説明

指示テープ検出装置、それを具備するスリッター機および巻き返し機

【課題】巻取体の側面に貼り付いたり、極端に曲がった指示テープをも検出することができる指示テープ検出装置と、それを具備するスリッター機および巻き返し機の提供。
【解決手段】
巻取体の側面を検出領域として指示テープの有無を検出する検出器と、検出領域が常に側面における外周領域となるように、巻き解きが進行中の巻取体の巻径の変化に対応して変位させながら、検出器を支持する支持体とを具備するようにした指示テープ検出装置と、それを具備するスリッター機および巻き返し機。支持体に支持されたコロが巻取体の周面に接触することによりコロの回転軸が周面から一定の距離を保持する。検出器はカラーセンサである。また、作業者に警告するための警報出力と機械を操作するための信号出力を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェブを取扱う技術分野に属する。特に、ウェブにおける特定部分を指示するためウェブの端からはみ出すようにウェブに添付した指示テープをウェブの巻取体において巻き解きが進行中に検出するための指示テープ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スリッター機においては、紙、布、プラスチックフィルム等のウェブを走行させ、その走行するウェブにレザー刃を接触させることでウェブ走行方向に切断する。このスリット工程においては切断するだけでなく、通常、スリット工程よりも前の工程で発生した不良部分等を除去する作業が行われる。また、ウェブの巻取体における巻き始めと巻き終わりとを入れ替える巻き返し機を使用する巻き返し工程においてもそれ以前の工程で発生した不良部分等を除去する作業が行われる。
【0003】
ウェブには不良位置を指示する指示テープが添付されており、従来は主として目視によりその指示テープを見つけ出し、不良位置の手前でウェブの走行を手動停止または徐行させる。そして、ウェブにおける実際の不良をチェックしながら除去する作業が行われている。しかしながら、この方法では、A.作業者が不良位置を注意深く監視している必要性があり、その負荷が大きく、その間は他の作業に集中することができない。B.作業者の主観により機械を停止する判断を行うため、指示テープの手前で停止させることができない場合がある。
【0004】
そこで、不良発生工程で不良位置検査を行い、検査情報を後工程に伝達することにより、後工程での不良位置検出を可能とする装置の提案がある(特許文献1)。しかし、この方法では、工程内および工程間を結ぶ大規模な情報系の構築と保守が不可欠となり、設置および維持コストが膨大となる。
また、ウェブに添付された指示テープをウェブの巻取体において検出する装置の提案がある(特許文献2)。しかし、この方法では指示テープの検出器における検出領域が巻取体の側面から外れているため、指示テープが折れ曲がり巻取体の側面に貼り付いたり、極端に曲がった状態となっているときには検出が不可能であった。
【特許文献1】特許第3362621号
【特許文献2】特開平8−157118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものである。その目的は、設置および維持コストが僅少であり、巻取体の側面に貼り付いたり、極端に曲がった指示テープをも検出することができる指示テープ検出装置と、それを具備するスリッター機および巻き返し機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る指示テープ検出装置は、巻取体の側面を検出領域として指示テープの有無を検出する検出器と、前記検出領域が常に前記側面における外周領域となるように、巻き解きが進行中の前記巻取体の巻径の変化に対応して変位させながら、前記検出器を支持する支持体とを具備するようにしたものである。
また本発明の請求項2に係る指示テープ検出装置は、請求項1に係る指示テープ検出装置において、前記支持体はコロを回転自在に支持し、そのコロが前記巻取体の周面に接触することにより前記コロの回転軸が前記周面から一定の距離を保持し、それにより前記検出領域が常に前記側面における外周領域となるようにしたものである。
また本発明の請求項3に係る指示テープ検出装置は、請求項1または2に係る指示テープ検出装置において、前記検出器はカラーセンサであって、前記指示テープが特定色を有することによりその有無を検出するようにしたものである。
また本発明の請求項4に係る指示テープ検出装置は、請求項1〜3に係る指示テープ検出装置において、前記指示テープが検出されたときに、作業者に警告する警告手段および/または機械を操作するための信号を出力する信号出力手段を具備するようにしたものである。
また本発明の請求項5に係るスリッター機は、請求項1〜4に記載の指示テープ検出装置を具備するようにしたものである。
