折り曲げられたガラスセラミックス構成部分を製造する方法
本発明は、少なくとも1つの屈曲部(14)を備えるガラスセラミックス構成部分(10)を製造する方法であって、屈曲部を2つの脚部の間の移行部として形成する方法に関する。セラミックス化プロセス中に、素材ガラス状態にあるガラスプレートが、ガラスセラミックスプレート(10)へ変化する際に、変形加工工具を作用させながら30mm〜200mmの範囲の曲げ半径を備える屈曲部(14)を形成することにより簡単に、屈曲部(14)の領域において良好な表面品質を得ることができる。本発明は、特に視覚的に良好な品質により優れているガラスセラミックス構成部分(10)にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの屈曲部を備えるガラスセラミックス構成部分を製造する方法であって、屈曲部を2つの脚部の間の移行部として形成する方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、2つの脚部の間に配置された少なくとも1つの屈曲部を備えるガラスセラミックス構成部分であって、脚部が所定の開放角を成している形式のガラスセラミックス構成部分に関する。
【0003】
ガラスセラミックスとは、予め溶融窯内で溶融されかつ通常は板状に成形されたガラスから、温度制御された意図的な結晶化、いわゆる「セラミックス化」によって製造される特別な材料である。ガラスセラミックスの特性は、高い耐熱衝撃性と、極めて小さな熱膨張率である。ガラスセラミックスは、たとえばレンジプレートにおいて、調理領域として、オーブンの内張りとして、放射加熱体のためのカバーパネルとして、加熱に使用される全ての炉のための覗き窓として、かつ一般的に燃焼機器における覗き窓として使用されることに加えて、通常は高い衝撃耐性により優れている車両視界窓に、または照明目的(リフレクタ)のために、かつ天文学用途のために使用され得る。
【0004】
公知先行技術からは、暖炉または炉に用いられる、折り曲げられた覗き窓が知られている。覗き窓は、主にガス運転式の曲げ装置を用いて、約10mmの極めて小さな曲げ半径で製造される。この場合、変形されるべきガラスセラミックスプレートは、セラミックス化されていない状態で、つまりガラスとして、加熱工程に後置された付加プロセスにおいて、実際のセラミックス化の前に曲げられる。
【0005】
たとえば、国際公開第2005/042420号パンフレットから公知の上記のような加工方法では、ガラスプレートの稜部もしくは縁部を、少なくとも一方の側で、振動する線形バーナにより、ガラスの軟化点にまで加熱する。次いで、低粘度の縁部を越えて突出するガラス周辺部が、曲げ縁部に沿って、ガラス成形部分の脚部として、設定された角度にまで曲げられ、次いで冷却される。
【0006】
折り曲げられたガラスセラミックス板を製造する別の公知の可能性は、セラミックス化プロセス中の自重による重力降下である。約200mmより大きい半径を有する折り曲げられたガラスセラミックス板を、自重による重力降下で、直接にセラミックス化炉内で製造することができる。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10102576号明細書から、曲げられたガラスセラミックス体を製造する上記のような方法が公知である。プレート形の未処理の素材ガラス体(Gruenglaskoerper)は、室温でセラミックス化型に載置される。セラミックス化型は、曲げられたガラスセラミックス体のジオメトリ構造(幾何学形状)に適合された型表面を有している。このためには、セラミックス化型は、成形されるべき底部に対応して円弧状に降下した中間部分を有している。セラミックス化のためには、素材ガラスプレートが、まず、セラミックス化温度にまで加熱される。この場合、当初は形状安定の素材ガラスプレートが粘性の状態になり、これにより、型の中間部分の上に位置する素材ガラスプレート部分が重力により降下して、その円弧状の型表面に接触する。このような自重による重力降下は、材料典型的かつプロセス典型的な低い降下速度に基づいて比較的に時間を消耗するので、特に高い生産量を達成することができない。
【0008】
上記方法により製造可能な曲げ半径は、ガラス厚さ、開放角およびガラスセラミックス材料の粘度−時間曲線に依存する。さらに、厚さの増大は、曲げモーメントに基づいて、型内への素材ガラスの沈込みにさらに不都合に影響を及ぼす。つまり重力降下の方法は、ガラス厚さが増大するにつれて、ますます実現することが難しくなる。
【0009】
200mmよりも小さな曲げ半径は、上記方法では製造不能である。なぜならば、このためには、セラミックス化プロセスにおいて達成される滞留時間が、ガラスの、変形のために必要とされる低い粘度に十分ではないからである。
【0010】
典型的には54mmまでの曲げ半径を有する折り曲げられたガラスセラミックス板は、別個の曲げ装置内で、ガスバーナーを用いてセラミックス化されていない状態で曲げられ、後置のプロセスステップにおいて、セラミックス化炉内でセラミックス化され得る。ガス運転式の曲げ装置を用いて54mmよりも大きな半径に曲げることも技術的には可能であるが、高い装置コストを伴ってのみ実現可能である。
【0011】
本発明の課題は、簡単化されかつ加速された曲げプロセスを可能にする、折り曲げられたガラスセラミックス構成部分を製造する方法を提供することである。さらに、提供された方法によって、約30mm〜200mmの範囲の曲げ半径が、簡単かつ廉価な形式で製造可能であることが望ましい。さらに本発明の課題は、優れた外観により優れているガラスセラミックス構成部分を提供することである。さらに本発明は、いわゆる「予め核生成させられた」ガラス構成部分も、基準に応じて変形させるという目的を有している。「予め核生成された(vorgekeimte)ガラス構成部分」とは、熱間形状付与後に既にある程度の結晶相割合を有している素材ガラスであると理解することができる。結晶相割合は、相の割合全体の約1%〜10%であり、したがって、変形のために必要とされる、低い粘度の範囲の滞留期間を短縮する。
【0012】
本発明の課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴を有する折り曲げられたガラスセラミックス構成部分を製造する方法と、請求項7の特徴部に記載の特徴を有するガラスセラミックス構成部分とにより解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0013】
