説明

拡散合金化された鉄又は鉄基粉末を製造する方法、拡散合金化粉末、該拡散合金化粉末を含む組成物、及び該組成物から製造した成形され、焼結された部品

本発明は、Cu及びNiを含む合金用粉末の粒子をコア粒子の表面に結合させた鉄又は鉄基コア粉末からなる拡散合金化粉末を製造する方法であって、Cu及びNiを含む合金の粒子を形成できる合金用単一粉末を用意するステップ、該合金用単一粉末を該コア粉末と混合するステップ、並びにCu及びNiの合金の粒子が該鉄又は鉄基コア粉末の表面に拡散結合するように、非酸化性雰囲気又は還元雰囲気下で10〜120分間、温度500〜1000℃まで該混合粉末を加熱することによって、該合金用粉末をCu及びNiを含む合金に転換するステップを含む上記方法に関する。前記合金用粉末は、加熱されるとCu及びNiの合金が形成されることになる、Cu及びNiの合金、酸化物、炭酸塩又はその他の適切な化合物であってよい。好ましくは、Cu及びNiの全含量は、多くとも20重量%であり、前記Cu及びNiの合金用粉末の粒径分布はD50が15μm未満であるような分布であり、重量%でのCu/Niの比は、9/1から3/1の間である。本発明の拡散合金化鉄基粉末から製造した成形され、焼結された部品は、コンポーネント間の寸法変化の変動が最小である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、それから粉末冶金焼結コンポーネントを調製するのに適した新規な拡散合金化された鉄又は鉄基粉末、並びに該新規な粉末を製造するための方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、銅とニッケルを含む合金用粉末の粒子をコア粒子の表面に結合させた鉄又は鉄基コア粉末からなる拡散合金化粉末を製造する新規な方法に関する。
【0003】
本発明はまた、合金用粉末の粒子をコア粒子の表面に結合させた拡散合金化された鉄又は鉄基コア粉末に関する。
【0004】
さらには、本発明は、拡散合金化された鉄又は鉄基粉末組成物に関する。
【0005】
さらには、本発明は、前記拡散合金化鉄基粉末組成物から製造した成形され(compacted)、焼結された部品に関する。
【背景技術】
【0006】
鍛造や鋳造などの従来技法よりも粉末冶金法が有利である主な点は、多様な複雑性を有するコンポーネントをプレスと焼結で最終形状にすることによって製造でき、比較的限られた機械加工しか必要としないことである。したがって、焼結中の寸法変化が予測可能であり、部品間の寸法変化の変動が可能な限り小さいことが極めて重要である。このことは、焼結後の機械加工が困難である高強度鋼の場合に特に重要である。
【0007】
したがって、焼結中の寸法変化がほとんどない材料及び方法が好ましい。なぜなら、成形部品と焼結部品間の寸法変化がゼロに近いことは、部品間の寸法変化の変動が低減する本質的な要因になるからである。
【0008】
引張り強度、靭性、硬度及び疲労強度などの機械特性の値を十分高くするために、多様な合金用元素及び合金用システムが使用される。
【0009】
通常使用される合金用元素は炭素であり、この炭素は、焼結コンポーネントの強度及び硬度を有効に増加させる。炭素は、ほとんど常に、黒鉛粉末として添加され、成形される前に鉄基粉末と混合される。というのは、仮に元素が鉄基粉末と予備合金化されるような場合には、鉄基粉末の圧縮性が、炭素の硬化効果のために消滅する恐れがあるからである。
【0010】
通常使用される別の元素は銅であり、この銅もまた、焼結コンポーネントの硬化性を改良し、加えて、焼結を促進する。なぜなら、拡散を増進する液相が焼結温度で形成されるからである。粒子状の銅を使用する場合の1つの問題点は、焼結中に膨張(swelling)が引き起こされることである。
【0011】
ニッケルは、その硬化性増強効果のために、及びまた靭性及び延伸性に及ぼす正の効果のために、通常使用される別の元素である。ニッケルは、粒子状材料として添加されても、鉄基粉末に予備合金化条件下で添加されても、焼結中に収縮を引き起こす。
【0012】
