振動アクチュエータ
【課題】本発明は、ケースにスプリングを確実に溶接させるようにした振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】振動アクチュエータ1では、ケース2の上ケース部11のスプリング着座壁部11aに、スプリング17の一部を外部に露出させるレーザ溶接孔26を形成させている。このようなレーザ溶接孔26を採用すると、レーザ溶接孔26から露出したスプリング17の一部を狙ってレーザ光を照射させることで、上ケース部11とスプリング17との間に隙間があったとしても、上ケース部11のスプリング着座壁部11aとスプリング17とをレーザ光で確実に溶接させることができる。しかも、振動アクチュエータ1の検査において、溶接の良/不良を外部から容易に判断することができ、従来のように、スプリングとケースとの接合状態を外側から確認できないような事態も回避させている。
【解決手段】振動アクチュエータ1では、ケース2の上ケース部11のスプリング着座壁部11aに、スプリング17の一部を外部に露出させるレーザ溶接孔26を形成させている。このようなレーザ溶接孔26を採用すると、レーザ溶接孔26から露出したスプリング17の一部を狙ってレーザ光を照射させることで、上ケース部11とスプリング17との間に隙間があったとしても、上ケース部11のスプリング着座壁部11aとスプリング17とをレーザ光で確実に溶接させることができる。しかも、振動アクチュエータ1の検査において、溶接の良/不良を外部から容易に判断することができ、従来のように、スプリングとケースとの接合状態を外側から確認できないような事態も回避させている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの携帯無線装置の着信を利用者に知らせるための振動発生源や、タッチパネルの操作感触や遊技機の臨場感を指や手に伝えるための振動発生源などに利用される小型の振動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2010−104864号公報がある。この公報に記載された振動アクチュエータでは、扁平な円筒状ケース内には、円環状のウエイトが収容され、このウエイトの内周面に円環状のマグネットが固定されている。ケースの中央に固定された支柱には、マグネットの内周面に対面するようにコイルが固定されている。さらに、ケース内には、ウエイトを挟むようにして円環状の板バネが収容され、この板バネの一端は、ケースにスポット溶接され、ケースに固定された板バネによって、ケース内でウエイトが保持されている。そして、コイルに所定の周波数の交番電流を流すことで、ケース内でウエイトをリニアに振動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−104864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエイトを保持するための板バネをケースにスポット溶接させるためには、レーザ光によってケース及び板バネを溶融させて両部材を接合することになる。しかしながら、板バネとケースとの間で隙間が発生している場合、この部分にケース側からレーザ光が照射されると、板バネが溶融しないために板バネとケースとが確実に溶接されない虞があり、ケースから板バネが外れ易くなって振動アクチュエータの耐久性に影響を与えるといった問題点があった。
【0005】
本発明は、ケースにスプリングを確実に溶接させるようにした振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ケース内に配置されたマグネットと、
ケース内に配置されてマグネットを駆動させるコイルと、
ケースのスプリング着座壁部とマグネットの間に配置され、ケースのスプリング着座壁部に当接して、マグネットを振動軸線方向に付勢するスプリングと、を備え、
ケースのスプリング着座壁部には、スプリングの一部を外部に露出させるレーザ溶接孔が形成されていることを特徴とする。
【0007】
振動アクチュエータにおいては、ケースとスプリングとをレーザ溶接するにあたっては、ケースのスプリング着座壁部とスプリングとの間に隙間が無いことが望ましいが、各部品の製造誤差によって、隙間が発生する虞が高く、特に小型の振動アクチュエータの場合、各部品が非常に小さく、寸法管理が非常に困難であると同時に、寸法精度の向上に限界があり、部品間の寸法のバラツキによってケースとスプリングとの間に隙間が発生し易い。そこで、本発明に係る振動アクチュエータでは、ケースのスプリング着座壁部に、スプリングの一部を外部に露出させるレーザ溶接孔を形成させている。このようなレーザ溶接孔を採用すると、レーザ溶接孔から露出したスプリングの一部を狙ってレーザ光を照射させることで、ケースの一部とスプリングとをレーザ光で確実に溶接させることができる。しかも、振動アクチュエータの検査において、溶接の良/不良を外部から容易に判断することができ、従来のように、スプリングとケースとの接合状態を外側から確認できないような事態も回避させている。
