説明

抗ErbB2抗体

【課題】アポトーシス性抗ErbB2抗体の提供。
【解決手段】ErbB2のドメイン1に結合し、アポトーシスを介した細胞死を誘導する抗ErbB2抗体が記載されている。これらの抗体についての様々な使用もまた記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、ErbB2レセプターに結合する抗体に関する。特にそれは、ErbB2のドメイン1におけるエピトープに結合し、アポトーシスを介して細胞死を誘導する抗ErbB2抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の増殖及び分化を調節するシグナルの伝達は、さまざまな細胞タンパク質のリン酸化によって一部調節される。タンパク質チロシンキナーゼは、この過程を触媒する酵素である。レセプタータンパク質チロシンキナーゼは、細胞内基質のリガンド刺激性チロシンリン酸化を介して、細胞増殖に向けられると考えられる。クラスIサブファミリーの増殖因子レセプターチロシンキナーゼには、erbB1遺伝子によってコードされる170kDa上皮増殖因子レセプター(EGFR)が含まれる。erbB1は、ヒト悪性疾患において時おり関連している。特に、この遺伝子の増大した発現は、比較的進行性の乳ガン、膀胱ガン、肺ガン及び胃ガンで観察されている。EGFRに対して向けられたモノクローナル抗体は、上記悪性腫瘍の治療における治療上の試薬として評価されている。レビューとして、Baselga et al,Pharmac.Ther.64:127-154(1994)参照。Masui et al.Cancer Research 44:1002-1007(1984)もまた参照。
【0003】
Wu et al.J.Clin.Invest.95:1897-1905(1995)は最近、抗EGFRモノクローナル抗体(mAb)225(それはFGE結合を競合的に阻害し、このレセプターの活性化をブロックする)が、ヒト大腸ガン細胞系DiFi(それは高レベルのEGFRを発現する)をG細胞周期停止及びプログラムされた細胞死(アポトーシス)に入ることを導くことが可能であったことを報告する。IGF-1または高濃度のインスリンの添加によりmAb225によって誘導されるアポトーシスは遅延されうる一方で、G停止はIGF-1またはインスリンの添加によって可逆的ではなかった。
【0004】
クラスIサブファミリー、p185neuの第二のメンバーは、化学的に処理されたラットの神経芽細胞腫由来のトランスフォーミング遺伝子の産物としてもともと同定された。neuガン遺伝子の活性化形態は、コードタンパク質の膜貫通領域におけるポイントミューテーション(バリンからグルタミン酸)から由来する。neuのヒトホモローグ(erbB2またはHER2と呼ばれる)の増幅が乳ガン及び卵巣ガンで観察され、微弱な予後と関連している(Slamon et al.,Science,235:177-182(1987);及びSlamon et al.,Science,244:707-712(1989))。したがって米国特許第4,968,603号中のSlamon et al.は、腫瘍細胞中のErbB2遺伝子増幅及び発現を決定するための様々な診断アッセイを記載する。今日まで、neu原ガン遺伝子におけるものと類似のポイントミューテーションは、ヒト腫瘍に対して報告されていない。ErbB2の過剰発現(大抵の場合増幅のためであるが完全にそうとはいえない)もまた、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、大腸、甲状腺、膵臓、及び膀胱の各ガンを含む他のガンにおいて観察されている。他のものとしては、King et al.,Science,229:974(1985);Yokota et al.,Lancet:1:765-767(1986);Fukushigi et al.,Mol Cell Biol.,6:955-958(1986);Geurin et al.,Oncogene Res.,3:21-31(1988);Cohen et al.,Oncogene,4:81-88(1989);Yonemura et al.,Cancer Res.,51:1034(1991);Borst et al.,Gynecol.Oncol.,38:364(1990);Weiner et al.,Cancer Res.,50:421-425(1990);Kem et al.,Cancer Res.,50:5184(1990);Park et al.,Cancer Res.,49:6605(1989);Zhau et al.,Mol.Carcinog.,3:354-357(1990);Aasland et al.Br.J.Cancer 57:358-363(1988);Williams et al.Pathiobiology 59:46-52(1991);及びMcCann et al.,Cancer,65;:88-92(1990)参照。
【0005】
ラットneu及びヒトErbB2タンパク質産物に対して向けられた抗体が記載されている。Drebin et al.,Cell 41:695-706(1985)は、ラットneu遺伝子産物に対して向けられているIgG2aモノクローナル抗体に言及している。7.16.4と呼ばれる該抗体は、B104-1-1細胞(neu原ガン遺伝子を用いてトランスフェクトされたNIH-3T3細胞)上での細胞表面p185発現の下流調節を引き起こす。Drebin et alは699頁で、該抗体はソフトアガーにおいてneuトランスフォーム細胞上で不可逆的細胞毒性効果よりもむしろ細胞増殖抑制性効果を示すと述べている。Drebin et al.PNAS(USA) 83:9129-9133(1986)において該7.16.4抗体は、neuトランスフォームNIH-3T3細胞と同様にヌードマウス内に移植されたラット神経芽腫細胞(neuガン遺伝子が最初に単離されたもの由来)の腫瘍形成性増殖を阻害することが示された。Drebin et alはOncogene 2:387-394(1988)において、ラットneu遺伝子産物に対する抗体の一団の生産を議論している。該抗体は全て、ソフトアガーにおいて懸濁されたneuトランスフォーミング細胞の増殖に対する細胞増殖抑制性効果を示すことが見出された。IgM,IgG2a及びIgG2bアイソタイプの抗体は、必要な量の存在下でneuトランスフォーム細胞の有意なin vitro溶解を介在可能であった一方で、該抗体は全てneuトランスフォーム細胞の高レベルの抗体依存性細胞毒性(ADCC)を介在可能ではなかった。Drebin et al.Oncogene 2:273-277(1988)は、p185分子上の2の異なる領域と反応性の抗体の混合物が、ヌードマウス内に移植されたneuトランスフォームNIH-3T3細胞に対する相乗作用的抗腫瘍効果を引き起こすことを報告している。抗neu抗体の生物学的効果は、Myers et al.,Meth.Enxym.198:277-290(1991)にレビューされている。1994年10月13日に印刷されたWO94/22478もまた参照。
【0006】
Hudziak et al.,Mol.Cell.Biol.9(3):1165-1172(1989)は、ヒト乳ガン細胞系SKBR3を用いて特徴付けされた抗ErbB2抗体の一団の生産を記載している。該抗体にさらすことに引き続くSKBR3細胞の相対的細胞増殖が、72時間後の単一層のクリスタルバイオレット染色によって測定された。このアッセイを用いて、56%まで細胞増殖を阻害する4D5と呼ばれる抗体を用いて最大の阻害が得られた。7C2及び7F3を含む一団における他の抗体は、このアッセイにおいてより低い程度に細胞増殖を減少した。Hudziak et al.は、SKBR3細胞は該培地からの該抗体の除去に引き続きほぼ通常の割合に増殖が回復するために、SKBR3細胞に対する4D5抗体の効果は細胞毒素よりもむしろ細胞増殖抑制性であると結論付けている。抗体4D5はさらに、TNF-αの細胞毒性効果に対するp185ErbB2過剰発現乳ガン細胞系を感受性にすることが見出された。1989年7月27日に印刷されたWO89/06692も参照。Hudziak et al.で議論された抗ErbB2抗体はさらに、Fendly et al.Cancer Research 50:1550-1558(1990);Kotts et al.In Vitro 26(3):59A(1990);Sarup et al.Growth Regulation 1:72-82(1991);Shepard et al.J.Clin.Immunol.11(3):117-127(1991);Kumar et al.Mol.Cell.Biol.11(2):979-986(1991);Lewis et al.Cancer Immunol.Immunother.37:255-263(1993);Pietras et al.Oncogene 9:1829-1838(1994);Vitetta et al.Cancer Research 54:5301-5309(1994);Sliwkowski et al.J.Biol.Chem.269(20):14661-14665(1994);Scott et al.J.Biol.Chem.266:14300-5(1991);及びD'souza et al.Proc.Natl.Acad.Sci.91:7202-7206(1994)で特徴付けされている。
【0007】
Tagliabue et al.Int.J.cancer 47:933-937(1991)は、ErbB2を過剰発現する肺アデノガン遺伝子細胞系(Calu-3)に対してのその反応性に対して選択された2の抗体を記載している。MGR3と呼ばれる該抗体の一つは、ErbB2を中和し、ErbB2の脱リン酸化を誘導し、及びin vitroでの腫瘍細胞増殖を阻害することが見出された。
【0008】
McKenzie et al.Oncogene 4:543-548(1989)は、TA1と名付けられた抗体を含む様々なエピトープ特異性を有する抗ErbB2抗体の一団を生産した。このTA1抗体は、ErbB2の加速化したエンドサイトーシスを誘導することが見出された(Maier et al.Cancer Res.51:5361-5369(1991)参照)。Bacus et al.Molecular Carcinogenesis 3:350-362(1990)は、TA1抗体が乳ガン細胞系AU-565(それはerbB2遺伝子を過剰発現する)及びMCF-7(それはerbB2遺伝子を過剰発現しない)のミューテーションを誘導することを報告した。これらの細胞における増殖の阻害及び成熟表現型の獲得は、細胞表面での減少したレベルのErbB2レセプター及び細胞質での一過的に増大したレベルと関連することが見出された。
【0009】
Stancovski et al.PNAS(USA) 88:8691-8695(1991)は、抗ErbB2抗体の一団を生産し、ヌードマウス内に静脈内で注射し、そしてErbB2遺伝子の過剰発現によってトランスフォームされたネズミ線維芽細胞の腫瘍増殖を評価した。様々なレベルの腫瘍阻害が該抗体の4について検出されたが、該抗体の一つ(N28)は腫瘍増殖を首尾一貫して刺激した。モノクローナル抗体N28はErbB2レセプターの有意な脱リン酸化を誘導する一方、他の4の抗体は一般的に脱リン酸化活性を低くあるいは全く示さなかった。SKBR3細胞の増殖に対する抗ErbB2抗体の効果もまた評価した。このSKBR3細胞増殖アッセイにおいては、該抗体の2(N12及びN29)は、コントロールと比較して細胞増殖の減少を引き起こした。相補性依存的細胞毒性(CDC)及び抗体介在性細胞依存性細胞毒性(ADCC)を介したin vitroでの細胞溶解を誘導する様々な抗体の能力を評価し、この論文の著者は該抗体の阻害機能はCDCまたはADCCに対して有意には寄与しないことを結論付けた。
【0010】
Bacus et al.Cancer Research 52:2580-2589(1992)はさらに、上記パラグラフのBacus et al.(1990)及びStancovski et al.に記載された抗体を特徴付けした。Stancovskiの静脈内研究を拡張して、ヒトErbB2を過剰発現するマウス線維芽細胞を有するヌードマウス内に静脈内注射した後の該抗体の効果を評価した。彼らの初期の研究で観察されるように、N28は腫瘍増殖を加速する一方で、N12及びN29はErbB2発現細胞の増殖を有意に阻害した。部分的腫瘍阻害はまた、N24抗体を用いても観察された。Bacus et al.はまた、ヒト乳ガン細胞系AU-565及びMDA-MB453(それらはErbB2を過剰発現する)、同様にMCF-7(低レベルのレセプターを含む)における成熟表現型を促進する該抗体の能力を試験した。Bacus et al.は、in vivoでの腫瘍阻害と細胞分化の間の相関関係を観察した;腫瘍刺激抗体N28は分化に何の影響もなく、N12,N29及びN24抗体の腫瘍阻害機能はそれらが誘導する分化の程度と相関した。
【0011】
Xu et al.Int.J.Cancer 53:401-408(1993)は抗ErbB2抗体の一団をそのエピトープ結合特異性について評価し、同様にSKBR3細胞のアンカー非依存性及びアンカー依存性増殖を阻害する能力(個々の抗体及びその組み合わせによる)、細胞表面ErbB2を調節する能力、及びリガンド刺激化アンカー非依存性増殖を阻害する能力を評価した。抗ErbB2抗体の組み合わせに関する1994年1月6日に印刷されたWO94/00136及びKasprzyk et al.Cancer Research 52:2771-2776(1993)をも参照。他のErbB2抗体は、Hancock et al.Cancer Res.51:4575-4580(1991);Shawver et al.Cancer Res.54:1367-1373(1994);Arteaga et al.Cancer Res.54:3758-3765(1994);及びHarwerth et al.J.Biol.Chem.267:15160-15167(1992)。
【0012】
erbB3またはHER3と呼ばれるerbB2に関するさらなる遺伝子もまた記載されている。例えば米国特許第5,183,884号及び第5,480,968号参照。ErbB3はチロシンキナーゼ活性をほとんどまたは全く備えていない点で、ErbBレセプターファミリーの間でユニークである。しかしながら、ErbB3がErbB2と共発現された場合、活性シグナリング複合体を形成し、ErbB2に対して向けられた抗体はこの複合体を破壊することが可能である(Sliwkowski等,J.Biol.Chem.,269(20):14661-14665(1994))。加えて、ヒレグリン(HRG)に対するErbB3のアフィニティーはErbB2と共発現された場合、より高いアフィニティー状態に増大する。ErbB2-ErbB3タンパク質複合体に関しては、Levi等,Jounal of Nueroscience 15:1329-1340(1995);Morrissey等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA92:1431-1435(1995);及びLewis等,Cancer Res.,56:1457-1465(1996)も参照。
【0013】
増殖因子レセプタータンパク質チロシンキナーゼのクラスIサブファミリーはさらに、HER4/p180erbB4レセプターを含むために拡張されている。EP特許出願第599,274;Plowman等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:1746-1750(1993);及びPlowman等,Nature,366:473-475(1993)参照。Plowman等は、増大したHER4発現が乳腺ガンを含む上皮起源の特定のガンと緊密に相関していることを見出した。ErbB3同様にこのレセプターは、ErbB2と活性シグナリング複合体を形成する(Carraway and Cantley,Cell 78:5-8(1994))。
【0014】
ErbB2アクチベーターに対する探求は、ヒレグリンポリペプチドのファミリーの発見を導いている。これらのタンパク質は単一遺伝子の選択的スプライシングから引き起こされるようであり、文献においてニューレグリン(NRG)、neu分化因子(NDF)、ヒレグリン(HRG)、グリア増殖因子(GGF)、及びアセチルコリンレセプター誘導活性(ARIA)と呼ばれている。レビューとしては、Groenen et al.Growth Factors 11:235-257(1994);Lemke,G.Molec. & Cell.Neurosci.7:247-262(1996)及びLee et al.Pharm.Rev.47:51-85(1995)参照。
【非特許文献1】Plowman等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:1746-1750(1993)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は少なくとも部分的に、特定の抗ErbB2抗体がアポトーシスを介してErbB2過剰発現細胞(例えばBT474,SKBR3,SKOV3またはCalu3細胞)の死を誘導しうるという驚くべき発見に関する。Wu et al.,J.Clin.Invest.95:1897-1905(1995)に記載されたアポトーシス性抗EGFR抗体とは対照的に、ここで興味ある抗ErbB2抗体はオートクリンループの破壊によるアポトーシスを誘導することは考えられない。これらの細胞死誘導の寄与を有するここでの抗体は通常、例えばErbB2のドメイン1におけるエピトープに対するといったErbB2の細胞外ドメインにおける領域に対して結合するであろう。好ましくは該抗体は、ここに記載される7C2及び/または7F3抗体によって結合されるErbB2エピトープに結合するであろう。
【0016】
好ましい抗体は、例えばヒト化抗体といったモノクローナル抗体である。特に興味ある抗体は、上記記載の性質に加えて、少なくとも約10nM、より好ましくは少なくとも約1nMのアフィニティーを有してErbB2レセプターを結合するものである。
【0017】
特定の実施態様として該抗体は、該レセプターのアフィニティー精製のためまたは診断アッセイのため、固相に固定化されている(例えば固相に対する共有結合によって)。診断的使用に対して、ラベル化抗体(即ち検出可能なラベルに結合された抗体)を提供することもまた有益である。
【0018】
上記パラグラフの抗体は、該抗体と製薬学的に許容可能なキャリアーまたは希釈液を含む組成物の形態で提供されうる。場合により該組成物はさらに第二の抗ErbB2抗体を含み、特にその場合第二の抗ErbB2抗体はここで開示されている7C2/7F3抗体が結合するものとは異なるErbB2レセプター上のエピトープに結合するものである。好ましい実施態様として、第二の抗体は50%-100%まで細胞カルチャーにおけるSKRB3細胞の増殖を阻害するものである(即ち4D5抗体及びその機能的同等物)。治療上の使用のための組成物は滅菌されており、凍結乾燥される。
【0019】
本発明はまた以下のものを提供する:さらに機能的にリンクしたプロモーターを含む上記パラグラフの抗体をコードする単離された核酸分子;発現ベクターであり、該ベクターを用いてトランスフォームされた宿主細胞によって認識されるコントロール配列に機能的にリンクした核酸分子を含むベクター;該核酸を含む宿主細胞(例えばハイブリドーマ細胞系);及び該抗体を作成する方法で、抗ErbB2抗体を発現するために該核酸を含む細胞を培養し、場合により宿主細胞カルチャー、好ましくは宿主細胞カルチャー培地から該抗体を回収することを含む方法。
【0020】
本発明はまた、ここで開示される抗ErbB2抗体を用いる方法を提供する。例えば本発明は、細胞死を誘導するのに有効量のここで記載される抗ErbB2抗体に対して、ErbB2を過剰発現するガン細胞のような細胞をさらすことを含む、細胞死を誘導する方法を提供する。該細胞は、細胞カルチャー、または例えばガンで苦しんでいる哺乳動物といった哺乳動物において存在する。本発明はまた、細胞のアポトーシスを誘導するのに有効量のここで記載される外因性抗ErbB2抗体に対して細胞をさらすことを含む、ErbB2を過剰発現する細胞のアポトーシスを誘導する方法を提供する。それ故本発明は、ErbB2レセプターの過剰発現によって特徴付けされる病気に苦しんでいる哺乳動物を治療する方法を提供し、該方法は該哺乳動物にここで開示される抗ErbB2抗体の製薬学的な有効量を投与することを含む。上記の方法のいずれかにしたがって、特にここで開示される7C2/7F3抗体が結合するものとは異なるErbB2エピトープに結合する(例えばドメイン1に結合しない)さらなる抗ErbB2抗体を用い得る。一つの実施態様として、第二の抗体は50%-100%まで細胞カルチャーにおけるSKBR3細胞の増殖を阻害し、場合により4D5が結合するErbB2上のエピトープに結合する。
【0021】
以下の実施例2において、プロアポトーシス抗体7C2はほとんど完全に、増殖停止細胞の完全なカルチャーを全滅させることが見出された。それ故、ここで開示されるプロアポトーシス性抗体を、上記記載のin vitro及びin vivo法における増殖阻害試薬と組み合わすことが望ましい。上記実施態様において、優れたレベルのアポトーシスが、プロアポトーシス性抗ErbB2抗体の前に増殖阻害試薬を投与することによって達成される。しかしながら同時の投与、または最初に抗ErbB2抗体を投与することが企図される。
【0022】
本発明はまた、上記in vivo法において用いられる製造品を提供し、そこには抗ErbB2抗体の入った容器、及び容器に付着したラベルまたは容器に関連したラベルが含まれ、該ラベルは該抗体がガンのようなErbB2過剰発現によって特徴付けられる病気を治療するために用いられることを示す。
【0023】
さらなる面として本発明は、in vitroまたはin vivoでErbB2を検出する方法を提供し、該方法はErbB2を含む疑いのある細胞と該抗体を接触させ、もし結合が生じたら検出することを含む。したがって本発明は、ErbB2の増幅された発現によって特徴付けされる腫瘍を検出するためのアッセイを提供し、該アッセイにはここで開示される抗体に対して細胞をさらす工程と、該細胞に対する該抗体の結合の程度を測定する工程が含まれる。好ましくは上記アッセイで用いられる抗体はラベルされており、ErbB2を検出するために該抗体を用いるための説明書を含むキットの形態で供給されるであろう。ここで該アッセイは、in vitroアッセイ(ELISAアッセイのような)またはin vivoアッセイである。in vivo腫瘍診断のために、該抗体は好ましくは、放射性活性アイソトープに接合され哺乳動物に投与され、哺乳動物における組織に対する該抗体の結合の程度が放射性活性に対する外的スキャニングによって観察される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
I.定義
もし他に断り書きがなければ、ここで用いられる「ErbB2」なる語はヒトErbB2タンパク質を指し、「erbB2」はヒトerbB2遺伝子を指す。ヒトerbB2遺伝子及びErbB2タンパク質は、例えばSemba et al.,PNAS(USA) 82:6497-6501(1985)及びYamamoto et al.Nature 319:230-234(1986)(Genebank登録番号X03363)に記載されている。ErbB2は4のドメイン(ドメイン1−4)を含む。ErbB2の細胞外のアミノ末端での「ドメイン1」はここで図12に示されている。Plowman et al.Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:1746-1750(1993)参照。
【0025】
「エピトープ7C2/7F3」なる語は、7C2及び/または7F3抗体(それぞれATCCに寄託されている、以下参照)が結合するErbB2の細胞外ドメインのN末端での領域である。7C2/7F3エピトープに結合する抗体に対するスクリーニングのため、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Harlow and David Lane(1988)編に記載されているような通常のクロスブロッキングアッセイを実施し得る。代わりに、該抗体がErbB2上の7C2/7F3エピトープ(即ちErbB2の約22残基から約53残基の領域内のいずれか一つ以上の残基(配列番号2))に結合するかどうかを確立するために、エピトープマッピングを実施し得る(以下の実施例2参照)。
【0026】
