説明

振動モータ、回転子、回転子のシャフトおよび移動通信端末

【課題】回転体を変更することなく容易に回転体の回転中心を重心から偏心したものとすることができ振動モータを提供する。
【解決手段】振動モータは、回転体20をケーシングから回転自在に支持するシャフト10を備えている。シャフト10は、回転体を貫通する貫通部11と、この貫通部11の両端部から各々屈曲して延び先端に形成された軸支部13をケーシングに軸支される屈曲部12とを有している。2つの軸支部13を通る回転体20の回転中心軸線A1が、貫通部11の軸線Aから所定量オフセットしていることで、容易に回転体20の回転中心O1を重心Gから偏心させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転子を装備したモータに関するものであり、特に回転子の回転中心に対して重心が偏心していることにより振動を発生する振動モータと、この振動モータに搭載される回転子と、その回転子のシャフトと、この振動モータを搭載した移動通信端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえば、移動通信端末、携帯電話器、ポケットベル及びゲーム機器などの報知用機器においては、呼び出し信号を報知用機器の所有者のみに確実に知らせるとともに所有者以外に知られないようにする所謂サイレントコールを装備するものが一般的となっている。そして、このサイレントコールを実現するために、所有者に対し振動をもって呼び出し信号を報知するべく、振動を発生する振動モータを搭載した報知用機器が増えてきている。
【0003】
一方、このような報知用機器は携帯に適するよう小型に作製されており、そして、この小型構造に適するように振動モータにも小型軽量化が求められている。また、携帯電話器の作動用電源は長時間補給することなく使用できるように、消費電流が少ないエネルギー効率のよいものが採用されているが、同じ目的で振動モータも低消費電流高効率なものが求められている。
【0004】
振動モータの振動の大きさは、回転数が同じ場合、回転子(回転体)の質量と回転子の回転中心から重心までの距離の積によって決まる。そのため、従来、回転子(回転体)の形状を半円或いは扇形形状として回転中心から重心までの距離を大きくなるようにし、さらに錘を回転子(回転体)の回転中心からなるべく離れた位置に配設して大きな振動を得ることが一般的となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−271743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような振動モータの振動は、小さすぎると所有者に報知することができないが、反対に大きすぎると所有者に不快感を与えたり機器の損傷の原因になったりする。そのため、適度な大きさに調整されることが必要となる。一方、近年更なる軽量化の要求に応じて錘を排除するものも増えてきた。錘を搭載している振動モータの場合、錘の増減により振動の大きさの調整が可能であるが、錘を搭載してないものの場合、回転子(回転体)の設計変更をしなくてはならず、その調整は容易ではない。
【0007】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、回転体を変更することなく容易に回転中心軸線をオフセットすることができ、これにより容易に回転体の回転中心を重心から偏心したものとすることができ、また、錘を搭載することなく所望の大きさの振動を発生することができる振動モータと、この振動モータに用いられる回転子と、その回転子のシャフトと、この振動モータを搭載した移動通信端末とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一形態に係る振動モータは、内部空間を形成するケーシングと、ケーシング内に収納された回転体と、回転体をケーシングから回転自在に支持するシャフトとを備え、シャフトは、回転体を貫通する貫通部と、この貫通部の両端部から各々屈曲して延び先端に形成された軸支部をケーシングに軸支される屈曲部とを有し、2つの軸支部を通る回転体の回転中心軸線が、貫通部の軸線から所定量オフセットしていることを特徴とする。
