説明

振動ジャイロ

【課題】従来よりも小型で、角速度の検出精度が高い振動ジャイロの提供を図る。
【解決手段】振動ジャイロ50は、蓋板50Aの主面法線方向をZ軸とした直交座標形のY軸に沿って隣り合う2つの駆動質量部13A,13Bの間に検出用固定構造部2A,2Bの支柱部(21)を配置し、駆動質量部13A,13Bと支柱部(21)との間それぞれに検出質量部17A,17Bを配置し、支柱部(21)と検出質量部17A,17Bとの間それぞれに櫛歯電極を配置する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動子を駆動して、その振動方向と直交する方向に作用する力を検出する振動ジャイロに関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の振動ジャイロは、支持基板の主面法線方向をZ軸とした直交座標系におけるX軸を駆動方向として振動子を振動させ、振動ジャイロがZ軸回りに回転することによって振動子の駆動方向と直交するY軸方向に作用するコリオリの力を、検出用固定構造部と振動子との間の電極間隔および電極間容量の変化から検出する。(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
ここで、従来の振動ジャイロの構成例を説明する。
図1(A)は従来の振動ジャイロ101の平面図である。
【0004】
振動ジャイロ101は、蓋板(不図示)、支持板102A、外枠部102B、アンカー103A、サブアンカー103B、支持梁104A、駆動梁104B、駆動質量部105A〜105D、検出梁106、検出質量部107A,107B、検出用固定構造部108A〜108D、および駆動用固定構造部110を備える。
外枠部102Bは、支持板102Aと蓋板(不図示)とに接合される。アンカー103A、サブアンカー103B、支持梁104A、駆動梁104B、駆動質量部105A〜105D、検出梁106、検出質量部107A,107Bは低抵抗シリコン材料(導電性)による一体の振動子を構成し、グランドに接続される。
【0005】
上記振動子を構成する駆動梁104Bは、Y軸方向を長手方向としていて、X軸方向の側面に連結された3本のサブアンカー103Bで支持梁104Aに支持されている。支持梁104Aは、Y軸方向を長手方向としていて、X軸方向の側面に連結された1本のアンカー103Aで外枠部102Bに支持されている。駆動質量部105C,105Dは駆動質量部105A,105Bを挟むように配置され、駆動質量部105A〜105Dは2本の駆動梁104Bの間にそれぞれ連結される。検出質量部107A,107Bは、駆動質量部105A,105Bそれぞれの備える開口内で、検出梁106を介して駆動質量部105A,105Bに連結される。
【0006】
検出用固定構造部108A〜108Dは、検出質量部107A,107Bの備える開口内に、検出質量部107A,107Bから離間して配置され、支持板102Aと蓋板(不図示)とに対して固定される。
駆動用固定構造部110は、支持板102Aと蓋板(不図示)とに対して固定され、駆動電圧が印加されることで、振動子を構成する駆動質量部105C,105Dとの間に静電力が作用する。この静電力によって駆動質量部105A〜105DはX軸に沿った駆動方向で振動し、駆動梁104Bも同方向に変形(撓み振動)する。この状態で振動ジャイロ101がZ軸回りに回転すると、検出質量部107A,107BにY軸に沿った方向のコリオリの力が作用し、検出質量部107A,107Bがその方向に変位する。これにより、検出質量部107A,107Bと検出用固定構造部108A〜108Dとの間の電極間隔および電極間容量が変化する。このとき、検出質量部107A,107Cと検出質量部107B,107Dとでは、X軸方向の振動が逆相になり、コリオリの力が逆方向に作用する。
【0007】
上記構成の振動ジャイロ101では、検出質量部107A,107Bと検出用固定構造部108A〜108Dとの間の電極間容量の変化を検出することにより、コリオリの力および角速度の大きさを検知することが可能になる。
【0008】
