説明

折畳式携帯情報端末

【課題】 折畳式携帯電話機において、開いた状態と閉じた状態とで、出力する音の音圧が異なってしまう。
【解決手段】 第1の筐体110の前面に前面音孔1aを形成し、背面に背面音孔2aを形成する。開いた状態では、背面音孔蓋29が背面音孔2aを塞いで、可動式リブ28が、スピーカ6の前面側の空間を密閉する。閉じた状態では、前面音孔蓋30が前面音孔1aを塞いで、可動式リブ27が、背面側の空間を密閉する。ここで、開いた状態で密閉するスピーカ6の前面側の空間の体積と、閉じた状態で密閉するスピーカ6の背面側の空間の体積とが同じになるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカから音を出力する折畳式携帯情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機において、スピーカは、着信を知らせる着信音を発生させるために用いられてきたが、近年、携帯電話機へ配信された音楽等の出力、ハンズフリー通話やテレビ電話機能等でも用いられるようになっている。折畳式携帯電話機では、通常の待ち受け状態である閉じた状態で着信音を鳴動することが多いが、開いた状態で音楽を聴いたり、画面を見ながら会話をしたりと、折畳式携帯電話機を開いた状態で使用されることも多くなりつつある。
【0003】
従来の折畳式携帯電話機では、開いた状態での使用に対応できるように、スピーカの取り付け位置や、スピーカが出力した音声を放出する穴である音孔の位置を配慮したり、スピーカの特性を改善したり、2箇所にスピーカを実装したりしていた。
【0004】
第1の筐体と第2の筐体とを接続するヒンジ部にスピーカを備え、開いた状態で露呈する面と、閉じた状態で露呈する面とに音孔を形成した開閉式携帯端末装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、第1の筐体または第2の筐体のいずれかにスピーカを備え、スピーカを備えた筐体の正面と側面とに音孔を形成した携帯電話機が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−319041号公報 (段落0026〜0054、図1)
【特許文献2】特開2003−134201号公報 (段落0012〜0019、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、スピーカの取り付け位置や、音孔の位置を配慮したり、スピーカの特性を改善したりしても、折畳式携帯電話機を開いた状態と閉じた状態とで音圧や周波数特性に差がでてしまう。具体的には、例えば、開いた状態のLCD面やキーシート面にスピーカを設置すると、折畳式携帯電話機を開いた状態では十分な音圧を確保することができるが、閉じた状態では、音圧が劣化してしまうという問題がある。なお、前面と背面とにそれぞれ音孔を設けても、前面の音孔から放出される音と背面の音孔から放出される音とで音を打ち消し合ってしまい、十分な音圧の音を放出することができないという問題がある。また、スピーカを2箇所に実装すると、折畳式携帯電話機の小型化や形状が制限され、コストもかかるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載されている開閉式携帯端末装置は、ヒンジ部にスピーカを備えるため、ヒンジ部の小型化が困難となり、開閉式携帯端末装置の小型化や形状が制限されてしまうという問題がある。
【0009】
特許文献2に記載されている携帯電話機は、筐体の正面の音孔から出力される音圧と、筐体の側面の音孔から出力される音圧とに差がでてしまうという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、開いた状態と閉じた状態とで、出力する音の音圧や周波数特性に変化を生じない折畳式携帯情報端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による折畳式携帯情報端末は、表示部を有する第1の筐体と、操作部を有する第2の筐体とを備えた折畳式携帯情報端末であって、第1の筐体において、第1の筐体と第2の筐体とが閉じた状態である閉状態で第2の筐体と接する面である前面と、前面の反対側の面である背面とのそれぞれに、第1の筐体内部に設置されたスピーカが出力した音を放出する穴である音孔が設けられ、第1の筐体または第2の筐体に、閉状態で前面の音孔を塞ぐ前面音孔閉塞手段と、第1の筐体と第2の筐体とが開いた状態である開状態で背面の音孔を塞ぐ背面音孔閉塞手段とが設けられたことを特徴とする。
【0012】