「エピトープ4D5」とは、抗体4D5(ATCC CRL 10463)が結合するErbB2の細胞外ドメインにおける領域である。このエピトープはErbB2の膜貫通領域に近接している。4D5エピトープに結合する抗体に対してスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Harlow and David Lane(1988)編に記載されているような通常のクロスブロッキングアッセイを実施し得る。代わりに、該抗体がErbB2の4D5エピトープ(即ち約529残基、例えば561残基から約625残基を含む領域内のいずれか一つ以上の残基(配列番号4))に結合するかどうかを評価するために、エピトープマッピングを実施し得る(以下の実施例2参照)。
【0027】
「細胞死を誘導する」なる語は、生存細胞を非生存細胞にする該抗体の能力をいう。ここで「細胞」とは、ErbB2レセプターを発現する細胞、特に該細胞がErbB2レセプターを過剰発現する場合をいう。ErbB2を「過剰発現」する細胞とは、同じ組織タイプの非ガン細胞と比較して、通常のErbB12レベルより有意に高いレベルを有するものである。好ましくは該細胞はガン細胞、例えば乳、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、大腸、甲状腺、膵臓または膀胱の各細胞である。in vitro系では該細胞は、SKBR3,BT474,Calu3,MDA-MB-453,MDA-MB-361またはSKOV3の各細胞である。in vitroでの細胞死は、相補体及び免疫エフェクター細胞の不存在下で、抗体依存性細胞性細胞毒素(ADCC)または相補的依存性細胞毒素(CDC)によって誘導される細胞死を区別するように測定される。それ故細胞死に対するアッセイは、熱不活性化血清を用いて(即ち相補体の不存在下で)及び免疫エフェクター細胞の不存在下で実施される。該抗体が細胞死を誘導しうるかどうかを測定するために、プロピジウムイオダイド(PI)(以下の実施例2参照)、トリパンブルー(Moore et al.Cytotechnology 17:1-11(1995)参照)または7AAD(以下の実施例1参照)の取り込みによって評価される膜完全性の損失を非処理細胞に対して評価しうる。好ましい細胞死誘導抗体は、「BT474細胞におけるPI取り込みアッセイ」においてPI取り込みを誘導するものである(以下参照)。
【0028】
「アポトーシス」を誘導するなる表現は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/または膜小胞の形成(アポトーシス体と呼ばれる)によって測定される、プログラムされた細胞死を誘導する抗体の能力をいう。ここで図1A及びB参照。該細胞はErbB2レセプターを過剰発現するものである。好ましくは該「細胞」はガン細胞、例えば乳、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、大腸、甲状腺、膵臓または膀胱の各細胞である。in vitro系では該細胞は、SKBR3,BT474,Calu3,MDA-MB-453,MDA-MB-361またはSKOV3の各細胞である。アポトーシスと関連する細胞の現象を評価するための様々な方法が有用である。例えばホスファチジルセリン(PS)膜貫通は、アネキシン結合によって測定されうる(以下の実施例2参照);DNA断片化はここで実施例2に開示されているDNAラダー化を通じて評価されうる;そしてDNA断片化に伴う核/クロマチン凝集は低二倍体細胞のいかなる増大によっても評価されうる。好ましくはアポトーシスを誘導する抗体は、「BT474細胞を用いたアネキシン結合アッセイ」における非処理細胞に対してアネキシン結合の誘導において約2から50倍、好ましくは約5から50倍、最も好ましくは約10から50倍を引き起こすものである(以下参照)。
【0029】
時々プロアポトーシス性抗体は、ErbB2/ErbB3複合体のHRG結合/活性化をブロックするもの(例えば7F3抗体)であろう。他の場合では、該抗体はHRGによるErbB2/ErbB3レセプター複合体の活性化を有意にブロックしないものである(例えば7C2)。さらに該抗体は、アポトーシスを誘導する一方で、S期における細胞のパーセントの大きな減少を誘導しない7C2のようなものである(例えば図10に測定されるようなコントロールに対するこれらの細胞のパーセントの約0-10%の減少を誘導するもののみである)。
【0030】
興味ある抗体は、ヒトerbB2に対して特異的に結合し、erbB1,erbB3及び/またはerbB4遺伝子によってコードされるような他のタンパク質と有意に交差反応しない7C2のようなものである。時々該抗体は、例えばSchecter et al.Nature 312:513(1984)及びDrebin et al.,Nature 312:545-548(1984)に記載されているラットneuタンパク質と有意には交差反応しない。上記実施態様において、これらのタンパク質に対する該抗体の結合の程度(例えば内因性レセプターに対する細胞表面結合)は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析またはラジオイムノ沈降(RIA)によって測定されると約10%より低いであろう。
【0031】
「ヒレグリン」(HRG)なる語はここで用いられる場合、ErbB2-ErbB3及びErbB2-ErbB4タンパク質複合体を活性化(すなわち、複合体に結合することによってそれにおけるチロシン残基のリン酸化を誘導する)するポリペプチドをいう。この語に包含されるさまざまなヒレグリンポリペプチドが、例えばHolmes et al.,Science,256:1205-1210(1992);WO 92/20798;Wen et al.,Mol.Cell.Biol.,14(3):1909-1919(1994);及びMarchionni et al.,Nature,362:312-318(1993)に開示されている。この語には、HRGのEGF様ドメイン断片のような、生物学的に活性な断片及びHRGポリぺプチドに天然で生じる変異体が含まれる(例えばHRGβ1(177−244))。
【0032】
「ErbB2-ErbB3タンパク質複合体」及び「ErbB2-ErbB4タンパク質複合体」なる語は、それぞれErbB2レセプター及びErbB3レセプターまたはErbB4レセプターの非共有結合的に会合したオリゴマーを示す。該複合体はこれらのレセプターの両者を発現する細胞をHRGにさらした場合に形成され、Sliwkowski et al.,J.Biol.Chem.,269(20):14661-14665(1994)に記載されているように、免疫沈降法によって単離され得、SDS-PAGEによって分析される。
【0033】
「抗体」(Ab)及び「イムノグロブリン」(Ig)とは、同じ構造的性質を有する糖タンパク質である。抗体が特異的な抗原に対する結合特異性を示す一方で、イムノグロブリンには抗体、及び抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両者が含まれる。後者の種類のポリペプチドは例えば、リンパ系によって低レベルで、及びミエローマによって高レベルで生産される。
【0034】
「天然の抗体」及び「天然のイムノグロブリン」は通常、2の相同な系(L)鎖及び2の相同な重(H)鎖より成る約150,000ドルトンの異種4量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合し、一方でジスルフィド結合の数は異なるイムノグロブリンアイソタイプの重鎖の間で変化する。重鎖及び軽鎖のそれぞれはまた、規則的な感覚の鎖内ジスルフィド結合を有する。各重鎖は、数多くの定常ドメインが引き続く一つの可変ドメイン(V)を一端で有する。各軽鎖は一端で一つの可変ドメインを有し(V)、他の一端で一つの定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一の定常ドメインと並んでおり、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並んでいる。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメインの間で界面を形成していると考えられる。
【0035】
「可変」なる語は、可変ドメインの特定の部分が抗体の間の配列において極端に異なるという事実をいい、その特定の抗原に対する特定の抗体の結合及び特異性において用いられる。しかしながら該可変性は、抗体の可変ドメインを通じて均等に配置しているわけではない。それは、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両者における相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3の部分に集中している。可変ドメインの最も高く保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖のそれぞれの可変ドメインは、主にβシート構造を採用し、3のCDRによって連結される4のFR領域を含み、該領域はループ連結を形成し、ある場合には一部βシート構造を形成する。各鎖におけるCDRは、FR領域によって他の鎖由来のCDRと非常に近接して共に位置し、抗体の抗原結合部位の形成に貢献している(Kabat et al.,NIH Publ.No.91-3242,Vol.I,647-669頁(1991))。定常ドメインは抗原に対する抗体の結合には直接関与していないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の沈降のような様々なエフェクター機能を示す。
【0036】
抗体のパパイン切断は、「Fab」断片と呼ばれる2の相同な抗原結合断片を生産し、それぞれは単一の抗原結合部位と残余の「Fc」断片を有し、Fcの名前は容易に結晶化するその能力を反映する。パパイン処理は、2の抗原結合部位を有しまだ抗原を架橋可能なF(ab')断片を生ずる。
【0037】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、かたい非共有会合において一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインのダイマーよりなる。それは、各可変ドメインの3のCDRがV-Vダイマーの表面上で抗原結合部位を決定するために相互作用する配置内に存在する。まとめていうと、6のCDRが抗体に対して抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメインでさえ(または抗原に対して特異的な3のみのCDRを含むFvの半分)、完全な結合部位より低いアフィニティーではあるが、抗原を認識し結合する能力を有する。
【0038】
Fab断片もまた、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab断片は、抗体ヒンジ領域由来の一つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端でいくつかの残基を加えることによって、Fab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離チオール基を有するFab'に対するここでの記号である。(Fab')抗体断片は、もともとその間でヒンジシステインを有するFab'断片のペアとして生産された。抗体断片の他の化学的結合もまた周知である。
【0039】
いかなる脊椎動物種由来の抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2の明らかに区別されるタイプの一つに分類されうる。
【0040】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、イムノグロブリンは異なるクラスに分類されうる。イムノグロブリンには5の主要なクラス:IgA,IgD,IgE,IgG及びIgMが存在し、これらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分割される、例えばIgG1,IgG2,IgG3,IgG4,IgA及びIgA2。イムノグロブリンの異なるクラスに相当する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。イムノグロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構造は、周知である。
【0041】
「抗体」なる語は最広義で用いられ、完全なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2の完全な抗体から形成されたマルチ特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び望ましい生物学的活性を示す範囲で抗体断片を特異的にカバーする。
【0042】
「抗体断片」には、完全な抗体の一部、一般的に完全な抗体の抗原結合領域または可変領域が含まれる。抗体断片の例として、Fab,Fab',F(ab')及びFv断片;ディアボディー;直線状抗体(Zepata et al.Protein Eng.8(10):1057-1062(1995));単一鎖抗体分子;及び抗体断片から形成されたマルチ特異性抗体が含まれる。
【0043】
ここにおいて使用される「モノクローナル抗体」なる語は、実質的に均質な抗体、すなわち母集団を含むそれぞれの抗体がわずかに存在してもよい天然に生じ得る変異を除いて同等であるような母集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位を指向する。更に、典型的には異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を含む慣用の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に向けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は他のイムノグロブリンで夾雑していないハイブリドーマ培養物により合成される点においても有利である。「モノクローナル」なる修飾語は、実質的に均質な抗体の母集団から得られ、いずれかの特定方法による産生を要求するものとも解されない抗体の特徴を示す。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohler等, Nature 256:495(1975)により最初に記述されたハイブリドーマ法により調製されてよく、あるいは組換えDNA法により調製されてもよい(米国特許第4,816,567号参照)。「モノクローナル抗体」は、例えばClackson等, Nature 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)に記述される技術を使用してファージ抗体ライブラリーからも単離され得る。
【0044】
ここにおけるモノクローナル抗体は、特定的には「キメラ」抗体(イムノグロブリン)を含み、そのH及び/またはL鎖の一部は特定の種から誘導された抗体の対応する配列に同等、若しくは相同的であるか、または特定の抗体種若しくは亜種に属するものであり、その一方で鎖の残る部分は他の種から誘導された抗体の対応する配列に同等、若しくは相同的であるか、または他の抗体種若しくは亜種に属するものであり、加えて、それらが所望の生物学的活性を示す限りこのような抗体の断片も含む(Cabilly等, 前出文献;Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。
【0045】
非ヒト(例えばネズミ)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒトイムノグロブリンから誘導された最小の配列を含むキメラ性イムノグロブリン、イムノグロブリン鎖、またはその断片(Fv、Fab、Fab'F(ab')若しくは抗体の他の抗原結合配列等)である。ほとんどの部分についてヒト化抗体はヒトイムノグロブリン(受容抗体)であり、そのレセプターの相補性決定領域(CDR)の残基は、所望の特異性、親和性、及び容量を持ったマウス、ラットまたはウサギ等の非ヒト種(提供側抗体)のCDRの残基により置換されている。ある例においては、ヒトイムノグロブリンのFvフレームワーク領域(FR)は、対応する非ヒト残基により置換されている。更に、ヒト化抗体は、受容抗体にも、あるいは導入されるCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能を更に洗練させるかまたは最適化させるために行われる。一般的に、ヒト化抗体は実質的に全て、または少なくとも1つ、典型的には2つの可変領域を有し、全てまたは実質的に全てのCDR領域が非ヒトイムノグロブリンのものに対応し、また全てまたは実質的に全てのFR領域がヒトイムノグロブリンのものである。ヒト化抗体は、最適にはイムノグロブリンの定常領域(Fc)、典型的にはヒトイムノグロブリンのものの少なくとも一部をも含んでよい。更に詳細には、Jones等, Nature 321:522-525 (1986); Reichmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)参照。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合部位が、マカクザルを興味ある抗原にて免疫して生成された抗体から誘導された、PRIMATIZEDTM抗体を含む。
【0046】
「一本鎖Fv」または「sFv」抗体断片は、それらのドメインが一本鎖ポリペプチド鎖に存在する抗体のVおよびVドメインを含む。一般的に、FvポリペプチドはさらにVとVドメインの間に、sFvが抗原に結合するために望ましい構造を形成できるようにするポリリンカーを含む。sFvの総論としては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol.113, Rosenburg and Moore編, Springer-Verlag, New York, pp.269-315(1994)を参照のこと。
【0047】
「ディアボディー(diabodies)」とは、その断片が同一のポリペプチド鎖(V-V)で軽鎖可変ドメイン(V)と連結された重鎖可変ドメイン(V)を含む、2つの抗原結合性部位を持つ抗体小断片をいう。同一鎖上にある2つのドメイン間で対合するには短か過ぎるリンカーを用いることにより、該ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対合し、次いでニ抗原部位を形成することを余儀なくされる。ディアボディー(diabodies)は例えば、EP 404,097;WO 93/11161およびHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448(1993)にさらに十分に記載されている。
【0048】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成要素から同定され及び分離され及び/または回収されているものを示す。その天然環境の混在した構成要素は、該抗体についての診断的または治療上の使用を妨害し、それらには酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれよう。好ましい実施態様として、該抗体は(1) Lowry法で測定したところ、抗体の重量当たり95%より大きく、最も好ましくは重量あたり99%より大きく、(2) スピニングカップシークエネーターの使用によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、または(3) クマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いた還元または非還元状態でのSDS-PAGEにより均質な程度に精製されよう。単離された抗体には、抗体の天然環境の少なくとも一構成要素が存在しないであろうため、in situでの組換え細胞内の抗体が含まれる。しかしながら普通は、単離された抗体は少なくとも一の精製工程で調製されるであろう。
【0049】
本明細書に記載されるごとき「サルベージ受容体結合性エピトープ」とは、イン・ビボにおけるIgG分子の血清半減期を増加させる役割を果たすIgG分子(例えば、IgG,IgG,IgGおよびIgG)のFc領域のエピトープをいう。
【0050】
「治療」とは、治療学上の治療および予防手段または防止手段の双方をいう。治療を要するものとしては、既に疾患を持っているもの並びに疾患を防止すべきものがある。
治療の対象としての「哺乳類」とは、ヒト、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどのごとき家畜および飼育動物、並びに動物園動物、競技動物またはペット動物を始めとする哺乳類として分類されている動物の何れもをいう。好ましくは哺乳類とはヒトである。
【0051】
「疾患」とは、抗ErbB3抗体を用いての治療から利益が得られるであろういかなる疾患をもいう。これには当該疾患に哺乳動物を罹りやすくする病理学上の状態を含む慢性及び急性の疾患または疾病が含まれる。ここで治療される疾患の非制限的な例として、良性及び悪性腫瘍;白血病及びリンパ悪性疾患;ニューロン、グリア、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、間質及び胞胚腔疾患;及び炎症性、血管由来及び免疫学的疾患が含まれる。
【0052】
ここで用いられている「ガン」と「ガンの」なる語は、典型的に非制御細胞増殖によって特徴付けられる哺乳動物内の生理学的病気を示しまたは表す。ガンの例としては、ガン腫、リンパ腫、白血病、芽腫そして肉腫を含むがそれに限られない。該ガンのより好ましい例としては、扁平上皮細胞ガン腫、小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、神経芽腫、脾臓ガン、グリア芽腫多形、頚部ガン、胃ガン、膀胱ガン、肝腫瘍、乳ガン、大腸ガン、結腸直腸ガン、子宮内膜ガン腫、唾液腺ガン腫、腎臓ガン、腎性ガン、前立腺ガン、外陰部ガン、甲状腺ガン、肝臓ガン腫及びさまざまなタイプの頭と首のガンを含む。
【0053】
ここで用いられる「細胞毒性試薬」なる語は、細胞の機能を阻害または妨げ、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質をいう。本用語は放射性活性アイソトープ(例えばI131,I125,Y90及びRe186)、化学療法試薬、及び細菌、菌類、植物または動物起源の酵素学的に活性な毒素、またはその断片のような毒素を含むことを企図する。
【0054】
「化学療法試薬」なる語は、ガンの治療に有用な化学的化合物をいう。化学療法試薬の例としては、アドリアマイシン、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド("Ara-C")、シクロフォスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タクソール、トクソテール(Toxotere)、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イフォスファミド(Ifosfamido)、マイトマイシンC、ミトザントロン、ビンクレイスチン(Vincreistine)、ビノレルビン(Vinorelbine)、カルボプラチン、テニポシド(Teniposide)、ダウノマイシン、カルミノマイシン(Carminomysin)、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラマイシン(米国特許第4,675,187号)、メルファラン及び他の関連するナイトロジェンマスタードが含まれる。タモキシフェン及びオナプリストーンのような腫瘍に対してホルモン機能を調節または阻害するように機能するホルモン試薬もまた、この定義に含まれる。
【0055】
