説明

指示位置検出装置及び指示位置検出方法

【課題】位置指示装置による指示位置の検出精度を高めることのできる指示位置検出装置及び指示位置検出方法を提供する。
【解決手段】位置特定用コイルシート4は、4つの接続部42を備えている。接続部42には、配列方向の一端に位置する検知用コイル41から、他端側にかけて8つの検知用コイル41の接続される内部信号線の内部信号線束5dが接続されている。メインセンサ部5aは、各接続部42に接続された最も一端側の検知用コイル41から他端側にかけて、順番に4つの検知用コイル41を同期させて駆動し、検知用コイル41から入力された検知信号の最大振幅値の隣り合う検知用コイル41間での強度差を特定し、更に強度差の差分値を特定し、差分値の変化状態に基づき位置指示装置3による指示位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信面に配列された複数の受信部での電波の受信状態に基づき、位置指示装置による指示位置を検出する指示位置検出装置及び指示位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の指示位置検出装置としては、下記の特許文献1に記載の座標入力装置が開示されている。この座標入力装置は、ペンによる入力表示部の指示位置をセンス部で検知する。センス部は、X方向及びY方向に沿って並設されてそれぞれ指示位置のX座標及びY座標を検出する多数のループコイルを備えており、入力表示部の液晶ディスプレイパネルとバックライトとの間に介装されている。入力表示部上をペンが指示していると、ループコイルから発信された電波がペンのコイルに誘導電圧を発生させ、この誘導電圧で生じた電流がコイルから電波を発信させる。この電波は、ループコイルに誘導電圧を発生させ、受信信号を生じさせる。各ループコイルで生じる受信信号に基づき、入力表示部上でのペンによる指示位置が特定される。
【0003】
この座標入力装置では、バックライトのドライブ回路や、電源のトランス等からの外部ノイズの影響を低減するために、ペンのコイルから発信される電波の周波数及びその周波数を中心とした帯域フィルタの周波数帯域を、バックライトのドライブ回路等の動作周波数及びその高周波の周波数と異ならせている。
【0004】
【特許文献1】特開平2−239312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の座標入力装置では、ノイズの発生源を予め特定できない場合や、特定できても既製の液晶表示装置を用いなければならない等して、上記帯域フィルタの周波数帯域に含まれる周波数のノイズが混入した場合には、ペンによる指示位置の検出精度が低下する虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、位置指示装置による指示位置の検出精度を高めることのできる指示位置検出装置及び指示位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明の指示位置検出装置は、所定の周波数の電波を発信する位置指示装置と、前記位置指示装置から発信される電波を受信する受信部が複数配列された受信面を有し、前記受信部での前記電波の受信状態に基づき、前記位置指示装置による前記受信面の指示位置を検出する位置検出装置と、からなる指示位置検出装置であって、複数の前記受信部での受信波を同時に同期させて検出する受信波検出手段と、受信波を検出する前記複数の受信部の内、2つの受信部からの信号の差信号を出力する差信号出力手段と、前記差信号出力手段から出力された前記差信号に基づき、前記受信面上での受信波強度の最大位置を、前記位置指示装置による前記受信面の指示位置として算出する指示位置算出手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記指示位置算出手段が、隣接する前記受信部間での前記差信号が最大値から最小値に変化する間に“0”となる前記受信面上の位置を、前記位置指示装置の指示位置として算出することを特徴とする。
また、本発明は、前記受信波検出手段が、複数の前記受信部の内の少なくとも1つを前記位置指示装置からの電波の受信範囲から外れるように選定し、前記差信号出力手段が、前記位置指示装置からの電波の受信範囲から外れるように選定した受信部からの信号と他の受信部からの信号との差信号を出力して、前記位置指示装置からの電波の前記受信部での受信信号のみを取り出し、前記指示位置算出手段が、前記受信波検出手段が取り出した前記受信信号の強度が最大になる前記受信面上の位置を前記位置指示装置の指示位置として算出することを特徴とする。
また、本発明は、前記指示位置算出手段が、前記差信号出力手段が出力した前記差信号の隣接する前記受信部間での差が、最大値から最小値に変化する間に“0”となる前記受信面上の位置を、前記位置指示装置の指示位置として算出することを特徴とする。
また、本発明の指示位置検出方法は、受信面に複数配列された受信部での位置指示装置から発信される電波の受信状態に基づき、前記位置指示装置による前記受信面の指示位置を検出する指示位置検出方法であって、少なくとも1つを前記位置指示装置からの電波の受信範囲から外れるように選定した複数の前記受信部での受信波を同期させて検出する受信波検出工程と、前記受信波検出工程で受信波を検出する前記複数の受信部の内、前記位置指示装置からの電波の受信範囲から外れるように選定した受信部からの信号と他の受信部からの信号との差信号を出力する差信号出力工程と、前記差信号出力工程で出力された前記差信号の隣接する受信部間での差が、最大値から最小値に変化する間に“0”となる前記受信面上の位置を、前記位置指示装置の指示位置として算出する指示位置算出工程とを備える特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、同時に同期して受信波を検出した受信部からの信号の差信号に基づき指示位置を特定することから、外部ノイズの影響を排除して、位置指示装置による指示位置の検出精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の入力装置1の構成の概略を示す斜視図である。図2は、位置指示装置3からの電波の送信状態を説明する図である。
【0011】
入力装置1は、位置指示装置3で指し示された入力表示部2上の位置情報を取得する指示位置検出装置であり、図1に示すように、位置を指し示す位置指示装置3と、位置指示装置3を検知する位置特定用コイルシート4a,4b(図3の4a,4b参照;以下の説明では、4aと4bをまとめて示すときは符号4とする。)を有し、位置特定用コイルシート4での検知結果に基づき位置指示装置3による入力表示部2上の指示位置を検出する位置検出装置5とを備えて構成されている。
【0012】
位置指示装置3は、後述する位置特定用コイルシート4が備える検知用コイル41a,41b(図3の41a,41b参照;以下の説明では、41a,41bをまとめて示すときは符号41とする)との間で位置指示用コイル32により電波を送受信する同調回路31と、スイッチ34の操作に応じて同調回路31による電波の送受信を制御するスイッチ検出回路35と、同調回路31及びスイッチ検出回路35の駆動用の電源38とを筐体3aに内蔵して構成されている。