銅とニッケルは、予備合金化元素として及び粒子状材料として添加することができる。粒子状材料として銅とニッケルを添加することによる利点は、より軟らかい鉄基粉末の圧縮性が、合金用元素が予備合金化される場合と比較して影響を受けにくいことである。しかし、欠点は、大抵の場合に鉄基粉末より相当に微細である合金用元素が、混合物中で分離する傾向があり、そのために、焼結コンポーネントの化学組成及び機械特性の変動が引き起こされることである。したがって、分離を防止し、しかも基材粉末の圧縮性を維持するために、多様な方法が発明されている。
【0013】
拡散合金化は、1つのそのような方法であり、その方法は、金属又は酸化物状態の微細粒子状合金用元素を鉄基粉末とブレンドするステップと、それに続いて、合金用金属が鉄基粉末表面中に拡散するような条件下で焼きなますステップとを含む。この結果得られるものは、良好な圧縮性を有する部分的に合金化された粉末であり、合金用元素は、分離が防止されている。しかし、炭素は、拡散速度が大きいために拡散合金化させることが不可能である元素である。
【0014】
例えば、米国特許第5926686号(Engstromら)に記載されている別に開発された方法は、基材粉末と合金用元素との間に「機械的」結合を創出する有機結合剤を利用する。この方法はまた、黒鉛を結合し、それにより炭素の分離を防止するのに、適している。
【0015】
銅及び/又はニッケルの合金効果を利用する、複数の拡散合金化鉄基粉末が、特許文献中に示唆されている。その例は、以下の文献に見出すことができる。
【0016】
米国特許第5567890号(Lindbergら)には、高耐性であり、それと相まって寸法変化の局所的変動の小さいコンポーネントを製造するための鉄基粉末が開示されている。その粉末は、0.5〜4.5重量%のNiと、0.65〜2.25重量%のMoと、0.35〜0.65重量%のCとを含む。好ましい実施形態では、Niは、Moと予備合金化された鉄基粉末と拡散合金化され、得られた粉末が黒鉛と混合される。
【0017】
米国特許出願公開第2008/0089801号(Larsson)には、Moと予備合金化されたコア粒子から本質的になり、6〜15%のCuを表面に拡散結合させた鉄基粉末Aと、Moと予備合金化されたコア粒子から本質的になり、4.5〜8%のNiをその表面に拡散結合させた粉末Bと、Moと予備合金化された鉄粉末から本質的になる鉄基粉末Cとを含む金属粉末の組合せが記載されている。この粉末組合せによって、焼結中の寸法変化が、添加黒鉛の量に無関係である焼結部品を製造することが可能になる。
【0018】
日本国特開平6−116601号には、静的及び動的機械強度が大きく、焼結中の寸法変化の変動が小さい焼結部品を製造するのに適している粉末が開示されている。この粉末は、鉄粒子の表面に拡散結合した0.1〜2.5%のMo成分、0.5〜5.0%のNi成分及び0.5〜3.0%のCu成分のうちの少なくとも1つを含む鉄基粉末からなる。
【0019】
日本国特開平2−145702号には、鉄粒子の表面に拡散結合した0.5〜1.0のMo粉末成分、6〜8%のNi粉末成分及び最大2%のCu粉末成分のうちの少なくとも2つを含む高純度鉄粉末が開示されている。この粉末は、機械強度が大きい焼結体の製造に適している。
【0020】
日本国特開平2−217401号には、2つの粉末:[1]金属粉末を添加することによって0.1〜5%のNiと0.1〜2%のCuの混合割合を得るステップ及び焼きなましのステップによって製造する合金と[2]Ni−Cu合金を還元鉄粉末に添加することによって0.1〜5%のNiと0.1〜2%のCuの混合割合を得るステップ及び焼きなましのステップによって製造する合金を混合することにより得られる鉄基粉末組成物が開示されている。この粉末から作製された焼結部品の寸法変化は、混合割合によって変わる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、成形され焼結された場合に、膨張が減少し、炭素含量及び焼結温度の変動に関連した焼結中の寸法変化のバラツキが最小である、拡散結合した銅とニッケルを含む鉄又は鉄基コア粉末を製造する新規な方法を提供することである。