第1の筐体に、折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して移動し、スピーカと第1の筐体の背面側の内面との間の空間である背面側空間を背面の音孔を除いて密閉する背面側空間密閉手段と、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して移動し、スピーカと第1の筐体の前面側の内面との間の空間である前面側空間を前面の音孔を除いて密閉する前面側空間密閉手段とが設けられてもよく、背面側空間密閉手段と、前面側空間密閉手段とは、背面側空間と前面側空間とが同じ体積になるように密閉してもよい。
【0013】
背面側空間密閉手段は、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動することによって移動して背面側空間を開放してもよく、前面側空間密閉手段は、折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して移動することによって前面側空間を開放してもよい。
【0014】
第1の筐体に、前面音孔閉塞手段として、折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して移動することによって前面の音孔を塞ぐ蓋と、背面音孔閉塞手段として、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して移動することによって背面の音孔を塞ぐ蓋が設けられてもよい。
【0015】
第1の筐体に、折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して、前面の音孔を塞ぐように前面音孔閉塞手段を移動させるとともに前面側空間を開放するように前面側空間密閉手段を移動させ、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して、前面の音孔を開放するように前面音孔閉塞手段を移動させるとともに前面側空間を前面の音孔を除いて密閉するように前面側空間密閉手段を移動させる前面側シャフトと、折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して、背面の音孔を開放するように背面音孔閉塞手段を移動させるとともに背面側空間を背面の音孔を除いて密閉するように背面側空間密閉手段を移動させ、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して、背面の音孔を塞ぐように背面音孔閉塞手段を移動させるとともに背面側空間を開放するように背面側空間密閉手段を移動させる背面側シャフトとが設けられてもよい。
【0016】
第2の筐体に、前面音孔閉塞手段として、折畳式携帯情報端末が開状態から閉状態に遷移すると第1の筐体の前面の音孔を塞ぐ突起部が設けられてもよく、第1の筐体に、背面音孔閉塞手段として、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動し、移動して背面の音孔を塞ぐ蓋が設けられてもよい。
【0017】
第1の筐体に、折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して、前面側空間を開放するように前面側空間密閉手段を移動させ、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して、前面側空間を前面の音孔を除いて密閉するように前面側空間密閉手段を移動させる前面側シャフトと、折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して、背面の音孔を開放するように背面音孔閉塞手段を移動させるとともに背面側空間を背面の音孔を除いて密閉するように背面側空間密閉手段を移動させ、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して、背面の音孔を塞ぐように背面音孔閉塞手段を移動させ、背面側空間を開放するように背面側空間密閉手段を移動させる背面側シャフトとが設けられてもよい。
【0018】
第1の筐体に、表示部と前面側の音孔とを覆い、前面側の音孔から放出されるスピーカの音に従って振動する板が設けられてもよい。そのような構成によれば、表示部と前面側の音孔とを含む面の全面から、スピーカが出力した音を放出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、折畳式携帯情報端末を開いた状態と閉じた状態とで、出力する音の音圧や周波数特性の変化を生じさせないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
実施の形態1.