方法に関して、セラミックス化プロセス中に、素材ガラス状態にあるガラスプレートが、ガラスセラミックスプレートへ変化する際に、変形加工工具を作用させながら30mm〜200mmの範囲の曲げ半径を備える屈曲部を形成することが規定されている。これにより、屈曲部を形成するための変形加工工程が、セラミックス化プロセスに組み込まれて、このことは製造の時間に関する最適化を可能にする。この場合、素材ガラス状態にあるガラスプレートの、セラミックス化のために必要とされる(かつセラミックス化プロセスに属する)加熱が利用される。この加熱段階中に、ガラスプレートは、当該ガラスプレートが粘性状態に達する温度状態に加熱されなければならない。粘性状態は変形加工を許容する。この粘性状態に達すると、変形加工のための時間的に狭く制限されたプロセスウィンドが開始され、次いで、セラミックス化(またはより具体的には、ガラスの体積結晶化)も開始する。ある程度のセラミックス化度の達成後には、変形加工はもはや不可能である。本発明による変形加工工具で、変形力が、ガラス材料内にもたらされる。変形加工工具は、狭いプロセスウィンド内で、30mm〜200mmの半径を備える屈曲部の形成を達成する。
【0014】
本発明の有利な実施形態によれば、屈曲部の曲げ角度を、0°〜179°の範囲、有利には60°〜150°の範囲で形成する。このような曲げ角度は、ガラスセラミックス構成部分全体の極めて良好な表面品質で、セラミックス化プロセス中に形成することができる。
【0015】
安定した変形加工プロセスを保証するために、かつ脚部にとって歪みのない幾何学形状を保証するために、本発明によれば、屈曲部に続く脚部が、1mm〜1000mmの範囲、有利には50mm〜600mmの範囲の脚部長さを有しているか、もしくは曲げ軸線の方向で10mm〜1000mmの範囲、有利には200mm〜800mmの範囲のガラス部分高さで形成することが規定されていてよい。50mm〜600mmの範囲の脚部長さは、特に小さな横方向歪みを保証する。200mm〜800mmの範囲のガラス部分高さは、変形加工のために十分な支持長さを保証する。
【0016】
時間最適化された製造のための本発明の有利な実施形態は、セラミックス化プロセス中に加熱段階を実施し、該加熱段階中にガラスプレートをセラミックス化温度にまで加熱し、ガラスプレートが変形のために十分な粘度、たとえば1012dPas(当然、それ以下の粘度も含む)〜107dPasの粘度を有すると、セラミックス化温度への到達前に、屈曲部の形成を開始することを特徴としている。
【0017】
ガラスプレートの外側面を2つの載置プレート上に載置し、ガラスプレートの内側面に、それぞれ1つの載置プレートに対応配置された少なくとも2つの押さえ部を装着し、かつ作動機構を用いて、両載置プレートを、ガラスプレートの変形加工のために十分な粘度への到達時に、互いに向かって旋回することが規定されていると、変形加工は特に簡単に達成される。したがって、載置プレートは、セラミックス化プロセスの結果としてのガラスプレートの粘度低下と、押さえ部の圧力とに反応する。
【0018】
したがって、ガラスプレートの曲げ縁部に対して平行に延びる旋回軸線を中心として、たとえば重力に基づいてまたは圧着力の影響により互いに向かって旋回可能な、ガラスプレートのそれぞれ1つの脚部を収容する2つの載置プレートが、ガラスプレートの予め規定された曲げ縁部の両側に配置されていることが特に規定されていてよい。ガラスプレートの、当該ガラスプレートの載置面とは反対の側で、ガラスプレートの曲げ縁部の両側に、少なくとも2つの押さえ部が配置されている。この場合、この押さえ部が、変形加工中に、ガラスプレートの方向に向けられた力をこのガラスプレートにもたらす。
【0019】
曲げ装置には、変形加工されるべきガラスプレートを簡単に装入することができる。曲げ装置は、ガラスプレートを装入された状態で炉内に完全に導入され得る。この炉内で、ガラスプレートは加熱によって粘性状態に変えられる。曲げ装置は、載置プレートの旋回によって、加速させられた変形を可能にする。この変形では、ガラスプレートの曲げ縁部が、いわば当該ガラスプレートの両脚部の間のヒンジとして働く。
【0020】
押さえ部は、ガラスプレートの脚部と、ガラスプレートの、変形時に生じる曲げ半径との間の両接線の領域にそれぞれ配置されていてよい。この場合、押さえ部の、互いに対する間隔は、熱膨張率および材料収縮を考慮すると、変形されるべき領域の円弧長さにほぼ一致する。
【0021】
変形されるべきガラスプレートを載置プレートに安定的に保持するためには、載置プレートの、ガラスプレートの曲げ縁部とは反対の側の端部に、変形されるべきガラスプレートの自由な端部のためのそれぞれ1つのストッパが配置されている。
【0022】
ガラスプレートの特に安定的な位置固定は、両載置プレートが、ガラスプレートの載置時に、小さな傾斜角だけ傾斜していることにより達成され得る。このことは、ストッパ条片が、曲げ縁部の方向に向けられた押圧力を変形されるべきガラスプレートの自由な端部に作用させることにつながる。
【0023】
変形過程時の載置プレートの旋回運動を制限するためには、それぞれストッパが設けられていてよい。
【0024】
本発明の、ガラスセラミックス構成部分に関する課題は、屈曲領域が、開放角とは反対の側の外側面で、少なくとも、プレート中央から曲げ軸線の方向に測定して、曲げ軸線の方向のプレート延在長さの少なくとも±35%の範囲の測定長さに沿って、10μmよりも小さいRa値(算術平均粗さ)を備えた表面うねりを有していることにより解決される。
【0025】
ガラスセラミックス部品の、長い波長を有する長波うねり(Langwelligkeit)を考慮に入れない場合、10μmよりも小さなRa値が、曲げシームの延在長さ全体に当てはまる。曲げシームの領域におけるうねりの視覚的な評価に、長波うねりは影響しない。しがたって、Ra値は、製品の重要な品質特徴であり、これは新しい方法に起因するものとみなすことができる。
【0026】
したがって、ガラスセラミックス構成部分は、屈曲部の領域で、光屈折効果に基づいて観察者により平坦でうねっていないと解される表面品質を有している。これにより、脚部と屈曲部との間で視覚的に均質な移行部が生じる。
【0027】
たとえば曲げ軸線の方向で400mmのプレート延在長さでは、280mmの測定長さが得られる。この測定長さは、それぞれプレート中心の両側で同じ長さ(±140mm)だけ延びている。
【0028】
上掲のうねり振幅および/または周期を有する上記表面うねりは、本発明の請求項1に記載の方法で特に僅かな製造手間で形成され得る。
【0029】
本発明では、良好な品質を備える複雑な構成部分を製造可能である。たとえば、第2の脚部に、第1の脚部および第3の脚部が、それぞれ屈曲部を介して接続していることが規定されていてよい。