「増殖阻害試薬」とはここで用いられる場合、in vitroまたはin vivoのそれぞれで細胞、特にErbB2過剰発現ガン細胞の増殖を阻害する化合物または組成物をいう。それ故増殖阻害試薬は、S期におけるErbB2過剰発現細胞のパーセンテージを有意に減少するものである。増殖阻害試薬の例としては、G1停止及びM期停止を誘導する試薬のような、細胞周期進行(S期以外の期で)をブロックする試薬が含まれる。古典的なM期ブロッカーには、ビンカ類(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タクソール、及びドクソルビシン、ダウノルビシン、エトポシド並びにブレオマイシンのようなトポIIインヒビターが含まれる。G1を停止する試薬はまた、S期停止において、例えばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CのようなDNAアルキル化試薬を含む。さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer,Mendelsohn and Israel,編,Chapter 1,"Cell cycle regulation, oncogens, and antineoplastic drugs",Murakami et al.(WB Saunders: Philadelphia,1995),特にp.13に見出されうる。4D5抗体(及びその機能的同等物)はまた、この目的のために用いられ得る。
【0056】
「サイトカイン」なる用語は、細胞間媒体として他の細胞に作用するある細胞母集団から放出されるタンパク質についての一般的用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン類、モノカイン類、及び伝統的ポリペプチドホルモン類である。サイトカインの内に含まれるものは、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン等の成長ホルモン類;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)等の糖蛋白ホルモン類;肝細胞成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子−α及び−β;ミュラー阻害物質;マウスゴナドトロピン−会合ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポイエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子−I及び−II;エリスロポイエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロンーα、−β及び−γ等のインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球−マクロファージ-CSF(GM-CSF)及び顆粒球-CSF(G-CSF)等のコロニー刺激因子(CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12等のインターロイキン(IL);並びに白血病阻害因子(LIF)及びキットリガンド(KL)等を含む他のポリペプチド因子等である。ここにおいて使用されるように、サイトカインなる用語は天然供給源由来または、組換え細胞培養物由来のタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的活性同等物を含む。 本出願において使用されるように「プロドラッグ」なる用語は、医薬的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指し、親薬剤に比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、酵素的に活性化されるかまたはより活性な親の形態に変換されうる。例えば、Wilman, "Prodrugs in Cancer Chemotherapy" Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting Belfast (1986)及びStella et al., "Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery," Directed Drug Delivery, Borchardt et al.,(ed.), pp. 247-267, Human Press (1985)参照。本発明のプロドラッグは、限定されるものではないが、より活性な細胞毒性遊離薬剤に変換され得るリン酸−含有プロドラッグ、チオリン酸−含有プロドラッグ、硫酸−含有プロドラッグ、ペプチド−含有プロドラッグ、D−アミノ酸−修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム−含有プロドラッグ、場合により置換されるフェノキシアセタミド−含有プロドラッグ、場合により置換されるフェニル−含有プロドラッグ、5−フルオロシトシン及び5−フルオロウリジンプロドラッグを含む。本発明において使用するためにプロドラッグの形態に誘導されうる細胞毒性薬剤の例は、限定されるものではないが、上記の化学療法剤を含む。
【0057】
「ラベル」なる語はここで用いられる場合、「ラベル化」抗体を生成するために、該抗体に直接または間接に接合された検出可能な化合物または組成物をいう。該ラベルはそれ自身として検出可能である(例えば放射性活性ラベルまたは蛍光ラベル)かまたは、酵素ラベルの場合には検出可能な基質化合物または組成物の化学的循環を触媒し得る。
【0058】
「固相」とは、本発明の抗体が付着しうる非−水性担体を意味する。固相の例は、ガラス(調節された多孔質ガラス)、ポリサッカライド(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンにより部分的または全体が形成されるものを含む。ある実施態様において、内容に依存するが、固相はアッセイプレートのウエルを含むことが出来、他の態様ではそれは精製カラム(例えば、アフィニティクロマトグラフィーカラム)である。この用語は、米国特許第4,275,149号に記述されるような、分散的粒子の非連続的固相も含む。
【0059】
「リポソーム」とは、さまざまなタイプの脂質、リン脂質、及び/または哺乳動物に薬剤(ここで開示されている抗ErbB3抗体及び場合により化学療法試薬のような)の輸送に有用である界面活性剤よりなる小さい小胞である。リポソームの構成要素は、二重相形成で一般的に並んでおり、生体膜の脂質配列と同様である。
【0060】
「単離された」核酸分子は、同定され、かつ通常、抗体核酸の天然の供給源に伴う少なくとも1種の夾雑核酸分子から分離された核酸分子である。単離された該核酸分子は、天然に見出される形態または配置とは別のものである。従って、単離された該核酸分子は、天然細胞中に存在する核酸分子とは区別される。しかしながら、該核酸分子は、例えば核酸分子が天然細胞とは異なる染色体位置にある場合にも通常に抗体を発現する細胞中に含まれる核酸分子を含む。
【0061】
「コントロール配列」なる表現は、特定の宿主中で機能的に連結されたコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。原核生物に好適な制御配列は、例えばプロモータ、場合によりオペレータ配列、リボソーム結合部位を含む。真核性細胞は、プロモータ、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを使用することが知られている。
【0062】
核酸は、他の核酸配列と機能的に関連して配置される場合に、「機能的に連結されている」。例えば、先行配列または分泌リーダーのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与する先行タンパク質として発現される場合にポリペプチドのDNAに機能的に連結され;またプロモータ若しくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響する場合にコード配列に対して機能的に連結され;またリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように位置する場合にコード配列に機能的に連結されている。好ましくは、「機能的に連結」とは、DNA配列が連続し、分泌リーダーの場合には連続かつ読み取りの位相内に連結されることを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続する必要はない。連活は、慣用の制限部位においての連結により達成される。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプタまたはリンカーが慣用の方法により使用される。
【0063】
ここにおいて使用されるように、「細胞」、「細胞系」及び「細胞カルチャー」なる表現は、可換的に使用され、全てのこのような表記は子孫の細胞も含む。従って、「トランスフォーマント」及び「トランスフォームされた細胞」の用語は、最初の原因細胞及び形質転換数に関わりなくそれから誘導される培養物を含む。また全ての子孫は、計画的または不慮の変異のためにDNA含量において正確に同等である必要はないものと理解される。元の形質転換細胞についてスクリーニングしたのと同様な機能及び生物学的活性を有する変異子孫細胞が含まれる。別の指定が望まれる場合には内容から明確となるであろう。
【0064】
A.抗体調製
以下の記述は請求項の抗体の生産のための例示的な方法として示される。抗体の生産のために用いられるErbB2抗原は例えば、ErbB2抗原の細胞外ドメインの可溶性形態;ドメイン1ペプチドのようなペプチドまたはその一部(例えば7C2または7F3エピトープを含む)である。代わりに、その細胞表面にErbB2を発現する細胞(例えばErbB2を過剰発現するようにトランスフォームされたNIH-3T3細胞、以下の実施例1と2参照;またはSKBR3細胞のようなガン細胞系、Stancovski et al.PNAS(USA) 88:8691-8695(1991)参照)を、抗体を生産するために用い得る。抗体を生産するために有用なErbB2の他の形態は、当業者に明らかであろう。
【0065】
(i).ポリクローナル抗体
一般にポリクローナル抗体は、関連する抗原及びアジュバントの複数回の経皮的(sc)または腹腔内的(ip)注射により、動物に生じさせうる。関連する抗原を、免疫されるべき種に対して免疫原性のタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンまたはダイズトリプシンインヒビタ等と、二官能性または誘導化試薬、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介しての接合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、またはR及びRが異なるアルキル基であるRN=C=NRを使用して接合させることは有用であろう。
【0066】
動物は、100μgまたは5μgのペプチドまたは接合体(それぞれウサギまたはマウス)を3体積のフロイント完全アジュバントと合わせ、該溶液を複数部位に皮内的に注射することにより、抗原、免疫原性接合体または誘導体に対して免疫される。1ヶ月後に動物は、フロイント完全アジュバント中のペプチドまたは接合体の基の量の1/5ないし1/10を用い、複数部位の経皮注射により追加免疫される。7〜14日後に、動物は採血され、血清が抗体力価についてアッセイされる。動物は力価がプラトーにはいるまで追加免疫される。好ましくは動物は、同じ抗原の接合体であるが、異なるタンパク質に接合するか及び/または異なった交差結合試薬を介して接合する接合体にて追加免疫される。接合体は、タンパク質融合体として組み換え細胞培養においても調製されうる。アルム等の凝集剤も、免疫応答を向上するために好適に使用される。
【0067】
(ii).モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の母集団、即ち母集団に含まれる個々の抗体は、少量存在しうる自然に起こる可能性のある変異を除いて同等である母集団から得られる。従って、修飾語「モノクローナル」は、異なる抗体の混合物ではないものとしての抗体の特徴を示す。
【0068】
例えばモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ法を使用して作成されるか、または組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作成されてもよい。ハイブリドーマ法において、マウスまたはハムスター等の適当な宿主動物は、免疫に使用したタンパク質に対して特異的に結合するであろう抗体を産生するか、または産生しうるリンパ細胞を引き出すために、上述したようにして免疫される。別法として、リンパ細胞はインビトロにおいて免疫される。次いで、リンパ細胞は、ポリエチレングリコール等の適当な融合試薬を使用して、ミエローマ細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。
【0069】
斯くして調製されたハイブリドーマ細胞は、非融合の親ミエローマ細胞の生育または生存を阻害する1種以上の物質を好ましくは含有する、適当な培養培地に播種され育成される。例えば親ミエローマ細胞が酵素ハイポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合には、ハイブリドーマのための培地は、典型的にはHGPRT-欠損細胞の生育を阻害する物質であるハイポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含むであろう。
【0070】
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞により安定した高水準の抗体産生を支持し、かつHAT培地等の培地に感受性のものである。これらの内で好ましいミエローマ細胞系は、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍から誘導されるもの、及びAmerican Type Culture Collection, Rockville, Maryland USAから入手可能なSP−2細胞等のネズミミエローマ系である。ヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマも、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記述されている(Kozbor et al., J. Immunol. 133:3001(1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc. New York, 1987))。
【0071】
ハイブリドーマ細胞が生育する培養培地は、該抗原に対して向けられたモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が、免疫沈殿または放射免疫アッセイ(RIA)若しくは酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)等のインビトロ結合アッセイにより測定される。
【0072】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson et al., Anal. Biochem. 107:220 (1980)のスキャッチャード(Scatchard)アッセイにより測定されうる。
【0073】
ハイブリドーマが、所望の特異性、親和性及び/または活性の抗体を産生することが同定された後は、該クローンは限定希釈法によりサブクローン化され得、標準法により育成される(Goding, 前出文献)。この目的のために適当な培地は、D−MEMまたはRPMI−1640培地を含む。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物内で腹水腫瘍としてインビボにおいて生育されうる。
【0074】
サブクローンから分泌されたモノクローナル抗体は、例えばタンパク質A−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティクロマトグラフィー等の慣用のイムノグロブリン精製方法により、培養培地、腹水または血清から好適に分離される。
【0075】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用方法により容易に単離され、配列決定される(例えばネズミ抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合しうるオリゴヌクレオチドプローブの使用により)。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として働く。一旦単離されれば、DNAは発現ベクターに入れられ、これは次いで、E. coli細胞、霊長類COS細胞、モルモット卵巣(CHO)細胞、またはイムノグロブリンタンパク質を別途産生しないミエローマ細胞にトランスフェクトさせ、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの最近における組換え発現に関する総説は、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol. 5:256-262 (1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130:151-188 (1992)を含む。
【0076】
更なる実施態様において、抗体または抗体断片は、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)に記述される技術を使用して生成された抗体ファージライブラリーから単離されうる。Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用して、ネズミ及びヒト抗体の単離をそれぞれ記述している。引き続く文献は、鎖シャフルによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生(Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992))、並びに極めて大きいファージライブラリー構築のための計画として組み合わせ感染及びインビボ組換え(Waterhouse et al. Nuc. Acids Res. 21:2265-2266 (1993))を記述している。しかしてこれらの技術は、モノクローナル抗体の単離に関する伝統的モノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対して生存可能な別の技術であり得る。
【0077】
DNAも同種的ネズミ配列に代えて、ヒト重鎖及び軽鎖定常領域コード配列を置換することにより(Cabilly et al.,前出文献;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851 (1984))、あるいはイムノグロブリンコード配列に非イムノグロブリンポリペプチドの全てまたは一部のコード配列を共有的に結合することにより修飾されうる。
【0078】
典型的なこのような非イムノグロブリンポリペプチドは、抗体の定常領域を置換するか、またはそれらは抗体の一方の抗原結合部位の可変領域を置換して、抗原に対して特異性を有する一つの抗原結合部位及び異なる抗原に特異性を有する他の抗原結合部位を有するキメラ性二価抗体を創生する。
【0079】
(iii).ヒト化及びヒト抗体
非ーヒト抗体をヒト化する方法はこの分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非−ヒトである供給源から導入される1個以上のアミノ酸残基を有する。これらの非−ヒトアミノ酸残基は、しばしば“輸入”残基と称され、これは典型的には“輸入”可変領域から採られる。ヒト化は、基本的には齧歯類CDRまたはCDR配列を、対応するヒト抗体配列で置換することにより、Winter及び共同研究者の方法に従って行われうる(Jones et al., Nature 321:522-525(1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1985);Verhoeyen et al., Science 239: 1534-1536(1988))。従って、このようなヒト化抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、実質的に身障の可変領域より少ない部分が非−ヒト種からの対応する配列により置換されている。実際的には、ヒト化抗体は典型的にはCDR残基のいくらか及び、たぶんFRのいくらかが、齧歯類抗体の類似部位からの残基により置換されている。
【0080】
軽鎖及び重鎖の両方のヒト化抗体を作成するために使用される可変領域の選択は、抗原性を低減するために重要である。いわゆる“最適化”方法に従えば、齧歯類抗体の可変領域の配列が、既知のヒト可変領域配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで齧歯類のものに最も近接したヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒト骨格(FR)として認められる(Sims et al., J Immunol. 151:2296 (1993); Chothia et al., J Mol. Biol. 196:901 (1987))。他の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体の共通配列から誘導される特定の骨格を使用する。同じ骨格は、いくつかの異なるヒト化抗体についても使用され得る(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 89:4285 (1992); Presta et al., J. Immunol. 151:2623 (1993))。
【0081】
抗体が、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的性質を保ってヒト化されることは更に重要である。この目的を達成するために、好ましい方法に従えば、ヒト化抗体は親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び種々の概念的ヒト化生成物の分析工程により調製される。三次元イムノグロブリンモデルは、一般に利用可能であり当業者にはなじみがある。選択された候補のイムノグロブリン配列の可能な三次元配置構造を描いて映し出すコンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレーを見ることは、候補のイムノグロブリン配列の機能における残基のそれらしい役割の分析、即ち候補のイムノグロブリンの抗原に対する結合能力に影響を与える残基の分析を可能とする。このようにして、FR残基が、標的抗原に対する増大した親和性等の所望の抗体特性が達成される様に、共通及び輸入配列から選択され、組み合わされる。一般的に、CDR残基は、抗体結合への影響において、直接的かつ最も実質的に関与するものである。
【0082】
別法として、免疫により、内因性イムノグロブリン産生を伴わずに完全量のヒト抗体を産生しうるトランスジェニック動物(例えばマウス)の作成が可能である。例えば、キメラ及び生殖系列変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合的削除が、内因性抗体の産生を完全に阻害することが記述されている。このような生殖系列変異マウスへのヒト生殖系列イムノグロブリン遺伝子の並びの移送は、抗原の攻撃に対してヒト抗体の産生を生じるであろう。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature 362:255-258 (1993); Bruggermann et al., Year in Immuno. 7:33 (1993)参照。ヒト抗体は、ファージディスプレーライブラリーにおいても産生されうる(Hoogenboom et al., J. Mol. Biol. 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581 (1991))。
【0083】
(iv).抗体断片
抗体断片の生産のための様々な方法が開発されている。伝統的には、これらの断片は完全な抗体のタンパク質溶解性切断を介して由来する(例えば、Morimoto等,Jounal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)及びBrennan等,Science,229:81(1985))。しかしながら、現在ではこれらの断片は、組換えホスト細胞によって直接的に生産され得る。例えば、抗体断片を上記開示されている抗体ファージライブラリーから単離し得る。代わりに、Fab'-SH断片を大腸菌から直接的に回収し得、F(ab')断片を形成するために化学的に結合し得る(Carter等,Bio/Technology 10:163-167(1992))。さらなるアプローチにしたがって、F(ab')断片を組換えホスト細胞カルチャーから直接的に単離し得る。抗体断片の生産のための他の方法も当業者には明白であろう。他の実施態様では、選択物の抗体は単一鎖Fv断片(scFv)である。WO 93/16185参照。