【0013】
同調回路31は、上述した位置指示用コイル32とこの位置指示用コイル32と直列に接続されたコンデンサ33とから構成されており、後述する位置特定用コイルシート4の検知用コイル41から送信されたタイミング信号を同調回路31で受信すると、位置指示用コイル32が誘導電圧を発生させてスイッチ検出回路35に入力する。また、電源供給を受けると、図2に示すようにいわゆる共振現象を起こして電波を送信する。
【0014】
スイッチ検出回路35は、同調回路31及び電源38と直列接続されたバッファ36と、同調回路31及び電源38と並列接続された制御回路37とを備えている。バッファ36は、制御回路37から同調回路31に駆動信号を出力し、また、同調回路31からの入力信号を制御回路37に出力する。制御回路37は、バッファ36を介して同調回路31からの信号入力を受けてから所定時間の経過後に、バッファ36を介して所定の時間間隔で所定回数、同調回路31へ駆動信号を出力する。制御回路37が出力する信号の上記所定時間及び時間間隔は、複数の位置指示装置3が用いられるときには、上記所定回数の電波の送信が行われる期間が、各位置指示装置3で重複しないように設定されている。また、制御回路37は、スイッチ34のオン・オフを検出し、スイッチ34のオフ時には、バッファ36を介して同調回路31からの信号入力を受けても同調回路31への駆動信号出力の処理を行わない。なお、スイッチ34のオフ時には、上記駆動信号の出力における上記所定の時間間隔及び所定回数の少なくとも一方を、スイッチ34のオン時と異ならせるようにしてもよい。
【0015】
図3は、位置検出装置5が備える位置特定用コイルシート4の構成の概略を示す平面図である。位置特定用コイルシート4は、入力表示部2に設けられている。入力表示部2は、液晶表示パネル21(図1参照)の背面に拡散板,位置特定用コイルシート4,バックライトの順で前側から積層して構成されている。位置特定用コイルシート4は、上述した位置指示装置3の位置指示用コイル32との間で電波を送受信するためのものであり、2枚の矩形の透明フィルム間に検知用コイル41aを介装して構成された図3(a)に示すX軸位置特定用コイルシート4aと、X軸位置特定用コイルシート4aと同様に検知用コイル41bを備えて構成された図3(b)に示すY軸位置特定用コイルシート4bとを重ね合わせて構成されている。X軸位置特定用コイルシート4aは、位置指示装置3による入力表示部2上の指示位置のX座標を特定するためのものであり、左端側から右端側にかけてのX方向に沿って64個の検知用コイル41aが配列されている。Y軸位置特定用コイルシート4bは、位置指示装置3による入力表示部2上の指示位置のY座標を特定するためのものであり、後端側から前端側にかけてのY方向に沿って32個の検知用コイル41bが配列されている。
【0016】
検知用コイル41aは、位置特定用コイルシート4aのY方向に沿って延びている。また、検知用コイル41bは、位置特定用コイルシート4bのX方向に沿って延びている。各検知用コイル41は、コイル線を1ターンさせて構成されており、配列方向となるX方向又はY方向側に並んだ隣接する数個の(本実施形態では4つの)検知用コイル41と互いに重ね合わされるように等ピッチで配置されている。なお、検知用コイル41のターン数は1ターンには限られず、1ターン以上の複数回ターンさせて検知用コイル41を構成してもよい。各検知用コイル41の重なる部分は、絶縁物を介して重ねられている。
【0017】
X軸及びY軸の各位置特定用コイルシート4は、各位置特定用コイルシート4の備える検知用コイル41の延伸方向が略直角に交わるように、前後及び左右の各縁部を揃えて重ね合わされている。
【0018】
X軸位置特定用コイルシート4aの前縁部には、検知用コイル41aを位置検出装置5(図1参照)に接続するための接続部42aが備えられている。また、Y軸位置特定用コイルシート4bの右縁部には、検知用コイル41bを位置検出装置5(図1参照)
接続するための接続部42bが備えられている。本実施形態では、接続を容易にするために、検知用コイル41aの引出線43aが、所定の本数(本実施例では16本)毎にまとめられて引き出される。このようにして、本実施形態では、X軸位置特定用コイルシート4aは8つ、Y軸位置特定用コイルシート4bは4つの接続部42a,42bに、引出線43a,43bがそれぞれ分けて引き出されている。接続部42a,42bは、位置検出装置5に信号線ケーブルを介して接続される。信号線ケーブルは、両端に接続コネクタを備え、各接続部42a,42b毎に設けられて信号線束8(図1参照)を構成している。信号線ケーブルには、引出線43a,43b毎に設けられた信号線が束ねて収容されている。以下の説明では、接続部42a及び接続部42bの何れもを指す場合には接続部42,また、引出線43a及び引出線43bの何れもを指す場合には引出線43とする。
【0019】
図4は、位置特定用コイルシート4を用いた指示位置の検出のために位置検出装置5が備える回路の構成の概略を示すブロック図である。位置検出装置5は、信号線束8で接続された位置特定用コイルシート4との間で信号を送受信するためのものであり、位置特定用コイルシート4の検知用コイル41から接続部42,信号線束8,コネクタ5cを介して入力される検知信号を受信して位置指示装置3による指示位置を特定するメインセンサ部5aと、位置特定用コイルシート4の検知用コイル41に駆動電源を送信するサブセンサ部5bとを備えて構成されている。
【0020】
サブセンサ部5bは、信号線束8とコネクタ5cを介して接続されている。コネクタ5cには、サブセンサ部5bの内部信号線束5dが引き出されている。内部信号線束5dは、信号線束8が備える信号線毎に設けられた内部信号線を束ねて構成されている。サブセンサ部5bは、位置特定用コイルシート4にタイミング信号を発生させるタイミング信号発生回路51と、各内部信号線束5dが備える何れかの内部信号線を制御部6からの制御信号に応じてタイミング信号発生回路51又はメインセンサ部5aに接続するアナログSW52と、タイミング信号発生回路51のON/OFFを制御するサブ制御回路(FPGA)53と、を備えて構成されている。
【0021】
タイミング信号発生回路51は、トランジスタから構成されており、サブ制御回路53から入力された制御信号に応じて駆動される。アナログSW52は、内部信号線束5d毎に備えられており、制御部6の制御の下、内部信号線束5dの中の何れかの内部信号線を、タイミング信号発生回路51又はメインセンサ部5aに接続する。サブ制御回路53は、後述するメインセンサ部5aが備える制御部6の制御の下、タイミング信号発生回路51に制御信号を入力する。
【0022】
メインセンサ部5aは、位置特定用コイルシート4からの入力信号を増幅する増幅回路54と、増幅回路54で増幅された信号をAD変換するA/D変換器55と、各内部信号線束5dが備える何れかの内部信号線を増幅回路54に接続するアナログSW56と、サブセンサ部5bを含む各部の駆動制御及びA/D変換器55からの入力信号の処理を行う制御部6とを備えている。
