指向性アンテナ制御装置
【課題】 通信相手の存在する方向を確認するためのアンテナスキャンの回数が少なくて済み、かつ小型化可能な指向性アンテナ制御装置を提供する。
【解決手段】 自装置の向きを検出するジャイロ107と、自装置の移動量を検出する移動量センサ105と、通信相手である装置から受信した電波が所定のしきい値以上であるか否かを判断する電波強度検出評価部104とを有し、通信相手である装置が存在する方向を認識するための方向スキャンを2回行った後は、ジャイロ107、移動量センサ105及び電波強度検出評価部104の出力に基づいて、方向スキャンを行うことなく指向性アンテナ103の指向方向を決定する。
【解決手段】 自装置の向きを検出するジャイロ107と、自装置の移動量を検出する移動量センサ105と、通信相手である装置から受信した電波が所定のしきい値以上であるか否かを判断する電波強度検出評価部104とを有し、通信相手である装置が存在する方向を認識するための方向スキャンを2回行った後は、ジャイロ107、移動量センサ105及び電波強度検出評価部104の出力に基づいて、方向スキャンを行うことなく指向性アンテナ103の指向方向を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指向性アンテナの指向方向を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛星通信や移動体通信の普及に伴い、指向性アンテナの重要性が注目されている。移動体通信の場合には、送信側、受信側が相対的に移動するため、指向性のあるアンテナでは通信相手の存在する方向を検出してその方向にアンテナを向ける必要がある。
無指向性アンテナの場合には、この必要は無いが、効率が低い、ノイズに弱いといった欠点があり、実際にはあまり使用されていない。
【0003】
指向性アンテナとしては、アンテナ素子の方向を物理的に変えるもののほか、特許文献1に開示される「指向性可変アンテナ及び外アンテナを用いた電子機器、ならびに外アンテナを用いたアンテナ指向性制御方法」のように、アンテナの放射パターンの指向性を電気的に変化させるものもある。
【0004】
衛星通信の分野においては、特許文献2に開示される「衛星放送受信アンテナ自動追尾装置」などがあり、アンテナを機械的に動かして送信又は受信の方向を検出し、追尾している。
また、移動体通信の分野においては、特許文献3に開示される「アンテナ指向システム」のようにジャイロと地磁気とを利用するものや、特許文献4に開示される「指向性アンテナ追尾装置」のように、ジャイロとGPSと地磁気とを利用して移動体の位置を常に確認しながら追尾する指向システムなどがある。
【特許文献1】特開2004−304785号公報
【特許文献2】特開平9−321517号公報
【特許文献3】特公平7−58854号公報
【特許文献4】特開平10−10220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に小型化が要求される移動体通信用のアンテナは、上記特許文献2〜4に開示される発明を適用することは困難となっている。また、常に方向を確認しながら通信相手を追尾する方法は正確ではあるが、システム上無駄な部分が多く、消費電力も増大してしまう。
【0006】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、通信相手の存在する方向を確認するためのアンテナスキャンの回数が少なくて済み、かつ小型化可能な指向性アンテナ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、指向性アンテナの指向方向を制御する指向性アンテナ制御装置であって、自装置の向きを検出するジャイロと、自装置の移動量を検出する移動量検出手段と、通信相手である装置から受信した電波が所定のしきい値以上であるか否かを判断する電波強度評価手段とを有し、通信相手である装置が存在する方向を認識するための方向スキャンを2回行った後は、ジャイロ、移動量検出手段及び電波強度評価手段の出力に基づいて、方向スキャンを行うことなく指向性アンテナの指向方向を決定することを特徴とする指向性アンテナ制御装置を提供するものである。アンテナスキャンを2回行った後は、スキャンすることなくアンテナの方向を決められるため、無駄な動作がなく消費電力を低減できる。
【0008】
以上の構成においては、1回目の方向スキャンに基づいて認識した通信相手である装置が存在する方向をジャイロの基準方向とし、移動量検出手段は、ジャイロの基準方向の移動量及び該基準方向に垂直な方向な移動量を検出することが好ましい。これにより、位置検出装置(GPSなど)を備えることなく、アンテナの方向を決められる。
【0009】
上記のいずれの構成においても、移動量検出手段は、加速度センサと該加速度センサの出力を基に移動量を算出するMPUとを有することが好ましい。このようにすれば、移動量検出手段を簡単にかつ小型化できる。また、指向性アンテナの向きと通信相手である装置が存在する方向とのズレを、電波強度検出手段によって検出し、ズレ量が所定量以上となった場合に、方向スキャンを行って通信相手である装置が存在する方向を特定することが好ましく、これに加えて、電波強度検出手段は、アンテナ素子と、該アンテナ素子が受信した電波の強度を算出するMPUとを含むことがより好ましい。このようにすれば、GPSのような位置検出装置は必要なく、また、構成を簡略化・小型化できる。また、2回目の方向スキャンの後では、通信相手である装置が存在する方向を、ジャイロの基準方向からの初期回転角と、ジャイロの基準方向への移動量と、ジャイロの基準方向とは垂直な方向への移動量とに基づいて算出し、該算出した方向に指向性アンテナの指向方向を変化させることが好ましい。このようにすれば、無駄な動作がなく消費電力を抑えることができる。
【0010】
また、上記のいずれの構成においても、ジャイロは、マイクロマシンを利用したマイクロコマジャイロであることが好ましい。このようにすれば、装置の小型化が可能である。又は、ジャイロは、圧電素子を用いた振動ジャイロであることが好ましい。このようにすれば、装置の小型化が可能である。又は、ジャイロは、光学ジャイロであることが好ましい。このようにすれば、装置の小型化が可能であるとともに、物理的な動作部が無いため信頼性が高くなる。
【0011】