【0022】
炭素含量及び焼結温度の変動は、通常、工業生産に際して発生する。したがって、本発明は、かかる変動の影響を実質的に低減するための方法を提供する。
【0023】
さらに、本発明の目的は、成形され焼結された場合に、膨張が減少し、炭素含量及び焼結温度の変動に関連した焼結中の寸法変化のバラツキが最小である、合金用粉末の粒子をコア粒子の表面に結合させた拡散結合した新規な鉄又は鉄基コア粉末を提供することである。
【0024】
さらには、本発明の目的は、成形され、焼結された部品を粉末冶金で製造するための、焼結工程中の寸法変化が最小である拡散合金化した新規な鉄又は鉄基粉末組成物を提供することである。
【0025】
最後に、本発明の目的は、拡散合金化鉄基粉末組成物から製造され、コンポーネント間の寸法変化の変動が最小である成形され、焼結された部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明によれば、こうした目的は、CuとNiを含む合金の粒子を形成できる合金用単一(unitary)粉末を用意するステップと、合金用単一粉末をコア粉末と混合するステップと、CuとNiの合金の粒子が鉄又は鉄基コア粉末の表面に拡散結合するように、非酸化性雰囲気又は還元雰囲気下で10〜120分間、温度500〜1000℃まで混合粉末を加熱することによって、合金用粉末をCuとNiを含む合金に転換するステップとによって実現される。好ましくは、CuとNiの全含量は、20重量%未満、例えば、1〜20重量%の間、好ましくは、4〜16重量%である。好ましくは、Cuの含量は、4.0重量%超である。好ましい実施形態では、Cuの含量は、5〜15重量%の間であり、Niの含量は、0.5〜5%の間であり、例えば、Cu8〜12重量%及びNi1〜4.5重量%である。
【0027】
本発明の一態様によれば、銅とニッケルの全含量が多くとも20重量%であり、銅含量が4.0重量%超であり、銅とニッケルの比が9/1から3/1の間であり、該拡散合金化粉末が、銅とニッケルを含む合金用粉末の粒子をコア粉末粒子の表面に結合させた鉄又は鉄基コア粉末からなる前記拡散合金化粉末を製造する方法であって、銅とニッケルを含み、D50が15μm未満であるような粒径分布を有する合金用単一粉末を用意するステップと、該合金用単一粉末をコア粉末と混合するステップと、非酸化性雰囲気又は還元雰囲気下で10〜120分間、温度500〜1000℃まで混合粉末を加熱して、銅とニッケルの合金用粉末の粒子を鉄又は鉄基コア粉末の表面に拡散結合させることによって合金用粉末を銅とニッケルを含む合金に転換するステップとを含む方法が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によれば、銅とニッケルの全含量が多くとも20重量%であり、銅含量が4.0重量%超であり、銅とニッケルの比が9/1から3/1の間であり、銅とニッケルを含む合金用単一粉末の平均径15μm未満の粒子をコア粒子の表面に結合させた鉄又は鉄基コア粉末からなる拡散合金化粉末が提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、本発明の上記の態様の拡散合金化粉末と、加えて、黒鉛と、任意選択で、有機潤滑剤、硬質材料(hard phase material)、固体潤滑剤及びその他の合金用物質からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤とを含む拡散合金化された鉄又は鉄基粉末組成物が提供される。
【0030】
本発明の別の態様によれば、鉄又は鉄基粉末、本発明の上記の態様の拡散合金化粉末、最大1重量%までの黒鉛、及び任意選択で、有機潤滑剤、硬質材料、固体潤滑剤及びその他の合金用物質からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤からなる鉄基粉末組成物が提供される。
【0031】
