説明

振動制御装置

【課題】 振動制御手段の可動範囲以上の作動信号が入力された場合であっても、振動制御手段が可動限界に到達することなく、衝撃を発生することがない振動制御装置を提供する。
【解決手段】 設置部Fに設置された荷重支持部10と、荷重支持部10の設置部Fに対する振動を制御する振動制御手段2を有する振動制御部2と、荷重支持部10の加速度を検知する加速度検知手段4と、加速度検知手段4の検知結果により振動制御手段2を制御する制御部5と、設置部Fを支持する弾性部材22と、弾性部材22を支持する支持部材23と、支持部材23の変位を検出する変位検出手段24と、を備えた振動制御装置1において、変位検出手段24の検出値と、振動制御手段2の可動範囲とを比較し、変位検出手段24の検出値の方が振動制御手段2の可動範囲より大きい場合、振動制御手段2の出力が可動範囲内となるように制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席、荷物等の荷重支持部、特に、例えば、車両、船や飛行機などの移動体等に設置される座席等に加わる振動を抑制、又は低減する振動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動加速度に応じて 座席下の直動型電動アクチュエータを動作制御して座席に加わる振動を抑制する座席用振動制御装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−180202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アクチュエータのストローク以上の作動信号が入力された場合、実際に入力信号分を移動させると、アクチュエータは、ストロークエンドに到達し、衝突してしまう場合がある。
本発明は、上記課題を解決するものであって、アクチュエータ等振動制御手段の可動範囲以上の作動信号が入力された場合であっても、振動制御手段が可動限界に到達することなく、衝撃を発生することがない振動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために本発明は、設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する振動制御手段を有する振動制御部と、前記荷重支持部の加速度を検知する加速度検知手段と、前記加速度検知手段の検知結果により前記振動制御手段を制御する制御部と、前記設置部を支持する弾性部材と、前記弾性部材を支持する支持部材と、前記支持部材の変位を検出する変位検出手段と、を備えた振動制御装置において、前記変位検出手段の検出値と、前記振動制御手段の可動範囲とを比較し、前記変位検出手段の検出値の方が前記振動制御手段の可動範囲より大きい場合、前記振動制御手段の出力が可動範囲内となるように制御することを特徴とする。
【0006】
また、前記振動制御手段の出力が可動範囲内となるように制御中、さらに、前記変位検出手段の検出値の方が前記振動制御手段の可動範囲より大きくなった場合、前記振動制御手段の出力が可動範囲内となるように出力値を変更し制御することを特徴とする力を計算することを特徴とする。
【0007】
また、前記前記振動制御手段の出力の制御は、定ジャーク制御であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する振動制御手段を有する振動制御部と、前記荷重支持部の加速度を検知する加速度検知手段と、前記加速度検知手段の検知結果により前記振動制御手段を制御する制御部と、前記設置部を支持する弾性部材と、前記弾性部材を支持する支持部材と、前記支持部材の変位を検出する変位検出手段と、を備えた振動制御装置において、前記変位検出手段の検出値と、前記振動制御手段の可動範囲とを比較し、前記変位検出手段の検出値の方が前記振動制御手段の可動範囲より大きい場合、前記振動制御手段の出力が可動範囲内となるように制御するので、振動制御手段の可動範囲以上の作動信号が入力された場合であっても、振動制御手段が可動限界に到達することなく、衝撃を発生することがない。
【0009】
また、請求項2記載の発明によれば、前記振動制御手段の出力が可動範囲内となるように制御中、さらに、前記変位検出手段の検出値の方が前記振動制御手段の可動範囲より大きくなった場合、前記振動制御手段の出力が可動範囲内となるように出力値を変更し制御することを特徴とする力を計算するので、再度振動制御手段の可動範囲以上の作動信号が入力された場合であっても、振動制御手段が可動限界に到達することなく、衝撃を発生することがない。
【0010】