また本発明の請求項6に係る巻き返し機は、請求項1〜4に記載の指示テープ検出装置を具備するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係る指示テープ検出装置によれば、検出器により巻取体の側面を検出領域として指示テープの有無が検出され、支持体により検出領域が常に側面における外周領域となるように、巻き解きが進行中の巻取体の巻径の変化に対応して変位させながら、検出器が支持される。したがって、巻取体の側面に貼り付いたり、極端に曲がった指示テープをも検出することができる指示テープ検出装置が提供される。
また本発明の請求項2に係る指示テープ検出装置によれば、支持体はコロを回転自在に支持し、そのコロが巻取体の周面に接触することによりコロの回転軸が周面から一定の距離を保持し、それにより検出領域が常に記側面における外周領域となる。この機構は極めて簡単である。したがって、設置および維持コストが僅少である。
また本発明の請求項3に係る指示テープ検出装置によれば、検出器はカラーセンサであって、指示テープが特定色を有することによりその有無が検出される。巻取体の側面とは異なる色の指示テープを添付することにより検出を確実とすることができる。また、指示テープの色をそれが指示する内容によって色分けすることにより対応した処理を行うことができる。
また本発明の請求項4に係る指示テープ検出装置によれば、指示テープが検出されたときに、警告手段により作業者に警告が行われ信号出力手段により機械を操作するための信号が出力される。
また本発明の請求項5に係るスリッター機によれば、巻取体の側面に貼り付いたり、極端に曲がった指示テープをも自動検出することができるスリッター機が提供される。
また本発明の請求項6に係る巻き返し機によれば、巻取体の側面に貼り付いたり、極端に曲がった指示テープをも自動検出することができる巻き取り機が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について図1を参照しながら説明する。図1は本発明の指示テープ検出装置における構成および設置状況を示す説明図である。図1において、1は検出器、2は支持体、3a,3bはコロ、10a,10,10cは指示テープ、20はガイドローラ、100は巻取体、Aは検出領域、Bは巻取体回転方向、Cはウェブ走行方向、Dは支持体回動方向である。
【0009】
検出器1は巻取体100の側面を検出領域として指示テープの有無を検出する検出器である。検出領域は、図1に示す一例においては、巻取体100の側面における外周領域に存在する円形状の領域、すなわち斜線で示す検出領域Aとなっている。検出器1は支持体2によって支持されている。支持体2が巻き解きが進行中の巻取体の巻径の変化に対応して変位することによって検出器1の位置も変位し、その検出領域Aが常に巻取体100の側面における外周領域に含まれることになる。
【0010】
検出器1は巻取体100の側面と指示テープ10a,10,10cとの間にある何らかの相違、たとえば光の反射率、反射位置、色、形状、等を検出することにより指示テープの有無を検出する検出器である。検出器1は一種一個のセンサではなく多種多数個のセンサを組み合わせた検出器であってもよい。多種多数個のセンサを切替えて、または多種多数個のセンサの出力信号を総合判定して検出対象の状況に対応する適正な検出を行わせることができる。検出器1は、具体的には、反射率を検出する光電センサ、反射位置を検出する測長センサ、色を検出するカラーセンサ、形状を検出するイメージセンサ、等である。検出器1が光センサであるときには、適合する投光手段(図示せず)と組合わせて使用する。
【0011】
検出器1にカラーセンサを使用するときには、検出領域Aに指示テープが存在するときの検出色を登録しておき、実際に検出している検出領域Aの検出色とを比較することによって、指示テープの有無が検出される。勿論、巻取体の側面とは異なる色の指示テープを添付することにより検出の精度と信頼性を高めることができる。また、指示テープの色をそれが指示する内容によって色分けすることにより検出器1が検出した色に基づいて指示テープ検出装置が対応した処理を行うことができる。
【0012】
たとえば、不良開始位置と不良終了位置を赤色と白色の指示テープによって区別することができる。また列方向(幅方向)に多面付けしたウェブであれば、不良が存在する列が右側列、中央列、左側列、2列以上のいずれであるかを、赤色、緑色、青色、白色の指示テープによって区別することができる。
【0013】
支持体2はコロ3a,3bを回転自在に支持する。そのコロ3a,3bが巻取体100の周面に接触することによりコロ3a,3bの回転軸が周面から一定の距離を保持する。逆の言い方をすれば、巻取体100の周面にコロ3a,3bが接触することにより支持体2は、その一方の側(コロ3a,3bを支持する側)が巻取体100の周面によって支持されることになる。図1に示す一例においては、巻取体100の周面における高い位置、すなわち巻取体100の中心線(軸)を含む鉛直面と上側の周面が交差する直線の近傍において支持体2の一方の側が支持される。支持体2そのものと、検出器1、コロ3a,3b、等の質量を合計した質量に対応する重力が作用し、その重力によって巻取体100の周面にコロ3a,3bが押圧される。