【0030】
ガラスセラミックス構成部分の理想的な剛性構造は、脚部の材料組織構造と、屈曲部の材料組織構造とが、ほぼ同一であることにより生じる。
【0031】
本発明による方法では、変形領域におけるガラス厚さ変化が生じないか、または僅かなガラス厚さ変化しか生じない。極めて平坦な表面が曲げ領域でも達成され、この場合、表面の、ガスバーナーで製造された屈曲部にとって典型的な、曲げ領域の不均一な加熱によるうねりは発生しない。この場合、変形は、極めて迅速にセラミックス化するガラスセラミックスでも製造可能である。
【0032】
本発明を以下に図面に示された実施形態につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ガラスセラミックス構成部分を側方から断面で示す図である。
【図2】別のガラスセラミックス構成部分を側方から断面で示す図である。
【図3】変形加工工具と、該変形加工工具上に位置固定されたガラスプレートとを示す概略図である。
【図4】図3に示した変形加工工具を変更された作動位置で示す図である。
【図5】図1に示したガラスセラミックス構成部分を上から見た平面図である。
【図6】公知先行技術によるガラスセラミックス構成部分の表面プロフィールと、本発明によるガラスセラミックス構成部分の表面プロフィールとを示したグラフである。
【図7】図6から取り出した細部を示す拡大図である。
【図8】図7に示した公知先行技術による表面プロフィールを多項式曲線と重ねて示したグラフである。
【図9】図7に示した本発明による表面プロフィールを多項式曲線と重ねて示したグラフである。
【図10】図8に示した表面プロフィールと多項式曲線との減算により得られた曲線を示す図である。
【図11】図9に示した表面プロフィールと多項式曲線との減算により得られた曲線を示す図である。
【図12】図1に示した本発明によるガラスセラミックス構成部分の写実的な図である。
【図13】公知先行技術によるガラスセラミックス構成部分の写実的な図である。
【0034】
図1は、ガラスセラミックス構成部分10を示している。ガラスセラミックス構成部分10は、2つの脚部11a,11bを有している。これらの脚部11a,11bは、1つの屈曲部14を介して互いに一体に結合されている。両脚部11a,11bは、ガラスセラミックス構成部分10の内側面で開放角αを成している。ガラスセラミックス構成部分10の外側面は13、屈曲部14の領域で凸状の輪郭を有しており、該凸状の輪郭は、この場合、一定の曲げ半径rを有している。脚部11a,11bは、同一の脚部長さsL1,sL2を有している。
【0035】
図2に示した実施形態には、脚部長さsL1,sL2,sL3を備える3つの脚部11a,11b,11cを有するガラスセラミックス構成部分10が示されている。脚部11bは、端部側で、脚部11aおよび脚部11cにそれぞれ1つの屈曲部14を介して接続している。脚部11a,11b,11cの間には、内側面12の領域で、それぞれ1つの開放角αが形成されている。この場合、開放角αは、当面は同一である。さらに、外面側では、所定の曲げ半径rが屈曲部14において生じている。
【0036】
ガラスセラミックス構成部分10は、図1および図2の図平面に対して垂直な方向で、有利には200〜600mmの構成部分高さを有している。
【0037】
図3は、図1に示したガラスセラミックス構成部分10を製造するための変形加工工具を概略的に示している。この変形加工工具は、2つの載置プレート20.1,20.2を有している。
【0038】
これらの載置プレート20.1,20.2上には、素材ガラスの状態のガラスプレート10.1が載置されている。この場合、ガラスプレート10.1の外側面13は、平面で載置プレート20.1および載置プレート20.2の上面に載置されている。ガラスプレート10.1の長手側端部は、加熱工程において起こり得る長さの膨張を考慮に入れて、2つのストッパ21を用いて位置決めされている。ガラスプレート10.1の上面12には、ローラ形の2つの押さえ部30が位置決めされている。押さえ部30の中心長手方向軸線は、図平面に対して垂直方向に延びていて、したがって、曲げ軸線と構成部分幅とに沿って延びている。
【0039】
図3に示したアッセンブリは、セラミックス化炉内に移動されて、セラミックス化炉内でセラミックス化温度にまで加熱される。この加熱工程の間に、ガラスプレート10.1は、変形を可能とする温度状態にもたらされる。次いで、変形加工工具が作動して、2つの載置プレート20.1,20.2が、屈曲部14に相当する角度範囲だけ、互いに対して傾斜させられる。
【0040】
この場合、左側の載置プレート20.1は、旋回可能に旋回支承部22に連結されている。右側の載置プレート20.2は、支承部23に連結されている。支承部23は、支承部23に対して2つの矢印により示されているように、組み合わせられた旋回運動およびスライド運動を実施する。変形加工が行われたあとに、図1に示したジオメトリが生じる。セラミックス化の終了後に、図4に示したアッセンブリは、セラミックス化炉から取り出されて、冷却される。次いで、完成したガラスセラミックス構成部分が取り外される。ガラスセラミックス部分10は、以下に説明するように、傑出した表面品質により優れている。
【0041】
図5は、図1に示したガラスセラミックス構成部分10の平面図を示している。この場合、屈曲部14の凸状面が観察側に向けられている。凸状の屈曲部14は、陰影をつけて示されている。
【0042】
ガラスセラミックス部分10のまさに中央領域に、軸線Xが描かれている。軸線Xは、曲げ軸線の方向に延びている。この軸線Xに沿って、うねり測定器の検出器が、ガラスセラミックス構成部分10の外側面13に沿って案内される。
【0043】
図6は、図1に示した構造形状と同じ構造形状を有する、先行技術により製造されたガラスセラミックス構成部分10の測定された輪郭(実線)と、本発明によるガラスセラミックス構成部分10の表面うねりプロファイル(破線)とを比較して示している。X値は、図5に示したX軸線に沿って測定されている。グラフのY軸には、検出器の、X軸に対して垂直な変位が示されている(Z値)。図6から分かるように、測定された輪郭のために巨視的に観察するとU字形の経過が生じる。このことは、屈曲部14の製造時に、ガラスセラミックス構成部分の両辺部が僅かに反っていることにより生じる。この巨視的な効果は、長波うねりとして表面うねりの観察時に考慮されないままであることが望ましく、規格化された粗さ値Raを通常の多項式計算(多項式曲線あてはめ)を用いて求める場合には、取り除いて計算され得る(図8および図9を参照)。
