説明

押釦スイッチ装置及びそれを備えた自動販売機

【課題】 製造メーカから提供された自動販売機仕様に基づく既存の制御の仕組に影響を与えることなく、構成部品点数を削減することで製作コストを低減することを可能とし、更には操作性を確保するとともに、安定して動作させることを可能とした押釦スイッチ装置及びそれを備えた自動販売機を提供する。
【解決手段】 自動販売機用押釦スイッチ装置21において、商品見本に対応して取り付けられるベース23のコネクタ取付ボス23aは、左右方向中心C1を通る中心線A1と交差する面に商品見本が位置するように配置されるとともに、ケース24の押釦22の中心C5を通る中心線A5からずらせて配置されている。回路基板26に搭載されたスイッチ素子27は、押釦25の中心線A5に合わせて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば1又は複数の商品見本から指定された商品を販売するために用いる押釦スイッチ装置及びそれを備えた自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば硬貨投入口から所定の金額を投入した後、所望の商品見本に対応して配置された押釦を押圧操作すると、その商品見本により特定される商品が商品取り出し口へ送り出され、所望の商品を購入することができる自動販売機がある。この従来の自動販売機の一例としては、例えば飲料を販売する自動販売機がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の従来の自動販売機は、図1及び図6に示すように、箱形の販売機本体2の前面部に開閉可能な扉体2bを備えている。この扉体2bの内部には、複数の商品見本11,…,11が陳列される商品見本展示部12が設けられている。この商品見本展示部12は、透光性を有する前面パネル10と、複数の商品見本11を載置する展示台13を備えた背面パネル14との間に形成されている。その前面パネル10の前面部には、図7に示すように、商品を選択する複数の押釦220を各商品見本11に対応して一列に配列することで、複数の押釦スイッチ装置210をユニット化した細長い商品選択用スイッチユニット200が取り付けられている。
【0004】
この従来の商品選択用スイッチユニット200は、図7に示すように、長尺状のベース230と長尺状のケース240とにより形成された空間部250内に、回路基板260と、その回路基板260を水密的に保護する弾性カバー320とを配置している。ベース230の背面部には、配線接続用のピン端子29を有するコネクタ30を取り付けるためのコネクタ取付ボス230aと、図示しないネジにより販売機本体2の前面パネル10に締付固定するためのパネル取付ボス230bとがそれぞれ突設されている。回路基板260には、ベース230のコネクタ取付ボス230aと対応する背面部から突出したピン端子29が電気的に接続されており、押圧操作により動作するタクトスイッチ27が、ピン端子29の左右両側にそれぞれ搭載されている。
【0005】
ケース240には、商品見本11のそれぞれに対応して楕円形をなす押釦孔240aが穿設されており、その押釦孔240aの左右方向中心C3(L3=L3)は、ピン端子29の中心に合わせて形成されている。押釦孔240aには、タクトスイッチ27を押圧操作する楕円形の押釦220が進退自在に取り付けられている。この押釦220は、発光ダイオード28から出射される照射光を前方へ導くリフレクトケース310との間で弾性カバー320を挟持しており、弾性カバー320のタクトスイッチ27と対応する部位には、スイッチ押圧部320aがタクトスイッチ側に向けて突設されている。押釦220を押圧して弾性カバー320の脚部を弾性変形させることで、弾性カバー320のスイッチ押圧部320aが、タクトスイッチ27をオン・オフ操作するように構成されている。
【0006】
販売機本体2の前面パネル10には、図8に示すように、ベース230のコネクタ取付ボス230aを嵌挿する大径の円形をなす挿通孔10aと、ベース230のパネル取付ボス230bを嵌挿する小径の円形をなす固定用孔10bとが販売機本体2の左右方向に沿って交互に穿設されている。挿通孔10aは、横一列に陳列された複数の商品見本11のそれぞれに対応して所定の間隔をもって配置されている。一方の固定用孔10bは、横一列に陳列された複数の商品見本11の最両側端及び隣接する2個の挿通孔10a,10a間に所定の間隔をもって配置されている。
