抗体は、組換え生産される);ならびに
j)前記項目a)−i)のいずれか1項目のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体(この場合、前記フラグメントは、ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する)。
【0158】
本発明は、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するための方法を提供し、この方法は、
a)CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および
b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定すること
を含み、
前記ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、前記炎症性疾患または自己免疫疾患を治療することができる。前記炎症性疾患または自己免疫疾患は、Rituxan(登録商標)での治療に難治性であってもよい。
【0159】
抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定したら、その人患者を抗CD40抗体で治療することができる。従って、この方法は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)と特定されたヒト患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与するさらなる段階を含み得る。
【0160】
当業者は、好適な診断キットを使用して、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するこの方法を、容易に行うことができる。このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な試薬を含むはずである。従って、本発明は、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するためのキットも提供し、このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む。好適なキットは、本明細書の他の箇所でより詳細に説明する。
【0161】
本発明は、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するための方法も提供し、この方法は、
a)CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および
b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定すること
を含み、
前記ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、前記炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に抗CD40抗体が選択される。前記炎症性疾患または自己免疫疾患は、Rituxan(登録商標)での治療に対して難治性であってもよい。
【0162】
炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療に抗CD40抗体療法が選択されたら、そのヒト患者を抗CD40抗体で治療することができる。従って、この方法は、(c)FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)と特定されたヒト患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与する、さらなる段階を含み得る。
【0163】
当業者は、好適な診断キットを使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するこの方法を、容易に行うことができる。このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な試薬を含むはずである。従って、本発明は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するためのキットも提供し、このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む。
【0164】
「抗CD40抗体で治療することができる」とは、ヒト患者(すなわち、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する個人)が、抗CD40抗体で治療されたとき、治療しようと努める炎症性疾患または自己免疫疾患に関して「陽性治療反応」(本明細書の他の箇所で定義するとおり)の恩恵を受けるであろうことを意味する。
【0165】
ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を、そのヒト患者から得た生体サンプルを使用して決定するための任意の方法が考慮される。
【0166】
例えば、本発明は、長さがヌクレオチド数10以上であり、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な配列である少なくとも1つのプローブを含むマイクロアレイを含む、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に使用するためのキットを提供する。標識されたRNAまたはDNAをそのアレイ上の相補プローブにハイブリダイズし、その後、レーザースキャニングによって検出する。そのアレイ上のそれぞれのプローブについてのハイブリダイゼーション強度を判定し、相対遺伝子発現レベルを表す定量値に変換する。当業者は、プローブの配列および長さについての選択を容易に行うことができる。FcγRIIIa−158FおよびVアロタイプをコードするヒト遺伝子およびmRNAのヌクレオチド配列は公知である。従って、当業者は、適切な実験条件下で、ターゲット配列のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定することができるプローブ(単数または複数)を選択することができる。
【0167】
機械合成法を使用するこれらのアレイの合成技術は、例えば、米国特許第5,384,261号(その全体が本明細書に参照として組み込まれている)に記載されている。平面のアレイ表面が好ましいが、アレイは、事実上いずれの形状の表面にも、または非常に多数の表面にでさえ作ることができる。アレイは、ビーズ、ゲル、ポリマー表面、繊維、例えば光ファイバー、ガラスまたは任意の他の好適な支持体上のペプチドまたは核酸であってもよい。米国特許第5,770,358号、同第5,789,162号、同第5,708,153号、同第6,040,193号および同第5,800,992号参照(これらのおのおのは、すべての目的で、その全体が本明細書に取り入れられている)。アレイは、包括的装置の診断または他の操作に備えるような様式でパッケージすることができる。例えば、米国特許第5,856,174号および同第5,922,591号参照(本明細書に参照として組み込まれている)。
【0168】
例えば、本発明は、FcγRIIIaのアミノ酸158をコードする遺伝子またはmRNAの領域のポリメラーゼ触媒増幅においてプライマーとして使用するために好適なオリゴヌクレオチドを含む、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に使用するためのキットも提供する。当業者は、プライマーの配列および長さの選択を容易に行うことができる。FcγRIIIa−158FおよびVアロタイプをコードするヒト遺伝子およびmRNAのヌクレオチド配列は公知である。従って、当業者は、適切な実験条件下でFcγRIIIのアミノ酸158をコードする遺伝子またはmRNAの領域を増幅することができるプライマーを選択することができる。その後、公知の方法を使用してその増幅配列の塩基配列を決定して、患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定することができる。
【0169】
ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するためのもう1つの方法は、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型に特有のDNAフラグメンテーションを検出する核酸に基づく方法の使用である。アガロースゲルでの電気泳動を使用して分解すると、それぞれのFcγRIIIa−158遺伝子型のDNAは、特有のパターンを有する。従って、本発明は、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な1つ以上の制限酵素を含む、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に使用するためのキットも提供する。好適な制限酵素は、当該技術分野において公知である(例えば、Koeneら、Blood,1997,Vol.90,No.3,p.110−1114参照)。
【0170】
本発明のキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するためのそのキットの使用方法を示す説示も含み得る。本キットは、例えば、緩衝剤、保存薬またはタンパク質安定剤も含み得る。本キットのそれぞれの成分は、通常、個々の容器に封入され、それらの様々な容器のすべてが、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するためのそのキットの使用方法を示す説示と共に、単一のパッケージ内に存在する。
【0171】
本発明は、本明細書の他の箇所で説明するような、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための薬物の製造における抗CD40抗体の使用を提供する。
【0172】
本発明の抗CD40抗体は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を予防または治療するために治療上有効である濃度で投与される。この目的を達成するために、当該技術分野において公知の様々な許容される担体および/または賦形剤を使用して、抗体を調合することができる。抗CD40抗体は、非経口投与経路によって投与することができる。典型的に、これらの抗体は、静脈内注射または皮下的注射、いずれかによって投与される。この投与を遂行する方法は、通常の当業者に公知である。
【0173】
静脈内投与は、好ましくは、約半時間から1時間から約10時間(1、2、3、4、5、6、7、8、9または10時間未満)の期間にわたって注入により行われる。その後の注入剤は、例えば、約1から約4時間、約1から約3時間、もしくは約1から約2時間、または1時間未満を含めて、約1時間未満から約6時間の期間にわたって投与することができる。あるいは、CHIR−12.12などの抗CD40抗体は、皮下投与することができる。
【0174】
本発明の医薬組成物は、その所期の投与経路に適合するように調合される。非経口用途に使用する溶液または懸濁液は、次の成分を含むことができる:滅菌希釈剤:例えば、注射用蒸留水、食塩溶液;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および張度を調整するための薬剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、またはガラスもしくはプラスチック製の多数回用量用バイアルに封入することができる。
【0175】
抗CD40抗体は、一般に、標準的な技術により、薬学的に許容される緩衝剤、例えば、滅菌食塩水、滅菌緩衝水、前述のものの組み合わせなど、の中に供給される。非経口投与できる薬剤を調製するための方法は、本明細書に参照として組み込まれているRemington’s Pharmaceutical Sciences(第18版;ペンシルバニア州、イートンのMack Publishing Company、1990)に記載されている。例えば、本発明の方法での使用に好適な安定化された抗体医薬製剤を記載しているWO 98/56418も参照のこと。
【0176】
当業者は、投与する少なくとも1つの抗CD40抗体の量を、過度の実験を伴うことなく、容易に決定することができる。少なくとも1つの抗CD40抗体の投与方法およびそれぞれの量に影響を及ぼす因子としては、疾患の重症度、疾患の履歴、および治療を受ける個人の年齢、身長、体重、健康および体調が挙げられるが、これらに限定されない。同様に投与する抗CD40抗体の量は、投与方法、およびその被検者が、この抗腫瘍剤の1回用量を受けるのか、多数回用量を受けるのかに依存するであろう。一般に、治療を受ける被検者の体重が増すほど、高い抗CD40抗体用量が好ましい。
【0177】
投与される抗CD40抗体の用量は、約0.003mg/kg〜約50mg/kg、約0.01mg/kg〜約40mg/kg、約0.01mg/kg〜約30mg/kg、約0.1mg/kg〜約30mg/kg、約0.5mg/kg〜約30mg/kg、約1mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約25mg/kg、約3mg/kg〜約20mg/kg、約5mg/kg〜約15mg/kg、または約7mg/kg〜約12mg/kgの範囲内である。
【0178】
従って、例えば、前記用量は、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kgもしくは50mg/kg、または約0.3mg/kgから約50mg/kgの範囲内に入るような他の用量であり得る。
【0179】
治療有効量の抗体での被検者の治療としては、単回治療を挙げることができ、または、好ましくは、一連の治療を挙げることができる。従って、本発明のもう1つの実施形態において、本方法は、抗CD40抗体の多数回用量の投与を含む。本方法は、抗CD40抗体を含む医薬組成物の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40回以上の治療有効用量の投与を含むことができる。当業者は、抗CD40抗体を含む医薬組成物の多数回用量の投与の頻度および継続期間を、過度の実験を伴うことなく、容易に決定することができる。抗CD40抗体の同じ治療有効用量を治療期間の間ずっと投与し得る。あるいは、治療期間の経過とともに、抗CD40抗体の異なる治療有効量を投与し得る。
【0180】
好ましい例では、被検者を約1から10週間の間、好ましくは約2から8週間の間、さらに好ましくは3から7週間の間、さらにいっそう好ましくは約4、5または6週間にわたって、週一度、約0.1から20mg/(体重1kg)の間の範囲の抗CD40抗体で治療する。治療は、再発を予防するために年2回もしくは年1回行ってもよいし、または再発の徴候に基づいて行ってもよい。治療に使用する抗体の有効量は、特定の治療の経過につれて増加する場合があり、または減少する場合があることも理解されるであろう。用量の変化は、本明細書において説明するような診断アッセイの結果から生じるおよび明らかになる場合もある。
【0181】
従って、一つの実施形態における投薬計画は、治療期間の1、8、15および22日目での少なくとも1つの抗CD40抗体の治療有効用量の初回投与を含む。もう1つの実施形態における投薬計画としては、毎日、または治療期間の中のある週の1、3、5および7日目に少なくとも1つの抗CD40抗体の治療有効用量の初回投与を有する投薬計画;治療期間中のある週の1日目及び3−4日目での少なくとも1つの抗CD40抗体の治療有効量の初回投与を含む投薬計画;ならびに治療期間中のある週の1日目での少なくとも1つの抗CD40抗体の治療有効量の初回投与を含む投与計画が挙げられる。治療期間は、1週間、2週間、3週間、1ケ月、2ヶ月、3カ月、6ヵ月または1年を含むことができる。治療期間は、続いてよく、または互いに1週間、2週間、3カ月、6ヵ月もしくは1年、離れていてもよい。
【0182】
他の実施形態において、本明細書の他の箇所で定義するような抗CD40抗体の初期治療有効用量は、より低い投薬範囲内(すなわち、約0.003mg/kgから約20mg/kg)であってよく、より高い投薬範囲内(すなわち、約20mg/kgから約50mg/kg)に入る用量がそれに続く。
【0183】
代替実施形態において、本明細書の他の箇所で定義するような初期治療有効用量は、より高い用量範囲内(すなわち、約20mg/kgから約50mg/kg)であってよく、より低い投薬範囲内(すなわち、約0.003mg/kgから約20mg/kg)に入る用量がそれに続く。従って、本発明の一部の実施形態において、抗CD40抗体療法は、その療法が必要な被検者に抗体の「負荷投与量」を投与することによって開始することができる。「負荷投与量」とは、被検者に投与される抗CD40抗体の初期用量を意味し、この投与される抗体の用量は、より高い投薬範囲内(すなわち、約20mg/kgから約50mg/kg)に入る。「負荷投与量」は、単回投与(例えば、抗体をIV投与する場合には単回注入)として投与してもよいし、または全部の「負荷投与量」を約24時間以内に投与するのであれば、多数回投与(例えば、抗体をIV投与する場合には多数回注入)として投与してもよい。「負荷投与量」の投与後、抗CD40抗体の1つ以上の追加の治療有効用量を被検者に投与する。後続の治療有効用量は、例えば、週1回の投薬スケジュールに従って、または2週間に1回、3週間に1回もしくは4週間に1回、投与することができる。そうした実施形態において、後続の治療有効用量は、一般に、より低い投薬範囲内(すなわち、約0.003mg/kgから約20mg/kg)に入る。
【0184】
あるいは、一部の実施形態では、「負荷投与量」の後、抗CD40抗体の後続の治療有効用量を、該抗体の治療有効用量を1ケ月に1回、6週間に1回、2ヶ月に1回、10週間に1回、3カ月に1回、14週間に1回、4ヶ月に1回、18週間に1回、5ヶ月に1回、22週間に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、10ヶ月に1回、11ヶ月に1回、または12ヶ月に1回投与する「維持スケジュール」に従って投与する。そうした実施形態において、前記抗CD40抗体の治療有効用量は、特にその後続の用量をより頻繁な間隔で、例えば2週間に1回から1ケ月に1回、投与するときには、より低い投薬範囲内(すなわち、約0.003mg/kgから約20mg/kg)に入り、または特にその後続の用量を低頻度の間隔で投与するとき、例えば後続の用量を約1ヶ月から約12ヶ月空けて投与する場合には、より高い投薬範囲内(すなわち、約20mg/kgから約50mg/kg)に入る。
【0185】
本発明の方法において使用するための本明細書において説明する医薬組成物中に存在する抗CD40抗体は、天然のものであってよく、または組換え技術によって得てもよく、ならびに任意の源(例えば、マウス、ラット、霊長類、ブタおよびヒトなどの哺乳動物源を含む)からのものであってよい。好ましくは、そうしたポリペプチドは、ヒト源由来のものであり、さらに好ましくは、ハイブリドーマ細胞株からの組換えヒトタンパク質である。
【0186】
本発明の方法において有用な医薬組成物は、本明細書の他の箇所で説明するような、本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体の生物活性変異体を含み得る。
【0187】
本明細書において説明する結合特性を有する抗CD40抗体を治療活性成分として含む任意の医薬組成物を本発明の方法において使用することができる。従って、抗CD40抗体の1つ以上を含む液体、凍結乾燥またはスプレー乾燥組成物を、本発明の方法に従って被検者に後に投与するための水性または非水性溶液または懸濁液として調製することができる。これらの組成物のそれぞれが、少なくとも1つの抗CD40抗体を治療または予防活性成分として含むであろう。「治療または予防活性成分」とは、抗CD40抗体が、組成物に特異的に組み込まれて、その医薬組成物が被験者に投与されたときにその被験者の疾患または状態の治療、予防または診断に対して望ましい治療または予防反応を生じさせることを意味する。好ましくは、前記医薬組成物は、調製および保管中のタンパク質の安定性および生物活性の喪失に関連した問題を最少にするために適切な安定剤、充填剤または両方を含む。
【0188】
本発明の抗CD40抗体を含む医薬組成物に製剤化剤を添加してもよい。これらの製剤化剤としては、油、ポリマー、ビタミン、炭水化物、アミン酸、塩、緩衝剤、アルブミン、界面活性剤または充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは、炭水化物としては、糖または糖アルコール、例えば、単糖類、二糖類もしくは多糖類または水溶性グルカンが挙げられる。糖類またはグルカンとしては、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、αおよびβシクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプンならびにカルボキシメチルセルロース、またはこれらの混合物を挙げることができる。「糖アルコール」は、カルボキシル基を有するC4からC8炭化水素と定義され、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、グリセロールおよびアラビトールを含む。これらの糖または糖アルコールは、個々に使用してもよいし、または併用してもよい。その糖または糖アルコール濃度は、1.0%と7% w/vの間、さらに好ましくは2.0%と6% w/vの間である。好ましくは、アミノ酸としては、カルニチン、アルギニンおよびベタインの左旋性(L)形が挙げられるが、他のアミノ酸を添加してもよい。好ましいポリマーとしては、2,000と3,000の間の平均分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)、または3,000と5,000の間の平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。本製剤に添加することができる界面活性剤は、EP第270,799号および同第268,110号に示されている。
【0189】
加えて、ポリマーへの共有結合性コンジュゲーションにより抗体を化学的に修飾して、例えば、それらの循環半減期を増加することができる。好ましいポリマー、およびペプチドにそれらを取り付ける方法は、米国特許第4,766,106号、同第4,179,337号、同第4,495,285号および同第4,609,546号に示されており、それらは、すべて、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている。好ましいポリマーは、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは、室温で水溶性であり、一般式:R(O−−CH2−−CH2)nO−−Rを有し、この式中のRは、水素であるか、保護基、例えばアルキルまたはアルカノール基である。好ましくは、前記保護基は、1個〜8個の間の炭素を有し、さらに好ましくはメチルである。記号nは、正の整数、好ましくは1〜1000の間、さらに好ましくは2〜500の間である。PEGは、1,000〜40,000の間、さらに好ましくは2,000〜20,000の間、最も好ましくは3,000〜12,000の間の好ましい平均分子量を有する。好ましくは、PEGは、少なくとも1つのヒドロキシ基を有し、さらに好ましくは、末端ヒドロキシ基を有する。好ましくは、このヒドロキシ基が活性化されて、阻害因子上の遊離アミノ酸と反応する。しかし、それらの反応性基のタイプおよび量を変化させて、本発明の共有結合性共役化PEG/抗体を獲得することができることは、理解されるであろう。
【0190】
水溶性ポリオキシエチル化ポリオールも本発明において有用である。それらとしては、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)などが挙げられる。POGが好ましい。1つの理由は、ポリオキシエチル化グリセロールのグリセロール骨格が、例えば、動物およびヒトにおいて、モノ、ジ、トリグリセリドで、自然に発生するのと同じ骨格であるからである。従って、この分枝は、体内で必ずしも外来因子と見られない。POGは、PEGと同じ範囲の好ましい分子量を有する。POGの構造は、Knaufら(1988)J.Bio.Chem.263:15064−15070に示されており、POG/IL−2共役の考察は、米国特許第4,766,106号において見出せる(これらは、両方とも、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)。
【0191】
循環半減期を増加させるためのもう1つのドラッグデリバリーシステムは、リポソームである。リポソームデリバリーシステムの作製方法は、Gabizonら(1982)Cancer Research 42:4734;Cafiso(1981)Biochem BiophysActa 649:129;およびSzoka(1980)Ann.Rev.Biophys.Eng.9:467において論じられている。他のドラッグデリバリーシステムは、当該技術分野において公知であり、例えば、Poznanskyら(1980)Drug Delivery Systems(R.L.Juliano,ed.,Oxford,N.Y.)pp.253−315;Poznansky(1984)Pharm Revs 36:277に記載されている。
【0192】
医薬組成物に添合される製剤化剤は、抗CD40抗体の安定性に備えなければならない。すなわち、抗CD40抗体は、その物理的および/または化学的安定性を保持しなければならず、望ましい生物活性、すなわち、本明細書において上で定義したアンタゴニスト活性(T細胞により刺激される正常ヒト末梢B細胞による免疫グロブリン分泌の阻害;ジャーカットT細胞により刺激される正常ヒト末梢B細胞の生存および/または増殖の阻害;CD40L発現性細胞または可溶性CD40リガンド(sCD40L)により刺激される正常ヒト末梢B細胞の生存および/または増殖の阻害;sCD40Lまたは固相CD40Lにより刺激される任意の細胞における「生存」抗アポトーシス細胞内シグナルの阻害;sCD40Lまたは固相CD40Lとのライゲーションに基づく任意の細胞におけるCD40シグナル伝達の阻害;ならびに本明細書の他の箇所で述べるようなヒト悪性B細胞の増殖の阻害を含むが、これらに限定されない)のうちの1つ以上を有さなければならない。
【0193】
タンパク質の安定性をモニターするための方法は、当該技術分野において公知である。例えば、Jones(1993)Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90;Lee,ed.(1991)Peptide and Protein Drug Delivery(Marcel Dekker,Inc.,New York,New York);および本明細書において下で開示する安定性アッセイを参照のこと。一般に、タンパク質の安定性は、選択された温度で特定の期間にわたって測定される。好ましい実施形態において、安定な抗体医薬製剤は、室温(約25℃)で保管されたとき、少なくとも1ケ月、少なくとも3カ月、もしくは少なくとも6ヵ月間の安定性に備えており、および/または約2−8℃で、少なくとも6ヵ月、少なくとも9ヵ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月間安定である。
【0194】
医薬組成物に調合されたときの抗体などのタンパク質は、その医薬組成物の沈殿、凝集および/または変性の目に見える徴候(すなわち、変色もしくは透明性喪失)または測定可能な徴候(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)もしくはUV光散乱を使用)を示さない場合、所定の時点でその物理的安定性を保持するとみなされる。化学的安定性に関して、医薬組成物に調合されたときの抗体などのタンパク質は、化学的安定性の測定値が、その医薬組成物中のタンパク質(すなわち、抗体)が対象となる生物活性を保持することを示す場合、所定の時点でその化学的安定性を保持するとみなされる。化学的安定性の変化をモニターするための方法は、当該技術分野において周知であり、例えばSDS−PAGE、SECおよび/またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化/ 飛行時間型質量分析を使用するクリッピングからの結果、ならびに例えばイオン交換クロマトグラフィーを使用する(例えば、脱アミノ化に付随する)分子電荷の変化に関連した分解など、タンパク質の化学的に改変された形態を検出する方法を含むが、これらに限定されない。例えば、本明細書において下で開示する方法を参照のこと。
【0195】
医薬組成物に調合されたときの抗CD40抗体は、ある時点での所望の生物活性が、その所望の生物活性に好適なアッセイで判定して、その医薬組成物を調製した時点で示した所望の生物活性の約30%以内、好ましくは約20%以内である場合、その所定の時点で所望の生物活性を保持するとみなされる。抗CD40抗体の所望の生物活性を測定するためのアッセイは、本明細書中の実施例において説明するとおり行うことができる。Schultzeら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:8200−8204;Dentonら(1998)Pediatr.Transplant.2:6−15;Evansら(2000)J.Immunol.164:688−697;Noelle(1998)Agents Actions Suppl.49:17−22;Ledermanら(1996)Curr.Opin.Hematol.3:77−86;Coliganら(1991)Current Protocols in Immunology 13:12;Kwekkeboomら(1993)Immunology 79:439−444;ならびに米国特許第5,674,492号および同第5,847,082号(本明細書に参照として組み込まれている)に記載されているアッセイも参照のこと。
【0196】
本発明の一部の実施形態において、抗CD40抗体は、液体医薬組成物に調合される。前記抗CD40抗体は、本明細書において上で開示したものをはじめとする、当該技術分野において公知の任意の方法を使用して調製することができる。一つの実施形態において、前記抗CD40抗体は、CHO細胞株において組換え生産される。
【0197】
抗CD40抗体をその調合前に保管しなければならない場合、例えば、−20℃以下で凍結し、その後、さらなる調合のために室温で解凍する。本液体製剤は、治療有効量の抗CD40抗体を含む。本製剤中の存在するその抗体の量は、投与経路および所望の用量容積を考慮に入れる。
【0198】
このように、本液体医薬組成物は、抗CD40抗体を約0.1mg/mL〜約50.0mg/mL、約0.5mg/mL〜約40.0mg/mL、約1.0mg/mL〜約30.0mg/mL、約5.0mg/mL〜約25.0mg/mL、約5.0mg/mL〜約20.0mg/mL、または約15.0mg/mL〜約25.0mg/mLの濃度で含む。一部の実施形態において、本液体医薬組成物は、抗CD40抗体を約0.1mg/mL〜約5.0mg/mL、約5.0mg/mL〜約10.0mg/mL、約10.0mg/mL〜約15.0mg/mL、約15.0mg/mL〜約20.0mg/mL、約20.0mg/mL〜約25.0mg/mL、約25.0mg/mL〜約30.0mg/mL、約30.0mg/mL〜約35.0mg/mL、約35.0mg/mL〜約40.0mg/mL、約40.0mg/mL〜約45.0mg/mL、または約45.0mg/mL〜約50.0mg/mLの濃度で含む。他の実施形態において、本液体組成物は、抗CD40抗体を約15.0mg/mL、約16.0mg/mL、約17.0mg/mL、約18.0mg/mL、約19.0mg/mL、約20.0mg/mL、約21.0mg/mL、約22.0mg/mL、約23.0mg/mL、約24.0mg/mL、または約25.0mg/mLの濃度で含む。本液体医薬組成物は、抗CD40抗体と、約pH5.0から約pH7.0の範囲内(約pH5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、および約pH5.0から約pH7.0の範囲内の他のそうした値を含む)に製剤のpHを維持する緩衝剤とを含む。一部の実施形態において、前記緩衝剤は、本製剤のpHを約pH5.0〜約pH6.5、約pH5.0〜約pH6.0、約pH5.0〜約pH5.5、約pH5.5〜約pH7.0、約pH5.5〜約pH6.5、または約pH5.5〜約pH6.0の範囲内に維持する。
【0199】
約pH5.0から約pH7.0の範囲内に本液体抗CD40抗体製剤のpHを維持する任意の好適な緩衝剤を、その抗体の物理化学的安定性および所望の活性が、本明細書において上で述べたとおり保持される限り、本製剤において使用することができる。好適な緩衝剤としては、従来の酸およびそれらの塩(この場合の対イオンは、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたはマグネシウムであり得る)が挙げられるが、これらに限定されない。本医薬液体製剤を緩衝するために使用することができる従来の酸およびそれらの塩の例としては、コハク酸またはコハク酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、酒石酸または酒石酸塩、リン酸またはリン酸塩、グルコン酸またはグルコン酸塩、グルタミン酸またはグルタミン酸塩、アスパラギン酸またはアスパラギン酸塩、マレイン酸またはマレイン酸塩、およびリンゴ酸またはリンゴ酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。前記製剤中の緩衝剤濃度は、約1mMから約50mM(約1mM、2mM、5mM、8mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、または約1mMから約50mMの範囲内の他のそうした値を含む)であり得る。一部の実施形態において、本製剤中の緩衝剤濃度は、約5mMから約15mM(約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、または約5mMから約15mMの範囲内の他のそうした値を含む)である。
【0200】
本発明の一部の実施形態において、本液体医薬製剤は、治療有効量の抗CD40抗体と、本製剤のpHを約pH5.0から約pH7.0、好ましくは約pH5.0から約pH6.5に維持する濃度のコハク酸塩緩衝剤またはクエン酸塩緩衝剤とを含む。「コハク酸塩緩衝剤」または「クエン酸塩緩衝剤」とは、それぞれ、コハク酸の塩またはクエン酸の塩を含む緩衝剤を意味する。好ましい実施形態において、コハク酸塩またはクエン酸対イオンは、ナトリウムカチオンであり、従って、前記緩衝剤は、それぞれ、コハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムである。しかし、任意のカチオンが有効であると予想される。他の可能なコハク酸またはクエン酸カチオンとしては、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。上で述べたように、本製剤中のコハク酸塩またはクエン酸塩緩衝剤濃度は、約1mMから約50mM(約1mM、2mM、5mM、8mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、または約1mMから約50mMの範囲内の他のそうした値を含む)であり得る。一部の実施形態において、前記製剤中の緩衝剤濃度は、約5mMから約15mM(約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、または15mMを含む)である。他の実施形態において、本液体医薬製剤は、約0.1mg/mLから約50.0mg/mL、または約5.0mg/mLから約25.0mg/mLの濃度の抗CD40抗体と、約1mMから約20mM、約5mMから約15mM、好ましくは約10mMの濃度のコハク酸塩またはクエン酸塩緩衝剤、例えばコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム、とを含む。
【0201】
液体医薬製剤がほぼ等張性であることが望ましい場合、抗CD40抗体および緩衝剤を含むその液体医薬製剤は、その製剤をほぼ等張性にするために十分な量の等張化剤を含むことができる。「ぼほ等張性」とは、その水性製剤が、約240mmol/kg〜約360mmol/kg、好ましくは240〜340mmol/kg、さらに好ましくは約250〜約330mmol/kg、さらにいっそう好ましくは約260〜約320mmol/kg、さらにいっそう好ましくは約270〜約310mmol/kgの浸透圧モル濃度を有することを意味する。溶液の等張性の判定方法は、当業者には公知である。例えば、Setnikarら(1959)J.Am.Pharm.Assoc.48:628参照。
【0202】
当業者は、医薬組成物において等張性を生じさせることに役立つ、薬学的に許容される様々な溶質を熟知している。等張化剤は、本発明の液体医薬製剤の浸透圧を体液の浸透圧とほぼ等しい値に合わせることができるいずれの試薬であってもよい。生理学的に許容される等張化剤を使用することが望ましい。従って、治療有効量の抗CD40抗体および緩衝液を含む液体医薬製剤は、等張性を生じさせるために使用することができる成分、例えば、塩化ナトリウム;アミノ酸、例えばアラニン、バリンおよびグリシン;糖および糖アルコール(ポリオール)(グルコース、デキストロース、フルクトース、スクロース、マルトース、マンニトール、トレハロース、グリセロール、ソルビトールおよびキシリトールを含むが、これらに限定されない);酢酸、他の有機酸またはそれらの塩、ならびに比較的少量のクエン酸塩またはリン酸塩をさらに含み得る。通常の当業者は、本液体製剤の最適な等張性を生じさせるために好適なさらなる試薬を知っていよう。
【0203】
一部の好ましい実施形態において、抗CD40抗体および緩衝剤を含む液体医薬製剤は、塩化ナトリウムを等張化剤としてさらに含む。前記調合物中の塩化ナトリウムの濃度は、等張性への他の成分の寄与に依存するであろう。一部の実施形態において、塩化ナトリウムの濃度は、約50mM〜約300mM、約50mM〜約250mM、約50mM〜約200mM、約50mM〜約175mM、約50mM〜約150mM、約75mM〜約175mM、約75mM〜約150mM、約100mM〜約175mM、約100mM〜約200mM、約100mM〜約150mM、約125mM〜約175mM、約125mM〜約150mM、約130mM〜約170mM、約130mM〜約160mM、約135mM〜約155mM、約140mM〜約155mM、または約145mM〜約155mMである。1つのそうした実施形態において、塩化ナトリウムの濃度は、約150mMである。他のそうした実施形態において、塩化ナトリウムの濃度は、約150mMであり、緩衝剤は、約5mMから約15mMの濃度のコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム緩衝剤であり、その液体医薬製剤は、治療有効量の抗CD40抗体を含み、ならびにその製剤は、約pH5.0から約pH7.0、約pH5.0から約pH6.0、または約pH5.5から約pH6.5のpHを有する。他の実施形態において、液体医薬製剤は、約pH5.5のpHで、約0.1mg/mLから約50.0mg/mLまたは約5.0mg/mLから約25.0mg/mLの濃度の抗CD40抗体と、約150mMの塩化ナトリウムと、約10mMのコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムとを含む。
【0204】
本発明の液体医薬製剤の加工中の凍結解凍または機械的剪断に起因するタンパク質分解は、本製剤に界面活性剤を添合して溶液−空気界面の表面張力を低下させることによって抑制することができる。従って、一部の実施形態において、本液体医薬製剤は、治療有効量の抗CD40抗体および緩衝剤を含み、さらに、界面活性剤を含む。他の実施形態において、本液体医薬製剤は、抗CD40抗体、緩衝剤および等張化剤を含み、さらに、界面活性剤を含む。
【0205】
利用される代表的な界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、例えばポリソルベート80(Tween 80)およびポリソルベート20(Tween 20);ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンエステル、例えばPluronic F68;ポリオキシエチレンアルコール、例えばBrij 35;シメチコン;ポリエチレングリコール、例えばPEG400;リゾホスファチジルコリン;ならびにポリエチレン−p−t−オクチルフェノール、例えばTriton X−100をはじめとする、非イオン性界面活性剤である。界面活性剤または乳化剤による医薬の古典的安定化は、例えば、Levineら(1991)J.Parenteral Sci.Technol.45(3):160−165(本明細書に参照として組み込まれている)に記載されている。本発明の実施の際に利用される好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80である。界面活性剤を含める場合、それは、一般に、約0.001%〜約1.0%(w/v)、約0.001%〜約0.5%、約0.001%〜約0.4%、約0.001%〜約0.3%、約0.001%〜約0.2%。約0.005%〜約0.5%、約0.005%〜約0.2%、約0.01%〜約0.5%、約0.01%〜約0.2%。約0.03%〜約0.5%、約0.03%〜約0.3%、約0.05%〜約0.5%、または約0.05%〜約0.2%の量で添加する。