本発明の第1の実施の形態について、折畳式携帯情報端末の一例として折畳式携帯電話機100を例に、図面を参照して説明するが、本発明は折畳式携帯電話機100に限定するものではなく、例えば、折畳式PDA(携帯情報端末)等であってもよい。図1は、折畳式携帯電話機100の第1の実施の形態の一外観例を示す正面図である。図1(a)は、折畳式携帯電話機100を開いた状態の前面図である。図1(b)は、折畳式携帯電話機100を開いた状態の背面図である。なお、折畳式携帯電話機100において、表示部9や、操作部11を有する面を前面とし、前面の反対側の面を背面とする。また、折畳式携帯電話機100を、表示部9を含む第1の筐体110と、操作部11を含む第2の筐体120とが接するように折り畳んだ状態を閉じた状態(閉状態)といい、第1の筐体110と第2の筐体120とを、表示部9と操作部11とが前面に露出するようにした状態を開いた状態(開状態)という。図2は、折畳式携帯電話機100の第1の実施の形態の一外観例を示す側面図である。図2(a)は、折畳式携帯電話機100を開いた状態の側面図である。図2(b)は、折畳式携帯電話機100を閉じた状態の側面図である。
【0021】
折畳式携帯電話機100は、表示部9を含む第1の筐体110と、操作部11を含む第2の筐体120とを含む。第1の筐体110は、第1の筐体110の前面を覆う上ケース1、第1の筐体110の背面を覆う上カバー2、受話用のスピーカであるレシーバ8、情報を表示する表示部9、第1の筐体110の内部に設置されているスピーカ6が出力した音を前面に通過させる前面音孔1a、スピーカ6が出力した音を背面に通過させる背面音孔2a、およびアンテナ10を含む。また、第1の筐体110は、内部に第1の装置基板5とスピーカ6とを備える。スピーカ6の前面側には、スピーカ6と上ケース1とを密着させるクッションが貼付され、スピーカ6の背面側には、スピーカ6と上カバー2とを密着させるクッションが貼付され、スピーカ6は、第1の装置基板5とコネクタで接続されている。表示部9は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等で実現される。なお、前面音孔1aの面積と背面音孔2aの面積とは、同じであるものとする。
【0022】
第2の筐体120は、第2の筐体120の前面を覆う下ケース3、第2の筐体120の背面を覆う下カバー4、装置基板5に操作を入力する操作部11、および音声を入力するマイクロフォン7を含む。また、第2の筐体120は、内部に第2の装置基板(図示せず)を備える。操作部11は、例えば、キーボード等で実現される。
【0023】
第1の筐体110と第2の筐体120とは、ヒンジ部12によって接続され、第1の装置基板5と第2の装置基板とは、ヒンジ部12の内部の、例えば、コネクタやフレキシブル基板等を介して接続されている。なお、ヒンジ部12は、第1の筐体110と第2の筐体120との間の振動や音の伝達を遮断する構造になっている。具体的には、ヒンジ部12は、第1の筐体110と第2の筐体120との接続部分の間隙を、例えば、モールドやクッション等で塞いでいる。
【0024】
図3は、第1の実施の形態の折畳式携帯電話機100を閉じた状態の第1の筐体110の内部構造図である。第1の筐体110は、内部に、スピーカ6と第1の装置基板5を接続するコネクタおよび第1の装置基板5と第2の装置基板とを接続するコネクタ以外を通さないようにモールドやクッション等で塞ぐようにしてある壁20、上カバー2に設けられているスピーカ用リブ23とスピーカ6とを密着させるクッション21、上ケース1に設けられているスピーカ用リブ24とスピーカ6とを密着させるクッション22、ヒンジ部12に接続され、折畳式携帯電話機100の開閉に連動して移動するシャフト(背面側シャフト)25、ヒンジ部12に接続され、折畳式携帯電話機100の開閉に応じて移動するシャフト(前面側シャフト)26、シャフト25に接続され、シャフト25の移動に連動して、折畳式携帯電話機100が閉じた状態でクッション21と密着する可動式リブ(背面側空間密閉手段)27、シャフト26に接続され、シャフト26の移動に従って動き、折畳式携帯電話機100が開いた状態でクッション22と密着する可動式リブ(前面側空間密閉手段)28、可動式リブ27に接続され、可動式リブ27の動きに連動して、折畳式携帯電話機100が開いた状態で背面音孔2aを塞ぐ背面音孔蓋(背面音孔閉塞手段)29、および可動式リブ28に接続され、可動式リブ28の動きに連動して、折畳式携帯電話機100が閉じた状態で前面音孔1aを塞ぐ前面音孔蓋(前面音孔閉塞手段)30を含む。