【0044】
微細なうねりを顕著に際立たせるためは、測定データから長い波長の部分が差し引かれる必要がある。微細なうねりを顕著に際立たせることは、測定データを単純かつ適当な関数にあてはめることにより行われる(破線は、図8では公知先行技術を、図9では本発明による実施形態を示している)。高速フーリエフィルタリング(低域フィルタおよび高域フィルタ)は省かれる。なぜならば、高速フーリエフィルタリングは、その複雑さに基づいて、実際の値を判明させるために寄与するよりも多くの誤差源をもたらすからである。しかし、原理的には上記あてはめおよび減算は、高域フィルタリングに相当する。
【0045】
図8および図9に示された曲線を互いに減算すると、図10および図11に示すグラフが得られる。
【0046】
ここからうねりの算術粗平均を求めると(全てのプロフィール値の合計の算術粗平均、つまりゼロ線からの変位の値の合計をその数で割ったもの)、公知先行技術によるガラスセラミックス構成部分において、本発明によるガラスセラミックス構成部分におけるよりも粗さが明らかにより強く表れていることが判る。
【0047】
特に、本発明による製造方法では、図面から明確に分かるように、10μmよりも小さなRa値が生ぜしめられ得る。
【0048】
これにより、明らかに改善された光学的な構成部分品質は、屈曲部14の領域で、認識可能な表面うねりを有しないか、またはほとんど有しないで生じる。
【0049】
本発明によるガラスセラミックス構成部分10の品質の利点を明確にするために、図12および図13が示されている。図12は、図1に示した本発明によるガラスセラミックス構成部分を示している。ガラスセラミックス構成部分は、水平方向の白いプレートP上に載置されている。この場合、図12には屈曲部14の領域しか示されていない。屈曲部14の手前には、4本の線がプレートP上に描かれている。いま、プレートPを小さな角度(たとえば10°〜15°)をもって観察すると、屈曲部14の手前に線Sの鏡像SBが生じる。したがって、この鏡像SBは、屈曲部14のゆがみのない輪郭を示している。
【0050】
図13は、図12に示したものと同じ配置を、公知先行技術によるガラスセラミックス構成部分10と共に示している。線Sの鏡像SBが、強くうねった表面構造に基づいて、著しいゆがみを有していることがはっきりと判る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの屈曲部を備えるガラスセラミックス構成部分を製造する方法であって、屈曲部を2つの脚部の間の移行部として形成する方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、2つの脚部の間に配置された少なくとも1つの屈曲部を備えるガラスセラミックス構成部分であって、脚部が所定の開放角を成している形式のガラスセラミックス構成部分に関する。
【0003】
ガラスセラミックスとは、予め溶融窯内で溶融されかつ通常は板状に成形されたガラスから、温度制御された意図的な結晶化、いわゆる「セラミックス化」によって製造される特別な材料である。ガラスセラミックスの特性は、高い耐熱衝撃性と、極めて小さな熱膨張率である。ガラスセラミックスは、たとえばレンジプレートにおいて、調理領域として、オーブンの内張りとして、放射加熱体のためのカバーパネルとして、加熱に使用される全ての炉のための覗き窓として、かつ一般的に燃焼機器における覗き窓として使用されることに加えて、通常は高い衝撃耐性により優れている車両視界窓に、または照明目的(リフレクタ)のために、かつ天文学用途のために使用され得る。
【0004】
公知先行技術からは、暖炉または炉に用いられる、折り曲げられた覗き窓が知られている。覗き窓は、主にガス運転式の曲げ装置を用いて、約10mmの極めて小さな曲げ半径で製造される。この場合、変形されるべきガラスセラミックスプレートは、セラミックス化されていない状態で、つまりガラスとして、加熱工程に後置された付加プロセスにおいて、実際のセラミックス化の前に曲げられる。
【0005】
たとえば、国際公開第2005/042420号パンフレットから公知の上記のような加工方法では、ガラスプレートの稜部もしくは縁部を、少なくとも一方の側で、振動する線形バーナにより、ガラスの軟化点にまで加熱する。次いで、低粘度の縁部を越えて突出するガラス周辺部が、曲げ縁部に沿って、ガラス成形部分の脚部として、設定された角度にまで曲げられ、次いで冷却される。
【0006】
折り曲げられたガラスセラミックス板を製造する別の公知の可能性は、セラミックス化プロセス中の自重による重力降下である。約200mmより大きい半径を有する折り曲げられたガラスセラミックス板を、自重による重力降下で、直接にセラミックス化炉内で製造することができる。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10102576号明細書から、曲げられたガラスセラミックス体を製造する上記のような方法が公知である。プレート形の未処理の素材ガラス体(Gruenglaskoerper)は、室温でセラミックス化型に載置される。セラミックス化型は、曲げられたガラスセラミックス体のジオメトリ構造(幾何学形状)に適合された型表面を有している。このためには、セラミックス化型は、成形されるべき底部に対応して円弧状に降下した中間部分を有している。セラミックス化のためには、素材ガラスプレートが、まず、セラミックス化温度にまで加熱される。この場合、当初は形状安定の素材ガラスプレートが粘性の状態になり、これにより、型の中間部分の上に位置する素材ガラスプレート部分が重力により降下して、その円弧状の型表面に接触する。このような自重による重力降下は、材料典型的かつプロセス典型的な低い降下速度に基づいて比較的に時間を消耗するので、特に高い生産量を達成することができない。
【0008】
上記方法により製造可能な曲げ半径は、ガラス厚さ、開放角およびガラスセラミックス材料の粘度−時間曲線に依存する。さらに、厚さの増大は、曲げモーメントに基づいて、型内への素材ガラスの沈込みにさらに不都合に影響を及ぼす。つまり重力降下の方法は、ガラス厚さが増大するにつれて、ますます実現することが難しくなる。
【0009】
200mmよりも小さな曲げ半径は、上記方法では製造不能である。なぜならば、このためには、セラミックス化プロセスにおいて達成される滞留時間が、ガラスの、変形のために必要とされる低い粘度に十分ではないからである。
【0010】
