説明

指認識キーボードおよび携帯端末

【課題】携帯電話機などの小型の端末においても利用可能であり、操作性に優れたキーボードを提供することを目的とする。
【解決手段】携帯電話機1は、キーボード11を備える。キーボード11は、アルファベット入力用のキー111a〜111hを備える。キー111a〜111hは、指紋撮像部112a〜112hを備え、キーに触れた指の指紋画像を撮像可能である。比較部115は、指紋撮像部112a〜112hから指紋情報を取得し、指紋情報記憶部116を参照することで、キーに触れている指種別を特定する。比較部115が、指が触れているキーの種別と、触れている指の種別を特定すると、制御部100は、文字登録部117を参照し、キー種別と指種別の組み合わせから文字を特定する。特定された文字は、ディスプレイ21に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータで用いられるキーボードに関する。特に、携帯電話機などの小型の端末での利用に適したキーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機が備えるキーボードでは、1つのキーに複数の文字が割り当てられている。たとえば、A,B,Cの文字が1つのキーに割り当てられている。ユーザは、A,B,Cの文字が割り当てられているキーを1回押すことで、文字“A”を指定し、2回押すことで、文字“B”を指定し、3回押すことで、文字“C”を指定することができる。
【0003】
このように、携帯電話機においては、1つのキーに複数の文字を割り当てることで、キーの数を少なくし、小型の端末においても、数少ないキーを利用して、文字入力を可能としている。
【0004】
また、指紋認証技術の進歩に伴い、指紋認証を利用したユーザインタフェースも提案されている。下記特許文献1は、指紋情報と電話番号などを対応付けることで、コンピュータに対する操作性の向上を図っている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−149516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、携帯電話機では、キーの数を少なくする工夫がなされているが、1つの文字を入力するためにキーを複数回押さなければならないため、操作が煩雑である。電子メールなどで多数の文字を入力する場合などは、特に面倒な作業になる。
【0007】
また、上記特許文献1の技術は、キー入力操作を簡略化できるなどメリットがあるが、登録された指紋に文字やコマンドを対応付けるため、1ユーザに対して対応付けることができる文字やコマンドに限りがある。
【0008】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み、携帯電話機などの小型の端末においても利用可能であり、操作性に優れたキーボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、指認識キーボードであって、複数のキーと、各キーにより入力された文字を特定するキー入力判定部と、を備え、各キーは、各キーの表面に触れている指から指紋情報を取得する指紋取得部、を含み、前記キー入力判定部は、指紋情報と指種別とを対応付けて記憶する記憶部と、キー種別および指種別との組み合わせと文字とを対応付けて登録する文字登録部と、各キーに対する指の接触に応答して、指が触れられているキー種別を特定するとともに、前記指紋取得部により取得した指紋情報から指種別を特定し、特定されたキー種別および指種別に基づいて前記文字登録部において登録されている文字を特定する文字特定部と、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の指認識キーボードにおいて、各キーには、複数の文字が対応付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、携帯端末であって、複数のキーと、各キーにより入力された文字を特定するキー入力判定部と、前記キー入力判定部で特定された文字を表示するディスプレイと、を備え、各キーは、各キーの表面に触れている指から指紋情報を取得する指紋取得部、を含み、前記キー入力判定部は、指紋情報と指種別とを対応付けて記憶する記憶部と、キー種別および指種別との組み合わせと文字とを対応付けて登録する文字登録部と、各キーに対する指の接触に応答して、指が触れられているキー種別を特定するとともに、前記指紋取得部により取得した指紋情報から指種別を特定し、特定されたキー種別および指種別に基づいて前記文字登録部において登録されている文字を特定する文字特定部と、を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の携帯端末において、各キーには、複数の文字が対応付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項3または請求項4に記載の携帯端末において、前記携帯端末は、携帯電話機を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の指認証キーボードを利用することで、1つのキーに複数の文字が割り当てられている場合であっても、ユーザは、1回の文字入力動作で、1文字を入力可能である。少ないキーを利用して容易に文字入力を可能とするので、携帯電話機などの小型の端末においても非常に利便性の高いキーボードとして利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
