説明

押出し原料用乾燥容器

【課題】熱可塑性ウレタンからなる防水・遮水シートを熱融着にて接合する際に用いる融着材の押出しに用いるロープ状原料を乾燥状態に保って、防水・遮水シートの接合が良好に行うことができるようにするための押出し原料用乾燥容器を提供する。
【解決手段】密閉容器中に熱可塑性ウレタン製の防水・遮水シートを融着接合する融着材の押出しに用いるロープ状原料を収容できるスペースを有し、容器には前記ロープ状原料Gを外部へ出す導出孔5を備え、更に容器2内には乾燥剤6を配置した押出し原料用乾燥容器である。また、容器2内には回転自在なテーブル4を配置し、巻き状態にしたロープ状原料Gを置くことによって、ロープ状原料Gを導出孔5から引き出すことによって前記テーブル4が回転しロープ状原料Gを順次に繰出せるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ウレタンからなる防水・遮水シートを熱融着にて接合する際に用いる融着材の押出しに用いるロープ状原料を乾燥状態に保って、防水・遮水シートの接合が良好に行うことができるようにするための押出し原料用乾燥容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物最終処分場における環境汚染と安全性の問題がクローズアップされている。廃棄物最終処分場は厚生省の指針に遮水性を施すように義務付けられている。一般的には、遮水シートによる表面遮水工法が多く採用されている。この表面遮水工法は、工地基盤の安定性、遮水シートの敷設工事の確実性、遮水シートの耐久性、維持管理の確実性が必要である。
【0003】
表面者水工方の今までの問題は、施工時点では問題がなかったとしても、湧き水などによって洗掘された場合や地盤沈下によって左右されやすいため、下地への敷設性、シートの接合性、耐クリープ性などを考慮したような確実な施工ができないこともあった。
【0004】
上記廃棄物最終処分場に用いる遮水シートとしては、加硫ゴム、塩化ビニル、またポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)のようなポリオレフィン樹脂をシート状にしたもの、上記樹脂に部分架橋もしくは完全架橋させたものオレフィン系共重合ゴムとポリオレフィンプラスチックとを予め動的に熱処理して部分架橋させた熱可塑性エラストマーに密度0.910〜0.950g/mmのエチレン重合体を混合してシート状に成形した遮水シートがある。
【0005】
この種の遮水シートは引張強度、引裂強度、破断伸び等において優れた物性値を有するだけでなく、接着性および柔軟性に優れているために土木工事用として好適である。
【0006】
しかし、かかる遮水シートは環境温度が高くなると熱膨張率が大きく、且つ変形時の応力が小さい。そのため、夏場に施工したシートは軟化し膨張した状態で敷設されるため、冬場においては収縮してその末端が固定具から外れたり、また法尻部では緊張して無理な応力を受けるといった問題が発生した。また、耐外傷性にかけ、野鳥あるいは下地に存在する鋭利な異物によって破損する危険性があった。このため、遮水シート内に織物等の補強材を介在させたものが提案されているが、遮水シートが硬くなり、施工性にかけるといった問題が指摘された。
【0007】
そこでそのような問題点を改善して、環境温度の左右されにくく、耐外傷性に強く熱融着による確実な接合が可能であり、そして耐久性にも優れた遮水シートとして熱可塑性ウレタンからなる遮水シートが提案されている(特許文献1)。
【0008】
熱可塑性ウレタンからなる遮水シートのシート同士の接合は熱融着により行われるが、遮水シートの端部を例えば熱風などで加熱して溶融させ端部同士を重ね合わせて融着する。更に水密性を確実なものにするために同様に熱可塑性ウレタンからなるシール材を加熱溶融して押出しながら接合部に施すといったことが行われている。
【0009】
【特許文献1】特開平6−465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
シール材は、原料となるロープ状の熱可塑性ウレタンを押出機に投入して内部で加熱溶融させ、ノズルから溶融した状態の熱可塑性ウレタンを遮水シートの接合部に沿って押出しシール材を施し、シートを接合していく。
【0011】
しかし、水分をある程度以上吸収した熱可塑性ウレタンの原料を用いて押出ししたシール材は発泡したような状態になって、シール材としての接合性能と水密性が劣ってしまうことと外観的にもかなり劣るものとなってしまう。しかし、シートを接合する現場において水分を吸収しないように保管することは困難である。
【0012】