【0084】
(v).二重特異的抗体
二重特異的抗体は少なくとも2の異なるエピトープに対する結合特異性を持つ抗体である。例示的な二重特異的抗体として、ErbB2タンパク質の2の異なるエピトープに結合するものがあろう。例えば、一つの腕は7C2/7F3エピトープのようなErbB2のドメイン1におけるエピトープに結合し、他の腕は例えば4D5エピトープのような異なるErbB2エピトープに結合する。他の上記抗体として、EGFR,ErbB3及び/またはErbB4に対する結合部位(類)とErbB2結合部位を結びつけたものがあろう。代わりに、抗ErbB3腕を、ErbB3発現細胞に対して細胞防御メカニズムを集中するために、T細胞受容体分子(例えばCD2またはCD3)の様な白血球上のトリガ分子、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)といったIgG(FcγR)に対するFc分子に結合する腕と結びつけ得る。二重特異的抗体はErbB2を発現する細胞に対して細胞毒性試薬を局在するためにも用いられ得る。これらの抗体は、ErbB3結合腕及び細胞毒性試薬(例えばサポリン、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキサートまたは放射性活性アイソトープハプテン)を結合する腕を所有する。二重特異的抗体はフルレングス抗体または抗体断片(例えばF(ab')二重特異的抗体)のように調製され得る。
【0085】
二重特異的抗体の調製方法はこの技術において知られている。全長二重特異的抗体の伝統的産生は、2種のイムノグロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づき、ここにおいて2本の鎖は異なる特異性を有する(Milstein et al., Nature 305:537-539 (1983))。イムノグロブリン重鎖及び軽鎖の無作為の寄せ集めのために、これらのハイブリドーマ(クォドローマ:Quadromas)は、1種のみが正しい二重特異性構造を有する10種の異なる異なる抗体分子の可能な混合物を生じる。通常アフィニティクロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩雑であり、また生成物の収率も低い。同様な手法は、WO 93/08829及びTraunecker et al., EMBO J. 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
【0086】
別の方法に従うと、所望の結合特異性を持った抗体可変領域(抗体−抗原結合部位)は、イムノグロブリン定常領域配列に融合される。融合物は、好ましくは少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を有するイムノグロブリン重鎖定常領域を伴う。軽鎖結合に必要な部位を含む、融合物の少なくとも一つに存在する第一の重鎖定常領域を有することが好ましい。イムノグロブリン重鎖融合物、及び所望によりイムノグロブリン軽鎖をコードするDNAが、別個の発現ベクターに挿入され、適当な宿主生物に同時インフェクションする。これは、構築に使用される3種のポリペプチドの異なる比が至適収率を与える場合に、実施態様において3種のポリペプチド断片の相対比の調節に大きな柔軟性を与える。しかしながら、少なくとも2種のポリペプチド鎖の同じ比率での発現が高収率をもたらす場合、または比率が重要でない場合には、2種または3種全てのポリペプチド鎖のコード配列を1個の発現ベクター中に挿入することも可能である。
【0087】
この方法の好ましい実施態様において、二重特異的抗体は、第一の結合特異性を一つのアームに有するハイブリッドイムノグロブリン重鎖、及び他方のアームのハイブリッドイムノグロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を与える)からなる。この非対称構造は、二重特異的分子の半分のみにイムノグロブリン軽鎖が存在することが分離に容易な方法を提供するため、所望の二重特異的化合物を望まれないイムノグロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にする。この方法は、WO 94/04690に開示されている。二重特異的抗体の生成の更なる詳細は、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology 121:210 (1986)参照。
【0088】
WO 96/27011に記載のもう一つのアプローチにしたがって、抗体分子のペアの間の界面を、組換え細胞カルチャーから回収されるヘテロダイマーのパーセンテージを最大化するために操作し得る。好ましい界面には、抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部が含まれる。この方法においては、第一の抗体分子の界面由来の一つ以上の小さなアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)を用いて置換される。大きい側鎖(類)に対する同一のまたは同様のサイズの埋め合わせとなる「空洞」は、より小さなアミノ酸側鎖(例えばアラニンまたはトレオニン)を用いて大きいアミノ酸側鎖を置換することによって第二の抗体分子の界面に作り出される。これはホモダイマーのように他の望まれない最終産物以上にヘテロダイマーの収率を増大するためのメカニズムを提供する。
【0089】
二重特異的抗体は、交差結合または“異種接合”抗体を含む。例えば、異種接合体の一方の抗体はアビジンと結合され、他方がビオチンと結合されうる。このような抗体は、例えば免疫系細胞を望ましからぬ細胞に向ける為(米国特許第4,676,980)及びHIV感染の治療のため(WO 91/00360, WO 92/200373及びEP 03089)に提案された。異種接合抗体は、都合よい交差結合方法により作成されうる。このような交差結合試薬は既知であり、種々の交差結合方法と共に米国特許第4,676,980に開示されている。
【0090】
抗体断片から二重特異的抗体を生産する方法が文献に記載されている。例えば、二重特異的抗体は化学的接合を用いて調製され得る。Brennan等,Science,229:81(1985)は、完全な抗体をF(ab')断片を生産するためにタンパク質溶解的に切断する方法を記載する。これらの断片は、ビシナルジチオール(vicinal dithiols)を安定化し、分子内ジスルフィド形成を妨げるために、ジチオール複合体化試薬亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元される。それから生産されたFab'断片を、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。Fab'-TNB誘導体の一つをそれから、メルカプトエチルアミンを用いた還元反応によってFab'-チオールに再変換し、二重特異的抗体を形成するために等モル量の他のFab'-TNB誘導体と混合する。生産された二重特異的抗体を、選択された酵素の固定化のための試薬として用い得る。
【0091】
最近の進歩により、大腸菌からFab'-SH断片の直接的な回収が容易になり、該断片は二重特異的抗体を形成するために化学的に結合され得る。Shalaby等,J.Exp.Med.,175:217-225(1992)は、完全なヒト化二重特異的抗体F(ab')分子の生産を記載する。それぞれのFab'断片は、大腸菌から別々に分泌され、二重特異的抗体を形成するためにin vitroで直接的な化学的結合を受ける。それ故形成された二重特異的抗体は、HER2受容体及び通常ヒトT細胞を過剰発現する細胞に結合し得、同様にヒト乳腫瘍ターゲットに対してヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を引き出し得る。
【0092】
組換え細胞培養物から直接に二価抗体断片を製造及び単離する種々の方法も記述されている。例えば、二価異種二量体は、ロイシンジッパーを使用して調製された。Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos 及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合によって2種のことなる抗体のFab'部分を連結している。該抗体同種二量体は、ヒンジ領域にて還元されて単量体が形成され、次いで再度酸化されて抗体異種二量体が形成された。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)により記述されている「ディアボディ」技術は、BsAb断片を作成するための別の機構を提供した。該断片は、リンカーにより軽鎖可変領域(VL)に連結する重鎖可変領域(VH)を有し、リンカーは同じ鎖の2つの領域の間で対形性を許容するには短すぎるものである。従って、一つの断片のVH及びVL領域は、他の断片の相補的Vl及びVH領域と対形性することを強いられ、これによって2個の抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(sFv)二量体を使用してBsAbを作成する他の方法も報告されている。Gruber et al., J. Immunol. 152:5368 (1994)参照。
【0093】
2より大きい価数を持つ抗体が計画されている。例えば三重特異的抗体が調製され得る。Tutt等,J.Immunol.147:60(1991)。
【0094】
(vi).望ましい性質を持つ抗体のスクリーニング
抗体を生産するための方法が上記記載されている。ここで記載される性質を持つ抗体が選択される。
【0095】
細胞死を誘導する抗体について選択するために、例えばPI、トリパンブルーまたは7AAD取り込みによって示される膜完全性の欠損をコントロールに対して評価する。好ましいアッセイは、「BT474細胞を用いたPI取り込みアッセイ」である。このアッセイにしたがって、BT474細胞(American Type Culture Collection (Rockville,MD)から得られ得る)を、10% 熱不活性化FBS(Hyclone)及び2mM L-グルタミンを補ったDulbecco's Modified Eagle Medium(D-MEM):Ham's F-12 (50:50)に培養する。(それ故該アッセイは、相補物及び免疫エフェクター細胞の不存在下で実施される)。該BT474細胞を、100 X 20mm皿において皿当たり3 X 106の密度でまき、オーバーナイトで付着させる。それから該培地を除去し、新鮮な培地単独、または10μg/mlの適切なMAbを含む培地におく。該細胞を3日間インキュベートする。各処理に引き続き、単一層をPBSを用いて洗浄し、トリプシン処理によって分離する。それから細胞を4℃で5分1200rpmで遠心分離し、該ペレットを3mlの氷冷Ca2+結合バッファー(10mM Hepes,pH7.4,140mM NaCl,2.5mM CaCl)に再懸濁し、細胞塊の除去のため35mm 濾過キャップ12 X 75チューブ(チューブ当たり1ml、処理群当たり3チューブ)内に分割する。それからチューブにPI(10μg/ml)を与える。FACSCANTMフローサイトメーター及びFACSCONVERTTM CellQuestソフトウェアー(Becton Dickinson)を用いてサンプルを分析する。PI取り込みによって測定された細胞死の実質的に有意なレベルを誘導する抗体を選択する。
【0096】
アポトーシスを誘導する抗体について選択するために、以下の実施例2に記載されているような「BT474細胞を用いたアネキシン結合アッセイ」が有用である。BT474細胞を培養し、上記パラグラフに議論されているさらに接種する。それから該培地を除去し、新鮮な培地単独、または10μg/mlの適切なMAbを含む培地におく。3日間インキュベートに引き続き、それから細胞を遠心分離し、Ca2+結合バッファーに再懸濁し、細胞死アッセイについて上記議論されているチューブ内に分割する。それからチューブにラベル化アネキシン(例えばアネキシンV−FITC)(1μg/ml)。FACSCANTMフローサイトメーター及びFACSCONVERTTM CellQuestソフトウェアー(Becton Dickinson)を用いてサンプルを分析する。コントロールに対して実質的に有意なレベルのアネキシン結合を誘導する抗体が、アポトーシス誘導抗体として選択される。
【0097】
上記パラグラフに議論されているアネキシン結合アッセイに加えて、「BT474細胞を用いたDNA染色アッセイ」が有用である。このアッセイを実施するために、上記2のパラグラフに記載されている興味ある抗体を用いて処理されたBT474細胞を、37℃で2時間で9μg/mlのHOECHST 33342TMを用いてインキュベートし、それからMODFITTMソフトウェアー(Verity Software House)を用いてEPICS ELITHTMフローサイトメーター(Coulter Corporation)上で分析する。非処理細胞より2倍以上(そして好ましくは3倍以上)大きいアポトーシス細胞のパーセンテージの変化を誘導する抗体(100%アポトーシス細胞まで)を、このアッセイを用いてプロアポトーシス抗体として選択する。
【0098】
興味ある抗体によって結合されるErbB2上のエピトープに結合する抗体(例えばErbB3に対する3-8B8抗体の結合をブロックするもの)をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Harlow及びDavid Lane編(1988)に記載されているような通常のクロスブロッキングアッセイを実施し得る。代わりに、実施例2に記載されているエピトープマッピングを実施し得る。
【0099】
50-100%まで細胞カルチャーにおけるSKBR3細胞の増殖を阻害する抗ErbB2抗体を同定するために、WO 89/06692に記載されたSKBR3アッセイを実施得る。このアッセイにしたがって、SKBR3細胞を10%胎児ウシ血清、グルタミン及びペニシリンストレプトマイシンを補ったF12とDMEM培地の1:1混合物において増殖させる。SKBR3細胞を35mm細胞カルチャー皿内に20,000細胞でおく(2mls/35mm皿)。2.5μg/mlの抗ErbB2抗体を皿当たり加える。6日後非処理細胞と比較した細胞の数を、電気的COULTERTM細胞カウンターをもちいてカウントする。50-100%までSKBR3細胞の増殖を阻害する抗体を、望ましいアポトーシス抗体と組み合わせるために選択する。
【0100】
(vii).エフェクター機能エンジニアリング
例えばガンを治療する抗体の機能を増大するために、エフェクター機能の観点から本発明の抗体を修飾することは望ましいであろう。例えばシステイン残基(類)をFc領域に導入し得、それによってこの領域で鎖内ジスルフィド結合形成が許容される。それ故生産されたホモダイマー抗体を、内面化能及び/または増大された相補的介在性細胞殺傷及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の観点から改良しうる。Caron等,J.Exp Med.176:1191-1195(1992)及びShopes,B.J.Immuno0l.148:2918-2922(1992)参照。増大された抗腫瘍活性を持つホモダイマー抗体はまた、Wolff等,Cancer Research 53:2560-2565(1993)に記載されたようなヘテロ二官能クロスリンカーを用いても調製され得る。代わりに、二重Fc領域を持つ抗体を創作し得、それによって相補的溶解能及びADCC能を増大しうる。Stevenson等,Anti-Cancer Drug Design 3:219-230(1989)参照。
【0101】
(viii).イムノ接合物
本発明はまた、化学療法試薬、毒素(例えば細菌、植物または動物起源の酵素学的に活性な毒素、またはそれらの断片)、または放射性活性アイソトープ(即ち放射性接合物)のような細胞傷害性試薬に接合されたここで記載された抗体を含むイムノ接合物にも関する。
【0102】
上記イムノ接合物の生産に有用な化学療法試薬は、上記記載されている。用いられ得る酵素学的に活性な毒素及びその断片には、ジフテリア毒素の非結合活性断片であるジフテリアA鎖、エキソトキシンA鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ−サルシン(sarcin)、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI,PAPII及びPAP-S)、モモルディカキャランティアインヒビター(momordica charantia inhibitor)、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリオアオフィシナリスインヒビター(sapaonaria officinalis inhibitor)、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセン(the tricothecenes)が含まれる。さまざまな放射性核種が、放射性接合物化抗ErbB2抗体の生産のため入手可能である。例としては、212Bi,131I,131In,90Y及び186Reが含まれる。
【0103】
抗体及び細胞傷害性試薬の接合物は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオレーン(IT)、イミドエステルの二官能誘導体(ジメチルアジピミデートHCLのような)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレートのような)、アルデヒド(グルタルアルデヒドのような)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンのような)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンのような)ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネートのような)及び二活性フルオリン化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンのような)といった様々な二官能タンパク質カップリング試薬を用いて作製される。例えばリシンイムノトキシンは、Vitetta等,Science 238:1098(1987)に記載されているように調製され得る。炭素-14-ラベル化1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、抗体に対する放射性核種の接合に対する例示的なキレート試薬である。WO 94/11026参照。
【0104】
さらなる実施態様として、抗体を腫瘍プレターゲティングの使用のための「リセプター」(ストレプタビジンのような)に接合し得、そこでは抗体−リセプター接合物を患者に投与し、洗浄試薬を用いて循環からの非結合接合物の除去に引き続いて、それから細胞傷害性試薬(例えば放射性核種)に接合された「リガンド」(例えばアビジン)の投与をする。
【0105】
(ix).イムノリポソーム
ここで開示される抗ErbB2抗体はイムノリポソームとしても処方されうる。該抗体を含有するリポソームは、Epstein等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985);Hwang等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030(1980);及び米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号に記載されているように、本分野で周知の方法によって調整される。増大した循環期間を持つリポソームは米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0106】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法を用いて調製され得る。リポソームは望ましい直径を持つリポソームを生産するための限定されたポアサイズのフィルターから排出される。本発明の抗体のFab'断片を、ジスルフィドインターチェンジ反応を介して、Martin等,J.Biol.Chem.257:286-288(1982)に記載されているようにリポソームに接合しうる。化学療法試薬(Doxorubicinのような)は場合により、リポソーム内に封入される。Gabizon等,J.National Cancer Inst.81(19)1484(1989)参照。
【0107】
(x).抗体依存性酵素介在性プロドラッグ治療(ADEPT)
本発明の抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法試薬、WO 81/01145)を活性な抗ガン試薬に変換するプロドラッグ活性化酵素に該抗体を接合することにより、ADEPTでも用い得る。例えばWO 88/07378及び米国特許第4,975,278号参照。
【0108】
ADEPTに対して有用なイムノ接合物の酵素成分は、プロドラッグをそのより活性で細胞傷害性形態に変換するような上記方法においてプロドラッグに作用しうるいかなる酵素も含まれる。
【0109】
本発明の方法に有用である酵素には、リン酸含有プロドラッグを遊離ドラッグに変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;イオウ含有プロドラッグを遊離ドラッグに変換するのに有用なアリルスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗ガン試薬、5-フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離ドラッグに変換するのに有用である、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン(themolysin)、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(カテプシンB及びLのような)といったプロテアーゼ;Dアミノ酸置換体を含むプロドラッグを変換するのに有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離ドラッグに変換するのに有用なβ-ガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼのような酵素;β-ラクタムを用いて誘導化されたドラッグを遊離ドラッグに変換するのに有用なβ-ラクタマーゼ;及びそのアミン窒素でそれぞれフェノキシアセチル基またはフェニルアセチル基を用いて誘導化されたドラッグを遊離ドラッグに変換するのに有用な、ペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼのようなペニシリンアミダーゼが制限されることなく含まれる。代わりに、本分野で「アブザイム」として知られている酵素学的活性を持つ抗体を、本発明のプロドラッグを遊離活性ドラッグに変換するために用い得る(例えばMassey,Nature 328:457-458(1987)参照)。抗体−アブザイム接合物を、腫瘍細胞集団へアブザイムの輸送のためにここで記載されているように調製しうる。
【0110】
本発明の酵素は、上記議論されているヘテロ二官能架橋試薬の使用のような本分野で周知の方法によって抗ErbB2抗体に共有結合で結合しうる。代わりに、本発明の酵素の少なくとも活性部分に結合された本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質を、本分野で周知の組換えDNA法を用いて構築しうる(例えばNeuberger等,Nature,312:604-608(1984)参照)。
【0111】
(xi).抗体−サルベージ受容体結合エピトープ融合物