典型的には54mmまでの曲げ半径を有する折り曲げられたガラスセラミックス板は、別個の曲げ装置内で、ガスバーナーを用いてセラミックス化されていない状態で曲げられ、後置のプロセスステップにおいて、セラミックス化炉内でセラミックス化され得る。ガス運転式の曲げ装置を用いて54mmよりも大きな半径に曲げることも技術的には可能であるが、高い装置コストを伴ってのみ実現可能である。
【0011】
本発明の課題は、簡単化されかつ加速された曲げプロセスを可能にする、折り曲げられたガラスセラミックス構成部分を製造する方法を提供することである。さらに、提供された方法によって、約30mm〜200mmの範囲の曲げ半径が、簡単かつ廉価な形式で製造可能であることが望ましい。さらに本発明の課題は、優れた外観により優れているガラスセラミックス構成部分を提供することである。さらに本発明は、いわゆる「予め核生成させられた」ガラス構成部分も、基準に応じて変形させるという目的を有している。「予め核生成された(vorgekeimte)ガラス構成部分」とは、熱間形状付与後に既にある程度の結晶相割合を有している素材ガラスであると理解することができる。結晶相割合は、相の割合全体の約1%〜10%であり、したがって、変形のために必要とされる、低い粘度の範囲の滞留期間を短縮する。
【0012】
本発明の課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴を有する折り曲げられたガラスセラミックス構成部分を製造する方法と、請求項7の特徴部に記載の特徴を有するガラスセラミックス構成部分とにより解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0013】
方法に関して、セラミックス化プロセス中に、素材ガラス状態にあるガラスプレートが、ガラスセラミックスプレートへ変化する際に、変形加工工具を作用させながら30mm〜200mmの範囲の曲げ半径を備える屈曲部を形成することが規定されている。これにより、屈曲部を形成するための変形加工工程が、セラミックス化プロセスに組み込まれて、このことは製造の時間に関する最適化を可能にする。この場合、素材ガラス状態にあるガラスプレートの、セラミックス化のために必要とされる(かつセラミックス化プロセスに属する)加熱が利用される。この加熱段階中に、ガラスプレートは、当該ガラスプレートが粘性状態に達する温度状態に加熱されなければならない。粘性状態は変形加工を許容する。この粘性状態に達すると、変形加工のための時間的に狭く制限されたプロセスウィンドが開始され、次いで、セラミックス化(またはより具体的には、ガラスの体積結晶化)も開始する。ある程度のセラミックス化度の達成後には、変形加工はもはや不可能である。本発明による変形加工工具で、変形力が、ガラス材料内にもたらされる。変形加工工具は、狭いプロセスウィンド内で、30mm〜200mmの半径を備える屈曲部の形成を達成する。
【0014】
本発明の有利な実施形態によれば、屈曲部の曲げ角度を、0°〜179°の範囲、有利には60°〜150°の範囲で形成する。このような曲げ角度は、ガラスセラミックス構成部分全体の極めて良好な表面品質で、セラミックス化プロセス中に形成することができる。
【0015】
安定した変形加工プロセスを保証するために、かつ脚部にとって歪みのない幾何学形状を保証するために、本発明によれば、屈曲部に続く脚部が、1mm〜1000mmの範囲、有利には50mm〜600mmの範囲の脚部長さを有しているか、もしくは曲げ軸線の方向で10mm〜1000mmの範囲、有利には200mm〜800mmの範囲のガラス部分高さで形成することが規定されていてよい。50mm〜600mmの範囲の脚部長さは、特に小さな横方向歪みを保証する。200mm〜800mmの範囲のガラス部分高さは、変形加工のために十分な支持長さを保証する。
【0016】
時間最適化された製造のための本発明の有利な実施形態は、セラミックス化プロセス中に加熱段階を実施し、該加熱段階中にガラスプレートをセラミックス化温度にまで加熱し、ガラスプレートが変形のために十分な粘度、たとえば1012dPas(当然、それ以下の粘度も含む)〜107dPasの粘度を有すると、セラミックス化温度への到達前に、屈曲部の形成を開始することを特徴としている。
【0017】
ガラスプレートの外側面を2つの載置プレート上に載置し、ガラスプレートの内側面に、それぞれ1つの載置プレートに対応配置された少なくとも2つの押さえ部を装着し、かつ作動機構を用いて、両載置プレートを、ガラスプレートの変形加工のために十分な粘度への到達時に、互いに向かって旋回することが規定されていると、変形加工は特に簡単に達成される。したがって、載置プレートは、セラミックス化プロセスの結果としてのガラスプレートの粘度低下と、押さえ部の圧力とに反応する。
【0018】
したがって、ガラスプレートの曲げ縁部に対して平行に延びる旋回軸線を中心として、たとえば重力に基づいてまたは圧着力の影響により互いに向かって旋回可能な、ガラスプレートのそれぞれ1つの脚部を収容する2つの載置プレートが、ガラスプレートの予め規定された曲げ縁部の両側に配置されていることが特に規定されていてよい。ガラスプレートの、当該ガラスプレートの載置面とは反対の側で、ガラスプレートの曲げ縁部の両側に、少なくとも2つの押さえ部が配置されている。この場合、この押さえ部が、変形加工中に、ガラスプレートの方向に向けられた力をこのガラスプレートにもたらす。
【0019】
曲げ装置には、変形加工されるべきガラスプレートを簡単に装入することができる。曲げ装置は、ガラスプレートを装入された状態で炉内に完全に導入され得る。この炉内で、ガラスプレートは加熱によって粘性状態に変えられる。曲げ装置は、載置プレートの旋回によって、加速させられた変形を可能にする。この変形では、ガラスプレートの曲げ縁部が、いわば当該ガラスプレートの両脚部の間のヒンジとして働く。
【0020】
押さえ部は、ガラスプレートの脚部と、ガラスプレートの、変形時に生じる曲げ半径との間の両接線の領域にそれぞれ配置されていてよい。この場合、押さえ部の、互いに対する間隔は、熱膨張率および材料収縮を考慮すると、変形されるべき領域の円弧長さにほぼ一致する。
【0021】
変形されるべきガラスプレートを載置プレートに安定的に保持するためには、載置プレートの、ガラスプレートの曲げ縁部とは反対の側の端部に、変形されるべきガラスプレートの自由な端部のためのそれぞれ1つのストッパが配置されている。
【0022】
ガラスプレートの特に安定的な位置固定は、両載置プレートが、ガラスプレートの載置時に、小さな傾斜角だけ傾斜していることにより達成され得る。このことは、ストッパ条片が、曲げ縁部の方向に向けられた押圧力を変形されるべきガラスプレートの自由な端部に作用させることにつながる。