【0025】
壁20は、第1の装置基板5を含む空間と、スピーカ6を含む空間とを隔離し、壁20とヒンジ部12のクッション等とで、スピーカ6を含む空間を密閉する。図4は、折畳式携帯電話機100を閉じた状態の前面音孔1aと背面音孔2aとの周囲の形状を説明する構造図である。
【0026】
図4(a)は、背面音孔2aの周囲の形状を説明する構造図である。スピーカ6および背面音孔2aは、上カバー2に設けられているスピーカ用リブ23、および可動式リブ27によって周囲を覆われている。折畳式携帯電話機100を閉じるときに、すなわち折畳式携帯電話機100が開状態から閉状態に遷移するときに、シャフト25は、図3の矢印で示した方向に移動する。シャフト25が図3の矢印で示した方向に移動すると、可動式リブ27は、スピーカ用リブ23およびクッション21と密着し、スピーカ6および背面音孔2aの周囲を、背面音孔2aによる穴を除いて密閉するように覆う。また、シャフト25が図3の矢印で示した方向に移動すると、背面音孔蓋29を上カバー2の内面に沿ってスライドさせ、背面音孔2aを開放する。つまり、シャフト25は、折畳式携帯電話機100の開状態から閉状態への遷移に連動して、スピーカ6および背面音孔2aの周囲を、背面音孔2aによる穴を除いて密閉するように可動式リブ27を移動させ、背面音孔2aを開放するように背面音孔蓋29を移動させる。
【0027】
図4(b)は、前面音孔1aの周囲の形状を説明する構造図である。上ケース1に設けられているスピーカ用リブ24および可動式リブ28は、スピーカ6および前面音孔1aの周囲を覆うことができる。折畳式携帯電話機100を閉じるときに、すなわち折畳式携帯電話機100が開状態から閉状態に遷移するときに、シャフト26は、図3の矢印で示した方向に移動する。シャフト26が図3の矢印で示した方向に移動すると、可動式リブ28は、スピーカ用リブ24およびクッション22から離れ、開状態で密閉していたスピーカ6および背面音孔2aの周囲の空間を開放するように移動する。また、シャフト26が図3の矢印で示した方向に移動すると、前面音孔蓋30を上ケース1の内面に沿ってスライドさせ、前面音孔1aを塞ぐ。つまり、シャフト26は、折畳式携帯電話機100の開状態から閉状態への遷移に連動して、開状態で密閉していたスピーカ6および前面音孔1aの周囲の空間を開放するように可動式リブ28を移動させ、前面音孔1aを塞ぐように前面音孔蓋30を移動させる。その結果、折畳式携帯電話機100を閉じた状態では、図3の例に示したように、背面音孔2aは開放され、前面音孔1aは前面音孔蓋30によって塞がれる。
【0028】
図5は、第1の実施の形態の折畳式携帯電話機100を開いた状態の第1の筐体110の内部構造図である。図6は、折畳式携帯電話機100を開いた状態の前面音孔1aと背面音孔2aとの周囲の形状を説明する構造図である。
【0029】
図6(a)は、背面音孔2aの周囲の形状を説明する構造図である。上カバー2に設けられているスピーカ用リブ23および可動式リブ27は、スピーカ6および背面音孔2aの周囲を覆うことができる。折畳式携帯電話機100を開くときに、すなわち折畳式携帯電話機100が閉状態から開状態に遷移するときに、シャフト25は、図5の矢印で示した方向に移動する。シャフト25が図5の矢印で示した方向に移動すると、可動式リブ27は、スピーカ用リブ23およびクッション21から離れ、閉状態で密閉していたスピーカ6および背面音孔2aの周囲の空間を開放するように移動する。また、シャフト25が図5の矢印で示した方向に移動すると、背面音孔蓋29を上カバー2の内面に沿ってスライドさせ、背面音孔2aを塞ぐ。つまり、シャフト25は、折畳式携帯電話機100の閉状態から開状態への遷移に連動して、閉状態で密閉していたスピーカ6および背面音孔2aの周囲の空間を開放するように可動式リブ27を移動させ、背面音孔2aを塞ぐように背面音孔蓋29を移動させる。
【0030】