本発明の特定の実施態様において、例えば腫瘍浸透を増大するために、完全な抗体よりもむしろ、抗体断片を用いることが望ましいであろう。この場合には、その血清半減期を増大するために抗体断片を修飾することが望ましいであろう。これは例えば抗体断片内へのサルベージ受容体結合エピトープの取り込みによって成し遂げられよう(例えば抗体断片における適切な領域のミューテーションによって、または末端または中央で抗体断片に融合されるペプチドタグ内にエピトープを取り込ませること、例えばDNA合成またはペプチド合成によって)。
【0112】
増大されたin vivo半減期を持つ上記抗体変異体を調製するための系統的な方法には、いくつかの工程が含まれる。第一に、配列の同定及びIgG分子のFc領域のサルベージ受容体結合エピトープの配置が含まれる。一度このエピトープが同定されると、興味ある抗体の配列は、該配列と同定された結合エピトープの配置を含むように修飾される。配列がミューテートされた後、該抗体変異体が元々の抗体のものより長いin vivo半減期を持つかどうか確認するために試験される。もし該抗体変異体が試験の結果より長いin vivo半減期を持たなかったならば、その配列は該配列と同定された結合エピトープの配置を含むようにさらに改変される。改変された抗体はより長いin vivo半減期に対して試験され、この工程はより長いin vivo半減期を示す分子が得られるまで継続される。
【0113】
それ故興味ある抗体内に取り込まれるサルベージ受容体結合エピトープは、上記定義されたようにいかなる適した上記エピトープでもよく、その性質は例えば修飾される抗体のタイプに依存するであろう。導入は、興味ある抗体が未だここに記載される生物学的活性を所有するようになされる。
【0114】
エピトープは一般的に、Fcドメインの一つまたは二つのループ由来の一つ以上のアミノ酸残基が、抗体断片の類似位置に導入される領域を構成する。さらにより好ましくは、 Fcドメインの一つまたは二つのループ由来の3以上の残基が導入される。さらにより好ましくは、該エピトープはFc領域の(例えばIgGの)CH2ドメインから得られ、該抗体のCH1,CH3またはV領域、あるいは上記領域の一つより多い領域に導入される。代わりに、該エピトープはFc領域のCH2ドメインから得られ、抗体断片のC領域またはV領域あるいは両者に導入される。
【0115】
一つの好ましい実施態様として、サルベージ受容体結合エピトープは、以下の配列(5'から3'):PKNSSMISNTP(配列番号5)を含み、場合によりさらにHQSLGTQ(配列番号6)、HQNLSDGK(配列番号7)、HQNISDGK(配列番号8)またはVISSHLGQ(配列番号5)よりなる群から選択された配列をさらに含み、特にこの場合抗体断片はFabまたはF(ab')である。さらなる最も好ましい実施態様においては、サルベージ受容体結合エピトープは、以下の配列(類)(5'から3'):HQNLSDGK(配列番号7)、HQNISDGK(配列番号8)またはVISSHLGQ(配列番号9)及び以下の配列:PKNSSMISNTP(配列番号5)を含むポリペプチドである。
【0116】
B.ベクター、ホスト細胞及び組換え法
本発明はまた、ここで記載される抗体をコードする単離された核酸、ベクター及び核酸を含むホスト細胞、そして該抗体を生産するための組換え法を提供する。該抗体の組換え生産に加えて、ここに開示される抗体をコードする核酸は、例えば1996年3月14日に印刷されたWO 96/07321の教示にしたがってErbB2タンパク質の細胞表面を阻害するために用い得る。例えば該抗体は、発現ベクター(ウイルスまたはプラスミドベクターのような)に提供される単一鎖Fv断片であり、細胞内でErbB2タンパク質に結合し、それによって細胞の死を誘導するように、該ベクターを細胞内に導入する。
【0117】
該抗体の組換え生産のために、それをコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のため複製ベクター内に挿入される。モノクローナル抗体をコードするDNAは容易に単離され、簡便な方法を用いて(例えば該抗体のH鎖及びL鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)シークエンスされる。多くのベクターが入手可能である。該ベクター構成要素には、以下のものの一つ以上が制限されることなく含まれる:シグナル配列、複製オリジン、一つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
【0118】
(i).シグナル配列構成要素
本発明の抗ErbB2抗体は直接だけでなく、ヘテロ構造のポリペプチドを用いた融合ポリペプチドとしても組換え的に生産でき、そのヘテロ構造のポリペプチドは天然のタンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的な切断部位を持つシグナル配列または他のポリペプチドであり得る。選択されたヘテロ構造のシグナル配列は好ましくはホスト細胞によって認識されそしてプロセッシングされるものである(すなわち、シグナルぺプチダーゼによって切断される。天然の抗ErbB2抗体シグナル配列を認識もプロセッシングもしない原核生物ホスト細胞に対しては、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppそして熱安定性エントロキシンIIリーダーの群から選択された原核生物のシグナル配列日関される。酵母の分泌のために天然のシグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、アルファーファクターリーダー(サッカロミセスとクルイベロミセスαファクターリーダーを含む)、または酸性ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダー、またはWO 90/13646に記述されているシグナルで置換されうる。哺乳動物細胞発現では、例えば単純ヘルペス糖タンパク質Dシグナルのようなウイルス分泌リーダーと同様に、哺乳動物のシグナル配列が入手可能である。
【0119】
該前駆体領域のためのDNAは、抗ErbB2抗体をコードするDNAに対するリーディングフレーム内にライゲーションされる。
【0120】
(ii) 複製オリジン構成要素
発現ベクターとクローニングベクターの両方が、一つかそれ以上の選択されたホスト細胞内でベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。一般的にクローニングベクターではこの配列は、ベクターがホスト染色体DNAと非依存的に複製できるようにするものであり、複製のオリジンまたは自律複製配列を含む。該配列は様々な細菌、酵母そしてウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322由来の複製オリジンは、ほとんどのグラムネガティブ細菌に対して適しており、2μプラスミドオリジンは酵母に適しており、そして様々なウイルスのオリジン(SV40,ポリオーマ,アデノウイルス,VSVまたはBPV)は哺乳動物細胞内でのクローニングベクターに対して有用である。一般的に複製構成物のオリジンは、哺乳動物発現ベクターに対しては必要でない(SV40オリジンは典型的にはそれが速いプロモーターを含むため用いられる)。
【0121】
(iii) 選択遺伝子構成物
発現ベクターおよびクローニングベクターは典型的には、選択遺伝子、選択マーカーとも呼ばれるものを含む。典型的な選択遺伝子は、(a)例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートまたはテトラサイクリンといった抗生物質または他の毒素に対して耐性を示すタンパク質、(b)栄養要求性欠乏を補足するタンパク質、または(c)例えばバチルスにとってのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子といった複雑な培地からは入手できない重大な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0122】
選択スキームの一つの例として、ホスト細胞の成長を抑える薬剤の使用がある。ヘテロ構造遺伝子を用いてうまくトランスフォームされた細胞は、薬剤耐性を示すタンパク質を生産し、それゆえ選択摂生を生き残れる。該ドミナント選択の例として、薬剤としてネオマイシン、ミコフェノール酸またはハイグロマイシンを用いる。
【0123】
哺乳動物細胞に対して適した選択マーカーのもう一つの例は、DHFRまたはチミジンキナーゼ、メタロチオネイン-I及び-II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等のような、抗ErbB2抗体核酸を取り込むのに適した細胞を同定できるものである。
【0124】
例えばDHFR選択遺伝子を用いてトランスフォームされた細胞は、DHFRの競合的な拮抗剤であるメトトレキセート(Mtx)を含む培地ですべてのトランスフォーマントを培養することによって最初に同定されるであろう。野生型DHFRを用いる場合に適したホスト細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系である。
【0125】
代わりに、抗ErbB2抗体、野生型DHFRタンパク質そしてアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のようなもう一つの選択マーカーをコードするDNA配列を用いてトランスフォームまたはコトランスフォームされたホスト細胞(特に外来性DHFRを含む野生型ホスト)は、例えばカナマイシン、ネオマイシンまたはG418などのアミノグリコシド系抗生物質のような選択マーカーに対する選択試薬を含む培地中での細胞成長によって選択できる。米国特許第4,965,199号を参照。
【0126】
酵母を用いる場合に適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7内に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb等,Nature,282:39(1979))。trp1遺伝子は、例えばATCC番号44076またはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠如した酵母のミュータント株のための選択マーカーを提供する。Jones,Genetics,85:12(1977)。そこで酵母ホスト細胞ゲノム内のtrp1領域の存在は、トリプトファンの非存在下での成長によってトランスフォーメーションを検出するための効果的な環境を提供する。同様に、Leu2欠失酵母株(ATCC20,622または38,626)は、Leu2遺伝子をもつ既知のプラスミドによって相補される。
【0127】
加えて、1.6μm環状プラスミドpKD1由来のベクターは、クルイベロミセス酵母のトランスフォーメーションに対して用いられる。代わりに、組換え仔ウシキモシンの大規模生産のための発現システムがK・ラクティスに対して報告されている。Van den Berg,Bio/Technology,8:135(1990)。クルイベロミセスの工業的な株による成熟した組換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定なマルチコピー発現ベクターもまた開示されている。Fleer等,Bio/Technology,9:968-975(1991)。
【0128】
(iv) プロモーター構成要素
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常ホスト生物によって認識され、抗ErbB2抗体核酸配列に実施可能に結合されたプロモーターを含む。原核生物ホストを用いた使用にとって適したプロモーターは、phoAプロモーター、β-ラクタマーゼとラクトースプロモーターシステム、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーターシステムそしてtacプロモーターのようなハイブリッドプロモーターを含む。しかしながら、他の既知の細菌プロモーターも適している。細菌システムで用いられるプロモーターもまた、抗ErbB2抗体をコードするDNAに実施可能に結合するシャインダルガノ(S.D.)配列を含むであろう。
【0129】
プロモーター配列は真核生物のためのものも知られている。事実上すべての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25から30塩基上流に位置するATリッチ領域を持っている。多くの遺伝子の転写の開始から70から80ベース上流に見出されるもう一つの配列は、CNCAAT領域であり、ここでNはいかなるヌクレオチドをもさす。ほとんどの真核生物遺伝子の3'末端には、AATAAA配列があり、それはコード配列の3'末端にポリAテールを付加するためのシグナルであり得る。これらの配列の全てが、真核生物発現ベクターに適するように挿入される。
【0130】
酵母ホストを用いる場合の適したプロモーター配列の例として、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたはエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘクソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼそしてグルコキナーゼのような他の解糖系の酵素の各プロモーターが含まれる。
【0131】
成長コンディションによってコントロールされる転写という付加的な利点を有する誘発性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼそしてマルトースおよびガラクトース利用に関わる酵素に対する各プロモーター領域がある。酵母発現に用いる適したベクターおよびプロモーターは、さらにEP 73,657に記述されている。酵母エンハンサーもまた酵母プロモーターを用いて便利に使用される。
【0132】
哺乳動物ホスト細胞内のベクターからの抗ErbB2抗体は、例えばポリオーマイルス、鶏頭ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2のような)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルスそして好ましくはシミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られるプロモーター、以下のプロモーターがホスト細胞システムと両立できれば、例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターなどのヘテロ構造哺乳動物プロモーター、またはヒートショックプロモーターから得られるプロモーターによってコントロールされる。
【0133】
SV40の速いおよび遅いプロモーターはSV40ウイルス複製オリジンも含むSV40制限断片として便利に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの極端に速いプロモーターはHindIIIE制限断片として便利に得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを用いた哺乳動物ホスト内のDNA発現システムは、米国特許第4,419,446号に開示されている。このシステムの変形は米国特許第4,601,978号に記述されている。Reyes等,Nature,297:598-601(1982)の単純ヘルペス由来のチミジンキナーゼプロモーターのコントロールの下でのマウス細胞でのヒトβ-インターフェロンcDNAの発現も参照。代わりに、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復配列をプロモーターとして用い得る。
【0134】
(v) エンハンサーエレメント構成要素
高等哺乳動物による本発明の抗ErbB2抗体をコードするDNAの転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することにより増大するであろう。多くのエンハンサー配列が哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテインそしてインスリン)から現在では知られている。しかしながら典型的には、当業者は真核生物細胞ウイルス由来のエンハンサーを用いる。例としては、複製オリジンの後ろ側(100-270bp)にSV40エンハンサー、サイトメガロウイルスの速いプロモーターエンハンサー、複製オリジンの後ろ側にポリオーマエンハンサーそしてアデノウイルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントについてはYaniv,Nature,297:17-18(1982)も参照。エンハンサーは抗ErbB2抗体-コード配列に対して5'または3'の位置でベクターに挿入されるが、好ましくはプロモーターから5'部位に位置される。
【0135】
(vi) 転写終結構成要素
真核生物ホスト細胞(酵母、菌類、昆虫、植物、動物、ヒトまたは他の多核細胞生物由来の核のある細胞)内で用いられる発現ベクターは、また転写の終結とmRNAの安定化のために必要な配列を含むであろう。該配列は、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの非翻訳領域の5'そして時には3'から共通して入手可能である。これらの領域は抗ErbB2抗体をコードするmRNAの非翻訳領域内のポリアデニル化断片として転写される核酸部分を含む。一つの有用な転写終結構成要素は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO 94/11026及びここで開示される発現ベクター参照。
【0136】
(vii).ホスト細胞の選択とトランスフォーメーション
ここでベクター内のDNAをクローン化または発現するための適したホスト細胞は、上述した原核生物、酵母、高等真核生物である。この目的のため適した原核生物は、グラムネガティブまたはグラムポジティブ生物のような真正細菌を含み、例えば大腸菌のようなエシェリキア、エンテロバクター、エルヴィニア、クレブシエラ、プロテウス、ネズミチフス菌のようなサルモネラ、霊菌のようなセラチアそしてシゲラといった腸内細菌、および枯草菌とバチルスリケニフォルミス(例えば1989年4月12日に印刷されたDD266,710に開示されているバチルスリケニフォルミス41P)のようなバチルス、緑膿菌のようなシュードモナスそしてストレプトミセスも同様に含む。一つの好ましい大腸菌クローニングホストは、大腸菌294(ATCC 31,446)であるが、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC 31,537)及び大腸菌W3110(ATCC 27,325)も適している。これらの例は限定することよりもむしろ説明である。
【0137】
原核性細胞に加えて、糸状菌または酵母等の真核性微生物も、抗ErbB2抗体−コードベクターの好適なクローニングまたは発現ホストである。Saccharomyces cerevisiaeまたは通常のベーカーズイーストは、下等真核性宿主微生物の内では最も通常に使用されている。しかしながら、Schizosaccharomyces pombe ; 例えば、K. lactis , K. Fragilis (ATCC 12,424), K. bulgaricus (ATCC 16,045), K. wickeramii (ATCC 24,178), K. waltii (ATCC 56,500), K. drosophilarum (ATCC 36,906), K. thermotolerans,及びK. marxianus; yarrowia (EP 402,226)等のKluyveromycesホスト;Pichia pastoris (EP 183,070); Candida; Trichoderma reesia (EP 244,234); Neurospora crassa ; Schwanniomyces occidentalis 等のSchwanniomyces;並びに、例えばNeurospora, Penicillium, Tolypocladium 、及びA. nidulans 及びA. niger 等のAspergillusホスト等、多くの他の属、種及び株が一般的に入手可能であり、また有用である。
【0138】
グリコシル化抗ErbB2抗体の発現のために好適な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例は、植物及び昆虫細胞である。多くのバキュロウイルス株及び変異体、並びに対応する許容可能な昆虫宿主細胞が、Spodoptera frugiperda(イモ虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)及びBombyx mori等の宿主から同定されている。例えばAutographa californixa NPVのL-1変異体及びBombyx mori NPVのBm-5株等のトランスフェクションのための多くのウイルス株が一般に入手可能であり、このようなウイルスは本発明におけるウイルスとして特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクトのために使用され得る。
【0139】
綿、トウモロコシ、ポテト、ダイズ、ペチュニア、トマト及びタバコの植物細胞培養物は、宿主として使用され得る。
【0140】
しかしながら、最も興味あるのは脊椎動物細胞であり、培養物(組織培養物)中での脊椎動物細胞の増殖は情報になっている。有用な哺乳動物細胞系の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系(COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎細胞系(293または懸濁培養中の生育についてサブクロ−ンされた293細胞、Graham et al., J. Gen. Virol. 36:59 (1977));仔ハムスター腎細胞(BHK, ATCC CCL 10);モルモット卵巣細胞/−DHFR(CHO, Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト頸部腫瘍細胞(HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK, ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2, HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562, ATCC CCL 51);TRI細胞(Mather et al., Annal. N. Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;並びにヒト肝癌系(Hep G2)である。
【0141】
宿主細胞は、抗ErbB2抗体生産のための上述した発現またはクローニングベクターによりトランスフォームされ、プロモーターの誘発、形質転換体の選択または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に修飾された慣用の栄養媒体中で培養される。
【0142】
(viii).ホスト細胞の培養
本発明の抗ErbB2抗体を産生するために使用される宿主細胞は、種々の媒体中で培養されうる。商業的に入手可能な、例えばHam's F10(Sigma)、最小必須培地((MEM), Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及び、ダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)が、宿主細胞の培養に好適である。加えて、Hma et al., Meth. Enz. 58:44 (1979, Barns et la., Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4,767,704; 4,657,866; 4,927,762; 4,562,655または5,122,469; WO90/03430; WO87/00195; 及び米国再審査特許30,985に記述されている何れかの培地も宿主細胞の培養培地として使用され得る。これらのいずれの培地も、必要に応じてホルモン類及び/または多の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または表皮成長因子等)、塩類(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸等)、緩衝剤(HEPES等)、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジン等)、抗生物質(ゲンタマイシンTM等)、微量元素(通常マイクロモルの最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、並びにグルコースまたは他の同等なエネルギー源が補充されてもよい。その他の必要な補充物が、当業者に知られている適当な濃度をもって含まれてもよい。温度、pH等の培養条件は、発現のために選択された宿主について従来使用されているとおりで、当業者には明らかであろう。