この振動ジャイロ101を小型化すると、小型化に伴う特性劣化、例えば感度低下が予想される。感度低下によるSN比の低下を抑えるためには、振動ジャイロに接続する信号増幅回路で検出信号をCV変換(容量電圧変換)し、その直後に検出信号を増幅することが有効である。しかしながら振動ジャイロ101では、CV変換後の検出信号にはX軸方向の駆動振動に伴うY軸方向のブレによるノイズが混入するため、同期検波によって上記ノイズを除去した後に検出信号を増幅する必要がある。
【0009】
図1(B)は従来の振動ジャイロ201の平面図である。
【0010】
振動ジャイロ201は、2つの振動子202A,202Bを連結梁202CでY軸方向に連結した構成である。各振動子202A,202Bは、3つの質量部203A〜203Cを三重に配置していて、外側から一層目の質量部203Aは駆動用であり、アンカー204によりX軸方向にのみ変位自在に支持されるとともに駆動用固定構造部205によりX軸方向に駆動される。二層目の質量部203Bはコリオリの力により変位するものであり、質量部203Aおよび質量部203Cに連結支持されている。三層目の質量部203Cは検出用であり、アンカー206によりY軸方向にのみ変位自在に支持されている。
上記構成の振動ジャイロ201では、二層目の質量部と、三層目の質量部とを別体に形成しているので、二層目の質量部に駆動振動に伴うY軸方向のブレが生じても、三層目の質量部にはそのブレが及ばず、三層目の質量部からはY軸方向のブレに伴うノイズの発生を抑制して検出信号を検出することができる。したがって、振動ジャイロ201ではCV変換直後に検出信号を増幅し、増幅後に同期検波を行ってもSN比の低下を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3870895号公報
【特許文献2】特許第4290987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の振動ジャイロ101では、2つの検出質量部107A,107Bそれぞれの開口内に検出電極と支柱部とかならなる検出用固定構造部108A〜108Dを設けていた。このような構成では、検出用固定構造部108A〜108Dとして設ける支柱部の数と検出電極の数が同数必要であり、このことが振動ジャイロ101のさらなる小型化が難しい理由の一つとなっていた。
【0013】
また従来の振動ジャイロ201は2つの振動子202A,202Bそれぞれの振動を連成させる連結梁202Cを設けて、両者を連結していた。このような構造では小型化が困難であるだけでなく、連結梁202Cによる振動子202A,202Bの形状ばらつきなどで2つの振動子202A,202Bの固有振動数(共振周波数)に差があると、それぞれの振幅に差が生じ、駆動振動時にアンカー206に作用する反力が完全に打ち消しあわないため、残留した反力によりX軸方向の振動が支持板に生じたり、2つの振動子それぞれからの反力が支持板に回転モーメントとして作用したりして、振動ジャイロ201の特性が不安定化することがあった。
【0014】
そこで本発明は、従来よりも小型にでき、振動子から支持板につたわる振動を抑制できる振動ジャイロの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の振動ジャイロは支持板と、駆動質量部、駆動梁、梁支持部および検出質量部を備える振動子と、支柱部および検出電極を備える検出用固定構造部とを備える。駆動質量部は駆動により振動する。駆動梁は、駆動質量部を支持し、駆動質量部から作用する力により撓み振動する。梁支持部は、駆動梁を支持板に固定支持する。検出質量部は、駆動質量部の振動によるコリオリの力により変位自在な状態で、前記駆動質量部に支持される。支柱部は、支持板に固定支持される。検出電極は、支柱部に固定支持され前記検出質量部と隣り合って電極間容量を持つ。このような構成の振動ジャイロにおいて、駆動質量部の振動方向に直交する方向に隣り合う2つの駆動質量部の間に支柱部を配置し、隣り合う駆動質量部と支柱部との間それぞれに検出質量部を配置し、隣り合う検出質量部と支柱部との間それぞれに検出電極を配置する。
【0016】
従来構成の固定構造部では支柱部と検出電極とが一つずつ組を成していたのに対して、この構成では1つの支柱部と2つの検出電極とが組を成すことになる。したがって、支柱部の数が従来よりも少なくでき、支柱部が要していた支持板面積を削減して振動ジャイロ全体を小型化できる。
