説明

折曲加工装置

【課題】金属製帯板状体を高精度に折曲ることができて、高品質の製品を形成できる折曲加工装置装置を提供する。
【解決手段】加工すべき金属製帯板状体4が貫通されるスリット5を有する内方固定型1と、内方固定型1に外嵌されて周方向に所定間隔で対向する折曲線形成用の一対のエッジ2a、2bを有する外方可動型2とを備え、外方可動型2の軸線廻りの回動によって、スリット5を介して突出する金属製帯板状体4にエッジ2a、2bを押圧して金属製帯板状体4の折曲線45を形成する折曲加工装置である。外方可動型2の対向するエッジ2a、2b間の隙間の少なくともいずれか一方の長手方向端部寸法の調整を行って、エッジ2a、2bを軸線に対して所定角度で傾斜させる調整手段Mを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製帯板状体を折曲る折曲加工装置に関し、特に、紙、布、皮革、合成樹脂等のシート体を所定形状に打抜き加工するための帯刃(トムソン刃)等を折曲る折曲加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙器やダンボールなどの打ち抜き加工に使用される抜型は、一般に、ベース材であるベニヤ板に所定形状(紙器の展開形状など)に応じた溝切加工を行うとともに、トムソン刃(帯刃)をベニヤ板に加工される溝の形状に応じて切断・曲げ加工し、その曲げ加工後のトムソン刃をベニヤ板の溝に嵌め込むことによって製作されている。このため、帯刃を、所望の折曲角度で所望の折曲方向で折曲る必要がある。
【0003】
この種の折曲加工装置は、特許文献1や特許文献2等に記載されている。すなわち、図6に示すように、内方固定型51と外方可動型52とからなる折曲用型53を備えたものである。内方固定型51は、加工すべき金属製帯板状体54が貫通されるスリット55を有する円柱状体からなり、外方可動型52は、内方固定型51に外嵌されて周方向に所定間隔で対向する折曲線形成用の一対のエッジ52a,52bを有する筒状体からなる。
【0004】
すなわち、内方固定型51は固定され、この内方固定型51に外嵌される外方可動型52がその軸線廻りに回動する。この回動には、図6(b)の矢印A方向(反時計廻り)の回動と、図6(c)の矢印B方向(時計廻り)の回動とがある。このため、外方可動型52はサーボモータ等の駆動手段にて矢印A方向および矢印B方向に回動するように構成されている。
【0005】
また、金属製帯板状体54は、移送手段にて、幅方向が鉛直方向に沿って配設した状態で長手方向に沿って間欠的に移送される。すなわち、図6(a)に示すように、金属製帯板状体54は、内方固定型51のスリット55に挿通されて、スリット55の出口55aから間欠的に送出される。
【0006】
外方可動型2は、その一対のエッジ52a,52bがスリット55の出口55a側に配置され、図6(b)に示すように、矢印A方向に回動させることによって、一方のエッジ52aによって金属製帯板状体54を押圧して矢印A1方向へ折曲る。また、図6(c)に示すように、矢印B方向に回動させることによって、他方のエッジ52bによって金属製帯板状体54を押圧して矢印B1方向へ折曲る。
【0007】
このように、金属製帯板状体54のスリット55からの突出量、外方可動型52の回動方向、回動量を制御することによって、種々の形状の製品(例えば、帯刃)を形成することができる。
【0008】
ところで、帯刃の厚みは種々の範囲のものが使用されており、これを上記した内方固定型と外方可動型の相互押圧力により常温において曲げ加工するには、強大なトルクを要する。一方、要求される曲げ形状は、最近益々複雑化の傾向にあり、曲率半径の大きなものから小さなものまで適用範囲が広がっているので、それに対応するため、外径の小さな内方固定型を用いなければならない。内方固定型の径が細くなるほど、曲げ加工時の荷重が作用した際の「ねじれ」と「たわみ」が大きくなる。また、加工される金属製帯板状体も決して均質でなく、刃先部の硬化焼き入れ処理の際に刃先側の広い部分が硬化処理されていたため、刃先から背までの刃幅方向に対して曲り易さが変化していることがある。
【0009】