【0023】
変形過程時の載置プレートの旋回運動を制限するためには、それぞれストッパが設けられていてよい。
【0024】
本発明の、ガラスセラミックス構成部分に関する課題は、屈曲領域が、開放角とは反対の側の外側面で、少なくとも、プレート中央から曲げ軸線の方向に測定して、曲げ軸線の方向のプレート延在長さの少なくとも±35%の範囲の測定長さに沿って、10μmよりも小さいRa値(算術平均粗さ)を備えた表面うねりを有していることにより解決される。
【0025】
ガラスセラミックス部品の、長い波長を有する長波うねり(Langwelligkeit)を考慮に入れない場合、10μmよりも小さなRa値が、曲げシームの延在長さ全体に当てはまる。曲げシームの領域におけるうねりの視覚的な評価に、長波うねりは影響しない。しがたって、Ra値は、製品の重要な品質特徴であり、これは新しい方法に起因するものとみなすことができる。
【0026】
したがって、ガラスセラミックス構成部分は、屈曲部の領域で、光屈折効果に基づいて観察者により平坦でうねっていないと解される表面品質を有している。これにより、脚部と屈曲部との間で視覚的に均質な移行部が生じる。
【0027】
たとえば曲げ軸線の方向で400mmのプレート延在長さでは、280mmの測定長さが得られる。この測定長さは、それぞれプレート中心の両側で同じ長さ(±140mm)だけ延びている。
【0028】
上掲のうねり振幅および/または周期を有する上記表面うねりは、本発明の請求項1に記載の方法で特に僅かな製造手間で形成され得る。
【0029】
本発明では、良好な品質を備える複雑な構成部分を製造可能である。たとえば、第2の脚部に、第1の脚部および第3の脚部が、それぞれ屈曲部を介して接続していることが規定されていてよい。
【0030】
ガラスセラミックス構成部分の理想的な剛性構造は、脚部の材料組織構造と、屈曲部の材料組織構造とが、ほぼ同一であることにより生じる。
【0031】
本発明による方法では、変形領域におけるガラス厚さ変化が生じないか、または僅かなガラス厚さ変化しか生じない。極めて平坦な表面が曲げ領域でも達成され、この場合、表面の、ガスバーナーで製造された屈曲部にとって典型的な、曲げ領域の不均一な加熱によるうねりは発生しない。この場合、変形は、極めて迅速にセラミックス化するガラスセラミックスでも製造可能である。
【0032】
本発明を以下に図面に示された実施形態につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ガラスセラミックス構成部分を側方から断面で示す図である。
【図2】別のガラスセラミックス構成部分を側方から断面で示す図である。
【図3】変形加工工具と、該変形加工工具上に位置固定されたガラスプレートとを示す概略図である。
【図4】図3に示した変形加工工具を変更された作動位置で示す図である。
【図5】図1に示したガラスセラミックス構成部分を上から見た平面図である。
【図6】公知先行技術によるガラスセラミックス構成部分の表面プロフィールと、本発明によるガラスセラミックス構成部分の表面プロフィールとを示したグラフである。
【図7】図6から取り出した細部を示す拡大図である。
【図8】図7に示した公知先行技術による表面プロフィールを多項式曲線と重ねて示したグラフである。
【図9】図7に示した本発明による表面プロフィールを多項式曲線と重ねて示したグラフである。
【図10】図8に示した表面プロフィールと多項式曲線との減算により得られた曲線を示す図である。
【図11】図9に示した表面プロフィールと多項式曲線との減算により得られた曲線を示す図である。
【図12】図1に示した本発明によるガラスセラミックス構成部分の写実的な図である。
【図13】公知先行技術によるガラスセラミックス構成部分の写実的な図である。
【0034】
図1は、ガラスセラミックス構成部分10を示している。ガラスセラミックス構成部分10は、2つの脚部11a,11bを有している。これらの脚部11a,11bは、1つの屈曲部14を介して互いに一体に結合されている。両脚部11a,11bは、ガラスセラミックス構成部分10の内側面で開放角αを成している。ガラスセラミックス構成部分10の外側面は13、屈曲部14の領域で凸状の輪郭を有しており、該凸状の輪郭は、この場合、一定の曲げ半径rを有している。脚部11a,11bは、同一の脚部長さsL1,sL2を有している。
【0035】
図2に示した実施形態には、脚部長さsL1,sL2,sL3を備える3つの脚部11a,11b,11cを有するガラスセラミックス構成部分10が示されている。脚部11bは、端部側で、脚部11aおよび脚部11cにそれぞれ1つの屈曲部14を介して接続している。脚部11a,11b,11cの間には、内側面12の領域で、それぞれ1つの開放角αが形成されている。この場合、開放角αは、当面は同一である。さらに、外面側では、所定の曲げ半径rが屈曲部14において生じている。
【0036】
ガラスセラミックス構成部分10は、図1および図2の図平面に対して垂直な方向で、有利には200〜600mmの構成部分高さを有している。
【0037】
図3は、図1に示したガラスセラミックス構成部分10を製造するための変形加工工具を概略的に示している。この変形加工工具は、2つの載置プレート20.1,20.2を有している。
【0038】
これらの載置プレート20.1,20.2上には、素材ガラスの状態のガラスプレート10.1が載置されている。この場合、ガラスプレート10.1の外側面13は、平面で載置プレート20.1および載置プレート20.2の上面に載置されている。ガラスプレート10.1の長手側端部は、加熱工程において起こり得る長さの膨張を考慮に入れて、2つのストッパ21を用いて位置決めされている。ガラスプレート10.1の上面12には、ローラ形の2つの押さえ部30が位置決めされている。押さえ部30の中心長手方向軸線は、図平面に対して垂直方向に延びていて、したがって、曲げ軸線と構成部分幅とに沿って延びている。
【0039】
図3に示したアッセンブリは、セラミックス化炉内に移動されて、セラミックス化炉内でセラミックス化温度にまで加熱される。この加熱工程の間に、ガラスプレート10.1は、変形を可能とする温度状態にもたらされる。次いで、変形加工工具が作動して、2つの載置プレート20.1,20.2が、屈曲部14に相当する角度範囲だけ、互いに対して傾斜させられる。
【0040】