【0143】
(ix).抗ErbB2抗体の調製
組換え法を用いた場合、該抗体は細胞内、ペリプラズム空間内に生産され、または直接培地内に分泌される。もし該抗体が細胞内に生産されたならば、第一の工程として、ホスト細胞または溶解した断片などの特定の破片を、例えば遠心分離または超濾過によって除去する。Carter等,Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌のペリプラズム空間に分泌された抗体を単離する方法を記載している。略記すると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)の存在下で約30分以上溶かす。細胞破片を遠心分離によって除去する。抗体が培地内に分泌された場合、該発現系由来の上清を例えばAmidconまたはMillipore Pellicon超濾過ユニットといった商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルターを用いて、一般的に最初に濃縮する。PMSFのようなプロテアーゼインヒビターをタンパク質溶解を阻害するために以下の工程のいずれにも含ませ、外来の混入物の成長を妨げるために抗生物質を含ませ得る。
【0144】
該細胞から調製された抗体組成物を、例えばヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製し、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製法である。アフィニティーリガンドとしてプロテインAの適切性は、該抗体に存在するいかなる免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1,γ2またはγ4H鎖(Lindmark等,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))に基づいている抗体を精製するために用い得る。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプ及びヒトγ3(Guss等,EMBO J.5:1567-1575(1986)) に対して好ましい。アフィニティーリガンドが付着するマトリックスは、最も一般的にはアガロースであるが、他のマトリックスも入手可能である。均質化されたポアガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンのような機械的に安定なマトリックスは、アガロースを用いて成し遂げられ得る以上のより早い流速と、より短いプロセッシング時間を許容する。該抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,NJ)が精製のために有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンSepharoseTM上でのクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラムのような)、等電点電気泳動、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿のような他のタンパク質精製法も、回収される抗体に依存して利用可能である。
【0145】
いかなる一時的精製工程(類)に引き続き、興味ある抗体とその他の物の混合物を、約2.5-4.5のpHの溶出バッファーを用いて低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに受けさせ、好ましくは低塩濃度で実施する(例えば約0-0.25M塩)。
【0146】
C.製薬学的処方
該抗体の治療上の処方は、所望により医薬上許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington's Pharmaceutical Science 16版、Osal, A.Ed(1980))を含んでもよい所望の純度を有するアンタゴニストを混合することによって、凍結乾燥した処方かまたは水溶液の形で保存用に調製される。許容される担体、賦形剤または安定剤は、使用される投与量および濃度で受容者に毒性がなく、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸類のごとき緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを始めとする抗酸化剤、保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンザルコニウムクロライド;ベンゼトニウムクロライド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールのような)、低分子量(約10残基より小さい)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのごときタンパク質、ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジンのごときアミノ酸類、単糖類、二糖類およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを始めとする他の炭水化物類、EDTAのごときキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールのごとき糖アルコール類、ナトリウムのごとき塩形成カウンターイオン、金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体)および/またはTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)のごとき非イオン性界面活性剤を含む。
【0147】
ここで該処方は、治療される特定の病状に対して必要な一つ以上の活性化合物を含み得、好ましくは該化合物はそれぞれ逆に作用しない相補的な活性を持つものである。例えば、一つの処方にEGFR,ErbB2(例えばErbB2上の異なるエピトープに結合する抗体),ErbB3,ErbB4または血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する抗体をさらに提供することが望ましいであろう。代わりに、またはさらに加えて、該組成物は化学療法試薬またはサイトカインを含むであろう。該分子は企図される目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0148】
また有効成分も、例えばコアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、それぞれコロイド薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョンにおける、例えばヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタシレート)マイクロカプセル中にトラップされてもよい。かかる技術は、Remington's Pharmaceutical Science 16版,Osol, A.Ed(1980)に開示されている。
【0149】
イン・ビボ投与のために用いられる処方は無菌でなければならない。このことは、凍結乾燥および再構成の前または後に、除菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【0150】
放出を持続させる調製法が採られてよい。放出を持続させる調製法の適切な例としては、CD18またはCD11bアンタゴニストを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは造形品、例えば被膜、またはマイクロカプセルの形態である。放出を持続させるマトリックスの例としては、ポリエステル類、ヒドロゲル類(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド類(米国特許第3,773,919号)、L―グルタミン酸およびL−グルタミン酸γエチルの共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドからなる注射可能な微小球)のごとき分解性乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシブチル酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコ−ル酸のごときポリマーは100日にわたって分子の放出が可能であるが、あるヒドロゲル類はより短い期間でタンパク質を放出する。カプセル化抗体が長時間体内に残っている場合には、37℃で湿気に曝された結果として変性または凝縮し、その結果生物学的活性の欠失および免疫原性に変化が起こる可能性がある。関連機構に基づく安定化のための合理的な戦略を考案できる。例えば、凝縮機構がチオ−ジスルフィド交換を介した分子間S−S結合形成であることが発見された場合には、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含量を調節し、適当な添加物を用いて特異的なポリマーマトリックス組成物を開発することによって達成され得る。
【0151】
D.該抗体の非治療上の使用
本発明の抗体はアフィニティー精製試薬として用いられ得る。この目的において、該抗体は本分野で周知の方法を用いて、Sephadex樹脂または濾紙のような固相上に固定化される。固定化された抗体は、精製されるErbB2タンパク質(またはその断片)を含むサンプルと接触させられ、その後該支持体は固定化された抗体に結合したErbB2抗体を除いてサンプル中の実質的にすべての物質を除去するであろう適切な溶媒で洗浄される。最後に該支持体を該抗体からErbB2タンパク質を放出するであろうグリシンバッファー,pH5.0のようなもう一つの適切な溶媒で洗浄される。
【0152】
抗ErbB2抗体はまた、例えば特異的な細胞、組織または血清中でのその発現を検出するような、ErbB2タンパク質の診断アッセイにおいて有用であろう。それ故該抗体をヒト悪性疾患の診断において用い得る(例えば米国特許第5,183,884号参照)。
【0153】
診断の応用に対して、該抗体は典型的に検出可能な部分でラベルされるであろう。以下のカテゴリーに一般的に分類可能な数多くのラベルが入手可能である:
(a) 35S,14C,125I,H及び131Iのような放射性同位元素。該抗体を例えばCurrent Protocols in Immunology,Volumes1及び2,Coligen等,編,Wiley-Interscience,New York,Pubs.,(1991)に記載された方法を用いて放射性同位元素でラベルし得、放射性活性をシンチレーションカウンターを用いて測定しうる。
(b) 希土類キレート(ユーロピウムキレート)またはフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、Lissamine、フィコエリスリン及びテキサスレッドのような蛍光ラベルが使用可能である。蛍光ラベルを例えば、Current Protocols in Immunology,上記参照に開示されている方法を用いて該抗体に接合可能である。蛍光をフルオリメーターを用いて定量しうる。
(c) 様々な酵素−基質ラベルが利用可能であり、米国特許第4,275,149号はこれらのいくつかのレビューを提供する。該酵素は一般的に様々な方法を用いて測定されうる色素基質の化学的変化を触媒する。例えば該酵素は、基質における色素変化を触媒し得、それは分光光度計的に測定されうる。代わりに、該酵素は基質の蛍光または化学ルミネセンスを改変しうる。蛍光における変化を定量するための方法は、上記記載されている。化学ルミネセンス基質は、化学反応によって電気的に励起され、それから測定されうる(例えばケミルミノメーターを用いて)光を放出し、または蛍光アクセプターにエネルギーを伝達する。酵素的ラベルの例として、ルシフェラーゼ(例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、マレートデヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)のようなペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、ヘテロサイクリックオキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼのような)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼ等が含まれる。抗体に酵素を接合する方法は、O'Sullivan等,Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay,In Methods in Enzym.(J.Langone & H.Van Vunakis編),Academic press,New York,73:147-166(1981)に記載されている。
【0154】
酵素−基質の組み合わせの例として例えば:
(i) 基質としてハイドロゲンペルオキシダーゼを用いる西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)であり、そこではハイドロゲンペルオキシダーゼは色素前駆体を酸化する(例えばオルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンハイドロクロライド(TMB));
(ii) 色素基質としてパラ−ニトロフェニルリン酸を用いるアルカリホスファターゼ(AP);及び
(iii) 色素基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光基質4-メチルアンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼを用いるβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)
が含まれる。
【0155】
数多くの他の酵素−基質の組み合わせも当業者に利用可能である。これらの一般的なレビューとして、米国特許第4,275,149号及び第4,318,980号参照。
【0156】
時にはラベルは間接的に該抗体に接合される。当業者はこれを成し遂げるための様々な方法に気がつくであろう。例えば、該抗体をビオチンと接合し得、上記した3の広いカテゴリーのいずれもアビジン等と接合し得、逆もまた然りである。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、それ故該ラベルは間接的な方法で該抗体に接合し得る。代わりに、該抗体を用いた該ラベルの間接的な接合を成し遂げるために、該抗体を小さなハプテン(例えばジゴキシン)と接合し、上記した異なるタイプのラベルの一つを抗ハプテン抗体(例えば抗ジゴキシン抗体)を用いて接合する。それ故抗体を用いて該ラベルの間接的な接合は成し遂げられ得る。
【0157】
本発明のもう一つの実施態様は、抗ErbB2抗体をラベルする必要はなく、それらの存在をErbB2抗体に結合するラベル化抗体を用いて検出しうる。
【0158】
本発明の抗体は、競合的結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイのような周知のアッセイ法に用い得る。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158(CRC Press,Inc.,1987)。
【0159】
競合的結合アッセイは、制限された量の抗体と結合する試験サンプル分析物と競合するラベル化スタンダードの能力に依存する。試験サンプル中のErbB2抗体の量は、抗体に結合されるようになるスタンダードの量に反比例する。結合されるスタンダードの量を測定することを容易にするために、抗体に結合されるスタンダード及び分析物が非結合のままのスタンダード及び分析物から簡便に分離されるように、抗体は一般的に競合の前後で固定化される。
【0160】
サンドイッチアッセイは2の抗体の使用を含み、それぞれは検出されるタンパク質の異なる免疫原性部分またはエピトープに結合可能である。サンドイッチアッセイにおいては、試験サンプル分析物は固体支持体に固定化された第一の抗体によって結合され、その後第二の抗体が結合し、それ故不溶性の3の部分の複合体が形成される。例えば米国特許第4,376,110号参照。第二の抗体は検出可能な部分でそれ自体がラベルされている(直接サンドイッチアッセイ)または検出可能な部分でラベルされている抗免疫グロブリン抗体を用いて測定されうる(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの一つのタイプがELISAアッセイであり、その場合には検出可能な部分は酵素である。
【0161】
免疫組織化学に対しては、腫瘍サンプルは新鮮であるか凍結されており、またはパラフィンに埋没され例えばホルマリンのような防腐剤で固定されているであろう。
【0162】
該抗体はin vivo診断アッセイについても用いられ得る。一般的に該抗体は該腫瘍がイムノシンチオグラフィーを用いて局在され得るように、放射性核種(111In,99Tc,14C,131I,125I,H,32Pまたは35Sのような)を用いてラベルされる。
【0163】
E.診断キット
簡便な方法として、本発明の抗体はキット、即ち診断アッセイを実施するための説明書と所定量の試薬のパッケージされた組み合わせにおいて提供されうる。抗体が酵素でラベルされる場合、キットは酵素に必要とされる基質及び補助因子を含むであろう(例えば検出可能な色素因子または蛍光因子を提供する基質前駆体)。加えて安定剤、バッファー(例えばブロックバッファーまたは溶解バッファー)等のような他の付加物が含まれる。様々な試薬の相対的な量は、アッセイの感受性を実質的に最適化する試薬の溶液における濃度を提供するために広く変化しうる。特に、該試薬は、通常凍結乾燥され乾燥パウダーとして提供され、溶解した場合適切な濃度を持つ試薬溶液を提供するであろう賦形剤を含む。
【0164】
F.該抗体の治療上の使用
本発明の抗ErbB2抗体は、ErbB2レセプターの過剰発現及び/または活性化によって特徴付けられるものを含む、様々な疾患を治療するために用いられることを企図される。ErbB2抗体を用いて治療される疾病または疾患の例として、良性または悪性腫瘍(例えば腎臓、肝臓、腎臓、膀胱、乳、胃、卵巣、大腸、前立腺、膵臓、肺、外陰部、甲状腺、肝臓ガン腫;肉腫;グリア芽細胞腫;及び様々な頭と首のガン);白血病及びリンパ悪性腫瘍;神経、グリア、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、ストロマ、肺胞腔の各疾患;及び炎症、血管由来及び免疫学的な各疾患が含まれる。
【0165】
本発明の抗体は、ボーラスとしてまたは一定期間の継続的な点滴による静脈内への投与、または筋肉内、動脈内、脳脊髄内、皮下、間接内、骨膜内、胞膜内、経口、局所的、または吸入の各経路によって、周知の方法に従って哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。該抗体の静脈内投与が好ましい。
他の治療上の摂生を、本発明の抗ErbB2抗体の投与と結びつけうる。例えば、ここで開示される抗体を用いて治療される患者は放射線治療を受けていてもよい。代わりに、または加えて、化学療法試薬を製品の説明書にしたがって、または当業者に経験的に測定されるように用いてもよい。上記化学療法試薬の調製及び投与スケジュールは、Chemotherapy Service,M.C.Perry,編,Williams & Wilkins,Baltimore,MD(1992)にも記載されている。化学療法試薬は該抗体の投与に先行しても引き続いてもよく、それらと同時に与えられてもよい。
【0166】
EGFR,ErbB2,ErbB4または血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する抗体のような、他の腫瘍関連性抗原に対して抗体を投与することも好ましいであろう。代わりに、または加えて、二つ以上の抗ErbB2抗体を、患者に共投与することも可能である。場合により、一つ以上のサイトカインを患者に投与することも可能である。好ましい実施態様として、該ErbB2抗体は、増殖阻害試薬と共投与される。例えば該増殖阻害試薬は最初に投与され、その後ErbB2抗体が引き続く。しかしながら、ErbB2抗体と同時の投与または最初にErbB2抗体を投与することも企図される。増殖阻害試薬の適した投与量は現在用いられているものであり、増殖阻害試薬と抗ErbB2抗体の組み合わせた機能(共同薬理効果)のために低いであろう。
【0167】
疾患を予防又は治療するために、抗体の適当な投与量は、治療すべき上記の疾患のタイプ、疾患の重篤度及び原因、抗体が予防又は治療のいずれの目的で投与されるか、以前の治療、患者の臨床経過及び抗体に対する反応、及び担当医師の判断による。抗体は、一度にあるいは連続した治療に渡って患者に適当に投与される。
【0168】
疾患のタイプ及び重篤度に応じて、約1μg/kgから15mg/kg(例えば0.1-20mg/kg)の抗体が、例えば1またはそれ以上の別々の投与あるいは連続的な吸入のいずれであっても、患者への投与の最初の候補となる投与量である。典型的な日常の投与量は、約1μg/kgから100μg/kgまたはそれ以上であり、状況に応じて、治療は、疾患の徴候に所定の抑制が生ずるまで続けられる。この治療の進行は、従来の技術及び検定法によって容易に監視される。
【0169】
G.製造品
本発明の他の実施態様では、上述の状態の治療に有用な材料を含む製造品が提供される。この製造品は、容器とラベルとを含んでなる。好ましい容器は、例えば、ボトル、ガラス瓶、シリンジ、及び試験管を含む。この容器は、ガラスやプラスチックなどの種々の材料から形成してよい。この容器は、状態を治療するのに有効な組成物を保有し、無菌の出入り口を具備する(例えば、容器は、血管内溶液バッグまたは皮下用縫い針で貫通できるストッパーを有するガラス瓶であってもよい)。組成物中の活性剤は抗ErbB3抗体である。容器上の又は添付されたラベルは、組成物が選択した状態の治療に用いられることを示している。製造品は、リン酸塩緩衝塩水、リンガー溶液又は出来ストロース溶液などの生理学的に許容されるバッファーを収容した第二の容器を有してもよい。さらに、製造物は、他のバッファー、希釈液、フィルター、針、シリンジ、及び使用時に挿入されるパッケージを含む、商業的又は使用者の立場から望ましい他の材料を具備してもよい。
【0170】
H.材料の寄託
以下の生物学的材料は、American Type Culture Collection, 12301 Parklawn Drive, Rockville, MD, USA (ATCC) に寄託された。

抗体の表示 ATCC番号 寄託日
7C2 ATCC HB-12215 1996年10月17日
7F3 ATCC HB-12216 1996年10月17日
4D5 ATCC CRL 10463 1990年5月24日
【0171】
この寄託は、特許手続上の微生物寄託の国際的承認に関するブタペスト条約及びその規則(ブタペスト条約)に従って行った。これは寄託日から30年の間生存可能な培地を維持することを保証する。寄託した各々の培地は、ジェネンテック社とATCCとの合意を条件として、ブタペスト条約の条件に従ってATCCから入手可能であり、前記合意は(a)培地への接近は、特許出願が係属中は、特許庁長官が37 CFR §1.14及び35 USC §122に基づいて認めたものに可能であり、(b)このように寄託された培地の公衆への入手可能性に対する制限は、特許された時点で取り除かれることを保証する。
【0172】
特許出願の譲受人は、適当な条件で培養したときに、寄託に係る培地が脂肪又は喪失又は破壊された場合、通知を受けたら速やかに、同じ培地の生存可能な標品と置き換えることに同意する。寄託された細胞系の入手可能性は、あらゆる政府の権威のある機関がその特許法に従って許可した権利に反して発明を実施する許諾とは解釈されない。