【0206】
従って、一部の実施形態において、本液体医薬製剤は、治療有効量の抗CD40抗体を含み、緩衝剤は、約1mMから約50mM、約5mMから約25mM、または約5mMから約15mMの濃度のコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム緩衝剤であり、この製剤は、約pH5.0から約pH7.0、約pH5.0から約pH6.0、または約pH5.5から約pH6.5のpHを有し;ならびにこの製剤は、約0.001%から約1.0%または約0.001%から約0.5%の量の界面活性剤、例えばポリソルベート80、をさらに含む。そうした製剤は、約50mMから約300mM、約50mMから約200mM、または約50mMから約150mMの濃度の等張化剤、例えば塩化ナトリウム、を場合によっては含むことがある。他の実施形態において、本液体医薬製剤は、約20.0mg/mLをはじめとする、約0.1mg/mL〜約50.0mg/mLまたは約5.0mg/mL〜約25.0mg/mLの濃度の抗CD40抗体;約150mMの塩化ナトリウムをはじめとする、約50mM〜約200mMの塩化ナトリウム;約10mMのコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムをはじめとする、約5mM〜約20mMのコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム;約150mMをはじめとする、約50mM〜約200mMの濃度の塩化ントリウム;ならびに場合により、約0.001%から約0.5%をはじめとする、約0.01%〜約1.0%の量の界面活性剤、例えばポリソルベートを含み、この場合の液体医薬製剤は、約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.0、約pH5.0〜約pH5.5、約pH5.5〜約pH6.5、または約pH5.5〜約pH6.0のpHを有する。
【0207】
本液体医薬製剤には、本明細書において上で述べたいずれの保存薬および他の担体、賦形剤または安定剤も本質的に含み得ない。あるいは、本製剤は、抗CD40抗体の物理化学的安定性に悪影響を与えないことを条件として、本明細書において上で説明した1つ以上の保存薬、例えば、抗菌剤、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含み得る。許容される担体、賦形剤および安定剤の例としては、追加の緩衝剤、補助溶媒、界面活性剤、抗酸化物質(アスコルビン酸およびメチオニンを含む)、キレート剤、例えば、EDTA、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体)および生体分解性ポリマー、例えばポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される担体、安定剤およびisomolyteの調合および選択の詳細な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版;ペンシルバニア州、イートンのMack Publishing Company、1990)(本明細書に参照として組み込まれている)において見出すことができる。
【0208】
「担体」は、本明細書で用いる場合、利用される用量および濃度でそれに暴露される細胞または哺乳動物にとって非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を包含する。多くの場合、生理学的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩および他の有機酸;アルコルビン酸をはじめとする抗酸化物質;低分子量(残基数約10未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリシン;単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む);キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えばナトリウム;ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)およびPluronicsが挙げられる。
【0209】
1つ以上のさらなる治療薬「と併用での」投与は、同時(同時発生的)投与および任意の順番での逐次投与を包含する。
【0210】
本明細書において説明する液体医薬製剤または他の医薬組成物を調製した後、それを凍結乾燥させて分解を防ぐことができる。液体組成物を凍結乾燥させる方法は、通常の当業者には公知である。使用直前、その組成物を、追加の成分を含み得る滅菌希釈剤(例えばリンガー溶液、蒸留水または滅菌食塩水)で、再構成することができる。好ましくは、再構成し次第、当業者に公知の方法を使用してその組成物を被検者に投与する。
【0211】
一部の実施形態において、抗CD40抗体は、炎症性および/または自己免疫疾患のための少なくとも1つの他の公知の療法と併用で投与することができる。そうした療法としては、外科手術または外科手術手順(例えば、脾臓摘出術、リンパ節切除術、甲状腺切除術、血漿分離交換法、白血球フェレーシス、細胞、組織または臓器移植、腸の処置、臓器潅流など);放射線療法;ステロイド療法および非ステロイド療法などの療法;ホルモン療法;サイトカイン療法;外皮用剤(例えば、アレルギー、接触皮膚炎および乾癬などの皮膚の状態を治療するために使用される局所用薬剤)での療法;免疫抑制療法;ならびに他の抗炎症性モノクローナル抗体療法などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法が、併用治療計画を含む場合、これらの療法は、同時に施される場合があり、すなわち、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合性フラグメントは、他の療法と同時発生的に投与されるか、同じ時間枠内で投与される(すなわち、これらの療法は、同時に進行するが、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合性フラグメントは、他の療法と全く同じ時間には投与されない)。あるいは、本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、他の療法の前に投与されてよく、または後に投与され得る。異なる療法の逐次的施与は、治療を受ける被検者が、第一の治療コースに反応して、寛解または再発の可能性を減少させるかどうかにかかわらず、行うことができる。
【0212】
このように、抗CD40抗体は、手術、臓器潅流、放射線療法、ステロイド療法、非ステロイド療法、抗体療法、抗真菌療法、ホルモン療法、サイトカイン療法、外皮用剤(例えば、アレルギー、接触皮膚炎および乾癬などの皮膚の状態を治療するために使用される局所用薬剤)での療法、免疫抑制療法、他の抗炎症性モノクローナル抗体療法、ならびにそれらの組み合わせなどをはじめとする、少なくとも1つの他の療法と併用で、投与される。従って、併用される療法が、別の治療薬の投与と(例えば、一例としてステロイドと)併用で抗CD40抗体の投与を含む場合、本発明の方法は、別の製剤または単一の医薬製剤を使用する併用投与、およびいずれかの順序での逐次投与を含む。
【0213】
抗CD40抗体と併用で投与することができる免疫抑制剤の例としては、メトトレキサート、シクロホスファミド、ミゾリビン、クロラムブシル、シクロスポリン、例えばエーロゾル化シクロスポリン(米国特許出願公開第US20020006901号(その全体が本明細書に参照として組み込まれている))など、タクロリムス(FK506;ProGraf(登録商標))、マイコフェノレートモフェチル、およびアザチオプリン(6−メルカプトプリン)、シロリムス(ラパマイシン)、デオキシスパーガリン、レフルノミドおよびそのマロノニトリロアミド類似体;ならびに
を含む免疫抑制タンパク質
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0214】
抗CD40抗体と併用で投与することができる好適な抗炎症剤の例としては、例えば、クロベタゾール、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルオシノール、フルオシノニド、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンなどのコルチコステロイド;例えば、スルファサラジン、メサラミン含有薬物(5−ASA剤として公知)、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、フェンプロフェン、フルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、メクロファマート、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サリチラート、スリンダクおよびトルメチンなどの、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID);ならびにEnbrel(登録商標)(可溶性TNF受容体)、抗炎症性抗体、例えばアダリムマブ(HUMIRA(登録商標)、TNA−αアンタゴニスト)およびインフリキシマブ(Remicade(登録商標)、TNF−αアンタゴニスト)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
移植拒絶反応および移植片対宿主疾患は、超急性(体液性)、急性(T細胞媒介)、もしくは慢性(未知の病因)、またはこれらの組み合わせであり得る。従って、本発明の抗CD40抗体は、一部の実施形態において、肝臓、腎臓、膵臓、膵島細胞、小腸、肺、心臓、角膜、皮膚、血管、骨、異種または自己骨髄などをはじめとする任意の組織の超急性、急性および/または慢性移植拒絶反応と関連のある拒絶反応および/または症状を予防および/または改善するために使用される。いずれのドナーから移植片組織を得て、いずれのレシピエントに移植してもよく、従って、移植手順は、動物の組織のヒトへの移植(異種移植)、あるヒトから別の人への組織移植(例えば、同種移植)、および/または人体のある部分から別の部分への組織移植(自己移植)を含み得る。本発明の抗体での治療は、移植の後遺症、例えば、発熱、食欲不振、血行動態異常、白血球減少、移植した臓器/組織の白血球浸潤、ならびに日和見感染を低減することもできる。
【0216】
本発明の抗CD40抗体を使用して移植片拒絶反応、関節リウマチまたは多発性硬化症を治療する実施形態において、本抗体は、本明細書において説明したような好適な免疫抑制剤と併用することができる。
【0217】
従って、本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒトにおいてCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための薬物の製造における治療または予防有効量の抗CD40抗体の使用を提供し、この場合、前記薬物は、少なくとも1つの他の療法での治療と協調性である。
【0218】
「協調性」とは、抗CD40抗体を含む薬物が、少なくとも1つの他の療法でのその被検者の治療前、中または後に使用できることを意味する。
【0219】
本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であり、少なくとも1つの他の治療薬での前治療を受けたヒト患者をCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための薬物の製造における抗CD40抗体の使用も提供する。
【0220】
「前治療された」または「前治療」とは、被検者が、抗CD40抗体を含む薬物を受ける前に1つ以上の他の療法を受けた(すなわち、少なくとも1つの他の療法で治療された)ことを意味する。「前治療された」または「前治療」は、抗CD40抗体を含む薬物での治療を開始する前の2年以内、18ヶ月以内、1年以内、6ヶ月以内、2ヶ月以内、6週間以内、1ヶ月以内、4週間以内、3週間以内、2週間以内、1週間以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、またはさらに1日以内に、少なくとも1つの他の療法での治療を受けた被検者を含む。その被検者が、前の療法(単数または複数)での前治療に対する反応者である必要は必ずしもない。従って、アンタゴニスト抗CD40抗体を含む薬物を受ける被検者は、前の療法での治療に対して、または前治療が多数の療法を含んでいた場合にはそれらの前の療法のうちの1つ以上に対して、反応してもよく、または反応しなくてもよい。被検者が、抗CD40抗体を含む薬物を受ける前に前治療を受け得る他の療法の例としては、本明細書の他の箇所で説明する炎症性疾患または自己免疫疾患のための療法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0221】
1つ以上の他の療法と本明細書において説明する薬物の協調的使用に関連して、「治療」は、被検者への薬物もしくは他の療法の適用もしくは施与、または被検者からの単離された組織もしくは細胞株への前記薬物もしくは他の療法の適用もしくは使用と定義し、この場合、前記被検者は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患もしくは自己免疫疾患、そうした疾患と関連のある症状、またはそうした疾患の発現に対する素因を有し、その目的は、前記疾患、前記疾患の任意の関連症状、または前記疾患の発現に対する素因を治す、癒す、緩和する、和らげる、改変する、軽減する、改善する、向上させる、またはそれらに作用することである。
【0222】
一部の実施形態において、併用療法は、単独で投与されたときの個々の治療薬を基準にして、治療有効度を相乗的に向上させる。用語「相乗効果」は、それぞれの活性薬剤各々の個々の効果の合計より大きい、2つ以上の活性薬剤の併用効果を記述するために使用する。従って、2つ以上の薬剤の併用効果が、結果として活性またはプロセスの「相乗的阻害」を生じさせる場合、その活性またはプロセスの阻害は、それぞれの活性薬剤各々の阻害効果の合計より大きい。用語「相乗的治療効果」は、(多数のパラメータのいずれかによって測定して)それぞれの個々の療法で観察される個々の治療効果の合計より大きい、2つ以上の療法の併用で観察される治療効果を指す。
【0223】
さて、本発明の様々な態様および実施形態を、単なる例として、より詳細に説明しよう。本発明の範囲から逸脱することなく詳細の変更を行うことができることは理解されるであろう。
【0224】
実験
下の実施例において使用する抗CD40抗体は、CHI−12.12である。CHIR−12.12抗体の生産、配列決定および特性付けは、WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294として公開された国際特許出願に詳細に記載されている。CHIR−12.12抗体を発現するハイブリドーマ系統153.8E2.D10.D6.12.12(CMCC#12056)は、PTA−5543の特許寄託番号で、米国微生物系統保存機関[ATCC;10801 University Blvd.,Manassas,Virginia 20110−2209(USA)]に寄託されている。
【0225】
多数の以下の実施例は、癌細胞株および癌患者細胞へのCHIR−12.12の結合に基づく。しかし、以下の実施例のすべては、抗CD40抗体を使用する炎症性疾患および/または自己免疫疾患の治療に等しく関連のあるCHIR−12.12抗体の特性を例証するものであるため、直接的には、炎症性疾患および/または自己免疫疾患を治療するためのCHIR−12.12の使用に関連している。
【実施例】
【0226】
実施例1:細胞株におけるADCCの分析
CHIR−12.12およびリツキシマブを、リンパ腫細胞株(Daudi、Namalwa)、多発性骨髄腫細胞株(ARH77、IM−9)、B−ALL細胞株(CCRF−SB)およびB−CLL細胞株(EHEB)をはじめとするCD40抗原とCD20抗原の両方を発現する様々な悪性B細胞に対するそれらの相対ADCC活性について比較した。
【0227】
最大溶解パーセントおよびED50としてそれぞれ測定したADCC有効度および効力を、CHIR−12.12およびリツキシマブについて比較した。これらの実験結果を図1A−1Fに示す。すべてのターゲット細胞株について、CHIR−12.12は、リツキシマブより効力および有効度の高いADCC媒介因子であった。試験した6つの細胞株において、細胞1個当たりの細胞表面CD20分子の数は、CD40より2.6から30.8倍多かった。これらのデータは、CD20より少ないCD40分子を提示するにもかかわらず、悪性B細胞株が、リツキシマブより効果的にCHIR−12.12によって溶解されることを示している。
【0228】
実施例2:CLL患者細胞におけるADCCの分析
8人の患者からのエクスビボ原発性CLL細胞に対するCHIR−12.12およびリツキシマブの相対ADCC活性を比較した。CHIR−12.12は、すべての患者からのCLLに対してリツキシマブより大きなADCCを示した(図2A−Dおよび図3参照)。結果を図3にまとめる。CHIR−12.12は、リツキシマブより効力が高い。
抗体依存性細胞障害(ADCC)実験計画
ターゲット細胞:CLL患者細胞、5000/ウエル。エフェクター細胞:精製した正常ヒトNK細胞、50,000/ウエル。E:T比:10。Ab濃度:0.00001、0.0001、0.001、0.01、0.1、1および10μg/mL。インキュベーション時間:4時間。培地:RPMI(フェノールレッド負含)+10%FBS+1%P/S。培養器具:96ウエル丸底プレート。読出し:485nm 励起/535nm 放射での任意の蛍光単位(AFU)によって測定されるカルセインAM放出。計算:特異的溶解%=100x(AFU試験−AFU自然放出1)/(AFU最大放出2−AFU自然発生)。陰性対照:抗体またはNK細胞の不在下でターゲット細胞によって放出されるカルセイン。陽性対照:界面活性剤(1%NP40)による溶解に基づきターゲット細胞によって放出されるカルセイン。
【0229】
図2および3に図示する結果は、CHIR−12.12が、CLL患者細胞に対してリツキシマブより大きなADCCを媒介することを示している。ADCCの差の大きさは、ターゲット細胞に依存してよく、NKドナー細胞に依存してもよいが、すべての患者サンプルに対して観察された。1人の患者からのCLL細胞を2つの異なるNKドナーで試験したとき、CHIR−12.12は、両方のNKドナー細胞についてリツキシマブより大きなADCCを媒介したが、特異的ADCCの大きさは、同一ではなかった(図4参照)。この優れたADCCについてのメカニズムの基礎は、ターゲット抗原(CD20およびCD40)の相対発現レベル、抗体の内在化の程度、およびNK細胞上のFcγRIIIa受容体に対する抗体の親和性を含み得る。従って、CHIR−12.12およびリツキシマブのADCC活性に対するこれらの因子の影響を調査した。
【0230】
実施例3:細胞表面CD40およびCD20分子の定量
CLL細胞上の定量的CD20およびCD40密度(実施例3)および抗体内在化度(実施例4)を、ADCC活性における上で説明した差についての潜在的理由として調査した。CHIR−12.12のより大きなADCC活性および有効度は、より高い細胞表面CD40分子密度には依存しなかった。細胞表面のCD40分子数よりCD20分子の数のほうが、1.3倍から14倍多かったからである(図5および6参照)。
【0231】
方法
染色用緩衝剤(PBSは、1%BSA、0.1%アジ化Naを含有する)中、1mg/mLのヒトIgG1と共に細胞をプレインキュベートして、非特異的結合部位をブロックした。それらは、30分間、4℃(氷上)でインキュベートした。その後、FITC共役化ヒトIgG1アイソタイプ対照、FITC共役化CHIR−12.12、またはFITC共役化リツキシマブを100、10、1、0.1μg/mLで添加し、細胞を30分間、4℃(氷上)でインキュベートした。細胞を染色用緩衝液(PBS+1%FBS+0.1%アジ化ナトリウム)で洗浄し、FACS Caliburによって分析した。
幾何平均蛍光強度をFACSによって測定した。その後、較正用FITCビーズによって設定した標準曲線に基づいて、Molecules of Equivalent Soluble Fluorchrome(MESF)を計算した。
【0232】
実施例4:CHIR−12.12は、細胞株上のCD40に結合すると内在化を誘導しない
Daudi、リンパ腫細胞株、およびARH77、MM細胞株、を使用して、内在化に対するCHIR−12.12の効果を評価した。氷上(内在化を阻止するために0.1%アジ化ナトリウムを伴う)または37℃(アジ化ナトリウムを伴わない)で3時間、1μg/mLのヒトIgG1(対照抗体)またはCHIR−12.12と共に細胞をインキュベートした。低温の染色用緩衝剤(PBS+1%FBS+0.1%アジ化ナトリウム)で洗浄した後、氷上で30分間、ヤギ抗ヒトIgG−FITCで細胞を染色した。幾何平均蛍光強度(MFI)をFACS Caliburによって記録した。アジ化ナトリウムの存在下、氷上でCHIR−12.12と共にインキュベートした細胞と、アジ化ナトリウム不在下、37℃でCHIR−12.12と共にインキュベートした細胞との間に、差は観察されなかった(図7)。これらのデータは、CD40に結合すると、CHIR−12.12が内在化せず、細胞表面に提示され続けることを示している。
【0233】
実施例5:CLL患者細胞への結合後のCHIR−12.12およびリツキシマブの内在化:FACSおよび共焦点顕微鏡
FACS方法論
40℃(0.1%アジ化ナトリウムを伴う)または37℃(アジ化Naを伴わない)で3時間、10μg/mLのhuIgG1、CHIR−12.12またはリツキシマブと共に細胞をインキュベートした。染色用緩衝剤(PBS+1%FBS+0.1%アジ化Na)で細胞を洗浄し、その後、FITC−ヤギ抗ヒトIgGを添加し、その後、細胞を30分間、40℃でインキュベートし、FACS Caliburによって分析した。
共焦点顕微鏡方法論
40℃(0.1%アジ化Naを伴う)または37℃(アジ化Naを伴わない)で、3時間、10μg/mLのAlexa 488またはFITC共役化CHIR−12.12、リツキシマブおよびIgG1と共に細胞をインキュベートした。その後、細胞を洗浄し、5分間、室温で、2%ホルムアルデヒドで固定した。その後、細胞を洗浄し、ポリ−L−リシン被覆スライドガラス上に配置し、マウントし、封止し、その後、共焦点イメージングによって分析した。
結果
これらの実験の結果を図8(FACS)ならびに図9および10(共焦点顕微鏡)に示す。これらの実験からの結果を図11にまとめる。フローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡法によって行った原発性CLL細胞を使用するこれらの抗体内在化試験は、37℃でCD40に結合すると、3時間後でさえ、CHIR−12.12は細胞表面上に均一に分布したままであることを示している。対照的に、37℃で結合後、リツキシマブは、キャップに再び分布し、内在化される。これらのデータは、CHIR−12.12の効力のあるADCC活性を、ターゲット細胞表面でそれ自体を均一に提示するその能力に関連付けることができ、それが、エフェクター細胞との最適な相互作用を可能ならしめることを示唆している。これらの結果は、CHIR−12.12が、インビボでCLL細胞に対して効力のあるADCCを媒介する点で有効であり得ることを示唆している。
【0234】
実施例6:Rituxan(登録商標)およびCHIR−12.12によるFcγRIIIa結合のBiacore分析
CHIR−12.12およびリツキシマブに対するFcγRIIIa aa158Fおよびaa158V対立遺伝子の親和性を、標準的なBiacore(登録商標)分析によって比較した。CHIR−12.12は、リツキシマブと比較したとき、4.6倍高い親和性でaa158F対立遺伝子に結合した(それぞれ、2.8μM対13μM)。これらの実験の結果を下の表にまとめる:
【0235】
【表1】
実施例7:NKエフェクター細胞によるADCCに対するFcγRIIIa多型の影響
抗体依存性細胞障害(ADCC)は、多くの市販および治験モノクローナル抗体についての主要作用メカニズムである。濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療用に市販されており、他のB細胞悪性病変において有効であるリツキシマブ(Rituxan(登録商標))は、その主作用メカニズムの1つとしてADCCを有すると考えられる。特に、NHLにおけるリツキシマブの臨床活性が、FcγRIIIa遺伝子型と相関することは証明されている。V/VまたはV/FのFcγRIIIa 158aa多型を有する患者は、F/Fを有する者より大きくリツキシマブに反応する(例えば、Cartonら(2002)Blood 99(3):754−758またはDall’Ozzoら(2004)Cancer Res.64:4664−4669参照)。
【0236】
これらの実験では、様々なFcγRIIIa aa158多型を発現する多数のヒトドナーからの精製されたNKエフェクター細胞を、ヒトリンパ腫Daudi細胞株をターゲット細胞として使用して評価した(図12および13参照)。これらの図により示されているように、CHIR−12.12は、3つすべての遺伝子型のNK細胞で効力のあるADCCを誘導した。Daudi細胞株の溶解についてのCHIR−12.12 ED50は、F/F、V/FおよびV/Vについて、それぞれ、4、2および0.4pMであった(図13)。Daudi細胞株の溶解についてのリツキシマブ ED50は、F/F、V/FおよびV/Vについて、それぞれ、53、21および9pMであった(図13)。
【0237】
様々なFcγRIIIa aa158多型を発現する多数のヒトドナーからの精製されたNKエフェクター細胞を、CLL患者細胞をターゲット細胞として使用しても評価した(図14参照)。CHIR−12.12は、試験したすべてのCLL患者細胞に対して、リツキシマブより効力の高いADCC媒介因子であることが判明した(図14)。これらのデータは、CHIR−12.12が、aa158 V/FまたはF/F遺伝子型のNK細胞ででさえ、リツキシマブより効力の高いADCC媒介因子であることを示唆している。
【0238】
これらの発見は、驚くべきことである。CHIR−12.12は、F/FまたはF/VのFcγRIIIa 158aa多型を有するNK細胞を使用するほうが、V/Vを有するものを使用するより、ADCCアッセイでの効力が有意に低いと予想されたからである。重ねて、NHLにおけるリツキシマブの臨床活性が、FcγRIIIa遺伝子型と相関することは証明されている。V/VまたはV/FのFcγRIIIa 158aa多型を有する患者は、F/Fを有する者より、リツキシマブに対して大きく反応する。リツキシマブは、B細胞の表面で発現される抗原に結合するIgG1モノクローナル抗体でもあり、そのため、CHIR−12.12は、FcγRIIIa−158V多型について同じ嗜好性を提示すると予想された。そうではなく、CHIR−12.12は、3つすべての遺伝子型のNK細胞で効力のあるADCCを誘導することが判明した。
【0239】
上述の説明および関連図に提示した技術の恩恵を受けるこれらの発明が属する技術分野の技術者には、本明細書において述べた本発明についての多くの変形および他の実施形態が、思い浮かぶであろう。従って、本発明を、開示する特定の実施形態に限定すべきではなく、変形および他の実施形態が、添付のクレームの範囲に含まれると解釈されることは、理解されるであろう。本明細書の中では特定の用語を用いているが、それらは、単に一般的および説明的な意味で用いており、限定のためのものではない。
【0240】
本明細書において引用したすべての出版物および特許出願は、それぞれ個々の出版物または特許出願が参照として組み込まれていると具体的におよび個々に述べられているのと同程度に、完全に参照として組み込まれている。
【0241】
【数1】
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1A】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図1B】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図1C】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図1D】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図1E】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図1F】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図2A】CLL患者細胞(n=8)における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図2B】CLL患者細胞(n=8)における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図2C】CLL患者細胞(n=8)における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図2D】CLL患者細胞(n=8)における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図3】CLL患者細胞(n=9)におけるADCCの分析結果をまとめた図である。
【図4】2人の異なるドナーからのNKエフェクター細胞を使用したCLL患者細胞におけるADCCの分析結果を示す図である。
【図5】CLL患者細胞および正常なB細胞上でのCD40およびCD20細胞表面発現の定量の結果を示す図である。
【図6】CD40およびCD20細胞表面発現を定量した細胞についてのADCC活性をまとめた図である。
【図7】DaudiおよびARH77細胞株上の細胞表面結合CHIR−12.12のレベルを示す棒グラフである。
【図8】FACS分析によるCLL患者細胞におけるCHIR−12.12およびリツキシマブの内在化の調査結果を示す図である。
【図9】FITC標識抗体の共焦点顕微鏡検査法による正常B細胞におけるCHIR−12.12およびリツキシマブの内在化の調査結果を示す図である。
【図10】Alexa488標識抗体の共焦点顕微鏡検査法によるCLL患者細胞におけるCHIR−12.12およびリツキシマブの内在化の調査結果を示す図である。
【図11】ADCC活性と内在化との関係をまとめた図である。
【図12】異なるFcγRIIIa遺伝子型を有するドナーからの精製NKエフェクター細胞ごとにCHIR−12.12またはリツキシマブによるDaudi細胞の最大特異的溶解率を示す棒グラフである。
【図13】異なるFcγRIIIa遺伝子型を有するドナーからの精製NKエフェクター細胞ごとにDaudi細胞上のCHIR−12.12またはリツキシマブのADCC効力(ED50)を示す棒グラフである。
【図14】多数の遺伝子型のヒトドナーからのヒトNK細胞ごとにCLL患者細胞(n=9)に対するCHIR−12.12およびリツキシマブの比較ADCCをまとめた図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗CD40抗体の新規使用、特に、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療における抗CD40抗体の新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リガンドの腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーの多数のメンバーおよびそれらの対応する受容体は、アポトーシスの誘導または細胞生存および増殖の増進により、正常な細胞の成長を調節する。アポトーシスシグナルと生存および増殖シグナルとのこのバランスが、正常な細胞の恒常性を維持する。少なくとも26のTNFファミリー受容体および18のTNFファミリーリガンドが、今日までに同定されている。前記受容体と前記リガンドの両方の生物活性形は、自己組織化タンパク質三量体である。前記受容体と前記リガンドの両方の膜貫通および可溶性型が同定されている。前記受容体の細胞内ドメインは、配列相同性を共有しないが、それらの細胞外ドメインは、40のアミノ酸、システインリッチリピートを含む。それらの細胞質テールは、細胞内タンパク質の2つの主要グループ[TNF受容体関連因子(TRAF)およびデスドメイン(DD)含有タンパク質]との相互作用によりシグナル伝達する。少なくとも6つのヒトTRAFとこれらの受容体の一部の細胞質テール上のTRAF結合部位との相互作用が、AKT(プロテインキナーゼBまたはPKBと呼ばれるセリン/トレオニンキナーゼ)、核因子−κB(NF−κB)およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)をはじめとする幾つかのシグナル経路を開始させる。例えば、Younes and Kadin(2003)J.Clin.Oncol.18:3526−3534による論評を参照のこと。
【0003】
TNFファミリー受容体メンバーCD40は、正常および新生物性両方のヒトB細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、CD8+T細胞、内皮細胞ならびに単球性および上皮性細胞の表面に存在する、50−55kDa細胞表面抗原である。CD40抗原は、活性化T細胞、活性化血小板、炎症化した血管平滑筋細胞、好酸球、関節リウマチの際の滑膜、皮膚線維芽細胞、および他の非リンパ球系細胞型上でも発現される。CD40を発現する細胞型に依存して、ライゲーションが細胞間接着、分化、活性化および増殖を誘導し得る。例えば、CD40のその同族リガンド、CD40L(CD154とも呼ばれる)、への結合は、B細胞増殖および形質細胞への分化、抗体生産、アイソタイプスイッチング、ならびにB細胞記憶生成を刺激する。B細胞分化中、CD40は、プレB細胞上で発現されるが、形質細胞に分化されると失われる。
【0004】
CD154としても公知のCD40リガンド(CL40L)は、32−33kDa膜貫通タンパク質であり、これは、より小さな2つの生物活性可溶性型であって、それぞれ18kDaおよび31kDaででも存在する(Grafら(1995)Eur.J.Immunol.25:1749−1754;Mazzeiら(1995)J.Biol.Chem.270:7025−7028;Pietravalleら(1996)J.Biol.Chem.271:5965−5967)。CD40Lは、活性化CD4+Tヘルパー細胞上では発現されるが、休止CD4+Tヘルパー細胞上では発現されない(Laneら(1992)Eur.J.Immunol.22:2573−2578;Spriggsら(1992)J.Exp.Med.176:1543−1550;およびRoyら(1993)J.Immunol.151:1−14)。CD40およびCD40Lの両方は、クローニングされ、特性付けされている(Stamenkoviら(1989)EMBO J.8:1403−1410;Armitageら(1992)Nature 357:80−82;Ledermanら(1992)J.Exp.Med.175:1091−1101;およびHollenbaughら(1992)EMBO J.11:4313−4321)。ヒトCD40Lを記載している特許文献1も参照のこと。CD40L遺伝子でトランスフェクトされ、表面でCD40Lタンパク質を発現する細胞は、B細胞増殖を誘発することができ、ならびに他の刺激シグナルと一緒に、抗体生産を誘導することができる(Armitageら(1992)上記を参照のこと;および特許文献1)。自己免疫疾患を有する患者は、健常な被検者では見られない、可溶性CD40L(sCD40L)の高い血清中レベルを有する。CD40Lの過発現は、齧歯動物モデルにおいて、全身性エリテマトーデスに類似した自己免疫疾患を引き起こす(Higuchiら(2002)J.Immunol.168:9−12)。対照的に、活性化T細胞上の機能的CD40Lの不在は、X連鎖高IgM症候群の原因となる(Allenら(1993)Science 259:990;およびKorthauerら(1993)Nature 361:539)。さらに、CD40/CD40L相互作用の遮断によって、非ヒト霊長類モデルにおいて、移植拒絶反応を予防することができる。例えば、Weeら(1992)Transplantation 53:501−7参照。
【0005】
APC上でのCD40発現は、これらの細胞の活性化において重要な補助刺激的役割を果たす。例えば、アゴニスト性抗CD40モノクローナル抗体(mAb)は、B細胞活性化においてTヘルパー細胞の効果を模倣することが証明されている。FcγRIIを発現する付着細胞上に提示されたとき、これらの抗体は、B細胞増殖を誘導する(Banchereauら(1989)Science 251:70)。さらに、IL−4の存在下、IgM、IgGおよびIgEの分泌のために、Tヘルパーシグナルの代わりにアゴニスト性抗CD40 mAbを用いることができる(Gascanら(1991)J.Immunol.147:8)。さらに、アゴニスト性抗CD40 mAbは、リンパ節から単離されたB細胞のプログラム細胞死(アポトーシス)を防止することができる。
【0006】
これらおよび他の観察は、CD40とCD40Lの相互作用が、体液性免疫反応と細胞媒介免疫反応の両方の調節において中心的役割を果たすという現行の理論を支持する。より最近の研究は、多様な生理および病理プロセスにおけるCD40/CD40L相互作用のさらにはるかに広範な役割を明らかにした。
【0007】
CD40シグナル伝達経路は、多くの細胞内因子の協調調節に依存する。TNF受容体ファミリーの他のメンバーと同様に、CD40は、CD40とCD40L(膜結合CD40Lまたは可溶性CD40Lのいずれか)の係合後、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、c−junアミノ末端キナーゼ(JNK)、p38 MAPKおよびNF−κBをはじめとする様々なシグナル経路をアップレギュレートする、TRAF−2、−3、−5および−6をはじめとするTRAFを活性化する(例えば、YounesおよびCarbone(1999)Int.J.Biol.Markers 14:135−143;van KootenおよびBanchereau(2000)J.Leukoc.Biol.67:2−17参照)。
【0008】
CD40経由のシグナル伝達が、アポトーシスからの細胞死を防止することは証明されている(Makusら(2002)J.Immunol.14:973−982)。アポトーシスシグナルは、プログラム細胞死を協調して誘導するために必要である。細胞死シグナルは、小胞体ストレスなどの細胞内からの内因性刺激を含み、またはFasLもしくはTNFαの受容体結合などの外因性刺激を含み得る。このシグナル経路は、複雑であり、Caspase−3およびCaspase−9などのカスパーゼの活性化、ならびにポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性化を含む。このカスケードの間に、抗アポトーシスシグナル伝達タンパク質、例えばmcl−1およびbcl−x、ならびにタンパク質のIAPファミリーのメンバー、例えばX連鎖アポトーシス阻害因子(XIAP)は、ダウンレギュレートされる(Budihardjoら(1999)Annu.Rev.Cell Dev.Biol.15:269−290)。例えば、樹状細胞において、CD40細胞シグナル伝達は、FasLによって伝達されるアポトーシスシグナルを遮断することができる(Bjorckら(1997)Intl.Immunol.9:365−372)。
【0009】
従って、CD40LによるCD40係合およびその後のCD40シグナル伝達の活性化は、正常な免疫反応に必要な段階であるが、CD40シグナル伝達の調節不良が死をもたらし得る。CD40シグナル経路が、自己免疫疾患に関与することは証明されている(Ichikawaら(2002)J.Immunol.169:2781−2787およびMooreら(2002)J.Autoimmun.19:139−145)。加えて、CD40/CD40L相互作用は、炎症プロセスにおいて重要な役割を果たす。例えば、ヒトおよび実験的アテローム性動脈硬化症病巣では、CD40とCD40Lの両方が過発現される。CD40刺激は、アテローム関連細胞型、例えば内皮細胞、平滑筋細胞およびマクロファージ、において基質分解酵素の発現および組織因子の発現を誘導する。さらにCD40刺激は、炎症性サイトカイン、例えばIL−1、IL−6およびIL−8、ならびに付着分子、例えばICAM−1、E−セレクチンおよびVCAM、の生産を誘導する。CD40/CD49L相互作用の阻害は、動物モデルにおいて、アテローム発生を防止する。移植モデルにおいて、CD40/CD40L相互作用の遮断は、炎症を防止する。CD40/CD40L結合は、アルツハイマーアミロイド−ベータペプチドと相乗的に作用して小グリア細胞の活性化を促進し、従って、神経毒性をもたらす。
【0010】
関節リウマチ(RA)を有する患者の場合、関節軟骨細胞上でのCD40発現が増加され、故に、CD40シグナル伝達は、障害性サイトカインおよびマトリックスメタロプロテアーゼの生産に寄与する可能性が高い。Gotohら(2004)J.Rheumatol.31:1506−1512参照。さらに、RA患者からのCD14+滑膜細胞上でのCD40のライゲーションによるMAPKおよびNF−κBの活性化により、滑膜炎症反応が発生する(Harigaiら(2004)Arthritis.Theum.50.2167−2177)。RAの実験モデルにおいて、抗CD40L抗体治療は、疾病誘導、関節炎症および抗コラーゲン抗体生産を予防した(Durieら(1993)Science 261:1328−1330)。最終的に、臨床試験において、Rituxan(登録商標)(一般に、B細胞リンパ腫に対して適用される)の投与によるRA患者のCD20+陽性細胞の枯渇により症状が改善されることが証明された(Shawら(2003)Ann.Rheum.Dis.62(Suppl.2):ii55−ii59)。