この場合、左側の載置プレート20.1は、旋回可能に旋回支承部22に連結されている。右側の載置プレート20.2は、支承部23に連結されている。支承部23は、支承部23に対して2つの矢印により示されているように、組み合わせられた旋回運動およびスライド運動を実施する。変形加工が行われたあとに、図1に示したジオメトリが生じる。セラミックス化の終了後に、図4に示したアッセンブリは、セラミックス化炉から取り出されて、冷却される。次いで、完成したガラスセラミックス構成部分が取り外される。ガラスセラミックス部分10は、以下に説明するように、傑出した表面品質により優れている。
【0041】
図5は、図1に示したガラスセラミックス構成部分10の平面図を示している。この場合、屈曲部14の凸状面が観察側に向けられている。凸状の屈曲部14は、陰影をつけて示されている。
【0042】
ガラスセラミックス部分10のまさに中央領域に、軸線Xが描かれている。軸線Xは、曲げ軸線の方向に延びている。この軸線Xに沿って、うねり測定器の検出器が、ガラスセラミックス構成部分10の外側面13に沿って案内される。
【0043】
図6は、図1に示した構造形状と同じ構造形状を有する、先行技術により製造されたガラスセラミックス構成部分10の測定された輪郭(実線)と、本発明によるガラスセラミックス構成部分10の表面うねりプロファイル(破線)とを比較して示している。X値は、図5に示したX軸線に沿って測定されている。グラフのY軸には、検出器の、X軸に対して垂直な変位が示されている(Z値)。図6から分かるように、測定された輪郭のために巨視的に観察するとU字形の経過が生じる。このことは、屈曲部14の製造時に、ガラスセラミックス構成部分の両辺部が僅かに反っていることにより生じる。この巨視的な効果は、長波うねりとして表面うねりの観察時に考慮されないままであることが望ましく、規格化された粗さ値Raを通常の多項式計算(多項式曲線あてはめ)を用いて求める場合には、取り除いて計算され得る(図8および図9を参照)。
【0044】
微細なうねりを顕著に際立たせるためは、測定データから長い波長の部分が差し引かれる必要がある。微細なうねりを顕著に際立たせることは、測定データを単純かつ適当な関数にあてはめることにより行われる(破線は、図8では公知先行技術を、図9では本発明による実施形態を示している)。高速フーリエフィルタリング(低域フィルタおよび高域フィルタ)は省かれる。なぜならば、高速フーリエフィルタリングは、その複雑さに基づいて、実際の値を判明させるために寄与するよりも多くの誤差源をもたらすからである。しかし、原理的には上記あてはめおよび減算は、高域フィルタリングに相当する。
【0045】
図8および図9に示された曲線を互いに減算すると、図10および図11に示すグラフが得られる。
【0046】
ここからうねりの算術粗平均を求めると(全てのプロフィール値の合計の算術粗平均、つまりゼロ線からの変位の値の合計をその数で割ったもの)、公知先行技術によるガラスセラミックス構成部分において、本発明によるガラスセラミックス構成部分におけるよりも粗さが明らかにより強く表れていることが判る。
【0047】
特に、本発明による製造方法では、図面から明確に分かるように、10μmよりも小さなRa値が生ぜしめられ得る。
【0048】
これにより、明らかに改善された光学的な構成部分品質は、屈曲部14の領域で、認識可能な表面うねりを有しないか、またはほとんど有しないで生じる。
【0049】
本発明によるガラスセラミックス構成部分10の品質の利点を明確にするために、図12および図13が示されている。図12は、図1に示した本発明によるガラスセラミックス構成部分を示している。ガラスセラミックス構成部分は、水平方向の白いプレートP上に載置されている。この場合、図12には屈曲部14の領域しか示されていない。屈曲部14の手前には、4本の線がプレートP上に描かれている。いま、プレートPを小さな角度(たとえば10°〜15°)をもって観察すると、屈曲部14の手前に線Sの鏡像SBが生じる。したがって、この鏡像SBは、屈曲部14のゆがみのない輪郭を示している。
【0050】
図13は、図12に示したものと同じ配置を、公知先行技術によるガラスセラミックス構成部分10と共に示している。線Sの鏡像SBが、強くうねった表面構造に基づいて、著しいゆがみを有していることがはっきりと判る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの屈曲部(14)を備えるガラスセラミックス構成部分(10)を製造する方法であって、屈曲部(14)を2つの脚部の間の移行部として形成する方法において、
セラミックス化プロセス中に、素材ガラス状態にあるガラスプレートが、ガラスセラミックスプレート(10)へ変化する際に、変形加工工具を作用させながら30mm〜200mmの範囲の曲げ半径を備える屈曲部(14)を形成することを特徴とする、少なくとも1つの屈曲部を備えるガラスセラミックス構成部分を製造する方法。
【請求項2】
屈曲部(14)の曲げ角度(α)を、0°〜179°の範囲、有利には60°〜150°の範囲で形成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
屈曲部(14)に続く脚部(11a,11b)が、1mm〜1000mmの範囲、有利には50mm〜600mmの範囲の脚部長さ(sL1,sL2,sL3)を有している、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
曲げ軸線の方向で、ガラス部分高さを10mm〜1000mm、有利には200mm〜600mmの範囲で形成する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ガラス部分の平均的な厚さが、1mm〜20mm、有利には2mm〜8mmである、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
セラミックス化プロセス中に加熱段階を実施し、ガラスプレートをセラミックス化温度にまで加熱する間に、ガラスプレートが変形のために十分な粘度を有すると、セラミックス化温度への到達前に屈曲部(14)の形成を開始する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ガラスプレートの外側面(13)を2つの載置プレート(21)上に載置し、
ガラスプレートの内側面(12)上に、それぞれ1つの載置プレート(21)に対応配置された2つの押さえ部(30)を装着し、
作動機構を用いて、両載置プレート(21)を、ガラスプレートを変形させるために十分な粘度への到達時に、互いに向かって旋回させる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