【0014】
支持体2の他方の側は、指示テープ検出装置が適用されるスリッター機、巻き返し機、等の機械のフレーム(図示せず)によって回動自在に支持されている。図1に示すように、支持体2の回動方向は支持体回動方向Dである。支持体回動方向Dは、巻取体100の巻径によって変化するが、概ね前述の鉛直面と平行方向である。したがって、コロ3a,3bの軸は、概ね前述の鉛直面内を支持体2の回動によって変位することになる。
【0015】
なお、一般的には、支持体回動方向Dは図1に示し上述した巻取体100の中心線(軸)を含む鉛直面と平行方向である必要性はない。支持体2の回動によって、検出器1とコロ3a,3bが巻取体100の中心線(軸)に近付いたり中心線から離れる方向(すなわちラジアル方向)に回動すれば水平面であってもよい。鉛直面の場合(またはそれに近い場合)には、重力によって巻取体100の周面にコロ3a,3bを押圧することができる。水平面の場合(またはそれに近い場合)には、巻取体100の周面にコロ3a,3bを押圧する手段(バネ、エアーシリンダー)等の構成要素を余分に必要とする。
【0016】
支持体2は検出器1を支持する。図1に示すように検出器1の検出領域Aが巻取体100の側面における外周領域となり、検出領域Aの中心が概ね前述の鉛直面内となるように支持体2は検出器1を支持する。この支持により巻き解きが進行して巻取体100の巻径が変化するとき、巻取体100の周面に接触するコロ3a,3bはその変化に対応して変位し、その変位はそのままの大きさと方向で検出器1を変位させることになる。したがって、常に、検出器1の検出領域Aは巻取体100の側面における外周領域に保持される。
【0017】
コロ3a,3bは、すでに説明したように、支持体2によって支持され、それが巻取体100の周面に接触することによりコロの回転軸が巻取体100の周面から一定の距離を保持する。コロ3a,3bの役割は、支持体2における一方の側(検出器1とコロ3a,3bを支持する側)を巻取体100の周面から一定の距離に保持することにある。その役割を果たすのであれば、他の構成要素で構成してもよい。たとえば、支持体2によって支持された測長センサによって巻取体100の周面までの距離を検出し、その距離が所定値となるように支持体2の回動を制御する構成としてもよい。
【0018】
なお、図示していないが、指示テープ検出装置は操作制御部を有する。操作制御部は指示テープ検出装置の動作を制御する。また操作制御部は検出器1が出力する出力信号に基づいて指示テープ10a,10,10cを検出したか否かを判定する演算を行う。またオペレータは操作制御部において巻取体100の状態や指示テーク10a,10,10cの状態に合致する検出条件や検出したときの出力形態を設定することができる。
【0019】
指示テープ10a,10,10cは検出器1の検出対象である。指示テープ10a,10,10cは、ウェブにおける不良部分等を指示するためウェブの端からはみ出すように、前工程においてウェブに添付した指示テープである。
ガイドローラ20はスリッター機、巻き返し機、等における供給ユニット(図示せず)の供給口に設けられたガイドローラである。
巻取体100は指示テープ10a,10,10cが添付されたウェブの巻取体である。巻取体100はスリッター機、巻き返し機、等における供給ユニット(図示せず)に装着されており、ウェブを供給するために図1に示す巻取体回転方向Bの方向に回転してウェブを巻き解いている。巻き解かれたウェブは図1に示すウェブ走行方向Cの方向に走行する。
【0020】
以上の構成において、次に本発明の指示テープ検出装置における動作について、図2を参照して説明する。図2は本発明の指示テープ検出装置とそれを具備するスリッター機(または巻き返し機)の動作の過程を示すフロー図である。
まず、ステップS1(巻取体装着)において、作業者は巻取体100をスリッター機の供給ユニットに装着する。勿論、作業者はその前にその装着の邪魔にならない退避状態に指示テープ検出装置がなっていることを確認しておく。
次に、ステップS2(作動状態移行)において、作業者は指示テープ検出装置を作動状態とし、指示テープ検出装置の操作制御部において検出条件や、出力形態を設定する。
【0021】
次に、ステップS3(運転開始)において、作業者はスリッター機の運転を開始する。運転を開始することにより、巻取体100からウェブが巻き解かれて供給が行われるため巻取体100の外径が小さくなって行く。それに追従して検出器はその検出領域Aが常に巻取体100の側面における外周領域となっている。したがって、周面に最も近い指示テープ10aが最初に検出領域Aに入り、さらに時間が経過するとともに順番に指示テープ10b,10cが検出領域Aに入ってくることになる。
