説明

押釦スイッチの構造

【課題】 押釦スイッチの構造において、押釦の操作性を向上させ、スイッチの誤作動を防止する。
【解決手段】 リング状に形成された第1の押釦10は、アッパーケース3に設けた操作窓9に臨んでいる。第1の押釦10の嵌合孔10aに嵌合する規制部材20は、ダイヤルボタン等を支持しアッパーケース3に取り付けられる枠状部材14に支持部18を介して支持されている。第2の押釦11は規制部材20の摺動孔20aに臨み、鍔11aが摺動孔20aの下端縁に係合することにより、摺動孔20aからの抜けが規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状に形成された第1の押釦とこの第1の押釦の中央に設けられた第2の押釦とからなる押釦スイッチの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の押釦スイッチの構造としては、リング状に形成された第1の押釦と、この第1の押釦の中央部に設けられた摺動孔に摺動自在に支持された第2の押釦と、これら第1および第2の押釦とプリント基板との間に設けられプリント基板の接点部を閉成する導電部を有するラバーシートとを備えたものがある。この従来の押釦スイッチの構造においては、第1および第2の押釦の操作窓からの抜けを規制するために、第1の押釦に筺体の操作窓の端縁に係合する鍔が設けられ、第2の押釦には第1の押釦の摺動孔の下端縁に係合する鍔が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−236380号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の押釦スイッチの構造においては、第2の押釦の鍔が第1の押釦の摺動孔の下端縁に係合することにより、第2の押釦の操作窓からの抜けを規制する構造であるため、第1の押釦の押し下げ操作によって第2の押釦も追従して押し下げられる。このため、第1の押釦の押し下げ時に指に余計な負荷がかかるため操作性が悪いというばかりではなく、第2の押釦によって誤ってプリント基板の接点部を閉成させてしまうおそれもあった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、押釦の操作性を向上させ、スイッチの誤作動を防止した押釦スイッチの構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、筺体の操作窓に臨みリング状に形成された第1の押釦と、この第1の押釦の中央部に設けられた第2の押釦と、これら第1および第2の押釦にそれぞれ対向する導電部を有し両押釦を前記操作窓から突出させる方向に付勢するラバーシートと、このラバーシートに対向し前記導電部を介して閉成される接点部を有する基板とを備えた押釦スイッチの構造において、前記筺体に取り付けられる取付部材を設け、この取付部材に、前記第2の押釦に係合して第2の押釦の前記操作窓からの抜けを規制する規制部材を一体に形成したものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記規制部材によって予め前記第2の押釦が前記ラバーシート側に押圧されている。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記取付部材を、枠状部材とこの枠状部材に可撓性を有する連結部材を介して一体に連結された複数の押釦とによって形成したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、規制部材によって第2の押釦の筺体からの抜けを規制するようにしたことにより、第1の押釦と第2の押釦との互いの独立性が保たれるため、第1の押釦の押し下げ時に第2の押釦が追従することがないから操作性が向上する。また、第1の押釦の押し下げ操作によって第2の押釦が追従することがないから、第2の押釦によって誤ってスイッチを閉成させてしまうようなこともない。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、第2の押釦が予めラバーシートによって付勢されていることにより、第2の押釦の押圧開始時において第2の押釦を押し下げようとする指に負荷が加わり、かつ第2の押釦のストロークも短くなるため、指にクリック感を付与することができるから操作感覚を向上させることができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、規制部材を枠状部材に支持された他の押釦と共に筺体に組み付けることができるため組立が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る押釦スイッチの構造を適用した電話機の外観斜視図、図2は同じく電話機の平面図、図3は同じく要部を分解して示す斜視図、図4は図2におけるIV-IV 線断面図、図5(A)は同じくダイヤル釦ユニットの平面図、同図(B)は同図(A)におけるV(B)矢視図である。図6は図2におけるVI-VI 線断面図、図7は第1の押釦を押し下げた状態を示す図2におけるIV-IV 線断面図、図8は第2の押釦を押し下げた状態を示す図2におけるIV-IV 線断面図、図9は同じく第2の押釦を押し下げる力と第2の押釦のストロークとの関係を説明するための図である。
【0012】