また、複数の駆動質量部を駆動梁によって一体に支持する構成なので、2つの振動子を連結梁でつなぐ構成のように基板に振動が生じることがなく、振動ジャイロの特性を安定化できる。
【0017】
この発明の前記梁支持部は、前記振動方向に隣り合う前記駆動梁と前記支柱部との間に配置すると好適である。
【0018】
この構成により、従来は駆動梁と支柱部との間ではなく外側に配置されていた梁支持部の配置スペースを削減でき、振動ジャイロをさらに小型化できる。
【0019】
この発明の振動ジャイロは、前記検出質量部を前記支持板に対して前記振動方向に垂直な方向にのみ変位自在な状態に支持する内側支持部、および、駆動質量部の振動により作用するコリオリの力に対して変位自在な状態で、前記検出質量部と前記駆動質量部との間に連結される連結質量部、を備えると好適である。
【0020】
この構成では、検出質量部が駆動振動によってY軸方向にブレることがなくなり、このブレによって生じる容量変化(ノイズ)が低減でき、小型かつSN比の高い振動ジャイロを構成することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、1つの支柱部と2つの検出電極とを組としてなる固定構造部を設けることにより、従来構成よりも支柱部の数を少なくし、支柱部が要していた支持板面積を削減して振動ジャイロを小型化できる。また、複数の駆動質量部を駆動梁によって一体に支持する構成なので、2つの振動子を連結梁でつなぐ構成のように基板に振動が生じることがなく、振動ジャイロの特性を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の振動ジャイロの構成を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る振動ジャイロの構成を説明する図である。
【図3】図2に示す振動ジャイロの動作を説明する図である。
【図4】図2に示す振動ジャイロの部分拡大図である。
【図5】図2に示す振動ジャイロの駆動検出回路の回路構成を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る振動ジャイロの構成を説明する図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る振動ジャイロの構成を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下の説明では、振動ジャイロの回転検出軸を直交座標系のZ軸とし、駆動方向を直交座標系のX軸方向、コリオリの力の作用方向を直交座標系のY軸方向とする。
【0024】
図2(A)は本発明の実施形態に係る振動ジャイロ50の構成を示す平面図、図2(B)は振動ジャイロ50を実装基板に実装した状態での振動子の中心を通るX軸に沿った断面図である。
【0025】
振動ジャイロ50は、段面視して蓋板50A、低抵抗シリコン板50B、底板50CをZ軸に沿って順に積層した構成である。低抵抗シリコン板50Bは、分割してなる以下の構成、振動子1、検出用固定構造部2A,2B、駆動用固定構造部3A,3B、モニタ用固定構造部4A,4B、および外枠部5を備える。蓋板50Aと外枠部5と底板50Cとは、内部空間を備える筐体を構成する。この筐体は、底板50Cの外側主面で実装基板150に接合し、蓋板50Aの外側主面に形成した外部接続端子(不図示)を実装基板150の実装電極(不図示)にワイヤボンディングする構成である。
【0026】
振動子1は局所的に蓋板50Aおよび底板50Cに対して固定していて、X軸方向に変位自在な領域として駆動質量部13A〜13Dを備え、Y軸方向に変位自在な領域として検出質量部17A,17Bを備える。
検出用固定構造部2A,2Bは、検出質量部17A,17Bとの間の電極間容量を検出して振動子1に作用するコリオリの力を検知するために設けていて、振動子1の備える中央の開口内部に配置し、全体が変形しないように蓋板50Aおよび底板50Cに固定している。
駆動用固定構造部3A,3Bは、振動子1の備えるY軸両端の開口内部に配置して全体が変形しないように蓋板50Aおよび底板50Cに固定している。この駆動用固定構造部3A,3Bに駆動電圧を印加することで、駆動用固定構造部3A,3Bと駆動質量部13A〜13Dとの間の静電力が変動し、駆動質量部13A〜13DにX軸方向の振動が生じる。