すなわち、図7の平面図で示すように、一対の平行な長辺60,61と、この長辺を連結する短辺62とを有する帯刃54を折曲形成する場合、一対の平行な長辺60,61および短辺62の各下端縁(背部)60a,61a,62aを同一平面上に配設されるのが要求される。しかしながら、図8の正面図に示すように、一方の長辺60の下端縁60aに対して、他方の長辺61の下端縁61aが傾斜したりする場合がある。これは、設計上においては、一対の平行な長辺60,61および短辺62の各下端縁(背部)を同一平面上に配設されるように設定されるが、帯刃の材質、曲げ加工時の荷重が作用した際の「ねじれ」と「たわみ」等によって、折曲線が金属製帯板状体の上端縁や下端縁に対して直交するものとならないことに起因する。
【0010】
ところで、このような帯刃は基板に植設される。このため、背部が同一平面上に配設されていなければ、基板への植設を精度よく行うことができないおそれがある。すなわち、刃先の高さが不揃いになって、この帯刃を使用した打抜き加工の精度が悪化する。
【0011】
そこで、従来では、内方固定型のスリットと、このスリットを貫通した帯刃との位置関係を、内方固定型の軸方向の位置調整によって変更して、「ねじれ」と「たわみ」等を吸収して、背部が同一平面上に配設されるようにしたものがある(特許文献3)。これは、力の作用点が軸方向に変動するに応じて変化することに着目したものである。この際、スリットの幅寸法を軸方向に沿って変化させ、より一層折曲線の成形精度の向上を図るようにしている。
【特許文献1】特開平6−328133号公報
【特許文献2】特開平10−58041号公報
【特許文献3】特許第3655399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、内方固定型の軸方向の位置調整を行うなめには、調整手段を必要として装置全体の部品点数が増加するとともに、この部品点数の増加に伴って構成の複雑化を招く。しかも、内方固定型を軸方向に調整する際には、芯ずれさせることなく、軸方向に移動させる必要があり、高精度の調整が要求される。このため、このように内方固定型の軸方向の位置調整によっても、帯刃の材質の違い等による折曲精度の劣化を防ぐことは困難であった。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みて、金属製帯板状体を高精度に折曲ることができて、高品質の製品を形成できる折曲加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の折曲加工装置は、加工すべき金属製帯板状体が貫通されるスリットを有する内方固定型と、内方固定型に外嵌されて周方向に所定間隔で対向する折曲線形成用の一対のエッジを有する外方可動型とを備え、前記外方可動型の軸線廻りの回動によって、前記スリットを介して突出する金属製帯板状体にエッジを押圧して金属製帯板状体の折曲線を形成する折曲加工装置であって、前記外方可動型の対向するエッジ間の隙間の少なくともいずれか一方の長手方向端部寸法の調整を行って、エッジを前記軸線に対して所定角度で傾斜させる調整手段を設けたものである。
【0015】
本発明の折曲加工装置では、調整手段にて、外方可動型の対向するエッジ間の隙間の少なくともいずれか一方の長手方向端部寸法の調整を行って、エッジを前記軸線に対して所定角度で傾斜させることができる。これによって、エッジとこれに対向する内方固定型のスリットの出口縁部とで形成される折曲線の方向を調整することができる。
【0016】
前記エッジ間の隙間の一方の長手方向端部寸法の調整を行う第1の調整手段と、前記エッジの隙間の他方の長手方向端部寸法の調整を行う第2の調整手段とを備えたものが好ましい。
【0017】
第1の調整手段によって、エッジ間の隙間の一方の長手方向端部間の寸法の調整を行うことができ、第2の調整手段によって、エッジ間の隙間の他方の長手方向端部間の寸法の調整を行うことができる。このため、各エッジの軸線に対する角度調整を安定して正確に行うことができる。
【0018】
第1の調整手段にて隙間寸法を小としたときには第2の調整手段にて隙間寸法を大とし、第1の調整手段にて隙間寸法を大としたときには第2の調整手段にて隙間寸法を小とすることが可能である。
【0019】
このように、第1の調整手段と第2の調整手段とによって調整することによって、両調整手段における調整量が少なくても、各エッジに軸線に対する角度調整を行うことができる。
【0020】
