説明

担体に保持した金触媒を使用する選択的炭水化物酸化のための方法

【課題】オリゴ糖の選択的酸化によるアルドン酸の製法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのオリゴ糖、その混合物又はこれを含む組成物の水溶液を、TiO2、Al2O3または炭素担体上に直径20nm未満で分散した金粒子を含む金触媒および酸素の存在下で反応させ、単数又は複数の炭水化物のC1−炭素原子のアルデヒド基をカルボキシル基へ選択的に酸化するか、又はアルデヒド基をC1−炭素原子に導入してカルボキシル基へ選択的に酸化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属酸化物担体上にナノサイズで分散した金粒子を含む金触媒の存在下で炭水化物を選択的に酸化するための方法及び炭素又は金属酸化物担体上にナノサイズで分散した金粒子を含む金触媒の存在下でオリゴ糖を選択的に酸化するための方法及びこの方法を使用して調製されるアルドン酸−酸化生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チーズ生産及び乳清加工業では毎年全世界で約120万トンのラクトースが廃産物として発生する。ところが牛乳の最も重要な炭水化物成分としてのラクトースはこれまでほとんど経済的意義がなかった。その理由の1つは住民の一部のラクトース不耐性にある。ラクトース不耐性の人はラクトースを利用することができず、ラクトース消費の際に不消化症状例えば下痢で反応する。発生するラクトースの比較的僅かな一部が経済的利用のために供給されるに過ぎず、その場合ラクトースは例えば発酵基質、充填剤として、又はダイエット食品の製造のために使用される。しかし発生するラクトース量の大部分は製造元の排水設備を経て処分され、その結果、水質のエコロジー的均衡を阻害する恐れがある。ところがラクトースは大量に存在する極めて安価な原料であるから、この炭水化物の経済的価値を高めることに大きな関心がある。そこでラクトースをより高級な製品の製造のための出発材料として使用する、特に酵素による種々の分解及び変換反応が最近開発された。
【0003】
ラクトースの酸化によってラクトビオン酸を得ることができる。これは多くの用途にとって極めて興味深いものである。これまでラクトースからラクトビオン酸を調製するには、酵素セロビオースデヒドロゲナーゼ及びヘキソースオキシダーゼを用いた酵素法が使用されてきた。例えばセロビオースデヒドロゲナーゼ触媒反応での不十分な変換が、酵素ラッカーゼの使用で高められる。ラッカラーゼは反応時に還元されたレドックスメディエーターを再酸化する。ラクトビオン酸は金属キレートを形成する優れた能力に基づき、好ましくはいわゆる「ウィスコンシン移植液」に使用される。ラクトビオン酸は移植される臓器の貯蔵時の金属イオンに原因する酸化的損傷を低減することができるからである。またラクトビオン酸は生分解性コビルダーとして粉末洗剤に使用され、粉末洗剤は40%に及ぶラクトビオン酸を含みうる。ラクトビオン酸のマイルドな甘酸味に基づき食品技術で別の応用の可能性がある。
【0004】
またその他のアルドン酸又はオリゴ糖アルドン酸は製薬業、化粧品製造及び食品技術に大きな潜在的用途がある。アルドン酸は目下のところ主として適当な単糖又はオリゴ糖から微生物又は酵素変換によって調製される。例えばグルコースはAcetobacter methanolicusを使用してグルコン酸に変換することができる。しかしアルドン酸の酵素製造は一般に生産性が比較的低いのが特徴であり、環境保護の理由からも問題がないわけでない。従って、酸化される炭水化物、例えば単糖は不均一系触媒を使用して対応するアルドン酸へ酸化される、著しく小さな環境負荷をもたらす代替酸化法に大きな関心がある。
【0005】
酸化反応の不均一系触媒作用は通常、三相反応器で行われ、たいてい粉末状の固体触媒は酸化される化合物を含む液相に懸濁され、反応時に酸素が液相に気泡で通される。接触酸化は酵素変換と比較して、特に環境汚染がはるかに少ないという点から見て、幾つかの大きな利点をもたらすが、決定的な欠点がある。金属を使用する場合は二酸素の活性化がラジカル反応を引き起こすことがあり、特に多官能分子の場合はこれが反応の選択性を著しく引き下げる(Sheldon and Kochi,“Metal Catalyzede Oxidation of Organic Compounds“, 1981, Academic Press, New York)。
【0006】
これまで最もよく研究されたのは、担体に保持したパラジウム及び白金触媒のグルコース酸化のための使用である。その場合この触媒を使用すると、選択性と転化率が小さいためグルコースのグルコン酸への触媒反応が著しく制限されることが判明した。また両種の触媒の比較的急速な失活が起こる。この失活は明らかに分子の吸着による触媒表面の閉塞か、又は二酸素に原因する中毒効果に基づくものである(Van Dam, Kieboom and van Bekkum, Appl. Catal., 33(1990), 187)。グルコースのグルコン酸への触媒反応を制限する要因の幾つかは、反応促進剤、例えばビスマス又は鉛の導入によって著しく改善される。それによって触媒の寿命の改善のほかに、特に反応の選択性及び転化率が高められる(Fiege and Wedem-eyer, Angew. Chem., 93(1981), 812;Wenkinら、Appl. Catal. A: General, 148(1996), 181)。
【0007】
ところがPdとBiは、毒物学的に懸念のあるこれらの物質の浸出の可能性があるため反対の議論がある。反応速度を高め、触媒失活を回避するために、弱アルカリ性条件が必要である。ところがこのような条件では、グルコン酸塩の生成を減少する二次反応が起こる。また塩基を使用すると遊離グルコン酸の代わりにグルコン酸塩が生成されることも欠点である(Biella, Prati and Rossi, Journal of Catalysis, 206(2002), 242-247)。
【0008】
そこでグルコン酸の工業的生産のために依然として発酵法が優先される。ところがこの方法では例えば激しい排水汚染や副産物の少なからぬ形成といった問題が起こるのである。この理由から、酸化剤として二酸素を使用してアルドン酸を調製するために炭水化物の接触酸化を可能にし、高い活性と選択性に加えて長い寿命を有する新型の触媒を開発することが必要である。
【0009】
担体に保持した金触媒はこれまで好ましくは気相でのCO又はプロピレンの酸化及び選択的水素化のために使用された。Biellaら(Journal of Catalysis, 206(2002), 242-247)は液相でのD−グルコースのD−グルコン酸への選択的酸化のための、炭素担体金触媒の使用を記述する。炭素担体金触媒と従来のパラジウム及び白金触媒の比較が示すところでは、金触媒は様々な面でパラジウム触媒にも白金触媒にも勝っている。パラジウム及び白金触媒と比較して、使用した金触媒は特に失活に対してはるかに安定である。使用した金触媒のもう一つの利点は、この触媒がグルコース転化で外部からのpH調節を必要としないことである。ところが使用した炭素担体金触媒は大きな欠点がある。一方ではpH値の減少につれて触媒からの金の溶出が増すのである。他方ではpH値の増加とともに金粒子の成長が促進される。いずれも触媒活性の低下をもたらす。pH値の上昇と共に増加する金粒子の溶解は、金粒子の拡大を伴う。これはおそらく小さな金粒子が溶解し、大きな金粒子に金が析出し、その際Au(I,III)粒子の還元が起こることに原因するのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底にある技術問題は、炭水化物の対応するアルドン酸への酸化に関して高い選択性と活性を有し、先行技術で周知の金触媒の問題、特に反復使用に原因する活性低下(その程度はpH値に関係する)が起こらず、適当な炭水化物出発材料からの工業的アルドン酸製造のために使用できる、先行技術で周知の触媒に比して改善された金触媒を提供することである。さらに、多数の様々な炭水化物の対応するアルドン酸への酸化のために、改善された金触媒を使用し得るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも1つの炭水化物、炭水化物混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化のための方法において、金属酸化物担体上にナノサイズで分散した金粒子を含む金触媒の存在下で該炭水化物、混合物又は組成物の水溶液を酸素、特に二酸素と反応させる方法によって、発明の根底にある技術問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】白金及びパラジウム触媒を使用したグルコースの接触酸化で得られた生成物混合物のUV検出器で得られたクロマトグラムを示す。A:Pt−Bi/C触媒;B:Pt/Al23触媒