本文脈における「単一粉末(unitary powder)」という用語は、その個々の粒子がCuとNiの双方を含む粉末を表す。したがって、単一粉末は、Cuを含む粉末粒子とNiを含むその他の粉末粒子の混合物ではなくて、例えば、CuとNiの双方を含む合金粉末粒子、又は異なる種類の粒子が相互に結合することによってそれぞれがCuとNiの双方を含む複合粒子を形成している複合粉末粒子である。
【0032】
合金用粉末は、加熱されるとCuとNiの合金が形成されることになる、CuとNiの合金、酸化物、炭酸塩又はその他の適切な化合物であってよい。CuとNiの合金用粉末の粒径分布は、D50が15μm未満であるような分布であり、Cu/Niの比は、重量%で9/1から3/1の間である。
【0033】
さて、驚くべきことに、銅とニッケルが、鉄基粉末粒子に拡散合金化された、銅とニッケルの双方を含む合金用単一粉末中に存在するならば、合金用元素である銅とニッケルを含む成形鉄基粉末の焼結中の寸法変化を最小にすることができることが発見された。
【0034】
以下において、好ましい実施形態及び添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】合金用粉末の多様な平均粒径D50におけるCuとNiの比の関数として、プレスされ焼結された試料の硬度HV10を示す図解である。
【図2】合金用粉末の多様な平均粒径D50におけるCuとNiの比の関数として、プレスされ焼結された試料の引張り強度(MPa)を示す図解である。
【図3】合金用粉末の多様な平均粒径D50におけるCuとNiの比の関数として、焼結中の試料の寸法変化のバラツキを示す図解である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
拡散合金化粉末を製造するための基材粉末
基材粉末は、好ましくは、すべてHoganas AB、Swedenから入手可能であるAHC100.29、ASC100.29及びABC100.30などの純鉄基粉末である。しかし、その他の予備合金化鉄基粉末も使用することができる。
【0037】
基材粉末の粒径
基材粉末の粒径に関しても、したがって、拡散合金化鉄基粉末に関しても制約事項は全く存在しない。しかし、粉末冶金産業内で通常使用される粒径の粉末を使用することが好ましい。
【0038】
銅とニッケルを含む合金用単一粉末
鉄基粉末の表面に接着すべき銅とニッケルを含む合金用物質は、金属合金、酸化物若しくは炭酸塩の形態、又は本発明による鉄基粉末をもたらす任意のその他の形態であってよい。銅とニッケルの間の関係、つまり、Ni(重量%)/Cu(重量%)は、好ましくは、銅とニッケルを含む合金用物質中で1/3から1/9の間である。NiとCuの間の重量比が、1/3超である場合、硬度及び降伏強度に対する影響は許容不可能であり、比が、1/9未満である場合、炭素含量及び焼結温度の変動による寸法変化のバラツキは、本明細書に記載の方法によれば過剰に大きく、約0.035重量%超になる。
【0039】
銅とニッケルを含む合金用粉末の粒径は、好ましくは、粉末の50重量%がD50値未満の粒径を有することを意味するD50が、好ましくは、15μm未満、より好ましくは、13μm未満、最も好ましくは、10μm未満であるような粒径である。
【0040】
新規な粉末の製造
基材粉末及び銅とニッケルを含む合金用粉末は、新規の粉末中の銅とニッケルの全含量が、多くて20重量%、好ましくは、1重量%から20重量%の間、より好ましくは、4重量%から16重量%の間になるような割合で混合される。好ましくは、Cuの含量は、4.0重量%超である。好ましい実施形態では、Cuの含量は、5〜15重量%の間であり、Niの含量は、0.5〜5%の間であり、例えば、Cu8〜12重量%及びNi1〜4.5重量%である。
【0041】
1重量%未満などの低含量は、低すぎて、焼結コンポーネントの所望の機械特性を得ることができないと考えられている。銅とニッケルを含む合金用粉末の含量が、20%を超えると、合金用粉末の基材粉末への結合が不十分になり、分離の危険性が増加する。
【0042】
次いで、均一混合物は、拡散焼きなまし工程にかけられ、粉末は、還元雰囲気下で10〜120分間、最大500〜1000℃の温度まで加熱される。次いで、弱く焼結されたケーキの形態の得られた拡散結合粉末は、穏やかに破砕される。