調整手段はねじ機構にて構成することができる。ここで、ねじ機構とは、例えば、雄ねじ軸を有する雄部材(ボルト部材)と、ねじ孔を有する雌部材(ナット部材)等で構成でき、ボルト部材をナット部材に対して螺進退させることによって、ボルト部材に対してナット部材がボルト部材の軸心に沿って往復動する。このため、ナット部材を一方のエッジ側に付設するとともに、ボルト部材を他方のエッジ側に配置し、ボルト部材をナット部材に対して螺進退させれば、エッジが接近離間する。これによって、エッジ間寸法を調整することができる。
【0021】
金属製帯板状体として帯刃とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の折曲加工装置では、調整手段にて、エッジとこれに対向する内方固定型のスリットの出口縁部とで形成される折曲線の方向を調整することができる。すなわち、折曲線の方向を調整することによって、金属製帯板状体の品質、肉厚、および硬度差等に起因する「ねじれ」や「たわみ」等を吸収して(考慮して)、折曲線を形成でき、折曲成形品において、下端縁全体が同一平面上に配設することができる。このため、この折曲成形品の基板への植設を精度よく行うことができる。これによって、刃先の高さを揃えることが、この帯刃を使用した高精度の打抜き加工を行うことができる。
【0023】
第1の調整手段及び第2の調整手段を備えることによって、各エッジに軸線に対する角度調整を安定して正確に行うことができ、しかも、その調整状態の維持が安定する。このため、より高精度の折曲加工が可能となる。
【0024】
第1の調整手段と第2の調整手段とによって調整することによって、両調整手段における調整量が少なくても、各エッジに軸線に対する角度調整を行うことができる。このため、調整作業性の向上を図ることができる。
【0025】
調整手段がねじ機構であれば、構成の簡略化およびその調整作業の簡略化を図ることができる。
【0026】
このように、本発明の折曲加工装置では、折曲方向、折曲角度、及び折曲位置等が異なる種々の帯刃の折曲加工に最適となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に係る折曲加工装置の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0028】
この折曲加工装置は、スリット5を有する内方固定型1と、内方固定型1に外嵌される外方可動型2とからなる折曲用型3を備える。スリット5には、加工すべき金属製帯板状体(帯刃)4(図4(b)参照)が貫通される。外方可動型2は、周方向に所定間隔で対向する折曲線形成用の一対のエッジ2a,2bを有する。
【0029】
内方固定型1は、上下方向に延びる円柱状体であって、その軸心廻りには回転(回動)しないように固定されている。また、スリット5は内方固定型1の軸心方向に沿って延び、帯刃4がその刃先4a(図5参照)を上にした状態で貫通される。なお、スリット5の帯刃入口側の開口部5aが、その開口側に向かって拡大するように開口し、スリット5の帯刃出口側の開口部5bが開口幅が同一状に開口している。
【0030】
帯刃4は図示省略の搬送機構にて搬送される。搬送機構は、例えば、モータ等の駆動機構と、この駆動機構の駆動力によって駆動する送りねじ機構等で構成することができる。すなわち、駆動機構が駆動することによって、送りねじ機構の送りねじが回転して、内方固定型のスリット5に挿通された帯刃4が上流側から下流側へ搬送される。
【0031】
この搬送は、マイクロコンピュータ等にて構成される制御手段にて制御されて間欠的に行われる。この際、停止と送り量がこの制御手段にて制御され、所望の折曲位置で折曲られるように設定される。
【0032】
また、外方可動型2は、図1と図2に示すように、上部リング部6と、下部リング部7と、上部リング部6と下部リング部7とを連結する中間連結部8とを備える。上部リング部6および下部リング部7にはスリット9,10が設けられている。中間連結部8は、図2(b)で示すように、一対の円弧状体11,12から構成される。
【0033】
各円弧状体11,12は、その対向するエッジが所定間隔で対向する折曲線形成用の一対の前記エッジ2a,2bとなる。すなわち、各円弧状体11,12の対向部位に切欠部11a、12aが設けられることによって、このエッジ2a,2bが構成される。また、上部リング部6のスリット9と、中間連結部8のエッジ2a,2bにて構成されるスリットと、下部リング部7のスリット10とは連続した一つの直線状のスリットSを構成する。