モニタ用固定構造部4A,4Bは振動子1を挟むY軸両外側に配置して全体が変形しないように蓋板50Aおよび底板50Cに固定している。このモニタ用固定構造部4A,4Bは、駆動質量部13C,13Dとの間の電極間容量を検出して駆動用固定構造部3A,3Bに印加する駆動電圧を調整し、振動子1の振動を適切なものにするために設けている。
【0027】
図3は、振動子1の駆動による変形を説明する図である。前述の駆動用固定構造部3A,3B(不図示)と駆動質量部13A〜13Dとの間の静電力が変動することにより、駆動質量部13A〜13DはX軸方向に振動する。その際、駆動質量部13A,13Dと駆動質量部13B,13Cとでは駆動方向が逆になるようにしている。この状態で振動子1にZ軸回りの角速度が作用すると、検出質量部17A,17Bにコリオリの力が作用する。駆動質量部13A,13Dと駆動質量部13B,13Cとでは駆動方向が逆なので、コリオリの力も逆方向に作用し、検出質量部17A,17BはY軸方向で互いに逆向きに変位することになる。
【0028】
再び図2に戻り、振動ジャイロ50の詳細構造について説明していく。
振動子1は、一体に成形された以下の構成、支持アンカー10A〜10F、駆動梁12A,12B、駆動質量部13A〜13D、駆動櫛歯部14A〜14D(一部不図示)、検出梁15A,15B、検出質量部17A,17B、検出櫛歯部18A,18B(一部不図示)、およびモニタ櫛歯部19A,19B(一部不図示)を備える。
【0029】
駆動櫛歯部14A〜14Dは、それぞれ駆動質量部13A〜13Dに付設している。図4(A)は駆動櫛歯部14A,14C近傍の拡大平面図である。なお駆動櫛歯部14B,14Dは駆動櫛歯部14A,14Cと同じ構成である。
駆動櫛歯部14Aは、駆動質量部13AからY軸正方向に突出する線状部位の一方側面からX軸に沿って櫛歯状に突出する櫛歯電極を備える。駆動櫛歯部14Cは、駆動質量部13CからY軸負方向に突出する線状部位の一方側面からX軸に沿って櫛歯状に突出する櫛歯電極を備える。これら駆動櫛歯部14A,14Cの櫛歯電極は、駆動用固定構造部3Aが備える櫛歯電極33に微小間隔を隔てて対向する。なお、駆動用固定構造部3Aは、蓋板50Aおよび底板50Cに固定される円柱形の支柱部31と、支柱部31に連結された線状部位32と、線状部位32からX軸に沿って櫛歯状に突出する櫛歯電極33とを備える構成であり、駆動用固定構造部3Aは蓋板50Aに設けるビア電極によって外部接続端子に電気的に接続される。このような構成で、駆動櫛歯部14A,14Cと駆動用固定構造部3Aとの間に駆動電圧(バイアス電圧および交流電圧)が印加されると、駆動櫛歯部14A,14Cと駆動用固定構造部3Aとの間の静電力の変動により駆動質量部13A,13CがX軸に沿って振動することになる。
【0030】
再び図2に戻り説明する。駆動質量部13C,13Dは駆動質量部13A,13Bを挟むようにY軸に沿って配列している。駆動質量部13A,13Bは平面視してY軸内側が開口した概略コの字形であり、両腕部をT字形の梁状部を介して駆動梁12A,12Bに連結している。駆動質量部13C,13Dは平面視してX軸方向に長尺な概略線状形であり、X軸両端を駆動梁12A,12BのY軸両端に連結している。
【0031】
駆動梁12A,12Bは、駆動質量部13A〜13Dを挟むX軸両外側に配置している。駆動梁12A,12Bはそれぞれ平面視してY軸方向に長尺な概略線状形であり、これによりX軸方向に変形(撓み振動)可能な構成になっている。また駆動梁12A,12Bは、Y軸方向全長に対して略1/4、略2/4、略3/4の長さとなる位置で、支持アンカー10A〜10Fに連結している。支持アンカー10A〜10Fはそれぞれ平面視して概略ウの字状であり、外枠部5に駆動梁12A,12Bを固定する。なお支持アンカー10A〜10Fは請求項に記載の梁支持部を構成している。
【0032】
上述の構成により、駆動梁12A,12Bにおける支持アンカー10A〜10Fに連結される位置は、駆動梁12A,12BがX軸方向に変形(撓み振動)する際に撓み振動の節(ノード点)となる。そして、駆動質量部13A〜13Dを支持する位置は、撓み振動の腹(アンチノード点)またはその近傍となる。したがって、駆動質量部13A,13DはX軸方向に同相で振動し、駆動質量部13B,13CはX軸方向に駆動質量部13A,13Dとは逆相で振動することになる。