【0022】
次に、ステップS4(検出信号入力)において、操作制御部は検出器1の出力信号を入力する。
次に、ステップS5(指示テープ検出?)において、操作制御部は入力した出力信号に基づいて指示テープを検出したか否かを判定する演算を行う。判定により指示テープが検出されなかったときにはステップS4に戻って以降のステップを繰返す。判定により指示テープが検出されたときにはステップS6に進む。
【0023】
次に、ステップS6(残距離演算)において、操作制御部はその指示テープのウェブの部位が巻き解かれるまでの距離を演算する。この演算は、ウェブの走行速度と巻取体の回転速度から巻取体100の直径を演算し、その直径と検出した指示テープの周面からの距離とに基づいて演算する。その距離は、ウェブの走行速度と経過時間に基づいて常に更新する演算が行われる。
【0024】
次に、ステップS7(減速停止)において、操作制御部はその距離が所定の減速開始距離となったときに、スリッター機の運転速度(通常はウェブの走行速度と同じ)を減速する出力信号を生成しスリッター機の制御部に出力する。その信号を入力したスリッター機は減速する。さらに操作制御部はその距離が所定の停止距離となったときに、スリッター機の運転を停止する出力信号を生成しスリッター機の制御部に出力する。その信号を入力したスリッター機は停止する。また、指示テープ検出装置は一時停止の状態と成る。
【0025】
次に、ステップS8(不良除去)において、作業者はマニュアル操作でスリッター機を運転し、ウェブにおける不良部分等を除去する作業を行う。
次に、ステップS9(運転再開)において、作業者はスリッター機の運転を再開する。スリッター機の運転が再開されると、スリッター機の制御部から指示テープ検出器の操作制御に一時停止を解除し再開する信号が出力される。指示テープ検出器はその信号を入力するとステップS4に戻って以降のステップを繰返す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の指示テープ検出装置における構成および設置状況を示す説明図である。
【図2】本発明の指示テープ検出装置とそれを具備するスリッター機(または巻き返し機)の動作の過程を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0027】
1 検出器
2 支持体
3a,3b コロ
10a,10,10c 指示テープ
20 ガイドローラ
100 巻取体
A 検出領域
B 巻取体回転方向
C ウェブ走行方向
D 支持体回動方向








【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取体の側面を検出領域として指示テープの有無を検出する検出器と、前記検出領域が常に前記側面における外周領域となるように、巻き解きが進行中の前記巻取体の巻径の変化に対応して変位させながら、前記検出器を支持する支持体とを具備することを特徴とする指示テープ検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の指示テープ検出装置において、前記支持体はコロを回転自在に支持し、そのコロが前記巻取体の周面に接触することにより前記コロの回転軸が前記周面から一定の距離を保持し、それにより前記検出領域が常に前記側面における外周領域となることを特徴とする指示テープ検出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の指示テープ検出装置において、前記検出器はカラーセンサであって、前記指示テープが特定色を有することによりその有無を検出することを特徴とする指示テープ検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の指示テープ検出装置において、前記指示テープが検出されたときに、作業者に警告する警告手段および/または機械を操作するための信号を出力する信号出力手段を具備することを特徴とする指示テープ検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の指示テープ検出装置を具備することを特徴とするスリッター機。
【請求項6】
請求項1〜4に記載の指示テープ検出装置を具備することを特徴とする巻き返し機。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−44872(P2006−44872A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228064(P2004−228064)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】