【0007】
挿通孔10aに嵌挿されたコネクタ取付ボス230aは、図6〜図8に示すように、その左右方向中心C1(L1=L1)を通る中心線A1と交差する面に商品見本11の左右方向中心C2(L2=L2)を通る中心線A2が位置するように配置されている。コネクタ取付ボス230a内に設けられたコネクタ30には、図示しないハーネスに接続された外部コネクタが装着され、押釦スイッチ装置210の回路基板260と販売機本体2の図示しない制御部とが電気的に接続されるようになっている。一方の固定用孔10bに嵌挿されたパネル取付ボス230bは、前面パネル10の背面と図示しない取付金具を介してネジ締めにより固定されるようになっている。
【特許文献1】特開2001−52242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、新製品製造に際しては、自動販売機1の製造メーカが、自動販売機1の仕様を決定し、新規部品を部品メーカに依頼することで部品メーカ側において新製品に用いる新規部品の設計・製造を行うのが一般的である。販売機本体2の前面パネル10の挿通孔10aの配置位置及び設置個数、前面パネル10の固定用孔10bの配置位置及び設置個数、並びに商品見本11の配置位置及び設置個数などは、自動販売機1の製造メーカにおいて予め決められており、製造メーカから提供された自動販売機1の仕様を考慮して、部品メーカにおいて押釦スイッチ装置210の設計・製造が行われる。
【0009】
既存の自動販売機1の仕様によると、ベース230のコネクタ取付ボス230aを嵌挿する挿通孔10aは、図6〜図8に示すように、挿通孔10aの左右方向中心C4(L4=L4)を通る中心線A4と交差する面に商品見本11の中心線A2が位置するように販売機本体2の前面パネル10に配置させることが予め決められている。ところが、商品見本11に対応して押釦220の配置位置を設定しようとすると、ケース240の押釦孔240aの中心C3(押釦240の中心C5)が、ベース230のコネクタ取付ボス230a内に設けられたコネクタ30のピン端子29の中心に対向して配置されることとなる。そのため、上記従来の押釦スイッチ装置210にあっては、コネクタ30のピン端子29の左右両側にタクトスイッチ27とスイッチ押圧部320aとを配置することで、押釦220の片押しに対応できるようにしており、押釦スイッチ装置210の構成部品点数の増加と相まって製作コストが高騰するという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解消すべくなされたものであり、製造メーカから提供された自動販売機仕様に基づく既存の制御の仕組に影響を与えることなく、構成部品点数を削減することで製作コストを低減することを可能とし、更には操作性を確保するとともに、安定して動作させることを可能とした押釦スイッチ装置及びそれを備えた自動販売機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明は、上記目的を達成するため、自動販売機の商品見本に対応してコネクタ取付ボスを背面に有するベースと、前記ベースの前面に搭載された回路基板と、前記回路基板に搭載されたスイッチ素子と、前記ベースを覆うように取り付けられ、前記ベースの前記コネクタ取付ボスに対応して押釦孔を有するケースと、前記ケースの前記押釦孔に進退自在に取り付けられた押釦とを備え、前記コネクタ取付ボスは、当該コネクタ取付ボスの中心を通る中心線と交差する面に前記商品見本が位置するように配置され、前記押釦は、当該押釦の中心を通る中心線が前記コネクタ取付ボスの前記中心線とずれるようにして配置されるとともに、前記押釦の前記中心と前記スイッチ素子の中心とが一致するように配置されていることを特徴とする押釦スイッチ装置にある。
【0012】