【0008】
また、スプリングには、レーザ溶接孔内に挿入される突起部が形成されていると好適である。
スプリングの突起部をレーザ溶接孔内に挿入させることで、スプリングの溶接箇所をレーザ溶接孔に確実に合致させることができる。このように、振動アクチュエータの組立て時にスプリングの溶接箇所の位置ズレを防止し、さらに、突起部によって、レーザ溶接の容易性や溶接面積の拡大化をも図ることができ、小型の振動アクチュエータには特に有益である。
【0009】
また、スプリングは、ケースのスプリング着座壁部に当接する第1リング部と、マグネットを有する可動子に当接する第2リング部と、第2リング部と第1リング部との間を連結する板バネ部と、を有し、第1リング部には、板バネ部と第1リング部との連結部分が複数箇所設けられ、連結部分の間で、第1リング部には、溶接用の拡張部が形成されていると好適である。
このような構成を採用すると、板バネ部と第1リング部との連結部分から、溶接箇所となる拡張部を離すことができるので、溶接時の熱によって板バネ部のバネ特性が変化し難くなり、板バネ部への悪影響を抑制することができる。
【0010】
また、拡張部にはレーザ溶接孔内に挿入される突起部が形成されていると好適である。
拡張部の採用によって、突起部の成形が困難な小さなスプリングであっても容易に突起部を形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケースにスプリングを確実に溶接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る振動アクチュエータの第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1の振動アクチュエータを別の角度から見た分解斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る振動アクチュエータの断面図である。
【図4】第1実施形態に係る振動アクチュエータに適用されるスプリングを示す斜視図である。
【図5】上ケース部を外して上側スプリングを露出させた状態を示す斜視図である。
【図6】振動アクチュエータを上方から見た斜視図である。
【図7】下ケース部を外して下側スプリングを露出させた状態を示す斜視図である。
【図8】振動アクチュエータを下方から見た斜視図である。
【図9】第1実施形態に係る振動アクチュエータに適用する他のスプリングを示す斜視図である。
【図10】本発明に係る振動アクチュエータの第2実施形態を示す斜視図である。
【図11】図10の振動アクチュエータを別の角度から見た斜視図である。
【図12】第2実施形態に係る振動アクチュエータの断面図である。
【図13】第2実施形態に係る振動アクチュエータに適用されるスプリングを示す斜視図である。
【図14】第2実施形態に係る振動アクチュエータに適用される他のスプリングを示す斜視図である。
【図15】本発明に係る振動アクチュエータの第3実施形態を示す斜視図である。
【図16】図15の振動アクチュエータを別の角度から見た斜視図である。
【図17】第3実施形態に係る振動アクチュエータの断面図である。
【図18】第3実施形態に係る振動アクチュエータに適用されるスプリングを示す斜視図である。
【図19】第3実施形態に係る振動アクチュエータに適用される他のスプリングを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る振動アクチュエータの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、種々の実施形態において、同一又は同等な構成部分には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1〜図3に示すように、小型の振動アクチュエータ1は、携帯通信機器(例えば携帯電話)に内蔵されて、呼び出し機能の振動発生源として利用され、直径約10mm、厚さ約3mmのコイン型になっている。
【0015】
振動アクチュエータ1のケース2は、非磁性材料(例えばステンレス)からなるカップ状の上ケース部11と、上ケース部11の開放側を閉鎖するために、非磁性材料(例えばステンレス)で円板状に形成された下ケース部12とからなり、上ケース部11の円形の開放端は、下ケース部12に溶接されている。
【0016】
ケース2内には、円柱状のマグネット13が収容され、マグネット13の下側の平面部には、板状のヨーク14が接着剤によって固定され、マグネット13の上側の平面部には、円筒カップ状のヨーク16が接着剤によって固定されている。
【0017】
