説明

拡管式管継手

【課題】締め付け時の焼付きを防止するとともに、締め付け後の袋ナットの緩みを防止することで流体の漏洩を防止できる拡管式管継手を提供すること。
【解決手段】薄肉ステンレス鋼管Kが挿入される挿入部30を有すると共に両端部外周面に雄ねじ部35を形成した継手本体20と、継手本体20の内周面に設けられたOリング装着溝32と、Oリング装着溝32に配設され、薄肉ステンレス鋼管Kの膨出部Kaに当接するOリング50と、継手本体20の雄ねじ部43の終端に隣接して設けられた環状溝36と、環状溝36内に配設された樹脂材製のストッパリング60と、継手本体20と膨出部Kaを境にして対向し薄肉ステンレス鋼管Kに外嵌する嵌合部41を有し、かつ、雄ねじ部35に螺合する雌ねじ部43、及び、雌ねじ部43の継手本体20側の開口部44側の内周面に設けられストッパリング60に係合する切欠部45とを有する袋ナット40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水・給湯配管等に用いられる薄肉ステンレス鋼管同士を接続するための拡管式管継手に関し、特に使用中の袋ナットの緩みを防止できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
給水・給湯配管に用いられる薄肉ステンレス鋼管の管端の近傍を膨出(拡管)して膨出部を形成した上で、管端を管継手本体に挿入し、膨出部の上から袋ナットを締め込むことにより、管継手本体の水封と管の抜け防止を図る拡管式管継手が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
図4は、このような拡管式管継手の一例を示す図である。図4中100は管継手本体、200は袋ナット、Kは薄肉ステンレス鋼管を示している。
【0004】
拡管式管継手100は、共回り防止のため袋ナット200の内周面に樹脂製のリング201を配置し、管の膨出部Kaと袋ナット200とが直接接触しないように形成されている。この拡管式管継手100の袋ナット緩み防止機構は、継手先端と袋ナット奥部が強く接し、その摩擦力によるものである。また、この管継手は手締めでは締め付けができないように樹脂製確認リング210が配置され、最終的に袋ナット200をパイプレンチ等の工具で強く締めることで折れ曲がり、袋ナット200に隠れることで締め付け具合を確認することができる。なお、図4中220はシール材としてのOリングを示している。
【0005】
一方、膨出部と袋ナットが接触する部分に樹脂系塗料が塗布され、共回りを防止するとともに、袋ナット緩み防止機構として、内部に傘リング状ばねが配置され、その傘リング状ばねが座金として緩み防止を図っているものである。この継手も強い傘リング状ばねに抗して袋ナットを締め付けるために強い力が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−318459号公報
【特許文献2】実願昭62−37601号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した拡管式管継手では、次のような問題があった。すなわち、配管の振動や熱収縮により、袋ナットが緩み、薄肉ステンレス鋼管をシール材に押し付ける力が減少し、薄肉ステンレス鋼管と継手本体との隙間から流体が漏れてしまう虞がある。
【0008】
また、手締めで締め付けができないように構成されているため、雄ねじと雌ねじとが十分に噛み合っていない状態で、パイプレンチ等で無理に締めこむと、ねじの焼きつきが生じる虞がある。
【0009】
そこで本発明は、締め付け時の焼付きを防止するとともに、締め付け後の袋ナットの緩みを防止することで流体の漏洩を防止できる拡管式管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の拡管式管継手は次のように構成されている。
【0011】
端部外周に拡管加工により断面円弧状の膨出部を形成した鋼管同士を接続する拡管式管継手において、前記鋼管が挿入される挿入部を有すると共に両端部外周面に雄ねじ部を形成した継手本体と、前記継手本体の内周面に設けられたOリング装着溝と、このOリング装着溝に配設され、前記鋼管の膨出部に当接するOリングと、前記継手本体の雄ねじ部の終端に隣接して設けられた環状溝と、該環状溝内に配設された樹脂材製のストッパリングと、前記継手本体と前記鋼管の膨出部を境にして対向し前記鋼管に外嵌する嵌合部を有し、かつ、前記継手本体の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部、及び、この雌ねじ部の前記継手本体側の開口部側の内周面に設けられ前記ストッパリングに係合する切欠部とを有するナットとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、締め付け時の焼付きを防止するとともに、締め付け後の袋ナットの緩みを防止することで流体の漏洩を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る拡管式管継手及びこの拡管式管継手に取り付けられた薄肉ステンレス鋼管を一部切欠して示す側面図。