上記のいずれの構成においても、指向性アンテナは、電気的に指向方向を変更可能であることが好ましい。このようにすれば、装置の小型化が可能であり、かつ、物理的な動作部が無いため信頼性も高くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通信相手の存在する方向を確認するためのアンテナスキャンの回数が少なくて済み、かつ小型化可能な指向性アンテナ制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、移動体通信などに用いる指向性アンテナを制御する装置において、ジャイロと移動量検出演算手段と、電波強度検出評価手段とを設けたものであり、発信又は受信する方向を認識するためのアンテナの方向スキャンは初期と2回目のみで、それ以降はスキャンを行うことなくアンテナの方向を決定できる。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明するが、理解を容易にするために、説明に用いる図では一部の構成要素を誇張したり省略したりする。
【0014】
図1に、本実施形態に係る指向性アンテナ制御装置の構成を示す。指向性アンテナ制御装置は、入出力部101、全体制御部102、アンテナ103、電波強度検出評価部104、移動量センサ105、移動量検出演算部106、ジャイロ107及びジャイロ制御部108を有する。
【0015】
入出力部101は、不図示の移動体通信装置からの命令を受け取ったり、受信強度などの情報を移動体通信装置へ出力したりするためのインタフェースである。全体制御部102は、指向性アンテナ制御装置の動作を制御するコンピュータであり、例えば、ROMに格納されているプログラムをCPUが読み出し、RAMを作業領域として実行することによって実現される。アンテナ103は、通信相手との間でやりとりする電波の周波数に適したアンテナ特性を備えている。電波強度検出評価部104は、アンテナ103によって受信した電波の強度を検出し、所定の強度以上であるか否かを判断する。移動量センサ105は、指向性アンテナ105は、指向性アンテナ制御装置がどの方向にどれだけ移動したかを検出するためのセンサである。移動量検出演算部106は、移動量センサ105の検出結果を基に演算処理を行い、指向性アンテナの移動方向及び移動量を算出する。ジャイロ107は、指向性アンテナ制御装置の向きを検出するためのセンサである。ジャイロ制御部108は、ジャイロ107の検出の基準となる方向を設定する。
【0016】
情報伝達に必要な命令を入出力部101によって全体制御部102へ送ると、全体制御部102はアンテナ103からの情報とジャイロ107からの情報と移動量センサ105からの情報とを基に、必要な情報を算出・評価してアンテナ103の方向を電波の送受信に最適な方向へと向ける。
【0017】
なお、ジャイロ107としては、マイクロマシンを利用したマイクロジャイロ、圧電素子を使用した振動ジャイロを適用可能である。これらのジャイロは手のひらに載せられる程度の大きさであるため、ハンディタイプの送受信装置への組み込みが容易である。
また、アンテナ103は、機械的に向きを変えさせるものではなく、リアクタンス可変やGNDショート技術を用いて指向性を制御する、電気的切り換え可能なアンテナを用いるとよい。
【0018】
以下の説明において、特に断りの無い場合は、指向性アンテナ制御装置の各部の動作は全体制御部102からの制御によって行われるものとする。
【0019】
図2に、指向性アンテナ制御装置の動作フローを示す。
まず始めに、アンテナを方向スキャン(初期スキャン)して(ステップS101)、送受信先の対象局を探す。対象局の方向が分かったら、アンテナ103をその方向へ向け、維持(指向性設定)する(ステップS102)。同時に、ジャイロ制御部108は、対象局の方向を0°と設定し、その方向をY方向とし、Y方向と垂直な方向をX方向と定義する(ステップS103)。
【0020】
固定局同士の場合は、これにより良好な通信が可能であるが、移動体の場合は方向が変化するため、移動に応じて指向性を変える必要がある。このため、全体制御部102は、電波強度検出評価部104に電波強度を検出させ(ステップS104)、十分強い場合には(ステップS105/強)対象局の方向は変わっていないと判断し、アンテナの方向を維持する(ステップS106)。そのまま通信を続けるのであれば(ステップS107/No)、それを繰り返す。
もし弱くなって(ただし、障害物などによる一時的な電波強度低下は除く)きたときには(ステップS105/弱)、全体制御部102は、送受信可能な間にアンテナを方向スキャン(2回目スキャン)して(電波が弱くならなくともマニュアル操作で強制的にスキャンしても良い)、電波強度の強くなる方向を特定する。対象局はその方向に存在するため、全体制御部102はジャイロ方向を基(0°)としたときの対象局の方向θ1を測定する(ステップS108)。そして、この方向にアンテナ103の方向を切り換える(ステップS109)。この時、全体制御部102は、移動量検出演算部106によって、X方向距離x1も求め、x1からとθ1とから対象局までのY方向の距離Lを求めておく(ステップS110)。
【0021】
このように、電波が弱くなってきた場合に、通信不能となる前にアンテナをスキャンし方向を決めれば、良好な通信品質が確保できるが、毎回スキャンを行っていては、無駄が多く消費電力も増大してしまう。
このため、全体制御部102は、2回目スキャン以降は、電波強度検出評価部104に電波強度を検出させ(ステップS111)、十分強い場合には(ステップS112/強)、対象局が位置する方向は変わっていないと判断し、アンテナ103の方向を維持する(ステップS113)。そのまま維持するのであれば(ステップS114/No)、それを繰り返す(ステップS111以降)。
もし弱くなって(−3dB以下、ただし障害物などによる一時的な電波強度低下は除く)きたときには(電波が弱くならなくてもマニュアル操作で強制的にスキャンを行っても良い)(ステップS112/弱)、受信強度が規定値以上であるか否かを判断する(ステップ115)。ここでの規定値とは、受信可能なぎりぎりの最低値のことである。
受信強度が規定値以上であるならば(ステップS115/Yes)、全体制御部102は、2回目スキャンを行った位置からのX方向の距離x2、Y方向の距離y2とを移動量検出演算部106によって求め、先に求めたx1と2回目スキャンを行った位置から対象局までのy方向の距離Lを基に、対象局の新たな方向θ2を求める(ステップS116)。そして、この方向にアンテナ103の方向を切り換える(ステップS117)。
再び電波が弱くなった場合には、全体制御部102は、上記の動作を繰り返し行う(ステップS111以降)。
【0022】
一方、受信強度が規定値未満であるならば(ステップS115/No)、演算によってアンテナ103の指向方向を算出しても十分な受信強度が得られないと判断し、x2、y2及びθ2の算出は行わない。
【0023】
通常は、上記の処理を繰り返すが(ステップS107/No、S114/No、S118/No)、無線通信を終了する場合には、不必要な演算処理を行わないために動作を終了しても良い(ステップS107/Yes、S114/Yes、S118/Yes)。