そこで本発明ではシール材の原料として用いる熱可塑性ウレタンからなるロープが水分を吸収しないように保管・保存することができる押出し原料用乾燥容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような目的を達成するために本発明の請求項1では、実質的に密閉した容器の中に熱可塑性ウレタン防水・遮水シートを融着接合する融着材の押出しに用いるロープ状原料を収容できるスペースを有し、容器には前記ロープ状原料を外部へ出す導出孔を備え、該導出孔は前記ロープ状原料の断面と略同一形状であり、更に容器内には乾燥剤を置いたことを特徴とする押出し原料用乾燥容器である。
【0014】
また、請求項2では容器内には回転自在なテーブルを配置し、巻き状態にしたロープ状原料を置くことによって、ロープ状原料を導出孔から引き出すことによって前記テーブルが回転しロープ状原料を順次に繰出せるようにした請求項1記載の押出し原料用乾燥容器である。
【0015】
容器内には回転自在な掛け台を配置し、巻き状態にしたロープ状原料を前記掛け台に巻き掛け、ロープ状原料を導出孔から引き出すことによって前記テーブルが回転しロープ状原料を順次に繰出せるようにした請求項1記載の押出し原料用乾燥容器である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1のようにシール材の原料となる熱可塑性ウレタンからなるロープ状原料を、密閉した容器に閉じ込めることで空気中の水分を吸収するのを防止することができ、必要に応じて順次送り出して用いることができるので水分の少ない状態で押出しに供することができる。また、乾燥剤を入れていることからより水分のない状態で保存することができる。
【0017】
請求項2および請求項3では、容器内に回転自在なテーブルまたは掛け台を配置し、ロープ状原料を巻き状態にしたものを載置して、ロープ状原料を導出孔から引き出すにしたがってテーブル又は掛け台が回転し順次引き出せるように構成しており、ロープ状原料のスムーズな引き出しを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の押出し原料用乾燥容器1に巻き状態にしたロープ状原料Gを入れたところの斜視概要図であり、図2は平面図である。本発明の押出し原料用乾燥容器1は図1、2に示すようなもので、実質的に密閉した容器本体2の内部に容器本体2に対して回転自在に取り付けた軸3と、該軸3と一体的に回転する円形のテーブル4を有しており、容器本体2の壁面にロープ状原料を容器から外部に導き出す導出孔5が設けられている。また、容器本体2の空きスペースに乾燥剤6が置かれており、湿度計7が容器本体2の一壁面に備え付けられている。
【0019】
そしてテーブル4の上に巻き状態にしたロープ状原料Gを置いて、端部を導出孔5から外部へ出すことができるようになっている。ロープ状原料Gを導出孔5から引き出すとテーブル4が図2における一重矢印の方向へ回転し、ロープ状原料Gはスムーズに導出孔5から外部へ導き出される。外へ出た原料Gは押出し機内に投入されて、溶融され押出されてシール材として使用される。
【0020】
容器本体2の壁面に設けられた導出孔5はロープ状原料Gの径と略同じかわずかに大きい径としておくことによって容器1内の密閉性が保たれる。ロープ状原料Gの径の1.0〜1.2倍とすることが好ましい。
【0021】
乾燥剤としては、特に限定するものではないがシリカゲル、粒状もしくは塊状の塩化カルシウム、粒状のソーダ石灰などを用いることができる。
【0022】
本発明が適用できるロープ状原料Gの熱可塑性ウレタンは、例えば1分子中に2個以上の活性水素を有するポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールからなるポリオールと、ポリイソシアネートから得られる直鎖状のもので、平均分子量が10〜20万のものである。例えば直鎖ジポリオール、短鎖ジポリオール、そしてジイソシアネートから得られる直鎖状の熱可塑性ウレタンがあり、この場合には、直鎖ジポリオールはエラストマーのソフトセグメントになり、ジイソシアネートと短鎖ジポリオールはハードセグメントを形成する。
【0023】
ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、トリメチロールプロパン等のグリコール類、グリセリン等のトリオール類等短鎖ポリオール類、またポリ(オキシプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシエチレンプロピレン)ポリオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール、またポリ(3−メチルペンタンアジペート)ジオール、ポリ(プロピレンアジペート)ジオール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオール、ポリ(ヘキサンアジペート)ジオール等のポリエステルポリオール、あるいはポリブタジエンポリオール等の長鎖ポリオールなどが挙げられる。これらの一種又は二種以上の混合物として用いられる。