図6(b)は、前面音孔1aの周囲の形状を説明する構造図である。スピーカ6および前面音孔1aは、上ケース1に設けられているスピーカ用リブ24および可動式リブ28によって周囲を覆われている。折畳式携帯電話機100を開くときに、すなわち折畳式携帯電話機100が閉状態から開状態に遷移するときに、シャフト26は、図5の矢印で示した方向に移動する。シャフト26が図5の矢印で示した方向に移動すると、可動式リブ28は、スピーカ用リブ24およびクッション22と密着し、スピーカ6および前面音孔1aの周囲を、前面音孔1aによる穴を除いて密閉するように覆う。また、シャフト26が図5の矢印で示した方向に移動すると、前面音孔蓋30を上ケース1の内面に沿ってスライドさせ、前面音孔1aを開放する。つまり、シャフト26は、折畳式携帯電話機100の閉状態から開状態への遷移に連動して、スピーカ6および前面音孔1aの周囲を、前面音孔1aによる穴を除いて密閉するように可動式リブ28を移動させ、前面音孔1aを開放するように前面音孔蓋30を移動させる。その結果、折畳式携帯電話機100を開いた状態では、図5の例に示したように、前面音孔1aは開放され、背面音孔2aは背面音孔蓋29によって塞がれている。
【0031】
本発明の第1の実施の形態の動作について説明する。ここで、図3において、スピーカ用リブ23、可動式リブ27、上カバー2、およびスピーカ6で覆われた空間(背面側空間)を空間V2とする。また、図5において、スピーカ用リブ24、可動式リブ28、上ケース1、およびスピーカ6で覆われた空間(前面側空間)を空間V3とする。さらに、壁20、上ケース1、上カバー2、およびヒンジ部12のクッションで覆われた空間のうち、空間V2と空間V3を除いた空間を空間V1とする。そして、可動式リブ27が、スピーカ用リブ23およびクッション21と密着したときの空間V2の体積と、可動式リブ28が、スピーカ用リブ24およびクッション22と密着したときの空間V3の体積とは、同じであるものとする。
【0032】
折畳式携帯電話機100が閉じた状態では、背面音孔2aは開放され、背面側空間である空間V2は、背面音孔2aによる穴を除いて密閉され、前面音孔1aは前面音孔蓋30によって塞がれ、前面側空間である空間V3は開放されて空間V1とつながっている。このとき、スピーカ6が、例えば、着信音を出力すると、背面音孔2aから着信音が放出される。このとき、空間V2は、スピーカ6の前気室(前面容積)になり、空間V1および空間V3は、スピーカ6の後気室(背面容積)となる。
【0033】
折畳式携帯電話機100が開かれると、シャフト25およびシャフト26が図5の矢印で示した方向に移動し、可動式リブ27をスピーカ用リブ23およびクッション21から離して空間V2を開放して空間V2と空間V1とをつなげ、背面音孔蓋29を上カバー2の内面に沿ってスライドさせ、背面音孔2aを塞ぐ。また、可動式リブ28は、スピーカ用リブ24およびクッション22と密着して空間V3を前面音孔1aによる穴を除いて密閉し、前面音孔蓋30を上ケース1の内面に沿ってスライドさせ、前面音孔1aを開放する。
【0034】
折畳式携帯電話機100が開いた状態で、スピーカ6が、例えば、着信音を出力すると、開放されている前面音孔1aから着信音が放出される。このとき、空間V3は、スピーカ6の前気室(前面容積)になり、空間V1および空間V2は、スピーカ6の後気室(背面容積)となる。
【0035】
以上、述べたように、この実施の形態によれば、空間V2と空間V3との体積が同じであるため、折畳式携帯電話機100を閉じた状態と、開いた状態とで、スピーカ6の前気室、および後気室の体積が同じになる。そのため、折畳式携帯電話機100を閉じた状態と、開いた状態とで、放出される音の音圧および周波数特性が同じになり、折畳式携帯電話機100の開閉による音圧や周波数特性の変化を防ぐことができるという効果がある。
【0036】
また、この実施の形態では、折畳式携帯電話機100を閉じた状態と、開いた状態とで、スピーカ6が出力する音を同様の音圧および周波数特性で放出するように構成したが、この構成を、マイクロフォン7の特性および実装位置を考慮した上で、レシーバ8に適用してもよい。すると、折畳式携帯電話機100を開いた状態と同様に、閉じた状態でも通話することが可能になる。
【0037】
実施の形態2.