【0011】
T細胞への抗原提示中のCD40/CD40L相互作用の遮断がT細胞耐性を誘導することも証明されている。従って、CD40/CD40L相互作用の遮断は、初期T細胞活性化を防止し、ならびに抗原への再暴露に対する長期的な耐性を誘導する。
【0012】
ヒト抗CD40モノクローナル抗体およびその多数の使用は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、および特許文献8として公開されている共同所有特許出願に開示されている。これらの出願には、ヒトIgG1重鎖遺伝子座およびヒトκ軽鎖遺伝子座を有するトランスジェニックマウス(XenoMouse(登録商標)technology;Abgenix、カリフォルニア州)の免疫処置によって産生されたヒトIgG1抗CD40モノクローナル抗体(本明細書中でCHIR−12.12と呼ばれている)が特に開示されている。
【0013】
FACS分析によって証明されたように、CHIR−12.12は、ヒトCD40に特異的に結合し、CD40−リガンド(CD40L)結合を防止することができる。CHIR−12.12は、細胞表面CD40に予め結合されたCD40Lと競合し、排除することができる。CHIR−12.12モノクローナル抗体は、強力なアンタゴニストであり、正常および悪性B細胞のインビトロCD40L媒介増殖を阻害する。CHIR−12.12モノクローナル抗体は、正常ヒトBリンパ球においてCD40Lによって媒介される生存およびシグナル経路を直接阻害する。インビトロでは、CHIR−12.12は、ADCCによりNHL患者からの原発性癌細胞を死滅させる。異種移植ヒトリンパ腫モデルにおいて、用量依存性抗腫瘍活性が見られた。CHIR−12.12は、現在、B細胞悪性疾患についての第I相試験中である。
【0014】
CD20は、B細胞分化の初期に発現される細胞表面抗原であり、B細胞が成長する間、細胞表面に留まる。CD20は、B細胞活性化に関与し、新生物性B細胞上で非常に高レベルで発現され、ならびに臨床的に認知されている治療ターゲットである(例えば、Hooijbergら(1995)Cancer Research 55:2627参照)。CD20をターゲットにする抗体、例えばリツキシマブ(Rituxan(登録商標))、は、非ホジキンリンパ腫の治療用に米国食品医薬品局に認可されている(例えば、Boyeら(2003)Ann.Oncol.14:520参照)。Rituxanは、軽度、中等度および高度悪性非ホジキンリンパ腫(NHL)に対する有効な治療薬であることが証明された(例えば、Maloneyら(1994)Blood 84:2457−2466)、McLaughlinら(1998)J.Clin.Oncol.16:2825−2833、Maloneyら(1997)Blood 90:2188−2195、Hainsworthら(2000)Blood 95:3052−3056、Colombatら(2001)Blood 97:101−106、Coifferら(1998)Blood 92:1927−1932)、Foranら(2000)J.Clin.Oncol.18:3l7−324、Andersonら(1997)Biochem.Soc.Trans.25:705−708、またはVoseら(1999)Ann.Oncol.10:58a参照)。Rituxan(登録商標)は、炎症性および自己免疫疾患において一定の役割を果し得る正常なB細胞も枯渇させる。それらは、自己免疫疾患について臨床試験中である。
【0015】
正確な作用メカニズムは不明であるが、証拠は、Rituxsan(登録商標)の抗リンパ腫効果が、補体媒介性細胞障害(CMC)、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)、細胞増殖の阻害に、一部、起因し、最終的にはアポトーシスの誘導を命令することを示している。しかし、一部の患者は、Rituxan(登録商標)での治療に対して耐性を有するようになった(Witzigら(2002)J.Clin.Oncol.20:3262、Grillo− Lopezら(1998)J.Clin.Oncol.16:2825、またはJazirehiら(2003)Mol.Cancer Ther.2:1183−1193参照)。例えば、一部の患者は、抗CD20抗体療法後、悪性B細胞上でのCD20発現を喪失する(Davisら(1999)Clin.Cancer Res.5:611)。さらに、軽度悪性NHLを有する患者の30%〜50%は、このモノクローナル抗体に対する臨床反応を示さない(Hainsworthら(2000)Blood 95:3052−3056;Colombatら(2001)Blood 97:101−106)。NHLにおけるリツキシマブの臨床活性が、患者のFcγRIIIa遺伝子型と相関することも証明された。V/VまたはV/FのFcγRIIIa 158aa多型を有する患者は、F/Fを有する者よりリツキシマブに対して反応性が高い(例えば、Cartronら(2002)Blood 99(3):754−758、またはDall’Ozzoら(2004)Cancer Res.64:4664−4669参照)。このモノクローナル抗体に対する耐性を発現している患者、またはこの抗体での初期療法に対して耐性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者には、別の形の治療介入形態が必要である。
【0016】
さらに、Rituxan(登録商標)は、患者における正常なB細胞を枯渇させる。従って、B細胞依存性自己免疫および炎症性疾患を治療するためにそれを使用することができる。
【特許文献1】米国特許第5,945,513号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/044854号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/044304号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2005/044305号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2005/044306号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2005/044855号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2005/044307号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2005/044294号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このように、炎症性疾患および自己免疫疾患のための新規治療薬および新規治療戦略が、引き続き必要とされている。特に、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))などの抗CD20抗体での治療に対して難治性の患者を治療するための新規治療戦略が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の簡単な概要)
FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であるヒト患者を、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法を提供する。前記方法は、治療または予防有効量の抗CD40抗体を前記患者の投与することを含む。本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための薬物の製造における、治療または予防有効量の抗CD40抗体の使用にも備えている。
【0019】
FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害する方法も提供し、前記方法は、前記ヒト患者に有効量の抗CD40抗体を投与することを含む。本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害するための薬物の製造における、有効量の抗CD40抗体の使用にも備えている。
【0020】
抗CD40抗体で治療することができ、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対しては難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するための方法およびキットも提供する。一部の実施形態において、前記方法は、a)CD40発現性細胞と関連があり、かつリツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定することを含み、そのヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、その炎症性疾患または自己免疫疾患を抗CD40抗体で治療することができる。本発明は、この方法を使用して特定された患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与する段階をさらに含み得る。抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者の特定に備える本発明のキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む。
【0021】
本発明は、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するための方法およびキットも提供する。一部の実施形態において、前記方法は、a)CD40発現性細胞と関連があり、かつリツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定することを含み、 そのヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、その炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に、抗CD40抗体が選択される。本発明は、この方法を使用して特定されたヒト患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与する段階をさらに含み得る。CD40発現性細胞と関連のある炎症性または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法の選択に備える本発明のキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む。
【0022】
本発明は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患についてヒト患者を治療するための方法も提供し、前記方法は、緩徐内在化型抗体を前記ヒト患者に投与することを含む。1つのそうした実施形態では、抗CD40抗体がその投与後にCD40発現性細胞によって有意に内在化されないように、治療または予防有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与する。もう1つのそうした実施形態では、抗CD40抗体がその投与後にCD40発現性細胞の表面に実質的に均一に分布したままであるように、治療または予防有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与する。さらにもう1つのそうした実施形態では、ヒト患者において治療または予防有効量の抗CD40抗体がその投与後にCD40発現性細胞の表面に存在するように、抗CD40抗体をヒト患者に投与する。
【0023】
本発明に従って使用するための抗CD40抗体は、CD40抗原に特異的に結合する。一部の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体、特にモノクローナル抗体は、ヒトFcγRIIIa−158Vに対する強い結合親和性、ヒトFcγRIIIa−158Fに対する強い結合親和性、またはヒトFcγRIIIa−158VとFcγRIIIa−158Fの両方に対する強い結合親和性を示す。これらの実施形態の一部において、抗CD40抗体は、効力のある抗体依存性細胞障害(ADCC)を生じさせるために十分な結合特性で、ヒト患者のナチュラルキラー(NK)細胞上の2つのFcγRIIIaアミノ酸158アロタイプ(VまたはF)のいずれかに結合することができる。好適な抗CD40抗体としては、例えば、CD40発現性細胞でのCD40−CD40Lシグナル伝達のアンタゴニストである抗CD40抗体を含む、有意なアゴニスト活性がない抗CD40抗体が挙げられるが、これに限定されない。一部の実施形態において、抗CD40抗体は、a)モノクローナル抗体CHIR−12.12;b)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体;c)配列番号2に示す配列、配列番号4に示す配列、配列番号5に示す配列、配列番号2および配列番号4に示す両方の配列、ならびに配列番号2および配列番号5に示す両方の配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;d)配列番号1に示す配列、配列番号3に示す配列、ならびに配列番号1および配列番号3に示す両方の配列から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;e)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;f)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;g)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;h)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;i)前記項目a)のモノクローナル抗体または前記項目c)−h)のいずれか1項目のモノクローナル抗体(この場合、前記抗体は、組換え生産される);ならびにj)前記項目a)−i)のいずれか1項目のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体(この場合、前記フラグメントは、ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する)から成る群より選択される。
【0024】
本発明の方法は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に使用することができる。例としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状狼瘡、ループス腎炎、サルコイドーシス、炎症性関節炎(若年性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎および痛風性関節炎を含む)、臓器もしくは組織移植の拒絶反応、超急性、急性もしくは慢性拒絶反応および/または移植片対宿主疾患、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性大腸炎、クローン病、セリアック病(グルテン過敏性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、強皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、免疫複合体疾患、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎および皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、間質性肺線維症、I型およびII型糖尿病、1、2、3および4型遅延型過敏症、アレルギーまたはアレルギー性疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない/意図されたものでない免疫反応、喘息、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性および刺激性接触皮膚炎、じんま疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、および慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、肺の炎症(肺移植片拒絶反応、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎および肺のアレルギー性疾患、例えば過敏性肺炎、好酸球性肺炎、骨髄および/または肺移植または他の原因に起因する閉塞性細気管支炎、移植片アテローム性動脈硬化症/移植片静脈硬化症ならびに膠原病、血管疾患および自己免疫疾患(例えば、関節リウマチおよびエリテマトーデス)に起因する肺線維症を含むが、これらに限定されない)、ならびにCD20発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法は、CD40とCD20の両方を発現する細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患に対して特に有利である。このように、本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してホモ接合性またはヘテロ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である患者のための抗CD20抗体をはじめとする他の治療薬での療法に対して反応しないまたは難治性である炎症性または自己免疫疾患を有する患者の治療を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、CHIR−12.12などの抗CD40抗体が、他のADCC媒介抗体があまり有効でないまたは比較的無力である条件下で、CD40発現性ターゲット細胞の効力のある抗体依存性細胞障害(ADCC)を媒介することができるという驚くべき発見をした。リツキシマブ(Rituxan(登録商標))などの他の抗体とは異なり、本発明に従って使用する抗CD40抗体は、効力のあるADCCを生じさせるために十分な結合特性で、ヒト患者のナチュラルキラー(NK)細胞上の2つのFcγRIIIaアミノ酸158アロタイプ(VまたはF)のいずれかに結合することができる。この発見は、予想外であり、全患者断面にわたって炎症性疾患または自己免疫疾患を治療する本発明者らの能力の進歩を意味する。
【0026】
従って、CHIR−12.12などの抗CD40抗体は、FcγRIIIa−158Vに関してホモ接合性(遺伝子型V/V)のヒト患者に加えて、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に使用することができる。
【0027】
従って、本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であるヒト患者を、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法を提供し、この方法は、治療または予防有効量の抗CD40抗体を前記ヒト患者に投与することを含む。本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための薬物の製造における、治療または予防有効量の抗CD40抗体の使用も提供する。
【0028】
上で述べたように、NHLにおけるリツキシマブの臨床活性が、患者のFcγRIIIa遺伝子型と相関することは証明されている。F/FのFcγRIIIa 158aa多型を有する患者は、V/VまたはV/Fを有する者よりリツキシマブに対する反応が小さい(例えば、Cartronら(2002)Blood 99(3):754−758、またはDall’Ozzoら(2004)Cancer Res.64:4664−4669参照)。上で述べたように、Rituxan(登録商標)は、自己免疫疾患について臨床検査中である。従って、本発明は、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))などの抗CD20抗体での治療に反応しない炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に有利である。さらに、抗体−毒素共役を使用する必要がないこうした効力のあるターゲット細胞死滅により、結果として、製造に費用がかからず、副作用がより少ない薬物が得られるであろう。
【0029】
CHIR−12.12などの抗CD40抗体は、FcγRIIIa−158Vに関してホモ接合性(遺伝子型V/V)のヒト患者に加えて、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害するための方法に使用することができる。
【0030】
従って、本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害する方法を提供し、この方法は、有効量の抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12、を前記ヒト患者に投与することを含む。本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害するための薬物の製造における、有効量の抗CD40抗体の使用も提供する。
【0031】
当業者は、FcγRIIIa−158Fに関して、ヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者においてB細胞による抗体生産を阻害できるとは予想し得なかったであろう。
【0032】
本発明によって、ADCC媒介性抗CD40抗体を投与することにより、個々のヒト患者のためにその患者のFcγRIIIa−158遺伝子型に基づいて治療計画を選択することができる。
本発明は、抗CD40抗体で治療することができ、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対しては難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するための方法を提供し、この方法は、
a)CD40発現性細胞と関連があり、かつリツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および
b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定すること
を含み、
前記ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、前記炎症性疾患または自己免疫疾患を治療することができる。本発明は、この方法を使用して特定されたヒト患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与する段階をさらに含み得る。
当業者は、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するこの方法を、好適な診断キットを使用して容易に行うことができる。このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な試薬を含むはずである。従って、本発明は、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するためのキットも提供する。好適なキットは、本明細書の他の箇所でより詳細に説明する。
本発明は、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するための方法も提供し、この方法は、
a)CD40発現性細胞と関連があり、かつリツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および
b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定すること
を含み、
前記ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、前記炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に抗CD40抗体が選択される。特に、抗CD40抗体は、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に優先して選択することができる。本発明は、この方法を使用して特定されたヒト患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与する段階をさらに含み得る。
【0033】
当業者は、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法のこの選択方法を、好適な診断キットを使用して容易に行うことができる。このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な試薬を含むはずである。従って、本発明は、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するためのキットを含む、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するためのキットも提供する。
【0034】
本発明者は、CHIR−12.12などの抗CD40抗体が、投与後にCD40発現性細胞によって有意に内在化されないという驚くべき発見もした。その代わり、CHIR−12.12などの抗CD40抗体は、投与後、有意な期間、CD40発現性細胞の表面に実質的に均一に分布している。これは、他の抗体、特に、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))などの抗CD20抗体とは対照的である。
【0035】
CD40発現性細胞表面でのCD40結合の継続期間、およびCD40発現性細胞表面での抗CD40抗体の均一な分布によって、抗CD40抗体は、ナチュラルキラー(NK)細胞上のFcγRIIIaなどのFcRへの結合によりCD40発現性ターゲット細胞の効力のある抗体依存性細胞障害(ADCC)を媒介することができる。
従って、本発明は、抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞によって有意に内在化されないように、治療または予防有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与することを含む、ヒト患者をCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法を提供する。
【0036】
本発明は、抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞の表面に実質的に均一に分布したままであるように、治療または予防有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与することを含む、ヒト患者をCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法も提供する。
【0037】
本発明は、ヒト患者において治療または予防有効量の抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞の表面に存在するように、抗CD40抗体をヒト患者に投与することを含む、ヒト患者をCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための方法も提供する。
【0038】
従って、本発明のこれらの態様は、緩徐内在化型抗体を患者に投与することを含む。「緩徐内在化型抗体」とは、有意な期間にわたって細胞表面に配置されたままである抗体を意味する。当業者はわかるであろうが、この特性は、治療が意図した効果を生ずるために抗体−受容体複合体の内在化を実際に必要とする多くの治療用途に有利だと考えられる特性と対照をなす。この文脈で、有意な期間は、一般に、3時間、好ましくは6時間、さらに好ましくは12時間、さらに好ましくは24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間以上である。
【0039】
好ましくは、CD40発現性細胞の表面に最初に配置された抗体の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%。少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、以上が、上の有意な期間の後、その細胞の表面に配置されたままである。
【0040】
抗体の内在化は、様々なアッセイによってアッセイすることができる。例えば、Daudiリンパ腫細胞株またはARH77 MM細胞株などの細胞株を使用して、内在化に対する候補抗体結合の効果を評価することができる。氷上で(内在化を阻止するために0.1%アジ化ナトリウムと共に)、または37℃で(アジ化ナトリウムを伴わずに)、一定期間(好適適切には3時間)、細胞をヒトIgG1(対照抗体)または候補抗体と共にインキュベートする。低温の染色用バッファ(PBS+1%BSA+0.1%アジ化ナトリウム)で洗浄した後、例えば、氷上で30分間、ヤギ抗ヒトIgG−FITCで細胞を染色する。その後、染色度をアッセイすることができる。この例では、幾何平均蛍光強度(MFI)を、例えばFACS Caliburにより、記録することができよう。他の好適なアッセイは、当業者には公知である(例えば、http://www.abgenix.com/documents/SBS2003%20poster.pdf参照)。
【0041】
本明細書中の実施例4および5において述べる実験では、アジ化ナトリウムの存在下、氷上で、またはアジ化ナトリウム不在下、37℃で、CH12.12と共にインキュベートした細胞間に、MFIの有意な差は観察されなかった(図7−10参照)。これらのデータは、CH12.12が、CD40に結合すると、内在化せず、細胞表面上に提示され続けることを示している。
【0042】
本発明を役立たせるために利用することができる標準的な技術および手順の概要を下に与える。本発明が、説明する特定の方法論、プロトコル、細胞株、ベクターおよび試薬に限定されないことは、理解されるであろう。本明細書において用いる専門用語が、特定の実施形態の説明のみを目的とするものであり、この専門用語が、本発明の範囲を限定するためのものでないことも理解されるはずである。本発明の範囲は、添付のクレームの項によってのみ限定される。
【0043】
ヌクレオチドおよびアミノ酸については標準的な略語を本明細書において用いている。
【0044】
本発明の実施には、別の指示がない限り、当業者の技能の範囲内である、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術および免疫学の従来の技術が利用されるであろう。
【0045】
そうした技術は、文献で十分に説明されている。参照に特に好適なテキストの例としては、次のものが挙げられる:Sambrookら(1989)Molecular Cloning;A Laboratory Manual(2d ed.);D.N Glover,ed.(1985)DNA Cloning,Volumes I and II;M.J.Gait,ed.(1984)Oligonucleotide Synthesis;B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization;B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984)Transcription and Translation;R.I.Freshney,ed.(1986)Animal Cell Culture;Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning;the Methods in Enzymology series(Academic Press,Inc.),特に、volumes 154 & 155;J.H.Miller and M.P.Calos,eds.(1987)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory);Mayer and Walker,eds.(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press, London);Scopes(1987)Protein Purification:Principles and Practice(2d ed.;Springer Verlag,N.Y.);およびD.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.(1986)Handbook of Experimental Immunology,Volumes I−IV。
【0046】
本発明の方法は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療における抗CD40抗体の使用を含む。
【0047】
「CD40」、「CD40抗原」または「CD40受容体」は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーの50−55kDa膜貫通糖タンパク質を指す(例えば、米国特許第5,674,492号および同第4,708,871号;Stamenkovicら(1989)EMBO 8:1403;Clark(1990)Tissue Antigens36:33;Barclayら(1997)The Leucocyte Antigen Facts Book(2d ed.;Academic Press,San Diego)参照)。この遺伝子の選択的スプライスを受けた転写変異体によってコードされているヒトCD40の2つのアイソフォームが同定されている。第一のアイソフォーム(「ロング・アイソフォーム」または「アイソフォーム1」としても公知)は、最初の19の残基によって表されるシグナル配列を有する、配列番号8(GenBankアクセッション番号X60592およびNM_001250)によってコードされている、277アミノ酸の前駆体ポリペプチド(配列番号9;GenBankアクセッション番号CAA43045として最初に報告され、GenBankアクセッション番号NP_001241でアイソフォーム1として同定された)として発現される。第二のアイソフォーム(「ショート・アイソフォーム」または「アイソフォーム2」としても公知)は、同様に最初の19の残基によって表されるシグナル配列を有する、配列番号6(GenBankアクセッション番号NM_152854)によってコードされている、203アミノ酸の前駆体ポリペプチド(配列番号7;GenBankアクセッション番号NP_690593)として発現される。ヒトCD40のこれら2つのアイソフォームの前駆体ポリペプチドは、それらの最初の165残基(すなわち、配列番号7および配列番号9の残基1−165)を共同で共有する。ショート・アイソフォームの前駆体ポリペプチド(配列番号7に示す)は、翻訳フレームシフトをもたらすコーディングセグメントを欠く転写変異体(配列番号6)によってコードされ、結果として生じるCD40アイソフォームは、CD40のロング・アイソフォーム(配列番号9の残基166−277で示すC末端)に含まれているものからの、より短い別個のC末端(配列番号7の前記166−203)を含有する。本発明のために、用語「CD40」、または「CD40抗原」、「CD40細胞表面抗原」、または「CD40受容体」は、CD40のショート・アイソフォームとロング・アイソフォームの両方を包含する。CD40抗原は、完全にグリコシル化されるか、または部分的にグリコシル化され得る。
【0048】
本明細書の他の箇所で述べているように、CD40は、正常および新生物性両方のヒトB細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、CD8+T細胞、内皮細胞、単球性および上皮性細胞、活性化T細胞、活性化血小板、炎症した血管平滑筋細胞、好酸球、関節リウマチの際の滑膜、皮膚線維芽細胞、および他の非リンパ球系細胞型の表面で見出される。
【0049】
本明細書における「CD40発現性細胞」は、検出可能なレベルのCD40抗原を発現する任意の正常または悪性細胞を指す。好ましくは、CD40発現性細胞は、検出可能なレベルの細胞表面CD40抗原を発現する細胞である。細胞におけるCD40の発現を検出するための方法は、当該技術分野において周知であり、PCR法、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、ELISAなどを含むが、これらに限定されない。これらの方法により、CD40 mRNA、CD40抗原および細胞表面CD40抗原を検出することができる。細胞表面CD40発現の検出は、本明細書中の実施例3において説明するとおり、または他の好適な方法により、行うことができる。
【0050】
「CD40リガンド」または「CD40L」は、主として32−33kDa膜貫通タンパク質を指し、これは、より小さな2つの生物活性可溶性型であって、それぞれ18kDaおよび31kDaででも存在する(Grafら(1995)Eur.J.Immunol.25:1749−1754;Mazzeiら(1995)J.Biol.Chem.270:7025−7028;Pietravalleら(1996)J.Biol.Chem.271:5965−5967)。ヒトCD40Lは、CD154またはpg39としても公知である。「CD40リガンド」または「CD40L」は、1つ以上のCD40シグナル経路に結合し、それらを活性化することができる、任意の他のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質も指す。従って、「CD40リガンド」は、CD40発現性細胞上のCD40に結合し、CD40シグナル伝達を刺激する機能を実行するために十分な活性を保持する、完全長CD40リガンドタンパク質ならびにそれらの変異体およびフラグメントを含むが、これらに限定されない。天然CD40リガンド、例えばヒトCD40L、への修飾としては、置換、欠失、トランケーション、伸長、融合タンパク質、フラグメント、ペプチド模倣体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
「CD40シグナル伝達」は、細胞表面CD40と、CD40リガンドまたは他のアゴニスト、例えばアゴニスト抗体、との相互作用の結果として生じる任意の生物活性を意味する。CD40シグナル伝達の例は、CD40発現性細胞の増殖および生存ならびにCD40発現性細胞内の1つ以上のCD40シグナル経路の刺激をもたらすシグナルである。CD40「シグナル経路」または「シグナル伝達経路」は、CD40受容体と、CD40リガンド、例えばCD40L、との相互作用の結果として生じる、ならびにそのシグナル経路を通して伝達されたときにそのシグナル伝達カスケードにおける1つ以上の下流分子の活性化をもたらすシグナルを生成させる、少なくとも1つの生化学反応または一群の性化学反応を意味する。シグナル伝達経路は、シグナルを細胞表面CD40受容体から、細胞形質膜を越えて、一連のシグナル伝達分子のうちの1つ以上まで、その細胞の細胞質まで、および場合によってはその細胞核へと伝達することとなる、多数のシグナル伝達分子を含む。本発明にとって特に関心が高いのは、AKTシグナル経路[AKTの活性化をもたらし、最終的にはNF−κBシグナル経路によりNF−κBの活性化をもたらす]およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル経路[ERKおよびp38の活性化をそれぞれもたらす、MEK/ERKシグナル経路およびMEK/p38シグナル経路を含む]をはじめとするCDシグナル伝達経路である。
【0052】
上で述べたように、本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であるヒト患者を、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療する方法を提供し、この方法は、前記ヒト患者の治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与することを含む。
【0053】
「ヒト患者」は、CD40発現性細胞と関連のある任意の炎症性疾患または自己免疫疾患に罹患している、または前記疾患を発現もしくは再発するリスクを有する、人間の患者を意味する。
【0054】
「CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患」は、CD40発現性細胞と関連のある任意の炎症性疾患または自己免疫疾患を意味する。CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患は、CD40発現性細胞での望ましくないCD40シグナル伝達レベルと関連のある炎症性疾患もしくは自己免疫疾患であってよく、またはCD40発現性細胞とは間接的にしか関連のない炎症性疾患もしくは自己免疫疾患であり得る。「望ましくないCD40シグナル伝達レベルと関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患」は、その発現または進行が望ましくないCD40シグナル伝達レベルと関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を意味する。