【0009】
なお、ここでケーシングとは、回転体を包囲する構造を意味するものであって、必ずしもモータの外殻を形成するものに限られるものではなく、例えば隣接する他の装置のケーシング(外壁)等により構成されているものも含む。また、ケーシングが形成する内部空間は、完全に密閉されているものに限らず外部空間と連通する窓が形成されているものも含み、さらにはこの窓が占める割合が大きいものも含む。
【0010】
また、ここで屈曲とは、広く軸線上から他の方向へ曲がる状態を意味するものであって、必ずしもなめらかに弧を描いて湾曲するものに限られるものではなく、直線状のものが、1から複数箇所にて屈折するようなものでもよく、例えばクランク状に折れ曲がるものなどでもよい。
【0011】
また、本発明の一形態の発明に係る回転子は、回転体と、対向する位置に設けられた一対の軸受から回転体を回転自在に支持するシャフトとを備え、シャフトは、回転体を貫通する貫通部と、この貫通部の両端部から各々屈曲して延び先端に形成された軸支部をケーシングに軸支される屈曲部とを有し、2つの軸支部を通る回転体の回転中心軸線が、貫通部の軸線から所定量オフセットしていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の一形態の発明に係る回転子のシャフトは、回転体とともに回転子を構成し、この回転体を対向する位置に設けられた一対の軸受から回転自在に支持する回転子のシャフトであって、回転体を貫通する貫通部と、この貫通部の両端部から各々屈曲して延び先端に形成された軸支部をケーシングに軸支される屈曲部とを有し、2つの軸支部を通る回転体の回転中心軸線は、貫通部の軸線から所定量オフセットしていることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、本発明の一形態の発明に係る移動通信端末は、上述の本発明の一形態の発明に係る振動モータを搭載していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一形態に係る振動モータによれば、回転体を変更することなく回転体の回転軸中心線を所定の方向に容易にオフセットすることができる。これにより、回転体の重心を回転軸中心から容易に偏心させることができ容易に振動モータを構成することができるという効果を得ることができる。
【0015】
また、本発明の一形態に係る振動モータによれば、屈曲部が所望の弾性を有するので、回転中心が重心から偏心することによって発生する回転体の振動にともない、この回転体を支持する屈曲部が振動するので、振動が大きくなるという効果を得ることができる。
【0016】
さらに、本発明の一形態に係る振動モータによれば、回転体の回転中心が回転体の重心から偏心することによって発生する振動に対して、屈曲部が共振するので、回転中心が重心から偏心することによって発生する回転体の振動と屈曲部の振動とが合成され、さらに大きな振動が発生するという効果を得ることができる。
【0017】
さらにまた、本発明の一形態に係る振動モータによれば、屈曲部の屈曲方向を変えることにより、回転体の回転中心軸線を任意の方向にオフセットすることができるという効果を得ることができる。
【0018】
また、本発明の一形態に係る振動モータによれば、屈曲部の屈曲量を変えることにより、回転体の回転中心軸線を任意の距離だけオフセットすることができるという効果を得ることができる。
【0019】
さらに、本発明の一形態に係る振動モータによれば、シャフトが弧状であるので、棒状材料を湾曲させて容易に作製することができるとともに、回転子に設けられた透孔への貫通が簡単で回転体とシャフトとの組み立てが容易となるので、小型軽量化の実現が容易になるとともに、コストダウンを図ることができるという効果を得ることができる。
【0020】
さらにまた、本発明の一形態に係る振動モータによれば、軸支部が、少なくとも先端部に形成された球面を支持部材に当接させて支持されているので、シャフトは小さな接触面にて支持されることとなり、回転体が回転する際に少ない抵抗となるのでモータの性能が向上するという効果を得ることができる。