【図2】金触媒を使用したグルコースの接触酸化で得られた生成物のUV検出器で得られたクロマトグラムを示す。A:0.95%Au/Al23触媒;B:0.5%Au/TiO2触媒
【図3】白金、パラジウム及び金触媒を使用したラクトースの接触酸化で得られた生成物のUV検出器で得られたクロマトグラムを示す。A:Pt/Al23触媒;B:Pd/Al23触媒;C:0.5%Au/TiO2触媒
【図4】白金、パラジウム及び金触媒を使用したマルトースの接触酸化で得られた生成物のUV検出器で得られたクロマトグラムを示す。A:Pt/Al23触媒;B:Pd/Al23触媒;C:0.5%Au/TiO2触媒
【図5】白金、パラジウム及び金触媒を使用したマルトデキストリンの接触酸化で得られた生成物のUV検出器で得られたクロマトグラムを示す。A:Pt/Al23触媒;B:Pd/Al23触媒;C:0.5%Au/TiO2触媒
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に基づき炭水化物の酸化のために使用される金属酸化物担体金触媒は、多数の炭水化物、特にC1−炭素原子が酸化可能なアルデヒド基を有し又は酸化可能なアルデヒド基を与えることができる炭水化物の対応するアルドン酸への選択的酸化を可能にするのが特徴である。従来の白金及びパラジウム触媒に比して、本発明に基づき使用される金触媒は選択的炭水化物酸化に関して一桁高い活性を有する。金触媒の金属負荷が白金又はパラジウム触媒と比較してはるかに小さいだけに、この高い活性は注目に値する。しかも本発明に基づき使用される金属酸化物担体金触媒はアルドン酸生成に関して、白金及びパラジウム触媒に比してはるかに高い選択性を有する。即ち他の酸化生成物に対する選択性が著しく減少している。白金及びパラジウム触媒を使用すれば所望のアルドン酸のほかに例えばアルコール基の酸化に由来する多数の他の酸化生成物を含む生成物混合物が常に得られるが、本発明に基づき使用される金属酸化物担体金触媒を使用すれば、他の検出可能な酸化生成物をまったく又は極めて少量しか含まないほぼ純粋なアルドン酸が得られる。本発明に基づき使用される金属酸化物担体金触媒の異常に高い選択性は、好ましくはC1−炭素原子のアルデヒド基だけが酸化されるが、アルコール基は酸化されないことによるものである。
【0014】
炭素担体金触媒に比して、本発明に基づき使用される金属酸化物担体金触媒ははるかに長い寿命が特徴である。炭素担体金触媒では1回又は2回の使用の後にすでに比較的明瞭な活性低下が観察されたが(Biellaら、J. Catalysis, 206(2002), 242-247)、金属酸化物担体金触媒は少なくとも20回使用しても、触媒活性と酸化の選択性があまり減少しない。従って本発明に基づき使用される金属酸化物担体金触媒はアルドン酸の工業的製造に有利に使用される。本発明に基づき使用される金属酸化物担体金触媒のもう一つの利点は、多数の様々な炭水化物出発基質、例えば単糖、オリゴ糖又はその混合物の酸化のために使用できることである。アルドースもケトースも酸化することができる利点がある。
【0015】
本発明に関連して「触媒」とは、所定の反応の進行のために必要な活性化エネルギーを低減し、それによって反応速度を高めることができるが、反応の最終生成物に現れない物質を意味する。「金触媒」とは、担体材料上の金を含み、又は担体材料上の金からなり、金が担体上に分散したナノ粒子として存在する触媒を意味する。金ナノ粒子は20nm未満、好ましくは<10nm、特に好ましくは<5nmの直径を有する。
【0016】
本発明に関連して「金属酸化物担体」とは、典型金属又は遷移金属又は半金属の少なくとも1つの酸化物並びに2以上の金属及び/又は半金属を含む化合物からなる触媒担体を意味する。これは好ましくは周期表主族2族の金属又は半金属の酸化物、例えばMgO、CaO又はBaO、周期表主族3族の金属又は半金属の酸化物、例えばAl23又はランタノイド酸化物もしくは周期表主族4族の金属又は半金属の酸化物、例えばSiO2、TiO2、SnO2又はZrO2である。2以上の金属及び/又は半金属を有する化合物は、好ましくはケイ酸塩、特にアルミノケイ酸塩である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態は炭水化物の酸化のための金触媒であって、Al23担体上にナノサイズで分散した金粒子を含むものの使用に関する。本発明によればAl23担体金触媒は約0.1%〜5%の金、好ましくは約0.5%〜1%の金を含む。本発明に基づき炭水化物の選択的酸化のために使用されるAl23担体金触媒は、好ましくは<10nm、特に好ましくは<6nm、最も好ましくは1〜2nmの直径を有する金ナノ粒子を含む。
【0018】
本発明の好ましい実施形態は炭水化物の酸化のための金触媒であって、TiO2担体上にナノサイズで分散した金粒子を含むものの使用に関する。本発明によればTiO2担体金触媒は約0.1%〜5%の金、好ましくは約0.5%〜1%の金、特に好ましくは約0.5%の金を含む。本発明に基づき選択的炭水化物酸化のために使用されるTiO2担体金触媒は好ましくは<20nm、特に好ましくは<6nm、最も好ましくは1〜4nmの直径を有する金ナノ粒子を含む。
【0019】
本発明に基づき使用される金属酸化物担体金触媒の製造のために、即ち金属酸化物担体材料の上にナノ粒子の形の金を析出させるために、例えば沈降法を使用することができる。その場合金は酸化/水酸化金−前駆物質の形で金属酸化物担体上に沈降させて析出させるか、又は金属酸化物担体の前駆物質と共に沈降させる。担体、例えば土類金属又は遷移金属酸化物のゾルゲル合成に金を導入することもできる。金溶液の含浸及びコロイド安定剤として種々のポリマーを使用する金コロイドの担体保持も知られている。金属酸化物担体金触媒の適当な製造方法は例えば沈降法、析出沈降法及び気相からの化学的析出法(CVD[化学的蒸着]法)を包含し、好ましくはPrati and Martra, Gold Bulletin, 32(3)(1999), 96-101;Wolf and Schueth, Applied Catalysis A: General., 226(2002), 1-13及びBerndtら、Applied Catalysis A: General, 6442(2003), 1-11に記載されている。なおこれらの刊行物の開示内容は、引用することによって本発明の開示内容に完全に取り入れられている。
【0020】
本発明によれば炭水化物の酸化のために使用される金属酸化物担体触媒は不均一系触媒反応で使用される。即ち触媒は固体であり、一方、酸化される炭水化物は液相中、例えば水溶液として存在する。そこで炭水化物の酸化のために使用される二酸素は気体として、液相に気泡で通され、激しく攪拌することによって液相に分配され、溶解される。
【0021】
炭水化物、炭水化物混合物又はこれを含む組成物の本発明に基づく選択的酸化のために、好ましくは粉末又は顆粒状の金属酸化物担体金触媒が使用される。
【0022】
「炭水化物の選択的酸化」とは、特に炭水化物のC1−炭素原子上の酸化可能なアルデヒド基がカルボキシル基へ酸化され、これに対して炭水化物の他の炭素原子上のアルコール基は酸化されないことを意味する。従って炭水化物の本発明に基づく選択的酸化の結果、好ましくはアルドン酸が得られる。本発明に関連して「アルドン酸」とは、炭水化物のアルデヒド基の酸化によって得られる糖酸を意味する。アルドン酸は脱水してγ又はδラクトンを形成することができる。遊離アルドン酸はラクトンと平衡である。
【0023】
本発明に関連して「炭水化物」とは、ポリヒドロキシアルデヒド及びポリヒドロキシケトン並びに加水分解によってこのような化合物に変換される高分子化合物を意味する。「炭水化物」の概念は、炭水化物から単数又は複数の反応段階で生成される炭水化物の誘導体、即ち派生物を包含する。本発明に基づき使用される炭水化物は、好ましくはC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド基を有するアルドース又はC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド基を導入することができる2−ケトンである。
【0024】