【0023】
アナログSW56は、内部信号線束5d毎に備えられており、制御部6の制御の下、内部信号線束5dの中の何れかの内部信号線を増幅回路54に接続する。増幅回路54は、オペアンプから構成されて内部信号線束5d毎に備えられており、コネクタ58を介して内部信号線から入力された検知信号を増幅して、A/D変換器55に入力する。A/D変換器55は、内部信号線束5d毎に備えられており、増幅回路54からの入力信号をデジタル値に変換して、制御部6に入力する。制御部6は、サブセンサ部5bのアナログSW52の駆動を制御して、駆動対象となる検知用コイル41に接続された内部信号線を、タイミング信号発生回路51又はメインセンサ部5aの何れかに接続する。また、アナログSW56の駆動を制御して、駆動(検知)対象となる検知用コイル41に接続された内部信号線を、増幅回路54に接続し、又は、この接続を遮断する。
【0024】
図5は、制御部6の回路構成の概略を示すブロック図である。制御部6は、上述したサブセンサ部5bの駆動制御及びA/D変換器55からの入力信号の処理を行うメイン制御回路(FPGA)61と、入力装置1が備える各部の動作を制御するCPU62と、メイン制御回路61及びCPU62での処理に用いる動作プログラム等のデータを記憶するフラッシュメモリ63と、メイン制御回路61及びCPU62での処理に用いるデータが一時的に記憶されるRAM64と、制御部6が備える各部の動作の同期を図る同期信号を出力するオシレータ64a,64bと、ゲーム装置等の外部機器との通信制御を行うUSBコントローラ65とを備えている。
【0025】
メイン制御回路61には、A/D変換器55との間で信号を送受信するA/D変換器用I/O部6aと、サブセンサ部5bの備えるサブ制御回路53との間で信号を送受信するサブ制御回路用I/O部6bとが接続されている。また、メイン制御回路61には、入力装置1の動作状態を示すLED66aや入力装置1の動作設定を指定するためのスイッチ(SW)66bも接続されている。メイン制御回路61は、CPU62の制御の下、これらA/D変換器用I/O部6a,サブ制御回路用I/O部6b,及びLED66aやスイッチ(SW)66bの動作を制御する。また、メイン制御回路61は、CPU62の制御の下、A/D変換器用I/O部6aからの入力信号の処理、及び、サブ制御回路用I/O部6bを介したサブセンサ部5bの駆動制御を行う。
【0026】
メイン制御回路61は、サブセンサ部5b及びアナログSW56の駆動を制御して、各位置特定用コイルシート4での検知用コイル41の配列方向の一端側(図3参照)の検知用コイル41から、他端側(図3参照)にかけて7つの検知用コイル41を間に挟んだ4つの検知用コイル41、つまり、各接続部42に接続された最も一端側に位置する検知用コイル41を始点として、他端側にかけて順番に4つの検知用コイル41を同期させて駆動する処理を、X軸位置特定用コイルシート4a,Y軸位置特定用コイルシート4bの順で行う。なお、X軸位置特定用コイルシート4aについては、検知用コイル41aの配列方向となるX方向に2分した一端側(左側)と他端側(右側)とに分けて、上述の検知用コイル41を駆動する処理が、4つの接続部42毎に行われる。検知用コイル41の駆動処理の際、メイン制御回路61は、アナログSW52を駆動して、駆動対象の検知用コイル41とを結ぶ内部信号線を、タイミング信号の送信時にはタイミング信号発生回路51に、タイミング信号の送信後にはメインセンサ部5aにそれぞれ接続する。また、アナログSW52の切替タイミングに合わせて、アナログSW56を駆動して、駆動(検知)対象となる検知用コイル41に接続された内部信号線を増幅回路54に接続し、検知信号の検出後にこの接続を遮断する。
【0027】
同時に同期して駆動させる複数の検知用コイル41の配置範囲は、入力表示部2を指示した位置指示装置3から発信される電波の検知用コイル41による検知範囲よりも広く設定する。本実施形態では、位置指示装置3の位置指示用コイル32から発信される電波の検知用コイル41での受信範囲が、指示位置を中心とした周囲の8つの検知用コイル41の配置間隔よりも狭いことから、各位置特定用コイルシート4の同時に同期して駆動させる検知用コイル41の配置範囲、つまり、最も離れた検知用コイル41同士の配置間隔を、7つの検知用コイル41を間に挟んだ間隔に設定する。この例では、各検知用コイル41同士が、7つの検知用コイル41を間に挟む間隔をおいて配置されている。
【0028】
フラッシュメモリ63は、ローカルバス67aを介してメイン制御回路61に、また、ローカルバス67a及びバッファ67bを介してCPU62にそれぞれ接続されている。また、RAM64は、CPUバス67c及びバッファ67bを介してメイン制御回路61に、また、CPUバス67cを介してCPU62にそれぞれ接続されている。また、USBコントローラ65は、CPU62に直接接続されており、CPU62の制御の下、USBコネクタ6cを介して外部機器との通信制御を行う。
【0029】
オシレータ64aは、メイン制御回路61及びCPU62とバッファ68aを介して接続されている。また、オシレータ64bは、USBコントローラ65とバッファ68bを介して接続されている。
【0030】
図6は、メイン制御回路61がA/D変換器55からの入力信号の処理に用いる回路の構成の概略を示すブロック図である。メイン制御回路61は、外来ノイズ除去回路61a、デジタルバンドパスフィルタ回路61b、ピークトウーピーク検出回路61c、及びメモリ部61dを備えている。
【0031】
外来ノイズ除去回路61aは、A/D変換器用I/O部6aからの入力信号に含まれる外来ノイズを除去する。デジタルバンドパスフィルタ回路61bは、位置指示用コイル32から発信される電波の周波数f1を含む所定帯域の周波数成分を、外来ノイズ除去回路61aからの入力信号から取り出す。ピークトウーピーク検出回路61cは、各デジタルバンドパスフィルタ回路61bからの入力信号を基に、各検知用コイル41の最大振幅値、つまり、位置指示装置3から発信された電波の検知用コイル41での受信波の強度を検出する。各ピークトウーピーク検出回路61cが検出した強度は、検知用コイル41の種類を識別する情報と共に、振幅情報としてメモリ部61dに記憶される。CPU62は、メモリ部61dに記憶された各検知用コイル41についての振幅情報に基づき、位置指示装置3による指示位置を特定する。
【0032】
以下、外来ノイズ除去回路61aによる外来ノイズの除去方法について説明する。まず、外来ノイズ除去回路61aは、A/D変換器用I/O部6aからの入力信号、つまり、4つの検知用コイル41についての信号波の中の最も小さな信号をノイズ源による信号と推定して特定する。そして、特定したノイズ源による信号を4つの検知用コイル41の信号から差し引いて求めた信号波形をノイズのない信号波形と考え、この信号波形から、ノイズ源による信号として特定した検知用コイル41を含む4つの検知用コイル41の受信波強度を求める。この操作を検知用コイル41の1個分ずつずらしながら行い、全ての検知用コイル41についての受信波強度を求める。求められた受信波強度は、各検知用コイル41の座標に対応付けられてメモリ部61dに記憶される。