【0021】
また、本発明の一形態に係る振動モータによれば、軸支部が、球状をなし球面を支持部材に当接させてスラスト方向とラジアル方向に支持されているので、シャフトはスラスト方向とラジアル方向において小さな接触面にて支持されることとなり、回転体が回転する際に少ない接触抵抗となるのでモータの性能がさらに向上するという効果を得ることができる。
【0022】
さらに、本発明の一形態に係る振動モータによれば、シャフトがクランク状であるので、両端部を容易に同一直線上に配置することができるので、支持構造が簡単で作製容易なものとなり、小型軽量化の実現が容易になるとともに、コストダウンを図ることができるという効果を得ることができる。
【0023】
さらにまた、本発明の一形態に係る振動モータによれば、回転体が偏平形状であるので、シャフトを貫通させやすく作製が容易となる他、オフセットの距離に対して振動に関与する質量が小さくなるので振動の大きさの調整が容易となるという効果を得ることができる。
【0024】
また、本発明の一形態に係る振動モータによれば、回転体が、周方向に不均一な質量を有するので、屈曲部の屈曲方向と組み合わせることにより、振動の大きさを所望のものとすることができるという効果を得ることができる。
【0025】
さらに、本発明の一形態に係る振動モータによれば、屈曲部の屈曲方向に、回転体の重量の異なる部分が存在しているので、例えば屈曲部の屈曲方向に重心が偏心している重量の重い部分を位置させることにより、重心と回転中心との距離が大きくなり、振動の大きさをより大きくすることができるという効果を得ることができる。
【0026】
さらにまた、本発明の一形態に係る振動モータによれば、支部部材がすべり軸受であるので、軸受として材料が安価であるとともに構造が簡単で組み立てが容易となり、小型軽量化の実現が容易になるとともに、コストダウンを図ることができるという効果を得ることができる。
【0027】
また、本発明の一形態に係る振動モータによれば、軸支部がボールベアリングに支持されているので、軸支部の抵抗を少なくすることができ、高性能なモータとすることができるという効果を得ることができる。
【0028】
さらに、本発明の一形態に係る振動モータによれば、軸支部がピボット軸受に支持されているので、軸受として材料が安価であるとともにシャフトの軸支部の加工が容易となり、小型軽量化の実現が容易になるとともに、コストダウンを図ることができるという効果を得ることができる。
【0029】
さらにまた、本発明の一形態に係る振動モータによれば、ケーシングが、隣接する他の装置のケーシングによって構成されているので、この振動モータを搭載する機器の軽量化を図ることができるとともに、部品点数を少なくすることができるので、小型軽量化の実現が容易になるとともに、コストダウンを図ることができるという効果を得ることができる。
【0030】
また、本発明の一形態に係る回転子によれば、回転体に変更を加えることなく回転体の回転軸中心線を所定の方向に容易にオフセットすることができる。これにより、回転体の重心を回転体の回転軸中心から容易に偏心させることができという効果を得ることができる。
【0031】
さらに、本発明の一形態に係る回転子のシャフトによれば、回転子の回転体に変更を加えることなく回転体を変更することなく回転体の回転軸中心線を所定の方向に容易にオフセットすることができる。これにより、回転体の重心を回転体の回転軸中心から容易に偏心させることができという効果を得ることができる。
【0032】
さらにまた、本発明の一形態に係る移動通信端末によれば、上述の本発明の一形態の発明に係る振動モータを搭載しているので、振動モータの回転体の重心を回転軸中心から容易に偏心させることができ、小型軽量化を図ることができるともにコストダウンを図ることができるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る振動モータ、回転子、回転子のシャフトおよび移動通信端末の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0034】
実施の形態1.