[2]本発明は更に、上記目的を達成するため、自動販売機の複数の商品見本に対応して前面パネルに形成された複数の挿通孔に挿通される複数のコネクタ取付ボスを背面に有する長尺状のベースと、前記ベースの前面に搭載された回路基板と、前記回路基板に搭載された複数のスイッチ素子と、前記ベースを覆うように取り付けられ、前記ベースの前記コネクタ取付ボスのそれぞれに対応して複数の押釦孔を有する長尺状のケースと、前記ケースの前記複数の押釦孔のそれぞれに進退自在に取り付けられた複数の押釦とにより構成され、前記コネクタ取付ボスは、当該コネクタ取付ボスの中心を通る中心線と交差する面に前記商品見本が位置するように配置され、前記押釦は、当該押釦の中心を通る中心線が前記コネクタ取付ボスの前記中心線とずれるようにして配置されるとともに、前記押釦の前記中心と前記スイッチ素子の中心とが一致するように配置されていることを特徴とする押釦スイッチ装置にある。
【0013】
本発明によれば、前記回路基板は、隣接する2個の前記押釦の間と対向する部位に搭載された発光素子を有し、前記長尺状のケースは、前記隣接する2個の前記押釦の間に前記発光素子から出射された照射光により情報を表示する構成を有していることが好適である。本発明にあっては、前記回路基板を液密に覆う弾性カバーを有し、前記押釦は、前記弾性カバーにより前記押釦孔に弾性的に支持されていることが好適である。前記押釦は、レンズ体により構成することが好適であり、前記スイッチ素子としては、タクトスイッチを使用することができる。前記押釦は、前記スイッチ素子と同数設けられていることが望ましい。
【0014】
[3]本発明は更に、上記目的を達成するため、上記[2]記載の押釦スイッチ装置を複数段に備えた自動販売機であって、前記回路基板は、隣接する2個の前記押釦の間と対向する部位に搭載された発光素子を有し、隣接する2個の前記押釦の間に前記発光素子から出射された照射光により情報を表示する制御部を有していることを特徴とする自動販売機にある。
【0015】
前記制御部は、複数の前記発光素子の点滅パターンに従い、前記複数の発光素子を所定の時間間隔をもって順次点滅させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、製造メーカから提供された自動販売機仕様に基づく既存の制御の仕組に影響を与えることなく、構成部品点数を削減することで製作コストを低減することが可能となり、更には押釦の操作性を確保するとともに、安定して動作させることが可能となる。本発明は更に、設計変更を行うことなく既存の前面パネルに対して押釦スイッチ装置の後付けが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の代表的な実施の形態である押釦スイッチ装置を備えた自動販売機を模式的に示す正面図である。図2は、商品見本と押釦スイッチ装置との配置関係を説明するための図であり、図3は、この実施の形態に係る典型的な押釦スイッチ装置の要部断面図である。
【0019】
なお、以下の説明において、押釦スイッチ装置の前面側を前面部、背面側を背面部といい、押釦スイッチ装置を正面からみて上下及び左右という。また、これらの図において、押釦スイッチ装置のそれぞれの形状、構造及び作動は同一である。そのため、1つの押釦スイッチ装置のみについて説明し、隣接する他の押釦スイッチ装置についての説明は省略する。また、これらの図において上記従来の自動販売機と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付している。
【0020】
(自動販売機の構成)
図1において、各種の飲料を販売する自動販売機1は、箱型の筐体からなる販売機本体2を備えている。この販売機本体2は、前方に開口する箱体2a及び箱体2aの前方開口部を開閉する扉体2bにより構成されている。
【0021】
扉体2bには、紙幣を挿入・排出する紙幣入出口3と、硬貨を投入する硬貨投入口4と、紙幣または硬貨を返却する返却レバー5と、釣銭切れ表示や挿入された紙幣又は投入された硬貨の金額の表示を行う表示器6と、釣銭を返却する釣銭返却口7と、商品を取り出す商品取出口8と、扉体2bの開閉をロックするドアロック9とがそれぞれ配設されている。なお、符号15は、広告スペースである。
【0022】