本発明に関連して「アルドース」とは、1個のアルデヒド基(−CHO)と少なくとも1個の不斉中心を有する炭水化物を意味し、その場合アルドース鎖の番号付けはアルデヒド基を含む炭素原子で始まる。アルドースのアルデヒド基の選択的酸化によってアルドン酸が得られる。従ってアルドースの混合物の選択的酸化で種々のアルドン酸の混合物が得られる。
【0025】
そこで本発明は金属酸化物担体金触媒を使用して、酸化可能なアルデヒド基を有する単数又は複数のアルドースの選択的酸化によりアルドン酸又は種々のアルドン酸の混合物を製造する方法に関する。
【0026】
本発明に関連して「ケトース」とは、ケト基を含む炭水化物を意味する。ケト基が2−位にあれば2−ケトースである。ケトースはアノマーの形成の結果、変旋光を示す。ケトースは一般に酸化されないが、2−ケトースはアルドースに変換することができ、その場合2−ケトースはまず対応するエノール形に変換され、次に酸化可能なアルドースに異性化され、その際C1−炭素原子上の−OH基がカルボニル基になり、当初C2−炭素原子上にあったC=O基はHC−OH基になる。その場合純形式的に見て、カルボニル基はC2−位からC−位に移動する。
【0027】
そこで本発明は単数又は複数の2−ケトースを使用してアルドン酸又は種々のアルドン酸の混合物を製造する方法に関する。その場合2−ケトースはまず酸化可能なアルデヒド基を有する互変異性アルドース形に変換され、次に金属酸化物担体金触媒を使用して選択的に酸化される。
【0028】
本発明によれば酸化される炭水化物は単量体ポリヒドロキシアルデヒド又はポリヒドロキシケトン、即ち単糖、その二量体〜十量体即ちオリゴ糖、例えば二糖、三糖等及び高分子多糖を包含する。本発明に関連して「単糖」とは、2〜6の酸素官能基をもつ一般式Cn2nnの化合物を意味する。なお天然の単糖はおおむねヘキソース及びペントースである。単糖の炭素鎖は分岐でも非分岐でもよい。「オリゴ糖」とは、脱水により2個〜10個の単糖分子を結合することで得られる化合物を意味する。それはグリコシド又はエーテルである。本発明に関連して「多糖」とは、おおむね2つのグループの物質、即ち一方では植物及び幾つかの動物の骨格物質として利用される化合物、他方では簡単な炭水化物のための貯蔵物質として利用され、身体が必要なときに特定の酵素により放出される化合物を意味する。多糖はホモグリカンもヘテログリカンも包含する。
【0029】
本発明に関連して「炭水化物混合物」とは、好ましくは炭水化物以外の他の成分を含まず、事前の化学反応なしで形成される2つ以上の化学的に異なる炭水化物の混合物を意味する。酸化される炭水化物混合物は、均質な混合物でも不均質な混合物でもよい。不均質な混合物は、炭水化物の個別成分を含むか又は炭水化物の個別成分からなる少なくとも2つの相からなる。均質な混合物は、炭水化物の個別成分が互いに入り混じった分子分散物であり、個別成分の間に界面がなく、炭水化物の個別成分が任意の数量比で存在することを特徴とする。酸化される混合物が液状でなく、又は酸化される混合物が固相を含むならば、本発明に基づき選択的酸化の前に例えば水溶液を調製することによって混合物を液相に変える。
【0030】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの炭水化物成分が酸化可能なアルデヒド基をもつC1−炭素原子を含むか、又は選択的酸化の前に少なくとも1つの炭水化物成分のC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド官能基を与えることができる炭水化物混合物の、酸化される出発基質としての使用に関する。
【0031】
本発明の好ましい実施形態は、複数の、特に好ましくはすべての炭水化物成分が酸化可能なアルデヒド基をもつC1−炭素原子を含むか、又は酸化の前に複数の、特に好ましくはすべての炭水化物成分のC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド基を与えることができる炭水化物混合物の、酸化される出発基質としての使用に関する。従って酸化される炭水化物混合物は、C1−炭素にすでに酸化可能なアルデヒド基を有するか、又は選択的酸化の前にそのC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド基を導入することができる、好ましくは複数の炭水化物を含む。この実施形態では酸化される炭水化物混合物はこうして複数の異なるアルドース及び/又は2−ケトースを含みうる。酸化される炭水化物混合物は、そのC1−炭素にすでに酸化可能なアルデヒド基を有するか、又は酸化の前にC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド基を導入することができる炭水化物個別成分だけからなることが特に好ましい。そこでこの実施形態では酸化される炭水化物混合物は種々のアルドース及び/又は2−ケトースのみからなる。
【0032】
本発明に関連して「少なくとも1つの炭水化物又は炭水化物混合物を含む組成物」とは種々の化合物の混合物を意味し、組成物の少なくとも1つの成分が遊離アルデヒド基を有するか、又は酸化の前に酸化可能なアルデヒド基を与えることができるものである。酸化される組成物の他の成分は、例えば他の酸化不能な炭水化物、タンパク質、ペクチン、酸、脂肪、塩、香料、例えばバニリン又はフルフラール等又はその混合物でありうる。酸化される組成物はもちろん複数の種々のアルドース及び/又は2−ケトースを含むことができる。
【0033】
そこで本発明は金属酸化物担体金触媒を使用した炭水化物、種々の炭水化物の混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化に関する。その場合炭水化物は好ましくは単糖又はオリゴ糖である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では酸化される単糖はアルドース、例えばグルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース又はリボースである。グルコースの酸化の場合は、本発明に基づく方法を使用して酸化生成物としてグルコン酸が得られる。ガラクトースの酸化の場合は、本発明に基づく方法を使用して酸化生成物としてガラクトン酸が得られる。
【0035】
別の特に好ましい実施形態では、酸化される炭水化物はオリゴ糖、特に二糖である。酸化される二糖は好ましくは二糖アルドース、例えばマルトース、ラクトース、セロビオース又はイソマルトースである。本発明によれば本発明方法を使用したマルトースの選択的酸化で、酸化生成物としてマルトビオン酸が得られる。本発明方法を使用したラクトース酸化で、酸化生成物としてラクトビオン酸が得られる。
【0036】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、酸化されるオリゴ糖として二糖ケトースを使用する。酸化される二糖ケトースは好ましくはパラチノース(イソマルツロース)である。酸化の前にパラチノースを本発明に基づき互変異性アルドース形に変え、その上でこれを酸化する。
【0037】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、酸化される炭水化物はマルトデキストリンである。マルトデキストリンはデンプンの酵素分解によって得られる鎖長2〜30、好ましくは5〜20、アンヒドログルコース単位およびマルトース分を有する水溶性炭水化物、特にデキストロース等価体である。本発明に基づく方法を使用したマルトデキストリンの選択的酸化で、本発明に基づき組成に応じてオリゴ糖−アルドン酸のほかにマルトビオン酸分及びグルコン酸分を有する酸化生成物が得られる。
【0038】
別の特に好ましい実施形態では酸化される炭水化物混合物又は酸化される炭水化物組成物はデンプンシロップである。デンプンシロップとは、デンプンから得られる精製水溶液であるグルコースシロップを意味し、固形分が少なくとも70%である。
【0039】
別の実施形態では酸化される炭水化物はフルフラールである。酸化されるフルフラールは好ましくはヒドロキシメチルフルフラール(HMF)又はグリコシルオキシメチルフルフラール(GMF)である。
【0040】
選択的炭水化物酸化のための本発明方法の好ましい実施形態では、酸化される炭水化物、炭水化物混合物又はこれを含む組成物の水溶液を調製する。水溶液は少なくとも約10mmol/l、好ましくは少なくとも約100mmol/l、150mmol/l、200mmol/l又は250mmol/l、最も好ましくは少なくとも約1000mmol/l又は1500mmol/lの量の炭水化物又は炭水化物混合物を含む。続いて炭水化物水溶液に約100mg/l〜10g/lの量の好ましくは粉末状の金属酸化物担体金触媒を加える。その場合リットル当り約1gの触媒を使用することが好ましい。本発明に基づき単数又は複数の酸化される炭水化物又は炭水化物混合物の量と金属酸化物担体上の金の量との比は少なくとも約300、好ましくは350、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500又は4000を超え、最も好ましくは9000、10000、15000、20000、25000、30000、35000又は40000を超える。