屈曲部(14)を備えるガラスセラミックス構成部分であって、屈曲部(14)が、2つの脚部(11a,11b)の間に配置されていて、該脚部(11a,11b)が所定の開放角(α)を成している形式のものにおいて、
屈曲領域が、開放角とは反対の側の外側面(13)で、かつ/または開放角に面した内側面(12)で、少なくとも、プレート中心から曲げ軸線の方向で測定して、曲げ軸線の方向のプレート延在長さの±35%の範囲で、10μmよりも小さなRa値を備える表面うねりを有しており、この場合、構成部分変形に基づく長波うねりは考慮されないままである、屈曲部を備えるガラスセラミックス構成部分。
【請求項9】
長波の表面うねり(基礎輪郭)が、短波の部分(10〜100mmの周期)によってオーバラップされていない、請求項8記載のガラスセラミックス構成部分。
【請求項10】
第2の脚部(b)に、第1の脚部(11a)および第3の脚部(11c)が、それぞれ1つの屈曲部(14)を介して接続されている、請求項8または9記載のガラスセラミックス構成部分。
【請求項11】
脚部(11a,11b)の材料組織構造と、屈曲部(14)の材料組織構造とが、ほぼ同一である、請求項8から10までのいずれか1項記載のガラスセラミックス構成部分。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項記載の特徴を有する、請求項8から11までのいずれか1項記載のガラスセラミックス構成部分。
【請求項13】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造された、請求項8から10までのいずれか1項記載のガラスセラミックス構成部分。
【請求項1】
少なくとも1つの屈曲部(14)を備えるガラスセラミックス構成部分(10)を製造する方法であって、屈曲部(14)を2つの脚部の間の移行部として形成する方法において、
セラミックス化プロセス中に、素材ガラス状態にあるガラスプレートが、ガラスセラミックスプレート(10)へ変化する際に、変形加工工具を作用させながら30mm〜200mmの範囲の曲げ半径を備える屈曲部(14)を形成することを特徴とする、少なくとも1つの屈曲部を備えるガラスセラミックス構成部分を製造する方法。
【請求項2】
屈曲部(14)の曲げ角度(α)を、0°〜179°の範囲、有利には60°〜150°の範囲で形成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
屈曲部(14)に続く脚部(11a,11b)が、1mm〜1000mmの範囲、有利には50mm〜600mmの範囲の脚部長さ(sL1,sL2,sL3)を有している、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
曲げ軸線の方向で、ガラス部分高さを10mm〜1000mm、有利には200mm〜600mmの範囲で形成する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ガラス部分の平均的な厚さが、1mm〜20mm、有利には2mm〜8mmである、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
セラミックス化プロセス中に加熱段階を実施し、ガラスプレートをセラミックス化温度にまで加熱する間に、ガラスプレートが変形のために十分な粘度を有すると、セラミックス化温度への到達前に屈曲部(14)の形成を開始する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ガラスプレートの外側面(13)を2つの載置プレート(21)上に載置し、
ガラスプレートの内側面(12)上に、それぞれ1つの載置プレート(21)に対応配置された2つの押さえ部(30)を装着し、
作動機構を用いて、両載置プレート(21)を、ガラスプレートを変形させるために十分な粘度への到達時に、互いに向かって旋回させる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
屈曲部(14)を備えるガラスセラミックス構成部分であって、屈曲部(14)が、2つの脚部(11a,11b)の間に配置されていて、該脚部(11a,11b)が所定の開放角(α)を成している形式のものにおいて、
屈曲領域が、開放角とは反対の側の外側面(13)で、かつ/または開放角に面した内側面(12)で、少なくとも、プレート中心から曲げ軸線の方向で測定して、曲げ軸線の方向のプレート延在長さの±35%の範囲で、10μmよりも小さなRa値を備える表面うねりを有しており、この場合、構成部分変形に基づく長波うねりは考慮されないままである、屈曲部を備えるガラスセラミックス構成部分。
【請求項9】
長波の表面うねり(基礎輪郭)が、短波の部分(10〜100mmの周期)によってオーバラップされていない、請求項8記載のガラスセラミックス構成部分。
【請求項10】
第2の脚部(b)に、第1の脚部(11a)および第3の脚部(11c)が、それぞれ1つの屈曲部(14)を介して接続されている、請求項8または9記載のガラスセラミックス構成部分。
【請求項11】
脚部(11a,11b)の材料組織構造と、屈曲部(14)の材料組織構造とが、ほぼ同一である、請求項8から10までのいずれか1項記載のガラスセラミックス構成部分。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項記載の特徴を有する、請求項8から11までのいずれか1項記載のガラスセラミックス構成部分。
【請求項13】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造された、請求項8から10までのいずれか1項記載のガラスセラミックス構成部分。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−520225(P2012−520225A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553371(P2011−553371)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051147
【国際公開番号】WO2010/102858
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051147
【国際公開番号】WO2010/102858
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】
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