説明

折板屋根用落雪・つらら防止装置

【課題】折板屋根上に積もった氷雪塊を効率的に溶かして軒先の突然の落雪を防止し、また大きなつららの発生や、すが漏れ、雪の巻き込み等の発生を防止できる折板屋根用落雪・つらら防止装置を提供する。
【解決手段】山部20aと谷部20bとを交互に設けた折板屋根20上に設置する落雪防止装置である。前記山部20aと面一の状態で谷部を覆う平面枠部2と、この平面枠部2の後端に連設され前記谷部20bの長手方向を遮蔽する状態で谷部内に挿入される傾斜枠部3とを有する枠本体1と、この枠本体1に添わせて配設する網状体4からなる。そして、前記平面枠部2の前端が屋根の先端に一致し、傾斜枠部3が屋根面の上側の位置となるように枠本体1を屋根の先端部に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根上に積もった氷雪塊を効率的に溶かして軒先の突然の落雪を防止し、また大きなつららの発生や、すが漏れ、雪の巻き込み等の発生を防止する折板屋根用落雪・つらら防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雪国においては、屋根に積もった雪が集積されて次第に大きな雪塊になり、天候が回復すると、太陽の放射熱や屋内からの伝導熱で雪塊の下面が融けて、傾斜屋根面で雪崩現象を発生させ、その雪塊が滑り軒先から落下して軒先の下にあるものを壊したり、通行人に当たる等の危害を発生させている。
また、落下に至らないまでも、融水は雪塊の下面を傾斜に沿って移動し、雪塊の端部で外気にさらされ凍結して、軒先から邪魔で危険なつららや雪庇となって垂れ下がり、巻き込み現象を起こし直下既存壁を押して破壊することになり、他方、凍結するに至らない融水は、時には軒先を伝いすが漏れを発生させる等の問題もあった。
【0003】
このような雪塊の落下や、つらら、雪庇発生の防止や、すが漏れ、雪の巻き込みの発生を防止するための技術が従来から数多く提案されている。
具体的には、屋根面に防滑突起を具備させる例として、屋根面に雪止器を設けたり、突起を付けた瓦を用いたり、屋根面の部位を選択して堰止め、屋根面雪崩の発生を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0004】
また、積雪面と屋根面との間に空隙部を設けることで融雪を促したり、屋根の下端部に三角柱状体の上面に網体を配設した落雪防止具を設けたりする技術も提案されている(例えば、特許文献3〜4参照)。
更には、屋根面に加熱装置を取り付け、これにより融雪を促進させて雨樋に流す技術も提案されている(例えば、特許文献5〜6参照)。
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1〜6に示す従来技術は、いずれも瓦屋根のような平板状の屋根についての提案であり、ガソリンスタンドやサービスステーション等に多く利用されている山部と谷部とを交互に設けた折板屋根には、そのまま適用することが困難であった。また、加熱装置を取り付ける場合は設備費用が高くなるうえに、取付作業やメンテナンス作業が煩雑になる等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭59−47022号公報
【特許文献2】実開平1−82226号公報
【特許文献3】特開2002−30769号公報
【特許文献4】特開2004−270222号公報
【特許文献5】特開平5−98562号公報
【特許文献6】特開平5−280226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題点を解決して、折板屋根に簡単かつ安価に設置することができ、屋根上に積もった氷雪塊を自然現象を誘発させ効率的に溶かして軒先の突然の落雪を防止し、また大きなつららの発生や、すが漏れ等の発生を防止することでき、更には取付作業やメンテナンス作業も簡単に行うことできる折板屋根用落雪・つらら防止装置を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の折板屋根用落雪・つらら防止装置は、山部と谷部とを交互に設けた折板屋根上に設置する折板屋根用落雪・つらら防止装置であって、前記山部と面一の状態で谷部を覆う平面枠部と、この平面枠部の後端に連設され前記谷部の長手方向を遮蔽する状態で谷部内に挿入される傾斜枠部とを有する枠本体と、この枠本体に添わせて配設する網状体からなり、前記平面枠部の前端が屋根の先端に一致し、傾斜枠部が屋根面の上側の位置となるように枠本体を屋根の先端部に設置したことを特徴とするものである。
【0009】
また、枠本体の平面枠部の前端と傾斜枠部の先端とは補強部材により連結されて、側面視三角形状のフレームを構成しているものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0010】
更に、網状体が合成樹脂製ネットであることが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【0011】