本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態は、下ケース3が、折畳式携帯電話機100を閉じた状態で前面音孔1aを完全に塞ぐような突起状のリブ(突起部)を有し、第1の筐体110は、前面音孔蓋30を有さない。その他の構成は第1の実施の形態と同様なため、その他の構成要素には図1〜図6と同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
折畳式携帯電話機100を閉じるときに、すなわち折畳式携帯電話機100が開状態から閉状態に遷移するときに、シャフト25は、図3の矢印で示した方向に移動する。シャフト25が図3の矢印で示した方向に移動すると、可動式リブ27は、スピーカ用リブ23およびクッション21と密着し、スピーカ6および背面音孔2aの周囲を、背面音孔2aによる穴を除いて密閉するように覆う。また、シャフト25が図3の矢印で示した方向に移動すると、背面音孔蓋29を上カバー2の内面に沿ってスライドさせ、背面音孔2aを開放する。つまり、シャフト25は、折畳式携帯電話機100の開状態から閉状態への遷移に連動して、スピーカ6および背面音孔2aの周囲を、背面音孔2aによる穴を除いて密閉するように可動式リブ27を移動させ、背面音孔2aを開放するように背面音孔蓋29を移動させる。
【0039】
折畳式携帯電話機100を閉じるときに、すなわち折畳式携帯電話機100が開状態から閉状態に遷移するときに、シャフト26は、図3の矢印で示した方向に移動する。シャフト26が図3の矢印で示した方向に移動すると、可動式リブ28は、スピーカ用リブ24およびクッション22から離れ、開状態で密閉していたスピーカ6および背面音孔2aの周囲の空間を開放するように移動する。つまり、シャフト26は、折畳式携帯電話機100の開状態から閉状態への遷移に連動して、開状態で密閉していたスピーカ6および前面音孔1aの周囲の空間を開放するように可動式リブ28を移動させる。また、第2の筐体120の下ケース3が有する突起状のリブが、前面音孔1aを塞ぐ。その結果、折畳式携帯電話機100を閉じた状態では、背面音孔2aは開放され、前面音孔1aは第2の筐体120の下ケース3が有する突起状のリブによって塞がれる。
【0040】
折畳式携帯電話機100を開くときに、すなわち折畳式携帯電話機100が閉状態から開状態に遷移するときに、シャフト25は、図5の矢印で示した方向に移動する。シャフト25が図5の矢印で示した方向に移動すると、可動式リブ27は、スピーカ用リブ23およびクッション21から離れ、閉状態で密閉していたスピーカ6および背面音孔2aの周囲の空間を開放するように移動する。また、シャフト25が図5の矢印で示した方向に移動すると、背面音孔蓋29を上カバー2の内面に沿ってスライドさせ、背面音孔2aを塞ぐ。つまり、シャフト25は、折畳式携帯電話機100の閉状態から開状態への遷移に連動して、閉状態で密閉していたスピーカ6および背面音孔2aの周囲の空間を開放するように可動式リブ27を移動させ、背面音孔2aを塞ぐように背面音孔蓋29を移動させる。
【0041】
折畳式携帯電話機100を開くときに、すなわち折畳式携帯電話機100が閉状態から開状態に遷移するときに、シャフト26は、図5の矢印で示した方向に移動する。シャフト26が図5の矢印で示した方向に移動すると、可動式リブ28は、スピーカ用リブ24およびクッション22と密着し、スピーカ6および前面音孔1aの周囲を、前面音孔1aによる穴を除いて密閉するように覆う。つまり、シャフト26は、折畳式携帯電話機100の閉状態から開状態への遷移に連動して、スピーカ6および前面音孔1aの周囲を、前面音孔1aによる穴を除いて密閉するように可動式リブ28を移動させる。また、第2の筐体120の下ケース3が有する突起状のリブは、前面音孔1aを開放する。その結果、折畳式携帯電話機100を開いた状態では、前面音孔1aは開放され、背面音孔2aは背面音孔蓋29によって塞がれる。
【0042】
以上述べたように、この実施の形態によれば、閉状態で、第2の筐体120の下ケース3が有する突起状のリブが、前面音孔1aを塞ぐので、前面音孔蓋30がなくても第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0043】
実施の形態3.