【0055】
「望ましくないCD40シグナル伝達レベル」は、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者におけるCD40発現性細胞において発生し得る、任意の生理学的に望ましくないCD40シグナル伝達レベルを意味する。
【0056】
炎症性疾患は、炎症および組織破壊またはこれらの組み合わせを特徴とする。「炎症性疾患」は、免疫反応の開始事象またはターゲットが、例えば、同種抗原、異種抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、未知の抗原またはアレルゲンをはじめとする非自己抗原(単数または複数)を伴う、任意の炎症性免疫媒介プロセスを含む。
【0057】
本明細書で用いる場合、用語「自己免疫」は、一般に、「自己」抗原を含む炎症性免疫媒介プロセスを包含すると解釈する。自己免疫性疾患において、自己抗原(単数または複数)は、宿主免疫反応を誘発する。
【0058】
本発明は、組織移植拒絶反応と関連のある炎症の治療において使用することができる。「移植拒絶反応」または「移植片拒絶反応」は、HLA抗原、血液型抗原などをはじめとする(しかし、これらに限定されない)、移植片に対する任意の宿主誘発免疫反応を指す。
【0059】
本発明は、例えば、骨髄移植と関連のあるものなどの移植片対宿主疾患を治療するために使用することもできる。こうした移植片対宿主疾患におけるドナー骨髄としては、リンパ球、およびリンパ球へと成熟する細胞が挙げられる。ドナーのリンパ球は、レシピエントの抗原を非自己と認識し、炎症性免疫反応を誘発する。従って、本明細書で用いる場合、「移植片対宿主疾患」または「移植片対宿主反応」は、ドナーリンパ球が宿主の抗原に反応する任意のT細胞媒介免疫反応を指す。
【0060】
本発明の方法に従って治療することができる炎症性疾患および自己免疫疾患としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状狼瘡、ループス腎炎、サルコイドーシス、炎症性関節炎(若年性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎および痛風性関節炎を含む)、臓器もしくは組織移植の拒絶反応、超急性、急性もしくは慢性拒絶反応および/または移植片対宿主疾患、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性大腸炎、クローン病、セリアック病(グルテン過敏性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、強皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、免疫複合体疾患、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎および皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、間質性肺線維症、I型およびII型糖尿病、1、2、3および4型遅延型過敏症、アレルギーまたはアレルギー性疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない/意図されたものでない免疫反応(例えば、米国特許出願番号US2002/0119151、およびKorenら(2002)Curr.Pharm.Biotechnol.3:349−60参照)、喘息、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性および刺激性接触皮膚炎、じんま疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、および慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシーなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法は、肺移植片拒絶反応、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎および肺のアレルギー性疾患、例えば過敏性肺炎、好酸球性肺炎、骨髄および/または肺移植または他の原因に起因する閉塞性細気管支炎、移植片アテローム性動脈硬化症/移植片静脈硬化症、ならびに膠原病、血管疾患および自己免疫疾患(例えば、関節リウマチおよびエリテマトーデス)に起因する肺線維症をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、肺の炎症の治療においても有用である。
【0061】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患であり得る。抗体依存性自己免疫疾患の例としては、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、またはシェーグレン症候群が挙げられる。
【0062】
さらに、B細胞および他のCD40保有細胞の枯渇は、CD40リガンド結合によるシグナル伝達によるT細胞活性化を制限し得る。従って、B細胞および他のCD40保有細胞の枯渇を利用して、T細胞媒介自己免疫および炎症性疾患、例えば、多発性硬化症、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病または糖尿病を治療することができよう。骨髄移植にも有用であろう。
【0063】
本発明は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患に関して特に有利である。本明細書において開示するCHIR−12.12は、本明細書の他の箇所でより詳細に説明しているように、Rituxan(登録商標)などの抗CD20抗体をはじめとする他の治療薬での療法に対して難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者を治療するために使用することができる。
【0064】
「治療」は、本明細書では、被検者への抗CD40抗体の適用もしくは投与または被検者からの単離された組織または細胞株への抗CD40抗体の適用もしくは投与と定義し、この場合、前記被検者は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患と関連のある症状、または自己免疫疾患および/または炎症性疾患を発現する素因を有し、その目的は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患の任意の関連する症状、または自己免疫疾患および/または炎症性疾患を発現する素因を治す、癒す、緩和する、和らげる、改変する、軽減する、改善する、向上させる、またはそれらに作用することである。「治療」は、被検者への抗CD40抗体を含む医薬組成物の適用もしくは投与、または被検者から単離された組織もしくは細胞株への抗CD40抗体を含む医薬組成物の適用もしくは投与も意味し、この場合、前記被検者は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患と関連のある症状、または自己免疫疾患および/または炎症性疾患を発現する素因を有し、その目的は、自己免疫疾患および/または炎症性疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患の任意の関連する症状、または自己免疫疾患および/または炎症性疾患を発現する素因を治す、癒す、緩和する、和らげる、改変する、軽減する、改善する、向上させる、またはそれらに作用することである。
【0065】
「抗炎症活性」は、炎症の低減または予防を意味する。本明細書の他の箇所で定義する抗CD40抗体での療法は、CD40抗原を発現する細胞を伴う自己免疫疾患および/または炎症性疾患の治療に関して有益である生理反応を生じさせる。本発明の方法が、増殖、活性化などのような細胞の表現型変化の防止に有用であり得ることは理解される。
【0066】
本発明の治療方法では、本明細書の他の箇所で定義するとおりの少なくとも1つの抗CD40抗体を使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患に関する陽性治療反応を促進する。
【0067】
炎症性疾患または自己免疫疾患に関して、「陽性治療反応」は、抗体の抗炎症活性と関連のある疾患の改善、および/または前記疾患と関連のある症状の改善を意味する。すなわち、抗増殖効果;CD40発現性細胞のさらなる増殖の予防;炎症性サイトカイン、接着分子、プロテアーゼ、免疫グロブリン(CD40保有細胞がB細胞である場合)、これらの組み合わせなどの分泌減少をはじめとする(しかしそれらに限定されない)炎症反応の低減;抗炎症性タンパク質の生産増加;自己反応性細胞数の減少、免疫寛容性の増加;自己反応性細胞の生存の抑制;および/またはCD40発現性細胞の刺激によって媒介される1つ以上の症状の低減を観察することができる。そうした陽性治療反応は、投与経路に限定されず、ならびにドナー、ドナー組織(例えば、臓器潅流など)、宿主およびこれらの任意の組み合わせなどへの投与を含むことができる。
【0068】
臨床反応は、スクリーニング技術、例えば、磁気共鳴撮像(MRI)スキャン、X線撮影イメージング、コンピュータ連動断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリーまたは蛍光細胞分析分離装置(FACS)分析、組織学、肉眼的病理および血液化学(ELISA、RIA、クロマトグラフィーなどによって検出できる変化を含むが、これらに限定されない)などを用いて評価することができる。これらの陽性治療反応に加えて、抗CD40抗体での療法を受ける被検者は、その疾患と関連のある症状の改善という有益な効果を経験することができる。
【0069】
「治療または予防有効用量」または「治療または予防有効量」は、投与されたとき、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有する患者の治療に対して陽性治療反応を生じさせる抗CD40抗体の量を意味する。好適な用量は、本明細書の他の箇所でより詳細に説明する。本治療方法は、本明細書の他の箇所でより詳細に説明するように、抗CD40抗体の治療有効用量の単回投与を含むこともあり、または治療有効用量の多数回投与を含むこともある。
【0070】
本発明の方法は、炎症性または自己免疫疾患のための1つ以上の公知の療法に対して難治性である、上に列挙したものをはじめとする炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に、特に有用である。そうした療法としては、本明細書の他の箇所でより詳細に説明するような、外科手術または外科手術手順(例えば、脾臓摘出術、リンパ節切除術、甲状腺切除術、血漿分離交換法、白血球フェレーシス、細胞、組織または臓器移植、腸の処置、臓器潅流など);放射線療法;ステロイド療法および非ステロイド療法などの療法;ホルモン療法;サイトカイン療法;外皮用剤(例えば、アレルギー、接触皮膚炎および乾癬などの皮膚の状態を治療するために使用される局所用薬剤)での療法;免疫抑制療法;および他の抗炎症性モノクローナル抗体療法などが挙げられるが、これらに限定されない。「難治性」とは、特定の炎症性疾患または自己免疫疾患が、特定の療法に対して耐性である、または反応しないことを指す。炎症性疾患または自己免疫疾患は、特定の療法に対して、その特定の療法での治療の開始から難治性である(すなわち、その療法への最初の暴露に対して反応しない)場合もあり、またはその療法に対する耐性発現の結果として、その療法での最初の治療期間の経過と共に、もしくはその療法での後続の治療期間中に、難治性となり得る。従って、本発明は、炎症性または自己免疫疾患のための治療に対して難治性であるヒト患者の治療に、前記ヒト患者が前記療法に対して耐性であるまたは反応しないとき、有用である。
【0071】
本発明の方法は、抗CD40抗体の使用を伴う。「抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から成る約150,000ダルトンのヘテロ四量体型糖タンパク質である。それぞれの軽鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結されているが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。重鎖および軽鎖それぞれは、規則正しい間隔の鎖間ジスルフィド結合も有する。それぞれの重鎖は、一方の末端に1つの可変ドメイン(VH)、それに続いて多数の定常ドメインを有する。それぞれの軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)を、およびもう一方の末端に定常ドメインを有し、その軽鎖の定常ドメインが、重鎖の第1定常ドメインとアラインされ、軽鎖可変ドメインが重鎖の可変ドメインとアラインされる。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの界面を形成すると考えられている。用語「可変」は、可変ドメインの一定の部分が、抗体間で配列の点で大いに異なることを指す。可変領域が抗原結合特異性を付与する。定常領域は、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば、Fc受容体(FcR)結合、抗体依存性細胞毒性への抗体の関与、補体依存性細胞障害の開始およびマスト細胞脱顆粒を示す。
【0072】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明瞭に異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0073】
それらの「重鎖」の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。ヒト免疫グロブリンには5つの主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgFおよびIgMがあり、これらの幾つかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2、にさらに分けることができる。前記異なる免疫グロブリンクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。前記異なる免疫グロブリンクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は、周知である。異なるアイソタイプは、異なるエフェクター機能を有する。例えば、ヒトIgG1およびIgG3アイソタイプは、ADCC(抗体依存性細胞媒介性障害)活性を有する。IgG1抗体、特にヒトIgG1抗体は、本発明の方法において特に有用である。
【0074】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を果たす白血球である。好ましくは、前記細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、抗原依存性細胞媒介性障害(ADCC)エフェクター機能を遂行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、好酸球および好中球が挙げられ、PBMCおよびNK細胞が好ましい。ADCC活性を有する抗体は、典型的に、IgG1またはIgG3アイソタイプのものである。IgG1およびIgG3抗体の単離に加えて、そうしたADCC媒介抗体は、非ADCC抗体からの可変領域または可変領域フラグメントをIgG1またはIgG3アイソタイプ定常領域に遺伝子工学で作ることによって、作ることができることに留意すること。
【0075】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するために使用する。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体(これらの受容体の対立変異体および選択的スプライスを受けた形を含む)を含む。FcγRII受容体は、主として細胞質ドメインが異なる類似したアミノ酸配列を有する、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含む。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron(1997)Annu.Rev.Immunol.15:203−234参照)。FcRは、RavetchおよびKinet(1991)Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991);Capelら(1994)Immunomethods 4:25−34;およびde Haasら(1995)J.Lab.Clin.Med.126:330−341において論評されている。将来同定されるものを含む他のFcRは、本明細書における用語「FcR」に包含される。この用語は、母体IgGの胎児への移動に責任を負う新生児受容体、FcRn(Guyerら(1976)J.Immunol.117:587、およびKimら(1994)J.Immunol.24:249(1994))も含む。
【0076】
用語「抗体」は、本明細書では最も広い意味で使用し、完全に組み立てられた抗体、CD40抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fvおよび他のフラグメント)、1本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体キメラ、ハイブリッド抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体など)、および前述のものを含む組換えペプチドを包含する。用語「抗体」は、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を包含する。
【0077】
本明細書で用いる場合、「抗CD40抗体」は、CD40抗原を特異的に認識する任意の抗体を包含する。一部の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体、特に、モノクローナル抗CD40抗体は、CD40抗原に対する強い単一部位結合親和性を示す。そうしたモノクローナル抗体は、Biacore(登録商標)などの標準的なアッセイを使用して測定したとき、少なくとも10−5Mの、少なくとも3×10−5Mの、好ましくは少なくとも10−6Mの、または少なくとも10−7Mまでの、さらに好ましくは少なくとも10−8Mの、または少なくとも10−12Mの親和性を示す。Biacore分析は、当該技術分野において公知であり、その詳細は、「BIAapplications handbook」に提供されている。WO 01/27160に記載されている方法を使用して、結合親和性を調整することができる。
【0078】
「特異的に認識する」または「に特異的に結合する」は、抗CD40抗体が、CD20抗原などの関連のない抗原には結合しないことを意味する。
【0079】
一部の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体、特に、モノクローナル抗体は、ヒトFcγRIIIa−158Vに対して強い結合親和性を示す。好ましくは、本発明において使用するための抗CD40抗体は、Biacore(登録商標)などの標準的なアッセイを使用して測定したとき、少なくとも約0.5μMの親和性(KD)で、ヒトFcγRIIIa−158Vに結合する。本明細書の実施例6において開示するように、CHIR−12.12抗体は、492nMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Vに結合する。
【0080】
一部の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体、特に、モノクローナル抗体は、ヒトFcγRIIIa−158Fに対して強い結合親和性を示す。好ましくは、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、Biacore(登録商標)などの標準的なアッセイを使用して測定したとき、少なくとも約12μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Fに結合する。好ましくは、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、少なくとも約10μM、少なくとも約8μM、少なくとも約6μM、少なくとも約5μM、少なくとも約4μM、または少なくとも約3μMの親和性(KD)で、ヒトFcγRIIIa−158Fに結合する。本明細書の実施例6において開示するように、CHIR−12.12抗体は、2.8μMの親和性(KD)で、ヒトFcγRIIIa−158Fに結合する。
【0081】
一部の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体、特に、モノクローナル抗体は、ヒトFcγRIIIa−158VとFcγRIIIa−158Fの両方に対して強い結合親和性を示す。好ましくは、本発明において使用するための抗CD40抗体は、Biacore(登録商標)などの標準的なアッセイを使用して測定したとき、少なくとも約0.5μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Vに、少なくとも約12μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Fにおよび結合する。
【0082】
本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、当業者には公知の任意の好適な抗体生産法を使用して生産することができる。
【0083】
本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、ポリクローナル抗体であってもよい。例えば、ポリクローナル血清は、従来の方法によって作製することができる。一般に、先ず、対象となる抗原(この場合、CD40抗原)を含有する溶液を使用して、好適な動物、好ましくは、マウス、ラット、ウサギまたはヤギを免疫する。得ることができる血清の容量、および標識された抗ウサギおよび抗ヤギ抗体の入手可能性のため、ポリクローナル血清の作製にはウサギまたはヤギが好ましい。
【0084】
免疫された動物からの血清を初期抗原に対する抗体反応についてスクリーニングすることができる。リンパ球をリンパ節または脾臓細胞から単離することができ、さらに、CD138陰性およびCD19陽性細胞についての選択により、B細胞について選択することができる。1つの態様では、本明細書中で詳述するように、そうしたB細胞培養物(BCC)を骨髄腫細胞に融合させて、ハイブリドーマを生成することができる。
【0085】
ポリクローナル血清は、トランスジェニック動物、好ましくは、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスにおいて作製することもできる。好ましい実施形態では、対象となるタンパク質(この場合、CD40抗原)を発現するSf9細胞を免疫原として使用する。免疫処置は、食塩水中で、好ましくはフロイント完全アジュバント中で、抗原含有溶液を混合または乳化し、その混合物またはエマルジョンを非経口的に(一般には皮下的にまたは筋肉内的に)注射することによって行うこともできる。一般に、50−200μg/注射の用量で十分である。免疫処置は、一般に、2−6週間後、前記食塩水中のタンパク質の1回以上の注射で、好ましくはフロイント不完全アジュバントを使用して、追加免疫する。あるいは、当該技術分野において公知の方法を使用するインビトロ免疫処置によって抗体を産生させることもでき、これは、本発明の目的には、インビボ免疫処置と等価であると考えられる。ポリクローナル血清は、免疫した動物から採血してガラスまたはプラスチック容器に入れ、その血液を1時間、25℃でインキュベートし、その後、2−18時間、4℃でインキュベートすることによって得る。その血清を遠心分離(例えば、10分間、1,000×g)によって回収する。ウサギからは1回の採血につき約20−50mLを採取することができる。
【0086】
Sf9(Spodoptera fungiperda)細胞の生産は、米国特許第6,004,552号(本明細書に参照として組み込まれている)に開示されている。CD40の場合、簡単に言えば、ヒトCD40をコードする配列をトランスファーベクターを使用してバキュロウイルスへと組み換えた。それらのプラスミドを野生型バキュロウイルスDNAでSf9細胞へとコ・トランスフェクトした。組換えバキュロウイルス感染Sf9細胞を同定し、クローン精製した。
【0087】
本発明の方法において使用する抗CD40抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。用語「モノクローナル抗体」(および「mAb」)は、本明細書で用いる場合、抗体の実質的に均一な集団から得られた抗体を指し、すなわち、前記集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然突然変異を除き、同一である。この用語は、抗体の種に関する限定を受けず、任意の特定の方法による抗体の生産を必要としない。
【0088】
種々の抗原決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を一般に含むポリクローナル抗体の作製とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基(エピトープ)に対するものである。
【0089】
「エピトープ」は、抗体が生産され、抗体が結合することとなる、抗原分子の一部を意味する。エピトープは、線状アミノ酸残基(すなわち、エピトープ内の残基が、逐次的に次々と線形に配列されている)、非線状アミノ酸残基(本明細書では「非線状エピトープ」と呼ぶ;これらのエピトープは、逐次的に配列されていない)、または線状および非線状、両方のアミノ酸残基を含むことができる。本発明の方法における使用に好適な抗CD40モノクローナル抗体は、ヒト細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原上のエピトープ、すなわち細胞の外部に暴露されるエピトープ、に特異的に結合することができるであろう。
【0090】
本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)によって作ることができる。モノクローナル抗体は、例えば、McCaffertyら(1990)Nature 348:552−554(1990)および米国特許第5,514,548号に記載されている技術を使用して産生された抗体ファージライブラリから単離することもできる。Clacksonら(1991)Nature 352:624−628およびMarksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597には、ファージライブラリを使用するマウスおよびヒト抗体の単離がそれぞれ記載されている。後続の出版物には、鎖シャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の生産(Marksら(1992)Bio/Technology 10:779−784)、ならびに非常に大きなファージライブラリを構築するための戦略としての組換え感染およびインビボ組換え(Waterhouseら(1993)Nucleic.Acids Res.21:2265−2266)が記載されている。このように、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代案である。
【0091】
Kohlerら(1975)Nature 256:495−496の伝統的な方法では、一般に、抗原を含有する溶液でマウスを免疫する。免疫処置は、食塩水中で、好ましくは、フロイント完全アジュバントなどのアジュバント中で、抗原含有溶液を混合または乳化し、その混合物またはエマルジョンを非経口的に注射することによって行うことができる。当該技術分野において公知の任意の免疫法を使用して、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。動物を免疫した後、その脾臓(および場合によっては幾つかの大きなリンパ節)を除去し、単個細胞へと分離する。それらの脾臓細胞は、対象となる抗原でコーティングしたプレートまたはウエルに細胞懸濁液を塗布することによって、スクリーニングすることができる。その抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現するB細胞は、そのプレートに結合し、すすぎ落とされない。その後、結果として生じたB細胞、すなわち、すべての分離された脾臓細胞を、骨髄腫と融合してハイブリドーマを形成するように誘導し、選択培地中で培養する。結果として生じた細胞を系列希釈によってプレーティングし、対象となる抗原に特異的に結合する(および関連のない抗原には結合しない)抗体の生産についてアッセイする。その後、それらの選択されたモノクローナル抗体(mAb)分泌性ハイブリドーマを、インビトロで(例えば、組織培養ビンもしくは中空繊維反応器内で)またはインビボで(マウスにおいて腹水として)培養する。
【0092】
もう1つの態様において、B細胞培養物は、好ましくは、初期抗原に対する反応性についてさらにスクリーニングすることができる。そうしたスクリーニングとしては、ターゲット/抗原タンパク質での酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、対象となる抗原に結合する既知抗体との競合アッセイ、および一過的にトランスフェクトされたCHOへのまたはターゲット抗原を発現する他の細胞へのインビトロ結合が挙げられる。
【0093】
本発明の方法において使用するための抗CD40抗体を、組換えDNA法を使用して作製する場合、モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、容易に単離され、配列決定される。本明細書に記載するハイブリドーマ細胞は、そうしたDNAの好ましい供給源として役立つ。単離したら、そのDNAを発現ベクター内に配置することができ、その後、それを、別様には免疫グロブリンタンパク質を生産しない宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞、にトランスフェクトして、前記組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を達成する。抗体をコードするDNAの細菌内での組換え発現に関する総説としては、Skerraら(1993)Curr.Opinion in Immunol.5:256、およびPhickthun(1992)Immunol.Revs.130:151が挙げられる。あるいは、抗体は、米国特許第5,545,403号、同第5,545,405号および同第5,998,144号(本明細書に参照として組み込まれている)に開示されているように、CHO細胞株などの細胞株において生産することができる。簡単に言えば、軽鎖および重鎖をそれぞれ発現することができるベクターで、前記細胞株をトランスフェクトする。別個のベクター上の2つのタンパク質をトランスフェクトすることにより、キメラ抗体を生産することができる。もう1つの利点は、抗体の正しいグリコシル化である。
【0094】
「宿主細胞」は、本明細書で用いる場合、組換えベクターまたは他のトランスファーポリヌクレオチドのためのレシピエントとして使用することができまたは使用されている、微生物または真核細胞、または単細胞単位として培養された細胞株を指し、トランスフェクトされた原細胞の後代を含む。単個細胞の後代が、自然な、偶発的な、または意図的な突然変異のため、形態の点でまたはゲノムもしくは全DNA補体の点で、必ずしも原親と完全に一致しない場合があることは、理解される。
【0095】
一部の実施形態において、CHIR12.12などの抗CD40抗体は、グルタミンシンセターゼをマーカーとして使用する、GS遺伝子発現系(ニューハンプシャー州、ポーツマスのLonza Biologics)を使用して、CHO細胞において生産される。例えば、米国特許第5,122,464号、同第5,591,639号、同第5,658,759号、同第5,770,359号、同第5,827,739号、同第5,879,936号、同第5,891,693号および同第5,981,216号(これらの内容は、本明細書に参照として組み込まれている)も参照。
【0096】
CD40に対するモノクローナル抗体は、当該技術分野において公知である。例えば、McMichael,ed.(1987;1989)Leukocyte Typing III and IV(Oxford University Press,New York);米国特許第5,674,492号、同第5,874,082号、同第5,677,165号および同第6,056,959号;WO 00/63395;国際公報番号 WO 02/28905およびWO 02/28904;Gordonら(1988)J.Immunol.140:1425;Valleら(1989)Eur.J.Immunol.19:1463;Clarkら(1986)PNAS 83:4494;Paulieら(1989)J.Immunol.142:590;Gordonら(1987)Eur.J.Immunol.17:1535;Jabaraら(199O)J.Exp.Med.172:1861;Zhangら(199I)J.Immunol.146:1836; Gascanら(1991)J.Immunol.147:8;Banchereauら(1991)Clin.Immunol.Spectrum 3:8;およびBanchereauら(1991)Science 251:70(これらのすべてが、本明細書に参照として組み込まれている)におけるB細胞抗原に割り当てられたセクションを参照のこと。
【0097】
上で述べたように、用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、キメラ抗体を包含する。「キメラ」抗体は、最も好ましくは、組換えデオキシリボ核酸法を使用して誘導され、ヒト(免疫学的に「関連のある」種、例えばチンパンジー、を含む)と非ヒトの両方の成分を含む抗体と解釈する。従って、キメラ抗体の定常領域は、最も好ましくは、天然ヒト抗体の定常領域と実質的に同一であり、キメラ抗体の可変領域は、最も好ましくは非ヒト源由来のものであり、対象となる抗原(CD40)に対する望ましい抗原特異性を有する。前記非ヒト源は、CD40抗原に対する抗体を産生させるために使用することができる任意の脊椎動物源であり得る。そうした非ヒト源としては、齧歯動物(例えば、ウサギ、ラット、マウスなど;例えば、本明細書に参照として組み込まれている米国特許第4,816,567号参照)および非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など;例えば、本明細書に参照として組み込まれている、米国特許第5,750,105号および同第5,756,096号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
上で述べたように、用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、ヒト化抗体を包含する。「ヒト化された」とは、非ヒト免疫グロブリン配列に由来する最小限の配列を含有する形態の抗体を意味する。殆どの部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(相補性決定領域またはCDRとしても知られている)からの残基が、望ましい特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。「相補性決定領域」というフレーズは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性および特異性を協力して規定するアミノ酸配列を指す。例えば、Chothiaら(1987)J.MoI.Biol.196:901−917;Kabatら(1991)U.S.Dept.of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242参照)。「定常領域」というフレーズは、エフェクター機能を付与する抗体分子の部分を指す。ヒト疾患の療法において使用するための非免疫原性抗体の生産に向た以前の研究では、マウス定常領域が、ヒトと定常領域によって置換された。被験体ヒト化細胞の定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来するものであった。しかし、これらのヒト化抗体は、ヒトにおいて望ましくない、潜在的に危険な免疫反応を惹起する場合があり、親和性が失われていた。
【0099】
ヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法(Jonesら(1986)Nature 321:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyenら(1988)Science 239:1534−1536)に従って、ヒト抗体の対応する抗体を齧歯動物または突然変異齧歯動物CDRまたはCDR配列で置換することにより、行うことができる。米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、同第5,859,205号(本明細書に参照として組み込まれている)も参照。場合によっては、ヒト免疫グロブリンの1つ以上の可変領域のフレームワーク領域内の残基が対応する非ヒト残基によって置換される(例えば、米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号および同第6,180,370号参照)。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においておよびドナー抗体において見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに洗練するために(例えば、所望の親和性を得るために)行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つ、の可変ドメインの実質的にすべてを含むであろう(この場合、超可変領域のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、ならびにフレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である)。ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域、の少なくとも一部分も含むであろう。さらなる詳細については、Jonesら(1986)Nature 331:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−329;およびPresta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(本明細書に参照として組み込まれている)を参照のこと。従って、そうした「ヒト化」抗体は、無損傷ヒト可変ドメインより実質的に少ないドメインが、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている抗体を包含し得る。実際には、ヒト化抗体は、典型的に、一部のCDR残基およびことによると一部のフレームワーク残基が齧歯動物抗体における類似の部位からの残基によって置換されているヒト化抗体である。例えば、米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、同第5,859,205号参照。ヒト化抗体、および所定の抗原に対する親和性が改善されたヒト化抗体の生産技術が開示されている、米国特許第6,180,370号および国際公報番号WO 01/27160も参照のこと。
【0100】
ヒト化抗CD40抗体は、Human Engineering(登録商標)記述(カリフォルニア州、バークレーのXoma Ltd.)を使用して生産することもできる。
【0101】
ヒト化抗CD40モノクローナル抗体としては、マウス抗CD40抗体SGN−14(Franciscoら(2000)Cancer Res.60:3225−31)のヒト化形であるSGN−40(Taiら(2004)Cancer Res.64:2846−52;米国特許第6,838,261号)、および米国特許出願公開第2004/0120948号に開示されている抗体などの抗体が挙げられ、前記文献は、それら全体が本明細書に参照として取り入れられている。
【0102】
本発明は、不活性化された内因性免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を特徴とする非ヒト哺乳動物宿主、さらに特にトランスジェニックマウス、において生産される異種または修飾抗体を使用して実施することもできる。そうしたトランスジェニック動物において、宿主免疫グロブリンの軽および重サブユニットの発現に有能な内因性遺伝子を非機能性にし、類似のヒト免疫グロブリン遺伝子座で置換する。これらのトランスジェニック動物は、宿主免疫グロブリン軽または重サブユニットが実質的に不在の状態で、ヒト抗体を生産する。例えば、米国特許第5,877,397号および同第5,939,598号参照(本明細書に参照として組み込まれている)。