ヨーク16の周壁16bには、ドーナツ状の分銅15が接着剤によって固定される。これら、マグネット13、ヨーク14,16、分銅15によって可動子を構成する。ヨーク16の閉鎖壁16aには、リング状の板バネをなす上側スプリング17が溶接によって固定され、ヨーク16の周壁16bの開放側端部16cには、リング状の板バネをなす下側スプリング18が溶接によって固定されている。
【0018】
マグネット13を包囲するように、フレキシブル回路基板19に円筒状のコイル20が固定され、このフレキシブル回路基板19は、下ケース部12上に接着剤等により固定されている。そして、フレキシブル回路基板19から径方向に延在する延長部19bには、給電端子19aが設けられると共に、下ケース部12に設けられた突き出し片12bに固定されている。
【0019】
図4に示すように、上側スプリング17は、上ケース部11に設けられた平板状のスプリング着座壁部11aに当接する外側リング部(第1リング部)21と、筒状のヨーク16の閉鎖壁16aに当接する内側リング部(第2リング部)22と、内側リング部22と外側リング部21との間を連結する板バネ部23と、を有している。
【0020】
円弧状の板バネ部23は、内側リング部22と外側リング部21との間で3本設けられ、振動軸線L方向で上下に位置ズレして配置された外側リング部21と内側リング部22とを連結させている。各板バネ部23は、外側リング部21で径方向内方に向かって突出する連結用の第1の拡張部21aから、内側リング部22で径方向外方に向かって突出する連結用の第2の拡張部22aまで延在している。
【0021】
外側リング部21には、板バネ部23と外側リング部21との連結部分が等間隔で3箇所設けられており、連結部分の間、例えば隣接する第1の拡張部21aの間の中央で、外側リング部21には、径方向内方に向かって突出する溶接用の拡張部21bが形成されている。そして、各拡張部21bの遊端には、スプリング着座壁部11aに向かって振動軸線L方向に折り曲げられた爪状の突起部24が形成されている。このようにして、板バネ部23と外側リング部21との連結部分から、溶接箇所となる拡張部21bが離されているので、溶接時の熱によって板バネ部23のバネ特性が変化し難くなり、板バネ部23への悪影響を抑制することができる。また、拡張部21bの採用によって、小さな上側スプリング17でも容易に突起部24を形成することができる。
【0022】
図5に示すように、これら爪状の突起部24に対応して、上ケース部11のスプリング着座壁部11aには、矩形のレーザ溶接孔26が3箇所に形成されている。そして、下ケース部12に上ケース部11を合わせることで、図6に示すように、各レーザ溶接孔26から突起部24の頂部が露出させられる。
【0023】
このように、上側スプリング17の突起部24をレーザ溶接孔26内に挿入させることで、振動アクチュエータ1の組立て時に、上側スプリング17の溶接箇所をレーザ溶接孔26に確実に合致させ、上側スプリング17の位置ズレを防止する。さらに、突起部24によって、レーザ溶接の容易性や溶接面積の拡大化をも図ることができ、小型の振動アクチュエータ1には特に有益である。
【0024】
さらに、レーザ溶接孔26を採用した場合、レーザ溶接孔26内に挿入された突起部24を狙ってレーザ光を照射させると、上ケース部11と拡張部21bとの間に隙間があったとしても、レーザ光で溶融した突起部24と上ケース部11の一部とを確実に溶接させることができる。しかも、振動アクチュエータ1の検査において、溶接の良/不良を外部から容易に判断することができ、従来のように、スプリングとケースとの接合状態を外側から確認できないような事態も回避させている。
【0025】
また、内側リング部22には、板バネ部23と内側リング部22との連結部分が3箇所設けられており、連結部分の間、例えば隣接する第2の拡張部22aの間の中央で、内側リング部22には、径方向外側に向かって延在する溶接用の拡張部22bが形成されている。この溶接用の拡張部22bとヨーク16の閉鎖壁16aとがレーザ溶接される。このように、板バネ部23と内側リング部22との連結部分から、溶接箇所となる拡張部22bは離されているので、溶接時の熱によって板バネ部23のバネ特性が変化し難くなり、板バネ部23への悪影響を抑制することができる。
【0026】
このように、小型の振動アクチュエータ1においては、内側リング部22や外側リング部21の幅は、1mmにも満たず、溶接時の熱の影響を非常に受け易いので、上側スプリング17に溶接用の拡張部21b,22bを設けることは、バネ特性の変化させない対策として非常に効果的である。
【0027】
図7及び図8に示すように、下ケース部12と下側スプリング18との溶接も、前述した上ケース部11と上側スプリング17との溶接と同様であるので、その説明は省略し、同一の符号を付す。なお、上側スプリング17と下側スプリング18とは、部品の共有化が図られている。そして、下側スプリング18の内側リング部22における溶接用の拡張部22bは、ヨーク16の周壁16bの開放側端部16cにレーザ溶接によって固定され、下ケース部12のスプリング着座壁部12aに形成されたレーザ溶接孔26内に下側スプリング18の突起部24が挿入された後、レーザ溶接が施工される。