本発明の第3の実施の形態について、図面を参照して説明する。図7は、第3の実施の形態における折畳式携帯電話機100の第1の筐体110の一外観例を説明する正面図である。この実施の形態では、折畳式携帯電話機100の第1の筐体110の前面に、表示部9と前面音孔1aとを覆うようにクッション14を介して板13を設置している。その他の構成は第1の実施の形態と同様なため、その他の構成要素には図1〜図6と同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
図8は、第3の実施の形態の折畳式携帯電話機100を開いた状態の第1の筐体110の内部構造図である。板13は、クッション14を介して上ケース1に接着されている。なお、板13は、表示部9の表示を透過する程度に透明であって、例えば、ポリスチレン等のプラスチックの板であり、極力薄いことが好ましい。
【0045】
折畳式携帯電話機100を開いた状態で、スピーカ6が、例えば、着信音を出力すると、開放されている前面音孔1aから着信音が放出される。すると、上ケース1とクッション14と板13とによって密閉されている空間V4を介して、着信音による空気の振動が板13に伝達される。そして、板13は、伝達された空気の振動に従って振動し、着信音を折畳式携帯電話機100の前面に放出する。
【0046】
折畳式携帯電話機100を閉じた状態の動作は、第1の実施の形態における動作と同様なため、説明を省略する。
【0047】
以上、述べたように、この実施の形態によれば、スピーカ6が出力した着信音を、表示部9と前面音孔1aとを覆う面の全面から放出することができる。なお、空間V4の体積が、空間V2および空間V3の体積と比較して無視できる程度(スピーカ6が出力した音の音圧および周波数特性に影響を与えない程度)の大きさであり、板13が、スピーカ6が出力した音の音圧および周波数特性に影響を与えない特性を有していれば、第1の実施の形態における効果と同様に、折畳式携帯電話機100を閉じた状態と、開いた状態とで、放出される音の音圧および周波数特性が同じになり、折畳式携帯電話機100の開閉による音圧や周波数特性の変化を防ぐことができる。
【0048】
なお、前述した各実施の形態における各クッションは、例えば、スポンジやウレタンフォームであり、より高密度であることが好ましい。例えば、200kg/mや、480kg/m等である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、折畳式携帯電話機や、折畳式PDA等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】折畳式携帯電話機の第1の実施の形態の一外観例を示す正面図である。
【図2】折畳式携帯電話機の第1の実施の形態の一外観例を示す側面図である。
【図3】第1の実施の形態の折畳式携帯電話機を閉じた状態の第1の筐体の内部構造図である。
【図4】折畳式携帯電話機を閉じた状態の前面音孔と背面音孔との周囲の形状を説明する構造図である。
【図5】第1の実施の形態の折畳式携帯電話機を開いた状態の第1の筐体の内部構造図である。
【図6】折畳式携帯電話機を開いた状態の前面音孔と背面音孔との周囲の形状を説明する構造図である。
【図7】第3の実施の形態における折畳式携帯電話機の第1の筐体の一外観例を説明する正面図である。
【図8】第3の実施の形態の折畳式携帯電話機を開いた状態の第1の筐体の内部構造図である。
【符号の説明】
【0051】
1 上ケース
1a 前面音孔
2 上カバー
2a 背面音孔
3 下ケース
4 下カバー
5 第1の装置基板
6 スピーカ
7 マイクロフォン
8 レシーバ
9 表示部
10 アンテナ
11 操作部
12 ヒンジ部
13 板
14、21、22 クッション
20 壁
23、24 スピーカ用リブ
25、26 シャフト
27、28 可動式リブ
29 背面音孔蓋
30 前面音孔蓋
100 折畳式携帯電話機
110 第1の筐体
120 第2の筐体
V1、V2、V3、V4 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を有する第1の筐体と、操作部を有する第2の筐体とを備えた折畳式携帯情報端末において、
前記第1の筐体と前記第2の筐体とが閉じた状態である閉状態で前記第2の筐体に接する前記第1の筐体における面である前面と、前記前面の反対側の面である背面とのそれぞれに、前記第1の筐体の内部に設置されたスピーカが出力した音を放出する穴である音孔が設けられ、
前記第1の筐体または前記第2の筐体に、前記閉状態で前記前面の前記音孔を塞ぐ前面音孔閉塞手段と、前記第1の筐体と前記第2の筐体とが開いた状態である開状態で前記背面の前記音孔を塞ぐ背面音孔閉塞手段とが設けられた
ことを特徴とする折畳式携帯情報端末。
【請求項2】