扉体2bは、図1に示すように、透明なアクリル板等からなる前面パネル10を前面上部に備えている。その前面パネル10の前面部には、左右方向に細長い複数の商品選択用のスイッチユニット20,…,20が複数段に設けられている。この商品選択スイッチユニット20は、商品を選択する複数の押釦スイッチ装置21,…,21をユニット化している。
【0023】
図6を参照すると、図6には、自動販売機1の扉体2bの内部が示されている。図6は、扉体2bの内部を概略的に示す部分断面図である。同図において、前面パネル10の背面側には、複数段にわたって複数の商品見本11,…,11を陳列する商品見本展示部12が備えられている。この商品見本展示部12は、前面パネル10と透光性樹脂材からなる背面パネル14との間に形成されている。その背面パネル14の前面部には、複数の商品見本11,…,11を載置する展示台13が設けられている。背面パネル14の前面部には、図示しない多色発光可能な発光ダイオードが設けられている。
【0024】
上記のように構成された自動販売機1は、従来のスイッチ装置が組み込まれた状態で市販されるものと同様の仕様を有する市販機の一構成例を示しており、図示例に限定されるものではないことは勿論である。この第1の実施の形態にあっては、前面パネルの設計変更を行うことなく既存の前面パネル10に対して、スイッチ装置を後から仕様変更して装着することを可能とした押釦スイッチ装置21に特徴部を有している。
【0025】
(押釦スイッチ装置の構成)
押釦スイッチ装置21には、図1〜図3及び図6に示すように、商品見本展示部12の複数段に展示された商品見本11のそれぞれに対応して、だるま形状をなす商品選択用の押釦22が一列に取り付けられている。この押釦スイッチ装置21の外観構成は、商品見本11のそれぞれに対応して前面パネル10に取り付けられる長尺状のベース23と、そのベース23を覆う透光性樹脂材からなる長尺状のケース24とにより主に構成されており、そのベース23とケース24とにより左右方向に細長く延在した空間部25が形成されている。
【0026】
このベース23の前面部には、図3に示すように、回路基板26が搭載されており、その回路基板26の前面部には、押釦22の押圧操作により動作するスイッチ素子である複数のタクトスイッチ27,…,27と、販売可表示器及び売切れ表示器などの情報表示器として用いられる発光素子である複数の発光ダイオード28,…,28とが搭載されている。タクトスイッチ27の左側の回路基板26の背面部にあって隣接する2個の発光ダイオード28,28間には、入出力用のピン端子29を有するコネクタ30が実装されている。一方、ベース23の背面部には、コネクタ30を取り付ける下方開口した筒状のコネクタ取付ボス23aと図示しないネジにより販売機本体2の前面パネル10に締付固定するための下方開口した筒状のパネル取付ボス23bとがそれぞれ突設されている。コネクタ30は、販売機本体2の図示しない中央制御部に接続された外部コネクタと電気的に接続される。
【0027】
ケース24とリフレクトケース31との間には、図3に示すように、透光性を有するシリコン樹脂からなる弾性カバー32が挟持されている。ケース24には、商品見本11のそれぞれに対応付けられて複数の押釦孔24a,…,24aが穿設されている。その押釦孔24aには、タクトスイッチ27を押圧操作する押釦22が回路基板26を液密に覆う弾性カバー32により弾性的に支持されている。その弾性カバー32のタクトスイッチ27と対応する部位には、柱状のスイッチ押圧部32aがタクトスイッチ27側に向けて突設されている。その押釦22は、透光性を有する樹脂材又はレンズ体からなり、押圧操作により弾性カバー32を回路基板26側へ弾性変形させることでタクトスイッチ27を動作させるように押釦孔24aに進退自在に取り付けられている。
【0028】
上記のように構成された押釦スイッチ装置21の構成部品は、この実施の形態に係る一構成例を示しており、その構成部品の形状や構造などは、図示例に限定されるものではない。この押釦22の他の一例としては、例えば透明のプラスチック材の前面あるいは開口に透明のレンズを配したもの、あるいは枠体の開口に透明のレンズを配したものなどにより形成することができる。
【0029】