更に、網状体には、傾斜枠部の先端から谷部に沿い屋根面の上側方向へ更に延びる延長網部が形成してあることが好ましく、これを請求項4に係る発明とする。
【0012】
更に、平面枠部が締結部材により折板屋根の山部に締結固定されていることが好ましく、これを請求項5に係る発明とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、山部と面一の状態で谷部を覆う平面枠部と、この平面枠部の後端に連設され前記谷部の長手方向を遮蔽する状態で谷部内に挿入される傾斜枠部とを有する枠本体と、この枠本体に添わせて配設する網状体からなり、前記平面枠部の前端が屋根の先端に一致し、傾斜枠部が屋根面の上側の位置となるように枠本体を屋根の先端部に設置したので、網状体を配設した枠本体と屋根の谷部との間に空洞部が形成されることとなり、降り積もった雪は前記空洞部の空気層により融雪が促進されて雪塊の落下や、つらら、雪庇発生の防止や、すが漏れ、雪の巻き込みの発生を的確に防止できることとなる。
【0014】
また、請求項2に係る発明のように、枠本体の平面枠部の前端と傾斜枠部の先端とが補強部材により連結されて、側面視三角形状のフレームを構成した場合は、枠本体が十分な強度を有することとなり積雪の重みによって変形、破損等が生じるのを防止する。
【0015】
また、請求項3に係る発明のように、網状体を合成樹脂製ネットとした場合は、凍結しにくくより軽量化を図ることができて屋根への重量負担を軽減することができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明のように、網状体に、傾斜枠部の先端から谷部に沿い屋根面の上側方向へ更に延びる延長網部を形成した場合は、この延長網部に雪解けの水が絡んで雪ずれの加速を抑えることができ、また排水を誘導して氷塊を作らないので、すが漏れの発生を防止することができ、更には積雪の浮力の発生も防止できる。
【0017】
また、請求項5に係る発明のように、平面枠部を締結部材により折板屋根の山部に締結固定した場合は、落雪防止装置の配置あるいは取り外しを簡単に行うことができ、設置作業やメンテナンス作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の使用状態を示す要部の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す斜視図である。
【図3】図2の分解斜視図である。
【図4】図1の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明の使用状態を示す要部の斜視図である。本発明の落雪防止装置を適用する屋根は、例えば、ガソリンスタンドやサービスステーション等に多く利用されている山部20aと谷部20bとを交互に設けた折板屋根20である。この折板屋根20の軒先先端部には、図示のように落雪防止装置が設置されるが、図示のものでは1個のみの落雪防止装置が記載しているが、実際のものは屋根の先端ラインに沿い連続して複数個設置される(ものである図示せず)。
【0020】
本発明の落雪防止装置は、折板屋根20の山部20aと面一の状態で谷部20bを覆う平面枠部2と、この平面枠部2の後端に連設され前記谷部20bの長手方向を遮蔽する状態で谷部内に挿入される傾斜枠部3とを有する枠本体1と、この枠本体1に添わせて配設する網状体4からなる構造である。
【0021】
図2に本発明の一例である斜視図、図3にその分解図を示す。
図示のものでは、平面枠部2は、一般鋼材またはステンレス鋼材からなる2本の平板2a、2bを平行に配置しその中央部を1本の平板2cで連結して平面を形成したものである。また、傾斜枠部3は、前記平板2bを含み平板3aと平板3b、3bにより、前記折板屋根20の谷部20bに添うような外径を有する台形状の平面を形成したものである。また、中央部には直交する補強用の平板3c、3dが取り付けてある。
このような平面枠部2と傾斜枠部3とを有する枠本体1に網状体4を添装するように配設して折板屋根用落雪・つらら防止装置とし、平面枠部2の前端が屋根の先端に一致し、傾斜枠部3が屋根面の上側の位置となるように屋根の軒先先端部に設置して、使用に供する。
【0022】
なお、前記の各平板は各々独立した部材を溶接等により接合し連結したものであるが、例えば、1本の平板を屈曲加工して平板2c、3cとすることや、コ字状に連続した平板3a、3b、3bとすることもできる。更に、平面枠部2と傾斜枠部3の構造も図示のものに限定されないことも勿論である。
また、平板を構成する材料は耐水性や強度を考慮するとステンレス鋼材が好ましいが、その他の鋼材や硬質樹脂板等を用いることもできる。
【0023】
更に、枠本体1の平面枠部2aの前端の平板2aと、傾斜枠部3の先端の平板3aとは、2本の補強部材5,5によりV字状に連結されて、側面視三角形状のフレームを構成した構造となっている(図4参照)。これにより、枠本体1が十分な強度を有することとなり積雪の重みや滑り圧力によって変形、破損等を生じることがなく、また保管中や運搬時においても枠本体1が変形等を生じることがない。
【0024】