【0033】
外来ノイズ除去回路61aによる外来ノイズの除去方法について、4つの検知用コイル41(A)〜41(D)についての入力信号が、図7に示すような信号波形SA〜SDである場合を例に挙げて説明する。図7には、横軸を時間,縦軸を入力信号の振幅値として、入力信号の波形が表されている。CPU62は、図7(a)に示す4つの検知用コイル41(A)〜41(D)の信号波形SA〜SDのうちの、位置特定用コイルシート4の最も一端側(図3参照)の検知用コイル41についての信号波形SAと、残りの信号波形SB〜SDとの差分である信号波形SAB〜SAD(図7(b)参照)、及び、最も他端側(図3参照)の検知用コイル41についての信号波形SDと信号波形SB,SCとの差分である信号波形SBD,SCD(図7(c)参照)をそれぞれ算出する。次いで、信号波形SAB及びSCDの何れの最大振幅が小さいかを判別し、信号波形SABの最大振幅が最も小さければ信号波形SA〜SDから信号波形SAを差し引いた信号波形SAA〜SADを、信号波形SCDの最大振幅が最も小さければ信号波形SA〜SDから信号波形SDを差し引いた信号波形SAD〜SDDを、それぞれ検知用コイル41(A)〜41(D)についてのノイズの除去された信号波形と特定する。例えば、信号波形SABより信号波形SCDの方が小さい場合には、信号波形SAD〜SDDの最大振幅値(図7(d)参照)を検知用コイル41(A)〜41(D)についてのノイズの除去された信号波形と特定する。CPU62は、このような処理を、駆動する4つの検知用コイル41が切り替えられる度に行う。これにより、位置特定用コイルシート4が備える全ての検知用コイル41についてのノイズ除去後の信号波形が、各検知用コイル41の座標に対応づけられてメモリ部61dに記憶される。このようにしてノイズの除去された各検知用コイル41についての信号波形に基づき、デジタルバンドパスフィルタ回路61b,ピークトウーピーク検出回路61cでの処理が行われ、各検知用コイル41のノイズが除去された信号の最大振幅、すなわち受信波強度が求められ(ピークトウーピーク検出)、求められた受信波強度は各検知用コイル41の座標に対応づけられてメモリ部61dに記憶される。
【0034】
次に、CPU62による位置指示装置3での指示位置の特定方法について説明する。まず、CPU62は、位置特定用コイルシート4の各検知用コイル41について、位置特定用コイルシート4の受信波強度を他端側(図3参照)で隣り合う検知用コイル41の受信波強度から差し引いた受信波強度の差分値を取得する。次いで、各検知用コイル41について、他端側に並んだ所定数の検知用コイル41にかけての差分値の変化率を表す変化情報を、上記所定数の検知用コイル41の配置位置及び差分値に基づき、最小2乗法等を用いて最も一端側の検知用コイル41から順に特定し、検知用コイル41を識別する情報と共にRAM64に記憶する。全ての検知用コイル41についての変化情報をRAM64に記憶すると、CPU62は、記憶された変化情報が表す差分値の変化率の負の最大値を特定し、差分値の変化率の負の最大値の得られた検知用コイル41を基準コイルとする情報と共にRAM64に記憶する。次いで、基準コイルとなる検知用コイル41についての変化情報が表す差分値の“0”となる位置特定用コイルシート4上の座標位置を、ピーク座標位置(位置指示装置3に指示された座標位置)として特定する。
【0035】
最小2乗法を用いたCPU62によるピーク座標位置の特定方法の一例について、図8を用いて説明する。図8(a)は各検知用コイル41の位置と、各々の位置での検知用コイル41の検知信号の強度との関係を示す図,図8(b)は隣り合う検知用コイル41間での強度の差分値を示す図である。図8(a)では、横軸に位置特定用コイルシート4の位置,縦軸に検知信号の強度が表されている。また、図8(b)では、横軸に位置特定用コイルシート4の位置,縦軸に強度の差分値が表されている。また、各図の左側は位置特定用コイルシート4の一端側,右側は他端側を示している。
【0036】
この例では、位置特定用コイルシート4の一端側(図3参照)から他端側(図3参照)にかけて並んだ4つの検知用コイル41(n)〜41(n+3)の、最も一端側の検知用コイル41(n)を基準にとり、基準となる検知用コイル41(n)からの距離Xをそれぞれ“0”〜“3”とし、また、差分値YをR(n)〜R(n+3)とし、各検知用コイル41(n)〜41(n+3)間での差分値Yの変化状態を元に、ピーク座標位置を特定する場合について説明する。ここで、各検知用コイル41(n)〜41(n+3)間での差分値Yの変化状態を表す変化情報は、各検知用コイル41(n)〜41(n+3)の検知用コイル41(n)からの距離XをX軸,差分値YをY軸にとった図8(b)に示す座標上での差分値Yの変化を、1次関数に近似して示す下記(式1)で表される。
Y=aX+b・・・・(式1)
【0037】
CPU62は、まず、各検知用コイル41について、以下の(式2)の演算を実行して、上記(式1)で表される直線の傾き“a(n)”を特定する。
a(n)=(M×D−C×E)/(M×B−E×E)・・・・(式2)
ここで、M:上記(式1)を特定する検知用コイル41(n)〜41(n+3)の数量=4,E:各検知用コイル41(n)〜41(n+3)の検知用コイル41(n)からの距離Xの合計,C:検知用コイル41(n)〜41(n+3)の差分値Yの合計,D:各検知用コイル41(n)〜41(n+3)の距離X×差分値Yの合計,B:各検知用コイル41(n)〜41(n+3)の距離Xの2乗の合計を表している。
【0038】
この例では、各検知用コイル41(n)〜41(n+3)の検知用コイル41(n)からの距離Xがそれぞれ“0”〜“3”であることから、E=0+1+2+3=6となる。また、4つの検知用コイル41の差分値Yがそれぞれ“R(n)”〜“R(n+3)”であることから、C=Rn+R(n+1)+R(n+2)+R(n+3)となる。また、D=R(n)×0+R(n+1)×1+R(n+2)×2+R(n+3)×3となる。また、B=0+1+4+9=14となる。
【0039】
各検知用コイル41(n)について上記(式2)の演算を実行して傾き“a(n)”を取得した後、“a(n)”が最も大きな負の傾きとなる検知用コイル41(n)を特定する。図8(b)に示すように、強度が最大となる検知用コイル41(n+2)の周囲の4つの検知コイル41(n)〜41(n+3)間では、傾き“a(n)”が最も大きな負の傾きとなる傾向にある。このため、傾き“a(n)”が最も大きな負の傾きとなる検知用コイル41(n)、つまり基準コイルから他端側に位置する3つの検知用コイル41(n)〜41(n+3)の間に、位置指示装置3による指示位置があることになる。
【0040】
このようにして基準コイルを特定した後、CPU62は、上記(式1)のYを各検知用コイル41(n)〜41(n+3)の検知用コイル41(n)からの距離,Xを差分値R(n)〜R(n+3)として、つまり、差分値YをX軸,距離XをY軸に置き換えて下記の(式3)の演算を実行し、上記(式1)で表される直線の切片“b(n)”の座標を特定する。