{1.携帯電話機の構成}
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る携帯電話機1の外観図である。携帯電話機1は、本体部10と、本体部10に対して開閉可能な回動部20とを備えている。本体部10の上面には、キーボード11が配置され、回動部20には、ディスプレイ21が配置されている。キーボード11は、十字カーソルキーや、複数のキー111,111・・・で構成されている。ディスプレイ21としては、たとえば、液晶表示パネルが用いられる。
【0016】
図2は、図1で示したキーボード11の一部拡大図である。上述したように、キーボード11は、十字カーソルキーや複数のキー111,111・・・で構成されているが、図2では、そのうち、アルファベットの文字入力に用いられる8つのキー111a,111b,111c,111d,111e,111f,111g,111hを示している。
【0017】
キー111aには、A,B,Cの文字が割り当てられている。キー111bには、D,E,Fの文字が割り当てられている。キー111cには、G,H,Iの文字が割り当てられている。キー111dには、J,K,Lの文字が割り当てられている。キー111eには、M,N,Oの文字が割り当てられている。キー111fには、P,Q,R,Sの文字が割り当てられている。キー111gには、T,U,Vの文字が割り当てられている。キー111hには、W,X,Y,Zの文字が割り当てられている。
【0018】
本実施の形態に係るキーボード11は、キーに触れている指から指紋情報を取得し、指種別に応じた文字入力を可能としている。そして、本実施の形態においては、アルファベットを入力するための8つのキー111a〜111hが、指紋情報の取得機能を備えている。このように、本実施の形態においては、8つのキー111a〜111hに指紋情報の取得機能を持たせるようにしているが、十字カーソルキーやその他のキー111,111・・・についても指紋情報の取得機能を持たせるようにしてもよい。つまり、従来から存在するキー(押し込み操作により文字を指定するキー)と、指認識を行うキーとを混在させてもよいし、全てのキーに指認識機能を持たせても良い。
【0019】
図3は、携帯電話機1のブロック図である。携帯電話機1は、上述したキーボード11とディスプレイ21を備えるほか、本体部10の内部に制御部100、比較部115、指紋情報記憶部116、文字登録部117などを備えている。なお、図3では、通信部やアンテナ、マイク、スピーカなど、携帯電話機1の各種機能部を図示省略している。
【0020】
キーボード11は、アルファベット入力用のキー111a〜111hを含め複数のキー111と十字カーソルキーなどで構成される。キー111a〜111hは、それぞれ、指紋撮像部112a〜112hを備えている。指紋撮像部112a〜112hは、たとえばCCDなどの撮像素子を備えている。指紋撮像部112a〜112hは、それぞれキー111a〜111hの表面に触れている指の指紋画像を撮像する。
【0021】
制御部100は、CPU,RAMなどを備え、携帯電話機1の全体制御を行う中枢部である。
【0022】
{2.キー種別および指の種別の組み合わせと文字との対応}
比較部115は、指紋撮像部112a〜112hのいずれかが撮像した指紋画像を入力する。比較部115は、この指紋画像を、そのまま指紋情報として利用してもよいし、指紋画像から抽出された数値情報や特徴情報などの加工情報を指紋情報として利用してもよい。また、比較部115は、指紋撮像部112a〜112hのいずれかから入力した指紋情報と、指紋情報記憶部116に登録されている指紋情報とを比較する。
【0023】
なお、比較部115は、複数の指紋撮像部112a〜112hで取得された指紋情報を同時に処理する必要はない。文字の入力は、シーケンシャルな処理を行えば十分だからである。本実施の形態においては、比較部115は、半導体集積回路(半導体LSI)として構成されているが、指紋情報の比較回路などを単一に備えていればよいので、回路規模を小さくすることが可能である。つまり、多数の指紋撮像部112a〜112hに対して、単一の比較回路などが存在すればよい。
【0024】