【0173】
上述の明細書は、当業者が本発明を実施するのに十分であると考える。機能的に同等ないかなる抗体も本発明の範囲にあるので、本発明は寄託された抗体によってその範囲を制限されることはない。この材料の寄託は、ここに含まれる詳細な説明が、本発明のベストモードを含む全ての態様を実施するのに不十分であることを容認するものではなく、請求の範囲をそれが示す特定の例示に限定すると解釈すべきでもない。確かに、ここに示し述べたものに加えて、本発明の種々の変形が、これまでの説明から当業者には明らかになり、それらは添付した請求の範囲内にある。
【0174】
以下の実施例は説明を目的として提供され、限定を目的としていない。本明細書における全ての引用文献の開示は参考としてここに明白に取り込まれる。
【実施例】
【0175】
実施例1
細胞死の誘導

細胞系:確立したヒト乳ガン細胞BT474及びMDA-MB-231(ATCCから入手可能)を、10% 熱不活性化胎児ウシ血清(FBS)(HyClone,Logan,UT)、ピルビン酸ナトリウム、L-グルタミン(2mM)、必須でないアミノ酸及び2Xビタミン溶液を補った最小必須培地(Gibco,Grand Island,NY)で成育させ、5% COで37℃で維持した(Zhang et al.Invas.& Metas.11(4):204-215(1991)及びPrice et al.Cancer Res.50(3):717-721(1990))。
【0176】
抗体:ErbB2の細胞外ドメインに対して特異的な抗ErbB2 IgGκネズミモノクローナル抗体4D5及び7C2を、Fendly et al.Cancer Research 50:1550-1558(1990)及びWO 89/06692に記載されているように生産した。略記すると、Hudziak et al.Proc.Natl.Acad.Sci(USA)84:7159(1987)に記載されているように生産されたNIH 3T3/HER2-3400細胞(およそ1 X 105ErbB2分子/細胞を発現する)を、25mM EDTAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて回収し、BALB/cマウスを免疫化するために用いた。該マウスに、0,2,5及び7週で0.5ml PBSにおいて107細胞の静脈内の注射を与えた。32P-ラベルErbB2を免疫沈降する抗血清を有するマウスに、9及び13週でコムギ胚芽凝集素-Sepharose(WGA)精製ErbB2膜抽出物の静脈内注射を与えた。これに0.1mlのErbB2調製物の心室内注射が引き続き、脾臓細胞をマウスミエローマ系X63-Ag8.653を用いて融合した。ハイブリドーマ上清を、ELISA及びラジオイムノ沈降によってErbB2結合に対してスクリーニングした。MOPC-21(IgG1)(Cappell,Durham,NC)を、アイソタイプマッチコントロールとして用いた。
【0177】
細胞周期状態及び生存能の分析:FACSTAR PLUSTM(Becton Dickinson Immunocytometry System USA,San Jose,CA)上のフローサイトメトリーによって生存能及び細胞周期状態を調べるために、細胞を同時に調べた。乳ガン細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて単一層を洗浄することによって回収し、0.05% トリプシン及び0.53mM EDTA(Gibso)内に細胞をインキュベートし、そしてそれらを培養培地に再懸濁した。該細胞を1% FBSを含むPBSをもちいて二度洗浄し、該ペレットを50μlの400μM 7アミノアクチノマイシンD(7AAD)(Molecular Probes,Eugene,OR)、全ての透過性細胞を染色する生存色素を用いて氷上で30分インキュベートした。それから細胞を、1.0mlのPBS中に0.5% パラホルムアルデヒドを用いて固定し、5% TWEEN 20TMを含む220μlの10μg/ml HOECHST 33342TM色素(これもDNA結合色素である)を用いて4℃で16時間可溶化と染色を同時に実施した。
【0178】
1 X 10細胞由来のデータを集め、LYSYS IITMソフトウェアーを用いて貯蔵し、PAINT-A-GATETMソフトウェアー(Becton Dickinson)(Darzynkiewica et al.Cytometry 13:795-808(1992)及びPicker et al.J.Immunol.150(3):1105-1121(1993))を用いて分析した。細胞周期の各段階における細胞の生存能及びパーセンテージを、それぞれ7AAD及びHoechst染色を用いてゲート化単一細胞で測定した。(細胞二量体は、Hoechstシグナルの広さ vs 領域のパルス分析によって排除された。)細胞数を血球計算板を用いて測定した。
【0179】
DNA合成:8 X 10細胞/ウェルの三重のカルチャーを96穴平底プレートにおき、オーバーナイトで接着させ、それから異なる期間抗ErbB2またはコントロールIgの存在下または不存在下で継続的にインキュベートした。培養の最後の12時間の間、ウェルを1μCiH-チミジン(Amersham,Arlington,VA)を用いてパルスした。
【0180】
ErbB2の細胞外ドメインに対する結合のアフィニティー:放射性ヨウ素と結合した抗ErbB2抗体を、Iodoge法によって調製した(Fracker et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.80:849-857(1978))。結合アッセイを、96穴組織カルチャープレートで培養されたBT474細胞の単一層を用いて実施した(Falcon,Becton Dickenson Labware,Lincoln Park,N.J.)。該細胞をトリプシン処理し、10細胞/ウェルの密度で96穴プレートのウェルにまき、オーバーナイトで接着を許容した。該単一層を0.1%アジ化ナトリウムを補った冷却培養培地を用いて洗浄し、それから氷上で4時間0.1%アジ化物を有する冷却培養培地で125I-抗−ErbB2抗体の連続希釈物の100μlを用いて三重にインキュベートした。非特異的結合を100μlの全容量で非放射性活性抗体の100倍の過剰量を用いて各サンプルの沈降によって見積もった。非結合放射性活性を、0.1%アジ化ナトリウムを用いて冷却培地を用いた二度の洗浄によって除去した。細胞関連放射性活性を、150μl 0.1M NaOH/ウェルを用いて該細胞の可溶化の後ガンマカウンターで検出した。抗ErbB2結合定数(K)を、Scathcad分析によって測定した。
【0181】
結果:抗ErbB2抗体(7C2及び4D5)の結合アフィニティーを、Scatchard分析によって測定した。結合定数(K)は、6.5 X 10−9M(4D5)及び2.9 X 10−9M(7C2)であった。結合実験を、非ラベル抗体、引き続きFITC-7C2を用いて実施した。図2に示されているように、4D5は7C2とは異なるエピトープと反応する。
【0182】
それから、ErbB2を過剰発現するBT474ヒト乳ガン細胞の増殖に対するこれらの抗体の効果を調べた。図3Aは、アイソタイプマッチコントロールを用いてインキュベートした細胞のフローサイトメトリー分析の結果を示す。該細胞の10-12%は死に、生存細胞の28%は細胞周期のS-G-M期であった。同様な結果は、該細胞を培地単独でインキュベートした場合にも得られた。4D5を用いた処理(図3B)はコントロール細胞と比較して、前方光錯乱によって測定される細胞サイズの減少、死細胞の割合の穏やかな増大(27.0%)及びG0/G1の細胞の共同の増大(94%)を有するS-G2-Mの生存細胞の著しい減少(6.3%)を誘導する。細胞カウントは46.7%まで減少した。いかなる理論に裏付けられているわけでもないが、4D5はG0/G1における主要な細胞周期停止(CCA)を誘導するが、細胞の有意な割合の死もまた誘導するようである。図3Cは、50μg/mlの7C2を用いたBT474細胞のインキュベートの結果を示す。コントロール細胞と比較して残った生存細胞の前方光錯乱に変化はなく、死細胞の割合の著しい増加(72%)及び細胞カウントの70%の減少が存在した(データは示されていない)。それ故生存細胞は85%まで減少した。サイクリング細胞のわずかな減少(21% vs コントロールとして平均29%)が存在したが、過度の細胞死のため、サイクリング細胞の優先的な欠損からCCAを区別することは困難であった。それ故7C2及び4D5は別々に細胞に影響する;7C2は細胞死を優先的に誘導し、一夫で4D5はCCAを優先的に誘導する。図3Dは、BT474細胞に50μg/ml 7C2及び1μg/ml 4D5を同時に加えた結果を示す。7C2単独を用いて処理された細胞と比較して死細胞の割合に増加は存在しなかった(図3C)。しかしながら残余の生存細胞の数はさらに50%まで減少した。加えて、浸透性膜及び有意に分解したDNA(<1X)の両者を有する細胞の著しい増大が存在した。残余の生存細胞の少数の分析により、4D5単独を用いて処理された細胞と比較してサイクリング細胞の同様な減少が存在することが示された(図3Bと比較した図3D)。
【0183】
ErbB2の通常のレベルを発現するさらなるコントロール、MDA-MB-231乳ガン細胞(Lewis et al.Cancer Immunol.Immunther.37:255-263(1993))を、4D5または7C2を用いて処理した。コントロールと比較して、両抗体ともこれらの細胞の増殖に影響しなかった(S-G2-Mの生存細胞の27-28%及び死細胞の12-13%)。
【0184】
両抗体のさらなる効果は、4D5の最適以下の投与量(0.05μg/ml)が用いられた場合に明白に示された。図4Aは、チミジン取り込みが7C2及び4D5のそれぞれを用いて処理された細胞において22.3%及び23%まで減少し、4D5及び7C2を用いて処理された細胞において58%まで減少することを示す。20μg 7C2及び0.1μg 4D5を利用したさらなる実験は同様の結果を与えた、即ちチミジン取り込みは7C2単独、4D5単独または4D5プラス7C2のそれぞれを用いて処理された細胞において、41%,25%及び72%まで減少した。図4Bにおいて、生存細胞カウントが示されている。全細胞カウントが測定され、FACS分析が生存細胞の数を確立するために用いられた。生存細胞カウントは非処理コントロールと比較した場合、7C2,4D5または組み合わせを用いて処理された細胞において、64%,29%及び84%まで減少した。
【0185】
実施例2
アポトーシスの誘導

物質及び細胞カルチャー:全ての腫瘍細胞系は、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から得た。細胞を、10%熱不活性化胎児ウシ血清(FBS)(Hyclone)及び2mM L-グルタミンを補ったDulbecco's Modified Eagle Medium(D-MEM):Ham's F-12(50:50)で培養した。ヒト乳上皮細胞(HMEC)をCloneticsから得、ウシ下垂体抽出物を含むMEGM(乳上皮増殖培地、Clonetics)で増殖させた。生化学試薬は以下のものを用いた:アネキシンV−FITC(Bio Whittaker,Inc)、プロピジウムイオダイド(PI,Molecular Probes,Inc.)、及びHOECHST 33342TM(Calbiochem)。抗ErbB2モノクローナル抗体(MAb)を、Fendly et al.Cancer Research 50:1550-1558(1990)及びWO 89/06692に記載のように生産した(上記実施例1参照)。試験された抗ErbB2 MAb配下の名称であった:4D5,7C2,7F3,3H4,2C4,2H11,3E8及び7D3。アイソタイプマッチコントロールMAb 1766は、単純ヘルペスウイルス(HSV-1)グリコプロテインDに対して向けられている。
【0186】
アポトーシスの誘導を測定するためのフローサイトメトリー分析:細胞を、100 X 20mm皿に3 X 106/皿の密度でまき、オーバーナイトで付着させた。それから該培地を除去し、新鮮な培地単独または10μg/mlの適切なMAbを含む培地と交換した。ほとんどの実験について、細胞を3日間インキュベートした。タイムコース研究のために細胞を、0.25,0.5,1,2,24,72,96時間,7または10日間処理した。量応答性実験で用いられるMAbの濃度は、0.01,0.1,1及び10μg/mlであった。各処理に引き続き、上清を個々に回収し、氷上におき、単一層をトリプシン処理によって分離し、相当する上清を用いてプールした。それから細胞を4℃で5分1200rpmで遠心分離し、該ペレット3ml冷氷Ca2+結合バッファー(10mM Hepes,pH7.4,140mM NaCl,2.5mM CaCl)を再懸濁し、細胞凝集物の除去のために35mm濾過キャップ12 X 75チューブ(1ml/チューブ、3チューブ/処理群)内に分割した。それから3のチューブの各群に、アネキシンV−FITC(1μg/ml)またはPI(10μg/ml)またはアネキシンV−FITCプラスPIを与えた。サンプルを、FACSCANTMフローサイトメトリー及びFACSCONVERTTM CellQuestソフトウェアー(Becton Dickinson)を用いて分析した。細胞周期分析のために、細胞を37℃で2時間9μg/ml HOECHST 33342TMを用いて分析し、それからMODFIT LTTMソフトウェアー(Verity Software House)を用いてEPICS ELITETMフローサイトメーター(Coulter Corporation)上で分析した。
【0187】
血清除去実験を以下の方法で実施した。BT474乳ガン細胞を、100 X 20mm皿上で5 X 106/皿の密度で培養培地にまいた。引き続く日、該培地を0.1% FBSを含む培地と交換し、該細胞を3日間インキュベートした。それから細胞に0.1% FBSを補った新鮮な培地で10μg/mlのMAb 7C2または4D5を与えた。3日間のインキュベーションの後、アネキシンV結合、PI取り込み及び細胞周期進行の分析を上記記載のように実施した。非由来細胞に対する血清枯渇細胞の増殖を比較するために、全ての時間時点で10% FBSを補った培地でインキュベートされたBT474細胞の別々の皿をパラレルに研究した。
【0188】
DNAラダー形成の検出:DNAのヌクレオソーム内断片化を測定するために、BT474乳ガン細胞をまき、上記記載のように10μg/ml MAb 4D5または7C2を用いて3日間処理した。DNAを抽出し、32P末端ラベルし、5μg/mlのエチジウムブロマイドを含む2%アガロースゲルで移動させた。それから該ゲルを乾燥させ、Kodakフィルムに露光した。アポトーシスの指標であるDNAラダーの形成を、3日間10μg/ml MAb 7C2またはMAb 4D5を用いて処理したBT474乳ガン細胞で観察した。
【0189】
電気的ミクログラフィー研究:BT474細胞を3日間10μg/ml MAb 7C2を用いて処理し、それから0.1M カコジル酸バッファーにおいて1.25% ホルムアルデヒド/1% グルタルアルデヒドに固定した。固定後処理を、カコジル酸バッファーにおける2% オスミニウムテトロキシドで実施した。それから固定化バッファーを酢酸ウラシルで末端ブロック染色し、エタノールの勾配化濃度で脱水し、Eponetにおいた。切片をミクロトーンを利用してカットし、Philips CM12TM電子顕微鏡の下で観察した。アポトーシス細胞の典型である核と細胞質の凝縮を示す高凝集細胞を、MAb 7C2を用いた処理の後観察した。アポトーシス性細胞は次第に、下にある細胞によって食作用された。
【0190】
実施された実験の結果が、図5−14に示されている。特定の抗ErbB2 MAbは、電子顕微鏡、アネキシンV結合、DNA含有量の細胞周期分析、DNAラダー化及び維持露出ビデオミクログラフィーによって証明されるErbB2を過剰発現するヒト腫瘍細胞系におけるアポトーシスを誘導する。抗ErbB2 MAb 7C2及び7F3は、ErbB2細胞外ドメイン上の同じエピトープを認識し、最も効果的なプロアポトーシス効果を示す。抗ErbB2 MAb 4D5は、異なるErbB2エピトープを認識し、増殖におけるその効果的な減少に加えて少量のアポトーシスを誘導する。7C2または4D5によるアポトーシス性細胞死の誘導は、細胞周期とは独立のように思われる。血清枯渇または4D5を用いた処理のそれぞれ、それに引き続く7C2を用いた処理による増殖の阻害は、該培養物の完全な細胞死を引き起こしうる。
【0191】
実施例3
卵巣細胞のアポトーシス及び組み合わせ治療

方法:SKOV3卵巣ガン細胞を20 X 100mm皿に10/皿の密度でまき、2-3日間付着させた。それから該培地を除去し、新鮮な培地単独または適切な抗HER2 MAbを含む培地と置換した。単一のMAbを用いた処理についての研究のため、細胞を3日間10μg/ml MAb 7C2または4D5を用いてインキュベートした。抗体組み合わせ処理のため、BT474細胞を0.25または0.5μg/ml MAb 7C2を用いて24時間最初に処理した。この処理に引き続き、10μg/ml MAb 4D5を加え、該細胞を3日間以上インキュベートした。核処理に引き続き、上清を個々に回収し、氷上におき、単一層をトリプシン処理によって分離し、相当する上清を用いてプールした。それから細胞を4℃で5分1200rpmで遠心分離し、該ペレットを氷冷Ca2+結合バッファー(10mM Hepes,pH7.4,140mM NaCl,2.5mM CaCl)において再懸濁し、35mm濾過キャップ12 X 75チューブ内に分割した。細胞を1μg/mlアネキシンV−FITC及び10μg/mlプロピジウムイオダイド(ぴ)を用いて染色し、FACSCONVERT CELLQUESTTMソフトウェアー(Becton Dickinson)を用いてFACScanフローサイトメーターで分析した。
【0192】
卵巣細胞におけるアポトーシスの誘導:MAb 7C2を用いた処理の3日後残存生存(アネキシンVネガティブ/PIネガティブ)のパーセントは、SKOV3卵巣ガン細胞系において48%(アネキシンV結合における3.8倍の増大)まで減少した。
組み合わせ治療:MAb 7C2及び4D5の連続的な添加によるアポトーシスの誘導は、それぞれの抗体単独と比較してさらなる効果を導く(図16)。0.5μg/ml MAb 7C2、引き続き10μg/ml MAb 4D5を用いたBT474乳ガン細胞の処理は、MAb 4D5または7C2単独のそれぞれを用いた68%または29.1%のそれぞれと比較して、12%に生存(アネキシンVネガティブ/PIポジティブ)細胞の減少を引き起こす。このさらなる効果はまた、最適以下の投与量のMAb 7C2を用いても見られ、その場合0.25μg/ml 7C2プラス10μg/ml 4D5を用いた処理はMAb 4D5単独に対して68%及び7C2単独に対して77%と比較して、37.5%まで生存細胞の減少を導く。MAb 7C2及び4D5の同時の添加、または7C2の前にMAb 4D5の添加は、細胞死のさらなる効果を導かないようである。それ故いかなる理論に支えられるわけではもないが、Mab 7C2それからMAb 4D5の連続的な添加は、増大したアポトーシス効果を達成するために重要であろう。
【0193】
実施例4
抗HER2抗体のin vivo効果

HER2過剰発現ヒト乳ガンの異種移植片モデルを、HER2過剰発現腫瘍に関する抗HER2 MAbの効果を評価するために確立した。該モデルは、ヌードマウスBT474M1における増殖のためにin vivoで選択されたBT474細胞系を用いる。腫瘍を有するマウスを一週間に二度、モノクローナル抗体4D5,7C2または7F3あるいは7C2か7F3と4D5の組み合わせを用いて処理した。腫瘍増殖を一週間に二度腫瘍サイズを測定することによって評価した。4D5モノクローナル抗体は、BT474M1細胞系由来のHER2過剰発現異種移植片腫瘍に対して有意な増殖阻害効果を有した。これらの結果は、以前に印刷された結果と同じである。モノクローナル抗体7C2及び7F3は、試験された投与量でそれら自身に対して穏やかな増殖阻害効果を有し、4D5の増殖阻害効果を有意に増大した。該抗体の全てが該動物に対していかなる毒性効果をも示さなかった。
【0194】
動物モデル:NDR.nu/nuマウス(同種接合体のメス、4週齢)を、腫瘍の増殖をサポートするために0.752mg持続放出17βエステラジオールペレットを用いて皮下に移植した。動物をエストロゲン移植の後24時間で、MATRIGELTMにおいて500万のBT474腫瘍細胞を用いて皮下注射によってイノキュレートした。動物を健康状態について毎日モニターし、腫瘍を週に二度測定した。腫瘍測定についての報告を、それらを集めるために提供した。研究の間の毒性を評価するために、動物を毎日体重測定した。105の動物をイノキューレートし、全ての動物が研究において評価された。
【0195】
処理プロトコール:動物を7の処理群(15動物/群)の一つにランダムに分けた。処理を腫瘍のイノキュレーションの後6日に始めた。全ての動物の腫瘍サイズ及び各処理群に対する平均腫瘍サイズを、群の間で一致を確認するために治療の開始前に測定した。治療群は以下の通りであった:
1) ビークルコントロール注射−週に二度腹腔内(IP)による100μl
2) 無関係の抗体(αgp120)(アイソタイプマッチ)−週に二度100μl IPで10mg/kg
3) MAb 7C2−週に二度IP注射による100μlで10mg/kg
4) MAb 7F3−週に二度IP注射による100μlで10mg/kg
5) MAb 4D5−週に二度IP注射による100μlで10mg/kg
6) MAb 7C2(10mg/kg)+MAb 4D5(101mg/kg)−毎週IP注射による100μl中
7) MAb 7F3(10mg/kg)+MAb 4D5(101mg/kg)−毎週IP注射による100μl中
【0196】
全ての処理群を腹腔内注射によって全部で10処理を週に二度処理した。処理群1-4は、大きな腫瘍細部のためこの時点で除去した。処理群5,6及び7は継続し、全部で16抗体治療を受けた。該研究を通じて、動物をその健康状態について毎日、腫瘍測定について週に二度、及び体重について毎週モニターした。個々の動物のデータ及び処理群による平均データを、入手可能なように提供した。
【0197】
実験の終結:治療の終結の後、治療群1-4の動物は、これらの治療群内の大きな腫瘍サイズのため除去した。腫瘍の大きさは、4gms(4,000mm)を越えなかった。有意な体重の減少を有する動物は観察されず、治療の開始時点の体重から体重の15%の減少より大きい体重の減少をしたものは全く観察されなかった。実験の終結時に、全ての動物が除去された。
【0198】
結果:HER2増殖因子レセプターに向けられたモノクローナル抗体4D5,7C2及び7F3が、HER2レセプターを過剰発現するマウス異種移植片モデルにおいて用いられた。抗体は単独、及びアポトーシス抗体(7C2及び7F3)と増殖阻害抗体(4D5)の組み合わせにおいて用いられた。アポトーシス抗体(7C2及び7F3)は研究に早期において増殖阻害効果を有し、それは後の時間点で失われた(図17)。増殖阻害抗体4D5は、以前の研究で報告されているように該研究を通じて著しい増殖阻害効果を有した。7C2または7F3のそれぞれと4D5の組み合わせは、増殖阻害効果を有意に発揮し、4D5/7C2が最良の組み合わせであった。4D5単独処理群での一つの完全な回復と、4D5/7C2処理群における一つの完全な回復が存在した。抗体コントロール群(抗gp120 MAb)は、塩水処理コントロール群と同等であった。体重は腫瘍イノキュレーションの後初めに増大し、それから該研究の残りを通じて維持されていた。該抗体は全て、該動物に対するいかなる毒性効果をも示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】図1A及びBは、それぞれ細胞に対するアポトーシスの効果、及びアポトーシスを測定する方法を示す。図1Aは、プログラムされた細胞死(アポトーシス)を受ける細胞で生じる生理学的変化を示す。図1Bは、細胞膜の内側葉状部から細胞の外側へのホスファチジルセリン(PS)の膜貫通を示す。このPS膜貫通は工程は、アポトーシスを受ける細胞に対して特異的である。アネキシンVはPSに対して特異的に結合し、それ故アポトーシスを測定する手段を提供する。