【0041】
b(n)=(B×C−D×E)/(M×B−E×E)・・・・(式3)
【0042】
この例では、各検知用コイル41(n)〜41(n+3)の差分値Xがそれぞれ“R(n)”〜“R(n+3)”となり、E=R(n)+R(n+1)+R(n+2)+R(n+3)となる。また、各検知用コイル41(n)〜41(n+3)の検知用コイル41(n)からの距離Yがそれぞれ“0”〜“3”となり、C=0+1+2+3=6となる。また、D=R(n)×0+R(n+1)×1+R(n+2)×2+R(n+3)×3となる。また、B=R(n)^2+R(n+1)^2+R(n+2)^2+R(n+3)^2となる。
【0043】
上記(式3)の演算を実行して得られる切片“b(n)”は、図8(b)に示すように、距離XをX軸,差分値YをY軸とした上記(式1)の差分値Y=“0”になる検知用コイル41(n)からの距離X1となる。このため、CPU62は、指示位置の座標を特定する原点位置からの基準コイルとなる検知用コイル41(n)の座標位置にb(n)を加算して得られる座標位置をピーク座標位置として特定する。
【0044】
次に、入力装置1が位置指示装置3で指し示された入力表示部2上の位置情報を取得する動作について説明する。
【0045】
メインセンサ部5aの制御部6は、アナログSW52の駆動を制御して、駆動対象となるX軸位置特定用コイルシート4aの検知用コイル41をタイミング信号発生回路51に接続する。これにより、駆動対象となる検知用コイル41に、駆動電源を入力することが可能となる。また、アナログSW56の駆動を制御して、駆動(検出)対象となる検知用コイル41と接続された内部信号線を増幅回路54に接続する。
【0046】
アナログSW52,56の駆動が行われると、メインセンサ部5aの制御の下、サブセンサ部5bのサブ制御回路53は、タイミング信号発生回路51に制御信号を入力し、タイミング信号発生回路51から検知用コイル41に駆動電源を出力する。これにより、検知用コイル41からタイミング信号としての電波が発信され、発信された電波が位置指示装置3の位置指示用コイル32で受信される。位置指示用コイル32は、受信した電波をタイミングパルスとして受け取り所定時間の経過後に電波を発信する。
【0047】
その後、サブセンサ部5bのサブ制御回路53は、メインセンサ部5aの制御の下、タイミング信号発生回路51からの駆動電源の出力を停止する。このタイミングに合わせて、メインセンサ部5aの制御部6は、アナログSW52の駆動を制御して、駆動(検知)対象の検知用コイル41のタイミング信号発生回路51との接続を遮断し、メインセンサ部5aの増幅回路54に接続する。これにより、検知用コイル41からの電波の発信が停止すると共に、検知対象となる検知用コイル41から増幅回路54への検知信号の入力が可能となる。その後、位置指示装置3の位置指示用コイル32から発信された電波が、検知用コイル41で受信されると、検知用コイル41から検知信号が出力される。この検知信号は、増幅回路54で増幅された後、A/D変換器55でAD変換されて、制御部6に入力される。
【0048】
制御部6に入力された検知信号は、メイン制御回路61の外来ノイズ除去回路61aにおいて、上述した手順で外来ノイズを除去された後、デジタルバンドパスフィルタ回路61bで周波数f1を含む帯域の周波数成分を取り出される。ピークトウーピーク検出回路61cは、デジタルバンドパスフィルタ回路61bで取り出された信号の強度を特定する。このような処理が、X軸位置特定用コイルシート4aの最初の駆動対象となる4つの検知用コイル41から他端側(図3参照)にかけて順に、4つの検知用コイル41ずつ、X軸位置特定用コイルシート4aを2分する一方側及び他方側の32個の検知用コイル41毎に行われることにより、X軸位置特定用コイルシート4aの備える全ての検知用コイル41について信号の強度が取得される。
【0049】
制御部6のCPU62は、各検知用コイル41についての信号の強度に基づき、上述した手順で位置特定用コイルシート4のX軸上での位置指示装置3による指示位置を特定する。位置検出装置5は、X軸位置特定用コイルシート4aについての処理と同様の処理を、Y軸位置特定用コイルシート4bについて実行することにより、位置特定用コイルシート4のY軸上での位置指示装置3による指示位置を特定する。これにより、入力表示部2上での位置指示装置3による指示位置が特定される。
【0050】
次に、入力装置1を用いてゲーム装置により実行されるゲームの例について説明する。まず、図9用いて「電子モグラ叩き」ゲームについて説明する。このゲームでは、図9(a)に示すように、ハンマー型の筐体3aを備えた位置指示装置3が用いられる。この位置指示装置3の回路には、基本的に図1の位置指示装置3と同じ同調回路31が組み込まれている。ゲーム装置は、図9(b)に示すように、入力表示部2の液晶表示パネル21に敵キャラクタ21aの画像を次々と表示する。図9(c)に示すように、ハンマーの操作で位置指示装置3により位置が指示されると、ゲーム装置は、位置検出装置5による検出位置に応じた画像表示を行う。例えば、検出位置が敵キャラクタ21aの画像表示範囲に含まれていると、図9(c)に示すように、敵キャラクタを撃破したことを表す画像21bが表示される。
【0051】
次に、図10を用いて「お絵かき」ゲームについて説明する。このゲームでは、図10(a)に示すように、ペン型の筐体3aを備えた位置指示装置3が用いられる。この位置指示装置3の回路にも、基本的に図1の位置指示装置3と同じ同調回路31が組み込まれている。ゲーム装置は、図10(b)に示すように、液晶表示パネル21の表示画面を2分する表示領域の一方に、「お題」21cを画像表示する。ペンの操作で位置指示装置3により位置が指示されると、ゲーム装置は、図10(c)に示すように、位置検出装置5による検出位置に沿って線を描く画像表示を行い、表示画面には絵21dが描かれる。図1の位置指示装置3と同じスイッチ検出回路35を、位置指示装置3の回路に組み込み、ペンによる位置指示をスイッチ34の操作と共に行うようにしてもよい。このようにして表示領域の他方に絵21dが描かれた後、それを知らせる入力が位置指示装置3の操作等で行われると、ゲーム装置は、ペンで描かれた画像が「お題」21cにどれだけ近いかを判定し、判定結果を液晶表示パネル21に表示する。
【0052】
次に、図11を用いて「RTS(リアルタイム・ストラテジー)」ゲームについて説明する。このゲームは、色や模様や形状で敵軍と見方軍とに区別されたキャラクタ同士で戦闘を行うゲームである。この位置指示装置3の回路にも、基本的に図1の位置指示装置3と同じ同調回路31が組み込まれている。また、図1の位置指示装置3と同じスイッチ検出回路35を、位置指示装置3の回路に組み込み、ペンによる位置指示をスイッチ34の操作と共に行うようにすることもできる。ゲーム装置は、図11(a)に示すように、液晶表示パネル21の表示画面に敵軍21e及び見方軍21fのキャラクタ画像を表示する。位置指示装置3での指示位置やスイッチ34の操作でキャラクタ21e,21fを掴み指示位置を変える操作が行われると、ゲーム装置は、図11(b)に示すように、位置検出装置5での検出結果に応じて、キャラクタ21e,21fを移動表示させたり表示位置を変更する。なお、図11(c)に示すように、入力表示部2上に線を描く操作が行われると、図11(d)に示すように、描かれた線に沿ってキャラクタ21e,21fが移動する画像表示を行うようにしてもよい。