【0028】
図9に示すように、他の上側及び下側スプリング17A,18Aとして、外側リング部21の連結用の第1の拡張部21aの外側に爪状の突起部24Aを形成してもよい。
【0029】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0030】
[第2の実施形態]
図10〜図13に示すように、振動アクチュエータ30において、上側及び下側スプリング17B,18Bには、外側リング部21の溶接用の拡張部21bに円筒状の突起部24Bが形成されている。さらに、これら円筒状の突起部24Bを嵌合させるために、上ケース部11のスプリング着座壁部11aには、円形のレーザ溶接孔26Bが3箇所に形成されている。そして、下ケース部12に上ケース部11を合わせることで、図10に示すように、各レーザ溶接孔26Bから突起部24Bの頂部が露出させられる。
【0031】
このような突起部24Bは、レーザ溶接孔26Bを塞ぐように上ケース部11から露出させられており、レーザ溶接孔26B内に挿入された突起部24Bとスプリング着座壁部11aとの境目を狙ってレーザ光が照射される。この場合、上ケース11と拡張部21bとの間に隙間があったとしても、レーザ光で溶融した突起部24Bと上ケース11の一部とを確実に溶接させることができる。しかも、溶接箇所は、外部から観察し易く、振動アクチュエータ30の検査において、溶接の良/不良を外部から極めて容易に判断することができる。
【0032】
図14に示すように、他の上側及び下側スプリング17C,18Cとして、外側リング部21の連結用の第1の拡張部21aに円筒状の突起部24Cを形成してもよい。
【0033】
[第3の実施形態]
図15〜図18に示すように、振動アクチュエータ40において、上側及び下側スプリング17D,18Dには、溶接用の突起部が形成されていない。また、上ケース部11のスプリング着座壁部11aには、溶接用の拡張部21bに対応した位置に円形のレーザ溶接孔26Dが3箇所に形成されている。そして、下ケース部12に上ケース部11を合わせることで、図15に示すように、各レーザ溶接孔26D内から溶接用の拡張部21bの一部が露出させられている。
【0034】
この場合、レーザ溶接孔26Dを形成する壁面と溶接用の拡張部21bとの境目を狙ってレーザ光が照射されて溶接が確実にできる。そして、その場合の溶接箇所は、レーザ溶接孔26D内を覗くことで、溶接の良/不良を外部から判断することができる。
【0035】
図19に示すように、他の上側及び下側スプリング17E,18Eとして、外側リング部21には、隣接する拡張部21a間に溶接用の拡張部が形成されていない。そして、連結用の拡張部21aを溶接用として利用し、この拡張部21aがレーザ溶接孔26Dに位置合わせされる。
【0036】
前述の第1〜第3の実施形態において、外側リング部(第2リング部)21が可動子に当接し、内側リング部(第1リング部)22がスプリング着座壁部11a,12aに当接してもよい。この場合、突起部24,24A,24B,24Cは内側リング部(第1リング部)22に設けられ、外側リング部21と分銅15とが接着剤により固定されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1,30,40…振動アクチュエータ、2…ケース、11…上ケース部、11a…スプリング着座壁部、12…下ケース部、12a…スプリング着座壁部、13…マグネット、16…ヨーク、17,18,17A〜17E,18A〜18E…スプリング、20…コイル、21…外側リング部(第1又は第2リング部)、21a,21b…拡張部、22…内側リング部(第1又は第2リング部)、23…板バネ部、24,24A,24B,24C…突起部、26,26B,26D…レーザ溶接孔、L…振動軸線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの携帯無線装置の着信を利用者に知らせるための振動発生源や、タッチパネルの操作感触や遊技機の臨場感を指や手に伝えるための振動発生源などに利用される小型の振動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2010−104864号公報がある。この公報に記載された振動アクチュエータでは、扁平な円筒状ケース内には、円環状のウエイトが収容され、このウエイトの内周面に円環状のマグネットが固定されている。ケースの中央に固定された支柱には、マグネットの内周面に対面するようにコイルが固定されている。さらに、ケース内には、ウエイトを挟むようにして円環状の板バネが収容され、この板バネの一端は、ケースにスポット溶接され、ケースに固定された板バネによって、ケース内でウエイトが保持されている。