【0024】
このようにすれば、アンテナを毎回スキャンすることなく、アンテナ103の指向性を設定できるため、無駄な動作が少なくなり、消費電力も低減できる。
【0025】
図3に、指向性アンテナ制御装置と対象局との位置関係を示す。図中対象局の位置をOで示す。また、指向性アンテナ制御装置の位置を●で示す。なお、指向性アンテナ制御装置は、A→B→Cの順に移動するものとする。
初期位置であるA点から見た対象局Oの方向をジャイロ107の基準方向とし、Y方向とする。また、Y方向に垂直な方向をX方向と定義する。X方向は紙面左方向を正、Y方向はA点から見たO点の方向を正、O点周りの回転方向は時計回り方向を正と定義する。
【0026】
初期のスキャンをしたA点でアンテナ方向及びジャイロ方向を設定し、A点からB点に移動したときにB点において2回目のスキャンを行う。この時、ジャイロ方向を基準としたときの対象局の方向角θ1を測定し、移動量検出演算部によってX方向の距離x1を求める。x1とθ1とを基に対象局までのY方向の距離Lを求めると下記式(1)のようになる。
L=x1/(tanθ1) ・・・(1)
B点からC点に移動したときは、移動量検出演算部によってX方向の距離x2とY方向の距離y2とを求める。B点からC点まで移動したときの方向角をθ2とすると、下記式(2)のようになる。
tan(θ1+θ2)=(x1+x2)/(L−y2) ・・・(2)
【0027】
θ2は、式(1)及び式(2)から下記式(3)のようになる。
【0028】
【数1】
【0029】
このようにして求めたθ2分だけアンテナ103の指向性を変えれば良好な通信が可能となる。
【0030】
x1及びθ1は、電波強度測定で電波が弱くなったときに再演算するときでも変わらないためそのままの値を、x2及びy2は移動によって値が変化しているため、再測定演算して上記式(3)に代入すれば良い。
これを繰り返し実行することにより、アンテナを毎回スキャンする必要が無くなる。
【0031】
図4に、移動量検出演算部106及び移動量センサ105の構成例を示す。図示するように、移動量検出演算部106としてMPU60を、移動量センサ105として加速度センサ50を適用している。加速度センサ50はX0、Y0の2方向用意されており、それぞれの方向の加速度成分が検出可能である。X0、Y0は方向は、ジャイロ基準のX,Y方向とは異なるため、加速度センサ50で得られた測定値はMPU60においてX0,Y0を基準とする値からX,Yを基準とする値に変換される。変換されたデータは、加速度データであり、これを基に距離データを算出する。
【0032】
X方向に関して、移動距離xは、速度vx、等速移動時間t、平均加速度axとすると、微小時間Δtにおける平均速度Δvxは、下記式(4)で表される。
Δvx=ax・Δt ・・・(4)
よって、移動距離xは、下記式(5)で表される。
x=vx・t+ΣΔvx・Δt=vx・tΣax・Δt2 ・・・(5)
このように、加速度センサの出力を基に、移動距離を演算によって算出できる。
【0033】
図5に、上記構成における指向性アンテナ制御装置の移動量算出の処理の流れを示す。
まず、加速度センサ50によってX方向の加速度を測定する。加速が無ければ(ステップS201/無)、MPU60は速度一定として(ステップS202)距離を算出する(ステップS204)。加速がある場合には(ステップS201/有)、MPU60は速度変化分を加算する形で(ステップS203)距離を算出する(ステップS204)。
次に、上記同様に加速度センサ50によってY方向の加速度を測定する。加速が無ければ(ステップS205/無)、MPU60は速度一定として(ステップS206)距離を算出する(ステップS208)。加速がある場合には(ステップS205/有)、MPU60は速度変化分を加算する形で(ステップS207)距離を算出する(ステップS208)。
以上のような手順で、MPU60は加速度センサ50の出力を基に、X方向、Y方向の距離を算出する。
【0034】
図6に、電波強度検出評価部104の構成を示す。図示する構成においては、電波強度検出評価部104は、MPU40、強度検出部41及びアンテナ切換部42からなる。
【0035】
強度検出部41において測定されたデータは、MPU40において強度評価される。強度が規定値(−3dB)よりも大きければ、アンテナの方向切り換えは行わず維持し、小さければ、アンテナ切換部42に切換信号を送り、アンテナ方向の切り換えを行い、感度が得られない場合はアンテナ103でスキャンを行う。
この時、一時的に電波強度が低下しても(障害物の影響など)アンテナ103のスキャンや方向切り換えを行わないようにするために、規定値よりも小さくなったとしても、その変化が急激であったり、短時間のみであったりした場合には、規定値よりも小さくなったと判断しないようにしている。
【0036】
図7に、電波強度検出評価部104の動作の流れを示す。
まず、強度検出部41によって電波強度を測定する(ステップS301)。電波強度が規定値よりも大きければ(ステップS302/強)、MPU40はアンテナ方向はそのまま維持する(ステップS303)。一方、電波強度が規定値よりも小さければ(ステップS302/弱)、アンテナをスキャンして(ステップS305)ジャイロ基準からの角度θ1を測定する(ステップS306)。MPU40は、アンテナ切換部42に指示を送り、測定値に基づいてアンテナの方向を変える(ステップS307)。
【0037】
〔第2の実施形態〕
本発明を好適に実施した第2の実施形態について説明する。図8に本実施形態に係る指向性アンテナ制御装置の構成を示す。本実施形態に係る指向性アンテナ制御装置の構成は、第1の実施形態と同様ほぼ同様であるが、電波強度検出評価部104と移動量検出演算部106とが電波強度検出評価・移動量検出演算部109として一体的に組み合わされている。
【0038】
図9に、電波強度検出評価・移動量検出演算部109の構成を示す。電波強度検出評価・移動量検出演算部109は、MPU90、強度検出部91及びアンテナ切換部92を有する。MPU90は、加速度センサ50からのセンサ信号に基づいてX方向・Y方向の移動速度・移動量を算出する。また、アンテナ103が受信した電波の強度が所定値以上であるか否かの評価を行う。さらに、アンテナ切換部92を駆動するための制御信号を出力する。強度検出部91は、アンテナ103が受信した電波の強度を検出する。アンテナ切換部92は、アンテナ103に制御信号を送り、指向方向を変化させる。
【0039】
強度検出部91は、電波強度を検出する。強度検出部91において検出した電波強度を、MPU90において強度評価する。強度が規定値よりも大きければアンテナ方向切り換えは行わずに維持し、規定値よりも小さければ、アンテナ切換部92に切換信号を送り、アンテナ103をスキャン又はアンテナの方向切り換えができるようになっている。
