説明

押出成形装置

【課題】バレルの温度を均一化させて、好適に成形体を製造することを可能にする押出成形装置を提供する。
【解決手段】筒状のバレル20と、バレル20の外周に設置された加熱ヒータ4と、軸線O2、O3をバレル20の中心軸O1と平行に配してバレル20の内孔21内に並設された第1スクリュー10及び第2スクリュー11とを備える押出成形装置Aであって、バレル20の中心軸O1に直交する断面視で第1スクリュー10と第2スクリュー11の軸線O2、O3を通る直線S上に長軸を配した楕円形状を呈するように、バレル20を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば雨樋などを製造する際には、押出成形装置が用いられている。図1に示すように、押出成形装置1は、バレル(シリンダーバレル)2と、バレル2内に設けられたスクリュー3と、バレル2の外周に設けられた加熱ヒータ4と、粉状の熱可塑性樹脂をバレル2内に供給するホッパ5と、バレル2の先端側に接続して設けられた金型6とを備えて構成されている。さらに、押出成形装置1は、金型6から押し出された成形体を所定の形状にするフォーミング7と、所定の形状にした成形体を冷却して固化する冷却装置8と、成形体を引取る引取り機9とを備えている。
【0003】
また、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂を原料にして成形体を製造する際には、図2及び図3に示すように、バレル2内に2つのスクリュー(2軸スクリュー)10、11を備えた押出成形装置1が多用される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この押出成形装置1では、バレル2が断面円形の筒状(断面真円の筒状)に形成されている。また、バレル2は、その内孔12が第1スクリュー10を挿入して収容する断面円形状の第1スクリュー収容孔部13と、第2スクリュー11を挿入して収容する断面円形状の第2スクリュー収容孔部14とを備えて形成されている。第1スクリュー収容孔部13と第2スクリュー収容孔部14は、同径で形成され、バレル2の中心軸O1を含む鉛直面内で連通している。これにより、バレル2は、その内孔12が断面視で略メガネ状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−150510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の2軸スクリューを備えた押出成形装置1においては、バレル2が断面円形の筒状に形成されているため、図3に示すように、バレル2の鉛直方向の肉厚t1が水平方向の肉厚t2よりも大きくなる。このため、加熱ヒータ4でバレル2を加熱した際に、バレル2の肉厚の違いによって温度分布が生じてしまう。例えば、バレル2の上下部分(肉厚t1が大きな部分)の温度が、バレル2の左右部分(肉厚t2が小さな部分)の温度よりも10〜20℃大きくなってしまう。また、このとき、第1スクリュー収容孔部13と第2スクリュー収容孔部14が連通する部分の突端2a付近の温度が特に高くなる。
【0007】
そして、温度分布が生じると、第1スクリュー10と第2スクリュー11の回転によって内孔12を流動する熱可塑性樹脂の粘度に分布が生じて流動性が不均一になり、バレル2の温度が高い部分は熱可塑性樹脂が速く押し出され、温度が低い部分は熱可塑性樹脂が遅く押し出される。
【0008】
このように熱可塑性樹脂の流れに変動が生じると、金型6から押し出される成形体の肉厚に厚いところと薄いところができたり、大きな残留ひずみが生じた状態で成形体が成形され、外力が加わった際に破損しやすくなる。
【0009】
また、バレル2内で熱可塑性樹脂が過熱されて酸化または熱分解して炭化物やゲル化物等が発生しやすくなり、異物が成形体(製品)に混入して外観不良を生じさせる場合があった。
【0010】
このため、バレル2の外周に設置した加熱ヒータ4を高精度で制御することで温度を均一化させているのが現状であり、加熱ヒータ4を高精度で制御することなく、温度(バレルの各部位の熱容量)を均一化させることを可能にする手法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0012】
請求項1記載の押出成形装置は、筒状のバレルと、前記バレルの外周に設置された加熱ヒータと、軸線を前記バレルの中心軸に平行に配して前記バレルの内孔内に並設された第1スクリュー及び第2スクリューとを備える押出成形装置であって、前記バレルが、前記バレルの中心軸に直交する断面視で前記第1スクリューと前記第2スクリューの軸線を通る直線上に長軸を配した楕円形状で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の押出成形装置においては、バレルが断面で楕円形状で形成されていることにより、断面円形状で形成した従来の場合と比較し、バレルの肉厚を均一化することが可能になる。このため、バレルの外面に設置した加熱ヒータでバレルを加熱した際に、肉厚の違いに起因して温度分布が生じることを抑えることができる。これにより、第1スクリューと第2スクリューの回転によって内孔を流動する熱可塑性樹脂の粘度や流れに分布(変動)が生じることを抑えることが可能になる。
【0014】
よって、成形体の肉厚に厚いところと薄いところができてしまったり、大きな残留ひずみが生じることを抑え、また、炭化物やゲル化物等の異物の発生を抑えることが可能になり、従来のように加熱ヒータを高精度で制御することなく、バレルの温度を均一化させて、耐衝撃性に優れるなど、好適に成形体を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】押出成形装置を示す図である。
【図2】押出成形装置のバレル、スクリュー、金型を示す横断面図である。