図1は本発明に係る振動モータの実施の形態1を示す分解斜視図である。図2は同じく実施の形態1の振動モータの横断面図である。振動モータ80は、ボタン型電池形状の扁平形を成している。そして、振動モータ80は、この扁平形の外郭を形作るとともに内部に密閉空間を形成するケーシング40と、このケーシング40の内部空間に回転自在に収納された回転子30とを有している。さらにこの回転子30は、概略円形平板状の回転体20と、この回転体20の中央穴に挿通され回転体20をケーシング40に対して回転自在に支持する湾曲シャフト(シャフト)10とを有している。
【0035】
回転体20は、概略円形の支持板21と、この支持板21に搭載された3個の空心コイル22と、支持板21の一側の面(下面)に設けられた整流子23とを有している。湾曲シャフト10は、概略弧状に湾曲して自らの中間部にこの支持板21を貫通させて両端部(上下端部)を支持板21から突出させている。
【0036】
ケーシング40は、偏平カップ状のケース41と、ケース41の開口部を覆う底板42とから構成されている。ケース41と底板42の中央部には、それぞれすべり軸受け(支持部材)43,44が設けられおり、ケーシング40はこのすべり軸受け43,44で湾曲シャフト10の上下端を軸支することにより回転子30を回転自在に支持している。
【0037】
底板42の空心コイル22に対向する面に界磁磁極を形成するマグネット51が環状に固定配置されている。マグネット51の内周には上記整流子23と摺接するブラシ52がブラシホルダ53上に立設されている。ブラシホルダ53と底板42との間にブラシホルダ53に給電するためのFPC54が配設され、ケーシング40の外部にその端子55が突出している(図2)。
【0038】
このような構成の振動モータ80の端子55に所定の電圧を印加すると、上記FPC54を介してブラシ52から整流子23、更に空心コイル22へと給電され、環状に配置されマグネット51との磁気相互作用により回転子30が回転駆動する。
【0039】
図3は図2の湾曲シャフト10の部分を拡大して示す図である。湾曲シャフト10は、鋼の棒材を材料として全体を弧状に湾曲させて一体に成形され、その後熱処理されて作製されている。湾曲シャフト10は、回転体20の支持板21を貫通する貫通部11と、この貫通部11の両端部から各々屈曲して延びる屈曲部12と、屈曲部12の先端に形成された球状の軸支部13の3つの機能的な部分から構成されている。湾曲シャフト10は、支持板21の中央に形成された透孔に挿入されたのち、図示しない接着剤(樹脂)によって支持板21に固着される。湾曲シャフト10は、両端部の軸支部13をすべり軸受け43,44に軸支されて回転自在に支持されている。すべり軸受け43,44は、概略有底円筒状を成しており、軸支部13は、球面をすべり軸受け43,44の内周面と底面に当接させてスラスト方向(図3中矢印S)とラジアル方向(図3中矢印R)の2方向に支持されている。
【0040】
図4−1は回転中心軸線がオフセットする様子を説明するための模式図である。図4−2は図4−1を上方から見た図である。なお、図4−1および図4−2ではより解り安いものとするために回転体20に対して湾曲シャフト10を誇張して示している。ここで、円板状の回転体20の重心Gは円板の中心にある。つまり、回転体20の重心Gは、湾曲シャフト10を貫通させるための穴中心にある。回転体20は、湾曲シャフト10の両端部の軸支部13を軸支されて回転するので、その回転中心軸線A1は、湾曲シャフト10の貫通部11の軸線Aから図中矢印の方向へ距離Fだけオフセット(平行移動)した場所に移動する。
【0041】
図5は回転体20が回転中心を重心から偏心させて回転する様子を説明するための図であり、回転中心となる軸支部13と回転する重心Gを示しその他の部分は省略している。図5に示すように、回転体20の重心Gは、シャフト10の軸支部13を通る線上の点O1を回転中心として回転する。このように、回転体20が、回転中心に対して重心を所定距離だけ偏心させて回転すると、回転体20自体が錘となって作用し振動を発生させる。
【0042】