前記網状体4としては、金網や金属線を格子状に組み合わせた板状体や合成樹脂製ネットを用いることができるが、凍結しにくく軽量で屋根への荷重負担が少ない合成樹脂製ネットが適している。
合成樹脂製ネットとしては、溶融押し出しによる成形が可能な、ビニル系の塩化ビニルや酢酸ビニル、オレフィン系のポリエチレン、ポリプロピレン等、これらの合成樹脂の混合体、これらの合成樹脂とエチレン−酢酸ビニル等の共重合体等の熱可塑性樹脂を使用できる。特に、屋根用落雪防止装置の設置環境に応じて耐候剤、耐熱剤等を添加したポリエチレン等のオレフィン系樹脂が、経済性、強度、無公害の面から最適に使用できる。
【0025】
この合成樹脂製ネットの網目の形状は、矩形、丸形、亀甲形等いずれの形状でもよく、また網目の大きさは、特に限定されるものではないが、雪との兼ね合いで、例えば、合成樹脂製ネットの網目を開口率が1cm〜50cmの範囲となるように設計し、屋根との間に空洞部ができやすいようにすることが好ましい。また、合成樹脂製ネットと枠本体1との接合は、公知の圧着、接着、融着、締着、挟着、係着、止着等の適宜な手段を選択することができる。
【0026】
また、前記網状体4には、傾斜枠部3の先端から谷部2bに沿い屋根面の上側方向へ更に延びる延長網部4aが形成してある。この延長網部4aは、幅は谷部2bの幅と同じで、長さは10〜20cm程度のものであり、ここに雪解けの水が絡んで雪ずれの加速を抑えることができるものである。また、排水を誘導して氷塊を作らないので、すが漏れの発生を防止し、更には積雪の浮力の発生も防止できるものである。
【0027】
前記枠本体1の平面枠部2は、平板2a、2bの幅が隣接する山部20a、20aの幅よりも若干長くなっており、ネジやビス等の締結部材(図示せず)により折板屋根の山部20aに締結固定されて、落雪防止装置の屋根への取り付けあるいは取り外しを簡単に行うことができるよう構成されている。
【0028】
このように構成した落雪防止装置は、図4に示すように、屋根面先端部の軒先に設置して使用に供されることとなる。
本発明では、一転鎖線で示すように積雪があっても、網状体4の凹凸により滑り落ちが抑えられて軒先からの落雪が防止されることとなる。また、降雪時においては、網状体4の網目を通して雪をその空洞部10に取り込み素早く溶かすことができ、更には積雪時においては、空洞部10の空気層で網状体4の上部にある雪を融かすことができるので軒先の積雪量を少なくでき、雪庇の形成が抑制されて落雪の危険性がなくなる。また、空洞部10の存在により常に融雪現象が生じるので、融水の流下が増大し、つらら、雪庇、すが漏れの発生を防止することができることとなる。
更に、本発明の落雪防止装置は、簡単な構造で容易かつ安価に製作することができるとともに、屋根への着脱作業も簡単に行うことができ、また軽量な合成樹脂製ネットを使用することで、屋根面への荷重負担を軽減することができるという利点もある。
【符号の説明】
【0029】
1 枠本体
2 平面枠部
3 傾斜枠部
4 網状体
4a 延長網部
5 補強部材
10 空洞部
20 折板屋根
20a 山部
20b 谷部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と谷部とを交互に設けた折板屋根上に設置する折板屋根用落雪・つらら防止装置であって、前記山部と面一の状態で谷部を覆う平面枠部と、この平面枠部の後端に連設され前記谷部の長手方向を遮蔽する状態で谷部内に挿入される傾斜枠部とを有する枠本体と、この枠本体に添わせて配設する網状体からなり、前記平面枠部の前端が屋根の先端に一致し、傾斜枠部が屋根面の上側の位置となるように枠本体を屋根の先端部に設置したことを特徴とする折板屋根用落雪・つらら防止装置。
【請求項2】
枠本体の平面枠部の前端と傾斜枠部の先端とは補強部材により連結されて、側面視三角形状のフレームを構成している請求項1に記載の折板屋根用落雪・つらら防止装置。
【請求項3】
網状体が合成樹脂製ネットである請求項1または2に記載の折板屋根用落雪・つらら防止装置。
【請求項4】
網状体には、傾斜枠部の先端から谷部に沿い屋根面の上側方向へ更に延びる延長網部が形成してある請求項1〜3のいずれかに記載の折板屋根用落雪・つらら防止装置。
【請求項5】
平面枠部が締結部材により折板屋根の山部に締結固定されている請求項1〜4のいずれかに記載の折板屋根用落雪・つらら防止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−270544(P2010−270544A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125076(P2009−125076)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(391007460)中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社 (47)
【出願人】(509145864)沢田建設株式会社 (2)
【出願人】(505222901)有限会社田中鉄工所 (2)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】