そして、コイルに所定の周波数の交番電流を流すことで、ケース内でウエイトをリニアに振動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−104864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエイトを保持するための板バネをケースにスポット溶接させるためには、レーザ光によってケース及び板バネを溶融させて両部材を接合することになる。しかしながら、板バネとケースとの間で隙間が発生している場合、この部分にケース側からレーザ光が照射されると、板バネが溶融しないために板バネとケースとが確実に溶接されない虞があり、ケースから板バネが外れ易くなって振動アクチュエータの耐久性に影響を与えるといった問題点があった。
【0005】
本発明は、ケースにスプリングを確実に溶接させるようにした振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ケース内に配置されたマグネットと、
ケース内に配置されてマグネットを駆動させるコイルと、
ケースのスプリング着座壁部とマグネットの間に配置され、ケースのスプリング着座壁部に当接して、マグネットを振動軸線方向に付勢するスプリングと、を備え、
ケースのスプリング着座壁部には、スプリングの一部を外部に露出させるレーザ溶接孔が形成されていることを特徴とする。
【0007】
振動アクチュエータにおいては、ケースとスプリングとをレーザ溶接するにあたっては、ケースのスプリング着座壁部とスプリングとの間に隙間が無いことが望ましいが、各部品の製造誤差によって、隙間が発生する虞が高く、特に小型の振動アクチュエータの場合、各部品が非常に小さく、寸法管理が非常に困難であると同時に、寸法精度の向上に限界があり、部品間の寸法のバラツキによってケースとスプリングとの間に隙間が発生し易い。そこで、本発明に係る振動アクチュエータでは、ケースのスプリング着座壁部に、スプリングの一部を外部に露出させるレーザ溶接孔を形成させている。このようなレーザ溶接孔を採用すると、レーザ溶接孔から露出したスプリングの一部を狙ってレーザ光を照射させることで、ケースの一部とスプリングとをレーザ光で確実に溶接させることができる。しかも、振動アクチュエータの検査において、溶接の良/不良を外部から容易に判断することができ、従来のように、スプリングとケースとの接合状態を外側から確認できないような事態も回避させている。
【0008】
また、スプリングには、レーザ溶接孔内に挿入される突起部が形成されていると好適である。
スプリングの突起部をレーザ溶接孔内に挿入させることで、スプリングの溶接箇所をレーザ溶接孔に確実に合致させることができる。このように、振動アクチュエータの組立て時にスプリングの溶接箇所の位置ズレを防止し、さらに、突起部によって、レーザ溶接の容易性や溶接面積の拡大化をも図ることができ、小型の振動アクチュエータには特に有益である。
【0009】
また、スプリングは、ケースのスプリング着座壁部に当接する第1リング部と、マグネットを有する可動子に当接する第2リング部と、第2リング部と第1リング部との間を連結する板バネ部と、を有し、第1リング部には、板バネ部と第1リング部との連結部分が複数箇所設けられ、連結部分の間で、第1リング部には、溶接用の拡張部が形成されていると好適である。
このような構成を採用すると、板バネ部と第1リング部との連結部分から、溶接箇所となる拡張部を離すことができるので、溶接時の熱によって板バネ部のバネ特性が変化し難くなり、板バネ部への悪影響を抑制することができる。
【0010】
また、拡張部にはレーザ溶接孔内に挿入される突起部が形成されていると好適である。
拡張部の採用によって、突起部の成形が困難な小さなスプリングであっても容易に突起部を形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケースにスプリングを確実に溶接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る振動アクチュエータの第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1の振動アクチュエータを別の角度から見た分解斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る振動アクチュエータの断面図である。
【図4】第1実施形態に係る振動アクチュエータに適用されるスプリングを示す斜視図である。
【図5】上ケース部を外して上側スプリングを露出させた状態を示す斜視図である。
【図6】振動アクチュエータを上方から見た斜視図である。
【図7】下ケース部を外して下側スプリングを露出させた状態を示す斜視図である。
【図8】振動アクチュエータを下方から見た斜視図である。
【図9】第1実施形態に係る振動アクチュエータに適用する他のスプリングを示す斜視図である。
