説明

折り曲げ罫線入りプラスチックシート

【課題】折り曲げ罫線入りのプラスチックシートを折り曲げたときの罫線部の手ざわりを良くする。
【解決手段】折り曲げ罫線となる凹溝がその長さ方向に沿って深い凹溝部と浅い凹溝部を交互に設けて形成された折り曲げ罫線入りプラスチックシートにおいて、前記深い凹溝部を開孔として設け、前記浅い凹溝部を、折り曲げ罫線の長さ方向の断面に表れる形状が、その両端側からそれぞれ一定の曲率半径でシート表面側に厚みを増し、中央部で表面の円弧が頂点よりも若干低くなって交わるように設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動製函機での組み立てに対応した構造のプラスチックシートに関する。
【背景技術】
【0002】
包装ケースに折り曲げ加工されるプラスチックシートとして、図8に断面図で示されているように、シート11の表面に設けられた罫線を形成する凹溝12の底部に、その長さ方向に沿って凹凸を形成し(同図(A))、或いは断続孔を形成し(同図(B))、深さの深い凹溝部13と浅い凹溝部14を交互に設けた構造のものが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来構造のものは、罫線の底部に凹凸がない構造のものと比較して折り曲げ性が良好であるものの、製函機を用いてシートを組み立てる場合に、シートの材質や厚みなどの条件によっては、曲がり方が不十分でケースを組み立てることができず、例え組み立てることができてもケースが変形することがあった。これと反対に必要以上に曲がると、やはりケースが変形してしまうことがあった。また、シートの折り曲げに伴って凹溝から露出した凹凸部分がささくれ立って、手触りを悪くしたり割れや裂け目ができたりすることがあった。
【0004】
本発明は従来技術を有するこのような問題点に鑑み、折り曲げ罫線入りのプラスチックシートを自動で組み立てる場合に、不十分な折れ曲がりや曲がり過ぎなどの加工不良を起こすことなく、堅牢且つ綺麗に組み立てることができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明の折り曲げ罫線入りプラスチックシートは、折り曲げ罫線となる凹溝がその長さ方向に沿って深い凹溝部と浅い凹溝部を交互に設けて形成された折り曲げ罫線入りプラスチックシートであって、前記深い凹溝部は開孔として設けられ、前記浅い凹溝部は、折り曲げ罫線の長さ方向の断面に表れる形状が、その両端側からそれぞれ一定の曲率半径でシート表面側に厚みを増し、中央部で表面の円弧が頂点よりも若干低くなって交わるように設けられたことを特徴とするものである。
これによれば、深い凹溝部と浅い凹溝部によって罫線の底部が長さ方向に凹凸しているので、シートの柔軟性と剛性を共に保持して良好な折り曲げ性が得られる。浅い凹溝部が、断面山形、詳しくは両端側からそれぞれ一定の曲率半径でシート表面側に厚みを増し、中央部で表面の円弧が頂点よりも若干低くなって交わるように設けられてあるので、シートを折り曲げたときに罫線内に鋭い凹凸が生じ難くなり、手ざわりが良くなる。
【0006】
深い凹溝部を開孔とした場合、折り曲げたときに生ずる歪みや弾性力が凹溝の長さ方向に分散し、深い凹溝部に厚みの有る場合よりも折れ曲がり易くなる。
【0007】
また、罫線となる凹溝は、シートの片面に設ける他、シートの両面に設けることができる。シートの両面に設ける場合、一側の面の凹溝が前記の如く構成されていればよい。
【0008】
また、本発明の包装ケースは、前記各構成のシートを所定の輪郭に打ち抜き、これを罫線に沿って折り曲げ、組み立てることにより得ることができる。
【0009】
なお、本発明が適用されるプラスチックシートとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネートなどの単体又は複合シートを用いることができる。シートの厚みは、通常、0.1〜1.0mm程度のものが用いられるが、これに限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