ところで、上記従来の押釦スイッチ装置210にあっては、ベース230のコネクタ取付ボス230aを嵌挿する前面パネル10の挿通孔10aの左右方向中心C4は、図7及び図8に示すように、ケース240に形成された押釦孔240aの左右方向中心C3に合わせて配置することを前提として構成されている。しかしながら、押釦孔240aに進退自在に配置された押釦220の左右方向中心C5は、ベース230のコネクタ取付ボス230aと対応する背面部から回路基板26に突出したコネクタ30のピン端子29の中心に対向して配置されるので、回路基板260のタクトスイッチ27や弾性カバー320のスイッチ押圧部320aを取り付ける位置が、既存の前面パネル10の挿通孔10aによって制限される。
【0030】
また、上記従来の押釦スイッチ装置210にあっては、回路基板260における2個のタクトスイッチ27と弾性カバー320における2個のスイッチ押圧部320aを排除して、1個のタクトスイッチ27と1個のスイッチ押圧部320aを押釦220の中央部に対応して配設させようとすると、押釦220の左右方向中心C5が、コネクタ30のピン端子29の中心に対向して配置されるので、タクトスイッチ27とスイッチ押圧部320aの配置位置を押釦220の左右方向中心C5からオフセットして配置させなければならない。しかしながら、タクトスイッチ27から遠い押釦端部を押した場合とタクトスイッチ27に近い押釦端部を押した場合とでは、タクトスイッチ27に対する操作状態が異なり、押釦220を押す位置によってはタクトスイッチ27が安定して動作しない。
【0031】
そこで、この第1の実施の形態によれば、コネクタ取付ボス23aは、図2、図3及び図6に示すように、その中心C1(L1=L1)を通る中心線A1と交差する面に商品見本11の左右方向中心C2(L2=L2)を通る中心線A2が位置するように配置されるが、押釦22の左右方向中心C5(L5=L5)を通る中心線A5と、ケース24に形成された押釦孔24aの左右方向中心C3(L3=L3)を通る中心線A3とからオフセットして配置されている。つまり、押釦22の中心線A5は、コネクタ取付ボス23aの中心線A1とずれるようにして配置されている。押釦22の中心線A5と押釦孔24aの中心線A3とは、タクトスイッチ27の中心に一致するように配置されている。タクトスイッチ27は、弾性カバー32のスイッチ押圧部32aの上下左右方向の中心に合わせて配置されている。
【0032】
かかる構成を採用することで、製造メーカから提供された自動販売機1の仕様により予め決められた既存の前面パネル10に対して、既存の商品見本11との対応関係を損なうことなく、本実施の形態に係る押釦スイッチ装置21を設置することができる。押釦22とタクトスイッチ27とは、同数設けることができる。押釦22のいずれの方向にある端部を押しても、タクトスイッチ27に同一の押圧力が加わって片押し操作が可能となるように、タクトスイッチ27を押圧操作する弾性カバー32のスイッチ押圧部32aを押釦孔24aの左右方向中心C3(押釦22の左右方向中心C5)に配設することができる。
【0033】
(第1の実施の形態の効果)
上記のように構成された押釦スイッチ装置21によれば、以下の様々な効果が得られる。
(1)上記従来の押釦スイッチ装置210と比べると、販売機本体2の設計変更を行わずに既存の前面パネル10において、タクトスイッチ27を削減することができるようになり、製作コストを低減することができる。それと相まって、既存の前面パネル10の設計変更を伴わずに、押釦22の片押し操作が簡単な構造で可能となり、安定した動作を得ることが可能となる。製造メーカから提供された自動販売機仕様に基づく既存の制御の仕組に影響を与えることなく、既存の前面パネル10にかかわらず押釦スイッチ装置21の後付けが可能となる。
【0034】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態に係るスイッチユニットの表示状態を模式的に示す説明図であり、図5は、発光表示部と制御部との接続を説明するための図である。なお、これらの図において上記第1の実施の形態と実質的に同じ部材には同一の部材名と符号を付している。従って、これらの部材に関する詳細な説明は省略する。
【0035】