【0043】
焼結コンポーネントの製造
成形を行う前に、新規な粉末は、最終コンポーネントの所期の用途に応じて最大1重量%までの黒鉛、最大2重量%まで、好ましくは、0.05から1重量%の間の有機潤滑剤、任意選択で、他の合金用物質、硬質材料、及び最終コンポーネントの潤滑性を与える無機固体潤滑剤と混合される。
【0044】
有機潤滑剤は、個々の粒子間の粒子間摩擦、及び金型の壁と圧縮粉末又は排出圧縮体の間の成形及び排出中の摩擦も低減する。
【0045】
固体潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛などのステアレート、エチレン−ビス−ステアラミドなどのアミド若しくはビス−アミド、ステアリン酸などの脂肪酸、Kenolube(登録商標)、適切な潤滑性を有する他の有機物質、又はそれらの組合せの群から選択することができる。
【0046】
新規な粉末は、銅とニッケルの全含量が、組成物の5重量%を超えない、例えば、0.5重量%から4.5重量%の間又は1.0重量%から4.0重量%の間である鉄基粉末組成物を得るために純鉄粉又は鉄基粉末で希釈することができる。というのは、5重量%超の含量は、所望の特性に改良するコストが大きすぎる恐れがあるからである。希釈合金中の銅とニッケルの間の関係、即ち、Ni(重量%)/Cu(重量%)は、好ましくは、1/3から1/9の間である。
【0047】
得られた鉄粉組成物は、成形金型に移送され、最大2000MPa、好ましくは、400〜1000MPaの間の成形圧で周囲温度又は高めの温度で成形されて成形「グリーン」ボディーになる。
【0048】
グリーンボディーの焼結は、非酸化性雰囲気下で1000から1300℃の間、好ましくは、1050〜1250℃の間の温度で実施される。
【実施例】
【0049】
以下の実施例によって本発明を例示する。
【0050】
(例1)
まず、各種の合金用粉末、即ち、酸化第一銅CuO、CuO+Ni粉末、及びCuとNiを含む粉末を、鉄粉ASC100.29とブレンドすることによって拡散結合鉄基粉末の3つの試料を製造した。
【0051】
水素75%/窒素25%の雰囲気下で800℃で60分間均一にブレンドされた粉末混合物を拡散焼きなました。拡散焼きなましを受けた後、弱く焼結した粉末ケーキを穏やかに破砕し、実質的に150μm未満の粒径になるように篩分けした。
【表1】

【0052】
表1は、粒径D50及び合金用粉末のCuとNiの比並びに拡散焼きなまし粉末CuとNiの含量を示す。平均粒径D50をSympatec社製の装置でのレーザー回折で分析した。
【0053】
20重量%のそれぞれ拡散焼きなまし鉄基粉末1、2、及び3、0.5重量%の黒鉛C−UF4、並びに0.8重量%のAmide Wax PMからなり、残余がASC100.29である3つの鉄基粉末組成物をこれらの成分を均一に混合することによって製造した。
【0054】
ISO2740に従って、異なる組成物を600MPaで成形して各組成物からの7つの引張り強度用の試料にした。窒素90%/水素10%の雰囲気下で、1120℃で30分間試料を焼結した。ISO4492及びEN10 002−1に従って寸法変化及び機械特性を測定した。ISO4498に従って、硬度、HV10を測定した。
【表2】

【0055】
表2は、本発明の拡散焼きなまし鉄基粉末を使用すると、成形部品と焼結部品の間の寸法変化、及び異なる部品間の寸法変化の変動が大きく低減することを示す。
【0056】
対照2は、拡散結合粉末を作製するのに酸化第一銅及びニッケル粉末を使用すると、焼結中の膨張が減少したことを示す。本発明による試料3は、対照2と同じ銅とニッケル含量であるが、膨張及びバラツキがはるかに顕著に減少したことを示す。
【0057】
(例2)