この時、一時的に電波強度が低下しても(障害物の影響など)アンテナのスキャンや方向切り換えを行わないようにするために、規定値よりも小さくなったとしても、その変化が急激であったり、短時間のみであったりした場合には、規定値よりも小さくなったと判断しないようにしている。
また、加速度センサ50からの信号をMPU90でジャイロ基準のX,Y方向へ変換し、移動距離を算出する。
【0040】
図10に、電波強度検出評価・移動量検出演算部109の動作の流れを示す。
まず、MPU90は初期測定した点からの距離x1を演算によって求める(ステップS401)。次に、ジャイロ基準からの角度θ1は既知の値であるから、MPU90はこれを基に対象局までのY方向距離Lを算出する(ステップS402)。続いて、強度検出部91において電波強度を測定する(ステップS403)。電波強度が規定値よりも大きければ(ステップS404/強)アンテナの方向切り換えは行わず維持する(ステップS405)。一方、規定値よりも小さければ(ステップS404/弱)、その位置までのX方向の移動距離x2、Y方向の移動距離y2を算出し(ステップS406)、θ1からの角度θ2を求める(ステップS407)。
この時、一時的に電波強度が低下しても(障害物の影響など)アンテナのスキャンや方向切り換えを行わないようにするために、規定値よりも小さくなったとしても、その変化が急激であったり、短時間のみであったりした場合には、規定値よりも小さくなったと判断しないようにしている。そして、MPU90はアンテナ切換部92に指示を送り、測定値に基づいてアンテナの方向を変える(ステップS408)。
【0041】
このようにすることで、初回及び2回目のアンテナスキャンが完了した後は、アンテナスキャンを行うことなくアンテナの指向方向を切り換えられる。
【0042】
なお、上記各実施形態は、本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれらに限定されることはない。
例えば、上記実施形態においては、加速度センサを用いて移動量を検出したが、移動量を検出できるのであれば、他のセンサを用いてもよい。また、実施例ではジャイロとしてマイクロジャイロや振動ジャイロを具体例としてあげたが、光学ジャイロやファイバジャイロ、リングレーザジャイロなどを用いても良い。
このように、本発明は様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を好適に実施した第1の実施形態にかかる指向性アンテナ制御装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態にかかる指向性アンテナ制御装置の動作の流れを示す図である。
【図3】アンテナ方向及びジャイロ方向の定義を示す図である。
【図4】移動量検出部及び移動量センサの構成を示す図である。
【図5】指向性アンテナ制御装置の移動量を算出する処理の流れを示す図である。
【図6】電波強度検出評価部の構成を示す図である。
【図7】電波強度検出評価部の動作の流れを示す図である。
【図8】本発明を好適に実施した第2の実施形態に係る指向性アンテナ制御装置の構成を示す図である。
【図9】電波強度検出評価・移動量検出演算部の構成を示す図である。
【図10】電波強度検出評価・移動量検出演算部の動作の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0044】
40、60、90 MPU
41、91 強度検出部
42、92 アンテナ切換部
50 加速度センサ
101 入出力部
102 全体制御部
103 アンテナ
104 電波強度検出評価部
105 移動量センサ
106 移動量検出演算部
107 ジャイロ
108 ジャイロ制御部
109 電波強度検出評価・移動量検出演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は指向性アンテナの指向方向を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛星通信や移動体通信の普及に伴い、指向性アンテナの重要性が注目されている。移動体通信の場合には、送信側、受信側が相対的に移動するため、指向性のあるアンテナでは通信相手の存在する方向を検出してその方向にアンテナを向ける必要がある。
無指向性アンテナの場合には、この必要は無いが、効率が低い、ノイズに弱いといった欠点があり、実際にはあまり使用されていない。
【0003】
指向性アンテナとしては、アンテナ素子の方向を物理的に変えるもののほか、特許文献1に開示される「指向性可変アンテナ及び外アンテナを用いた電子機器、ならびに外アンテナを用いたアンテナ指向性制御方法」のように、アンテナの放射パターンの指向性を電気的に変化させるものもある。
【0004】
衛星通信の分野においては、特許文献2に開示される「衛星放送受信アンテナ自動追尾装置」などがあり、アンテナを機械的に動かして送信又は受信の方向を検出し、追尾している。
また、移動体通信の分野においては、特許文献3に開示される「アンテナ指向システム」のようにジャイロと地磁気とを利用するものや、特許文献4に開示される「指向性アンテナ追尾装置」のように、ジャイロとGPSと地磁気とを利用して移動体の位置を常に確認しながら追尾する指向システムなどがある。
【特許文献1】特開2004−304785号公報
【特許文献2】特開平9−321517号公報
【特許文献3】特公平7−58854号公報
【特許文献4】特開平10−10220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に小型化が要求される移動体通信用のアンテナは、上記特許文献2〜4に開示される発明を適用することは困難となっている。また、常に方向を確認しながら通信相手を追尾する方法は正確ではあるが、システム上無駄な部分が多く、消費電力も増大してしまう。
【0006】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、通信相手の存在する方向を確認するためのアンテナスキャンの回数が少なくて済み、かつ小型化可能な指向性アンテナ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、指向性アンテナの指向方向を制御する指向性アンテナ制御装置であって、自装置の向きを検出するジャイロと、自装置の移動量を検出する移動量検出手段と、通信相手である装置から受信した電波が所定のしきい値以上であるか否かを判断する電波強度評価手段とを有し、通信相手である装置が存在する方向を認識するための方向スキャンを2回行った後は、ジャイロ、移動量検出手段及び電波強度評価手段の出力に基づいて、方向スキャンを行うことなく指向性アンテナの指向方向を決定することを特徴とする指向性アンテナ制御装置を提供するものである。アンテナスキャンを2回行った後は、スキャンすることなくアンテナの方向を決められるため、無駄な動作がなく消費電力を低減できる。