図1及び図4において、商品選択用のスイッチユニット(連動スイッチ)20は、前面パネル10の前面部の上段、中段、下段となる商品見本11の列に対応した位置に水平方向に延設されている。スイッチユニット20は、図4に示すように、第1のスイッチユニット20aと第2のスイッチユニット20bとがジョイントを介して脱着可能に連結された構成となっている。
【0036】
これらのスイッチユニット20a,20bにあっては、図3及び図4に示すように、隣接する2個の押釦22,22間と対向する回路基板26上に発光ダイオード(LED)33を実装している。ケース24の隣接する2個の押釦22,22間と対応する部位は、LED33から出射された照射光により情報を表示する発光表示部37として構成されている。
【0037】
図5において、左側部分に図示されたスイッチユニット20a,20bは、図4に示した下段のスイッチユニット20を表し、中央部分に図示されたスイッチユニット20a,20bは、図4に示した中段のスイッチユニット20を表し、右側部分に図示されたスイッチユニット20a,20bは、図4に示した上段のスイッチユニット20を表している。このスイッチユニット20a,20bのそれぞれに設けられた回路基板26には、発光表示部37における種々の信号処理を行うIC化された制御回路26aなどが搭載されている。その制御回路26aには、コネクタ30を介して販売機本体2側の中央制御部(CPU)34からのハーネス35が電気的に接続されている。この中央制御部34は、所定の時間間隔及び所定の時間をもって複数のLED33に電力を供給するプログラムや固定データが格納されるROM、データの読み書きを行うRAMなどを含んでおり、点灯させる発光表示部37の位置を演算し、その位置演算により設定された位置のLED33の順次点滅を繰り返すように制御する。
【0038】
下段の第1のスイッチユニット20aは、図5に示すように、6個の押釦22間と対応する3個の発光表示部37を1個の制御回路26aで回路線36を介して制御しており、他方の第2のスイッチユニット20bでは、4個の押釦22間と対応する2個の発光表示部37を1個の制御回路26aで回路線36を介して制御している。下段以外の中段及び上段の各スイッチユニット20a,20bにあっても、下段のスイッチユニット20a,20bと同様の構成で発光表示部37を制御している。
【0039】
次に、スイッチユニット20の表示動作について、図4及び図5を参照しながら説明する。この表示動作は、従来から周知の技術を使って行うことができる。
【0040】
中央制御部34のプログラムにより制御されるスイッチユニット20の表示動作の一例としては、図4に示すように、例えば最初に、下段の第1のスイッチユニット20aのLED33aが一定時間点灯し、次いで、中段の第1のスイッチユニット20aのLED33bが一定時間点灯する。続いて、上段の第1のスイッチユニット20aのLED33aが一定時間点灯する。下段のLED33a、中段のLED33b、上段のLED33aのそれぞれに対して一定時間だけ順次通電して上記表示動作を繰り返す。これにより、設定された位置にあるLED33a,33bが、下段のスイッチユニット20から上段のスイッチユニット20へ向けてジグザグ状に流れるような点滅パターンで点滅し、発光表示部37を発光させることができる。
【0041】
スイッチユニット20の表示動作の他の一例としては、図4に示すように、例えば最初に、下段の第1のスイッチユニット20aのLED33cが一定時間点灯する。次いで、中段の第1のスイッチユニット20aのLED33c及び中段の第2のスイッチユニット20bのLED33dが一定時間だけ点灯する。続いて、上段の第1のスイッチユニット20aのLED33a〜33c及び上段の第2のスイッチユニット20bのLED33d,33eが一定時間だけ点灯する。下段のLED33c、中段のLED33c及びLED33d、上段のLED33a〜33eのそれぞれに対して一定時間だけ順次通電して、上記表示動作を繰り返す。これにより、設定された位置にあるLED33a〜33cが、下段のスイッチユニット20から上段のスイッチユニット20へ向けて泡が浮き上がるような点滅パターンで点滅し、発光表示部37を発光させることができる。
【0042】