銅とニッケルを含む合金用粉末として、銅とニッケルの比が異なり、粒径分布も異なる表3に示すような各種の銅/ニッケル含有合金用粉末を使用した。対照として、American Chemetから入手可能な酸化第一銅粉末、CuOを使用した。粒径分布をSympatec社製の装置でのレーザー回折によって分析した。評価を単純化するために、8.5μm未満のD50を有する粉末を「微細」と表示し、8.5μmから15.1μm未満の間を「中間」と表示し、15.1超を「粗」と表示した。
【表3】

【0058】
基材粉末として、ヘガネス(Hoganas) ABから入手可能な純鉄粉末ASC100.29を使用した。
【0059】
重量2kgの拡散結合粉末を含む各種の試料を、拡散結合焼きなまし粉末中の銅とニッケルの全含量が10重量%になるような割合で、ASC100.29を銅とニッケルを含む合金用粉末と混合することによって調製した。
【0060】
拡散結合焼きなまし粉末中の銅の全含量が10重量%になるように、鉄粉を酸化第一銅と混合することによって対照試料を調製した。
【0061】
水素75%/窒素25%の雰囲気下で800℃、60分実験室炉で混合粉末試料を焼きなました。冷却後、得られた弱く焼結した粉末ケーキを穏やかに破砕し、実質的に150μm未満の粒径になるように篩分した。
【0062】
20重量%の拡散焼きなまし鉄基粉末1〜11、それぞれ0.4、0.6及び0.8重量%の黒鉛C−UF4、0.8重量%のアミドワックス(Amide Wax) PM、並びに残部のASC100.29からなる33種の鉄基粉末組成物をこれらの成分を均一に混合することによって製造した。
【0063】
例1に従って、これら多様な組成物を600MPaで成形して引張り強度試料にした。
【0064】
窒素90%/水素10%の雰囲気下で、黒鉛0.6%を添加した組成物から作製した引張り試験試料を、3つの異なる温度、1090℃、1120℃及び1150℃でそれぞれ30分間焼結した。各焼結ランで7試料を処理した。窒素90%/水素10%の雰囲気下で、添加黒鉛0.4%を含む組成物から作製した試料及び添加黒鉛0.8%を含む組成物から作製した試料を、1120℃で30分間焼結した。やはり各焼結ランで7試料を処理した。例1に記載の手順に従って、寸法変化、及び硬度を含めての機械特性を測定した。
【0065】
以下の表4は、この試験シリーズを記載する。
【表4】

【0066】
試験シリーズ
以下の表5は、焼結中の寸法変化の測定結果、及び焼結試料のC、Cu及びNi含量の分析結果を示す。
【表5】

【0067】
以下の表6は、20重量%の異なる拡散焼きなまし鉄基粉末、0.8重量%のアミドワックス(Amide Wax) PM、0.6%の黒鉛、及び残部のASC100.29からなるプレスし、焼結した組成物から作製された試料の機械試験結果を示す。
【0068】
窒素90%/水素10%の雰囲気下で1120℃で、30分間焼結を実施した。
【表6】

【0069】
試験結果のまとめを示す図解1及び2は、拡散焼きなまし鉄基粉末のCu/Ni比が3/1未満(30%超のNi)である場合、硬度及び引張り強度は大きな影響を受け許容不可能になることを示す。
【0070】
さらには、図解3は、Cu/Ni比が9/1超(10%未満のNi)である場合、炭素含量及び焼結温度の変動に関連する焼結中の寸法変化のバラツキが非常に大きくなり許容不可能になることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、粉末冶金法において応用可能であり、その場合新規な粉末から製造したコンポーネントは、コンポーネント間の寸法変化の変動が最小である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅及びニッケルの全含量が多くとも20重量%であり、銅含量が4.0重量%超であり、銅とニッケルとの比が9/1から3/1の間である拡散合金化粉末を製造する方法であって、該拡散合金化粉末が、銅及びニッケルを含む合金用粉末の粒子をコア粉末粒子の表面に結合させた鉄又は鉄基コア粉末からなり、
銅及びニッケルを含み、D50が15μm未満であるような粒径分布を有する合金用単一粉末を用意するステップ、
該合金用単一粉末を該コア粉末と混合するステップ、並びに