【0041】
選択的炭水化物酸化のための本発明方法の好ましい実施形態では、少なくとも1つの炭水化物、炭水化物混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化がpH7〜11、好ましくは8〜10で行われる。炭水化物酸化を行うために、本発明に基づき20℃〜140℃、好ましくは40℃〜90℃、特に好ましくは50℃〜80℃の温度が使用される。本発明に基づき圧力は約1バール〜約25バールである。酸化の際に本発明に基づき酸素及び/又は空気が100ml/(min×LReaktorvolumen[反応器容積])〜10000ml/(min×LReaktorvolumen)、好ましくは500ml/(min×LReaktorvolumen)のガス補給率で炭水化物、混合物又は組成物の水溶液に気泡で通される。
【0042】
また本発明の根底をなす技術問題は、少なくとも1つのオリゴ糖、その混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化のための方法において、オリゴ糖、混合物又は組成物の水溶液を、担体上にナノサイズで分散した金粒子を含む金触媒の存在下で酸素と反応させる方法によって解決される。
【0043】
このようにして本発明に基づきオリゴ糖の選択的酸化のために、担体上にナノサイズで分散した金粒子を含む金触媒を使用するものとし、担体は金属酸化物担体又は炭素担体である。
【0044】
本発明の好ましい実施形態ではオリゴ糖、オリゴ糖混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化のために炭素担体金触媒が使用される。
【0045】
本発明に関連して「炭素担体」とは、特に活性炭担体を意味する。本発明に基づき使用される炭素担体金触媒は、好ましくはIncipient-Wetness[初期湿潤]法を使用して、又は金ゾルから調製される。炭素担体金触媒の調製に適した方法は、特に適当な含浸技術及び例えば特殊なポリマーを使用した金コロイドの担体保持を包含する。炭素担体金触媒の適当な調製方法は例えばPrati及びMartra, Gold Bulletin, 32(3)(1999), 96-101に記載されている。なおこの刊行物の開示内容は、引用することによって本発明の開示内容に完全に取り入れられている。本発明に基づき使用される炭素担体金触媒は特に直径20nm未満、好ましくは<10nm、特に好ましくは<6nm、最も好ましくは<2nmの金ナノ粒子を有する。炭素担体金触媒は本発明に基づき約0.1%〜5%の金、好ましくは約0.5%〜1.0%、特に好ましくは0.5%の金を含む。
【0046】
本発明の別の好ましい実施形態ではオリゴ糖、オリゴ糖混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化のために、本発明に基づき金属酸化物担体金触媒が使用される。「金属酸化物担体」とは、ある典型金属又は遷移金属の金属又は半金属の少なくとも1つの酸化物並びに2以上の金属又は半金属からなる化合物からなる触媒担体を意味する。それは好ましくは周期表主族2族の金属又は半金属の酸化物、例えばMgO、CaO又はBaO、周期表主族3族の金属又は半金属の酸化物、例えばAl23又はランタノイド酸化物、もしくは周期表主族4族の金属又は半金属の酸化物、例えばSiO2、TiO2、SnO2又はZrO2である。2以上の金属又は半金属を含む化合物は好ましくはケイ酸塩、特にアルミノケイ酸塩である。
【0047】
好ましい実施形態ではAl23担体金触媒が使用される。Al23担体金触媒は本発明に基づき約0.1%〜5%の金、好ましくは約0.5%〜1%の金、特に好ましくは0.5%の金を含む。
【0048】
好ましい実施形態ではTiO2担体金触媒が使用される。TiO2担体金触媒は本発明に基づき約0.1%〜5%の金、好ましくは約0.5%〜1%の金を含む。
【0049】
本発明に基づきオリゴ糖の酸化のために使用される金属酸化物担体金触媒の調製のために特に沈降法を使用することができる。その場合金粒子は沈降により金属酸化物担体の上に析出し、又は金属酸化物担体の前駆物質と共に沈降する。沈降法、析出沈降法及び気相からの化学的析出法(CVD法)が特に適している。
【0050】
本発明によれば、選択的オリゴ糖酸化のために使用される炭素又は金属酸化物担体金触媒は液相で使用され、その場合触媒は固体であるが、オリゴ糖は液相中にある。酸化のために使用される二酸素はガスとして液相に気泡で通され、激しく攪拌することによって液相に溶解される。炭素又は金属酸化物担体金触媒は、好ましくは粉末又は顆粒の形で使用される。
【0051】
本発明に関連して「オリゴ糖」とは、2〜10個の単糖を脱水して結合することによって得られる化合物を意味し、グリコシド又はエーテルである。「オリゴ糖」の概念は、オリゴ糖から単数又は複数の反応段階で形成されるオリゴ糖の誘導体、即ち派生物も包含する。本発明によれば酸化されるオリゴ糖は特に二糖、三糖等であることが好ましい。酸化されるオリゴ糖はC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド基を含み、このアルデヒド基は酸化によってカルボキシ基に変換される。これに対してオリゴ糖のアルコール基は酸化されない。
【0052】
本発明に基づき使用されるオリゴ糖は、C1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド基を有するオリゴ糖アルドース、又はC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド基を導入することができる2−ケトース形のオリゴ糖である。
【0053】
本発明に関連して「オリゴ糖アルドース」とは、C1−炭素原子にアルデヒド基(−CHO)を有するオリゴ糖を意味する。オリゴ糖アルドースのアルデヒド基の選択的酸化によってオリゴ糖アルドン酸が得られる。「オリゴ糖アルドン酸」とは、オリゴ糖のアルデヒド基のカルボキシ基への酸化によって得られるオリゴ糖酸を意味する。
【0054】
そこで本発明は炭素又は金属酸化物担体金触媒を使用して、酸化可能なアルデヒド基を有する単数又は複数のオリゴ糖アルドースの選択的酸化よりオリゴ糖アルドン酸又は種々のオリゴ糖アルドン酸の混合物を調製する方法に関する。
【0055】
「2−ケトース」とは、2−位にケト基を有するオリゴ糖を意味する。2−ケトース形のオリゴ糖はオリゴ糖アルドースに変換することができる。その場合2−ケトースをまずエノール形に変え、次にこれを酸化可能なオリゴ糖アルドースに互変異性化する。
【0056】
そこで本発明は、単数又は複数の2−ケトース形オリゴ糖を使用して、まず2−ケトースを酸化可能なアルデヒド基を有するアルドース形互変異性オリゴ糖に変え、次に炭素又は金属酸化物担体金触媒を使用してこれを選択的に酸化する、オリゴ糖アルドン酸又は種々のオリゴ糖アルドン酸の混合物の調製方法に関する。
【0057】
本発明に関連して「オリゴ糖混合物」とは、2つ以上の化学的に異なるオリゴ糖の混合物を意味する。好ましい実施形態では、酸化されるオリゴ糖混合物はオリゴ糖以外に他の成分を含まない。酸化されるオリゴ糖混合物は均質な混合物でも、不均質な混合物でもよい。酸化されるオリゴ糖混合物が液状でないか、又は酸化されるオリゴ糖混合物が固相を含むならば、選択的酸化の前に例えば水溶液を調製することによって混合物を液相に変換する。
【0058】
本発明の一実施形態は、酸化されるオリゴ糖混合物の出発基質としての使用であって、少なくとも1つのオリゴ糖成分が酸化可能なアルデヒド基をもつC1−炭素原子を含むか、又は選択的酸化の前に少なくとも1つのオリゴ糖成分のC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド官能基を与えることができるものである前記使用に関する。
【0059】