【図3】従来の押出成形装置のバレル及びスクリューを示す縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る押出成形装置のバレル及びスクリューを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1、図2及び図4を参照し、本発明の一実施形態に係る押出成形装置について説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態の押出成形装置Aは、例えば雨樋などを製造する際に使用されるものであり、従来と同様、バレル20と、バレル20内に配設された2軸スクリュー10、11と、バレル20の外周に設けられた加熱ヒータ4と、バレル20の基端側に接続されて粉状の熱可塑性樹脂をバレル20内に供給するホッパ5と、バレル20の先端側に接続して設けられた金型6と、金型6から押し出された成形体を所定の形状にするフォーミング7と、成形体を冷却して固化する冷却装置7と、成形体を引取る引取り機8とを備えて構成されている。
【0018】
一方、本実施形態の押出成形装置Aのバレル20は、図4に示すように、断面楕円形の筒状に形成されている。また、内孔21が第1スクリュー10を挿入して収容する断面円形状の第1スクリュー収容孔部13と、第2スクリュー11を挿入して収容する断面円形状の第2スクリュー収容孔部14とを備えて形成されている。そして、第1スクリュー10の軸線O2と第2スクリュー11の軸線O3をバレル20の中心軸O1と平行にした状態で、第1スクリュー10と第2スクリュー11がそれぞれ、第1スクリュー収容孔部13と第2スクリュー収容孔部14に挿入して並設されている。また、このバレル20の内孔21は、バレル21の中心軸O1を含む鉛直面内で第1スクリュー収容孔部13と第2スクリュー収容孔部14が連通している。これにより、第1スクリュー収容孔部13と第2スクリュー収容孔部14が形成された部分は、内孔21が断面視で略メガネ状に形成されている。
【0019】
また、本実施形態のバレル20は、図4に示すように、バレル20の中心軸O1に直交する断面視で、第1スクリュー10と第2スクリュー11の軸線O2、O3を通って水平方向に延びる直線S上に長軸を配し、バレル20の中心軸O1を含む鉛直面内に短軸を配した楕円形状で形成されている。これにより、従来のように断面円形状に形成したバレル2と比較し、肉厚が均一化され、鉛直方向の肉厚t1が水平方向の肉厚t2と略同等になっている。
【0020】
このように構成した本実施形態の押出成形装置Aでは、図1、図2及び図4に示すように、バレル20を加熱ヒータ4で加熱するとともに、ホッパ5から粉状の熱可塑性樹脂をバレル20内に供給する。そして、第1スクリュー10が軸線O2中心の一方向に、第2スクリュー11が軸線O3中心の他方向に回転し、バレル20内に供給した熱可塑性樹脂が各スクリュー10、11の回転によって溶融・混練され、バレル20先端から金型6内に、さらに金型6から外側に押し出される。また、金型6から押し出された成形体は、フォーミングで所定の形状(最終製品形状)にサイジングされ、冷却装置7で冷却固化され、引取り機9に引き取られる。
【0021】
そして、本実施形態の押出成形装置Aにおいては、バレル20が断面楕円形状で形成されて肉厚が均一化されているため、加熱ヒータ4でバレル20を加熱した際に、肉厚の違いに起因して温度分布が生じることが抑えられ、バレル20の温度が均一化される。これにより、第1スクリュー10と第2スクリュー11の回転によって内孔21を流動する熱可塑性樹脂の粘度や流れに分布(変動)が生じることも抑止されることになる。
【0022】
したがって、本実施形態の押出成形装置Aにおいては、バレル20が断面楕円形状で形成されていることにより、断面円形状で形成した場合と比較し、バレル20の肉厚を均一化することが可能になる。このため、バレル20の外面に設置した加熱ヒータ4でバレル20を加熱した際に、肉厚の違いに起因して温度分布が生じることを抑えることができる。これにより、第1スクリュー20と第2スクリュー11の回転によって内孔21を流動する熱可塑性樹脂の粘度や流れに分布(変動)が生じることを抑えることが可能になる。
【0023】
よって、成形体の肉厚に厚いところと薄いところができてしまったり、大きな残留ひずみが生じることを抑え、また、炭化物やゲル化物等の異物の発生を抑えることが可能になり、従来のように加熱ヒータ4を高精度で制御することなく、バレル20の温度を均一化させて、耐衝撃性に優れるなど、好適に成形体を製造することが可能になる。
【0024】
以上、本発明に係る押出成形装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、押出成形装置Aが、バレル20と、2軸スクリュー10、11と、加熱ヒータ4と、ホッパ5と、金型6と、フォーミング7と、冷却装置7と、引取り機8とを備えて構成されているものとした。これに対し、本発明に係る押出成形装置は、断面楕円形のバレルと、バレルの外周に設けられた加熱ヒータと、バレルの内孔に挿入設置される2軸スクリューとを備えていればよい。
【符号の説明】
【0025】
1 従来の押出成形装置
2 従来のバレル
2a 突端
3 スクリュー
4 加熱ヒータ
5 ホッパ
6 金型
7 フォーミング
8 冷却装置
9 引取り機
10 第1スクリュー
11 第2スクリュー
12 内孔
13 第1スクリュー収容孔部
14 第2スクリュー収容孔部
20 バレル
21 内孔
A 押出成形装置
O1 中心軸
O2 第1スクリューの軸線
O3 第2スクリューの軸線
t1 バレルの肉厚
t2 バレルの肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のバレルと、前記バレルの外周に設置された加熱ヒータと、軸線を前記バレルの中心軸と平行に配して前記バレルの内孔内に並設された第1スクリュー及び第2スクリューとを備える押出成形装置であって、
前記バレルが、前記バレルの中心軸に直交する断面視で前記第1スクリューと前記第2スクリューの軸線を通る直線上に長軸を配した楕円形状で形成されていることを特徴とする押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−131200(P2012−131200A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287278(P2010−287278)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】