なお、この第2の実施の形態にあっては、一種類のLED33により構成した一例を例示しているが、これに限定されるものではなく、例えばイエロー、シアン、マゼンタ、ホワイトなどの色となるような複数色の発光が可能なRGBLEDランプを発光表示部37に点灯あるいは点滅動作させてもよく、点滅パターン及び発色パターンなどは任意に設定することができる。また、販売機本体2側の中央制御部34の指令に基づいて、例えば押釦22及び発光表示部37における販売可能表示、売り切れ表示及び準備中などの文字表示を制御することで、LED33に出力してもよい。また、操作者が手動により、販売機本体2側の中央制御部34のデータ設定手段に入力された文字表示、点滅パターン及び発色パターンなどの各出力を販売機本体2側の中央制御部34に記憶させることで、記憶されている文字等の各出力の可否に応じてLED33に出力することができることは勿論である。
【0043】
(第2の実施の形態の効果)
上記のように構成された押釦スイッチ装置21によれば、以下の様々な効果が得られる。
(1)上記第1の実施の形態の効果に加えて、製造メーカにより予め決められた既存の前面パネル10の設計変更を伴わずに押釦22の左右方向長さを上記従来の押釦スイッチ装置210よりも短くすることが可能となり、ケース24の隣接する2個の押釦22,22間の左右方向寸法を上記従来の押釦スイッチ装置よりも長く設定することが可能となる。そのため、隣接する2個の押釦22,22間におけるベース23とケース24とにより上下及び左右方向に形成された空間部25を拡大することができるようになり、回路基板26の高密度化及び回路パターンの多様なレイアウトに対応することが可能となる。
【0044】
以上の説明からも明らかなように、上記各実施の形態にあっては、複数の押釦スイッチ装置をユニット化した商品選択スイッチユニットを複数の商品見本に対応して配置する構成例を例示しているが、例えば1個の押釦スイッチ装置を1個の商品見本に対応して配置する構成としてもよいことは勿論であり、本発明の初期の目的を十分に達成することができる。従って、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲内で様々に設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えばたばこ等のパッケージ商品、缶又はペットボトル等に充填した飲料商品などの各種の自動販売機に効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】押釦スイッチ装置を備えた自動販売機を模式的に示す正面図である(第1の実施の形態)。
【図2】商品見本と押釦スイッチ装置との配置関係を説明するための説明図である(第1の実施の形態)。
【図3】押釦スイッチ装置の要部断面図である(第1の実施の形態)。
【図4】スイッチユニットの表示状態を模式的に示す説明図である(第2の実施の形態)。
【図5】発光表示部と制御部との接続を説明するための図である(第2の実施の形態)。
【図6】自動販売機の扉体の内部を概略的に示す部分断面図である。
【図7】従来の押釦スイッチ装置の要部断面図である。
【図8】商品見本と前面パネルに形成された固定用孔及び挿通孔との配置関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動販売機
2 販売機本体
2a 箱体
2b 扉体
3 紙幣入出口
4 硬貨投入口
5 返却レバー
6 表示器
7 釣銭返却口
8 商品取出口
9 ドアロック
10 前面パネル
10a 挿通孔
10b 固定用孔
11 商品見本
12 商品見本展示部
13 展示台
14 背面パネル
15 広告スペース
20,20a,20b,200 スイッチユニット
21,210 押釦スイッチ装置
22,220 押釦
23,230 ベース
23a,230a コネクタ取付ボス
23b,230b パネル取付ボス
24,240 ケース
24a,240a 押釦孔
25,250 空間部
26,260 回路基板
26a 制御回路
27 タクトスイッチ
28,33,33a〜33e 発光ダイオード
29 ピン端子
30 コネクタ
31,310 リフレクトケース
32,320 弾性カバー
32a,320a スイッチ押圧部
34 制御部
35 ハーネス