【0053】
次に、図12〜図14を用いて「立体物を動かす」ゲームについて説明する。図12に示す「戦略ゲーム」は、図12(a)に示すように、キャラクタを表す駒形の筐体3aを有する位置指示装置3を用いて、敵軍,味方軍に分かれて行われる。この位置指示装置3の回路にも、基本的に図1の位置指示装置3と同じ同調回路31が組み込まれている。ゲーム装置は、図12(b)に示すように、液晶表示パネル21の表示画面に敵軍21g1や障害物や背景等21g2の画像を表示し、位置検出装置5での検出結果に応じて、障害物や背景を変える画像表示、演出21gの画像表示を行う。
【0054】
また、図13に示す「戦略ゲーム」は、図13(a)に示すように、キャラクタを表すロボット形の筐体3aを有する位置指示装置3を用いて、敵キャラクタ21hと戦闘を行うゲームである。この位置指示装置3の回路にも、基本的に図1の位置指示装置3と同じ同調回路31が組み込まれている。ゲーム装置は、図13(b)に示すように、位置検出装置5での検出結果に応じて、液晶表示パネル21の表示画面に表示された敵キャラクタ21h、更には障害物や背景、演出21i等の画像表示を行う。
【0055】
また、図14に示す「アクションゲーム」は、図14(a)に示すように、車形の筐体3aを有する位置指示装置3を用い、障害物21jを避けて車を動かすゲームである。この位置指示装置3の回路にも、基本的に図1の位置指示装置3と同じ同調回路31が組み込まれている。ゲーム装置は、図14(b)に示すように、液晶表示パネル21の表示画面に表示された障害物21jや背景等の画像表示を行う。例えば、図14(b)に示すように、表示された障害物21j等を避けるようにして、入表示部2上で筐体3aが矢印で示すように移動されると、位置検出装置5での検出結果に応じた画像表示が行われる。なお、図12〜図14に示す各ゲームでは、図1の位置指示装置3と同じスイッチ検出回路35を、位置指示装置3の回路に組み込み、ペンによる位置指示をスイッチ34の操作と共に行うようにすることができる。
【0056】
本実施形態によれば、同時に同期して受信波を検出された複数の検知用コイル41からの入力信号の差信号に基づき、位置指示装置3による入力表示部2の指示位置が特定されるので、各受信波に含まれる外部ノイズの影響を受けることなく、位置指示装置3による指示位置を特定することができる。つまり、位置指示装置3から発信された電波の各検知用コイル41での受信波強度は、位置指示装置3による指示位置からの距離や向きに応じて大きく変化するのに対し、入力表示部2の比較的広範囲で受信される外部ノイズの各検知用コイル41での受信波強度は、各検知用コイル41間で大きな差がないことから、各検知用コイル41からの入力信号の差信号に基づき指示位置を特定することにより、外部ノイズの影響を排除することができる。この結果、位置指示装置3による指示位置の検出精度を高めることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、入力表示部2を指示した位置指示装置3から発信される電波の検知用コイル41による受信範囲よりも広い間隔をおいて配置された複数の検知用コイル41での受信波を同期させて検出することから、位置指示装置3から発信される電波の受信範囲外に位置していて外部ノイズのみが受信されている可能性の高い検知用コイル41と他の検知用コイル41とでの受信波の強度差に基づき、指示位置を特定できる。つまり、外部ノイズを排除して位置指示装置3で発信された電波の受信波のみに基づき指示位置の特定を行うことができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、隣り合う検知用コイル41間での差信号の差分値が検知用コイル41の距離及び差分値を座標軸にとった座標面上で略直線に並ぶことから、隣り合う検知用コイル41間での差分値の変化を1次関数に近似して示す変化情報に基づき指示位置を特定することにより、簡単な計算で精度の高い位置情報を得ることが出来る。
【0059】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施形態では、同期して検知信号を検出される4つの検知用コイル41のうちの両端の検知用コイル41同士が、位置指示装置3から発信される電波の受信範囲より広い間隔をおいて配置されていた場合について説明したが、隣り合った2つの検知用コイル41での検知信号を同時に同期させて検出してもよい。つまり、隣り合う2つの検知用コイル41での検知信号を同期させて検出する操作を、X軸及びY軸の各位置特定用コイルシート4の最も一端側(図3参照)に位置する検知用コイル41から順に、他端側(図3参照)にかけて検知用コイル41の1個分ずつずらして行う構成としてもよい。
【0060】
以下、このような検知信号の検出を行う本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の入力装置は、上記第1実施形態の入力装置1と同様の構成を有しているが、位置検出装置5が、検知用コイル41からの入力信号の処理に用いる増幅回路54,A/D変換器55等の回路を、検知信号の検出を同期させて行う検知用コイル41の数量と同じ2つずつ、各位置特定用コイルシート4毎に合計4つ備えている点で、上記第1の実施形態と異なる。また、上述のように、検知用コイル41からの検知信号の検出方法、及び検出信号の処理方法が、上記第1実施形態と異なる。具体的には、制御部6のメイン制御回路61は、サブセンサ部5b及びアナログSW56の駆動を制御して、各位置特定用コイルシート4の最も一端側の検知用コイル41から他端側にかけて検知用コイル41の1個分ずつずらしながら、順番に隣り合う2つの検知用コイル41を同時に同期させて駆動する処理を、X軸位置特定用コイルシート4a,Y軸位置特定用コイルシート4bの順で行う。これにより、各位置特定用コイルシート4の備える検知用コイル41が、隣り合う検知用コイル41と同時に同期して検知信号を検出される。検出された検知信号は、上記第1実施形態と同様にしてA/D変換器55からメイン制御回路61に入力された後、後述する外来ノイズ除去回路61aによる外来ノイズの除去、CPU62による指示位置の特定等の処理に用いられる。
【0061】
本実施形態での外来ノイズ除去回路61aによる外来ノイズの除去方法について説明する。外来ノイズ除去回路61aは、A/D変換器用I/O部6aから入力された、隣り合う2つの検知用コイル41についての信号の一方を他方から差し引いて求めた信号波形から、両検知用コイル41間での受信波強度の差分を求める。この操作を駆動する2つの検知用コイル41が切り替えられる度に行い、全ての検知用コイル41について、隣り合う検知用コイル41との受信波強度の差分を求める。求められた受信波強度の差分は、各検知用コイル41の座標に対応付けられてメモリ部61dに記憶される。