【0033】
検出梁15Aは、平面視して概略T字形であり、一方端を駆動質量部13A,13Bの開口底面の中央に連結し、他方の二端を検出質量部17A,17Bに連結している。検出梁15Bは、平面視してY軸に対して蛇行する概略ミアンダ形であり、一方端を駆動質量部13A,13Bの両腕部の先端付近に連結し、他方端を検出質量部17A,17Bに連結している。
【0034】
検出質量部17A,17Bは、平面視して概略コの字状であり、それぞれのコの字状の開口部が向かい合うように、駆動質量部13A,13Bの開口内に配置し、検出梁15A,15Bに連結している。この検出質量部17A,17BはY軸方向に変位自在となり、X軸方向の変位については駆動質量部13A,13Bに連動することになる。
【0035】
検出櫛歯部18A,18Bは検出質量部17A,17Bの向かい合う開口内に付設している。図4(B)は検出櫛歯部18A近傍の拡大平面図である。なお検出櫛歯部18Bは検出櫛歯部18Aと同じ構成である。
【0036】
検出櫛歯部18Aは、検出質量部17Aの開口内にX軸に沿って櫛歯状に突出する櫛歯電極を備える。この検出櫛歯部18Aの櫛歯電極は、検出用固定構造部2A,2Bが備える櫛歯電極23に微小間隔を隔てて対向する。なお、検出用固定構造部2A,2Bは、蓋板50Aおよび底板50Cに固定支持された支柱部21と、支柱部21に連結された線状部位22と、線状部位22からX軸に沿って櫛歯状に突出する櫛歯電極23(検出電極)とを備える構成である。このような構成で、検出質量部17AがY軸方向に変位すると、検出櫛歯部18Aと検出用固定構造部2A,2Bとの間の電極間容量が変動することになる。
【0037】
モニタ櫛歯部19A,19Bは、図2に示すように駆動質量部13C,13DのY軸両外側に付設している。モニタ櫛歯部19Aの詳細構成は図4(A)に示すように、Y軸に沿って延設した線状部位の側面からX軸に沿って櫛歯状に突出する櫛歯電極を備える。モニタ櫛歯部19A,19Bの櫛歯電極は、モニタ用固定構造部4A,4Bが備える櫛歯電極43に微小間隔を隔てて対向する。なお、モニタ用固定構造部4A,4Bは、蓋板50Aおよび底板50Cに固定支持された支柱部41と、支柱部41に連結された線状部位42と、線状部位42からX軸に沿って櫛歯状に突出する櫛歯電極43とを備える構成である。このような構成で、駆動質量部13C,13DがX軸方向に変位すると、モニタ櫛歯部19A,19Bとモニタ用固定構造部4A,4Bとの間の電極間容量が変動することになる。
【0038】
図5は振動ジャイロ50に接続する駆動検出回路の回路図である。なお、ここでは駆動検出回路をカスタムIC151として構成する例を示す。このカスタムIC151は、図2(B)に示す実装基板150に実装して振動ジャイロ50と一体にモールドし、一体のチップ素子として構成すると好適である。
【0039】
カスタムIC151は、C−V変換回路152、差動アンプ153、同期検波回路154、DCアンプ・ローパスフィルタ回路155、デジタルトリミング回路156、アンプ158、オートゲインコントロール回路159、および位相シフタ・正弦波発生回路160を備える。
C−V変換回路152は振動ジャイロ50の検出用固定構造部2A,2Bそれぞれとモニタ用固定構造部4A,4B(またはモニタ用固定構造部4A,4Bの少なくとも一方)とに接続され、それぞれの持つ電極間容量に応じた電圧信号を出力する。差動アンプ153はC−V変換回路152から入力される2つの電圧信号の差動信号を出力する。C−V変換回路152に接続する検出電極では、振動ジャイロ50にY軸方向の加速度が作用した場合の容量変化を打ち消してZ軸回りの角速度のみ容量変化が生じるので、コリオリの力による信号のみが差動増幅される。同期検波回路154は、位相シフタ・正弦波発生回路160で発生させる正弦波と同期するタイミングで、差動信号から検波を行う。駆動によるX軸方向の振動とコリオリの力によるY軸方向の振動とでは位相が90°相違するので、同期検波を行うことでX軸方向の振動ブレによる大部分の不要信号を除いてY軸方向のコリオリの力による振動を選択的に検出することが可能になる。DCアンプ/ローパスフィルタ回路155は、同期検波回路154の出力する検出信号を増幅するとともに、ノイズ成分をカットする。デジタルトリミング回路156は、検出信号における振動ジャイロ50個別の特性ばらつきを校正して検出信号を出力する。アンプ158はC−V変換回路152から入力される電圧信号(モニタ用固定構造部4A,4Bからの信号)を増幅する。オートゲインコントロール回路159および位相シフタ・正弦波発生回路160は、振動ジャイロ50の振動が適切に持続するように、駆動電圧の位相、振幅を調整して振動ジャイロ50の駆動用固定構造部3A,3Bに出力する。