【0008】
以上の構成においては、1回目の方向スキャンに基づいて認識した通信相手である装置が存在する方向をジャイロの基準方向とし、移動量検出手段は、ジャイロの基準方向の移動量及び該基準方向に垂直な方向な移動量を検出することが好ましい。これにより、位置検出装置(GPSなど)を備えることなく、アンテナの方向を決められる。
【0009】
上記のいずれの構成においても、移動量検出手段は、加速度センサと該加速度センサの出力を基に移動量を算出するMPUとを有することが好ましい。このようにすれば、移動量検出手段を簡単にかつ小型化できる。また、指向性アンテナの向きと通信相手である装置が存在する方向とのズレを、電波強度検出手段によって検出し、ズレ量が所定量以上となった場合に、方向スキャンを行って通信相手である装置が存在する方向を特定することが好ましく、これに加えて、電波強度検出手段は、アンテナ素子と、該アンテナ素子が受信した電波の強度を算出するMPUとを含むことがより好ましい。このようにすれば、GPSのような位置検出装置は必要なく、また、構成を簡略化・小型化できる。また、2回目の方向スキャンの後では、通信相手である装置が存在する方向を、ジャイロの基準方向からの初期回転角と、ジャイロの基準方向への移動量と、ジャイロの基準方向とは垂直な方向への移動量とに基づいて算出し、該算出した方向に指向性アンテナの指向方向を変化させることが好ましい。このようにすれば、無駄な動作がなく消費電力を抑えることができる。
【0010】
また、上記のいずれの構成においても、ジャイロは、マイクロマシンを利用したマイクロコマジャイロであることが好ましい。このようにすれば、装置の小型化が可能である。又は、ジャイロは、圧電素子を用いた振動ジャイロであることが好ましい。このようにすれば、装置の小型化が可能である。又は、ジャイロは、光学ジャイロであることが好ましい。このようにすれば、装置の小型化が可能であるとともに、物理的な動作部が無いため信頼性が高くなる。
【0011】
上記のいずれの構成においても、指向性アンテナは、電気的に指向方向を変更可能であることが好ましい。このようにすれば、装置の小型化が可能であり、かつ、物理的な動作部が無いため信頼性も高くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通信相手の存在する方向を確認するためのアンテナスキャンの回数が少なくて済み、かつ小型化可能な指向性アンテナ制御装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、移動体通信などに用いる指向性アンテナを制御する装置において、ジャイロと移動量検出演算手段と、電波強度検出評価手段とを設けたものであり、発信又は受信する方向を認識するためのアンテナの方向スキャンは初期と2回目のみで、それ以降はスキャンを行うことなくアンテナの方向を決定できる。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明するが、理解を容易にするために、説明に用いる図では一部の構成要素を誇張したり省略したりする。
【0014】
図1に、本実施形態に係る指向性アンテナ制御装置の構成を示す。指向性アンテナ制御装置は、入出力部101、全体制御部102、アンテナ103、電波強度検出評価部104、移動量センサ105、移動量検出演算部106、ジャイロ107及びジャイロ制御部108を有する。
【0015】
入出力部101は、不図示の移動体通信装置からの命令を受け取ったり、受信強度などの情報を移動体通信装置へ出力したりするためのインタフェースである。全体制御部102は、指向性アンテナ制御装置の動作を制御するコンピュータであり、例えば、ROMに格納されているプログラムをCPUが読み出し、RAMを作業領域として実行することによって実現される。アンテナ103は、通信相手との間でやりとりする電波の周波数に適したアンテナ特性を備えている。電波強度検出評価部104は、アンテナ103によって受信した電波の強度を検出し、所定の強度以上であるか否かを判断する。移動量センサ105は、指向性アンテナ105は、指向性アンテナ制御装置がどの方向にどれだけ移動したかを検出するためのセンサである。移動量検出演算部106は、移動量センサ105の検出結果を基に演算処理を行い、指向性アンテナの移動方向及び移動量を算出する。ジャイロ107は、指向性アンテナ制御装置の向きを検出するためのセンサである。ジャイロ制御部108は、ジャイロ107の検出の基準となる方向を設定する。
【0016】
情報伝達に必要な命令を入出力部101によって全体制御部102へ送ると、全体制御部102はアンテナ103からの情報とジャイロ107からの情報と移動量センサ105からの情報とを基に、必要な情報を算出・評価してアンテナ103の方向を電波の送受信に最適な方向へと向ける。
【0017】
なお、ジャイロ107としては、マイクロマシンを利用したマイクロジャイロ、圧電素子を使用した振動ジャイロを適用可能である。これらのジャイロは手のひらに載せられる程度の大きさであるため、ハンディタイプの送受信装置への組み込みが容易である。
また、アンテナ103は、機械的に向きを変えさせるものではなく、リアクタンス可変やGNDショート技術を用いて指向性を制御する、電気的切り換え可能なアンテナを用いるとよい。
【0018】
以下の説明において、特に断りの無い場合は、指向性アンテナ制御装置の各部の動作は全体制御部102からの制御によって行われるものとする。
【0019】
図2に、指向性アンテナ制御装置の動作フローを示す。
まず始めに、アンテナを方向スキャン(初期スキャン)して(ステップS101)、送受信先の対象局を探す。対象局の方向が分かったら、アンテナ103をその方向へ向け、維持(指向性設定)する(ステップS102)。同時に、ジャイロ制御部108は、対象局の方向を0°と設定し、その方向をY方向とし、Y方向と垂直な方向をX方向と定義する(ステップS103)。
【0020】
固定局同士の場合は、これにより良好な通信が可能であるが、移動体の場合は方向が変化するため、移動に応じて指向性を変える必要がある。このため、全体制御部102は、電波強度検出評価部104に電波強度を検出させ(ステップS104)、十分強い場合には(ステップS105/強)対象局の方向は変わっていないと判断し、アンテナの方向を維持する(ステップS106)。そのまま通信を続けるのであれば(ステップS107/No)、それを繰り返す。