【図2】同拡管式管継手に組み込まれたストッパリングを示す正面図。
【図3】同拡管式管継手の要部を示す模式図。
【図4】拡管式管継手の一例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施の形態に係る拡管式管継手10及びこの拡管式管継手10に取り付けられた薄肉ステンレス鋼管Kを一部切欠して示す側面図、図2は拡管式管継手10に組み込まれたストッパリング60を示す正面図、図3は拡管式管継手10の要部を示すも式図である。なお、図1中Kは薄肉ステンレス鋼管、Kaは薄肉ステンレス鋼管Kの端部外周に形成された断面円弧状の膨出部を示している。
【0015】
拡管式管継手10は、円筒状に形成された継手本体20と、この継手本体20の両端にそれぞれ一体に設けられ薄肉ステンレス鋼管Kが挿入される円筒状の挿入部30と、この挿入部30の外周面に螺合する袋ナット40とを備えている。なお、継手本体20の外径は挿入部30の外径より大きく形成され、継手本体20の内径は挿入部30の内径より僅かに小さく形成されている。
【0016】
挿入部30は、薄肉ステンレス鋼管Kを挿入できる内径になされると共に、それより先端部内側が薄肉ステンレス鋼管Kの膨出部Kaの管端側の約半分が挿入できるように前方に拡開傾斜した拡開部31が形成されている。この拡開部31の奥側にOリング50を係止するOリング装着溝32が設けられている。このOリング装着溝32の底面は拡開部31と平行に傾斜し、この傾斜は薄肉ステンレス鋼管Kの膨出部Kaの継手本体20側の傾斜と略同じ傾斜で、Oリング装着溝32に係止したOリング50の内径寸法は接続される薄肉ステンレス鋼管Kの拡管加工される前の外径より大きく設定されている。
【0017】
挿入部30の端部外周面には雄ねじ部35が形成されている。雄ねじ部35の終端に隣接して、環状溝36が設けられている。この環状溝36内に、図2に示すように外周の1ケ所が切断されたポリプロピレン等の樹脂材製のストッパリング60が図1に示すように嵌着されている。ストッパリング60の外周面は、継手本体20の鋼管挿入側に向けて外径が小さくなる傾斜外面61が形成されている(図3参照)。傾斜外面61の継手本体20の軸中心線Cに対する第1角度は、例えば25°に設定されている。
【0018】
袋ナット40は、薄肉ステンレス鋼管Kの外径よりも僅かに内径が大きい嵌合部41と、内径が挿入部30の外径より大きく形成された筒状部42とを備えている。筒状部42の内周面には、雄ねじ部35に螺合する雌ねじ部43が形成されている。
【0019】
嵌合部41の内周面に薄肉ステンレス鋼管Kの膨出部Kaの袋ナット40側の傾斜面と略同じ傾斜の拡開部41aが形成されている。筒状部42の雌ねじ部43の継手本体20側の開口部44側の内周面にはストッパリング60に係合する切欠部45が形成されている(図3参照)。
【0020】
袋ナット40の開口部44の内周面は、継手本体20の鋼管挿入側に向けて内径が大きくなる傾斜内面46が形成されている(図3参照)。傾斜内面46の軸中心線Cに対する第2角度は、例えば30°に設定されている。すなわち、第1角度θ1は第2角度θ2より小さいことが好ましい。
【0021】
このように構成された拡管式管継手10により、薄肉ステンレス鋼管K同士を接続するには、次のような手順にて行う。すなわち、薄肉ステンレス鋼管Kに、袋ナット40を嵌合部41にて外嵌した上、薄肉ステンレス鋼管Kの一端又は両端部にて一部管径を拡開する拡管加工を行って、断面円弧状の膨出部Kaを形成する。
【0022】
次に、薄肉ステンレス鋼管Kの先端を継手本体20の挿入部30に差し込む。次いで、薄肉ステンレス鋼管Kに外嵌した袋ナット40の雌ねじ部43を継手本体20の端部外周面の雄ねじ部35に手回しで螺合して、図1に示すようにストッパリング60が開口部44を通過し、さらに切欠部45に係合した時点で停止する。なお、このように雌ねじ部43を雄ねじ部35に締め付ける際に、ほとんど全ての行程を手回しで行うため、無理に締め付けることはなく、締め付け時の焼付きを防止することができる。