【図10】本発明に係る振動アクチュエータの第2実施形態を示す斜視図である。
【図11】図10の振動アクチュエータを別の角度から見た斜視図である。
【図12】第2実施形態に係る振動アクチュエータの断面図である。
【図13】第2実施形態に係る振動アクチュエータに適用されるスプリングを示す斜視図である。
【図14】第2実施形態に係る振動アクチュエータに適用される他のスプリングを示す斜視図である。
【図15】本発明に係る振動アクチュエータの第3実施形態を示す斜視図である。
【図16】図15の振動アクチュエータを別の角度から見た斜視図である。
【図17】第3実施形態に係る振動アクチュエータの断面図である。
【図18】第3実施形態に係る振動アクチュエータに適用されるスプリングを示す斜視図である。
【図19】第3実施形態に係る振動アクチュエータに適用される他のスプリングを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る振動アクチュエータの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、種々の実施形態において、同一又は同等な構成部分には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1〜図3に示すように、小型の振動アクチュエータ1は、携帯通信機器(例えば携帯電話)に内蔵されて、呼び出し機能の振動発生源として利用され、直径約10mm、厚さ約3mmのコイン型になっている。
【0015】
振動アクチュエータ1のケース2は、非磁性材料(例えばステンレス)からなるカップ状の上ケース部11と、上ケース部11の開放側を閉鎖するために、非磁性材料(例えばステンレス)で円板状に形成された下ケース部12とからなり、上ケース部11の円形の開放端は、下ケース部12に溶接されている。
【0016】
ケース2内には、円柱状のマグネット13が収容され、マグネット13の下側の平面部には、板状のヨーク14が接着剤によって固定され、マグネット13の上側の平面部には、円筒カップ状のヨーク16が接着剤によって固定されている。
【0017】
ヨーク16の周壁16bには、ドーナツ状の分銅15が接着剤によって固定される。これら、マグネット13、ヨーク14,16、分銅15によって可動子を構成する。ヨーク16の閉鎖壁16aには、リング状の板バネをなす上側スプリング17が溶接によって固定され、ヨーク16の周壁16bの開放側端部16cには、リング状の板バネをなす下側スプリング18が溶接によって固定されている。
【0018】
マグネット13を包囲するように、フレキシブル回路基板19に円筒状のコイル20が固定され、このフレキシブル回路基板19は、下ケース部12上に接着剤等により固定されている。そして、フレキシブル回路基板19から径方向に延在する延長部19bには、給電端子19aが設けられると共に、下ケース部12に設けられた突き出し片12bに固定されている。
【0019】
図4に示すように、上側スプリング17は、上ケース部11に設けられた平板状のスプリング着座壁部11aに当接する外側リング部(第1リング部)21と、筒状のヨーク16の閉鎖壁16aに当接する内側リング部(第2リング部)22と、内側リング部22と外側リング部21との間を連結する板バネ部23と、を有している。
【0020】
円弧状の板バネ部23は、内側リング部22と外側リング部21との間で3本設けられ、振動軸線L方向で上下に位置ズレして配置された外側リング部21と内側リング部22とを連結させている。各板バネ部23は、外側リング部21で径方向内方に向かって突出する連結用の第1の拡張部21aから、内側リング部22で径方向外方に向かって突出する連結用の第2の拡張部22aまで延在している。
【0021】
外側リング部21には、板バネ部23と外側リング部21との連結部分が等間隔で3箇所設けられており、連結部分の間、例えば隣接する第1の拡張部21aの間の中央で、外側リング部21には、径方向内方に向かって突出する溶接用の拡張部21bが形成されている。そして、各拡張部21bの遊端には、スプリング着座壁部11aに向かって振動軸線L方向に折り曲げられた爪状の突起部24が形成されている。このようにして、板バネ部23と外側リング部21との連結部分から、溶接箇所となる拡張部21bが離されているので、溶接時の熱によって板バネ部23のバネ特性が変化し難くなり、板バネ部23への悪影響を抑制することができる。また、拡張部21bの採用によって、小さな上側スプリング17でも容易に突起部24を形成することができる。
【0022】
図5に示すように、これら爪状の突起部24に対応して、上ケース部11のスプリング着座壁部11aには、矩形のレーザ溶接孔26が3箇所に形成されている。そして、下ケース部12に上ケース部11を合わせることで、図6に示すように、各レーザ溶接孔26から突起部24の頂部が露出させられる。
【0023】