指紋情報記憶部116には、指紋情報と指種別とが対応して記憶されている。図4は、指紋情報記憶部116の登録内容の例を示している。この例では、指紋情報記憶部116には、人差し指、中指、薬指、小指それぞれの指紋情報が記憶されている。指紋情報としては、上述したように、指紋画像がそのまま指紋情報として登録されていてもよいし、指紋画像から抽出された数値情報や特徴情報などの加工情報が指紋情報として登録されていてもよい。
【0025】
比較部115は、指紋撮像部112a〜112hから入力した指紋情報と、指紋情報記憶部116に登録されている指紋情報とを比較することで、キー111a〜111hに接触している指の種別を特定することができる。たとえば、キー111aに接触しているのが人差し指であることや、キー111bに接触しているのが中指であることを特定する。
【0026】
文字登録部117は、図5に示す文字データベース117Aを登録している。文字データベース117Aは、キー種別および指の種別の組み合わせと文字とを対応付けたデータベースである。
【0027】
図5に示す文字データベース117Aにおいて、たとえば、キー111aに人差し指が触れる操作は“A”の文字の入力操作に対応し、キー111aに中指が触れる操作は“B”の文字の入力操作に対応し、キー111aに薬指が触れる操作は“C”の文字の入力操作に対応している。また、キー111eに人差し指が触れる操作は“M”の文字の入力操作に対応し、キー111eに中指が触れる操作は“N”の文字の入力操作に対応し、キー111eに薬指が触れる操作は“O”の文字の入力操作に対応している。
【0028】
{3.設定登録作業}
上述したように、指紋情報記憶部116には、携帯電話機1を利用するユーザの指紋情報が登録されている。たとえば、ユーザの人差し指、中指、薬指、小指の4指の指紋情報が登録されている。この登録設定は、たとえば、携帯電話機1を購入した後、最初の使用時などに行われる設定である。
【0029】
図6は、指紋情報の登録方法を示す図である。ディスプレイ21には、「人差し指を触れて下さい。」といったメッセージが表示されている。そして、ユーザは、図に示すように、人差し指をキー111aに接触させるのである。これにより、指紋撮像部112aにおいて人差し指の指紋が撮像され、人差し指の指紋情報が指紋情報記憶部116に登録される。そして、中指、薬指、小指に対しても同様の操作を繰り返すことで、指紋情報記憶部116に、各指の指紋情報が登録されるのである。ここでは、キー111aを指紋情報の登録用に利用しているが、他のキー111b〜111hを利用してもよい。
【0030】
ユーザは、指紋情報の登録を一度行えばよい。今後、このユーザは、携帯電話機1を利用する場合には、最初に登録された指紋情報を利用して操作指示を行うことが可能である。逆に言えば、指紋情報の登録設定が行われることにより、他のユーザは、指紋情報を利用して、この携帯電話機1を利用することができない。この意味で、携帯電話機1のセキュリティを高める役割も果たしている。
【0031】
{4.処理の流れ}
上述したように、ユーザの各指の指紋情報が指紋情報記憶部116に登録されることで、指認証インタフェースの使用環境が整う。次に、実際の操作の処理の流れを説明する。なお、キー種別および指種別の組み合わせと文字との対応関係は、デフォルトとして設定されている文字データベース117Aの内容を利用してもよいが、ユーザが自由に指紋情報取得可能な各キー111に文字や記号を割り当ててもよい。
【0032】
ユーザは、入力したい文字が割り当てられているキー111a〜111hに指で触れる。指がキー111a〜111hに触れると、指紋撮像部112a〜112hが、指の指紋を撮像する。比較部115は、指紋撮像部112a〜112hから指紋画像を入力する。比較部115は、この指紋画像をそのまま指紋情報として、あるいは、指紋画像から加工した情報を指紋情報として、指紋情報記憶部116に登録されている指紋情報との照合を行う。
【0033】
照合の結果、ある種別の指の指紋情報と一致した場合には、比較部115は、指の種別を特定し、その特定情報を制御部100に出力する。このようにして、制御部100は、キー111a〜111hに接触している指種別を認識することができる。
【0034】
また、比較部115は、指紋情報を指紋撮像部112a〜112hのうちいずれの指紋撮像部から入力したかを特定する。これにより、比較部115は、取得した指紋情報が、いずれのキー111a〜111hに触れている指から取得されたものであるかを特定する。そして、比較部115は、上述したように、制御部100に対して特定した指種別を出力する際に、あわせて、その指が触れているキー種別を出力する。
【0035】
制御部100は、キー種別と指種別とを特定すると、文字登録部117を参照し、対応する文字を特定する。そして、制御部100は、特定された文字をディスプレイ21に出力する。これにより、ディスプレイ21に特定された文字が表示される。
【0036】