【図2】図2は、抗ErbB2抗体のエピトープ特異性を示す。mAbをBT474細胞に対する7C2の結合をブロックするために用いた。50μgの抗ErbB2抗体で前処理されたものとされないもののBT474細胞(0.5 X 10)(氷上で15分)を二度洗浄し、0.1mlの1% FBS/PBSに再懸濁し、7C2抗体を接合した5μgのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)を用いてインキュベートした(氷上で15分)。インキュベーションに引き続き、非結合フルオロクロムを除去するために該細胞懸濁液を1% FBS/PBSを用いて二度洗浄し、1% パラホルムアルデヒド/PBSを用いて固定し、フローサイトメトリーによって分析した。
【図3】図3A−Dは、ErbB2を過剰発現するヒト乳ガン細胞に対する抗ErbB2抗体の効果を示す。回収の時間で通常の膜機能を有する細胞(「生存」細胞)はDNA色素7AADを排除し、膜の透過性化の後好ましくはHoechstを用いて染色した。これらの細胞の分析により、細胞周期のG/G期(メジャーピーク)及びS-G-M期(ダブルの矢印で示されている)での細胞を用いて古典的DNAプロフィール(最右のパネル)が明らかにされる。中央のパネルにおいては、矢印によって示された細胞の集団は細胞死を表し、その中のあるものは回収時に異常な浸透性性質を有し、その核DNAを分解していた。4 X 10 BT474細胞/mlを、アイソタイプマッチコントロールIg(図3A)、1μgのモノクローナル4D5(図3B)、50μgのモノクローナル7C2(図3C)、または1μgの4D5抗体+50μgの7C2抗体(図3D)を含む培地中で72時間インキュベートした。死細胞のパーセンテージが中央のパネルに示されており(7AADフルオレセイン vs Hoechstフルオレセイン)、細胞周期のS,G及びM期を組み合わせた生存細胞のパーセンテージが右のパネルに示されている(Hoechstフルオレセイン vs 細胞カウント)。左のパネルは、前方及び右角度光スキャッターによって測定された細胞のサイズを示す。
【図4】図4A及びBは、DNA合成に対する4D5及び7C2抗体の付加効果、及びBT474細胞における生存能を示す。2の実験の平均±S.D.が示されている。図4Aにおいて、8 X 10細胞/0.2ml/ウェルが72時間かけて4D5(0.05μg/ml)及び/または7C2(50μg/ml)を用いて処理され、最後の12時間で1μCi[3H]-チミジンを用いてパルスされた(三重で)。図4Bにおいて、細胞生存能について、全細胞カウントが得られ、生存能がFACS分析によって測定された。7C2及び7C2プラス4D5処理の両者に対する標準偏差は、図において示されないほど小さかった(1 X 10細胞)。
【図5】図5A−Fは、BT474乳ガン細胞における抗ErbB2 MAb 7C2及び4D5によるアポトーシスの誘導を示す。図5A、5C及び5Eは、細胞サイズを示す前方スキャッター(FS) vs logFITC(アネキシンV結合を表す)のプロットを示す。図5B、D及びFは、logFITC vs logプロピジウムイオダイン(PI)の四分割プロットであり、パーセントアネキシンVポジティブ細胞が第四分割に示され、パーセントアネキシンV/PIポジティブ細胞が第二分割に示されている。非処理細胞は、いびつな円内に示されているように均一なサイズと蛍光シグナルを示し、85%生存である(図5A)。低アネキシンV結合を示すのに加えて、これらの細胞はPIを取り込まず、膜完全性において変化のないことを示す。10μg/ml MAb 7C2を用いた3日間の処理により生存細胞のパーセントの減少が引き起こされ(25.3%に、図5E)、より小さいFITCポジティブ細胞集団へのほぼ完全な集団のシフトが引き起こされる(図5E)。図5Fに示されるようにMAb 7C2は、アネキシンVポジティブ/PIポジティブ細胞のパーセントの7-8倍の増加を誘導し、アポトーシス性細胞死を示す。抗増殖MAb、4D5は、小さい程度のアポトーシスを示す(コントロールの2.5倍、図5C及びD)。
【図6】図6は、MAb 7C2の効果が量依存的であることを示す。アネキシンVポジティブ及びPIポジティブ細胞の数の増加によって測定される、MAb 7C2によるBT474乳ガン細胞のアポトーシスの誘導は0.1μg/mlの濃度で明らかであり、最大1μg/mlに到達する。
【図7】図7A及び7Bは、それぞれBT474及びSKBR3乳ガン細胞におけるMAb 7C2誘導アポトーシスのタイムコースである。10μg/ml MAb 7C2を用いたBT474(図7A)及びSKBR3細胞(図7B)の処理は、処理の開始の後15分程度で生存細胞(アネキシンV及びPIネガティブである細胞)のパーセントの減少を引き起こし、24時間で最大に到達する。BT474細胞系は、SKBR3細胞と比較してMAb 7C2のプロアポトーシス効果に対してより感受性である。
【図8−1】図8A−Eは、抗ErbB2 MAbに対する様々な細胞系の反応を示す。BT474,SKBR3及びMCF7乳ガン細胞系、並びに通常ヒト乳上皮細胞(HMEC)(それぞれ図8A−D)を、抗ErbB2 MAb 4D5,3H4,7F3,7C2,2H11,3E8及び7D3;muMAb 4D5のヒト化バージョン(hu4D5);またはアイソタイプマッチ可逆的コントロールMAb 1766を用いてインキュベートした。処理は10μg/mlのMAb濃度で3日間であった。データは2-9の別々の実験をプールし、コントロール細胞に対するアネキシンV結合の平均の倍の増大(+/-s.e.)で表される。MAb 7C2及び4D5に対するBT474乳ガン細胞の反応は図5について記載されているものと同様である(それぞれコントロールに対して9倍及び2.5倍)。BT474細胞に対するのと同様に高レベルのErbB2を発現するSKBR3乳ガン細胞系におけるアポトーシスの誘導もまた、MAb 7C2(及び同程度でMAb 4D5)を用いた処理の後生じる。さらにMAb 7F3は、BT474とSKBR3細胞系の両者でアポトーシスを誘導する。通常のErbB2レベルを発現するMCF7乳ガン系、及びHMECは、抗ErbB2 MAbを用いた処理の後アネキシンVの変化を示さなかった。これらの結果は、ErbB2の過剰発現が抗ErbB2 MAbに対する応答性について必要とされることを示唆する。図8Eでは、ErbB2を過剰発現する非小細胞肺ガン腫系、Calu3を、抗ErbB2 MAbによるアポトーシスの誘導について試験した。7C2または7F3を用いた処理により、アネキシンVの増大した結合が引き起こされた。
【図8−2】図8A−Eは、抗ErbB2 MAbに対する様々な細胞系の反応を示す。BT474,SKBR3及びMCF7乳ガン細胞系、並びに通常ヒト乳上皮細胞(HMEC)(それぞれ図8A−D)を、抗ErbB2 MAb 4D5,3H4,7F3,7C2,2H11,3E8及び7D3;muMAb 4D5のヒト化バージョン(hu4D5);またはアイソタイプマッチ可逆的コントロールMAb 1766を用いてインキュベートした。処理は10μg/mlのMAb濃度で3日間であった。データは2-9の別々の実験をプールし、コントロール細胞に対するアネキシンV結合の平均の倍の増大(+/-s.e.)で表される。MAb 7C2及び4D5に対するBT474乳ガン細胞の反応は図5について記載されているものと同様である(それぞれコントロールに対して9倍及び2.5倍)。BT474細胞に対するのと同様に高レベルのErbB2を発現するSKBR3乳ガン細胞系におけるアポトーシスの誘導もまた、MAb 7C2(及び同程度でMAb 4D5)を用いた処理の後生じる。さらにMAb 7F3は、BT474とSKBR3細胞系の両者でアポトーシスを誘導する。通常のErbB2レベルを発現するMCF7乳ガン系、及びHMECは、抗ErbB2 MAbを用いた処理の後アネキシンVの変化を示さなかった。これらの結果は、ErbB2の過剰発現が抗ErbB2 MAbに対する応答性について必要とされることを示唆する。図8Eでは、ErbB2を過剰発現する非小細胞肺ガン腫系、Calu3を、抗ErbB2 MAbによるアポトーシスの誘導について試験した。7C2または7F3を用いた処理により、アネキシンVの増大した結合が引き起こされた。
【図8−3】図8A−Eは、抗ErbB2 MAbに対する様々な細胞系の反応を示す。BT474,SKBR3及びMCF7乳ガン細胞系、並びに通常ヒト乳上皮細胞(HMEC)(それぞれ図8A−D)を、抗ErbB2 MAb 4D5,3H4,7F3,7C2,2H11,3E8及び7D3;muMAb 4D5のヒト化バージョン(hu4D5);またはアイソタイプマッチ可逆的コントロールMAb 1766を用いてインキュベートした。処理は10μg/mlのMAb濃度で3日間であった。データは2-9の別々の実験をプールし、コントロール細胞に対するアネキシンV結合の平均の倍の増大(+/-s.e.)で表される。MAb 7C2及び4D5に対するBT474乳ガン細胞の反応は図5について記載されているものと同様である(それぞれコントロールに対して9倍及び2.5倍)。BT474細胞に対するのと同様に高レベルのErbB2を発現するSKBR3乳ガン細胞系におけるアポトーシスの誘導もまた、MAb 7C2(及び同程度でMAb 4D5)を用いた処理の後生じる。さらにMAb 7F3は、BT474とSKBR3細胞系の両者でアポトーシスを誘導する。通常のErbB2レベルを発現するMCF7乳ガン系、及びHMECは、抗ErbB2 MAbを用いた処理の後アネキシンVの変化を示さなかった。これらの結果は、ErbB2の過剰発現が抗ErbB2 MAbに対する応答性について必要とされることを示唆する。図8Eでは、ErbB2を過剰発現する非小細胞肺ガン腫系、Calu3を、抗ErbB2 MAbによるアポトーシスの誘導について試験した。7C2または7F3を用いた処理により、アネキシンVの増大した結合が引き起こされた。
【図9】図9A−Iは、細胞周期進行及び細胞死に対するMAb 7C2及び4D5の効果を示す。非処理BT474細胞は主にアネキシンVネガティブ及びPIネガティブであり(図9A、第三分割)、通常の細胞周期DNAヒストグラムを示す(図9B及びC)。10μg/ml MAb 4D5を用いて試験された細胞は、PIの取り込み及びアネキシンV−FITC結合の増大を示す(図9D、第二分割)。ほとんどの主張される効果は細胞周期に関するものである一方、MAb 4D5はほとんど完全にS期における細胞のパーセントを減少する(図9E及びF)。MAb 7C2は、PI取り込み及びアネキシンV−FITC結合によって測定されるBT474における有意な量の細胞死を誘導する(図9G、第二分割)。細胞周期分析により、サブG/Gまたは低二倍体集団の存在(図9I)、アポトーシス細胞の特徴が示され、該細胞が高レベルのアネキシンV結合を示した(図9H、第一分割)。
【図10】図10A−Fは、図9A−IのDNAヒストグラムの曲線フィット分析由来の結果であり、コントロール細胞(61% S期細胞)と比較してMAb 7C2処理の後のS期(52%)における細胞の存在の変化がほとんどないことを示すが、Mab 4D5に応答してS期の細胞数の劇的な減少(6%まで)を示す(それぞれ図10C、AおよびB)。細胞のアポトーシス集団の分析(第二分割由来のアネキシンV/PIポジティブ細胞、図9A、D及びG)により、全細胞集団と比較してパーセントS期細胞において差異がないことが明らかにされる(図10D、コントロール=55%;図10E、MAb 4D5=7%;図10F、MAb 7C2=56%)。さらに、G/G及びG/M期は変化せず(図10AとD、BとE、CとFを比較)、細胞が全ての周期で細胞周期を促進し、MAb誘導アポトーシス性細胞死が細胞周期特異性ではないことを示す。
【図11】図11A及びBは、MAb 7C2誘導性アポトーシスが増殖停止によって増大することを示す。細胞周期研究由来のデータに加えて、ビデオによる時間的な記録から、MAb 7C2処理細胞の集団が増殖を続ける一方、他の者はアポトーシスを受けることが観察された。それ故、細胞増殖の阻害がMAb 7C2のプロアポトーシス活性を増大するかどうかを測定するための実験が実施された。BT474細胞は増殖停止を誘導するために3日間血清を枯渇され、それから3日間10μg/mlのMAb 7C2または4D5を用いて処理され、生存能(アネキシンV−FITC結合及びPI取り込み)と同様に細胞周期効果を分析された。S期細胞の存在が33%(10% FBS中)から10%に減少したことによって示されるように、血清枯渇(0.1%FBSを補った培地でのインキュベーション)は増殖を効果的に減少した(図11A)。MAb 4D5の潜在的な抗増殖活性は、以前の増殖停止によってさらには増大されない。MAb 7C2処理細胞における血清枯渇の存在及び不存在でのS期における細胞の大きさはコントロールと同様であった。図11Bは、血清枯渇が非処理細胞の細胞生存能に逆方向に影響しないことを示す。しかしながら生存能は、血清枯渇の期間の後10μg/ml MAb 4D5を用いて処理されたBT474細胞において55%に減少する。さらに10μg/mlのMAb 7C2を用いた増殖停止細胞の処理は、ほとんど完全に全カルチャーを全滅させ、その場合アネキシンVネガティブ及びPIネガティブ細胞のパーセントは10%に減少する。
【図12】図12は、ErbB2のドメイン1のアミノ酸配列を下線で示す(配列番号1)。太字のアミノ酸は、欠失マッピングによって決定されたMAb 7C2及び7F3によって認識されるエピトープの位置、即ち「7C2/7F3エピトープ」を示す(配列番号2)。
【図13】図13は、トランケーションミュータント分析及びサイトディレクトミュータジェネシスによって測定されるErbB2の細胞外ドメインのエピトープマッピングを示す(Nakamura et al.J.of Virology 67(10):6179-6191(1993年10月);Renz et al.J.Cell Biol.125(6):1395-1406(1994年1月))。プロアポトーシス性MAb 7C2及び7F3はレセプターのN末端でエピトープを結合し、一方で抗増殖MAb 4D5及び3H4は膜貫通ドメインに隣接して結合する。様々なErbB2-ECDトランケーションまたはポイントミューテーションが、ポリメラーゼ連鎖反応法を用いてcDNAから調節された。ErbB2ミューテーションは、哺乳動物発現プラスミドにおけるgD融合タンパク質として発現された。この発現プラスミドは、SV40ターミネーションを有するサイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサー、及び挿入されたcDNAの下流に位置するポリアデニル化シグナルを用いる。プラスミドDNAを293S細胞内にトランスフェクトした。トランスフェクションに引き続く日に該細胞を、1%透析ウシ血清、並びに35Sメチオニン及び35Sシステインのそれぞれを25μCi含むメチオニン及びシステインフリー低グルコースDMEMでオーバーナイトで代謝的にラベルした。上清を回収し、ErbB2 MAbまたはコントロール抗体のそれぞれを該上清に加え、4℃で2-4時間インキュベートした。該複合体を沈降し、10-20% Tticine SDS勾配ゲルにアプライし、100Vで電気泳動した。該ゲルを膜上に電気溶出し、オートラジオグラフィーによって分析した。
【図14−1】図14A−Eは、抗ErbB2 MAbの効果はエピトープ特異性であることを示す。抗ErbB2 MAbの抗増殖またはプロアポトーシス効果がエピトープ特異性に関連しているかどうかを測定するために、BT474細胞を3日間異なるMAbを用いて処理し、細胞周期分析のためにHoechst 33342を用いて染色した。該MAbは以下のものであった:ErbB2細胞外ドメイン上のアミノ酸22-53(配列番号2)を結合する7C2及び7F3(それぞれ図14B及びC);529-625残基(配列番号4)を結合する4D5(図14D);及びアミノ酸541-599(配列番号3)を結合する3H4(図14E)。7C2と7F3の両者はアポトーシスを誘導する(細胞集団のそれぞれ60.5%及び53.4%まで)が、非処理細胞(52.5%;図14A)と比較してS期細胞の集団を減少しなかった(それぞれ64.9%及び58.7%)。対照的にErbB2膜貫通領域に隣接して結合するMAb 4D5及び3H4は潜在的な抗増殖活性を示す(それぞれ%S=5.4及び10.5、コントロールS=52.5%)が、アポトーシス性細胞死を促進する点では7C2及び7F3のように効率的ではなかった(4D5に対する%アポトーシス=41.9、3H4=26.3、コントロール=15.8%)。
【図14−2】図14A−Eは、抗ErbB2 MAbの効果はエピトープ特異性であることを示す。抗ErbB2 MAbの抗増殖またはプロアポトーシス効果がエピトープ特異性に関連しているかどうかを測定するために、BT474細胞を3日間異なるMAbを用いて処理し、細胞周期分析のためにHoechst 33342を用いて染色した。該MAbは以下のものであった:ErbB2細胞外ドメイン上のアミノ酸22-53(配列番号2)を結合する7C2及び7F3(それぞれ図14B及びC);529-625残基(配列番号4)を結合する4D5(図14D);及びアミノ酸541-599(配列番号3)を結合する3H4(図14E)。7C2と7F3の両者はアポトーシスを誘導する(細胞集団のそれぞれ60.5%及び53.4%まで)が、非処理細胞(52.5%;図14A)と比較してS期細胞の集団を減少しなかった(それぞれ64.9%及び58.7%)。対照的にErbB2膜貫通領域に隣接して結合するMAb 4D5及び3H4は潜在的な抗増殖活性を示す(それぞれ%S=5.4及び10.5、コントロールS=52.5%)が、アポトーシス性細胞死を促進する点では7C2及び7F3のように効率的ではなかった(4D5に対する%アポトーシス=41.9、3H4=26.3、コントロール=15.8%)。
【図14−3】図14A−Eは、抗ErbB2 MAbの効果はエピトープ特異性であることを示す。抗ErbB2 MAbの抗増殖またはプロアポトーシス効果がエピトープ特異性に関連しているかどうかを測定するために、BT474細胞を3日間異なるMAbを用いて処理し、細胞周期分析のためにHoechst 33342を用いて染色した。該MAbは以下のものであった:ErbB2細胞外ドメイン上のアミノ酸22-53(配列番号2)を結合する7C2及び7F3(それぞれ図14B及びC);529-625残基(配列番号4)を結合する4D5(図14D);及びアミノ酸541-599(配列番号3)を結合する3H4(図14E)。7C2と7F3の両者はアポトーシスを誘導する(細胞集団のそれぞれ60.5%及び53.4%まで)が、非処理細胞(52.5%;図14A)と比較してS期細胞の集団を減少しなかった(それぞれ64.9%及び58.7%)。対照的にErbB2膜貫通領域に隣接して結合するMAb 4D5及び3H4は潜在的な抗増殖活性を示す(それぞれ%S=5.4及び10.5、コントロールS=52.5%)が、アポトーシス性細胞死を促進する点では7C2及び7F3のように効率的ではなかった(4D5に対する%アポトーシス=41.9、3H4=26.3、コントロール=15.8%)。
【図15】図15は、実施例3で測定されるようなSKOV3卵巣ガン細胞系における抗HER2 MAb 7C2によるアポトーシスの誘導を示す。
【図16】図16は、抗HER2 MAb 7C2が抗HER2 MAb 4D5の前に投与される場合に、抗HER2 MAbを用いた組み合わせ処理がBT474乳ガン細胞に対する増大されたアポトーシス効果を引き起こすことを示す(実施例3参照)。
【図17】図17は、実施例4に記載されるヌードマウスにおける、平均腫瘍容量(mm3)+/-1 BT474M1異種移植片のS.E.に対する、抗HER2 MAb単独または組み合わせの投与の効果を示す。抗体は6日目から弱く始めて2度投与した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ErbB2のドメイン1に結合する単離された抗体。
【請求項2】
ErbB2上のエピトープ7C2/7F3に結合する請求項1の抗体。
【請求項3】
ErbB2を過剰発現する細胞の死を誘導する請求項1の抗体。
【請求項4】
アポトーシスを介して細胞死を誘導する請求項3の抗体。
【請求項5】
モノクローナル抗体である請求項1の抗体。
【請求項6】
非ヒト相補性決定領域(CDR)残基及びヒトフレームワーク領域(FR)残基を有する請求項1の抗体。
【請求項7】
ラベル化された請求項1の抗体。
【請求項8】
固相上に固定化された請求項1の抗体。
【請求項9】
ErbB2に結合し、ErbB2を過剰発現する細胞のアポトーシスを誘導する単離された抗体。
【請求項10】
該細胞がBT474細胞である請求項9の抗体。
【請求項11】
該細胞がSKBR3細胞である請求項9の抗体。
【請求項12】
該細胞がCalu3細胞である請求項9の抗体。
【請求項13】
抗体7C2の相補性決定領域(CDR)を有する請求項1の抗体。
【請求項14】
抗体7F3の相補性決定領域(CDR)を有する請求項1の抗体。
【請求項15】
請求項1の抗体及び製薬学的に許容できるキャリアーを含む組成物。
【請求項16】
ErbB2のドメイン1に結合しない第二の抗ErbB2抗体をさらに含む請求項15の組成物。
【請求項17】
ErbB2を結合し、細胞カルチャーにおけるSKBR3細胞の増殖を50-100%まで阻害する第二の抗体をさらに含む請求項15の組成物。
【請求項18】
該第二の抗体がErbB2上のエピトープ4D5に結合する請求項17の組成物。
【請求項19】
該第二の抗体が抗体4D5の相補性決定領域(CDR)を有する請求項18の組成物。
【請求項20】
滅菌されている請求項15の組成物。
【請求項21】
請求項1の抗体をコードする核酸。
【請求項22】
請求項21の核酸を含むベクター。
【請求項23】
請求項21の核酸を含む宿主細胞。
【請求項24】
抗体7C2または7F3を生産するハイブリドーマ細胞系である請求項23の宿主細胞。
【請求項25】
抗ErbB2抗体が発現されるように請求項23の宿主細胞を培養し、該宿主細胞カルチャーから抗ErbB2抗体を回収することを含む抗ErbB2抗体の作成法。
【請求項26】
請求項1の抗体にErbB2を含む疑いのある細胞をさらし、該細胞に対する上記抗体の結合を測定することを含むErbB2の存在の測定法。
【請求項27】
請求項1の抗体、及びErbB2を検出するために該抗体を使用するための説明書を含むキット。
【請求項28】
請求項1の抗体の有効量にErbB2を過剰発現する細胞をさらすことを含む細胞死の誘導法。
【請求項29】
該細胞がガン細胞である請求項28の方法。
【請求項30】
該細胞が哺乳動物内に存在する請求項28の方法。
【請求項31】
該哺乳動物がヒトである請求項30の方法。
【請求項32】
ErbB2のドメイン1に結合しない第二の抗ErbB2抗体に該細胞をさらすことをさらに含む請求項28の方法。
【請求項33】
ErbB2を結合し、細胞カルチャーにおけるSKBR3細胞の増殖を50-100%まで阻害する第二の抗体に該細胞をさらすことをさらに含む請求項28の方法。
【請求項34】
該細胞を、該細胞が該第二の抗体にさらされる前に、ErbB2のドメイン1に結合する抗体にさらす請求項33の方法。
【請求項35】
該第二の抗体がErbB2上のエピトープ4D5に結合する請求項33の方法。
【請求項36】
該第二の抗体が抗体4D5の相補性決定領域(CDR)を有する請求項35の方法。
【請求項37】
増殖阻害試薬に該細胞をさらすことをさらに含む請求項28の方法。
【請求項38】
化学療法試薬に該細胞をさらすことをさらに含む請求項28の方法。
【請求項39】
放射線に該細胞をさらすことをさらに含む請求項28の方法。
【請求項40】
請求項9の抗体の有効量にErbB2を過剰発現する細胞をさらすことを含む細胞死の誘導法。
【請求項41】
容器;
容器に付いたラベル;及び
容器内に含まれる活性試薬を含む組成物;
を含む製造品であり、該組成物は細胞死を誘導するのに有効であり、容器についたラベルは該組成物がErbB2の過剰発現によって特徴付けられる疾患を治療するために用い得ることを示し、そして該組成物中の活性試薬は請求項1の抗体である製造品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−188013(P2008−188013A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26980(P2008−26980)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【分割の表示】特願平10−519437の分割
【原出願日】平成9年10月9日(1997.10.9)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【出願人】(501085809)ボード オブ リージェンツ,ザ ユニヴァーシティ オブ テキサス システム (4)
【Fターム(参考)】