このような駆動検出回路により、振動ジャイロ50は駆動方向に振動し、振動状態で振動ジャイロ50にZ軸回りの角速度が作用することで、角速度に応じた検出信号が得られることになる。
【0040】
本実施形態の振動ジャイロ50は上述の構成を備え、Y軸に沿って配列した駆動質量部13A,13Bの間に検出質量部17A,17Bを配置し、検出質量部17A,17Bの間に検出用固定構造部2A,2Bを配置し、検出用固定構造部2A,2Bを、一つの支柱部のY軸方向両側に櫛歯電極23を設けた構成とする。このため振動ジャイロ50は、従来構成よりも支柱部21の数を低減して、支持板の面積を削減することが可能になる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態に係る振動ジャイロ70について説明する。図6は振動ジャイロ70の構成を示す平面図である。
【0042】
振動ジャイロ70は、第1の実施形態とは形状が相違する振動子61を備えるが、その他の概略構成は第1の実施形態と同様である。
【0043】
振動子61は、支持アンカー(支持梁)60A〜60D、駆動梁62A,62B、駆動質量部63A〜63D、駆動櫛歯部64A,64B(一部不図示)、検出梁65、検出質量部67A,67B、検出櫛歯部68A,68B(一部不図示)、およびモニタ櫛歯部69A,69B(一部不図示)を備える。
本実施形態は、第1の実施形態の構成とは、モニタ用固定構造部4A,4Bと駆動用固定構造部3A,3Bとの配置が入れ替えてあり、また、支持アンカー(支持梁)60A〜60Dの構造が相違する。
【0044】
支持アンカー60A,60Bは、振動子61が備える中央の開口内に配置して、検出用固定構造部2A,2Bの支柱部とともに支持板に固定している。支持アンカー60C,60Dは、振動子61が備えるY軸両外側の開口内に配置して、モニタ用固定構造部4A,4Bの支柱部とともに支持板に固定している。支持アンカー60A,60Bの可動端は駆動梁62A,62BのY軸方向の中央部分に連結していて、支持アンカー60C,60Dの可動端は駆動梁62A,62BのY軸方向全長に対して1/4および3/4となる位置に連結している。このため、この振動ジャイロ70は、振動子61の外側に支持アンカーを配置する必要がなく、基板面積を低減することが可能になっている。
【0045】
次に、本発明の第3の実施形態に係る振動ジャイロ90について説明する。図7は振動ジャイロ90の構成を示す平面図である。
【0046】
振動ジャイロ90は、前述の実施形態とは形状が相違する振動子81を備えるが、その他の概略構成は前述の実施形態と同様である。
【0047】
振動子81は、支持アンカー(支持梁)80A〜80E、駆動梁82A,82B、駆動質量部83A〜83D、駆動櫛歯部84A,84B(一部不図示)、連結質量部86A,86B、検出質量部87A,87B、検出櫛歯部88A,88B(一部不図示)、およびモニタ櫛歯部89A,89B(一部不図示)を備える。
【0048】
本実施形態では、駆動質量部83A〜83Dと検出質量部87A,87Bとの間を連結質量部86A,86Bで連結し、検出質量部87A,87Bを支持アンカー80E(内側支持部)により支持板に対して固定している点を特徴とする。
【0049】
より詳細に説明すると、連結質量部86A,86BはY軸内側が開口する概略コの字状であり、開口底面を構成するX軸に沿った線状部の両端を概略T字状の梁を介して駆動質量部83A,83Bの開口底面に連結し、Y軸に沿った両腕部の先端をY軸に対して蛇行する概略ミアンダ状の梁を介して駆動質量部83A,83Bの両腕部の先端に連結している。そして、検出質量部87A,87Bは、両腕部の先端をX軸に対して蛇行する概略ミアンダ状の梁を介して連結質量部86A,86BのX軸に沿った線状部に連結し、中央のY軸に沿った線状部の先端を、3つの矩形環状部がY軸に沿って連結された形状の梁を介して支持アンカー80Eに連結している。