【0034】
外方可動型2には、対向するエッジ間の隙間を調整する調整手段Mが設けられている。この場合、上部リング部6側に設けられる第1の調整手段M1と、下部リング部7側に設けられる第2の調整手段M2とを備える。各調整手段M1、M2はねじ機構15(15A)(15B)にて構成される。
【0035】
第1の調整手段M1のねじ機構15Aは、スリット9に対向する一方の端部16側に設けられるナット部材17と、スリット9に対向する他方の端部18側に設けられる受け片19と、この受け片19の孔部にねじ軸部20aが挿通されるボルト部材20とからなる。すなわち、ボルト部材20を反ナット部材側から受け片19の孔部に挿通して、ナット部材17に螺合させる。このため、ボルト部材20をナット部材17に対して螺進させれば、ボルト部材20のヘッド部20bが受け片19に当接して、ナット部材17が受け片19側に接近し、スリット9の間隔が狭くなる。また、ボルト部材20をナット部材17に対して螺退させれば、ナット部材17が受け片19側から離間し、スリット9の間隔が広くなる。
【0036】
第2の調整手段M2のねじ機構15Bも、スリット10に対向する一方の端部21側に設けられるナット部材22と、スリット10に対向する他方の端部23側に設けられる受け片24と、この受け片24の孔部にねじ軸部25aが挿通されるボルト部材25とからなる。このため、ボルト部材25をナット部材22に対して螺進させれば、ボルト部材25のヘッド部25bが受け片24に当接して、ナット部材22が受け片24側に接近し、スリット10の間隔が狭くなる。また、ボルト部材25をナット部材22に対して螺退させれば、ナット部材22が受け片24側から離間し、スリット10の間隔が広くなる。
【0037】
このため、第1の調整手段M1によって、エッジ2a,2b間の隙間の一方の長手方向端部(上部リング部6側の端部)間の寸法の調整を行うことができる。第2の調整手段M2によって、エッジ2a,2b間の隙間の他方の長手方向端部(下部リング部7側の端部)間の寸法の調整を行うことができる。
【0038】
すなわち、図4(a)に示すように、エッジ2a,2b間の隙間が上下方向に沿って平行に配設した状態から、第1の調整手段M1(図示省略)によって、エッジ2a,2b間の間隔を狭くするとともに、第2の調整手段M2(図示省略)によって、エッジ2a,2b間の間隔を広くして、図4(b)に示すように、スリットSが上方から下方に向かって拡大する状態とすることができる。また、第1の調整手段M1(図示省略)によって、エッジ2a,2b間の間隔を広くするとともに、第2の調整手段M2(図示省略)によって、エッジ2a,2b間の間隔を狭くして、図4(c)に示すように、スリットSが下方から上方に向かって拡大する状態とすることができる。
【0039】
外方可動型2は、図示省略の回転機構によって、その軸心(内方固定型1の軸心と一致する軸心)廻りに回転(回動)する。この回動は、時計廻りの回動と反時計廻りの回動とがある。回転機構としては、モータ等の駆動機構と、この駆動機構の回転駆動力を外方可動型2に伝達する連結機構等で構成される。また、この回転機構の回転方向、回転停止、回転開始等は、マイクロコンピュータ等の制御手段にて制御される。
【0040】
この場合、この制御手段と、前記搬送機構の制御手段とは同一のものを使用しても、別のものを使用してもよいが、外方可動型2の回転機構の制御と、帯刃4の搬送機構の制御とは、後述するように、連動する必要がある。
【0041】
次に、前記のように構成した折曲加工装置を使用した帯刃4の折曲工程を説明する。複数の折曲部を有する帯刃4を成形する場合、帯刃4の搬送速度、搬送停止タイミング、および、搬送再開タイミング、さらに、外方可動型2の回動方向、回動開始タイミング、回動停止タイミング、および回動角度等が、予め前記制御手段にプログラミングされている。
【0042】