このように、上側スプリング17の突起部24をレーザ溶接孔26内に挿入させることで、振動アクチュエータ1の組立て時に、上側スプリング17の溶接箇所をレーザ溶接孔26に確実に合致させ、上側スプリング17の位置ズレを防止する。さらに、突起部24によって、レーザ溶接の容易性や溶接面積の拡大化をも図ることができ、小型の振動アクチュエータ1には特に有益である。
【0024】
さらに、レーザ溶接孔26を採用した場合、レーザ溶接孔26内に挿入された突起部24を狙ってレーザ光を照射させると、上ケース部11と拡張部21bとの間に隙間があったとしても、レーザ光で溶融した突起部24と上ケース部11の一部とを確実に溶接させることができる。しかも、振動アクチュエータ1の検査において、溶接の良/不良を外部から容易に判断することができ、従来のように、スプリングとケースとの接合状態を外側から確認できないような事態も回避させている。
【0025】
また、内側リング部22には、板バネ部23と内側リング部22との連結部分が3箇所設けられており、連結部分の間、例えば隣接する第2の拡張部22aの間の中央で、内側リング部22には、径方向外側に向かって延在する溶接用の拡張部22bが形成されている。この溶接用の拡張部22bとヨーク16の閉鎖壁16aとがレーザ溶接される。このように、板バネ部23と内側リング部22との連結部分から、溶接箇所となる拡張部22bは離されているので、溶接時の熱によって板バネ部23のバネ特性が変化し難くなり、板バネ部23への悪影響を抑制することができる。
【0026】
このように、小型の振動アクチュエータ1においては、内側リング部22や外側リング部21の幅は、1mmにも満たず、溶接時の熱の影響を非常に受け易いので、上側スプリング17に溶接用の拡張部21b,22bを設けることは、バネ特性の変化させない対策として非常に効果的である。
【0027】
図7及び図8に示すように、下ケース部12と下側スプリング18との溶接も、前述した上ケース部11と上側スプリング17との溶接と同様であるので、その説明は省略し、同一の符号を付す。なお、上側スプリング17と下側スプリング18とは、部品の共有化が図られている。そして、下側スプリング18の内側リング部22における溶接用の拡張部22bは、ヨーク16の周壁16bの開放側端部16cにレーザ溶接によって固定され、下ケース部12のスプリング着座壁部12aに形成されたレーザ溶接孔26内に下側スプリング18の突起部24が挿入された後、レーザ溶接が施工される。
【0028】
図9に示すように、他の上側及び下側スプリング17A,18Aとして、外側リング部21の連結用の第1の拡張部21aの外側に爪状の突起部24Aを形成してもよい。
【0029】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0030】
[第2の実施形態]
図10〜図13に示すように、振動アクチュエータ30において、上側及び下側スプリング17B,18Bには、外側リング部21の溶接用の拡張部21bに円筒状の突起部24Bが形成されている。さらに、これら円筒状の突起部24Bを嵌合させるために、上ケース部11のスプリング着座壁部11aには、円形のレーザ溶接孔26Bが3箇所に形成されている。そして、下ケース部12に上ケース部11を合わせることで、図10に示すように、各レーザ溶接孔26Bから突起部24Bの頂部が露出させられる。
【0031】
このような突起部24Bは、レーザ溶接孔26Bを塞ぐように上ケース部11から露出させられており、レーザ溶接孔26B内に挿入された突起部24Bとスプリング着座壁部11aとの境目を狙ってレーザ光が照射される。この場合、上ケース11と拡張部21bとの間に隙間があったとしても、レーザ光で溶融した突起部24Bと上ケース11の一部とを確実に溶接させることができる。しかも、溶接箇所は、外部から観察し易く、振動アクチュエータ30の検査において、溶接の良/不良を外部から極めて容易に判断することができる。
【0032】
図14に示すように、他の上側及び下側スプリング17C,18Cとして、外側リング部21の連結用の第1の拡張部21aに円筒状の突起部24Cを形成してもよい。
【0033】
[第3の実施形態]
図15〜図18に示すように、振動アクチュエータ40において、上側及び下側スプリング17D,18Dには、溶接用の突起部が形成されていない。また、上ケース部11のスプリング着座壁部11aには、溶接用の拡張部21bに対応した位置に円形のレーザ溶接孔26Dが3箇所に形成されている。そして、下ケース部12に上ケース部11を合わせることで、図15に示すように、各レーザ溶接孔26D内から溶接用の拡張部21bの一部が露出させられている。
【0034】
この場合、レーザ溶接孔26Dを形成する壁面と溶接用の拡張部21bとの境目を狙ってレーザ光が照射されて溶接が確実にできる。そして、その場合の溶接箇所は、レーザ溶接孔26D内を覗くことで、溶接の良/不良を外部から判断することができる。