第1の筐体に、折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して移動し、スピーカと前記第1の筐体の背面側の内面との間の空間である背面側空間を背面の音孔を除いて密閉する背面側空間密閉手段と、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して移動し、前記スピーカと前記第1の筐体の前面側の内面との間の空間である前面側空間を前面の音孔を除いて密閉する前面側空間密閉手段とが設けられ、
前記背面側空間密閉手段と、前記前面側空間密閉手段とは、前記背面側空間と前記前面側空間とが同じ体積になるように密閉する
請求項1記載の折畳式携帯情報端末。
【請求項3】
背面側空間密閉手段は、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して移動することによって背面側空間を開放し、
前面側空間密閉手段は、折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して移動することによって前面側空間を開放する
請求項2記載の折畳式携帯情報端末。
【請求項4】
第1の筐体に、前面音孔閉塞手段として、折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して移動することによって前面の音孔を塞ぐ蓋と、背面音孔閉塞手段として、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して移動することによって背面の音孔を塞ぐ蓋とが設けられた
請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載の折畳式携帯情報端末。
【請求項5】
第1の筐体に、
折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して、前面の音孔を塞ぐように前面音孔閉塞手段を移動させるとともに前面側空間を開放するように前面側空間密閉手段を移動させ、前記折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して、前記前面の音孔を開放するように前記前面音孔閉塞手段を移動させるとともに前記前面側空間を前記前面の音孔を除いて密閉するように前記前面側空間密閉手段を移動させる前面側シャフトと、
前記折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して、背面の音孔を開放するように背面音孔閉塞手段を移動させるとともに背面側空間を前記背面の音孔を除いて密閉するように背面側空間密閉手段を移動させ、前記折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して、前記背面の音孔を塞ぐように前記背面音孔閉塞手段を移動させるとともに前記背面側空間を開放するように前記背面側空間密閉手段を移動させる背面側シャフトとが設けられた
請求項2から請求項4のうちいずれか1項記載の折畳式携帯情報端末。
【請求項6】
第2の筐体に、前面音孔閉塞手段として、折畳式携帯情報端末が開状態から閉状態に遷移すると第1の筐体の前面の音孔を塞ぐ突起部が設けられ、
前記第1の筐体に、背面音孔閉塞手段として、折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して移動することによって背面の音孔を塞ぐ蓋が設けられた
請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載の折畳式携帯情報端末。
【請求項7】
第1の筐体に、
折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して、前面側空間を開放するように前面側空間密閉手段を移動させ、前記折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して、前面側空間を前記前面の音孔を除いて密閉するように前記前面側空間密閉手段を移動させる前面側シャフトと、
前記折畳式携帯情報端末の開状態から閉状態への遷移に連動して、背面の音孔を開放するように背面音孔閉塞手段を移動させるとともに背面側空間を前記背面の音孔を除いて密閉するように背面側空間密閉手段を移動させ、前記折畳式携帯情報端末の閉状態から開状態への遷移に連動して、前記背面の音孔を塞ぐように前記背面音孔閉塞手段を移動させるとともに前記背面側空間を開放するように前記背面側空間密閉手段を移動させる背面側シャフトとが設けられた
請求項2、請求項3および請求項6のうちいずれか1項記載の折畳式携帯情報端末。
【請求項8】
第1の筐体に、表示部と前面側の音孔とを覆い、前記前面側の前記音孔から放出されるスピーカの音に従って振動する板が設けられた
請求項1から請求項7のうちいずれか1項記載の折畳式携帯情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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