36 回路線
37 発光表示部
A1 コネクタ取付ボスの中心線
A2 商品見本の中心線
A3 押釦孔の中心線
A4 挿通孔の中心線
A5 押釦の中心線
C1 コネクタ取付ボスの中心
C2 商品見本の中心
C3 押釦孔の中心
C4 挿入孔の中心
C5 押釦の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動販売機の商品見本に対応してコネクタ取付ボスを背面に有するベースと、
前記ベースの前面に搭載された回路基板と、
前記回路基板に搭載されたスイッチ素子と、
前記ベースを覆うように取り付けられ、前記ベースの前記コネクタ取付ボスに対応して押釦孔を有するケースと、
前記ケースの前記押釦孔に進退自在に取り付けられた押釦とを備え、
前記コネクタ取付ボスは、当該コネクタ取付ボスの中心を通る中心線と交差する面に前記商品見本が位置するように配置され、
前記押釦は、当該押釦の中心を通る中心線が前記コネクタ取付ボスの前記中心線とずれるようにして配置されるとともに、前記押釦の前記中心と前記スイッチ素子の中心とが一致するように配置されていることを特徴とする押釦スイッチ装置。
【請求項2】
自動販売機の複数の商品見本に対応して前面パネルに形成された複数の挿通孔に挿通される複数のコネクタ取付ボスを背面に有する長尺状のベースと、
前記ベースの前面に搭載された回路基板と、
前記回路基板に搭載された複数のスイッチ素子と、
前記ベースを覆うように取り付けられ、前記ベースの前記コネクタ取付ボスのそれぞれに対応して複数の押釦孔を有する長尺状のケースと、
前記ケースの前記複数の押釦孔のそれぞれに進退自在に取り付けられた複数の押釦とにより構成され、
前記コネクタ取付ボスは、当該コネクタ取付ボスの中心を通る中心線と交差する面に前記商品見本が位置するように配置され、
前記押釦は、当該押釦の中心を通る中心線が前記コネクタ取付ボスの前記中心線とずれるようにして配置されるとともに、前記押釦の前記中心と前記スイッチ素子の中心とが一致するように配置されていることを特徴とする押釦スイッチ装置。
【請求項3】
前記回路基板は、隣接する2個の前記押釦の間と対向する部位に搭載された発光素子を有し、
前記長尺状のケースは、前記隣接する2個の前記押釦の間に前記発光素子から出射された照射光により情報を表示する構成を有していることを特徴とする請求項2記載の押釦スイッチ装置。
【請求項4】
前記回路基板を液密に覆う弾性カバーを有し、
前記押釦は、前記弾性カバーにより前記押釦孔に弾性的に支持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の押釦スイッチ装置。
【請求項5】
前記押釦は、レンズ体により構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の押釦スイッチ装置。
【請求項6】
前記スイッチ素子は、タクトスイッチからなることを特徴とする請求項1又は2記載の押釦スイッチ装置。
【請求項7】
前記押釦は、前記スイッチ素子と同数設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の押釦スイッチ装置。
【請求項8】
上記請求項2記載の押釦スイッチ装置を複数段に備えた自動販売機であって、
前記回路基板は、隣接する2個の前記押釦の間と対向する部位に搭載された発光素子を有し、隣接する2個の前記押釦の間に前記発光素子から出射された照射光により情報を表示する制御部を有していることを特徴とする自動販売機。
【請求項9】
前記制御部は、複数の前記発光素子の点滅パターンに従い、前記複数の発光素子を所定の時間間隔をもって順次点滅させることを特徴とする請求項8記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−157610(P2009−157610A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334482(P2007−334482)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000153236)株式会社光波 (98)
【Fターム(参考)】