本発明の別の好ましい実施形態は酸化されるオリゴ糖混合物の出発基質としての使用に関する。その場合酸化される混合物は、C1−炭素にすでに酸化可能なアルデヒド基を有するか又は選択的酸化の前にC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド基を導入することができる好ましくは複数のオリゴ糖を含む。この実施形態では、酸化されるオリゴ糖は複数の異なるオリゴ糖アルドース及び/又は2−ケトース形オリゴ糖を含みうる。酸化されるオリゴ糖混合物は、C1−炭素にすでに酸化可能なアルデヒド基を有するか又は選択的酸化の前にそのC1−炭素原子に酸化可能なアルデヒド基を導入することができるオリゴ糖個別成分だけからなることが特に好ましい。従ってこの実施形態では、酸化されるオリゴ糖は種々のオリゴ糖アルドース及び/又は2−ケトース形オリゴ糖のみからなる。
【0060】
本発明に関連して「少なくとも1つのオリゴ糖又はオリゴ糖混合物を含む組成物」とは、組成物の少なくとも1つの成分がオリゴ糖であり、そのC1−炭素原子が遊離アルデヒド基を有するか、又は選択的酸化の前に酸化可能なアルデヒド基を与えることができる種々の化合物の混合物を意味する。酸化される組成物の他の成分は例えば他の炭水化物、例えば酸化不能な又は選択的酸化可能な単糖、タンパク質、ペクチン、酸、脂肪、塩、香料等である。酸化される組成物はもちろん複数の種々のオリゴ糖アルドース及び/又は2−ケトース形のオリゴ糖を含むことができる。
【0061】
特に好ましい実施形態では、酸化されるオリゴ糖は二糖である。酸化される二糖は二糖アルドース、例えばマルトース、ラクトース、セロビオース又はイソマルトースである。本発明によれば、本発明方法を使用したマルトースの選択的酸化で酸化生成物としてマルトビオン酸が得られる。本発明方法を使用して、ラクトース酸化で酸化生成物としてラクトビオン酸が得られる。
【0062】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、酸化されるオリゴ糖として二糖ケトースが使用される。酸化される二糖ケトースは好ましくはパラチノースである。酸化の前にパラチノースを互変異性アルドース形に変え、その上で酸化する。
【0063】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、酸化されるオリゴ糖混合物又は酸化されるオリゴ糖含有組成物はマルトデキストリンである。本発明方法を使用したマルトデキストリンの選択的酸化で、本発明に基づきマルトビオン酸分とグルコン酸分を有する酸化生成物が得られる。
【0064】
別の特に好ましい実施形態では、酸化されるオリゴ糖含有組成物はデンプンシロップである。
【0065】
選択的炭水化物酸化のための本発明方法の好ましい実施形態では、酸化されるオリゴ糖、オリゴ糖混合物又はこれを含む組成物の水溶液を調製する。水溶液は少なくとも約10mmol/l、好ましくは少なくとも約100mmol/l、150mmol/l、200mmol/l又は250mmol/l、最も好ましくは少なくとも約1000mmol/l又は1500mmol/lの量のオリゴ糖又はオリゴ糖混合物を含む。続いて約100mg/l〜10g/lの量の好ましくは粉末状の炭素又は金属酸化物担体金触媒をオリゴ糖水溶液に加える。その場合リットル当り約1gの触媒を使用することが好ましい。本発明に基づき単数又は複数の酸化されるオリゴ糖又はオリゴ糖混合物の量と金属酸化物担体又は炭素担体上に含まれる金の量の比は、少なくとも約300、又は好ましくは350、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500又は4000を超える、最も好ましくは9000、10000、15000、20000、25000、30000又は40000を超える。
【0066】
選択的オリゴ糖酸化のための本発明方法の好ましい実施形態では、少なくとも1つのオリゴ糖、オリゴ糖混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化はpH7〜11、好ましくは8〜10で行われる。炭水化物酸化を行うために、本発明に基づき20℃〜約140℃、好ましくは40℃〜90℃、特に好ましくは50℃〜80℃の温度が使用される。本発明に基づき圧力は約1バール〜約25バールである。酸化の際に本発明に基づき酸素及び/又は空気を100ml/(min×LReaktorvolumen[反応器容積])〜10000ml/(min×LReaktorvolumen)、好ましくは500ml/(min×LReaktorvolumen)のガス補給率でオリゴ糖、混合物又は組成物の水溶液に気泡で通す。
【0067】
また本発明は金属酸化物担体金触媒を使用して少なくとも1つの炭水化物、炭水化物混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化により、もしくは炭素又は金属酸化物担体金触媒を使用して少なくとも1つのオリゴ糖、オリゴ糖混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化により得られる、本発明方法を使用して調製した酸化生成物に関する。本発明に基づき調製される酸化生成物は、使用する出発材料に応じてアルドン酸、種々のアルドン酸の混合物であるか又は脂肪、ペクチン、タンパク質、塩、香料等のような成分のほかに単数又は複数のアルドン酸を含む組成物である。特に原料として単一の炭水化物を使用する場合は、本発明に基づき使用される金触媒の選択性がはなはだ高いため、本発明に基づき得られる酸化生成物は極めて高い純度を有する。本発明に基づき得られる酸化生成物は、従来の生成物に比して、おそらく健康に有害な微生物代謝産物を含まないのが特徴である。
【0068】
好ましい実施形態では、酸化生成物はグルコースの選択的酸化によって得られるグルコン酸である。本発明に基づき得られるグルコン酸は高い純度が特徴であり、全酸化生成物に対するグルコン酸の割合は95%を超える、好ましくは97%を超える、より好ましくは98%を超える、最も好ましくは99%を超える。
【0069】
本発明方法を使用して調製したグルコン酸は、場合によっては適当な方法、例えばクロマトグラフィー法を使用した別の精製段階の後に食品、飲料又は動物飼料の添加物として、化粧品用、製薬用に、又は例えば清浄剤で洗剤として使用することができる。グルコン酸は例えば酸化防止剤として優れた性質を有する。またグルコン酸が優れた肌手入れ剤であることは周知である。
【0070】
そこで本発明は、本発明に基づく酸化法を使用して調製したグルコン酸の、食品又は動物飼料の添加物としての、並びに医薬組成物、化粧品組成物及び洗剤の製造のための使用に関する。
【0071】
別の好ましい実施形態では、酸化生成物はマルトースの選択的酸化によって得られるマルトビオン酸である。本発明に基づき得られるマルトビオン酸は高い純度が特徴であり、全酸化生成物に対するマルトビオン酸の割合は95%を超える、好ましくは97%を超える、より好ましくは98%を超える、最も好ましくは99%を超える。
【0072】
本発明方法を使用して調製されるマルトビオン酸は、所望によりさらなる精製段階の後に食品、飲料又は動物飼料の添加物として、もしくは製薬の用途のために使用することができる。マルトビオン酸は例えばイオン交換クロマトグラフィーによる精製の後にラクトン形に変え、その上で例えば1,3−ジアミノ−2−プロパノールと縮合することができ、その際マルトビオン酸のビスアミドが得られる。マルトビオン酸のビスアミドは経口投与用の抗凝固剤及び/又は抗血栓溶解剤として使用することができる。
【0073】
そこで本発明は、本発明に基づく酸化法を使用して調製したマルトビオン酸の食品又は動物飼料の添加物としての、並びに医薬組成物の製造のための使用に関する。
【0074】
別の好ましい実施形態では本発明に基づき得られる酸化生成物は、ラクトースの酸化によって得られるラクトビオン酸である。本発明に基づき得られるラクトビオン酸は高い純度が特徴であり、全酸化生成物に対するラクトビオン酸の割合は95%を超える、好ましくは97%を超える、より好ましくは98%を超える、最も好ましくは99%を超える。
【0075】
本発明方法を使用して調製したラクトビオン酸は、所望によりさらなる精製段階の後に食品、飲料又は動物飼料の添加物として並びに化粧品用及び製薬用に使用することができる。ラクトビオン酸はその吸湿性に基づき大気水分を結合することができるから、ラクトビオン酸は天然のゲルマトリックスを形成する。こうして形成されたゲルマトリックスは約14%の水を含む。ラクトビオン酸はこのようなゲルマトリックスを形成する能力に基づき、グルコン酸と同様に優れた肌手入れ剤である。またラクトビオン酸は金属キレートを形成する優れた性質を有するから、移植予定の臓器の輸送と保存のために利用される移植液、例えばウィスコンシン移植液の調製のために使用することができる。ラクトビオン酸は粉末洗剤のコビルダーとしても使用され、その際粉末洗剤は40%以下のラクトビオン酸を含むことができる。ラクトビオン酸はマイルドな甘酸味を有するから、食品及び動物飼料の製造にも使用することができる。