また、屈曲部12は僅かに弾性を有している。そのため、回転体20が図5中白抜き矢印の向きに回転し所定の大きさの振動が発生したとき、この振動にともなって、屈曲部12は回転方向(図5中Fa)および回転と反対方向(図5中Fb)に僅かにしなり(図5ではしなりの大きさを誇張して示している)、両方向のしなりを繰り返す。つまり、回転体20の振動にともない屈曲部12も振動する。なお、後述するように、屈曲部12は円周方向にしなって振動するとともに、半径方向にもしなって振動する。この屈曲部12のしなり(振動)の大きさは、振動モータ80が規定回転数に達したときの振動の大きさと屈曲部12の長さと屈曲部12の弾性係数によって決まる。そして、振動モータ80が規定回転数に達したときの回転体20の振動数と屈曲部12の固有振動数とが一致すると両振動は共振して大きな振動となる。すなわち、屈曲部12(シャフト10)の材料として適当なものを選択するか或いは屈曲部12の長さを調節することにより、屈曲部12が回転体20の振動に共振するようにすれば、相乗効果により両振動が合成されて大きな振動を得ることができる。
【0043】
図6はシャフト10の湾曲量の変化にともない回転中心軸線のオフセット量が変わる様子を示す側面図である。図6の実線は本実施の形態の屈曲部12の湾曲する様子を示す。屈曲部12は、ほぼ均一な曲率にてなめらかに弧を描いて湾曲している。これに対して、図6に破線にて示す屈曲部12は、貫通部11との境(シャフト10が支持板21から出てすぐの部分)にて折れ曲がり、その部分から軸支部13までほぼ直線状に延びている。実線にて示す屈曲部12が、回転中心軸線A1を貫通部11の軸線Aから距離F1オフセットさせるのに対して、破線にて示す屈曲部12は、回転中心軸線Abを距離F2オフセットさせる。このように、シャフト10は、屈曲部12の湾曲量を変えることにより、回転中心軸線を任意の距離オフセットさせることができる。
【0044】
なお、回転体20が回転し所定の大きさの振動が発生したとき、この振動にともなって、屈曲部12は半径方向にも振動する。この屈曲部12の半径方向の振動も回転体20の振動に寄与する。そして、屈曲部12が回転体20の振動に共振するようにすれば、相乗効果により両振動が合成されて大きな振動を得ることができる。ここで、屈曲部12の半径方向の振動は、図6に破線にて示す直線的なものより、実線にて示す湾曲したものの方が半径方向に伸縮する量が大きくなるので、その振幅を大きくすることができる。
【0045】
図7は本実施の形態の湾曲シャフト10を他の回転体20Aに適用した例を示す上面図である。回転体20Aは外周部の一部が大きく欠けた円板状を成している。そのため、回転体20Aの質量は周方向に不均一なものとなっている。これにより、回転体20Aの重心Gは外周円の中心から質量の思い方向に所定距離離れた位置にある。一方、シャフト10の屈曲部12は所定の方向に曲げられて、回転体20Aの回転中心は点O1の位置にある。ここで、屈曲部12の屈曲方向を図7中破線のように変化させると、回転体20Aの回転中心を点O2や点O3の位置に移動する。
【0046】
回転体20Aが発生する振動の大きさは、回転数が同じ場合、回転中心から重心Gまでの距離によって決まるので、屈曲部12を重心G方向に湾曲させて回転中心から重心Gまでの距離を小さくすることにより振動の大きさを小さく、屈曲部12を重心Gと反対の方向に湾曲させて回転中心から重心Gまでの距離を大きくすることにより振動の大きさを大きくすることができる。また、回転体20Aの回転中心を重心Gに重なるように移動させることで振動を全く無くすこともできる。
【0047】
図8は回転体の質量が周方向に不均一なものとなる他の例を示す回転体の概略の横断面図である。図8に示す例においては、回転体20Bの支持板21Bの厚さが周方向に不均一なものとされている。つまり、周方向に沿って厚さの厚い部分と厚さの薄い部分とが形成されている。このような周方向に不均一な質量を有する回転体の場合、屈曲部の屈曲方向と組み合わせることにより、振動の大きさを大きくしたり小さくしたりすることができる。図8に示す例においては、重量の重い部分の存在と屈曲部12の屈曲方向をこの重い部分と反対方向にする組み合わせにより、振動の大きさをより大きくしている。なお、図8に示す例にさらに関連する他の例として、回転体の支持板が金属製のプレートとこのプレートの両面に形成された所定厚みの樹脂層とから構成されているものがあるが、このような構造の場合、重さの軽い樹脂層は振動の発生にほとんど寄与しない。そのため、金属製のプレートを図8に示す支持板21Bのように構成すれば同様の効果を得ることができる。
【0048】
図9は回転体の質量が周方向に不均一なものとなる更に他の例を示す回転体の上面図である。図9に示す回転体20Cにおいては、図1に示す回転体において、隣り合う空心コイル22の間に、重さを重くするために挿入された錘24と、重さを軽くするために形成された2つの貫通穴25が設けられている。この錘24と貫通穴25との作用により回転体20Cの重心Gは、シャフト10の挿入位置から錘24の方向へ所定距離移動した位置にある。このような回転体20Cに対してシャフト10の湾曲方向を重心Gと反対の方向へ向けることにより、回転体20Cの回転体中心軸線と重心Gとの距離を大きくすることができ、振動の大きさを大きくすることができる。