【0103】
従って、一部の実施形態において、CD40に対する完全ヒト抗体は、例えば、トランスジェニックマウスに免疫することによって得られる。あるそうしたマウスは、XenoMouse(登録商標)技術(カリフォルニア州、フリーモントのAbgenix)を使用して得られ、米国特許第6,075,181号、同第6,091,001号および同第6,114,598号(これらのすべてが、本明細書に参照として組み込まれている)に開示されている。例えば、CHIR−12.12抗体を生産するために、ヒトIgG1重鎖遺伝子座およびヒトκ軽鎖遺伝子座について遺伝形質転換されたマウス、ヒトCD40を発現するSf9細胞で免疫した。マウスを他のアイソタイプについて遺伝形質転換することもできる。本発明の方法において有用な完全ヒト抗CD40抗体は、CHIR−12.12モノクローナル抗体によって示されるものに類似した結合特性を特徴とする。
【0104】
上で述べたように、用語「抗体」は、本明細書で用いる場合、抗原に結合することができる抗体フラグメントも包含する。「抗体フラグメント」は、無損傷抗体の一部分、好ましくは、その無損傷抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab、F(ab’)2、およびFvフラグメント;二重特異性抗体;線状抗体(Zapataら(1995)Protein Eng.10:1075−1062);1本鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント(それぞれが、単一抗原結合部位を有する)、および「Fc」フラグメント(その名前は、容易に結晶化するその能力を反映している)を生じさせる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができるF(ab’)2フラグメントを生じさせる。
【0105】
「Fv」は、完全抗原認識および結合部位を含有する最小抗体フラグメントである。この領域は、緊密な、非共有結合性の会合状態にある1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの二量体から成る。この構造では、それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH−VL二量体の表面の抗原結合部位を規定している。集合的に、6のCDRが、抗体に抗原特異性をもたらす。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含む、Fvの半分)であっても、抗原を認識し、全結合部位より低い親和性でではあるが、抗原に結合する能力を有する。
【0106】
Fabフラグメントは、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一定常ドメイン(CH1)も含有する。Fabフラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での少数の残基の付加が、Fab’フラグメントと異なる。Fab’−SHは、定常領域のシステイン残基(単数または複数)が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書における呼称である。Fab’フラグメントは、F(ab’)2フラグメントの重鎖ジスルフィド架橋を還元することによって生成される。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも公知である。
【0107】
抗CD40抗体のフラグメントは、完全長抗体の望ましい親和性を保持する限り、本発明の方法での使用に好適である。従って、例えば、抗CD40抗体のフラグメントは、CD40抗原に結合する能力を保持するであろう。そうしたフラグメントは、対応する完全長抗体に類似した特性を特徴とする。従って、例えば、完全長アンタゴニスト抗CD40抗体のフラグメントは、好ましくは、ヒト細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合することができるであろう。そして、ヒトCD40発現性細胞上のCD40抗原に結合すると、有意なアゴニスト活性はなく、アンタゴニスト活性を示す。そうしたフラグメントを、本明細書では、「抗原結合性」フラグメントと呼ぶ。本発明の方法において使用するための抗CD40抗体のフラグメントは、好ましくは、単数または複数の適切なFcRに結合する能力も保持しているであろう。従って、例えば、抗CD40抗体のフラグメントは、FcγRIIIaに結合する能力を保持し得る。従って、例えば、完全長抗CD40抗体のフラグメントは、細胞表面CD40抗原に特異的に結合することができてよく、ナチュラルキラー(NK)細胞などのヒトエフェクター細胞上のFcγRIIIaに結合することができてもよい。そうしたフラグメントを、本明細書では、「FcR結合性」フラグメントと呼ぶ。そうしたフラグメントは、一般に、重鎖の定常領域の少なくとも一部を含むであろう。
【0108】
抗体フラグメントを生産するための様々な技術が開発された。伝統的には、これらのフラグメントは、無損傷抗体のタンパク質分解性消化によって誘導された(例えば、Morimotoら(1992)Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)、およびBrennanら(1985)Science 229:81参照)。しかし、今ではこれらのフラグメントを組換え宿主細胞によって直接生産することができる。例えば、上で論じた抗体ファージライブラリから抗体フラグメントを単離することができる。あるいは、Fab’−SHフラグメントを大腸菌から直接回収し、化学的にカップリングさせて、F(ab’)2フラグメントを形成することができる(Carterら(1992) Bio/Technology 10:163−167)。もう1つのアプローチによると、F(ab’)2フラグメントは、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。抗体フラグメントを生産するための他の技術は、当業者には明らかであろう。
【0109】
抗体の好適な抗原結合フラグメントは、完全長抗体の一部分、一般には、その抗原結合または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、F(ab’)2、およびFvフラグメントならびに1本鎖抗体分子が挙げられるが、これらに限定されない。「Fab」は、軽鎖と重鎖の一部とから成る免疫グロブリンの一価抗原結合フラグメントを意味する。F(ab’)2は、両方の軽鎖と両方の重鎖の一部とを含有する免疫グロブリンの二価抗原結合フラグメントを意味する。「1本鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVHおよびVLドメインを含むフラグメントを意味する(この場合、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する)。例えば、米国特許第4,946,778号、同第5,260,203号、同第5,455,030号および同第5,856,456号参照(本明細書に参照として組み込まれている)。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それによって、sFvは、抗原結合のために望ましい構造を形成することができる。sFvの論評については、Pluckthun (1994) in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol.113,ed.Rosenburg and Moore(Springer−Verlag,New York),pp.269−315を参照のこと。本明細書において下で説明するように、本明細書に開示するアンタゴニスト抗CD40抗体の抗原結合フラグメントを細胞毒素に共役して、ターゲット細胞を死滅させることもできる。
【0110】
本発明の一部の実施形態において、抗CD40抗体は、アンタゴニスト抗CD40抗体である。そうした抗体は、ヒトB細胞などのヒト細胞の表面に提示されたCD40に結合したとき、有意なアゴニスト活性を生じさせない。一部の実施形態において、ヒト細胞の表面に提示されたCD40へのそれらの結合は、結果として、これらのヒト細胞の増殖および分化を阻害する。本発明の方法において使用するために好適な抗CD40抗体は、細胞表面CD40抗原を発現する正常および悪性ヒト細胞に対してアンタゴニスト活性を示すことができる抗体を含む。
【0111】
「アゴニスト活性」は、ある物質がアゴニストとして機能することを意味する。アゴニストは、細胞上の受容体と化合し、その受容体の天然リガンドによって開始されるのと同様または同じである反応または活性を開始させる。CD40のアゴニストとしては、次の反応のうちのいずれかまたはすべてが挙げられるが、それらに限定されない:B細胞増殖および/または分化;ICAM−1、E−セレクチン、VCAMなどのような分子による細胞間接着のアップレギュレーション;IL−1、IL−6、IL−8、IL−12、TNFなどのような前炎症性サイトカインの分泌;TRAF(例えば、TRAF2および/またはTRAF3)、MAPキナーゼ、例えばNIK(NF−κB誘導性キナーゼ)、I−カッパB(IKK α/β)、転写因子FN−κB、RasおよびNEK/ERK経路、PI3K/AKT経路、P38MAPK経路などのような経路によるCD40受容体を通したシグナル伝達;XIAP、mcl−1、bcl−xなどのような分子による抗アポトーシスシグナルの伝達;Bおよび/またはT細胞記憶生成;B細胞抗体生産;B細胞アイソタイプスイッチング、MHCクラスIIおよびCD80/86の細胞表面発現のアップレギュレーションなど。
【0112】
「有意な」アゴニスト活性は、B細胞反応アッセイにおいて測定され、天然物質または陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性より少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を超えるアゴニスト活性を意味する。好ましくは、「有意な」アゴニスト活性は、B細胞反応アッセイにおいて測定して、天然物質または陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性より少なくとも二倍を超えるまたは少なくとも3倍を超えるアゴニスト活性である。従って、例えば、対象となるB細胞反応が、B細胞増殖である場合、「有意な」アゴニスト活性は、天然物質または陰性対照によって誘導されるB細胞増殖レベルより少なくとも2倍を超えるまたは少なくとも3倍を超えるB細胞増殖レベルの誘導であろう。1つの実施形態において、C40に結合しない非特異的免疫グロブリン、例えばIgG1は、陰性対照として役立つ。「有意なアゴニスト活性がない」物質は、B細胞反応アッセイにおいて測定して、天然物質または陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性の約25%以下、好ましくは、天然または陰性対照によって誘導されるアゴニスト活性の、約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%以下、またさらには約0.1%以下のアゴニスト活性を示すであろう。
【0113】
「アンタゴニスト活性」は、その物質がアンタゴニストとして機能することを意味する。CD40のアゴニストは、アゴニストリガンド、特にCD40L、へのCD40受容体の結合によって誘導される任意の反応の誘導を防止または減少させる。アンタゴニストは、アゴニスト結合に対する反応のいずれか1つ以上の誘導を、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、好ましくは40%、45%、50%、55%、60%、さらに好ましくは70%、80%、85%、および最も好ましくは90%、95%、99%または100%減少させることができる。抗CD40治療薬、例えば、抗CD40抗体、のCD40リガンド結合特異性およびアンタゴニスト活性を測定するための方法は、当該技術分野において公知であり、標準的な競合結合アッセイ、B細胞による免疫グロブリン分泌をモニターするためのアッセイ、B細胞増殖アッセイ、Banchereau様B細胞増殖アッセイ、抗体生産についてのT細胞ヘルパーアッセイ、B細胞増殖の共刺激のアッセイ、およびB細胞活性化マーカーのアップレギュレーションについてのアッセイを含むが、これらに限定されない。例えば、WO 00/75348および米国特許第6,087,329号(本明細書に参照として組み込まれている)に開示されているようなアッセイを参照のこと。WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294WOも参照のこと(これらのそれぞれの内容は、それら全体が、本明細書に参照として組み込まれている)。
【0114】
アゴニスト活性のアンタゴニスト/欠如は、CHIR−12.12がアゴニスト活性を欠くことを証明するアッセイによって評価することができる。好適なアッセイは、US 5677165(Chiron Corporation)に記載されているアッセイに示されている。
【0115】
本発明の1つの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体には、1つの細胞の反応に関して有意なアゴニスト活性がない。本発明のもう1つの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体には、1つより多くの細胞の反応(例えば、増殖および分化、または増殖、分化、およびB細胞について、抗体生産)のアッセイにおいて有意なアゴニスト活性がない。
【0116】
特に対象となるのは、ヒトB細胞上のCD40抗原に結合したとき、本明細書において定義するような有意なアゴニスト活性がなく、アンタゴニスト活性を示す、アンタゴニスト抗CD40抗体である。本発明の一つの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体には、1つのB細胞反応に関して有意なアゴニスト活性がない。本発明のもう1つの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体には、1つより多くのB細胞反応(例えば、増殖および分化、または増殖、分化、および抗体生産)のアッセイにおいて有意なアゴニスト活性がない。
【0117】
当該技術分野において公知の任意のアッセイを使用して、抗CD40抗体が1つ以上のB細胞反応のアンタゴニストとして作用するかどうかを判定することができる。一部の実施形態において、抗CD40抗体は、B細胞増殖、B細胞分化、抗体生産、細胞間接着、B細胞記憶生成、アイソタイプスイッチング、MHCクラスIIおよびCD80/86の細胞表面発現のアップレギュレーション、ならびにIL−8、L−12およびTNFなどの前炎症性サイトカインの分泌から成る群より選択される少なくとも1つのB細胞反応のアンタゴニストとして作用する。特に対象となるのは、ヒトB細胞の表面のヒトCD40抗原に結合したときにB細胞増殖に対して有意なアゴニスト活性がない、アンタゴニスト抗CD40抗体である。
【0118】
1つのそうした実施形態において、抗CD40抗体は、B細胞増殖アッセイにおいて測定すると、可溶性または細胞表面CD40Lによって誘導されるB細胞増殖のアンタゴニストである。好適なB細胞増殖アッセイは、当該技術分野において公知である。好ましくは、アンタゴニスト抗CD40抗体は、天然物質または陰性対照によって誘導されるB細胞増殖の約25%以下、好ましくは、天然物質または陰性対照によって誘導されるB細胞増殖の約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%以下、またさらには約0.1%以下のレベルで、B細胞増殖を刺激する。
【0119】
他の実施形態において、抗CD40抗体は、B細胞増殖に関して測定すると、別の抗CD40抗体、例えばS2C6抗CD40抗体、によって誘導されるB細胞増殖のアンタゴニストであり、アンタゴニスト抗CD40抗体の存在下で他の抗CD40抗体によって刺激されるB細胞増殖レベルは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下で他の抗CD40抗体によって誘導されるB細胞増殖の約25%以下(すなわち、少なくとも75%阻害)、好ましくは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下で他の抗CD40抗体によって誘導されるB細胞増殖の約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%以下、まさらには約0.1%以下である。
【0120】
さらに他の実施形態において、抗CD40抗体は、B細胞活性化アッセイにおいて測定すると、細胞株EL4B5によって誘導されるB細胞増殖のアンタゴニストであり、アンタゴニスト抗CD40抗体の存在下でEL4B5細胞によって刺激されるB細胞増殖レベルは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下でこの細胞株によって誘導されるB細胞増殖の約25%以下(すなわち、少なくとも75%阻害)、好ましくは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下でこの細胞株によって誘導されるB細胞増殖の約20%、15%、10%、5%、1%、0.5%以下、またさらには約0.1%以下である。
【0121】
さらに他の実施形態において、抗CD40抗体は、B細胞による抗体生産についてのヒトT細胞ヘルパーアッセイにおいて測定すると、ヒトB細胞によるヒトT細胞誘導抗体生産のアンタゴニストである。このように、アンタゴニスト抗CD40抗体の存在下でT細胞によって刺激されるB細胞によるIgG抗体生産、IgM抗体生産、またはIgGとIgMの両方の抗体生産のレベルは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下でT細胞によって刺激されるB細胞によるそれぞれの抗体生産の約50%以下(すなわち、少なくとも75%阻害)、好ましくは、アンタゴニスト抗CD40抗体の不在下でT細胞によって刺激されるB細胞によるそれぞれの抗体生産の約25%、20%、15%、10%、5%、1%、0.5%以下、または約0.1%以下でさえある。さらなるアンタゴニスト抗CD40抗体としては、5D12、3A8および3C6と呼ばれるモノクローナル抗体が挙げられ、これらは、それぞれ、ATCCアクセッション番号HB 11339、HB 12024およびHB 11340を有するハイブリドーマによって分泌される。例えば、米国特許第6,315,998号参照(その全体が本明細書に参照として組み込まれている)。
【0122】
アンタゴニスト抗CD40抗体は、当該技術分野において公知である。例えば、米国特許出願公開番号20020142358および20030059427(それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)に開示されている、F4−465と称するハイブリドーマによって生産されるヒト抗CD40抗体を参照のこと。F4−465は、HACマウス(Kuroiwaら(2000)Nature Biotech.10:1086(2000))から得られたものであり、従って、ヒトラムダ軽鎖を発現する。WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294WOも参照(これらのそれぞれの内容は、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)。
【0123】
アンタゴニスト活性に加えて、本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、好ましくは、ターゲット細胞に対するもう1つの作用メカニズムを有するであろう。例えば、抗CD40抗体は、好ましくは、ADCC活性を有するであろう。あるいは、抗CD40抗体の可変領域を、ADCC活性を有する別の抗体アイソタイプを用いて発現させることができる。本明細書の他の箇所でさらに説明するように、抗CD40抗体の天然形、組換え形または抗原結合フラグメントを、細胞毒素、治療薬または放射性金属イオンもしくは放射性同位体に共役することも可能である。
【0124】
本明細書の他の箇所で説明するように、本発明者らは、他の抗体とは異なり、CHIR−12.12などの抗CD40抗体が、ヒト患者のナチュラルキラー(NK)細胞上の2つのFcγRIIIaアミノ酸158アロタイプ(VまたはF)のいずれかへの結合により、CD40発現性ターゲット細胞の効力のある抗体依存性細胞障害(ADCC)を媒介することができるという驚くべき発見をした。従って、CHIR−12.12などの抗CD40抗体は、FcγRIIIa−158Vに関してホモ接合性(遺伝子型V/V)のヒト患者に加えて、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に使用することができる。本発明は、NHLにおけるリツキシマブの臨床活性が患者のFcγRIIIa遺伝子型と相関することは証明されているため、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して反応しない炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に特に有利である。
【0125】
従って、本発明の方法において使用するために特に好ましい抗CD40抗体は、アンタゴニスト活性に加えて、FcγRIIIaを発現するナチュラルキラー細胞(NK細胞)などのヒトエフェクター細胞によるCD40発現性細胞のADCCを媒介することができるものである。本明細書の他の箇所でさらに説明するように、FcγRIIIa−158FとFcγRIIIa−158Vの両方に高い親和性で結合することができる抗CD40抗体が、最も好ましい。
【0126】
特に好ましい抗CD40抗体は、WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294WO(これらのそれぞれの内容は、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)に開示されているものである。
【0127】
本発明にとって特に関心が高いのは、WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294WOに記載されているCHIR−12.12モノクローナル抗体の結合特性を共有するアンタゴニスト抗CD40抗体である。そうした抗体としては、次のものが挙げられるが、それらに限定されない:
a)モノクローナル抗体CHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号2に示す配列、配列番号4に示す配列、配列番号5に示す配列、配列番号2および配列番号4に示す両方の配列、ならびに配列番号2および配列番号5に示す両方の配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号1に示す配列、配列番号3に示す配列、ならびに配列番号1および配列番号3に示す両方の配列から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
e)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
f)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
i)前記項目a)のモノクローナル抗体または前記項目c)−h)のいずれか1項目のモノクローナル抗体(この場合、前記抗体は、組換え生産される);ならびに
j)前記項目a)−i)のいずれか1項目のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体(この場合、前記フラグメントは、ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する)。
【0128】
モノクローナル抗体CHIR−12.12は、本発明の方法において使用するために特に好ましい。
【0129】
モノクローナル抗体CHIR−12.12は、WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294に詳細に記載されている。CHIR−12.12抗体は、ハイブリドーマ細胞株153.8E2.D10.D6.12.12(細胞株12.12と呼ぶ)から生産されるIgG1アイソタイプの完全ヒト抗CD40モノクローナル抗体である。この細胞株は、ヒトIgG1重鎖遺伝子座およびヒトκ鎖遺伝子座を含有する、免疫処置された異種型マウス(XenoMouse(登録商標)technology;Abgenix;カリフォルニア州、フリーモント)からの脾臓細胞を使用して作られた。それらの脾臓細胞は、マウス骨髄腫SP2/0細胞(Siera BioSource)と融合された。結果として生じたハイブリドーマは。数回サブクローニングされて、安定なモノクローナル細胞株12.12が作られた。本明細書の他の箇所で説明するように、ヒト免疫グロブリンについて遺伝形質転換したマウスを使用して、本発明の方法での使用に好適な他の抗体を同様に作製することができる。
【0130】
CHIR−12.12モノクローナル抗体は、ELISA型アッセイにおいて可溶性CD40に結合し、CD40リガンドの細胞表面CD40への結合を防止し、ならびにフローサイトメトリーアッセイによって判定すると、前に結合したCD40リガンドを置換する。抗体CHIR−5.9およびCHIR−12.12は、CD40への結合について互いに競合するが、15B8[2000年10月2日に出願された「Human Anti−CD40 Antibodies」と題する米国特許仮出願番号60/237,556、および2001年10月2日に出願され(代理人整理番号PP16092.003)、WO 2002/028904として公開された、同じく「Human Anti−CD40 Antibodies」と題するPCT国際出願番号PCT/US01/30857(これらの両方は、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)に記載されている抗CD40モノクローナル抗体]とはしない。正常なヒト被験者からのB細胞の増殖に対する効果についてインビトロで検査すると、CHIR−12.12は、アンタゴニスト抗CD40抗体として作用する。さらに、CHIR−12.12は、正常な被検者からのヒトリンパ球の強い増殖を誘導しない。この抗体は、抗体依存性細胞障害(ADCC)によりCD40発現性ターゲット細胞を死滅させることができる。ヒトCD40に対するCHIR−12.12の結合親和性は、Biacore(登録商標)アッセイによって判定すると、5×10−10Mである。
【0131】
CHIR−12.12抗体の可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を本明細書において提供する。より詳細には、mAb CHIR−12.12の軽鎖および重鎖のリーダー、可変および定常領域についてのアミノ酸配列を、配列番号2(mAb CHIR−12.12の軽鎖についての完全配列)、配列番号4(mAb CHIR−12.12の重鎖についての完全配列)、および配列番号5(配列番号4に示すmAb CHIR−12.12のについての重鎖の変異体についての完全配列;この場合、前記変異体は、配列番号4の位置153のアラニン残基に対するセリン置換を含む)に示す。mAb CHIR−12.12の軽鎖および重鎖をコードするヌクレオチド配列を、配列番号1(mAb CHIR−12.12の軽鎖についてのコーディング配列)および配列番号3(mAb CHIR−12.12の重鎖についてのコーディング配列)に示す。CHIR−12.12抗体を発現するハイブリドーマは、PTA−5543の特許寄託番号でATCCに寄託されている。
【0132】
本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、CHIR−12.12モノクローナル抗体とは異なるが、CDRを保持している抗体、および1つ以上のアミノ酸付加、欠失または置換を有する抗体を含む。本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、例えば、国際公開番号WO98/52976およびWO0034317(本明細書に参照として組み込まれている)に記載されているように生産することができる脱免疫抗体、特に、脱免疫アンタゴニスト抗CD40抗体であってもよい。このように、本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体の中の残基を修飾して、抗体をヒトに対して全くまたは然程免疫原性でないが、ヒトCD40発現性細胞に対するそれらのアンタゴニスト活性を保持しているようにし、この場合、そうした活性は、本明細書の他の箇所で述べるアッセイによって測定される。対象となる抗体、例えばアンタゴニスト抗CD40抗体もしくはアンタゴニスト抗CD40L抗体、またはそれらのフラグメントを含む融合タンパク質も本発明の範囲に包含され、これらの融合タンパク質は、当該技術分野において公知であるように、対応するポリヌクレオチドベクターから合成または発現させることができる。こうした融合タンパク質は、本明細書の他の箇所で述べるような抗体のコンジュゲーションに関連して説明する。
【0133】
対象となる結合特異性を有する任意の公知抗体は、例えば、特許公開番号EP 0983303 A1、WO 00/34317およびWO 98/52976(本明細書に参照として組み込まれている)に記載されている方法を使用して生成される配列変異を有し得る。例えば、CDR内の配列が、MHCクラスIIに結合する抗体を生じさせ、望ましくないヘルパーT細胞反応を誘発し得ることは証明されている。保存的置換により、抗体に結合活性を保持させ、しかし、望ましくないT細胞反応を誘発するその能力を喪失させることができる。いずれのそうした保存的または非保存的置換も、本明細書の他の箇所で述べるものなどの当該技術分野において認知されている方法を使用して行うことができ、結果として生じる抗体も本発明の方法において使用することができる。それらの変異抗体は、本明細書において説明する方法を使用して、特定の活性、例えばアンタゴニスト活性、親和性および特異性、についてルーチンテストすることができる。
【0134】
例えば、アンタゴニスト抗CD40抗体、例えばCHIR−12.12モノクローナル抗体、のアミノ酸配列変異体は、対象となる抗体をコードするクローニングされたDNA配列における突然変異によって作製することができる。突然変異誘発法およびヌクレオチド配列交替は、当該技術分野において周知である。例えば、 WalkerおよびGaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York);Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.ScL USA 82:488−492;Kunkelら(1987)Methods Enzymol 154:367−382;Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor,New York);米国特許第4,873,192号;およびそれらに引用されている参考文献(本明細書に参照として組み込まれている)を参照のこと。対象となるポリペプチドの生物活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Atlas of Protein Sequence and Structure(ワシントンD.C.のNatl.Biomed.Res.Found.)(本明細書に参照として組み込まれている)におけるDayhoffら(1978)のモデルにおいて見出すことができる。保存的置換、例えば、あるアミノ酸の類似した特性を有する別のアミノ酸での置換が好ましい場合がある。保存的置換の例としては、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、およびPhe⇔Trp⇔Tyrが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
対象となる抗体の変異体、例えば、対象となるアンタゴニスト抗CD40抗体ポリペプチド、を構築する際、変異体が、望ましい活性、すなわち類似した結合親和性、を継続して有するように、ならびにアンタゴニスト抗CD40抗体の場合には、ヒト細胞の表面で発現されたヒトCD40抗原に特異的に結合することができ、ヒトCD40発現性細胞上のCD40抗原に結合したときに有意なアゴニスト活性がなく、アンタゴニスト活性を示すように、修飾することができる。明らかに、変異ポリペプチドをコードするDNAになされるいずれの突然変異も、リーディングフレーム以外の配列で行われてはならず、好ましくは、二次mRNA構造を生成し得る相補領域を作らないであろう。EP特許出願公開第75,444号参照。
【0136】
加えて、抗体(例えばアンタゴニスト抗CD40抗体)の定常領域は、多数の方法で、エフェクター機能を改変するように突然変異させることができる。例えば、Fc受容体に結合する抗体を最適化するFc突然変異を開示している、米国特許第6,737,056号B1および米国特許出願公開第2004/0132101号A1を参照のこと。
【0137】
好ましくは、参照抗体、例えばアンタゴニスト抗CD40抗体、の変異体は、その参照抗体、例えばアンタゴニスト抗CD40抗体分子、例えば本明細書に記載するCHIR−12.12.モノクローナル抗体、のアミノ酸配列と、またはその参照抗体分子のより短い部分と、少なくとも70%または75%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%または85%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。さらに好ましくは、それらの分子は、少なくとも96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する。本発明のために、配列同一性パーセントは、12のギャップ開始ペナルティーおよび2のギャップ伸張ペナルティー、62のBLOSUMマトリックスでのアフィンギャップ検索を使用するSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムを用いて決定する。このSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、Smith and Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482−489において教示されている。変異体は、例えば、1から15ほどの少数のアミノ酸残基、1から10ほどの少数、例えば6−10、のアミノ酸残基、5ほどの少数の、4、3、2または1ほどもの少数のアミノ酸残基が、参照抗体、例えばアンタゴニスト抗CD40抗体、と異なる。
【0138】
2つのアミノ酸配列の最適なアラインメントに関して、変異体アミノ酸配列の連続セグメントは、参照アミノ酸配列を基準にして追加のアミノ酸残基を有することがあり、またはアミノ酸残基の欠失を有することがある。参照アミノ酸配列との比較に使用される連続セグメントは、少なくとも20の隣接するアミノ酸残基を含み、30、40、50以上のアミノ酸残基であり得る。保存的残基置換またはギャップに関連した配列同一性の補正を行うことができる(Smith−Waterman相同性検索アルゴリズム参照)。
【0139】
特にターゲット細胞上のCD40抗原に結合したときの、CD40に特異的に結合することができ、アンタゴニストを保持することができるポリペプチドの正確な化学的構造は、多数の要因に依存する。イオン化可能なアミノおよびカルボキシル基が分子内に存在する場合、特定のポリペプチドを酸性もしくは塩基性塩として、または中性形態で得ることができる。好適な環境条件に置かれたときにそれらの生物活性を保持している、すべてのそうした製剤が、本明細書において使用するアンタゴニスト抗CD40抗体の定義に包含される。さらに、前記ポリペプチドの主アミノ酸配列は、糖部分を使用する誘導体化(グリコシル化)により、または脂質、リン酸塩、アセチル基などのような他の補足分子により、増やすことができる。糖類とのコンジュゲーションによって増やすこともできる。そうした増加の一定の態様は、生産宿主の後翻訳プロセッシングシステムによって遂行され、他のそうした修飾をインビトロで導入することもできる。いずれにせよ、そうした修飾は、抗CD40抗体のアンタゴニスト特性が破壊されない限り、本明細書において使用する抗CD40抗体の定義に包含される。そうした修飾は、様々なアッセイにおいて、そのポリペプチドの活性を強化または減少させることでその活性に量的にまたは質的に影響し得ると予想される。さらに、鎖内の個々のアミノ酸残基を酸化、還元または他の誘導体化によって修飾することができ、ならびにポリペプチドを切断して、活性を保持するフラグメントを得ることができる。アンタゴニスト活性を破壊しないそうした改変により、そのポリペプチド配列が、本明細書において使用する抗CD40抗体の定義から除かれることはない。
【0140】
当該技術分野は、ポリペプチド変異体の作製および使用に関する実質的なナガイダンスを提供している。抗CD40抗体変異体を作製する際、当業者は、天然タンパク質ヌクレオチドまたはアミノ酸配列へのどの修飾が、本発明の方法において使用する医薬組成物の治療活性成分としての使用に好適な変異体を生じさせることになるかを容易に決定することができる。
【0141】
本発明の方法において使用するための抗CD40抗体は、好ましくは、次のインビトロおよび/またはインビボ生物活性のうちの少なくとも1つを有する:T細胞により刺激される正常ヒト末梢B細胞による免疫グロブリン分泌の阻害;CD40L発現性細胞または可溶性CD40リガンド(sCD40L)により刺激される正常ヒト末梢B細胞の生存および/または増殖の阻害;ジャーカットT細胞により刺激される正常ヒト末梢B細胞の生存および/または増殖の阻害;sCD40Lまたは固相CD40Lにより刺激される任意の細胞における「生存」抗アポトーシス細胞内シグナルの阻害;ならびにsCD40Lまたは固相CD40Lとのライゲーション、CD40保有ターゲット細胞またはCD40に対する同族リガンドを保有する細胞(T細胞およびB細胞を含むが、これらに限定されない)の欠失、アネルギーおよび/または寛容性導入、CD4+CD25+調節T細胞の増幅または活性化の導入(例えば、donor alloantigen−specific tissue rejection via CD40−CD40L interference,van Maurikら(2002)J.Immunol.169:5401−5404参照)、任意のメカニズム(抗体依存性細胞媒介性障害(ADCC)、補体依存性細胞障害(CDC)、増殖のダウンレギュレーション、および/またはターゲット細胞におけるアポトーシス)による細胞障害、ターゲット細胞サイトカイン分泌および/または細胞表面分子発現の調整、ならびにこれらの組み合わせに基づく、任意の細胞におけるCD40シグナル伝達の阻害。
【0142】
そうした生物活性についてのアッセイは、本明細書において説明するように、ならびに2003年11月4日、2003年11月26日および2004年4月27日に出願され、それぞれ、米国特許出願番号60/517,337(代理人整理番号PP20107.001(035784/258442))、60/525,579(代理人整理番号PP20107.002(035784/271525))および60/565,710(代理人整理番号PP20107.003(035784/277214))を付与された「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」と題する仮出願;ならびに2004年11月4日に出願された、同じく「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」と題する、WO 2005/044854として公開された国際特許出願番号PCT/US2004/037152(代理人整理番号PP20107.004 (035784/282916))(これらのそれぞれの内容は、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)に記載されているように行うことができる。Schultzeら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci USA 92:8200−8204;Dentonら(1998)Pediatr.Transplant.2:6−15;Evansら(2000)J.Immunol.164:688−697;Noelle(1998)Agents Actions Suppl.49:17−22;Ledermanら(1996)Curr.Opin.Hematol 3:77−86;Coliganら(1991)Current Protocols in Immunology 13:12;Kwekkeboomら(1993)Immunology 79:439−444;および米国特許第5,674,492号および同第5,847,082号(本明細書に参照として組み込まれている)に記載されているアッセイも参照のこと。
【0143】