【0062】
外来ノイズ除去回路61aによる外来ノイズの除去方法について、隣り合う2つの検知用コイル41(A),41(B)についての入力信号が、図15に示すような信号波形SA,SBである場合を例に挙げて説明する。図15には、横軸を時間,縦軸を入力信号の振幅値として、入力信号の波形が表されている。外来ノイズ除去回路61aは、図15(a)に示す2つの検知用コイル41(A),41(B)の信号波形SA,SBの差分である信号波形SAB(図15(b)参照)を算出する。
【0063】
例えば、ノイズ源による信号波形が信号波形SNで、ノイズのない検知用コイル41(A),41(B)の信号波形を信号波形PA,PBとすると(図15(c)参照)、信号波形SABは、信号波形PA,PBの差分である信号波形と等しくなる。つまり、信号波形SA,SBの差分である信号波形SABを算出することにより、ノイズの信号波形SNの除去された検知用コイル41(A),41(B)の信号波形PA,PBの差分である信号波形を得ることができる。外来ノイズ除去回路61aは、このような処理を、駆動する2つの検知用コイル41が切り替えられる度に行う。
【0064】
これにより、位置特定用コイルシート4が備える全ての検知用コイル41についての隣り合う検知用コイル41との差分の信号波形がメモリ部61dに記憶され、その後、デジタルバンドパスフィルタ回路61b,ピークトウーピーク検出回路61cでの処理を経て、各検知用コイル41の差分の信号の最大振幅が求められ、各検知用コイル41の座標に対応づけられてメモリ部61dに記憶される。このようにして、メモリ部61dに記憶された最大振幅は、上記第1実施形態での受信波強度の差分値に相当し、その後のCPU62による指示位置の特定処理において同様に用いられる。
【0065】
本実施形態によれば、同時に同期して受信波を検出された複数の検知用コイル41からの入力信号の差信号に基づき、位置指示装置3による入力表示部2の指示位置を特定するので、各受信波に含まれる外部ノイズの影響を受けることなく、位置指示装置3による指示位置を特定できる。また、隣り合う検知用コイル41間での差分値の変化を近似して示す1次関数に基づき指示位置を特定することから、簡単な計算で精度の高い位置情報を得ることが出来る。従って、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
しかも、本実施形態によれば、検知用コイル41からの入力信号の差信号を特定することにより、隣接する検知用コイル41間での受信波強度の差分値を特定することができ、差分値を特定する処理を別途行うことなく、指示位置を特定することができる。
【0067】
上記各実施形態では、位置指示装置3が、スイッチ34の操作に応じて、位置指示用コイル32から電波を送信させるか否かを切り替えた場合について説明したが、電波の送信回数や送信時間,送信する電波の位相や周波数を切り替える構成としてもよい。また、位置特定用コイルシート4が備える検知用コイル41の数量及び配置間隔は、上記各実施形態での構成に限定されない。
【0068】
上記第1実施形態では、4つの検知用コイル41毎に検知信号の検出を行った場合について説明したが、検知信号の検出を同期させる検知用コイル41の数量は任意である。例えば、4つの検知用コイル41を間に置いて配置された8つの検知用コイル41での検知信号の検出を同期させてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、X軸位置特定用コイルシート4a,Y軸位置特定用コイルシート4bの順で指示位置を特定したが、Y軸位置特定用コイルシート4b,X軸位置特定用コイルシート4aの順で指示位置を特定しても、また、両位置特定用コイルシート4について強度又は差分値を取得後に、各位置特定用コイルシート4について続く処理を行い、指示位置を特定してもよい。
【0070】
また、上記各実施形態では、サブセンサ部5bのタイミング信号発生回路51としてトランジスタ、メインセンサ部5aの増幅回路54としてオペアンプをそれぞれ用いた場合について説明したが、タイミング信号発生回路51としては、トランジスタ,FET(Field Effect Transistor),小型モータ用のドライバーIC等を、増幅回路54としては、オペアンプ,トランジスタ,FET等を、それぞれ用いることができる。
【0071】
上記第1実施形態では、検知信号の処理に用いられるA/D変換器55等の回路を、各位置特定用コイルシート4の接続部42の合計と同じ12個ずつ備えている場合について説明した。しかしながら、Y軸位置特定用コイルシート4bの接続部42の数量と同じ4個ずつ、又は、X軸位置特定用コイルシート4aの接続部42の合計と同じ8個ずつ備えられている構成としてもよい。また、上記第2実施形態では、検知信号の検出を同時に行う2つの検知用コイル41と同じ2つずつ、検知信号の処理に用いるA/D変換器55等の回路を備える構成としてもよい。これらの場合、アナログSW52やアナログSW56の駆動、又は別途設けられたスイッチの駆動により、X軸位置特定用コイルシート4a側とY軸位置特定用コイルシート4b側,X軸位置特定用コイルシート4aの一方側と他方側で、接続する内部信号線を切り替えることができる。
【0072】
上記各実施形態では、基準コイルを特定後に、差分値YをX軸,距離XをY軸に置き換えて上記の(式3)の演算を実行し、上記(式1)で表される直線の切片“b(n)”の座標を特定することにより、上記(式1)の差分値Y=“0”になる検知用コイル41(n)からの距離X1を特定した場合について説明した。しかしながら、検知用コイル41(n)からの距離X1の特定方法は任意である。
【0073】
上記各実施形態では、隣り合う検知用コイル41間での差分値を1次関数に近似して示す変化情報に基づき、位置指示装置3による指示位置を特定した場合について説明した。しかしながら、上記第1実施形態では、各検知用コイル41についての強度を2次関数や曲線に近似して示す変化情報に基づき、位置指示装置による指示位置を特定してもよい。この場合、2次関数に最小2乗法を適応して、指示位置を特定することもできる。
【0074】
上記各実施形態では、隣り合う検知用コイル41間での差分値を1次関数に近似して示す変化情報に基づき、基準コイルとなる検知用コイル41を特定した場合について説明したが、上記第1実施形態では、例えば、並んで配置された複数の検知用コイル41間での受信強度の変化を近似して示す2次関数に基づき基準コイルを特定した後に、基準コイルとなる検知用コイル41と並ぶ検知用コイル41について差分値を取得し、差分値の変化を1次関数に近似して示す変化情報に基づき、ピーク座標位置を特定する構成としてもよい。
【0075】