【0023】
次に、パイプレンチ等の工具を用いて袋ナット40を締め込んで、袋ナット40の嵌合部41の内周の拡開部41aにて薄肉ステンレス鋼管Kの膨出部Kaの袋ナット40側の傾斜面を押す。袋ナット40が継手本体20に突き当たるまで袋ナット40を螺合すると、挿入部30の拡開部31とOリング装着溝32の底面にてOリング50が押し潰されるので、継手本体20と薄肉ステンレス鋼管Kとは完全に接続され、薄肉ステンレス鋼管K内を流れる流体の漏洩が防止される。
【0024】
このように薄肉ステンレス鋼管Kと継手本体20を接続した際、Oリング50によって薄肉ステンレス鋼管Kと継手本体20との間のシールを確保できる。また、振動や熱収縮により袋ナット40が緩む方向に回転しても、ストッパリング60が袋ナット40の切欠部50に係合しているので、一定以上は緩みが進行することなく、接続状態をより確実に保持でき、流体の漏洩を防止することができる。
【0025】
また、ストッパリング60の外周面は、継手本体20の鋼管挿入側に向けて外径が小さくなる傾斜外面61が形成され、袋ナット40の開口部44の内周面は、継手本体20の鋼管挿入側に向けて内径が大きくなる傾斜内面46が形成されているため、手締めで袋ナット40を締め付ける際に、袋ナット40の開口部44をストッパリング60を容易に縮径させ乗り越えさせることができる。
【0026】
さらに、傾斜外面61の継手本体20の軸中心線Cに対する第1角度θ1を傾斜内面46の軸中心線Cに対する第2角度θ2より小さく設定することで、ストッパリング60を容易に縮径させることができる。すなわち、金属材製の袋ナット40がストッパリング60に加える縮径方向の力を効率よく伝えることができる。
【0027】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、締め付け時の焼付きを防止するとともに、締め付け後の袋ナットの緩みを防止することで流体の漏洩を防止できる拡管式管継手を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
10…拡管式管継手、20…継手本体、30…挿入部、32…Oリング装着溝、35…雄ねじ部、36…環状溝、40…袋ナット、41…嵌合部、43…雌ねじ部、45…切欠部、46…傾斜内面、50…Oリング、60…ストッパリング、61…傾斜外面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部外周に拡管加工により膨出部を形成した鋼管同士を接続する拡管式管継手において、
前記鋼管が挿入される挿入部を有すると共に両端部外周面に雄ねじ部を形成した継手本体と、
前記継手本体の内周面に設けられたOリング装着溝と、
このOリング装着溝に配設され、前記鋼管の膨出部に当接するOリングと、
前記継手本体の雄ねじ部の終端に隣接して設けられた環状溝と、
該環状溝内に配設された樹脂材製のストッパリングと、
前記継手本体と前記鋼管の膨出部を境にして対向し前記鋼管に外嵌する嵌合部を有し、かつ、前記継手本体の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部、及び、この雌ねじ部の前記継手本体側の開口部側の内周面に設けられ前記ストッパリングに係合する切欠部とを有するナットとを備えていることを特徴とする拡管式管継手。
【請求項2】
前記ストッパリングの外周面は、前記継手本体の鋼管挿入側に向けて外径が小さくなる傾斜外面が形成され、
前記ナットの開口部の内周面は、前記継手本体の鋼管挿入側に向けて内径が大きくなる傾斜内面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の拡管式管継手。
【請求項3】
前記傾斜外面の前記継手本体の軸中心線に対する第1角度は、前記傾斜内面の前記軸中心線に対する第2角度より、小さく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の拡管式管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−256945(P2011−256945A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132262(P2010−132262)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(509319904)株式会社ベンカン・ジャパン (1)
【Fターム(参考)】