本明細書において特定するCD40抗原エピトープに特異的なアンタゴニスト抗CD40抗体を検出するための代表的なアッセイは、「競合結合アッセイ」である。競合結合アッセイは、標識された既知リガンドのその特異的抗体への結合を阻害する能力によって未知のものを検出および定量する血清学的アッセイである。これは、競合阻害アッセイとも呼ばれる。代表的な競合結合アッセイでは、標識されたCD40ポリペプチドを、例えば、本発明のモノクローナル抗体の1つ以上のエピトープに対して産生させたモノクローナル抗体と併用で、サンプル中の候補抗体により沈殿させる。対象となるエピトープと特異的に反応する抗CD40抗体は、CD40タンパク質、または関心のあるCD40タンパク質の特定のエピトープを含むタンパク質のフラグメントに対して作製された一連の抗体をスクリーニングすることによって同定することができる。例えば、ヒトCD40について、対象となるエピトープとしては、ヒトCD40のショート・アイソフォーム((GenBankアクセッション番号NP_690593参照)配列番号9に記載する配列によってコードされている、配列番号10に記載するもの;GenBankアクセッション番号NM_152854も参照)の、またはヒトCD40のロング・アイソフォーム(ゲンバンクアクセッション番号GAA43045およびNP_001241参照、配列番号11に記載する配列によってコードされている、配列番号12に記載するもの;GenBankアクセッション番号X60592およびNM_001250参照)の線状および/または非線状アミノ酸残基を含むエピトープが挙げられる。あるいは、以前に同定された好適なアンタゴニスト抗CD40抗体との競合結合アッセイを使用して、その以前に同定された抗体に匹敵するモノクローナル抗体を選択することができよう。
【0144】
そうしたイムノアッセイにおいて用いる抗体は、標識されてよく、または非標識であってもよい。非標識抗体は、凝集反応において用いることができ、標識抗体は、多種多様な標識を利用する多種多様なアッセイにおいて用いることができる。抗CD40抗体と対象となるエピトープとの抗体−抗原複合体の形成の検出は、検出可能な物質を抗体に取り付けることによって助長することができる。好適な検出手段としては、放射性核種、酵素、補酵素、蛍光剤、化学発光剤、色原体、酵素基質または補因子、酵素阻害剤、補欠分子団複合体、遊離ラジカル、粒子、色素などのような標識の使用が挙げられる。好適な酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;好適な補欠分子団複合体の例としては、ストレプタビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;蛍光物質の例は、ルミノールであり;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ;ならびに好適な放射性物質の例としては、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。そうした標識された試薬を、様々な周知アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、例えばELISA、蛍光イムノアッセイなど、において使用することができる。例えば、米国特許第3,766,162号、同第3,791,932号、同第3,817,837号および同第4,233,402号参照。
【0145】
増加したADCC活性を有する抗体を遺伝子工学で作ることもできる。特に、CH2ドメインのカルボキシ末端側半分は、FcRIII受容体によって媒介されるADCCにとて非常に重要である。CH2およびヒンジ領域は、エフェクター機能において役割を有するので、余分なCH2および/またはヒンジ領域を含有する一連の多ドメイン抗体を作り、エフェクター効力の任意の変化について調査することができる(Greenwood,J.,Gorman,S.D.,Routledge,E.G.,Lloyd,LS.& Waldmann,H.,Ther Immunol.1994 Oct;1(5):247−55参照)。代替アプローチは、例えばキメラIgのH鎖にシステインを遺伝子工学で作ることにより二量体を作ることによって、遺伝子工学で余分なドメインを並行して作るアプローチであり得る(Shopes B.(1992)J.Immunol.1992 1;148(9):2918−22参照)。さらに、ADCC活性を増加させる変化は、Fc領域への突然変異の誘導(例えば、米国特許第6,737,065号B1参照)、フコシルトランスフェラーゼ欠損細胞株における細胞の発現(例えば、US2003/0115614参照)、または抗体グリコシル化に他の変化をもたらすこと(例えば、米国特許第6,602,684号参照)により、巧みに実行することができる。
【0146】
本発明は、特に、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))耐性患者における、さらに特に、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である者における、CD20発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に特に有利である。
【0147】
本明細書で用いる場合、「抗CD20抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、1本鎖抗体およびそれらのフラグメント、例えばFab、F(ab’)2、Fv、ならびに親抗CD20抗体の抗原結合機能を保持する他のフラグメントを含む、CD20細胞表面抗原を特異的に認識する任意の抗体を包含する。本発明の方法に関連して特に対象となるのは、IDEC−C2B8モノクローナル抗体(マサチューセッツ州、ケンブリッジのBiogen IDEC Inc.)によって示される結合特性を有する、抗CD20抗体またはそれらの抗原結合フラグメントである。
【0148】
一部の実施形態において、本発明の方法において使用する抗CD40抗体は、キメラ抗CD20モノクローナル抗体IDEC−C2B8より効力の高い治療活性を示し、この場合の治療活性は、適切な実験モデルにおいて等量のこれらの抗体を用いてアッセイする。IDEC−C2B8(カリフォルニア州、サンディエゴのIDEC Pharmaceuticals Corp.;商品名Rituxan(登録商標)で市販されており、リツキシマブとも呼ばれる)は、マウス抗CD20モノクローナル抗体、IDEC−2B8、から単離されたマウス可変領域とヒトIgG1およびカッパ定常領域を含有するキメラ抗CD20モノクローナル抗体である(Reffら(1994)Blood 83:435−445)。リツキシマブは、再発したB細胞低悪性度または濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療について認可されており、自己免疫疾患については臨床試験中である。リツキシマブと比較して優れた治療活性を有する抗体の発見は、炎症性疾患または自己免疫疾患のための治療方法を劇的に改善するであろう。
【0149】
下で説明するように、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、炎症およびアテローム性動脈硬化症、移植およびアルツハイマー病における活性について試験するために好適なモデルが存在する。
【0150】
例えば、SLE患者からの末梢血単核細胞(PMBC)をSCIDマウスに移植する、ヒト全身性エリテマトーデス(SLE)における効能についての試験。例えば、Duchosal et al.(1990)J.Exp.Med.172:985−8参照。SLE患者からSCIDマウスにPBMCを移入した後、治療が、自己抗原および自己抗体生産ならびに腎炎などの疾患発現に対するTリンパ球の反応に影響を及ぼすかどうかを判定する。
【0151】
マーモセットモンキー実験的自己免疫性脳炎(EAE)は、ヒト多発性硬化症のモデルである。例えば、Raineら(1999)Ann.Neurol.46:144−60、およびHartら(2004)Lancet Neurol.3:588−97に記載されているモデルを参照のこと。
【0152】
抗体は、CD40Lによって誘導される基質分解酵素の生産、組織因子発現、前炎症性サイトカイン、および接着分子のアップレギュレーションを阻害するそれらの能力について、インビトロで試験することができる。その後の研究では、ヒトCD40および/またはCD20を発現するトランスジェニックマウスを使用して、インビボで抗炎症活性を示す抗体の能力を試験している。例えば、Yasui(2002)Int.Immunol.14:319−29に記載されているモデルを参照のこと。
【0153】
抗体は、非ヒト霊長類モデルにおいて、移植拒絶反応を予防するそれらの能力について、試験することができる。カニクイザル同種移植腎レシピエントを抗体で治療して、追加の免疫抑制薬、例えば、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、コルチコステロイド、CTLA4−Igおよび抗Bリンパ球刺激抗体などを用いまたは用いずに移植片受容に対する効果を実証する。例えば、Weeら(1992)Transplantation 53:501−7に記載されているモデル参照。
【0154】
アルツハイマー病については、抗体を、ミクログリア活性化を阻止するそれらの能力について、インビトロで試験することができる。ヒトCD40および/またはCD20を発現し、アミロイド−ベータペプチドを過剰生産する、二重トランスジェニックマウスにおいて、抗体でのインビボ効能試験を行うことができる。例えば、Tanら(2002)Nat.Neurosci.5:1288−93に記載されているモデルを参照のこと。
【0155】
本発明の抗CD40抗体およびRituxan(登録商標)の「等量」は、重量ベースで同じまたはそれより少ないmg用量が投与されることを意味する。従って、抗CD40抗体が、そのモデルにおいて使用されるマウスの体重1kgにつき0.01mgで投与される場合、Rituxan(登録商標)も、そのマウス体重1kgにつき0.01mgで投与される。同様に、抗CD40抗体が、そのモデルにおいて使用されるマウスの体重1kgにつき0.1、1または10mgで投与される場合、Rituxan(登録商標)も、そのマウス体重1kgにつき、それぞれ、0.1、1または10mgで投与される。
【0156】
抗体効能のもう1つの相違は、NK細胞の存在下、インビトロでターゲット細胞の最大溶解を達成するために必要な抗体の濃度のインビトロでの測定である。例えば、本発明の抗CD40抗体は、Rituxan(登録商標)の1/2未満、好ましくは1/4未満および最も好ましくは1/10未満の濃度のEC50で、Daudi細胞の最大溶解に到達する。このタイプの測定は、本明細書中、実施例においても説明する。
【0157】
上で説明したアッセイにおいて等量のRituxan(登録商標)より有意に大きい効能を有することの恩恵を受ける抗CD40抗体としては、次のものが挙げられる:
a)モノクローナル抗体CHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号2に示す配列、配列番号4に示す配列、配列番号5に示す配列、配列番号2および配列番号4に示す両方の配列、ならびに配列番号2および配列番号5に示す両方の配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号1に示す配列、配列番号3に示す配列、ならびに配列番号1および配列番号3に示す両方の配列から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
e)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
f)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
i)前記項目a)のモノクローナル抗体または前記項目c)−h)のいずれか1項目のモノクローナル抗体(この場合、前記抗体は、組換え生産される);ならびに
j)前記項目a)−i)のいずれか1項目のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体(この場合、前記フラグメントは、ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する)。
【0158】
本発明は、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するための方法を提供し、この方法は、
a)CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および
b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定すること
を含み、
前記ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、前記炎症性疾患または自己免疫疾患を治療することができる。前記炎症性疾患または自己免疫疾患は、Rituxan(登録商標)での治療に難治性であってもよい。
【0159】
抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定したら、その人患者を抗CD40抗体で治療することができる。従って、この方法は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)と特定されたヒト患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与するさらなる段階を含み得る。
【0160】
当業者は、好適な診断キットを使用して、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するこの方法を、容易に行うことができる。このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な試薬を含むはずである。従って、本発明は、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するためのキットも提供し、このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む。好適なキットは、本明細書の他の箇所でより詳細に説明する。
【0161】
本発明は、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するための方法も提供し、この方法は、
a)CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定すること;および
b)前記ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定すること
を含み、
前記ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、前記炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に抗CD40抗体が選択される。前記炎症性疾患または自己免疫疾患は、Rituxan(登録商標)での治療に対して難治性であってもよい。
【0162】
炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療に抗CD40抗体療法が選択されたら、そのヒト患者を抗CD40抗体で治療することができる。従って、この方法は、(c)FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)と特定されたヒト患者に、治療または予防有効量の抗CD40抗体を投与する、さらなる段階を含み得る。
【0163】
当業者は、好適な診断キットを使用して、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するこの方法を、容易に行うことができる。このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な試薬を含むはずである。従って、本発明は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するためのキットも提供し、このキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む。
【0164】
「抗CD40抗体で治療することができる」とは、ヒト患者(すなわち、炎症性疾患または自己免疫疾患を有する個人)が、抗CD40抗体で治療されたとき、治療しようと努める炎症性疾患または自己免疫疾患に関して「陽性治療反応」(本明細書の他の箇所で定義するとおり)の恩恵を受けるであろうことを意味する。
【0165】
ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を、そのヒト患者から得た生体サンプルを使用して決定するための任意の方法が考慮される。
【0166】
例えば、本発明は、長さがヌクレオチド数10以上であり、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な配列である少なくとも1つのプローブを含むマイクロアレイを含む、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に使用するためのキットを提供する。標識されたRNAまたはDNAをそのアレイ上の相補プローブにハイブリダイズし、その後、レーザースキャニングによって検出する。そのアレイ上のそれぞれのプローブについてのハイブリダイゼーション強度を判定し、相対遺伝子発現レベルを表す定量値に変換する。当業者は、プローブの配列および長さについての選択を容易に行うことができる。FcγRIIIa−158FおよびVアロタイプをコードするヒト遺伝子およびmRNAのヌクレオチド配列は公知である。従って、当業者は、適切な実験条件下で、ターゲット配列のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定することができるプローブ(単数または複数)を選択することができる。
【0167】
機械合成法を使用するこれらのアレイの合成技術は、例えば、米国特許第5,384,261号(その全体が本明細書に参照として組み込まれている)に記載されている。平面のアレイ表面が好ましいが、アレイは、事実上いずれの形状の表面にも、または非常に多数の表面にでさえ作ることができる。アレイは、ビーズ、ゲル、ポリマー表面、繊維、例えば光ファイバー、ガラスまたは任意の他の好適な支持体上のペプチドまたは核酸であってもよい。米国特許第5,770,358号、同第5,789,162号、同第5,708,153号、同第6,040,193号および同第5,800,992号参照(これらのおのおのは、すべての目的で、その全体が本明細書に取り入れられている)。アレイは、包括的装置の診断または他の操作に備えるような様式でパッケージすることができる。例えば、米国特許第5,856,174号および同第5,922,591号参照(本明細書に参照として組み込まれている)。
【0168】
例えば、本発明は、FcγRIIIaのアミノ酸158をコードする遺伝子またはmRNAの領域のポリメラーゼ触媒増幅においてプライマーとして使用するために好適なオリゴヌクレオチドを含む、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に使用するためのキットも提供する。当業者は、プライマーの配列および長さの選択を容易に行うことができる。FcγRIIIa−158FおよびVアロタイプをコードするヒト遺伝子およびmRNAのヌクレオチド配列は公知である。従って、当業者は、適切な実験条件下でFcγRIIIのアミノ酸158をコードする遺伝子またはmRNAの領域を増幅することができるプライマーを選択することができる。その後、公知の方法を使用してその増幅配列の塩基配列を決定して、患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定することができる。
【0169】
ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するためのもう1つの方法は、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型に特有のDNAフラグメンテーションを検出する核酸に基づく方法の使用である。アガロースゲルでの電気泳動を使用して分解すると、それぞれのFcγRIIIa−158遺伝子型のDNAは、特有のパターンを有する。従って、本発明は、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な1つ以上の制限酵素を含む、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に使用するためのキットも提供する。好適な制限酵素は、当該技術分野において公知である(例えば、Koeneら、Blood,1997,Vol.90,No.3,p.110−1114参照)。
【0170】
本発明のキットは、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するためのそのキットの使用方法を示す説示も含み得る。本キットは、例えば、緩衝剤、保存薬またはタンパク質安定剤も含み得る。本キットのそれぞれの成分は、通常、個々の容器に封入され、それらの様々な容器のすべてが、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するためのそのキットの使用方法を示す説示と共に、単一のパッケージ内に存在する。
【0171】
本発明は、本明細書の他の箇所で説明するような、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための薬物の製造における抗CD40抗体の使用を提供する。
【0172】
本発明の抗CD40抗体は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を予防または治療するために治療上有効である濃度で投与される。この目的を達成するために、当該技術分野において公知の様々な許容される担体および/または賦形剤を使用して、抗体を調合することができる。抗CD40抗体は、非経口投与経路によって投与することができる。典型的に、これらの抗体は、静脈内注射または皮下的注射、いずれかによって投与される。この投与を遂行する方法は、通常の当業者に公知である。
【0173】
静脈内投与は、好ましくは、約半時間から1時間から約10時間(1、2、3、4、5、6、7、8、9または10時間未満)の期間にわたって注入により行われる。その後の注入剤は、例えば、約1から約4時間、約1から約3時間、もしくは約1から約2時間、または1時間未満を含めて、約1時間未満から約6時間の期間にわたって投与することができる。あるいは、CHIR−12.12などの抗CD40抗体は、皮下投与することができる。
【0174】
本発明の医薬組成物は、その所期の投与経路に適合するように調合される。非経口用途に使用する溶液または懸濁液は、次の成分を含むことができる:滅菌希釈剤:例えば、注射用蒸留水、食塩溶液;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および張度を調整するための薬剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、またはガラスもしくはプラスチック製の多数回用量用バイアルに封入することができる。
【0175】
抗CD40抗体は、一般に、標準的な技術により、薬学的に許容される緩衝剤、例えば、滅菌食塩水、滅菌緩衝水、前述のものの組み合わせなど、の中に供給される。非経口投与できる薬剤を調製するための方法は、本明細書に参照として組み込まれているRemington’s Pharmaceutical Sciences(第18版;ペンシルバニア州、イートンのMack Publishing Company、1990)に記載されている。例えば、本発明の方法での使用に好適な安定化された抗体医薬製剤を記載しているWO 98/56418も参照のこと。
【0176】
当業者は、投与する少なくとも1つの抗CD40抗体の量を、過度の実験を伴うことなく、容易に決定することができる。少なくとも1つの抗CD40抗体の投与方法およびそれぞれの量に影響を及ぼす因子としては、疾患の重症度、疾患の履歴、および治療を受ける個人の年齢、身長、体重、健康および体調が挙げられるが、これらに限定されない。同様に投与する抗CD40抗体の量は、投与方法、およびその被検者が、この抗腫瘍剤の1回用量を受けるのか、多数回用量を受けるのかに依存するであろう。一般に、治療を受ける被検者の体重が増すほど、高い抗CD40抗体用量が好ましい。
【0177】
投与される抗CD40抗体の用量は、約0.003mg/kg〜約50mg/kg、約0.01mg/kg〜約40mg/kg、約0.01mg/kg〜約30mg/kg、約0.1mg/kg〜約30mg/kg、約0.5mg/kg〜約30mg/kg、約1mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約25mg/kg、約3mg/kg〜約20mg/kg、約5mg/kg〜約15mg/kg、または約7mg/kg〜約12mg/kgの範囲内である。
【0178】
従って、例えば、前記用量は、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kgもしくは50mg/kg、または約0.3mg/kgから約50mg/kgの範囲内に入るような他の用量であり得る。
【0179】
治療有効量の抗体での被検者の治療としては、単回治療を挙げることができ、または、好ましくは、一連の治療を挙げることができる。従って、本発明のもう1つの実施形態において、本方法は、抗CD40抗体の多数回用量の投与を含む。本方法は、抗CD40抗体を含む医薬組成物の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40回以上の治療有効用量の投与を含むことができる。当業者は、抗CD40抗体を含む医薬組成物の多数回用量の投与の頻度および継続期間を、過度の実験を伴うことなく、容易に決定することができる。抗CD40抗体の同じ治療有効用量を治療期間の間ずっと投与し得る。あるいは、治療期間の経過とともに、抗CD40抗体の異なる治療有効量を投与し得る。
【0180】
好ましい例では、被検者を約1から10週間の間、好ましくは約2から8週間の間、さらに好ましくは3から7週間の間、さらにいっそう好ましくは約4、5または6週間にわたって、週一度、約0.1から20mg/(体重1kg)の間の範囲の抗CD40抗体で治療する。治療は、再発を予防するために年2回もしくは年1回行ってもよいし、または再発の徴候に基づいて行ってもよい。治療に使用する抗体の有効量は、特定の治療の経過につれて増加する場合があり、または減少する場合があることも理解されるであろう。用量の変化は、本明細書において説明するような診断アッセイの結果から生じるおよび明らかになる場合もある。
【0181】
従って、一つの実施形態における投薬計画は、治療期間の1、8、15および22日目での少なくとも1つの抗CD40抗体の治療有効用量の初回投与を含む。もう1つの実施形態における投薬計画としては、毎日、または治療期間の中のある週の1、3、5および7日目に少なくとも1つの抗CD40抗体の治療有効用量の初回投与を有する投薬計画;治療期間中のある週の1日目及び3−4日目での少なくとも1つの抗CD40抗体の治療有効量の初回投与を含む投薬計画;ならびに治療期間中のある週の1日目での少なくとも1つの抗CD40抗体の治療有効量の初回投与を含む投与計画が挙げられる。治療期間は、1週間、2週間、3週間、1ケ月、2ヶ月、3カ月、6ヵ月または1年を含むことができる。治療期間は、続いてよく、または互いに1週間、2週間、3カ月、6ヵ月もしくは1年、離れていてもよい。
【0182】
他の実施形態において、本明細書の他の箇所で定義するような抗CD40抗体の初期治療有効用量は、より低い投薬範囲内(すなわち、約0.003mg/kgから約20mg/kg)であってよく、より高い投薬範囲内(すなわち、約20mg/kgから約50mg/kg)に入る用量がそれに続く。
【0183】
代替実施形態において、本明細書の他の箇所で定義するような初期治療有効用量は、より高い用量範囲内(すなわち、約20mg/kgから約50mg/kg)であってよく、より低い投薬範囲内(すなわち、約0.003mg/kgから約20mg/kg)に入る用量がそれに続く。従って、本発明の一部の実施形態において、抗CD40抗体療法は、その療法が必要な被検者に抗体の「負荷投与量」を投与することによって開始することができる。「負荷投与量」とは、被検者に投与される抗CD40抗体の初期用量を意味し、この投与される抗体の用量は、より高い投薬範囲内(すなわち、約20mg/kgから約50mg/kg)に入る。「負荷投与量」は、単回投与(例えば、抗体をIV投与する場合には単回注入)として投与してもよいし、または全部の「負荷投与量」を約24時間以内に投与するのであれば、多数回投与(例えば、抗体をIV投与する場合には多数回注入)として投与してもよい。「負荷投与量」の投与後、抗CD40抗体の1つ以上の追加の治療有効用量を被検者に投与する。後続の治療有効用量は、例えば、週1回の投薬スケジュールに従って、または2週間に1回、3週間に1回もしくは4週間に1回、投与することができる。そうした実施形態において、後続の治療有効用量は、一般に、より低い投薬範囲内(すなわち、約0.003mg/kgから約20mg/kg)に入る。
【0184】
あるいは、一部の実施形態では、「負荷投与量」の後、抗CD40抗体の後続の治療有効用量を、該抗体の治療有効用量を1ケ月に1回、6週間に1回、2ヶ月に1回、10週間に1回、3カ月に1回、14週間に1回、4ヶ月に1回、18週間に1回、5ヶ月に1回、22週間に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、10ヶ月に1回、11ヶ月に1回、または12ヶ月に1回投与する「維持スケジュール」に従って投与する。そうした実施形態において、前記抗CD40抗体の治療有効用量は、特にその後続の用量をより頻繁な間隔で、例えば2週間に1回から1ケ月に1回、投与するときには、より低い投薬範囲内(すなわち、約0.003mg/kgから約20mg/kg)に入り、または特にその後続の用量を低頻度の間隔で投与するとき、例えば後続の用量を約1ヶ月から約12ヶ月空けて投与する場合には、より高い投薬範囲内(すなわち、約20mg/kgから約50mg/kg)に入る。
【0185】
本発明の方法において使用するための本明細書において説明する医薬組成物中に存在する抗CD40抗体は、天然のものであってよく、または組換え技術によって得てもよく、ならびに任意の源(例えば、マウス、ラット、霊長類、ブタおよびヒトなどの哺乳動物源を含む)からのものであってよい。好ましくは、そうしたポリペプチドは、ヒト源由来のものであり、さらに好ましくは、ハイブリドーマ細胞株からの組換えヒトタンパク質である。
【0186】
本発明の方法において有用な医薬組成物は、本明細書の他の箇所で説明するような、本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体の生物活性変異体を含み得る。
【0187】
本明細書において説明する結合特性を有する抗CD40抗体を治療活性成分として含む任意の医薬組成物を本発明の方法において使用することができる。従って、抗CD40抗体の1つ以上を含む液体、凍結乾燥またはスプレー乾燥組成物を、本発明の方法に従って被検者に後に投与するための水性または非水性溶液または懸濁液として調製することができる。これらの組成物のそれぞれが、少なくとも1つの抗CD40抗体を治療または予防活性成分として含むであろう。「治療または予防活性成分」とは、抗CD40抗体が、組成物に特異的に組み込まれて、その医薬組成物が被験者に投与されたときにその被験者の疾患または状態の治療、予防または診断に対して望ましい治療または予防反応を生じさせることを意味する。好ましくは、前記医薬組成物は、調製および保管中のタンパク質の安定性および生物活性の喪失に関連した問題を最少にするために適切な安定剤、充填剤または両方を含む。
【0188】
本発明の抗CD40抗体を含む医薬組成物に製剤化剤を添加してもよい。これらの製剤化剤としては、油、ポリマー、ビタミン、炭水化物、アミン酸、塩、緩衝剤、アルブミン、界面活性剤または充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは、炭水化物としては、糖または糖アルコール、例えば、単糖類、二糖類もしくは多糖類または水溶性グルカンが挙げられる。糖類またはグルカンとしては、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、αおよびβシクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプンならびにカルボキシメチルセルロース、またはこれらの混合物を挙げることができる。「糖アルコール」は、カルボキシル基を有するC4からC8炭化水素と定義され、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、グリセロールおよびアラビトールを含む。これらの糖または糖アルコールは、個々に使用してもよいし、または併用してもよい。その糖または糖アルコール濃度は、1.0%と7% w/vの間、さらに好ましくは2.0%と6% w/vの間である。好ましくは、アミノ酸としては、カルニチン、アルギニンおよびベタインの左旋性(L)形が挙げられるが、他のアミノ酸を添加してもよい。好ましいポリマーとしては、2,000と3,000の間の平均分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)、または3,000と5,000の間の平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。本製剤に添加することができる界面活性剤は、EP第270,799号および同第268,110号に示されている。
【0189】
加えて、ポリマーへの共有結合性コンジュゲーションにより抗体を化学的に修飾して、例えば、それらの循環半減期を増加することができる。好ましいポリマー、およびペプチドにそれらを取り付ける方法は、米国特許第4,766,106号、同第4,179,337号、同第4,495,285号および同第4,609,546号に示されており、それらは、すべて、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている。好ましいポリマーは、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは、室温で水溶性であり、一般式:R(O−−CH2−−CH2)nO−−Rを有し、この式中のRは、水素であるか、保護基、例えばアルキルまたはアルカノール基である。好ましくは、前記保護基は、1個〜8個の間の炭素を有し、さらに好ましくはメチルである。記号nは、正の整数、好ましくは1〜1000の間、さらに好ましくは2〜500の間である。PEGは、1,000〜40,000の間、さらに好ましくは2,000〜20,000の間、最も好ましくは3,000〜12,000の間の好ましい平均分子量を有する。好ましくは、PEGは、少なくとも1つのヒドロキシ基を有し、さらに好ましくは、末端ヒドロキシ基を有する。好ましくは、このヒドロキシ基が活性化されて、阻害因子上の遊離アミノ酸と反応する。しかし、それらの反応性基のタイプおよび量を変化させて、本発明の共有結合性共役化PEG/抗体を獲得することができることは、理解されるであろう。
【0190】
水溶性ポリオキシエチル化ポリオールも本発明において有用である。それらとしては、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)などが挙げられる。POGが好ましい。1つの理由は、ポリオキシエチル化グリセロールのグリセロール骨格が、例えば、動物およびヒトにおいて、モノ、ジ、トリグリセリドで、自然に発生するのと同じ骨格であるからである。従って、この分枝は、体内で必ずしも外来因子と見られない。POGは、PEGと同じ範囲の好ましい分子量を有する。POGの構造は、Knaufら(1988)J.Bio.Chem.263:15064−15070に示されており、POG/IL−2共役の考察は、米国特許第4,766,106号において見出せる(これらは、両方とも、それら全体が本明細書に参照として組み込まれている)。
【0191】
循環半減期を増加させるためのもう1つのドラッグデリバリーシステムは、リポソームである。リポソームデリバリーシステムの作製方法は、Gabizonら(1982)Cancer Research 42:4734;Cafiso(1981)Biochem BiophysActa 649:129;およびSzoka(1980)Ann.Rev.Biophys.Eng.9:467において論じられている。他のドラッグデリバリーシステムは、当該技術分野において公知であり、例えば、Poznanskyら(1980)Drug Delivery Systems(R.L.Juliano,ed.,Oxford,N.Y.)pp.253−315;Poznansky(1984)Pharm Revs 36:277に記載されている。
【0192】
医薬組成物に添合される製剤化剤は、抗CD40抗体の安定性に備えなければならない。すなわち、抗CD40抗体は、その物理的および/または化学的安定性を保持しなければならず、望ましい生物活性、すなわち、本明細書において上で定義したアンタゴニスト活性(T細胞により刺激される正常ヒト末梢B細胞による免疫グロブリン分泌の阻害;ジャーカットT細胞により刺激される正常ヒト末梢B細胞の生存および/または増殖の阻害;CD40L発現性細胞または可溶性CD40リガンド(sCD40L)により刺激される正常ヒト末梢B細胞の生存および/または増殖の阻害;sCD40Lまたは固相CD40Lにより刺激される任意の細胞における「生存」抗アポトーシス細胞内シグナルの阻害;sCD40Lまたは固相CD40Lとのライゲーションに基づく任意の細胞におけるCD40シグナル伝達の阻害;ならびに本明細書の他の箇所で述べるようなヒト悪性B細胞の増殖の阻害を含むが、これらに限定されない)のうちの1つ以上を有さなければならない。
【0193】
タンパク質の安定性をモニターするための方法は、当該技術分野において公知である。例えば、Jones(1993)Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90;Lee,ed.(1991)Peptide and Protein Drug Delivery(Marcel Dekker,Inc.,New York,New York);および本明細書において下で開示する安定性アッセイを参照のこと。一般に、タンパク質の安定性は、選択された温度で特定の期間にわたって測定される。好ましい実施形態において、安定な抗体医薬製剤は、室温(約25℃)で保管されたとき、少なくとも1ケ月、少なくとも3カ月、もしくは少なくとも6ヵ月間の安定性に備えており、および/または約2−8℃で、少なくとも6ヵ月、少なくとも9ヵ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月間安定である。
【0194】
医薬組成物に調合されたときの抗体などのタンパク質は、その医薬組成物の沈殿、凝集および/または変性の目に見える徴候(すなわち、変色もしくは透明性喪失)または測定可能な徴候(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)もしくはUV光散乱を使用)を示さない場合、所定の時点でその物理的安定性を保持するとみなされる。化学的安定性に関して、医薬組成物に調合されたときの抗体などのタンパク質は、化学的安定性の測定値が、その医薬組成物中のタンパク質(すなわち、抗体)が対象となる生物活性を保持することを示す場合、所定の時点でその化学的安定性を保持するとみなされる。化学的安定性の変化をモニターするための方法は、当該技術分野において周知であり、例えばSDS−PAGE、SECおよび/またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化/ 飛行時間型質量分析を使用するクリッピングからの結果、ならびに例えばイオン交換クロマトグラフィーを使用する(例えば、脱アミノ化に付随する)分子電荷の変化に関連した分解など、タンパク質の化学的に改変された形態を検出する方法を含むが、これらに限定されない。例えば、本明細書において下で開示する方法を参照のこと。
【0195】
医薬組成物に調合されたときの抗CD40抗体は、ある時点での所望の生物活性が、その所望の生物活性に好適なアッセイで判定して、その医薬組成物を調製した時点で示した所望の生物活性の約30%以内、好ましくは約20%以内である場合、その所定の時点で所望の生物活性を保持するとみなされる。抗CD40抗体の所望の生物活性を測定するためのアッセイは、本明細書中の実施例において説明するとおり行うことができる。Schultzeら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:8200−8204;Dentonら(1998)Pediatr.Transplant.2:6−15;Evansら(2000)J.Immunol.164:688−697;Noelle(1998)Agents Actions Suppl.49:17−22;Ledermanら(1996)Curr.Opin.Hematol.3:77−86;Coliganら(1991)Current Protocols in Immunology 13:12;Kwekkeboomら(1993)Immunology 79:439−444;ならびに米国特許第5,674,492号および同第5,847,082号(本明細書に参照として組み込まれている)に記載されているアッセイも参照のこと。
【0196】
本発明の一部の実施形態において、抗CD40抗体は、液体医薬組成物に調合される。前記抗CD40抗体は、本明細書において上で開示したものをはじめとする、当該技術分野において公知の任意の方法を使用して調製することができる。一つの実施形態において、前記抗CD40抗体は、CHO細胞株において組換え生産される。