プラスチックシート1は、折り曲げ罫線2となる凹溝がその長さ方向に沿って深い凹溝部(以下、深溝部という)3と浅い凹溝部(以下、浅溝部という)4を交互に設け、浅溝部4の長さ方向の断面が山形となるようにして形成された構造のものである。以下、シートに形成する罫線の実施形態の一例を罫線部分の断面を示した図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、深溝部3に厚みを設けて罫線2を形成した形態を示している。同図(A)は、浅溝部4を、その罫線方向の断面が楕円形状(CD )の一部をなすような曲面形状に設けたものである。同図(B)は、浅溝部4を、その罫線方向の断面が放物点(OH )を含む放物線形状(H)の一部をなすような曲面形状に設けたものである。
【0012】
なお、図では、深溝部3と浅溝部4の罫線方向の長さ(L3、L4)をほぼ同じ長さとし、また、深溝部3の厚み(D3)をシートの厚み(D1)のほぼ1/4としてあるが、これに限定されず、シートの材質や厚みなどに応じて適宜に設定することができる。浅溝部4の厚み(D4)も同様である。
【0013】
図2は、深溝部3をシート1の裏面側に裏面側に貫通した開孔に設けて罫線2を形成した形態を示している。この形態では、深溝部3の厚み(D3)は0mmとなる。同図(A)は、浅溝部4を、その罫線方向の断面が楕円形状の一部をなすような曲面形状に設けたものである。同図(B)は、浅溝部4を、その罫線方向の断面が放物点を含む放物線形状の一部をなすような曲面形状に設けたものである。同図(C)は、浅溝部4を、その罫線方向の断面が半円形状をなすような曲面形状に設けたものである。この形態では、浅溝部4の表面円弧の中心(O)が、シート1の裏面側縁部に位置するように設定してある。同図(D)は、浅溝部4を、その罫線方向の断面が長円形状をなすような曲面形状に設けたものである。この形態では、浅溝部4の表面円弧の中心(O)が、シート1の裏面側縁部よりもシート内方寄りに位置するように設定してある。
【0014】
図3は、浅溝部4を、その罫線方向の断面に表れる山形が、シート内部に中心点を有する二つの円弧を組み合わせた曲面形状に形成された形態を示している。同図(A)は罫線2を深溝部3に厚みを設けて形成したもの、同図(B)は深溝部3を開孔に設けて形成したものであり、共に浅溝部4は、その両側が深溝部3から一定の曲率半径でシート表面側に厚みを増し、その中央部で表面の円弧が頂点よりも若干低くなって交わるように設けてある。
【0015】
浅溝部4の山形断面は、前記楕円形状や放物線形状、半円形状、長円形状、その他の曲面形状や平面形状を適宜組み合わせた形状に設けることができ、図4R>4はその組み合わせの一例を示している。同図(A)は、図3と同様、浅溝部4の断面をシート内部に中心点を有する二つの円弧を組み合わせた曲面形状に設けたものであり、浅溝部4の中央部で、その高さが両側の高さとほぼ同じとなるようにしたものである。同図(B)は、浅溝部4の断面を、二つの台形状を並べた形状に設けたものである。同図(C)は、浅溝部4の断面を、二つの台形状を並べるともに、側面を湾曲させ、上面をほぼ平坦状とした形状に設けたものである。同図(D)は、浅溝部4の断面を、三つの湾曲面をほぼ同じ高さに並べた曲面形状に設けたものである。同図(E)は、浅溝部4の断面を、三つの湾曲面からなる曲面形状であって、両側の湾曲面を同じ高さに、中央部の湾曲面をそれよりも高くして、お供え餅のような形に設けたものである。同図(F)は、(E)に示された中央部の湾曲面をさらに小さな円弧の曲面で分割し、全体で四つの円弧を組み合わせた曲面形状に設けたものである。
【0016】
図5は、前記各図の深溝部3がその罫線方向の厚みを一定にして設けてあるのに対し、罫線方向に沿って漸次厚みが異なるようにして設けたものである。同図(A)は、罫線2の断面を見たときに、深溝部3の最も厚みが小さい部分と、浅溝部4の最も厚みが大きくなる頂部とが直線で結ばれ、罫線全体として三角波形の断面となるように設けたものである。同図(B)は、(A)に示された浅溝部4の頂部を平坦状としてものである。同図(C)は、(A)に示された深溝部3の最も厚みが小さい部分と浅溝部4の頂部とを湾曲させ、罫線全体として湾曲波形の断面となるように設けたものである。