もし弱くなって(ただし、障害物などによる一時的な電波強度低下は除く)きたときには(ステップS105/弱)、全体制御部102は、送受信可能な間にアンテナを方向スキャン(2回目スキャン)して(電波が弱くならなくともマニュアル操作で強制的にスキャンしても良い)、電波強度の強くなる方向を特定する。対象局はその方向に存在するため、全体制御部102はジャイロ方向を基(0°)としたときの対象局の方向θ1を測定する(ステップS108)。そして、この方向にアンテナ103の方向を切り換える(ステップS109)。この時、全体制御部102は、移動量検出演算部106によって、X方向距離x1も求め、x1からとθ1とから対象局までのY方向の距離Lを求めておく(ステップS110)。
【0021】
このように、電波が弱くなってきた場合に、通信不能となる前にアンテナをスキャンし方向を決めれば、良好な通信品質が確保できるが、毎回スキャンを行っていては、無駄が多く消費電力も増大してしまう。
このため、全体制御部102は、2回目スキャン以降は、電波強度検出評価部104に電波強度を検出させ(ステップS111)、十分強い場合には(ステップS112/強)、対象局が位置する方向は変わっていないと判断し、アンテナ103の方向を維持する(ステップS113)。そのまま維持するのであれば(ステップS114/No)、それを繰り返す(ステップS111以降)。
もし弱くなって(−3dB以下、ただし障害物などによる一時的な電波強度低下は除く)きたときには(電波が弱くならなくてもマニュアル操作で強制的にスキャンを行っても良い)(ステップS112/弱)、受信強度が規定値以上であるか否かを判断する(ステップ115)。ここでの規定値とは、受信可能なぎりぎりの最低値のことである。
受信強度が規定値以上であるならば(ステップS115/Yes)、全体制御部102は、2回目スキャンを行った位置からのX方向の距離x2、Y方向の距離y2とを移動量検出演算部106によって求め、先に求めたx1と2回目スキャンを行った位置から対象局までのy方向の距離Lを基に、対象局の新たな方向θ2を求める(ステップS116)。そして、この方向にアンテナ103の方向を切り換える(ステップS117)。
再び電波が弱くなった場合には、全体制御部102は、上記の動作を繰り返し行う(ステップS111以降)。
【0022】
一方、受信強度が規定値未満であるならば(ステップS115/No)、演算によってアンテナ103の指向方向を算出しても十分な受信強度が得られないと判断し、x2、y2及びθ2の算出は行わない。
【0023】
通常は、上記の処理を繰り返すが(ステップS107/No、S114/No、S118/No)、無線通信を終了する場合には、不必要な演算処理を行わないために動作を終了しても良い(ステップS107/Yes、S114/Yes、S118/Yes)。
【0024】
このようにすれば、アンテナを毎回スキャンすることなく、アンテナ103の指向性を設定できるため、無駄な動作が少なくなり、消費電力も低減できる。
【0025】
図3に、指向性アンテナ制御装置と対象局との位置関係を示す。図中対象局の位置をOで示す。また、指向性アンテナ制御装置の位置を●で示す。なお、指向性アンテナ制御装置は、A→B→Cの順に移動するものとする。
初期位置であるA点から見た対象局Oの方向をジャイロ107の基準方向とし、Y方向とする。また、Y方向に垂直な方向をX方向と定義する。X方向は紙面左方向を正、Y方向はA点から見たO点の方向を正、O点周りの回転方向は時計回り方向を正と定義する。
【0026】
初期のスキャンをしたA点でアンテナ方向及びジャイロ方向を設定し、A点からB点に移動したときにB点において2回目のスキャンを行う。この時、ジャイロ方向を基準としたときの対象局の方向角θ1を測定し、移動量検出演算部によってX方向の距離x1を求める。x1とθ1とを基に対象局までのY方向の距離Lを求めると下記式(1)のようになる。
L=x1/(tanθ1) ・・・(1)
B点からC点に移動したときは、移動量検出演算部によってX方向の距離x2とY方向の距離y2とを求める。B点からC点まで移動したときの方向角をθ2とすると、下記式(2)のようになる。
tan(θ1+θ2)=(x1+x2)/(L−y2) ・・・(2)
【0027】
θ2は、式(1)及び式(2)から下記式(3)のようになる。
【0028】
【数1】
【0029】
このようにして求めたθ2分だけアンテナ103の指向性を変えれば良好な通信が可能となる。
【0030】
x1及びθ1は、電波強度測定で電波が弱くなったときに再演算するときでも変わらないためそのままの値を、x2及びy2は移動によって値が変化しているため、再測定演算して上記式(3)に代入すれば良い。
これを繰り返し実行することにより、アンテナを毎回スキャンする必要が無くなる。
【0031】
図4に、移動量検出演算部106及び移動量センサ105の構成例を示す。図示するように、移動量検出演算部106としてMPU60を、移動量センサ105として加速度センサ50を適用している。加速度センサ50はX0、Y0の2方向用意されており、それぞれの方向の加速度成分が検出可能である。X0、Y0は方向は、ジャイロ基準のX,Y方向とは異なるため、加速度センサ50で得られた測定値はMPU60においてX0,Y0を基準とする値からX,Yを基準とする値に変換される。変換されたデータは、加速度データであり、これを基に距離データを算出する。
【0032】
X方向に関して、移動距離xは、速度vx、等速移動時間t、平均加速度axとすると、微小時間Δtにおける平均速度Δvxは、下記式(4)で表される。
Δvx=ax・Δt ・・・(4)
よって、移動距離xは、下記式(5)で表される。
x=vx・t+ΣΔvx・Δt=vx・tΣax・Δt2 ・・・(5)
このように、加速度センサの出力を基に、移動距離を演算によって算出できる。
【0033】
図5に、上記構成における指向性アンテナ制御装置の移動量算出の処理の流れを示す。
まず、加速度センサ50によってX方向の加速度を測定する。加速が無ければ(ステップS201/無)、MPU60は速度一定として(ステップS202)距離を算出する(ステップS204)。加速がある場合には(ステップS201/有)、MPU60は速度変化分を加算する形で(ステップS203)距離を算出する(ステップS204)。
次に、上記同様に加速度センサ50によってY方向の加速度を測定する。加速が無ければ(ステップS205/無)、MPU60は速度一定として(ステップS206)距離を算出する(ステップS208)。加速がある場合には(ステップS205/有)、MPU60は速度変化分を加算する形で(ステップS207)距離を算出する(ステップS208)。
以上のような手順で、MPU60は加速度センサ50の出力を基に、X方向、Y方向の距離を算出する。
【0034】