【0024】
また、ポリイソシアネートは、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、公知の方法で液状化した液状ジフェニルメタンジイソシアネート(液状MDI)、トリレンジイソシアネートの粗製物(クルードTDI)、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは一種又は二種以上混合して使用することができる。
【0025】
本発明において防水シートおよび融着材の原料として用いる熱可塑性ウレタンエラストマーは、ポリエステルタイプでもポリエーテルタイプでも使用するコTがおできるが、耐加水分解性が大きく、低温でも柔軟性が大きい、そして微生物分解の耐性が大きいポリエーテルタイプが好ましい。そして、上記熱可塑性ウレタンエラストマーは、廃棄物最終処分場に用いる場合に紫外線吸収剤、カーボンブラックを添加して耐候性を向上させて用いることも可能である。
【0026】
例えば熱可塑性ウレタンに添加される紫外線吸収剤として、2,2’−4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系有機化合物、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−メチル−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロ−フタルイミジルメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系有機化合物、2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリルなどのシアノアクリレート系有機化合物、〔2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)〕−2−エチルヘキシルアミン−ニッケルなどの金属錯塩等が挙げられる。上記紫外線吸収剤の添加量は、0.1〜1.0質量%であり、0.1質量%未満の場合には紫外線の吸収が不充分であり、一方1.0質量%を越えると、遮水シート表面のブルーム等によって接着時における熱融着性が阻害される。
【0027】
また補強剤としてカーボンブラックを配合するときには2〜10質量%の範囲で添加する。他に酸化防止剤を添加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
熱可塑性ウレタンからなる防水・遮水シートを熱融着にて接合する際に用いる融着材の押出しに用いるロープ状原料を乾燥状態に保って、防水・遮水シートの接合が良好に行うことができるようにするための押出し原料用乾燥容器として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の押出し原料用乾燥容器の斜視図である。
【図2】本発明の押出し原料用乾燥容器の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 押出し原料用乾燥容器
2 容器本体
3 軸
4 テーブル
5 導出孔
6 乾燥剤
7 湿度計
G 原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に密閉した容器の中に熱可塑性ウレタン防水・遮水シートを融着接合する融着材の押出しに用いるロープ状原料を収容できるスペースを有し、容器には前記ロープ状原料を外部へ出す導出孔を備え、該導出孔は前記ロープ状原料の断面と略同一形状であり、更に容器内には乾燥剤を配置したことを特徴とする押出し原料用乾燥容器。
【請求項2】
容器内には回転自在なテーブルを配置し、巻き状態にしたロープ状原料を置くことによって、ロープ状原料を導出孔から引き出すことによって前記テーブルが回転しロープ状原料を順次に繰出せるようにした請求項1記載の押出し原料用乾燥容器。
【請求項3】
容器内には回転自在な掛け台を配置し、巻き状態にしたロープ状原料を前記掛け台に巻き掛け、ロープ状原料を導出孔から引き出すことによって前記テーブルが回転しロープ状原料を順次に繰出せるようにした請求項1記載の押出し原料用乾燥容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−35738(P2006−35738A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221496(P2004−221496)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】