【0076】
そこで本発明は、本発明の酸化法を使用して調製したラクトビオン酸の食品、動物飼料、化粧品組成物、医薬製剤及び粉末洗剤の製造のための使用に関する。
【0077】
別の好ましい実施形態では、本発明に基づき得られる酸化生成物は、高い割合のグルコン酸及びマルトビオン酸を含み、マルトデキストリンの酸化によって得られる生成物混合物である。
【0078】
選択的マルトデキストリン酸化によって得られるマルトビオン酸及びグルコン酸含有酸化生成物は、所望によりマルトビオン酸とグルコン酸を一層濃縮するためのさらなる精製段階の後に、特に食品及び医薬組成物の製造のために使用することができる。
【0079】
そこで本発明は本発明酸化法を使用して得られるマルトデキストリン酸化生成物の、食品、医薬製剤及び化粧品組成物の製造のための使用に関する。
【0080】
別の好ましい実施形態では、本発明に基づき得られる酸化生成物は、高い割合のマルトビオン酸を有し、デンプンシロップの選択的酸化によって得られる生成物である。デンプンシロップの酸化で得られる酸化生成物は、特に食品及び動物飼料の製造のために使用することができる。
【0081】
また本発明は金属酸化物担体上にナノサイズで分散した金粒子を含む金触媒の、少なくとも1つの炭水化物、炭水化物混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化のための使用に関する。炭水化物、混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化のために使用される金触媒は、本発明に基づき好ましくは担体がTiO2担体である金触媒である。本発明に基づき使用されるTiO2担体を有する金触媒は約0.1%〜5%の金、好ましくは約0.5%〜1%の金、特に好ましくは0.5%の金を含む。別の好ましい実施形態では、本発明に基づき使用される金触媒はAl23担体を含む。本発明に基づき使用されるAl23担体を有する金触媒は約0.1%〜5%の金、好ましくは約0.5%〜1%の金を含む。酸化される炭水化物は炭水化物アルドース及び2−ケトース形の炭水化物である。酸化される炭水化物は単糖、オリゴ糖、その混合物又はこれを含む組成物である。酸化される単糖がグルコースであれば、金触媒を使用してグルコース酸化生成物としてグルコン酸が得られる。酸化されるオリゴ糖が二糖アルドース、例えばマルトースであれば、酸化生成物としてマルトビオン酸が得られる。酸化されるオリゴ糖が二糖アルドース、例えばラクトースであれば、酸化生成物としてラクトビオン酸が得られる。別の実施形態では本発明に基づき使用される金触媒をマルトデキストリンの酸化又はデンプンシロップの酸化のために使用することができる。
【0082】
そこで本発明は単数又は複数の炭水化物アルドースから単数又は複数のアルドン酸を調製するための金属酸化物担体金触媒の使用に関する。また本発明は単数又は複数の2−ケトース形炭水化物から単数又は複数のアルドン酸を調製するための金属酸化物担体金触媒の使用に関する。その場合単数又は複数の2−ケトース形炭水化物は酸化の前にまず互変異性アルドース形に変換され、その上で選択的に酸化される。
【0083】
また本発明はオリゴ糖、オリゴ糖混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化のための炭素担体金触媒の使用に関する。その場合単数又は複数のオリゴ糖が対応するオリゴ糖アルドン酸へ酸化される。本発明に基づき使用される炭素担体金触媒は約0.1%〜5%の金、好ましくは約0.5%〜1%の金、特に好ましくは0.5%の金を含む。酸化されるオリゴ糖としてオリゴ糖アルドースも2−ケトース形オリゴ糖も使用することができ、2−ケトース形オリゴ糖はまず互変異性オリゴ糖アルドース形に変換され、その上で酸化される。
【0084】
そこで本発明は単数又は複数のオリゴ糖アルドースから単数又は複数のオリゴ糖アルドン酸を調製するための炭素担体金触媒の使用に関する。また本発明は単数又は複数の2−ケトース形オリゴ糖から単数又は複数のオリゴ糖アルドン酸を調製するための炭素担体金触媒の使用に関する。その場合単数又は複数の2−ケトース形オリゴ糖は酸化の前にまず互変異性アルドース形に変換され、その上で選択的に酸化される。
【0085】
下記の図及び実施例に基づき本発明を詳述する。
【実施例】
【0086】
(比較例)
白金及びパラジウム触媒によるグルコース酸化
触媒として5%白金及び5%ビスマスを含む炭素担体触媒(Degussa社)、5%白金を含むAl23担体触媒(Engelhard社)並びに5%パラジウムを含むAl23担体触媒を使用した。下記の反応条件のもとでグルコースの酸化を行った。
【0087】
反応容積(バッチ): 500ml
触媒量: 1g/l
基質初期濃度: 100mmol/l
pH値: 11
温度: 40℃
圧力: 1バール
2ガス補給率: 500ml/min
攪拌速度: 700rpm
上記の触媒を使用してグルコース酸化で得られた結果を次の表1に示す。
【表1】

【0088】
表1は、従来の白金及びパラジウム触媒がグルコース酸化でグルコン酸の生成に関して中程度の選択性しかなく、多量のその他の酸化生成物、例えばグルコロン酸、グルカル酸、2−ケトグルコン酸及び5−ケトグルコン酸が生成されることを示す。これらの様々な生成物は、UV検出器によって得られた生成物クロマトグラムを示す図1でも明らかである。得られた結果から、慣用の白金又はパラジウム触媒はグルコース酸化によるグルコン酸の調製に適していないことが明らかである。
【0089】
(実施例1)
金触媒を使用したグルコース酸化
本実施例のために下記の各種の触媒を使用した。
A:1%Au/C、138型(ACA)
B:0.95%Au/Al23(ACA)
C:0.7%Au/C、11型(ACA)
D:1%Au/TiO2、5型(ACA)
E:0.5%Au/TiO2、102型(ACA)
F:0.5%Au/TiO2、149型(ACA)
下記の反応条件でグルコース酸化を行った。
【0090】
反応容積(バッチ): 500ml
触媒量: 1g/l
基質初期濃度: 100mmol/l
pH値: 11
温度: 40℃
圧力: 1バール
2ガス補給率: 500ml/min
攪拌速度: 700rpm
グルコース酸化で上記の触媒を使用して得られた結果を表2に示す。
【表2】

【0091】
表2で明らかなように、使用した金触媒はグルコース酸化に関して、比較例で使用された白金及びパラジウム触媒の活性に比して少なくとも一桁以上高い活性を有する。
さらに表2はグルコースからグルコン酸を生成するために使用される金触媒の異常に高い選択性を示す。グルコン酸の調製に関して使用した金触媒の高い選択性は図2でも明らかである。Au/TiO2触媒(触媒F)(図2B)を使用すれば、グルコン酸しか生成されず、他の酸化生成物は検出されない。これに対してAu/Al23触媒(触媒B)を使用するときは、グルコン酸のほかに少量の他の酸化生成物、例えばグルクロン酸、グルカル酸及び5−ケトグルコン酸も生成する。しかしこれらの酸化生成物の量は、白金及びパラジウム触媒を使用して得られるこれらの酸化生成物の量と比較して著しく少ない。
【0092】
本発明に基づき使用される金触媒では、この金触媒がフルクトースをごく僅かに異性化するだけであり、フルクトース自体はそれ以上酸化されないことも確認された。
【0093】
得られた結果に基づき、本発明に基づき使用される金触媒はグルコースからグルコン酸を調製するために、比較例で使用された白金又はパラジウム触媒よりはるかに好適であることが明らかである。
【0094】
(実施例2)
Au/TiO2触媒によるグルコース酸化
実施例1で調製したTiO2担体Au含有触媒(触媒G)をさらなる研究のために選び、反応条件を変えてグルコース酸化をテストした。
【0095】
別に示さない限り、実施例1で挙げたのと同じ反応条件を使用した。
【0096】
グルコース酸化に対するpH値の影響
0.5%Au/TiO2触媒を使用したグルコース酸化の異なるpH値での結果を表3に示す。
【表3】

【0097】
表3で明らかなように、Au/TiO2触媒の活性は弱アルカリ性〜中性pH領域でやや小さいが、選択性はさらに増加する。
【0098】
グルコース酸化に対する温度の影響
種々の温度、pH9及びグルコース初期濃度250mmol/lでのAu/TiO2触媒を使用したグルコース酸化の結果を表4に示す。
【表4】

【0099】
表4で明らかなように、反応温度の上昇とともにグルコース酸化の選択性がやや減少する。しかしこれはグルコン酸以外の酸化生成物の形成が原因ではなく、グルコースのフルクトースへの異性化速度の増加に応じてフルクトースの形成が増えることがほぼ唯一の原因である。