【0050】
この構成では、駆動質量部83A〜83DがX軸方向に振動する状態で振動ジャイロ90がZ軸回りに回転すると、Y軸方向のコリオリの力が作用する。駆動質量部83A〜83Dは、X軸方向には変位自在であるがY軸方向の変位が規制されている構成であり、コリオリの力によるY軸方向の振動はほとんど生じない。連結質量部86A,86BはX軸方向、Y軸方向ともに変位自在な構成であり、両方向に振動が生じる。検出質量部87A,87Bは、Y軸方向には変位自在であるがX軸方向の変位が規制されている構成であり、連結質量部86A,86BのY軸方向の振動が梁を介して作用することでY軸方向にのみ振動することになる。このため、X軸方向の駆動振動によって、検出質量部87A,87BがY軸方向にブレることが殆どなくなり、Y軸方向のブレによる不要信号の影響を除いて、振動ジャイロ90に作用するY軸方向のコリオリの力を精度良く検出することが可能になる。
【0051】
なお、上述の各実施形態では、モニタ用固定構造部4A,4Bをいずれも振動モニタ用途に利用する例を示したが、いずれか一方のみを振動モニタ用途に利用し、他方を振動子と同電位にして、支柱部を介してグランド電極に接続するようにして用いてもよい。この場合、振動子と同電位にした固定構造部を介して振動子をグランド電極に接続することでビア電極を別途設ける必要がなくなって支持板面積の低減を進展させられる。振動モニタ用途に利用する固定構造部が一つであっても、振動ジャイロの対称性を保持するために、振動モニタ用途に利用しない他方の固定構造部をあえて形成しておくと好適である。
【符号の説明】
【0052】
1,61,81…振動子
10A〜10D,60A〜60D,80A〜80E…支持アンカー
12A,12B,62A,62B,82A,82B…駆動梁
13A〜13D,63A〜63D,83A〜83D…駆動質量部
14A,14B,64A,64B,84A,84B…駆動櫛歯部
15A〜15D,16A〜16D,65…検出梁
17A,17B,67A,67B,87A,87B…検出質量部
18A,18B,68A,68B,88A,88B…検出櫛歯部
19A,19B,69A,69B,89A,89B…モニタ櫛歯部
2A,2B…検出用固定構造部
3A,3B…駆動用固定構造部
4A,4B…モニタ用固定構造部
21,31,41…支柱部
22,32,42…線状部位
23,33,43…櫛歯電極
5…外枠部
50,70,90…振動ジャイロ
50A…蓋板
50B…低抵抗シリコン板
50C…底板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板と、
駆動により振動する駆動質量部、前記駆動質量部を支持し、前記駆動質量部から作用する力により撓み振動する駆動梁、前記駆動梁を前記支持板に固定支持する梁支持部、および、前記駆動質量部の振動により作用するコリオリの力に対して変位自在な状態で、前記駆動質量部に支持される検出質量部、を備える振動子と、
前記支持板に固定支持される支柱部、および、前記支柱部に固定支持され前記検出質量部と隣り合って電極間容量を持つ検出電極、を備える検出用固定構造部と、を備え、
前記駆動質量部の振動方向に直交する方向に隣り合う2つの前記駆動質量部の間に前記支柱部を配置し、隣り合う前記駆動質量部と前記支柱部との間それぞれに前記検出質量部を配置し、隣り合う前記支柱部と前記検出質量部との間それぞれに前記検出電極を配置した、振動ジャイロ。
【請求項2】
前記梁支持部は、前記振動方向に隣り合う前記駆動梁と前記支柱部との間に配置する、請求項1に記載の振動ジャイロ。
【請求項3】
前記検出質量部を前記支持板に対して前記振動方向に垂直な方向にのみ変位自在な状態に支持する内側支持部、および、
前記駆動質量部の振動により作用するコリオリの力に対して変位自在な状態で、前記検出質量部と前記駆動質量部との間に連結される連結質量部、をさらに備える、請求項1または2に記載の振動ジャイロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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