【0035】
図19に示すように、他の上側及び下側スプリング17E,18Eとして、外側リング部21には、隣接する拡張部21a間に溶接用の拡張部が形成されていない。そして、連結用の拡張部21aを溶接用として利用し、この拡張部21aがレーザ溶接孔26Dに位置合わせされる。
【0036】
前述の第1〜第3の実施形態において、外側リング部(第2リング部)21が可動子に当接し、内側リング部(第1リング部)22がスプリング着座壁部11a,12aに当接してもよい。この場合、突起部24,24A,24B,24Cは内側リング部(第1リング部)22に設けられ、外側リング部21と分銅15とが接着剤により固定されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1,30,40…振動アクチュエータ、2…ケース、11…上ケース部、11a…スプリング着座壁部、12…下ケース部、12a…スプリング着座壁部、13…マグネット、16…ヨーク、17,18,17A〜17E,18A〜18E…スプリング、20…コイル、21…外側リング部(第1又は第2リング部)、21a,21b…拡張部、22…内側リング部(第1又は第2リング部)、23…板バネ部、24,24A,24B,24C…突起部、26,26B,26D…レーザ溶接孔、L…振動軸線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に配置されたマグネットと、
前記ケース内に配置されて前記マグネットを駆動させるコイルと、
前記ケースのスプリング着座壁部と前記マグネットの間に配置され、前記ケースの前記スプリング着座壁部に当接して、前記マグネットを振動軸線方向に付勢するスプリングと、を備え、
前記ケースの前記スプリング着座壁部には、前記スプリングの一部を外部に露出させるレーザ溶接孔が形成されていることを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記スプリングには、前記レーザ溶接孔内に挿入される突起部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記スプリングは、前記ケースの前記スプリング着座壁部に当接する第1リング部と、前記マグネットを有する可動子に当接する第2リング部と、前記第2リング部と前記第1リング部との間を連結する板バネ部と、を有し、
前記第1リング部には、前記板バネ部と前記第1リング部との連結部分が複数箇所設けられ、前記連結部分の間で、前記第1リング部には、溶接用の拡張部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記拡張部には前記レーザ溶接孔内に挿入される突起部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の振動アクチュエータ。
【請求項1】
ケース内に配置されたマグネットと、
前記ケース内に配置されて前記マグネットを駆動させるコイルと、
前記ケースのスプリング着座壁部と前記マグネットの間に配置され、前記ケースの前記スプリング着座壁部に当接して、前記マグネットを振動軸線方向に付勢するスプリングと、を備え、
前記ケースの前記スプリング着座壁部には、前記スプリングの一部を外部に露出させるレーザ溶接孔が形成されていることを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記スプリングには、前記レーザ溶接孔内に挿入される突起部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記スプリングは、前記ケースの前記スプリング着座壁部に当接する第1リング部と、前記マグネットを有する可動子に当接する第2リング部と、前記第2リング部と前記第1リング部との間を連結する板バネ部と、を有し、
前記第1リング部には、前記板バネ部と前記第1リング部との連結部分が複数箇所設けられ、前記連結部分の間で、前記第1リング部には、溶接用の拡張部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記拡張部には前記レーザ溶接孔内に挿入される突起部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の振動アクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−71215(P2012−71215A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215790(P2010−215790)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
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