このため、帯刃4が内方固定型1のスリット5の出口(下流側開口部5b)から所定量(設定された量)だけ突出した状態で、帯刃4の搬送が一旦停止する。この搬送停止状態で、外方可動型2が、時計廻り方向又は反時計廻りに所定角度だけ回動する。すなわち、外方可動型2が時計廻りに回動すれば、エッジ2bが帯刃4を時計廻り方向へ押圧する。この際、内方固定型は回動しないので、帯刃4を、下流側開口部5bのエッジ2a側の開口端縁30(図1参照)にて受けることになる。このため、帯刃4は、エッジ2bと開口端縁30とで挟まれ、時計廻り方向へ折れ曲がる。この際、外方可動型2の回動角度によって折れ曲がり角度が制御される。すなわち、この部位での帯刃4の折曲線45(図5参照)が形成される。
【0043】
その後、外方可動型2が前回の回動角度だけ反対方向に回動して元の状態に戻る。次に、帯刃4の搬送が再開されてさらに設定された量だけスリット5から突出した状態で停止する。その後は外方可動型2が、時計廻り方向又は反時計廻りに所定角度だけ回動する。外方可動型2が反時計廻りに回動すれば、エッジ2aが帯刃4を反時計廻り方向へ押圧する。この際、内方固定型1は回動しないので、帯刃4を、下流側開口部5bのエッジ2b側の開口端縁31(図1参照)にて受けることになる。このため、帯刃4は、エッジ2aと開口端縁31とで挟まれ、反時計廻り方向へ折れ曲がる。この際、外方可動型2の回動角度によって折れ曲がり角度が制御される。すなわち、この部位での帯刃4の折曲線が形成される。
【0044】
その後は、順次前記工程が繰り返されて、所定の形状に折れ曲がった帯刃4を成形することができる。すなわち、正常な場合、図5(a)に示すように、各折曲線45が、刃先4aおよび背4bと直交する方向に形成される。しかしながら、予めプログラミングされた情報によって、この装置を稼動しても、金属製帯板状体の品質、肉厚、および硬度差等によって、図5(b)(c)に示すように、折曲線45が、刃先4aおよび背4bと直交する方向に対して傾斜したりする。このように、傾斜すれば、刃先4aと背4bとが所定間隔でもって平行に配置されている場合、図面上、折曲線45よりも左側の部位と右側の部位とで、背4bが同一平面上に配置されない。
【0045】
そこで、本発明では、図5(b)(c)に示すように、折曲線45が、刃先4aおよび背4bと直交する方向に対して傾斜したりする場合、図4(b)(c)で示すように、エッジ2a、2bを傾斜させる。これによって、折曲線45が、刃先4aおよび背4bと直交する方向に沿って形成されるように調整することができる。
【0046】
また、刃先4aと背4bとが所定間隔でもって平行に配置されていない場合、折曲線45が刃先4aと直交する方向に形成されても、背4bと直交する方向に形成されないことになる。このような場合であっても、図面上における折曲線45よりも左側の部位と右側の部位とで、背4bが同一平面上に配置されない。そこで、図4(b)(c)で示すように、エッジ2a、2bを傾斜させることによって、折曲線45の傾斜角度を調整して、折曲線45よりも左側の部位と右側の部位とで、背4bが同一平面上に配置するようにできる。
【0047】
このように、本発明では、調整手段Mにて、エッジ2a、2bとこれに対向する内方固定型1のスリット5の出口縁部とで形成される折曲線45の方向を調整することができる。すなわち、折曲線45の方向を調整することによって、金属製帯板状体4の品質、肉厚、および硬度差等に起因する「ねじれ」や「たわみ」等を吸収して(考慮して)、折曲線45を形成でき、折曲成形品において、下端縁全体が同一平面上に配設することができる。このため、この折曲成形品を基板へ植設する際において、精度よく行うことができ、刃先4aの高さを揃えることが、この帯刃4を使用した高精度の打抜き加工を行うことができる。
【0048】
第1の調整手段M1及び第2の調整手段M2を備えることによって、各エッジ2a、2bに軸線に対する角度調整を安定して正確に行うことができ、しかも、その調整状態の維持が安定する。このため、より高精度の折曲加工が可能となる。
【0049】
第1の調整手段M1と第2の調整手段M2とによって調整することによって、両調整手段M1、M2における調整量が少なくても、各エッジ2a、2bに軸線に対する角度調整を行うことができる。このため、調整の作業性の向上を図ることができる。
【0050】
調整手段M1、M2がねじ機構15A、15Bであれば、その調整作業の簡略化を図ることができる。
【0051】
このように、本発明の折曲加工装置では、折曲方向、折曲角度、及び折曲位置等が異なる種々の帯刃の折曲加工に最適となる。