【0049】
図10は本実施の形態の湾曲シャフトの他の支持方法を示す側面図である。図10に示す湾曲シャフト10Bにおいては、軸支部13Bがボールベアリング43Bに支持されているので、軸支部13Bの抵抗を少なくすることができ、高性能なモータとすることができる。
【0050】
図11は本実施の形態の湾曲シャフトのさらに他の支持方法を示す側面図である。図11に示す湾曲シャフト10Cにおいては、軸支部13Cがピボット軸受43Cに支持されている。軸支部13Cは円錐状に加工され先端部が半球面とされており、この半球面をピボット軸受43Cの凹部に当接させてラジアル方向とスラスト方向に支持されている。このような支持方法とすることにより、軸受部材を安価とすることができるとともに湾曲シャフト10Cの軸支部13Cの加工が容易となり、小型軽量化の実現が容易になるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0051】
以上のように本実施の形態の振動モータにおいては、回転体を変更することなく回転体の回転軸中心線を所定の方向に容易にオフセットすることができる。これにより、回転体の重心を回転軸中心から容易に偏心させることができ容易に振動モータを構成することができる。
【0052】
また、回転体の回転中心軸線が回転体の重心から偏心することによって発生する振動に対して屈曲部が振動し、さらに屈曲部はこの振動に共振するので、回転中心が重心から偏心することによって発生する回転体の振動と屈曲部の振動とが合成され、さらに大きな振動が発生する。
【0053】
さらに、シャフトの屈曲部の屈曲方向および屈曲量を変えることにより、回転体の回転中心軸線を任意の方向に任意の距離だけオフセットすることができる。
【0054】
さらにまた、軸支部が、球状をなし球面を支持部材に当接させてスラスト方向とラジアル方向に支持されているので、シャフトはスラスト方向とラジアル方向において小さな接触面にて支持されることとなり、回転体が回転する際に少ない抵抗となるのでモータの性能が向上する。
【0055】
また、シャフトが弧状であるので、棒状材料を湾曲させて容易に作製することができるとともに、回転子に設けられた透孔への貫通が簡単で回転体とシャフトとの組み立てが容易となり、さらに、シャフトを支持する支部部材がすべり軸受であるので、軸受として材料が安価であるとともに構造が簡単で組み立てが容易となり、小型軽量化の実現が容易になるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0056】
実施の形態2.
図12は本発明に係る振動モータの実施の形態2を示すシャフトの側面図である。本実施の形態のクランクシャフト(シャフト)60は、鋼の棒材を材料として3箇所を直角に折り曲げて一体に成形され、その後熱処理されて作製されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。クランクシャフト60は、回転体20の支持板21を貫通する貫通部61と、この貫通部61の両端部から各々クランク状に折れ曲がって延びる屈曲部62と、屈曲部62の先端に形成された円筒状の軸支部63との機能的な部分から構成されている。クランクシャフト60の両端に設けられた円筒状の軸支部63は、同一直線上に配置されている。クランクシャフト60は、支持板21の中央に形成された大きめの透孔に挿入されたのち、図示しない接着剤(樹脂)により固着される。クランクシャフト60は、両端部の軸支部63をすべり軸受け43,44に軸支されて回転自在に支持されている。軸支部63は、円筒の側面をすべり軸受け43,44の内周面に当接させてラジアル方向(図3中矢印R)に支持されるとともに、円筒の頂面をすべり軸受け43,44の底面に当接させてスラスト方向(図3中矢印S)に支持されている。なお、ともない回転体20の振動にともない屈曲部62が円周方向と半径方向に振動する動作は実施の形態1のものと同様である。
【0057】
以上のように本実施の形態のシャフトにおいては、クランク状を成すので、両端に設けられた円筒状の軸支部を容易に同一直線上に配置することができるので、支持構造が簡単で作製容易なものとなり、小型軽量化の実現が容易になるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0058】
実施の形態3.