非酸化性雰囲気又は還元雰囲気下で10〜120分間、温度500〜1000℃まで該混合粉末を加熱して、該銅及びニッケルの合金用粉末の粒子を該鉄又は鉄基コア粉末の表面に拡散結合させることによって該合金用粉末を銅及びニッケルを含む合金に転換するステップ、
を含む上記方法。
【請求項2】
前記合金用単一粉末が、銅及びニッケルから本質的になる合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合金用単一粉末が、本質的に、銅及びニッケルの金属合金、酸化物、炭酸塩又はその他の適切な化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該銅とニッケルの合金用粉末の粒子の該鉄又は鉄系のコア粉末の表面への拡散結合が、弱く焼結したケーキをもたらし、次いで、該ケーキが穏やかに破砕され、本質的に150μm未満の粒径になるように篩分される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記拡散合金化粉末が、5〜15重量%の範囲の銅含量、及び0.5〜5%の範囲のニッケル含量を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記拡散合金化粉末が、4重量%から16重量%の間の銅及びニッケルの全含量を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
銅及びニッケルの全含量が多くとも20重量%であり、銅含量が4.0重量%超であり、銅とニッケルとの比が9/1から3/1の間であり、銅及びニッケルを含む合金用単一粉末の平均径15μm未満の粒子をコア粒子の表面に結合させた鉄又は鉄基コア粉末からなる拡散合金化粉末。
【請求項8】
粒径が、本質的に150μm未満である、請求項7に記載の拡散合金化粉末。
【請求項9】
銅の含量が、5〜15重量%の間であり、ニッケルの含量が、0.5〜5%の間である、請求項7又は8に記載の拡散合金化粉末。
【請求項10】
請求項7から9までのいずれか一項に記載の拡散合金化粉末と、加えて、黒鉛と、任意選択で、有機潤滑剤、硬質材料、固体潤滑剤及びその他の合金用物質からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤とを含む拡散合金化された鉄又は鉄基粉末組成物。
【請求項11】
鉄又は鉄基粉末、
請求項7から9までのいずれか一項に記載の拡散合金化粉末、
最大1重量%までの黒鉛、
任意選択で、有機潤滑剤、硬質材料、固体潤滑剤及びその他の合金用物質からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤
からなる鉄基粉末組成物。
【請求項12】
前記鉄又は鉄基粉末が、本質的に純鉄からなる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記銅及びニッケルの全含量が、前記組成物の5重量%を超えない、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
銅とニッケルとの比が、9/1から3/1の間である、請求項10から13までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項10から14までのいずれか一項に記載の粉末組成物から製造した成形され、焼結された部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−513541(P2012−513541A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543473(P2011−543473)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051434
【国際公開番号】WO2010/074634
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(509020295)ホガナス アクチボラグ (パブル) (21)
【Fターム(参考)】