【0197】
抗CD40抗体をその調合前に保管しなければならない場合、例えば、−20℃以下で凍結し、その後、さらなる調合のために室温で解凍する。本液体製剤は、治療有効量の抗CD40抗体を含む。本製剤中の存在するその抗体の量は、投与経路および所望の用量容積を考慮に入れる。
【0198】
このように、本液体医薬組成物は、抗CD40抗体を約0.1mg/mL〜約50.0mg/mL、約0.5mg/mL〜約40.0mg/mL、約1.0mg/mL〜約30.0mg/mL、約5.0mg/mL〜約25.0mg/mL、約5.0mg/mL〜約20.0mg/mL、または約15.0mg/mL〜約25.0mg/mLの濃度で含む。一部の実施形態において、本液体医薬組成物は、抗CD40抗体を約0.1mg/mL〜約5.0mg/mL、約5.0mg/mL〜約10.0mg/mL、約10.0mg/mL〜約15.0mg/mL、約15.0mg/mL〜約20.0mg/mL、約20.0mg/mL〜約25.0mg/mL、約25.0mg/mL〜約30.0mg/mL、約30.0mg/mL〜約35.0mg/mL、約35.0mg/mL〜約40.0mg/mL、約40.0mg/mL〜約45.0mg/mL、または約45.0mg/mL〜約50.0mg/mLの濃度で含む。他の実施形態において、本液体組成物は、抗CD40抗体を約15.0mg/mL、約16.0mg/mL、約17.0mg/mL、約18.0mg/mL、約19.0mg/mL、約20.0mg/mL、約21.0mg/mL、約22.0mg/mL、約23.0mg/mL、約24.0mg/mL、または約25.0mg/mLの濃度で含む。本液体医薬組成物は、抗CD40抗体と、約pH5.0から約pH7.0の範囲内(約pH5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、および約pH5.0から約pH7.0の範囲内の他のそうした値を含む)に製剤のpHを維持する緩衝剤とを含む。一部の実施形態において、前記緩衝剤は、本製剤のpHを約pH5.0〜約pH6.5、約pH5.0〜約pH6.0、約pH5.0〜約pH5.5、約pH5.5〜約pH7.0、約pH5.5〜約pH6.5、または約pH5.5〜約pH6.0の範囲内に維持する。
【0199】
約pH5.0から約pH7.0の範囲内に本液体抗CD40抗体製剤のpHを維持する任意の好適な緩衝剤を、その抗体の物理化学的安定性および所望の活性が、本明細書において上で述べたとおり保持される限り、本製剤において使用することができる。好適な緩衝剤としては、従来の酸およびそれらの塩(この場合の対イオンは、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたはマグネシウムであり得る)が挙げられるが、これらに限定されない。本医薬液体製剤を緩衝するために使用することができる従来の酸およびそれらの塩の例としては、コハク酸またはコハク酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、酒石酸または酒石酸塩、リン酸またはリン酸塩、グルコン酸またはグルコン酸塩、グルタミン酸またはグルタミン酸塩、アスパラギン酸またはアスパラギン酸塩、マレイン酸またはマレイン酸塩、およびリンゴ酸またはリンゴ酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。前記製剤中の緩衝剤濃度は、約1mMから約50mM(約1mM、2mM、5mM、8mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、または約1mMから約50mMの範囲内の他のそうした値を含む)であり得る。一部の実施形態において、本製剤中の緩衝剤濃度は、約5mMから約15mM(約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、または約5mMから約15mMの範囲内の他のそうした値を含む)である。
【0200】
本発明の一部の実施形態において、本液体医薬製剤は、治療有効量の抗CD40抗体と、本製剤のpHを約pH5.0から約pH7.0、好ましくは約pH5.0から約pH6.5に維持する濃度のコハク酸塩緩衝剤またはクエン酸塩緩衝剤とを含む。「コハク酸塩緩衝剤」または「クエン酸塩緩衝剤」とは、それぞれ、コハク酸の塩またはクエン酸の塩を含む緩衝剤を意味する。好ましい実施形態において、コハク酸塩またはクエン酸対イオンは、ナトリウムカチオンであり、従って、前記緩衝剤は、それぞれ、コハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムである。しかし、任意のカチオンが有効であると予想される。他の可能なコハク酸またはクエン酸カチオンとしては、カリウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。上で述べたように、本製剤中のコハク酸塩またはクエン酸塩緩衝剤濃度は、約1mMから約50mM(約1mM、2mM、5mM、8mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、または約1mMから約50mMの範囲内の他のそうした値を含む)であり得る。一部の実施形態において、前記製剤中の緩衝剤濃度は、約5mMから約15mM(約5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、または15mMを含む)である。他の実施形態において、本液体医薬製剤は、約0.1mg/mLから約50.0mg/mL、または約5.0mg/mLから約25.0mg/mLの濃度の抗CD40抗体と、約1mMから約20mM、約5mMから約15mM、好ましくは約10mMの濃度のコハク酸塩またはクエン酸塩緩衝剤、例えばコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム、とを含む。
【0201】
液体医薬製剤がほぼ等張性であることが望ましい場合、抗CD40抗体および緩衝剤を含むその液体医薬製剤は、その製剤をほぼ等張性にするために十分な量の等張化剤を含むことができる。「ぼほ等張性」とは、その水性製剤が、約240mmol/kg〜約360mmol/kg、好ましくは240〜340mmol/kg、さらに好ましくは約250〜約330mmol/kg、さらにいっそう好ましくは約260〜約320mmol/kg、さらにいっそう好ましくは約270〜約310mmol/kgの浸透圧モル濃度を有することを意味する。溶液の等張性の判定方法は、当業者には公知である。例えば、Setnikarら(1959)J.Am.Pharm.Assoc.48:628参照。
【0202】
当業者は、医薬組成物において等張性を生じさせることに役立つ、薬学的に許容される様々な溶質を熟知している。等張化剤は、本発明の液体医薬製剤の浸透圧を体液の浸透圧とほぼ等しい値に合わせることができるいずれの試薬であってもよい。生理学的に許容される等張化剤を使用することが望ましい。従って、治療有効量の抗CD40抗体および緩衝液を含む液体医薬製剤は、等張性を生じさせるために使用することができる成分、例えば、塩化ナトリウム;アミノ酸、例えばアラニン、バリンおよびグリシン;糖および糖アルコール(ポリオール)(グルコース、デキストロース、フルクトース、スクロース、マルトース、マンニトール、トレハロース、グリセロール、ソルビトールおよびキシリトールを含むが、これらに限定されない);酢酸、他の有機酸またはそれらの塩、ならびに比較的少量のクエン酸塩またはリン酸塩をさらに含み得る。通常の当業者は、本液体製剤の最適な等張性を生じさせるために好適なさらなる試薬を知っていよう。
【0203】
一部の好ましい実施形態において、抗CD40抗体および緩衝剤を含む液体医薬製剤は、塩化ナトリウムを等張化剤としてさらに含む。前記調合物中の塩化ナトリウムの濃度は、等張性への他の成分の寄与に依存するであろう。一部の実施形態において、塩化ナトリウムの濃度は、約50mM〜約300mM、約50mM〜約250mM、約50mM〜約200mM、約50mM〜約175mM、約50mM〜約150mM、約75mM〜約175mM、約75mM〜約150mM、約100mM〜約175mM、約100mM〜約200mM、約100mM〜約150mM、約125mM〜約175mM、約125mM〜約150mM、約130mM〜約170mM、約130mM〜約160mM、約135mM〜約155mM、約140mM〜約155mM、または約145mM〜約155mMである。1つのそうした実施形態において、塩化ナトリウムの濃度は、約150mMである。他のそうした実施形態において、塩化ナトリウムの濃度は、約150mMであり、緩衝剤は、約5mMから約15mMの濃度のコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム緩衝剤であり、その液体医薬製剤は、治療有効量の抗CD40抗体を含み、ならびにその製剤は、約pH5.0から約pH7.0、約pH5.0から約pH6.0、または約pH5.5から約pH6.5のpHを有する。他の実施形態において、液体医薬製剤は、約pH5.5のpHで、約0.1mg/mLから約50.0mg/mLまたは約5.0mg/mLから約25.0mg/mLの濃度の抗CD40抗体と、約150mMの塩化ナトリウムと、約10mMのコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムとを含む。
【0204】
本発明の液体医薬製剤の加工中の凍結解凍または機械的剪断に起因するタンパク質分解は、本製剤に界面活性剤を添合して溶液−空気界面の表面張力を低下させることによって抑制することができる。従って、一部の実施形態において、本液体医薬製剤は、治療有効量の抗CD40抗体および緩衝剤を含み、さらに、界面活性剤を含む。他の実施形態において、本液体医薬製剤は、抗CD40抗体、緩衝剤および等張化剤を含み、さらに、界面活性剤を含む。
【0205】
利用される代表的な界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、例えばポリソルベート80(Tween 80)およびポリソルベート20(Tween 20);ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンエステル、例えばPluronic F68;ポリオキシエチレンアルコール、例えばBrij 35;シメチコン;ポリエチレングリコール、例えばPEG400;リゾホスファチジルコリン;ならびにポリエチレン−p−t−オクチルフェノール、例えばTriton X−100をはじめとする、非イオン性界面活性剤である。界面活性剤または乳化剤による医薬の古典的安定化は、例えば、Levineら(1991)J.Parenteral Sci.Technol.45(3):160−165(本明細書に参照として組み込まれている)に記載されている。本発明の実施の際に利用される好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80である。界面活性剤を含める場合、それは、一般に、約0.001%〜約1.0%(w/v)、約0.001%〜約0.5%、約0.001%〜約0.4%、約0.001%〜約0.3%、約0.001%〜約0.2%。約0.005%〜約0.5%、約0.005%〜約0.2%、約0.01%〜約0.5%、約0.01%〜約0.2%。約0.03%〜約0.5%、約0.03%〜約0.3%、約0.05%〜約0.5%、または約0.05%〜約0.2%の量で添加する。
【0206】
従って、一部の実施形態において、本液体医薬製剤は、治療有効量の抗CD40抗体を含み、緩衝剤は、約1mMから約50mM、約5mMから約25mM、または約5mMから約15mMの濃度のコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム緩衝剤であり、この製剤は、約pH5.0から約pH7.0、約pH5.0から約pH6.0、または約pH5.5から約pH6.5のpHを有し;ならびにこの製剤は、約0.001%から約1.0%または約0.001%から約0.5%の量の界面活性剤、例えばポリソルベート80、をさらに含む。そうした製剤は、約50mMから約300mM、約50mMから約200mM、または約50mMから約150mMの濃度の等張化剤、例えば塩化ナトリウム、を場合によっては含むことがある。他の実施形態において、本液体医薬製剤は、約20.0mg/mLをはじめとする、約0.1mg/mL〜約50.0mg/mLまたは約5.0mg/mL〜約25.0mg/mLの濃度の抗CD40抗体;約150mMの塩化ナトリウムをはじめとする、約50mM〜約200mMの塩化ナトリウム;約10mMのコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムをはじめとする、約5mM〜約20mMのコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム;約150mMをはじめとする、約50mM〜約200mMの濃度の塩化ントリウム;ならびに場合により、約0.001%から約0.5%をはじめとする、約0.01%〜約1.0%の量の界面活性剤、例えばポリソルベートを含み、この場合の液体医薬製剤は、約pH5.0〜約pH7.0、約pH5.0〜約pH6.0、約pH5.0〜約pH5.5、約pH5.5〜約pH6.5、または約pH5.5〜約pH6.0のpHを有する。
【0207】
本液体医薬製剤には、本明細書において上で述べたいずれの保存薬および他の担体、賦形剤または安定剤も本質的に含み得ない。あるいは、本製剤は、抗CD40抗体の物理化学的安定性に悪影響を与えないことを条件として、本明細書において上で説明した1つ以上の保存薬、例えば、抗菌剤、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含み得る。許容される担体、賦形剤および安定剤の例としては、追加の緩衝剤、補助溶媒、界面活性剤、抗酸化物質(アスコルビン酸およびメチオニンを含む)、キレート剤、例えば、EDTA、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体)および生体分解性ポリマー、例えばポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される担体、安定剤およびisomolyteの調合および選択の詳細な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版;ペンシルバニア州、イートンのMack Publishing Company、1990)(本明細書に参照として組み込まれている)において見出すことができる。
【0208】
「担体」は、本明細書で用いる場合、利用される用量および濃度でそれに暴露される細胞または哺乳動物にとって非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を包含する。多くの場合、生理学的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩および他の有機酸;アルコルビン酸をはじめとする抗酸化物質;低分子量(残基数約10未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリシン;単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む);キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えばナトリウム;ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)およびPluronicsが挙げられる。
【0209】
1つ以上のさらなる治療薬「と併用での」投与は、同時(同時発生的)投与および任意の順番での逐次投与を包含する。
【0210】
本明細書において説明する液体医薬製剤または他の医薬組成物を調製した後、それを凍結乾燥させて分解を防ぐことができる。液体組成物を凍結乾燥させる方法は、通常の当業者には公知である。使用直前、その組成物を、追加の成分を含み得る滅菌希釈剤(例えばリンガー溶液、蒸留水または滅菌食塩水)で、再構成することができる。好ましくは、再構成し次第、当業者に公知の方法を使用してその組成物を被検者に投与する。
【0211】
一部の実施形態において、抗CD40抗体は、炎症性および/または自己免疫疾患のための少なくとも1つの他の公知の療法と併用で投与することができる。そうした療法としては、外科手術または外科手術手順(例えば、脾臓摘出術、リンパ節切除術、甲状腺切除術、血漿分離交換法、白血球フェレーシス、細胞、組織または臓器移植、腸の処置、臓器潅流など);放射線療法;ステロイド療法および非ステロイド療法などの療法;ホルモン療法;サイトカイン療法;外皮用剤(例えば、アレルギー、接触皮膚炎および乾癬などの皮膚の状態を治療するために使用される局所用薬剤)での療法;免疫抑制療法;ならびに他の抗炎症性モノクローナル抗体療法などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法が、併用治療計画を含む場合、これらの療法は、同時に施される場合があり、すなわち、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合性フラグメントは、他の療法と同時発生的に投与されるか、同じ時間枠内で投与される(すなわち、これらの療法は、同時に進行するが、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合性フラグメントは、他の療法と全く同じ時間には投与されない)。あるいは、本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、他の療法の前に投与されてよく、または後に投与され得る。異なる療法の逐次的施与は、治療を受ける被検者が、第一の治療コースに反応して、寛解または再発の可能性を減少させるかどうかにかかわらず、行うことができる。
【0212】
このように、抗CD40抗体は、手術、臓器潅流、放射線療法、ステロイド療法、非ステロイド療法、抗体療法、抗真菌療法、ホルモン療法、サイトカイン療法、外皮用剤(例えば、アレルギー、接触皮膚炎および乾癬などの皮膚の状態を治療するために使用される局所用薬剤)での療法、免疫抑制療法、他の抗炎症性モノクローナル抗体療法、ならびにそれらの組み合わせなどをはじめとする、少なくとも1つの他の療法と併用で、投与される。従って、併用される療法が、別の治療薬の投与と(例えば、一例としてステロイドと)併用で抗CD40抗体の投与を含む場合、本発明の方法は、別の製剤または単一の医薬製剤を使用する併用投与、およびいずれかの順序での逐次投与を含む。
【0213】
抗CD40抗体と併用で投与することができる免疫抑制剤の例としては、メトトレキサート、シクロホスファミド、ミゾリビン、クロラムブシル、シクロスポリン、例えばエーロゾル化シクロスポリン(米国特許出願公開第US20020006901号(その全体が本明細書に参照として組み込まれている))など、タクロリムス(FK506;ProGraf(登録商標))、マイコフェノレートモフェチル、およびアザチオプリン(6−メルカプトプリン)、シロリムス(ラパマイシン)、デオキシスパーガリン、レフルノミドおよびそのマロノニトリロアミド類似体;ならびに
を含む免疫抑制タンパク質
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0214】
抗CD40抗体と併用で投与することができる好適な抗炎症剤の例としては、例えば、クロベタゾール、ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルオシノール、フルオシノニド、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンなどのコルチコステロイド;例えば、スルファサラジン、メサラミン含有薬物(5−ASA剤として公知)、セレコキシブ、ジクロフェナク、エトドラク、フェンプロフェン、フルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、メクロファマート、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サリチラート、スリンダクおよびトルメチンなどの、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID);ならびにEnbrel(登録商標)(可溶性TNF受容体)、抗炎症性抗体、例えばアダリムマブ(HUMIRA(登録商標)、TNA−αアンタゴニスト)およびインフリキシマブ(Remicade(登録商標)、TNF−αアンタゴニスト)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
移植拒絶反応および移植片対宿主疾患は、超急性(体液性)、急性(T細胞媒介)、もしくは慢性(未知の病因)、またはこれらの組み合わせであり得る。従って、本発明の抗CD40抗体は、一部の実施形態において、肝臓、腎臓、膵臓、膵島細胞、小腸、肺、心臓、角膜、皮膚、血管、骨、異種または自己骨髄などをはじめとする任意の組織の超急性、急性および/または慢性移植拒絶反応と関連のある拒絶反応および/または症状を予防および/または改善するために使用される。いずれのドナーから移植片組織を得て、いずれのレシピエントに移植してもよく、従って、移植手順は、動物の組織のヒトへの移植(異種移植)、あるヒトから別の人への組織移植(例えば、同種移植)、および/または人体のある部分から別の部分への組織移植(自己移植)を含み得る。本発明の抗体での治療は、移植の後遺症、例えば、発熱、食欲不振、血行動態異常、白血球減少、移植した臓器/組織の白血球浸潤、ならびに日和見感染を低減することもできる。
【0216】
本発明の抗CD40抗体を使用して移植片拒絶反応、関節リウマチまたは多発性硬化症を治療する実施形態において、本抗体は、本明細書において説明したような好適な免疫抑制剤と併用することができる。
【0217】
従って、本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒトにおいてCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための薬物の製造における治療または予防有効量の抗CD40抗体の使用を提供し、この場合、前記薬物は、少なくとも1つの他の療法での治療と協調性である。
【0218】
「協調性」とは、抗CD40抗体を含む薬物が、少なくとも1つの他の療法でのその被検者の治療前、中または後に使用できることを意味する。
【0219】
本発明は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であり、少なくとも1つの他の治療薬での前治療を受けたヒト患者をCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患について治療するための薬物の製造における抗CD40抗体の使用も提供する。
【0220】
「前治療された」または「前治療」とは、被検者が、抗CD40抗体を含む薬物を受ける前に1つ以上の他の療法を受けた(すなわち、少なくとも1つの他の療法で治療された)ことを意味する。「前治療された」または「前治療」は、抗CD40抗体を含む薬物での治療を開始する前の2年以内、18ヶ月以内、1年以内、6ヶ月以内、2ヶ月以内、6週間以内、1ヶ月以内、4週間以内、3週間以内、2週間以内、1週間以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、またはさらに1日以内に、少なくとも1つの他の療法での治療を受けた被検者を含む。その被検者が、前の療法(単数または複数)での前治療に対する反応者である必要は必ずしもない。従って、アンタゴニスト抗CD40抗体を含む薬物を受ける被検者は、前の療法での治療に対して、または前治療が多数の療法を含んでいた場合にはそれらの前の療法のうちの1つ以上に対して、反応してもよく、または反応しなくてもよい。被検者が、抗CD40抗体を含む薬物を受ける前に前治療を受け得る他の療法の例としては、本明細書の他の箇所で説明する炎症性疾患または自己免疫疾患のための療法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0221】
1つ以上の他の療法と本明細書において説明する薬物の協調的使用に関連して、「治療」は、被検者への薬物もしくは他の療法の適用もしくは施与、または被検者からの単離された組織もしくは細胞株への前記薬物もしくは他の療法の適用もしくは使用と定義し、この場合、前記被検者は、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患もしくは自己免疫疾患、そうした疾患と関連のある症状、またはそうした疾患の発現に対する素因を有し、その目的は、前記疾患、前記疾患の任意の関連症状、または前記疾患の発現に対する素因を治す、癒す、緩和する、和らげる、改変する、軽減する、改善する、向上させる、またはそれらに作用することである。
【0222】
一部の実施形態において、併用療法は、単独で投与されたときの個々の治療薬を基準にして、治療有効度を相乗的に向上させる。用語「相乗効果」は、それぞれの活性薬剤各々の個々の効果の合計より大きい、2つ以上の活性薬剤の併用効果を記述するために使用する。従って、2つ以上の薬剤の併用効果が、結果として活性またはプロセスの「相乗的阻害」を生じさせる場合、その活性またはプロセスの阻害は、それぞれの活性薬剤各々の阻害効果の合計より大きい。用語「相乗的治療効果」は、(多数のパラメータのいずれかによって測定して)それぞれの個々の療法で観察される個々の治療効果の合計より大きい、2つ以上の療法の併用で観察される治療効果を指す。
【0223】
さて、本発明の様々な態様および実施形態を、単なる例として、より詳細に説明しよう。本発明の範囲から逸脱することなく詳細の変更を行うことができることは理解されるであろう。
【0224】
実験
下の実施例において使用する抗CD40抗体は、CHI−12.12である。CHIR−12.12抗体の生産、配列決定および特性付けは、WO2005/044854、WO2005/044304、WO2005/044305、WO2005/044306、WO2005/044855、WO2005/044307、およびWO2005/044294として公開された国際特許出願に詳細に記載されている。CHIR−12.12抗体を発現するハイブリドーマ系統153.8E2.D10.D6.12.12(CMCC#12056)は、PTA−5543の特許寄託番号で、米国微生物系統保存機関[ATCC;10801 University Blvd.,Manassas,Virginia 20110−2209(USA)]に寄託されている。
【0225】
多数の以下の実施例は、癌細胞株および癌患者細胞へのCHIR−12.12の結合に基づく。しかし、以下の実施例のすべては、抗CD40抗体を使用する炎症性疾患および/または自己免疫疾患の治療に等しく関連のあるCHIR−12.12抗体の特性を例証するものであるため、直接的には、炎症性疾患および/または自己免疫疾患を治療するためのCHIR−12.12の使用に関連している。
【実施例】
【0226】
実施例1:細胞株におけるADCCの分析
CHIR−12.12およびリツキシマブを、リンパ腫細胞株(Daudi、Namalwa)、多発性骨髄腫細胞株(ARH77、IM−9)、B−ALL細胞株(CCRF−SB)およびB−CLL細胞株(EHEB)をはじめとするCD40抗原とCD20抗原の両方を発現する様々な悪性B細胞に対するそれらの相対ADCC活性について比較した。
【0227】
最大溶解パーセントおよびED50としてそれぞれ測定したADCC有効度および効力を、CHIR−12.12およびリツキシマブについて比較した。これらの実験結果を図1A−1Fに示す。すべてのターゲット細胞株について、CHIR−12.12は、リツキシマブより効力および有効度の高いADCC媒介因子であった。試験した6つの細胞株において、細胞1個当たりの細胞表面CD20分子の数は、CD40より2.6から30.8倍多かった。これらのデータは、CD20より少ないCD40分子を提示するにもかかわらず、悪性B細胞株が、リツキシマブより効果的にCHIR−12.12によって溶解されることを示している。
【0228】
実施例2:CLL患者細胞におけるADCCの分析
8人の患者からのエクスビボ原発性CLL細胞に対するCHIR−12.12およびリツキシマブの相対ADCC活性を比較した。CHIR−12.12は、すべての患者からのCLLに対してリツキシマブより大きなADCCを示した(図2A−Dおよび図3参照)。結果を図3にまとめる。CHIR−12.12は、リツキシマブより効力が高い。
抗体依存性細胞障害(ADCC)実験計画
ターゲット細胞:CLL患者細胞、5000/ウエル。エフェクター細胞:精製した正常ヒトNK細胞、50,000/ウエル。E:T比:10。Ab濃度:0.00001、0.0001、0.001、0.01、0.1、1および10μg/mL。インキュベーション時間:4時間。培地:RPMI(フェノールレッド負含)+10%FBS+1%P/S。培養器具:96ウエル丸底プレート。読出し:485nm 励起/535nm 放射での任意の蛍光単位(AFU)によって測定されるカルセインAM放出。計算:特異的溶解%=100x(AFU試験−AFU自然放出1)/(AFU最大放出2−AFU自然発生)。陰性対照:抗体またはNK細胞の不在下でターゲット細胞によって放出されるカルセイン。陽性対照:界面活性剤(1%NP40)による溶解に基づきターゲット細胞によって放出されるカルセイン。
【0229】
図2および3に図示する結果は、CHIR−12.12が、CLL患者細胞に対してリツキシマブより大きなADCCを媒介することを示している。ADCCの差の大きさは、ターゲット細胞に依存してよく、NKドナー細胞に依存してもよいが、すべての患者サンプルに対して観察された。1人の患者からのCLL細胞を2つの異なるNKドナーで試験したとき、CHIR−12.12は、両方のNKドナー細胞についてリツキシマブより大きなADCCを媒介したが、特異的ADCCの大きさは、同一ではなかった(図4参照)。この優れたADCCについてのメカニズムの基礎は、ターゲット抗原(CD20およびCD40)の相対発現レベル、抗体の内在化の程度、およびNK細胞上のFcγRIIIa受容体に対する抗体の親和性を含み得る。従って、CHIR−12.12およびリツキシマブのADCC活性に対するこれらの因子の影響を調査した。
【0230】
実施例3:細胞表面CD40およびCD20分子の定量
CLL細胞上の定量的CD20およびCD40密度(実施例3)および抗体内在化度(実施例4)を、ADCC活性における上で説明した差についての潜在的理由として調査した。CHIR−12.12のより大きなADCC活性および有効度は、より高い細胞表面CD40分子密度には依存しなかった。細胞表面のCD40分子数よりCD20分子の数のほうが、1.3倍から14倍多かったからである(図5および6参照)。
【0231】
方法
染色用緩衝剤(PBSは、1%BSA、0.1%アジ化Naを含有する)中、1mg/mLのヒトIgG1と共に細胞をプレインキュベートして、非特異的結合部位をブロックした。それらは、30分間、4℃(氷上)でインキュベートした。その後、FITC共役化ヒトIgG1アイソタイプ対照、FITC共役化CHIR−12.12、またはFITC共役化リツキシマブを100、10、1、0.1μg/mLで添加し、細胞を30分間、4℃(氷上)でインキュベートした。細胞を染色用緩衝液(PBS+1%FBS+0.1%アジ化ナトリウム)で洗浄し、FACS Caliburによって分析した。
幾何平均蛍光強度をFACSによって測定した。その後、較正用FITCビーズによって設定した標準曲線に基づいて、Molecules of Equivalent Soluble Fluorchrome(MESF)を計算した。
【0232】
実施例4:CHIR−12.12は、細胞株上のCD40に結合すると内在化を誘導しない
Daudi、リンパ腫細胞株、およびARH77、MM細胞株、を使用して、内在化に対するCHIR−12.12の効果を評価した。氷上(内在化を阻止するために0.1%アジ化ナトリウムを伴う)または37℃(アジ化ナトリウムを伴わない)で3時間、1μg/mLのヒトIgG1(対照抗体)またはCHIR−12.12と共に細胞をインキュベートした。低温の染色用緩衝剤(PBS+1%FBS+0.1%アジ化ナトリウム)で洗浄した後、氷上で30分間、ヤギ抗ヒトIgG−FITCで細胞を染色した。幾何平均蛍光強度(MFI)をFACS Caliburによって記録した。アジ化ナトリウムの存在下、氷上でCHIR−12.12と共にインキュベートした細胞と、アジ化ナトリウム不在下、37℃でCHIR−12.12と共にインキュベートした細胞との間に、差は観察されなかった(図7)。これらのデータは、CD40に結合すると、CHIR−12.12が内在化せず、細胞表面に提示され続けることを示している。
【0233】
実施例5:CLL患者細胞への結合後のCHIR−12.12およびリツキシマブの内在化:FACSおよび共焦点顕微鏡
FACS方法論
40℃(0.1%アジ化ナトリウムを伴う)または37℃(アジ化Naを伴わない)で3時間、10μg/mLのhuIgG1、CHIR−12.12またはリツキシマブと共に細胞をインキュベートした。染色用緩衝剤(PBS+1%FBS+0.1%アジ化Na)で細胞を洗浄し、その後、FITC−ヤギ抗ヒトIgGを添加し、その後、細胞を30分間、40℃でインキュベートし、FACS Caliburによって分析した。
共焦点顕微鏡方法論
40℃(0.1%アジ化Naを伴う)または37℃(アジ化Naを伴わない)で、3時間、10μg/mLのAlexa 488またはFITC共役化CHIR−12.12、リツキシマブおよびIgG1と共に細胞をインキュベートした。その後、細胞を洗浄し、5分間、室温で、2%ホルムアルデヒドで固定した。その後、細胞を洗浄し、ポリ−L−リシン被覆スライドガラス上に配置し、マウントし、封止し、その後、共焦点イメージングによって分析した。
結果
これらの実験の結果を図8(FACS)ならびに図9および10(共焦点顕微鏡)に示す。これらの実験からの結果を図11にまとめる。フローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡法によって行った原発性CLL細胞を使用するこれらの抗体内在化試験は、37℃でCD40に結合すると、3時間後でさえ、CHIR−12.12は細胞表面上に均一に分布したままであることを示している。対照的に、37℃で結合後、リツキシマブは、キャップに再び分布し、内在化される。これらのデータは、CHIR−12.12の効力のあるADCC活性を、ターゲット細胞表面でそれ自体を均一に提示するその能力に関連付けることができ、それが、エフェクター細胞との最適な相互作用を可能ならしめることを示唆している。これらの結果は、CHIR−12.12が、インビボでCLL細胞に対して効力のあるADCCを媒介する点で有効であり得ることを示唆している。
【0234】
実施例6:Rituxan(登録商標)およびCHIR−12.12によるFcγRIIIa結合のBiacore分析
CHIR−12.12およびリツキシマブに対するFcγRIIIa aa158Fおよびaa158V対立遺伝子の親和性を、標準的なBiacore(登録商標)分析によって比較した。CHIR−12.12は、リツキシマブと比較したとき、4.6倍高い親和性でaa158F対立遺伝子に結合した(それぞれ、2.8μM対13μM)。これらの実験の結果を下の表にまとめる:
【0235】
【表1】
実施例7:NKエフェクター細胞によるADCCに対するFcγRIIIa多型の影響
抗体依存性細胞障害(ADCC)は、多くの市販および治験モノクローナル抗体についての主要作用メカニズムである。濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療用に市販されており、他のB細胞悪性病変において有効であるリツキシマブ(Rituxan(登録商標))は、その主作用メカニズムの1つとしてADCCを有すると考えられる。特に、NHLにおけるリツキシマブの臨床活性が、FcγRIIIa遺伝子型と相関することは証明されている。V/VまたはV/FのFcγRIIIa 158aa多型を有する患者は、F/Fを有する者より大きくリツキシマブに反応する(例えば、Cartonら(2002)Blood 99(3):754−758またはDall’Ozzoら(2004)Cancer Res.64:4664−4669参照)。
【0236】
これらの実験では、様々なFcγRIIIa aa158多型を発現する多数のヒトドナーからの精製されたNKエフェクター細胞を、ヒトリンパ腫Daudi細胞株をターゲット細胞として使用して評価した(図12および13参照)。これらの図により示されているように、CHIR−12.12は、3つすべての遺伝子型のNK細胞で効力のあるADCCを誘導した。Daudi細胞株の溶解についてのCHIR−12.12 ED50は、F/F、V/FおよびV/Vについて、それぞれ、4、2および0.4pMであった(図13)。Daudi細胞株の溶解についてのリツキシマブ ED50は、F/F、V/FおよびV/Vについて、それぞれ、53、21および9pMであった(図13)。
【0237】
様々なFcγRIIIa aa158多型を発現する多数のヒトドナーからの精製されたNKエフェクター細胞を、CLL患者細胞をターゲット細胞として使用しても評価した(図14参照)。CHIR−12.12は、試験したすべてのCLL患者細胞に対して、リツキシマブより効力の高いADCC媒介因子であることが判明した(図14)。これらのデータは、CHIR−12.12が、aa158 V/FまたはF/F遺伝子型のNK細胞ででさえ、リツキシマブより効力の高いADCC媒介因子であることを示唆している。
【0238】
これらの発見は、驚くべきことである。CHIR−12.12は、F/FまたはF/VのFcγRIIIa 158aa多型を有するNK細胞を使用するほうが、V/Vを有するものを使用するより、ADCCアッセイでの効力が有意に低いと予想されたからである。重ねて、NHLにおけるリツキシマブの臨床活性が、FcγRIIIa遺伝子型と相関することは証明されている。V/VまたはV/FのFcγRIIIa 158aa多型を有する患者は、F/Fを有する者より、リツキシマブに対して大きく反応する。リツキシマブは、B細胞の表面で発現される抗原に結合するIgG1モノクローナル抗体でもあり、そのため、CHIR−12.12は、FcγRIIIa−158V多型について同じ嗜好性を提示すると予想された。そうではなく、CHIR−12.12は、3つすべての遺伝子型のNK細胞で効力のあるADCCを誘導することが判明した。
【0239】
上述の説明および関連図に提示した技術の恩恵を受けるこれらの発明が属する技術分野の技術者には、本明細書において述べた本発明についての多くの変形および他の実施形態が、思い浮かぶであろう。従って、本発明を、開示する特定の実施形態に限定すべきではなく、変形および他の実施形態が、添付のクレームの範囲に含まれると解釈されることは、理解されるであろう。本明細書の中では特定の用語を用いているが、それらは、単に一般的および説明的な意味で用いており、限定のためのものではない。
【0240】
本明細書において引用したすべての出版物および特許出願は、それぞれ個々の出版物または特許出願が参照として組み込まれていると具体的におよび個々に述べられているのと同程度に、完全に参照として組み込まれている。
【0241】
【数1】
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1A】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図1B】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図1C】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図1D】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図1E】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図1F】6つの細胞系列における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図2A】CLL患者細胞(n=8)における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図2B】CLL患者細胞(n=8)における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図2C】CLL患者細胞(n=8)における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図2D】CLL患者細胞(n=8)における抗体依存性細胞障害(ADCC)の分析結果を示す図である。
【図3】CLL患者細胞(n=9)におけるADCCの分析結果をまとめた図である。
【図4】2人の異なるドナーからのNKエフェクター細胞を使用したCLL患者細胞におけるADCCの分析結果を示す図である。
【図5】CLL患者細胞および正常なB細胞上でのCD40およびCD20細胞表面発現の定量の結果を示す図である。
【図6】CD40およびCD20細胞表面発現を定量した細胞についてのADCC活性をまとめた図である。
【図7】DaudiおよびARH77細胞株上の細胞表面結合CHIR−12.12のレベルを示す棒グラフである。
【図8】FACS分析によるCLL患者細胞におけるCHIR−12.12およびリツキシマブの内在化の調査結果を示す図である。
【図9】FITC標識抗体の共焦点顕微鏡検査法による正常B細胞におけるCHIR−12.12およびリツキシマブの内在化の調査結果を示す図である。