図1に全体を符号1で示す電話機は、共に浅底状に形成されたロアーケース2とアッパーケース3とによって構成されており、アッパーケース3の左側部にはハンドセット4を載置するハンドセット載置部5が設けられている。また、アッパーケース3の後部側には、図2に示すように表示器6が起立自在に支持されており、中央部には多数の機能釦7および一つの機能釦7Aならびに複数のダイヤル釦8が設けられている。
【0013】
次に、図2ないし図6を用いて、本発明の特徴である機能釦7Aについて説明する。機能釦7Aは、図3に示すようにアッパーケース3に設けた円形の操作窓9に臨むリング状に形成された第1の押釦10と、この第1の押釦10の中央部に設けられる扁平な円柱状に形成された第2の押釦11とによって構成されている。
【0014】
第1の押釦10の中央部には嵌合孔10aが設けられており、円周方向に等間隔おいて4個の操作部10bないし10eが設けられ、下端に操作窓9の下端縁に係合する鍔10fが設けられている。第2の押釦11の下端には、後述する規制部材20の摺動孔20aの下端縁に係合する鍔11aが設けられている。
【0015】
図5に全体を符号13で示すものは、取付部材としてのダイヤル釦ユニットであって、プラスチックによって断面が長方形に形成され比較的剛性の大きい枠状部材14と、この枠状部材14と可撓性を有しL字状または逆L字状に形成された連結部材15を介して連結された上記機能釦7およびダイヤル釦8とによって一体に形成されている。
【0016】
16は枠状部材14の複数箇所に一体に設けられたピン挿入用筒部であって、アッパーケース3の裏面に突設された位置決めピン3a(図6参照)に係入され、係入されることによって機能釦7とダイヤル釦8とがアッパーケース3に形成された機能釦孔7aとダイヤル釦孔8a(図3参照)とに臨むように位置付けられる。17は枠状部材14の略中央部に一体に設けられたスタッド挿通用筒部であって、アッパーケース3の裏面に突設されたスタッド3b(図6参照)に挿通される。そして、後述するプリント基板25とラバーシート22とを取り付けるねじ26をスタッド3bに螺合させることにより、ダイヤル釦ユニット13、ラバーシート22およびプリント基板25が堆積状態でアッパーケース3の裏面に取り付けられる。
【0017】
図5において、18,18は枠状部材14から一体に延設された比較的剛性の大きい支持部であって、互いの先端が連結部19によって連結されており、連結部19の両端部には上記したピン挿入用筒部16が一体に設けられている。これら支持部18,18には、上記した第1の押釦10の嵌合孔10aに嵌合するリング状に形成された規制部材20が一体に設けられている。この規制部材20の中央部には、上記した第2の押釦11が臨む摺動孔20aが設けられ、裏面側にラバーシート22を係止する略円筒状に形成された係止部20b(図4参照)が突設されている。
【0018】
図3において、22は弾性変形可能なゴム状部材によって平面視長方形に形成されたラバーシートであって、第1の押釦10の4個の操作部10bないし10eのそれぞれによって押圧される4個の第1の押圧体23と、第2の押釦11によって押圧される第2の押圧体24とが一体に立設されている。第1の押圧体23は円柱状に形成されており、図4に示すように可撓性を有しスカート状に形成された弾性支持部23aを介してラバーシート22に立設され、裏面には第1の押釦10の4個の操作部10bないし10eに対向する導電部23bが設けられている。第2の押圧体24は略円筒状に形成されており、図4に示すように可撓性を有しスカート状に形成された弾性支持部24aを介してラバーシート22に立設され、裏面には第2の押釦11に対向する導電部24bが設けられている。
【0019】
図3において、25は平面視長方形に形成されたプリント基板であって、4個の第1の押圧体23の導電部23bのそれぞれに対向する第1の接点部25aと、第2の押圧体24の導電部24bに対向する第2の接点部25bとが設けられている。
【0020】
このような構成において、第1の押釦10を図3に示すようにアッパーケース3の裏面側から操作窓9に嵌合させ、この第1の押釦10の嵌合孔10aに規制部材20を嵌合させるように、ダイヤル釦ユニット13をアッパーケース3の裏面側に位置決めする。第2の押釦11を規制部材20の摺動孔20aに嵌合させた状態で、ラバーシート22とプリント基板25とを順次ダイヤル釦ユニット13に重ね、図6に示すようにねじ26によって、ダイヤル釦ユニット13、ラバーシート22およびプリント基板25をアッパーケース3の裏面側に取り付ける。このようにアッパーケース3に取り付けられたダイヤルボタンユニット13の規制部材22は、枠状部材14および支持部18を介してアッパーケース3に固定される。
【0021】
この状態で、第1の押釦10は、図4に示すように鍔10fが操作窓9の下端縁に係合し、操作窓9からの抜けが規制されるとともに、ラバーシート22の第1の押圧体23によって操作窓9から突出する方向に付勢されている。第2の押釦11は鍔11aが規制部材20の摺動孔20aの下端縁に係合し、操作窓9からの抜けが規制されるとともに、ラバーシート22の第2の押圧体24によって操作窓9から突出する方向に付勢されている。このとき、第2の押釦11は予め規制部材20によってラバーシート22側(矢印A方向)に押圧されている。すなわち、規制部材20に係合した第2の押釦11によって、ラバーシート22の第2の押圧体24が矢印A方向にわずかに押圧され、弾性支持部24aがわずかに弾性変形している。
【0022】