図13は本発明に係る振動モータの実施の形態3を示す携帯電話器の横断面図である。本実施の形態の振動モータ80Bは、移動通信端末としての携帯電話器100に搭載されている。そして、振動モータ80Bのケーシングは、携帯電話器100のケーシングと隣接する他の装置のケーシングとによって構成されている。具体的には、振動モータ80Bは、裏面(実施の形態1の底板42に相当)を蓄電池91により覆われ、対向する前面を携帯電話器100のケーシング100aにより覆われ、側面をそれぞれ押ボタン装置92、および受話装置93との隔壁により覆われて、この空間内に構成されている。片側のすべり軸受け43はケーシング100aの裏面に直接固定されている。対向する他方のすべり軸受け44は蓄電池91の表面に直接固定されている。回転子30は、両すべり軸受け43,44に軸支されて空間内に収納されている。図示しないマグネットおよびブラシホルダは蓄電池91の表面に直接固定されている。なお、このケーシングの構成は一例であり、この構成に限定されるものではない。
【0059】
以上のように本実施の形態の振動モータにおいては、振動モータのケーシングが、隣接する他の装置のケーシングによって構成されているので、この振動モータを搭載する機器の小型軽量化を図ることができるとともに、部品点数を少なくすることができるので、コストダウンを図ることができる。なお、ここで隣接する他の装置のケーシングとは、上記のように振動モータが例えば携帯電話器等の機器に組み込まれたときに隣接する他の装置のことであり、組み込む携帯電話器のケーシングも含まれる。
【0060】
なお、上記実施の形態1から3においては、振動モータとしてボタン型(コインタイプ)でブラシを有するものを挙げているが、本発明は、回転体とこの回転体を回転自在に支持するシャフトとを有するモータであれば広く適用できるものであり、上記実施の形態のようなボタン型或いはブラシタイプのものに限定されるものではない。また、搭載される機器としては、実施の形態3に挙げた携帯電話器(移動通信端末)に限られるものではなく、ポケットベルやゲーム機器などにも搭載される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明の振動モータは、全体が錘として機能する回転体を搭載するものであり、移動通信端末、携帯電話器、ポケットベルなどの報知用機器のサイレントコールに用いられる振動モータに適用されて好適なものであり、特に小型軽量で大きな振動を要求される振動モータに適用されて最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る振動モータの実施の形態1を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る振動モータの実施の形態1を示す横断面図である。
【図3】図2の湾曲シャフトの部分を拡大して示す図である。
【図4−1】回転中心軸線がオフセットする様子を説明するための模式図である。
【図4−2】回転中心軸線がオフセットする様子を説明するための図であり、図4−1を上方から見た図である。
【図5】回転体の回転中心を重心から偏心させて回転する様子を説明するための図であり、回転中心となる軸支部と回転する重心を示しその他の部分は省略した図である。
【図6】シャフトの湾曲量の変化にともない回転中心軸線のオフセット量が変わる様子を示す側面図である。
【図7】実施の形態1の湾曲シャフトを他の回転体に適用した例を示す上面図である。
【図8】回転体の質量が周方向に不均一なものとなる他の例を示す回転体の概略の横断面図である。
【図9】回転体の質量が周方向に不均一なものとなる更に他の例を示す回転体の上面図である。
【図10】実施の形態1の湾曲シャフトの他の支持方法を示す側面図である。
【図11】実施の形態1の湾曲シャフトのさらに他の支持方法を示す側面図である。
【図12】本発明に係る振動モータの実施の形態2を示すシャフトの側面図である。
【図13】本発明に係る振動モータの実施の形態3を示す移動通信端末の横断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10,10B,10C 湾曲シャフト(シャフト)
11 貫通部
12 屈曲部
13,13B,13C 軸支部
20,20A,20B,20C 回転体
21,21B 支持板
22 空心コイル
23 整流子
24 錘
25 貫通穴
30 回転子
40 ケーシング
41 ケース
42 底板
43,44 すべり軸受け
43C ピボット軸受
43B ボールベアリング
51 マグネット
52 ブラシ
53 ブラシホルダ
54 FPC
55 端子
60 クランクシャフト(シャフト)
61 貫通部
62 屈曲部
63 軸支部
80、80B 振動モータ
91 蓄電池
92 押ボタン装置
93 受話装置
100a ケーシング
100 携帯電話器(移動通信端末)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を形成するケーシングと、