アナログSW56による増幅回路54への内部信号線の接続タイミングは、アナログSW52の駆動と同期させる必要はなく、例えば、サブセンサ部5bによる検知用コイル41の駆動停止までの何れかのタイミングで行う等、検知用コイル41による検知信号の検出時までに行われていればよい。また、上記第1実施形態では、差分波の最大振幅値SABと差分波の最大振幅値SCDとを比較して、各検知用コイル41(A)〜41(D)の強度差を特定した場合について説明した。しかしながら、信号波SAの最大振幅値と差分波SDの最大振幅値の何れが小さいかの判別結果に基づき、強度差を特定してもよい。
【0076】
上記各実施形態では、複数の位置指示装置3が同時に用いられる場合に、各位置指示装置3から異なるタイミングで電波を送信させて、位置指示装置3同士を区別した場合について説明したが、各位置指示装置3から送信される電波の周波数を異ならせる等して位置指示装置3同士を区別してもよい。また、複数の位置指示装置3が同時に用いられることがない等、位置指示装置3同士を区別する必要がない場合には、各位置指示装置3から送信される電波を区別する必要もない。これらの場合、サブセンサ部5bがタイミング信号発生回路51を備える必要はない。
【0077】
また、上記各実施形態では、外来ノイズ除去回路61aでA/D変換器55からの入力信号のノイズ除去を行った後、デジタルバンドパスフィルタ回路61b,ピークトウーピーク検出回路61cでの処理を行った場合について説明した。しかしながら、ピークトウーピーク検出回路61cやCPU62でこれらの処理を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施形態による入力装置の構成の概略を示す斜視図である。
【図2】図1に示す位置指示装置からの電波の送信状態を説明する図である。
【図3】図1に示す位置検出装置が備える位置特定用コイルシートの構成の概略を示す平面図である。
【図4】図1に示す位置検出装置の回路構成の概略を示すブロック図である。
【図5】図4に示す制御部の回路構成の概略を示すブロック図である。
【図6】図5に示すメイン制御回路がA/D変換器からの入力信号の処理に用いる回路の構成の概略を示すブロック図である。
【図7】図6に示す外来ノイズ除去回路での外来ノイズ除去方法を説明する図である。
【図8】図5に示すCPUでの指示位置の特定方法を説明する図であり、強度差とCPUが特定した差分値とを比較して示す図である。
【図9】入力装置を用いてゲーム装置が実行するゲームの第1の例を説明する図である。
【図10】入力装置を用いてゲーム装置が実行するゲームの第2の例を説明する図である。
【図11】入力装置を用いてゲーム装置が実行するゲームの第3の例を説明する図である。
【図12】入力装置を用いてゲーム装置が実行するゲームの第4の例を説明する第1の図である。
【図13】入力装置を用いてゲーム装置が実行するゲームの第4の例を説明する第2の図である。
【図14】入力装置を用いてゲーム装置が実行するゲームの第4の例を説明する第3の図である。
【図15】本発明の第2の実施形態での図6に示す外来ノイズ除去回路での外来ノイズ除去方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0079】
1 :入力装置(指示位置検出装置)
2 :入力表示部
3 :位置指示装置
3a :筐体
31 :同調回路
32 :位置指示用コイル
4,4a,4b :位置特定用コイルシート(位置検出装置)
41,41a,41b :検知用コイル
42,42a,42b :接続部
43,43a,43b :引出線
5 :位置検出装置(位置検出装置)
5a :メインセンサ部
5b :サブセンサ部
51 :タイミング信号発生回路
52 :アナログSW
53 :サブ制御回路
56 :アナログSW
6 :制御部
61 :メイン制御回路
61a :外来ノイズ除去回路
61b :デジタルバンドパスフィルタ回路
61c :ピークトウーピーク検出回路
62 :CPU
8 :信号線束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の電波を発信する位置指示装置と、前記位置指示装置から発信される電波を受信する受信部が複数配列された受信面を有し、前記受信部での前記電波の受信状態に基づき、前記位置指示装置による前記受信面の指示位置を検出する位置検出装置と、からなる指示位置検出装置であって、
複数の前記受信部での受信波を同時に同期させて検出する受信波検出手段と、
受信波を検出する前記複数の受信部の内、2つの受信部からの信号の差信号を出力する差信号出力手段と、
前記差信号出力手段から出力された前記差信号に基づき、前記受信面上での受信波強度の最大位置を、前記位置指示装置による前記受信面の指示位置として算出する指示位置算出手段とを備えることを特徴とする指示位置検出装置。
【請求項2】
前記指示位置算出手段は、隣接する前記受信部間での前記差信号が最大値から最小値に変化する間に“0”となる前記受信面上の位置を、前記位置指示装置の指示位置として算出することを特徴とする請求項1に記載の指示位置検出装置。
【請求項3】
前記受信波検出手段は、複数の前記受信部の内の少なくとも1つを前記位置指示装置からの電波の受信範囲から外れるように選定し、
前記差信号出力手段は、前記位置指示装置からの電波の受信範囲から外れるように選定した受信部からの信号と他の受信部からの信号との差信号を出力して、前記位置指示装置からの電波の前記受信部での受信信号のみを取り出し、
前記指示位置算出手段は、前記受信波検出手段が取り出した前記受信信号の強度が最大になる前記受信面上の位置を前記位置指示装置の指示位置として算出することを特徴とする請求項1に記載の指示位置検出装置。
【請求項4】
前記指示位置算出手段は、前記差信号出力手段が出力した前記差信号の隣接する前記受信部間での差が、最大値から最小値に変化する間に“0”となる前記受信面上の位置を、前記位置指示装置の指示位置として算出することを特徴とする請求項3に記載の指示位置検出装置。
【請求項5】
受信面に複数配列された受信部での位置指示装置から発信される電波の受信状態に基づき、前記位置指示装置による前記受信面の指示位置を検出する指示位置検出方法であって、
少なくとも1つを前記位置指示装置からの電波の受信範囲から外れるように選定した複数の前記受信部での受信波を同期させて検出する受信波検出工程と、
前記受信波検出工程で受信波を検出する前記複数の受信部の内、前記位置指示装置からの電波の受信範囲から外れるように選定した受信部からの信号と他の受信部からの信号との差信号を出力する差信号出力工程と、
前記差信号出力工程で出力された前記差信号の隣接する受信部間での差が、最大値から最小値に変化する間に“0”となる前記受信面上の位置を、前記位置指示装置の指示位置として算出する指示位置算出工程とを備える特徴とする指示位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−193534(P2009−193534A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36370(P2008−36370)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000132471)株式会社セガ (811)
【Fターム(参考)】