【0100】
グルコース酸化に対するグルコース初期濃度の影響
温度40℃、pH9での0.5%Au/TiO2触媒を使用したグルコース酸化に対するグルコース初期濃度の影響を表5に示す。
【表5】

【0101】
表5に示した結果から、使用した金触媒は濃縮グルコース溶液(1100mmol/l;約20%グルコース/l)でも優れた活性と選択性を示し、同じ反応時間で著しく多量のグルコースが転化されることが明らかである。
【0102】
(実施例3)
グルコース酸化でのAu/TiO2触媒の長時間安定性
0.5%Au/TiO2触媒(実施例1の触媒G)の長時間安定性を繰返しバッチテストの形で試験した。そのためにグルコース酸化を終日行った。夜間又は週末は触媒を主としてグルコン酸水溶液からなる反応溶液の中に放置したので、触媒は沈殿した。翌日上清をデカントして除き、反応器に新しいグルコース溶液を補充し、次のグルコース酸化を行った。pH9、温度40℃、グルコース初期濃度250mmol/l(約4.5%グルコース/lに相当)で合計17回のバッチテストを行った。その他の反応条件は実施例1で説明したとおりである。選んだ幾つかのバッチテストの結果を表6に示す。
【表6】

【0103】
表6に示した結果が示すところでは、金触媒の触媒としての性質は少なくとも調べた試験期間にわたって一定であるとみなされ、従ってこの触媒は極めて高い寿命を有する。0.5gの0.5%Au/TiO2触媒によるこの試験で、全体として約360gのグルコースがほぼ100%グルコン酸に転化された。これは約145トングルコース/kg金に相当する。試験時に試料採取により発生する触媒損失がこの計算では考慮されていないから、この値はおそらくさらに著しく高いものになる。また触媒はおそらく調べた期間以上にはるかに長時間にわたって安定であると考えられるから、この値は相応に上昇することが可能である。
(実施例4)
金触媒によるラクトースの選択的酸化
ラクトースはグルコース部とガラクトース部からなる1,4結合二糖である。ラクトースの酸化のために0.5%Au/TiO2(触媒G)を使用した。比較のために5%Pt/Al23触媒(Engelhard)及び0.5%Pd/Al23触媒も使用した。ラクトースの酸化は下記の反応条件で行った。
反応容積(バッチ): 500ml
触媒量: 1g/l
基質初期濃度: 10mmol/l
pH値: 8
温度: 80℃
圧力: 1バール
2ガス補給率: 500ml/min
攪拌速度: 700rpm
表7は種々の触媒を使用して得られたラクトース接触酸化の結果を示す。
【表7】

【0104】
分析問題により、ラクトース酸化に対する個々の触媒の選択性は定性的に示すことしかできない。UV検出器で得られた、図3に示すクロマトグラムがそのために利用できる。クロマトグラムは酸化された反応生成物を示す。図3で明らかなように、本発明に基づき使用されるTiO2担体金触媒はラクトビオン酸の調製に関して極めて高い選択性を有し、他の酸化生成物は実際に検出されない。これと対照的に白金又はパラジウム触媒の存在下でのラクトースの酸化は様々な生成物の混合物をもたらし、ラクトビオン酸は主生成物でない。
【0105】
(実施例5)
金触媒を使用したマルトースの選択的酸化
マルトースは2つのグルコース単位からなる1,4結合二糖である。その場合一方のグルコース部はアルデヒドC1−炭素を有する。マルトースの2つのグルコース単位はそれぞれアルコールC6−炭素原子を含む。0.5%Au/TiO2触媒(触媒G)を使用して、マルトースの酸化を行った。比較のために5%Pt/Al23触媒(Engelhard)及び5%Pd/Al23触媒も使用してマルトース酸化を行った。マルトースの酸化は下記の反応条件で行った。
反応容積(バッチ): 500ml
触媒量: 1g/l
基質初期濃度: 10mmol/l
pH値: 8
温度: 80℃
圧力: 1バール
2ガス補給率: 500ml/min
攪拌速度: 700rpm
表8はマルトース酸化で得られた結果を示す。
【表8】

【0106】
分析問題により、マルトースのマルトビオン酸への酸化に関する選択性は定性的に示すことしかできない。そのために図4に示したUV検出器の生成物クロマトグラムが利用できる。このクロマトグラムに基づいて酸化された反応生成物を検出することができる。図4は上記の触媒を使用したマルトース酸化で得られた生成物のクロマトグラムを示す。図4で明らかなように、使用した金触媒は白金及びパラジウム触媒と比較して、マルトビオン酸の調製に関してはるかに高い選択性を有し、他の酸化生成物は実際に検出されない。これに対して白金又はパラジウム触媒では他の酸化生成物も高い選択性で形成される。この結果が示すところでは、使用したAu/TiO2触媒はマルトース酸化でもラクトース酸化の場合と同様に高い選択性を示す。
【0107】
(実施例6)
金触媒を使用したマルトデキストリンの酸化
マルトデキストリンは、1,4−グリコシド結合によるグルコース単位の結合から生じるオリゴ糖の混合物である。本実施例ではAgenamalt 20.222(マルトデキストリンDE19)を使用した。製造元のデータによれば、使用したマルトデキストリンDE19は次の組成を有する。
【0108】
グルコース: 3.5−4.5%固形分
マルトース: 3.5−4.5%固形分
マルトトリオース: 4.5−5.5%固形分
オリゴ糖: 残量
マルトデキストリンの酸化のために5%Pt/Al23触媒(Engelhard)、5%Pd/Al23触媒及び0.5%Au/TiO2触媒(触媒G)を使用した。マルトデキストリンの酸化は下記の反応条件で行った。
【0109】
反応容積(バッチ): 500ml
触媒量: 1g/l
基質初期濃度: 10mmol/l
pH値: 8
温度: 80℃
圧力: 1バール
2ガス補給率: 500ml/min
攪拌速度: 700rpm
主要な分析問題により、個々の触媒種類について転化率及び活性を示すことはできない。ところが調べた触媒のいずれでも酸化反応は進行する。図5は反応終了時の試料の個々のUVクロマトグラムの定性的比較を示す。
【0110】
図5で明らかなように、特にPd触媒と本発明に基づき使用される金触媒でかなりの酸化が起こる。このことは滴定したKOHの量でも証明される(Pt:0.7ml;Pd:2.8ml;Au:2.2ml、それぞれt=85分)。Pd触媒を使用して得られた生成物混合物とAu触媒を使用して得られた生成物混合物の比較は顕著な相違を示す。保持時間20.2分の物質は、Pd触媒によってAu触媒の場合より明らかに高い選択性で形成される。但しこの物質の同一性は不明である。これに対して本発明に基づく金触媒はグルコン酸とマルトビオン酸に関して、Pd触媒より明らかに高い選択性を示す。
【0111】
(実施例7)
炭水化物の選択的酸化のための金触媒の調製
Au/TiO2触媒(0.45%Au)の調製
担体材料として、鋭錐石を含む水和TiO2(Kronos、SBET=288m2/g)を使用した。70℃に熱し、0.2NのNaOHでpH6.5に調整した蒸留水1リットル中の50gTiO2の懸濁水に、一定のpHで激しく攪拌しつつ3時間かけて水250ml中500mgのテトラクロロ金酸(HAuCl4×3H2O)を滴加する。調合物を70℃でさらに1時間攪拌する。室温に冷却した後、0.2NのNaOHであらかじめpHを6.5に調整したクエン酸マグネシウム溶液(水50ml中2.318gMgHC657×5H2O)を加える。1時間の攪拌時間の後に固形物を遠心分離し、水で3回洗浄し、続いて真空乾燥棚で圧力<50hPaで室温で17時間、50℃で4時間乾燥する。得られた前駆物質を軽く摩砕し、空気中で1K/minの加熱速度で250℃に加熱し、この温度で3時間活性化する。
【0112】
収量:47.3g
TEM(透過型電子顕微鏡):大部分の粒子はd<5nm、まれにdが約20nmの粒子
ICP(誘導結合プラズマ)−OES分析:0.45%
Au/TiO2触媒(3%Au)の調製
担体材料として、70%の鋭錐石と30%の金紅石(SBET50m2/g)からなるTiO2−P25(Degussa)を使用した。
【0113】
70℃に熱し、0.2NのNaOHでpH6.5に調整した蒸留水400ml中の20gのTiO2の懸濁水に、一定のpHで激しく攪拌しつつ2.5時間かけて水200ml中1.32gのテトラクロロ金酸(HAuCl4×3H2O)を滴加する。混合物を70℃で1時間攪拌する。冷却の後,0.2NのNaOHであらかじめpH値を6.5に調整したクエン酸マグネシウム溶液(水100ml中6.118gMgHC657×5H2O)を加える。1時間の攪拌時間の後に固形物を遠心分離し、水で3回洗浄し、真空乾燥棚で圧力<50hPaで室温で16時間、50℃で4時間乾燥し、続いて軽く摩砕する。得られた前駆物質を空気中で1K/minの加熱速度で250℃に加熱し、この温度で3時間活性化する。