このような構成において、第1の押釦10の4個の操作部10bないし10eのうちの操作部10dを選択的に押し下げると、図7に示すように、弾性支持部23aが撓み第1の押圧体23が押し下げられ、導電部23bを介してプリント基板25の第1の接点部25aが閉成される。一方、第2の押釦11を押し下げると、弾性支持部24aが撓み、図8に示すように第2の押圧体24が押し下げられ、導電部24bを介してプリント基板25の第2の接点部25bが閉成される。
【0023】
このように、第2の押釦11を規制部材20によってアッパーケース3の操作窓9からの抜けを規制したことにより、第1の押釦10と第2の押釦11との押し下げ操作時に両押釦10,11の互いの独立性が保たれるため、第1の押釦10の押し下げ時に第2の押釦11が追従して動くようなことがない。このため、第1の押釦10の押し下げ時に第2の押釦11の負荷がかかるようなことがないから、第1の押釦10の操作性が向上する。また、第1の押釦10の押し下げ操作によって第2の押釦11が追従することがないから、第1の押釦10の押し下げ操作時に、第2の押圧体24の導電部24bによって誤ってプリント基板25の第2の接点部25bが閉成されるようなこともない。
【0024】
また、規制部材20に係合した第2の押釦11によって、ラバーシート22の第2の押圧体24が矢印A方向にわずかに押圧されている状態にあり、弾性支持部24aがわずかに弾性変形しているように構成されていることにより、第2の押釦11が予めラバーシート22から第2の押釦11を指によって押圧する方向(矢印A方向)と反対方向に付勢されている。したがって、指による第2の押釦11の押圧開始時において、図9に示すように指に予め負荷P1が加わる。同時に、第2の押釦11を押し下げる力をP1からP2へと大きくすることにより、第2の押釦11によって第2の接点部25bを閉成させるまでの第2の押釦11のストロークをL1からL2と短くすることができる。このため、第2の押釦11によって第2の接点部25bを閉成させる際に、ラバーシートでありながらコンタクタスイッチと同様なクリック感を指に付与することができるから操作感覚を向上させることができる。また、規制部材20を枠状部材14に支持された機能釦7やダイヤル釦8と共にアッパーケース3に組み付けることができるため組立が容易になる。
【0025】
なお、本実施の形態においては、規制部材20をダイヤル釦8等を支持する枠状部材14に設けた例を説明したが、部品が実装されアッパーケース3に取り付けられるブラケットに設けてもよく、要はロアケース2を含めた筺体に取り付けられる取付部材に設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る押釦スイッチの構造を適用した電話機の外観斜視図である。
【図2】本発明に係る押釦スイッチの構造を適用した電話機の平面図である。
【図3】本発明に係る押釦スイッチの構造の要部を分解して示す斜視図である。
【図4】図2におけるIV-IV 線断面図である。
【図5】同図(A)は本発明に係る押釦スイッチの構造におけるダイヤル釦ユニットの平面図、同図(B)は同図(A)におけるV(B)矢視図である。
【図6】図2におけるVI-VI 線断面図である。
【図7】本発明に係る押釦スイッチの構造において、第1の押釦を押し下げた状態を示す図2におけるIV-IV 線断面図である。
【図8】本発明に係る押釦スイッチの構造において、第2の押釦を押し下げた状態を示す図2におけるIV-IV 線断面図である。
【図9】本発明に係る押釦スイッチの構造において、第2の押釦を押し下げる力と第2の押釦のストロークとの関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0027】
1…電話機、3…アッパーケース、7A…機能釦、8…ダイヤル釦、9…操作窓、10…第1の押釦、11…第2の押釦、13…ダイヤル釦ユニット、14…枠状部材、18…支持部、20…規制部材、22…ラバーシート、23…第1の押圧体、24…第2の押圧体、23b,24b…導電部、25…プリント基板、25a…第1の接点部、25b…第2の接点部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体の操作窓に臨みリング状に形成された第1の押釦と、この第1の押釦の中央部に設けられた第2の押釦と、これら第1および第2の押釦にそれぞれ対向する導電部を有し両押釦を前記操作窓から突出させる方向に付勢するラバーシートと、このラバーシートに対向し前記導電部を介して閉成される接点部を有する基板とを備えた押釦スイッチの構造において、前記筺体に取り付けられる取付部材を設け、この取付部材に、前記第2の押釦に係合して第2の押釦の前記操作窓からの抜けを規制する規制部材を一体に形成したことを特徴とする押釦スイッチの構造。
【請求項2】
前記規制部材によって予め前記第2の押釦が前記ラバーシート側に押圧されていることを特徴する請求項1記載の押釦スイッチの構造。
【請求項3】
前記取付部材を、枠状部材とこの枠状部材に可撓性を有する連結部材を介して一体に連結された複数の押釦とによって形成したことを特徴とする請求項1または2記載の押釦スイッチの構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−130419(P2008−130419A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315404(P2006−315404)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】