前記ケーシング内に収納された回転体と、
前記回転体を前記ケーシングから回転自在に支持するシャフトとを備え、
前記シャフトは、前記回転体を貫通する貫通部と、該貫通部の両端部から各々屈曲して延び先端に形成された軸支部を前記ケーシングに軸支される屈曲部とを有し、2つの前記軸支部を通る前記回転体の回転中心軸線が、前記貫通部の軸線から所定量オフセットしている
ことを特徴とする振動モータ。
【請求項2】
前記屈曲部が所望の弾性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の振動モータ。
【請求項3】
前記回転体の回転中心が該回転体の重心から偏心することによって発生する振動に対して、前記屈曲部が共振する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の振動モータ。
【請求項4】
前記屈曲部の屈曲方向が可変である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項5】
前記屈曲部の屈曲量が可変である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項6】
前記シャフトが、弧状である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項7】
前記ケーシングが、対向して設けられた一対の支持部材をさらに備え、
前記軸支部が、少なくとも先端部に形成された球面を前記支持部材に当接させて支持されている
ことを特徴とする請求項6に記載の振動モータ。
【請求項8】
前記軸支部が、球状をなし球面を前記支持部材に当接させてスラスト方向とラジアル方向に支持されている
ことを特徴とする請求項7に記載の振動モータ。
【請求項9】
前記シャフトが、クランク状である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項10】
前記回転体が、偏平形状である
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項11】
前記回転体が、周方向に不均一な質量を有する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項12】
前記屈曲部の屈曲方向に、前記回転体の重量の異なる部分が存在している
ことを特徴とする請求項11に記載の振動モータ。
【請求項13】
前記支部部材が、前記ケーシングに設けられた一対のすべり軸受である
ことを特徴とする請求項7に記載の振動モータ。
【請求項14】
前記ケーシングが、対向して設けられた一対のボールベアリングをさらに備え、
前記軸支部が、前記ボールベアリングに支持されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項15】
前記ケーシングが、対向して設けられた一対のピボット軸受をさらに備え、
前記軸支部が、前記ピボット軸受に支持されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項16】
前記ケーシングが、隣接する他の装置のケーシングによって構成されている
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項17】
回転体と、
対向する位置に設けられた一対の軸受から前記回転体を回転自在に支持するシャフトとを備え、
前記シャフトは、前記回転体を貫通する貫通部と、該貫通部の両端部から各々屈曲して延び先端に形成された軸支部を前記ケーシングに軸支される屈曲部とを有し、2つの前記軸支部を通る前記回転体の回転中心軸線が、前記貫通部の軸線から所定量オフセットしている
ことを特徴とする回転子。
【請求項18】
回転体とともに回転子を構成し、該回転体を対向する位置に設けられた一対の軸受から回転自在に支持する回転子のシャフトであって、
前記回転体を貫通する貫通部と、該貫通部の両端部から各々屈曲して延び先端に形成された軸支部を前記ケーシングに軸支される屈曲部とを有し、2つの前記軸支部を通る前記回転体の回転中心軸線は、前記貫通部の軸線から所定量オフセットしている
ことを特徴とする回転子のシャフト。
【請求項19】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の振動モータを搭載している
ことを特徴とする移動通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−99533(P2008−99533A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281963(P2006−281963)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(506347399)
【Fターム(参考)】