図6に、電波強度検出評価部104の構成を示す。図示する構成においては、電波強度検出評価部104は、MPU40、強度検出部41及びアンテナ切換部42からなる。
【0035】
強度検出部41において測定されたデータは、MPU40において強度評価される。強度が規定値(−3dB)よりも大きければ、アンテナの方向切り換えは行わず維持し、小さければ、アンテナ切換部42に切換信号を送り、アンテナ方向の切り換えを行い、感度が得られない場合はアンテナ103でスキャンを行う。
この時、一時的に電波強度が低下しても(障害物の影響など)アンテナ103のスキャンや方向切り換えを行わないようにするために、規定値よりも小さくなったとしても、その変化が急激であったり、短時間のみであったりした場合には、規定値よりも小さくなったと判断しないようにしている。
【0036】
図7に、電波強度検出評価部104の動作の流れを示す。
まず、強度検出部41によって電波強度を測定する(ステップS301)。電波強度が規定値よりも大きければ(ステップS302/強)、MPU40はアンテナ方向はそのまま維持する(ステップS303)。一方、電波強度が規定値よりも小さければ(ステップS302/弱)、アンテナをスキャンして(ステップS305)ジャイロ基準からの角度θ1を測定する(ステップS306)。MPU40は、アンテナ切換部42に指示を送り、測定値に基づいてアンテナの方向を変える(ステップS307)。
【0037】
〔第2の実施形態〕
本発明を好適に実施した第2の実施形態について説明する。図8に本実施形態に係る指向性アンテナ制御装置の構成を示す。本実施形態に係る指向性アンテナ制御装置の構成は、第1の実施形態と同様ほぼ同様であるが、電波強度検出評価部104と移動量検出演算部106とが電波強度検出評価・移動量検出演算部109として一体的に組み合わされている。
【0038】
図9に、電波強度検出評価・移動量検出演算部109の構成を示す。電波強度検出評価・移動量検出演算部109は、MPU90、強度検出部91及びアンテナ切換部92を有する。MPU90は、加速度センサ50からのセンサ信号に基づいてX方向・Y方向の移動速度・移動量を算出する。また、アンテナ103が受信した電波の強度が所定値以上であるか否かの評価を行う。さらに、アンテナ切換部92を駆動するための制御信号を出力する。強度検出部91は、アンテナ103が受信した電波の強度を検出する。アンテナ切換部92は、アンテナ103に制御信号を送り、指向方向を変化させる。
【0039】
強度検出部91は、電波強度を検出する。強度検出部91において検出した電波強度を、MPU90において強度評価する。強度が規定値よりも大きければアンテナ方向切り換えは行わずに維持し、規定値よりも小さければ、アンテナ切換部92に切換信号を送り、アンテナ103をスキャン又はアンテナの方向切り換えができるようになっている。
この時、一時的に電波強度が低下しても(障害物の影響など)アンテナのスキャンや方向切り換えを行わないようにするために、規定値よりも小さくなったとしても、その変化が急激であったり、短時間のみであったりした場合には、規定値よりも小さくなったと判断しないようにしている。
また、加速度センサ50からの信号をMPU90でジャイロ基準のX,Y方向へ変換し、移動距離を算出する。
【0040】
図10に、電波強度検出評価・移動量検出演算部109の動作の流れを示す。
まず、MPU90は初期測定した点からの距離x1を演算によって求める(ステップS401)。次に、ジャイロ基準からの角度θ1は既知の値であるから、MPU90はこれを基に対象局までのY方向距離Lを算出する(ステップS402)。続いて、強度検出部91において電波強度を測定する(ステップS403)。電波強度が規定値よりも大きければ(ステップS404/強)アンテナの方向切り換えは行わず維持する(ステップS405)。一方、規定値よりも小さければ(ステップS404/弱)、その位置までのX方向の移動距離x2、Y方向の移動距離y2を算出し(ステップS406)、θ1からの角度θ2を求める(ステップS407)。
この時、一時的に電波強度が低下しても(障害物の影響など)アンテナのスキャンや方向切り換えを行わないようにするために、規定値よりも小さくなったとしても、その変化が急激であったり、短時間のみであったりした場合には、規定値よりも小さくなったと判断しないようにしている。そして、MPU90はアンテナ切換部92に指示を送り、測定値に基づいてアンテナの方向を変える(ステップS408)。
【0041】
このようにすることで、初回及び2回目のアンテナスキャンが完了した後は、アンテナスキャンを行うことなくアンテナの指向方向を切り換えられる。
【0042】
なお、上記各実施形態は、本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれらに限定されることはない。
例えば、上記実施形態においては、加速度センサを用いて移動量を検出したが、移動量を検出できるのであれば、他のセンサを用いてもよい。また、実施例ではジャイロとしてマイクロジャイロや振動ジャイロを具体例としてあげたが、光学ジャイロやファイバジャイロ、リングレーザジャイロなどを用いても良い。
このように、本発明は様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を好適に実施した第1の実施形態にかかる指向性アンテナ制御装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態にかかる指向性アンテナ制御装置の動作の流れを示す図である。
【図3】アンテナ方向及びジャイロ方向の定義を示す図である。
【図4】移動量検出部及び移動量センサの構成を示す図である。
【図5】指向性アンテナ制御装置の移動量を算出する処理の流れを示す図である。
【図6】電波強度検出評価部の構成を示す図である。
【図7】電波強度検出評価部の動作の流れを示す図である。
【図8】本発明を好適に実施した第2の実施形態に係る指向性アンテナ制御装置の構成を示す図である。
【図9】電波強度検出評価・移動量検出演算部の構成を示す図である。
【図10】電波強度検出評価・移動量検出演算部の動作の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0044】
40、60、90 MPU
41、91 強度検出部
42、92 アンテナ切換部
50 加速度センサ
101 入出力部
102 全体制御部
103 アンテナ
104 電波強度検出評価部
105 移動量センサ
106 移動量検出演算部
107 ジャイロ
108 ジャイロ制御部
109 電波強度検出評価・移動量検出演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性アンテナの指向方向を制御する指向性アンテナ制御装置であって、