【0052】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、調整手段Mとしては、第1の調整手段M1のみであっても、第2の調整手段M1のみであってもよい。すなわち、第1の調整手段M1であっても、エッジ2a、2b間の隙間の一方の長手方向端部間の寸法の調整を行うことができ、第2の調整手段M2のみであっても、エッジ2a、2b間の隙間の他方の長手方向端部間の寸法の調整を行うことができるからである。
【0053】
調整手段Mをねじ機構15で構成する場合、ナット部材17,22を他方の端部18、23側に配設されるものであってもよい。また、調整手段Mをねじ機構15以外の機構(例えば、リニアアクチュエータ等)で構成してもよい。また、加工すべき金属製帯状体としては帯刃に限るものではなく、要は本発明の折曲加工装置にて折り曲げ加工可能な金属の帯状体であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態を示す折曲加工装置の要部正面図である。
【図2】前記折曲加工装置の要部の断面を示し、(a)は図1のA−A線断面図であり、(b)は図1のB−B線断面図であり、(c)は図1のC−C線断面図である。
【図3】折曲加工装置の外方可動型の斜視図である。
【図4】折曲加工装置の外方可動型を示し、(a)は初期状態の簡略図であり、(b)はエッジ間隔を上部側において狭くした状態の簡略図であり、(c)はエッジ間隔を下部側において狭くした状態の簡略図である。
【図5】帯刃を示し、(a)は正常状態の折曲線を示す簡略図であり、(b)は折曲線を傾斜させた状態の簡略図であり、(c)は(b)とは相違する方向に曲線を傾斜させた状態の簡略図である。
【図6】従来の折曲加工装置の要部正面図である。
【図7】従来の折曲加工装置で折曲状態の帯刃の簡略平面図である。
【図8】従来の折曲加工装置で折曲状態の帯刃の正面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 内方固定型
2 外方可動型
2a,2b エッジ
4 帯刃(金属製帯板状体)
5 スリット
15A,15B ねじ機構
45 折曲線
M 調整手段
M1 調整手段
M2 調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工すべき金属製帯板状体が貫通されるスリットを有する内方固定型と、内方固定型に外嵌されて周方向に所定間隔で対向する折曲線形成用の一対のエッジを有する外方可動型とを備え、前記外方可動型の軸線廻りの回動によって、前記スリットを介して突出する金属製帯板状体にエッジを押圧して金属製帯板状体の折曲線を形成する折曲加工装置であって、
前記外方可動型の対向するエッジ間の隙間の少なくともいずれか一方の長手方向端部寸法の調整を行って、エッジを前記軸線に対して所定角度で傾斜させる調整手段を設けたことを特徴とする折曲加工装置。
【請求項2】
前記エッジ間の隙間の一方の長手方向端部寸法の調整を行う第1の調整手段と、前記エッジの隙間の他方の長手方向端部寸法の調整を行う第2の調整手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の折曲加工装置。
【請求項3】
第1の調整手段にて隙間寸法を小としたときには第2の調整手段にて隙間寸法を大とし、第1の調整手段にて隙間寸法を大としたときには第2の調整手段にて隙間寸法を小とすることを特徴とする請求項2に記載の折曲加工装置。
【請求項4】
調整手段はねじ機構にて構成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の折曲加工装置。
【請求項5】
前記金属製帯板状体が帯刃であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の折曲加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−190063(P2009−190063A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33628(P2008−33628)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(508047314)
【Fターム(参考)】