収量:20.5g
TEM:規則的に分布したd=1−4nmの小さな粒子
ICP−OES分析:Au含量=3.03%
Au/TiO2触媒(1%Au)の調製
担体材料として、鋭錐石を含む水和TiO2(Kronos)を使用し、ポリマー安定化金溶液を被覆する前に、400℃で5時間焼成した(SBET=130m2/g)ものを使用した。
【0114】
水400ml中の80mgのテトラクロロ金酸(HAuCl4×3H2O)からなる溶液に2mlの0.1N NaOHを滴下した。激しく攪拌しながらコロイド安定化ポリマー(120mgポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、MW=100000〜200000、20%水溶液、4mlの水で希釈)を加えた。水素化ホウ素ナトリウム(水4ml中の76mgのNaBH4)で金(III)イオンを還元した後、用意したTiO24gを直ちに激しく攪拌しながら加えた。1時間の攪拌の後に触媒を遠心分離し、水で3回洗浄し、真空乾燥棚で圧力<50hPaで室温で17時間、50℃で4時間乾燥した。
【0115】
収量:4g
ICP−OES分析:Au含量=1%
Au/Al23触媒(0.95%Au)の調製
Al2O担体材料としてSBET=151m2/gのPuralox HP 14/150(Sasol/Condea)を使用した。
【0116】
70℃に熱し、0.1NのNaOHでpH7に調整した蒸留水600ml中の30gAl23の懸濁水に、一定のpHで激しく攪拌しつつ3時間かけて水450ml中900mgのテトラクロロ金酸(HAuCl4×3H2O)を滴加する。反応溶液を70℃でさらに1時間攪拌する。室温に冷却した混合物に、希釈NaOHであらかじめpH値を7に調整したクエン酸マグネシウム溶液(水90ml中4.172gのMgHC657×5H2O)を加える。1時間の攪拌の後に固形物を遠心分離し、水で3回洗浄し、真空乾燥棚で圧力<50hPaで室温で17時間、50℃で4時間乾燥し、続いて軽く摩砕する。得られた前駆物質を空気中で1K/minの加熱速度で250℃に加熱し、この温度で3時間活性化する。
【0117】
収量:27.3g
TEM:大部分の粒子がd=1−2nm
ICP−OES分析:Au含量=0.95%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのオリゴ糖、その混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化のための方法であって、該オリゴ糖、混合物又は組成物の水溶液を、担体上に直径20nm未満で分散した金粒子を含む金触媒および酸素の存在下で反応させ、単数又は複数の炭水化物のC1−炭素原子のアルデヒド基をカルボキシル基へ選択的に酸化するか、又はアルデヒド基をC1−炭素原子に導入してカルボキシル基へ選択的に酸化する前記方法。
【請求項2】
使用する金触媒の担体がTiO2担体である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TiO2担体金触媒が0.1%〜5%の金を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
使用する金触媒の担体がAl23担体である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Al23担体金触媒が0.1%〜5%の金を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
使用する金触媒の担体が炭素担体である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
炭素担体金触媒が0.1%〜5%の金を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酸化が7〜11のpH値で行われる請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
酸化が20℃〜140℃の温度で行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
酸化が1バール〜25バールの酸素圧で行われる請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
酸化の際に酸素及び/又は空気をオリゴ糖、混合物又は組成物の水溶液に気泡で通す請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
単数又は複数の酸化されるオリゴ糖又はその混合物の量と、担体上に含まれる金の量の比が1000を超える請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
酸化されるオリゴ糖がC1−炭素原子にアルデヒド基をもつアルドースである請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
酸化されるオリゴ糖が二糖アルドースである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
二糖アルドースがマルトース、ラクトース、セロビオース又はイソマルトースである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
マルトース酸化で酸化生成物としてマルトビオン酸を得る請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ラクトース酸化で酸化生成物としてラクトビオン酸を得る請求項15に記載の方法。
【請求項18】
酸化されるオリゴ糖が2−ケトース形であり、酸化の前にこれを酸化可能な互変異性アルドース形に変換する請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
酸化されるオリゴ糖が二糖2−ケトースである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
二糖ケトースがパラチノースである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
酸化されるオリゴ糖混合物がマルトデキストリンである請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
酸化される組成物がデンプンシロップである請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
炭素担体上に直径20nm未満で分散した金粒子を含む金触媒の、少なくとも1つのオリゴ糖、オリゴ糖混合物又はこれを含む組成物の選択的酸化のための使用。
【請求項24】
炭素担体金触媒が0.1%〜5%の金を含む請求項23に記載の使用。
【請求項25】
酸化されるオリゴ糖がオリゴ糖アルドースである請求項23又は24に記載の使用。
【請求項26】
酸化されるオリゴ糖アルドースがマルトース、ラクトース、セロビオース又はイソマルトースである請求項25に記載の使用。
【請求項27】
マルトース酸化生成物としてマルトビオン酸が得られる請求項26に記載の使用。
【請求項28】
ラクトース酸化生成物としてラクトビオン酸が得られる請求項26に記載の使用。
【請求項29】
酸化されるオリゴ糖が2−ケトース形であり、これをまず互変異性アルドース形に変え、その上で酸化する請求項23又は24に記載の使用。
【請求項30】
酸化されるオリゴ糖2−ケトースがパラチノースである請求項29に記載の使用。
【請求項31】
マルトデキストリンが酸化される請求項23又は24に記載の使用。
【請求項32】
デンプンシロップが酸化される請求項23又は24に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−159280(P2010−159280A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58191(P2010−58191)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2006−505363(P2006−505363)の分割
【原出願日】平成16年5月4日(2004.5.4)
【出願人】(500175772)ズートツッカー アクチェンゲゼルシャフト マンハイム/オクセンフルト (47)
【Fターム(参考)】