【図10】Alexa488標識抗体の共焦点顕微鏡検査法によるCLL患者細胞におけるCHIR−12.12およびリツキシマブの内在化の調査結果を示す図である。
【図11】ADCC活性と内在化との関係をまとめた図である。
【図12】異なるFcγRIIIa遺伝子型を有するドナーからの精製NKエフェクター細胞ごとにCHIR−12.12またはリツキシマブによるDaudi細胞の最大特異的溶解率を示す棒グラフである。
【図13】異なるFcγRIIIa遺伝子型を有するドナーからの精製NKエフェクター細胞ごとにDaudi細胞上のCHIR−12.12またはリツキシマブのADCC効力(ED50)を示す棒グラフである。
【図14】多数の遺伝子型のヒトドナーからのヒトNK細胞ごとにCLL患者細胞(n=9)に対するCHIR−12.12およびリツキシマブの比較ADCCをまとめた図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患についてヒト患者を治療するための方法であって、該ヒト患者は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であり、治療または予防有効量の抗CD40抗体を該ヒト患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状狼瘡、ループス腎炎、サルコイドーシス、炎症性関節炎(若年性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎および痛風性関節炎を含む)、臓器もしくは組織移植の拒絶反応、超急性、急性もしくは慢性拒絶反応および/または移植片対宿主疾患、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性大腸炎、クローン病、セリアック病(グルテン過敏性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、強皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、免疫複合体疾患、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎および皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、間質性肺線維症、I型およびII型糖尿病、1、2、3および4型遅延型過敏症、アレルギーまたはアレルギー性疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない/意図されたものでない免疫反応、喘息、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性および刺激性接触皮膚炎、じんま疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、および慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、肺の炎症(肺移植片拒絶反応、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎および肺のアレルギー性疾患、例えば過敏性肺炎、好酸球性肺炎、骨髄および/または肺移植または他の原因に起因する閉塞性細気管支炎、移植片アテローム性動脈硬化症/移植片静脈硬化症、ならびに膠原病、血管疾患および自己免疫疾患(例えば、関節リウマチおよびエリテマトーデス)に起因する肺線維症を含むが、これらに限定されない)から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、CD20発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、またはシェーグレン症候群である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、多発性硬化症、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病、または糖尿病である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、CD40とCD20の両方を発現する細胞と関連のある炎症性疾患、または自己免疫疾患である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、またはシェーグレン症候群である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、多発性硬化症、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病、または糖尿病である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記抗CD4−抗体が、非経口投与経路により投与される、請求項1−8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗CD40抗体が、静脈内または皮下投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための薬物の製造における、治療または予防有効量の抗CD40抗体の使用。
【請求項12】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状狼瘡、ループス腎炎、サルコイドーシス、炎症性関節炎(若年性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎および痛風性関節炎を含む)、臓器もしくは組織移植の拒絶反応、超急性、急性もしくは慢性拒絶反応および/または移植片対宿主疾患、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性大腸炎、クローン病、セリアック病(グルテン過敏性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、強皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、免疫複合体疾患、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎および皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、間質性肺線維症、I型およびII型糖尿病、1、2、3および4型遅延型過敏症、アレルギーまたはアレルギー性疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない/意図されたものでない免疫反応、喘息、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性および刺激性接触皮膚炎、じんま疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、および慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、肺の炎症(肺移植片拒絶反応、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎および肺のアレルギー性疾患、例えば過敏性肺炎、好酸球性肺炎、骨髄および/または肺移植または他の原因に起因する閉塞性細気管支炎、移植片アテローム性動脈硬化症/移植片静脈硬化症、ならびに膠原病、血管疾患および自己免疫疾患(例えば、関節リウマチおよびエリテマトーデス)に起因する肺線維症を含むが、これらに限定されない)から成る群より選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、CD20発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、またはシェーグレン症候群である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
多発性硬化症、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病、または糖尿病、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、CD40とCD20の両方を発現する細胞と関連のある炎症性疾患、または自己免疫疾患である、請求項13に記載の使用。
【請求項17】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、またはシェーグレン症候群である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
多発性硬化症、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病、または糖尿病、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記薬物が、非経口投与経路による投与用に調合される、請求項11−18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記薬物が、静脈内または皮下投与用に調合される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与することを含む、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害する方法。
【請求項22】
前記ヒト患者が、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害するための薬物の製造における、有効量の抗CD40抗体の使用。
【請求項24】
前記抗CD40抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項25】
前記ヒト抗CD40モノクローナル抗体が、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項24に記載の方法または使用。
【請求項26】
前記ヒトIgG1が、配列番号4または配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1−25に記載の方法または使用。
【請求項27】
前記抗CD40抗体に有意なアゴニスト活性がない、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項28】
前記抗CD40抗体が、CD40発現性細胞でのCD40−CD40Lシグナル伝達のアンタゴニストである、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項29】
前記抗CD40抗体が、
a)モノクローナル抗体CHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号2に示す配列、配列番号4に示す配列、配列番号5に示す配列、配列番号2および配列番号4に示す両方の配列、ならびに配列番号2および配列番号5に示す両方の配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号1に示す配列、配列番号3に示す配列、ならびに配列番号1および配列番号3に示す両方の配列から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
e)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
f)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
i)前記項目a)に記載のモノクローナル抗体または前記項目c)−h)のいずれか一項目に記載のモノクローナル抗体であって、該抗体が組換え生産される、抗体;ならびに
j)前記項目a)−i)のいずれか一項目に記載のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、該フラグメントは、ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体
から成る群より選択される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項30】
前記抗CD40抗体が、モノクローナル抗体CHIR−12.12である、請求項29に記載の方法または使用。
【請求項31】
前記抗原結合フラグメントが、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、および1本鎖Fvフラグメントから成る群より選択される、請求項29に記載の方法はたは使用。
【請求項32】
抗CD40抗体で治療することができ、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対しては難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するための方法であって、
a)CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定する工程;および
b)該ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定する工程
を含み、
該ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、該炎症性疾患または自己免疫疾患を抗CD40抗体で治療することができる、方法。
【請求項33】
リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択する方法であって、
a)CD40発現性細胞と関連があり、かつリツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定する工程;および
b)該ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定する工程
を含み、
該ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、該炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に抗CD40抗体が選択される、方法。
【請求項34】
前記ヒト患者が、炎症性または自己免疫疾患のための療法に対して難治性である、請求項1〜33のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項35】
前記ヒト患者が、抗CD20モノクローナル抗体での療法に対して難治性である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒト患者が、抗CD20モノクローナル抗体での療法に対して耐性である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒト患者が、抗CD20モノクローナル抗体での療法に対して反応しない、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記抗CD20モノクローナル抗体が、リツキシマブ(Rituxin(登録商標))である、請求項35−37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するためのキット。
【請求項40】
ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するためのキット。
【請求項41】
長さ10ヌクレオチド以上であり、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な配列である、少なくとも1つのプローブを含むマイクロアレイを含む、請求項39または請求項40に記載のキット。
【請求項42】
FcγRIIIaのアミノ酸158をコードするゲノム領域のポリメラーゼ触媒増幅においてプライマーとしての使用に好適なオリゴヌクレオチドを含む、請求項39または請求項40に記載のキット。
【請求項43】
ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な1つ以上の制限酵素を含む、請求項39または請求項40に記載のキット。
【請求項44】
CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患についてヒト患者を治療するための方法であって、該方法は、抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞によって有意に内在化されないように、治療または予防有効量の該抗CD40抗体を該ヒト患者に投与することを含む、方法。
【請求項45】
CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患についてヒト患者を治療するための方法であって、該方法は、抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞の表面に実質的に均一に分布したままであるように、治療または予防有効量の該抗CD40抗体を該ヒト患者に投与することを含む、方法。
【請求項46】
CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患についてヒト患者を治療するための方法であって、該方法は、該ヒト患者において治療または予防有効量の抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞の表面に存在するように、該抗CD40抗体を該ヒト患者に投与することを含む、方法。
【請求項47】
ヒト患者のFcγRIIIa発現性ナチュラルキラー(NK)細胞によりCD40発現性細胞の抗体依存性細胞障害(ADCC)をもたらす、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項48】
抗体依存性細胞障害(ADCC)のアッセイにおいて、前記抗CD40抗体が、リツキシマブ(Rituxin(登録商標))より効力が高く、該アッセイが、単離されたヒトナチュラルキラー(NK)細胞と共にCD40発現性細胞およびCD20発現性細胞を適切な抗体の存在下でインキュベートすることを含む、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項49】
前記抗CD40抗体が、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、炎症およびアテローム性動脈硬化症、移植、またはアルツハイマー病のモデルにおいてリツキシマブ(Rituxin(登録商標))より効力が高い、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項50】
前記抗CD40抗体が、少なくとも約10−6Mから少なくとも約10−12Mの親和性(KD)でヒトCD40に結合する、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項51】
前記抗CD40抗体が、少なくとも約0.5μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Vに結合する、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項52】
前記抗CD40抗体が、少なくとも約12μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Fに結合する、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項53】
前記抗CD40抗体が、少なくとも約0.5μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Vに結合し、および少なくとも約12μMの親和性(KD)で。ヒトFcγRIIIa−158Fに結合する、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項1】
CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患についてヒト患者を治療するための方法であって、該ヒト患者は、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)であり、治療または予防有効量の抗CD40抗体を該ヒト患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状狼瘡、ループス腎炎、サルコイドーシス、炎症性関節炎(若年性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎および痛風性関節炎を含む)、臓器もしくは組織移植の拒絶反応、超急性、急性もしくは慢性拒絶反応および/または移植片対宿主疾患、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性大腸炎、クローン病、セリアック病(グルテン過敏性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、強皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、免疫複合体疾患、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎および皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、間質性肺線維症、I型およびII型糖尿病、1、2、3および4型遅延型過敏症、アレルギーまたはアレルギー性疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない/意図されたものでない免疫反応、喘息、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性および刺激性接触皮膚炎、じんま疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、および慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、肺の炎症(肺移植片拒絶反応、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎および肺のアレルギー性疾患、例えば過敏性肺炎、好酸球性肺炎、骨髄および/または肺移植または他の原因に起因する閉塞性細気管支炎、移植片アテローム性動脈硬化症/移植片静脈硬化症、ならびに膠原病、血管疾患および自己免疫疾患(例えば、関節リウマチおよびエリテマトーデス)に起因する肺線維症を含むが、これらに限定されない)から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、CD20発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、またはシェーグレン症候群である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、多発性硬化症、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病、または糖尿病である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、CD40とCD20の両方を発現する細胞と関連のある炎症性疾患、または自己免疫疾患である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、またはシェーグレン症候群である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、多発性硬化症、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病、または糖尿病である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記抗CD4−抗体が、非経口投与経路により投与される、請求項1−8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗CD40抗体が、静脈内または皮下投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるCD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を治療するための薬物の製造における、治療または予防有効量の抗CD40抗体の使用。
【請求項12】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状狼瘡、ループス腎炎、サルコイドーシス、炎症性関節炎(若年性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎および痛風性関節炎を含む)、臓器もしくは組織移植の拒絶反応、超急性、急性もしくは慢性拒絶反応および/または移植片対宿主疾患、多発性硬化症、高IgE症候群、結節性多発性動脈炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性大腸炎、クローン病、セリアック病(グルテン過敏性腸症)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、強皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、免疫複合体疾患、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、多発性筋炎および皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓崩壊、心筋症、尋常性天疱瘡、間質性肺線維症、I型およびII型糖尿病、1、2、3および4型遅延型過敏症、アレルギーまたはアレルギー性疾患、治療用タンパク質に対する望ましくない/意図されたものでない免疫反応、喘息、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性および刺激性接触皮膚炎、じんま疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、特発性炎症性ミオパシー、溶血性疾患、アルツハイマー病、および慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、肺の炎症(肺移植片拒絶反応、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎および肺のアレルギー性疾患、例えば過敏性肺炎、好酸球性肺炎、骨髄および/または肺移植または他の原因に起因する閉塞性細気管支炎、移植片アテローム性動脈硬化症/移植片静脈硬化症、ならびに膠原病、血管疾患および自己免疫疾患(例えば、関節リウマチおよびエリテマトーデス)に起因する肺線維症を含むが、これらに限定されない)から成る群より選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、CD20発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、またはシェーグレン症候群である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
多発性硬化症、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病、または糖尿病、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、CD40とCD20の両方を発現する細胞と関連のある炎症性疾患、または自己免疫疾患である、請求項13に記載の使用。
【請求項17】
前記炎症性疾患または自己免疫疾患が、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、クローン病、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、またはシェーグレン症候群である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
多発性硬化症、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、アルツハイマー病、または糖尿病、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記薬物が、非経口投与経路による投与用に調合される、請求項11−18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記薬物が、静脈内または皮下投与用に調合される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
有効量の抗CD40抗体をヒト患者に投与することを含む、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害する方法。
【請求項22】
前記ヒト患者が、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)のヒト患者におけるB細胞による抗体生産を阻害するための薬物の製造における、有効量の抗CD40抗体の使用。
【請求項24】
前記抗CD40抗体が、ヒトモノクローナル抗体である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項25】
前記ヒト抗CD40モノクローナル抗体が、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項24に記載の方法または使用。
【請求項26】
前記ヒトIgG1が、配列番号4または配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1−25に記載の方法または使用。
【請求項27】
前記抗CD40抗体に有意なアゴニスト活性がない、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項28】
前記抗CD40抗体が、CD40発現性細胞でのCD40−CD40Lシグナル伝達のアンタゴニストである、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項29】
前記抗CD40抗体が、
a)モノクローナル抗体CHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体;
c)配列番号2に示す配列、配列番号4に示す配列、配列番号5に示す配列、配列番号2および配列番号4に示す両方の配列、ならびに配列番号2および配列番号5に示す両方の配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号1に示す配列、配列番号3に示す配列、ならびに配列番号1および配列番号3に示す両方の配列から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
e)ハイブリドーマ細胞株12.12によって生産されるモノクローナル抗体に結合することができるエピトープに結合するモノクローナル抗体;
f)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号7または配列番号9に示すヒトCD40配列の残基82−89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
i)前記項目a)に記載のモノクローナル抗体または前記項目c)−h)のいずれか一項目に記載のモノクローナル抗体であって、該抗体が組換え生産される、抗体;ならびに
j)前記項目a)−i)のいずれか一項目に記載のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、該フラグメントは、ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体
から成る群より選択される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項30】
前記抗CD40抗体が、モノクローナル抗体CHIR−12.12である、請求項29に記載の方法または使用。
【請求項31】
前記抗原結合フラグメントが、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、および1本鎖Fvフラグメントから成る群より選択される、請求項29に記載の方法はたは使用。
【請求項32】
抗CD40抗体で治療することができ、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対しては難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するための方法であって、
a)CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定する工程;および
b)該ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定する工程
を含み、
該ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、該炎症性疾患または自己免疫疾患を抗CD40抗体で治療することができる、方法。
【請求項33】
リツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択する方法であって、
a)CD40発現性細胞と関連があり、かつリツキシマブ(Rituxan(登録商標))での治療に対して難治性である、炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定する工程;および
b)該ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型(V/V、V/FまたはF/F)を決定する工程
を含み、
該ヒト患者が、FcγRIIIa−158Fに関してヘテロ接合性またはホモ接合性(遺伝子型V/FまたはF/F)である場合、該炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に抗CD40抗体が選択される、方法。
【請求項34】
前記ヒト患者が、炎症性または自己免疫疾患のための療法に対して難治性である、請求項1〜33のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項35】
前記ヒト患者が、抗CD20モノクローナル抗体での療法に対して難治性である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒト患者が、抗CD20モノクローナル抗体での療法に対して耐性である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒト患者が、抗CD20モノクローナル抗体での療法に対して反応しない、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記抗CD20モノクローナル抗体が、リツキシマブ(Rituxin(登録商標))である、請求項35−37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む、抗CD40抗体で治療することができる炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を特定するためのキット。
【請求項40】
ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型を決定するための試薬を含む、CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患を有するヒト患者を治療するための抗体療法を選択するためのキット。
【請求項41】
長さ10ヌクレオチド以上であり、ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な配列である、少なくとも1つのプローブを含むマイクロアレイを含む、請求項39または請求項40に記載のキット。
【請求項42】
FcγRIIIaのアミノ酸158をコードするゲノム領域のポリメラーゼ触媒増幅においてプライマーとしての使用に好適なオリゴヌクレオチドを含む、請求項39または請求項40に記載のキット。
【請求項43】
ヒト患者のFcγRIIIa−158遺伝子型の決定に好適な1つ以上の制限酵素を含む、請求項39または請求項40に記載のキット。
【請求項44】
CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患についてヒト患者を治療するための方法であって、該方法は、抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞によって有意に内在化されないように、治療または予防有効量の該抗CD40抗体を該ヒト患者に投与することを含む、方法。
【請求項45】
CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患についてヒト患者を治療するための方法であって、該方法は、抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞の表面に実質的に均一に分布したままであるように、治療または予防有効量の該抗CD40抗体を該ヒト患者に投与することを含む、方法。
【請求項46】
CD40発現性細胞と関連のある炎症性疾患または自己免疫疾患についてヒト患者を治療するための方法であって、該方法は、該ヒト患者において治療または予防有効量の抗CD40抗体が投与後にCD40発現性細胞の表面に存在するように、該抗CD40抗体を該ヒト患者に投与することを含む、方法。
【請求項47】
ヒト患者のFcγRIIIa発現性ナチュラルキラー(NK)細胞によりCD40発現性細胞の抗体依存性細胞障害(ADCC)をもたらす、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項48】
抗体依存性細胞障害(ADCC)のアッセイにおいて、前記抗CD40抗体が、リツキシマブ(Rituxin(登録商標))より効力が高く、該アッセイが、単離されたヒトナチュラルキラー(NK)細胞と共にCD40発現性細胞およびCD20発現性細胞を適切な抗体の存在下でインキュベートすることを含む、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項49】
前記抗CD40抗体が、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、炎症およびアテローム性動脈硬化症、移植、またはアルツハイマー病のモデルにおいてリツキシマブ(Rituxin(登録商標))より効力が高い、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項50】
前記抗CD40抗体が、少なくとも約10−6Mから少なくとも約10−12Mの親和性(KD)でヒトCD40に結合する、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項51】
前記抗CD40抗体が、少なくとも約0.5μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Vに結合する、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項52】
前記抗CD40抗体が、少なくとも約12μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Fに結合する、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項53】
前記抗CD40抗体が、少なくとも約0.5μMの親和性(KD)でヒトFcγRIIIa−158Vに結合し、および少なくとも約12μMの親和性(KD)で。ヒトFcγRIIIa−158Fに結合する、請求項1−31または44−46のいずれかに記載の方法または使用。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−513712(P2009−513712A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538984(P2008−538984)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/042601
【国際公開番号】WO2007/053661
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【出願人】(500570793)ゾーマ テクノロジー リミテッド (26)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/042601
【国際公開番号】WO2007/053661
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【出願人】(500570793)ゾーマ テクノロジー リミテッド (26)
【Fターム(参考)】
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