図7は、本実施の形態のキーボード11を利用した操作方法を例示した図である。まず、図7(A)において、ユーザは、薬指でキー111bに触れている。これにより、ディスプレイ21に“F”の文字が表示される。続いて、図7(B)において、ユーザは、薬指でキー111cに触れている。これにより、ディスプレイ21に“I”の文字が表示される。続いて、図7(C)において、ユーザは、中指でキー111eに触れている。これにより、ディスプレイ21に“N”の文字が表示される。最後に、図7(D)において、ユーザは、中指でキー111bに触れている。これにより、ディスプレイ21に“E”の文字が表示される。
【0037】
このようにして、ユーザは、全てのアルファベットについて、指をキー111に触れる1回の動作で、1文字を入力することが可能である。図7の例であれば、4回だけ指をキー111に触れる操作で、“FINE”という4文字の単語を入力することが可能である。たとえば、従来の携帯電話機で用いられている入力インタフェースでは、1つのキーに3つの文字が割り当てられている場合、文字によっては、そのキーを2度あるいは3度操作する必要があった。もし“FINE”という単語を入力しようとすると、“F”の入力のために3回、“I”の入力のために3回、“N”の入力のために2回、“E”の入力のために2回、合計10回のキー操作が必要であった。本実施の形態のキーボード11であれば、半分の操作で“FINE”を入力可能である。
【0038】
{5.変形例}
図2で示した例では、キー111fには、P,Q,R,Sの4つの文字、キー111hには、W,X,Y,Zの4つの文字が割り当てられている。この割り当て方法は、現在の携帯電話機で利用されている一般的な割り当て方法をそのまま用いたからである。この場合、“S”の文字、あるいは、“Z”の文字を入力するためには、小指を利用する必要がある。そこで、各キーに3文字までを割り当てるようにしてもよい。これであれば、人差し指、中指、薬指の3指を使用して、アルファベットを入力することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】携帯電話機の外観図である。
【図2】キーボード部分の拡大図である。
【図3】携帯電話機のブロック図である。
【図4】指紋情報記憶部の登録内容を示す図である。
【図5】文字データベースの登録内容を示す図である。
【図6】指紋情報の登録方法を示す図である。
【図7】文字入力の操作例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 携帯電話機
11 キーボード
21 ディスプレイ
111 キー
111a〜111h (アルファベット用)キー
112a〜112h 指紋撮像部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキーと、
各キーにより入力された文字を特定するキー入力判定部と、
を備え、
各キーは、
各キーの表面に触れている指から指紋情報を取得する指紋取得部、
を含み、
前記キー入力判定部は、
指紋情報と指種別とを対応付けて記憶する記憶部と、
キー種別および指種別との組み合わせと文字とを対応付けて登録する文字登録部と、
各キーに対する指の接触に応答して、指が触れられているキー種別を特定するとともに、前記指紋取得部により取得した指紋情報から指種別を特定し、特定されたキー種別および指種別に基づいて前記文字登録部において登録されている文字を特定する文字特定部と、
を含むことを特徴とする指認識キーボード。
【請求項2】
請求項1に記載の指認識キーボードにおいて、
各キーには、複数の文字が対応付けられていることを特徴とする指認識キーボード。
【請求項3】
複数のキーと、
各キーにより入力された文字を特定するキー入力判定部と、
前記キー入力判定部で特定された文字を表示するディスプレイと、
を備え、
各キーは、
各キーの表面に触れている指から指紋情報を取得する指紋取得部、
を含み、
前記キー入力判定部は、
指紋情報と指種別とを対応付けて記憶する記憶部と、
キー種別および指種別との組み合わせと文字とを対応付けて登録する文字登録部と、
各キーに対する指の接触に応答して、指が触れられているキー種別を特定するとともに、前記指紋取得部により取得した指紋情報から指種別を特定し、特定されたキー種別および指種別に基づいて前記文字登録部において登録されている文字を特定する文字特定部と、
を含むことを特徴とする携帯端末。
【請求項4】
請求項3に記載の携帯端末において、
各キーには、複数の文字が対応付けられていることを特徴とする携帯端末。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の携帯端末において、
前記携帯端末は、携帯電話機を含むことを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−146080(P2009−146080A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321525(P2007−321525)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】