自装置の向きを検出するジャイロと、自装置の移動量を検出する移動量検出手段と、通信相手である装置から受信した電波が所定のしきい値以上であるか否かを判断する電波強度評価手段とを有し、
前記通信相手である装置が存在する方向を認識するための方向スキャンを2回行った後は、前記ジャイロ、前記移動量検出手段及び前記電波強度評価手段の出力に基づいて、前記方向スキャンを行うことなく前記指向性アンテナの指向方向を決定することを特徴とする指向性アンテナ制御装置。
【請求項2】
1回目の方向スキャンに基づいて認識した前記通信相手である装置が存在する方向を前記ジャイロの基準方向とし、
前記移動量検出手段は、前記ジャイロの基準方向の移動量及び該基準方向に垂直な方向な移動量を検出することを特徴とする請求項1記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項3】
前記移動量検出手段は、加速度センサと該加速度センサの出力を基に移動量を算出するMPUとを有することを特徴とする請求項1又は2記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項4】
前記指向性アンテナの向きと前記通信相手である装置が存在する方向とのズレを、前記電波強度検出手段によって検出し、ズレ量が所定量以上となった場合に、前記方向スキャンを行って前記通信相手である装置が存在する方向を特定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項5】
前記電波強度検出手段は、アンテナ素子と、該アンテナ素子が受信した電波の強度を算出するMPUとを含むことを特徴とする請求項4記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項6】
2回目の方向スキャンの後では、前記通信相手である装置が存在する方向を、前記ジャイロの基準方向からの初期回転角と、前記ジャイロの基準方向への移動量と、前記ジャイロの基準方向とは垂直な方向への移動量とに基づいて算出し、該算出した方向に前記指向性アンテナの指向方向を変化させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項7】
前記ジャイロは、マイクロマシンを利用したマイクロコマジャイロであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項8】
前記ジャイロは、圧電素子を用いた振動ジャイロであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項9】
前記ジャイロは、光学ジャイロであることを特徴とする請求項1から6のいれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項10】
前記指向性アンテナは、電気的に指向方向を変更可能であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項1】
指向性アンテナの指向方向を制御する指向性アンテナ制御装置であって、
自装置の向きを検出するジャイロと、自装置の移動量を検出する移動量検出手段と、通信相手である装置から受信した電波が所定のしきい値以上であるか否かを判断する電波強度評価手段とを有し、
前記通信相手である装置が存在する方向を認識するための方向スキャンを2回行った後は、前記ジャイロ、前記移動量検出手段及び前記電波強度評価手段の出力に基づいて、前記方向スキャンを行うことなく前記指向性アンテナの指向方向を決定することを特徴とする指向性アンテナ制御装置。
【請求項2】
1回目の方向スキャンに基づいて認識した前記通信相手である装置が存在する方向を前記ジャイロの基準方向とし、
前記移動量検出手段は、前記ジャイロの基準方向の移動量及び該基準方向に垂直な方向な移動量を検出することを特徴とする請求項1記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項3】
前記移動量検出手段は、加速度センサと該加速度センサの出力を基に移動量を算出するMPUとを有することを特徴とする請求項1又は2記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項4】
前記指向性アンテナの向きと前記通信相手である装置が存在する方向とのズレを、前記電波強度検出手段によって検出し、ズレ量が所定量以上となった場合に、前記方向スキャンを行って前記通信相手である装置が存在する方向を特定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項5】
前記電波強度検出手段は、アンテナ素子と、該アンテナ素子が受信した電波の強度を算出するMPUとを含むことを特徴とする請求項4記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項6】
2回目の方向スキャンの後では、前記通信相手である装置が存在する方向を、前記ジャイロの基準方向からの初期回転角と、前記ジャイロの基準方向への移動量と、前記ジャイロの基準方向とは垂直な方向への移動量とに基づいて算出し、該算出した方向に前記指向性アンテナの指向方向を変化させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項7】
前記ジャイロは、マイクロマシンを利用したマイクロコマジャイロであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項8】
前記ジャイロは、圧電素子を用いた振動ジャイロであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項9】
前記ジャイロは、光学ジャイロであることを特徴とする請求項1から6のいれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【請求項10】
前記指向性アンテナは、電気的に指向方向を変更可能であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の指向性アンテナ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2006−211154(P2006−211154A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18798(P2005−18798)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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