【0017】
図6は、罫線となる凹溝をシート1の両面に設けた形態を示している。同図(A)は、シート1の表面側から深溝部3と断面楕円形状の浅溝部4からなる罫線2を形成するとともに、シート1の裏面側に、罫線2に沿った一定の深さの凹溝5を設けたものである。この凹溝5は、シート1を折り曲げた際の破損防止のため、深溝部3の厚みよりも小さい深さに設けてある。同図(B)は、シート1の表面側から深溝部3と断面楕円形状の浅溝部4からなる罫線2を形成するとともに、シート1の裏面側の前記浅溝部4の形成位置に断面楕円形状の凹溝5を設けたものである。この場合、凹溝5は、浅溝部4と同様な断面形状に設ける他、異なる断面形状のものを設けてもよい。
【0018】
なお、前記各図において、交互に設けられる深溝部3と浅溝部4の罫線内部における向きは、両部の境界線が罫線方向に対して直交していても、傾斜していても何れでもよい。例えば、図7(A)は罫線2を含むシート1の平面図、(B)はその罫線2に沿った断面を示してるが、同図の如く、罫線2の深溝部3と浅溝部4の境界線が、罫線方向に対して傾斜して設けることもできる。
【0019】
各図に示された罫線2の構成は一例であって本発明のプラスチックシートは図示された形態に限定されない。各図の深溝部3と浅溝部4を組み合わせ、又はこれらと公知の罫線構造を組み合わせて罫線2を構成することは適宜行われる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(A)、(B)は深溝部に厚みを設けた本発明の実施形態を示す罫線部分の断面図である。
【図2】(A)〜(D)は深溝部に開孔を設けて罫線を形成した本発明の実施形態を示す罫線部分の断面図である。
【図3】(A)、(B)は浅溝部の断面を二つの曲面を組み合わせて形成した本発明の実施形態を示す罫線部分の断面図である。
【図4】(A)〜(F)は複数の面を組み合わせて形成した浅溝部の断面を示す図である。
【図5】(A)〜(C)は深溝部の厚みを連続的に異ならせた本発明の実施形態を示す罫線部分の断面図である。
【図6】(A)、(B)はシートの表裏両面に凹溝を設けた本発明の実施形態を示す罫線部分の断面図である。
【図7】深溝部と浅溝部の境界線を罫線方向に対して傾斜させた本発明の実施形態を示しており、(A)はシートの要部平面図、(B)は(A)のB−B線に沿った断面図である。
【図8】(A)、(B)は従来構造のプラスチックシートの罫線部分の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 プラスチックシート
2 罫線
3 深溝部
4 浅溝部
5 凹溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ罫線となる凹溝がその長さ方向に沿って深い凹溝部と浅い凹溝部を交互に設けて形成された折り曲げ罫線入りプラスチックシートであって、
前記深い凹溝部は開孔として設けられ、前記浅い凹溝部は、折り曲げ罫線の長さ方向の断面に表れる形状が、その両端側からそれぞれ一定の曲率半径でシート表面側に厚みを増し、中央部で表面の円弧が頂点よりも若干低くなって交わるように設けられたことを特徴とする折り曲げ罫線入りプラスチックシート。
【請求項2】
請求項1に記載のプラスチックシートを所定の輪郭に打ち抜き、これを罫線に沿って折り曲げて組み立てた包装ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−231925(P2006−231925A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102849(P2006−102849)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【分割の表示】特願2000−112180(P2000−112180)の分割
【原出願日】平成12年4月13日(2000.4.13)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】