また、請求項3記載の発明によれば、前記前記振動制御手段の出力の制御は、定ジャーク制御であるので、円滑に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における振動制御装置1を示す。図中、1は振動制御装置、2は振動制御手段の一例としてのアクチュエータ、3は連結機構、4は加速度検知手段の一例としての加速度センサ、4aは設置部加速度検出手段の一例としての設置部加速度センサ、4bは荷重支持部加速度検出手段の一例としての荷重支持部加速度センサ、5は制御部、10は荷重支持部としての座席、20は車両、21は車体、22は懸架装置で振動制御手段として最適設計されたばねとダンパとを伴っている。23はホイール、24はホイール部変位検出手段の一例としてのホイール部変位センサ、Fは設置部としての床である。
【0012】
振動制御装置1は、アクチュエータ2、連結機構3、加速度センサ4、制御部5等からなり、加速度センサ4の検知結果からアクチュエータ2を制御部5により制御することで、連結機構3により床Fに連結された座席10を制振するものである。
【0013】
連結機構3は、座席10を設置部Fに対して上下動可能に連結する機構であり、本実施形態では、第1連結手段3a、第2連結手段3b、座席側移動支持部3c及び床側移動支持部3d等を有し、第1連結手段3a及び第2連結手段3bでX字状のリンクを形成する。
【0014】
第1連結手段3aは、一端を座席10に回動可能に連結され、他端を床側移動支持部3dにおいて略水平に移動可能に支持される。第2連結手段3bは、一端を床Fに回動可能に連結され、他端を座席側移動支持部3cにおいて略水平に移動可能に支持される。
【0015】
座席側移動支持部3c及び床側移動支持部3dは、それぞれ座席10及び床Fに設置され、略水平な長孔3e,3fを有し、該長孔3e,3f内を第1連結手段3a及び第2連結手段3bの他端が移動可能となるように支持されている。
【0016】
加速度センサ4は、床F及び懸架装置22より上の車体21の加速度を検知する設置部加速度センサ4a及び座席10の加速度を検知する荷重支持部加速度センサ4bである。アクチュエータ2は、床Fに設置され、推力を出力し、床Fに対する座席10の位置を変更するものである。制御部5は設置部加速度センサ4a及び荷重支持部加速度センサ4bの検知結果からアクチュエータ2の推力を制御するものである。
【0017】
本実施形態の振動制御装置1は、車体21に載置されており、車体21は、懸架装置22及びホイール23に支持されている。ホイール23には、ホイール23の変位を検出するホイール部変位センサ24が設けられている。
【0018】
図2は、このような構造の振動制御装置1のブロック図を示す。設置部加速度センサ4a及び荷重支持部加速度センサ4bからの入力信号を制御手段としてのECU5に入力し、アクチュエータ2を制御することで、荷重にあわせてアクティブに振動を制御する。また、ホイール部変位センサ24からの入力がアクチュエータ2の可動範囲としてのストローク範囲を超えている場合、ECU5はアクチュエータ2のストローク範囲を越えないように制御する。なお、ECU5は、閾値、計算式及び入力値に対する出力値のマップ等を記憶する機能を有しているが、これとは別に閾値、計算式及び入力値に対する出力値のマップ等を記憶する図示しない記憶部等を備えてもよい。
【0019】
次に、本実施形態の振動制御について説明する。図3は、振動制御のフローチャートを示す。まず、ステップ1で、設置部加速度センサ4aにより床Fの加速度を検出する(ST1)。続いて、ステップ2で、荷重支持部加速度センサ4bにより座席10の加速度を検出する(ST2)。次に、ステップ3で、設置部加速度センサ4a及び荷重支持部加速度センサ4bの検出値からECU5がアクチュエータ21の出力値を演算する(ST3)。続いて、ステップ4で、ホイール部変位センサ24によりホイール23の変位を検出する(ST4)。
【0020】
次に、ステップ5で、変位調整開始フラグがONか判断する(ST5)。
【0021】
ステップ5において、変位調整開始フラグがONではなく、OFFの場合、ステップ6で、ホイール23の変位がアクチュエータ2のストローク範囲より大きいか判断する(ST6)。
【0022】
ステップ6において、図4に示すように、ホイール23の変位がアクチュエータ2のストローク範囲より大きい場合、ステップ7で、変位調整開始フラグをONとする(ST7)。続いて、ステップ8で、ECU5によりアクチュエータ2のストローク範囲内でアクチュエータ出力の目標値を計算する(ST8)。次に、ステップ9で、ステップ8において計算した目標値になるように、アクチュエータ2を、定ジャークで調整処理する(ST9)。次にステップ10で、ステップ3における推力演算値に基づいてアクチュエータ2の推力を出力する(ST10)。
【0023】
また、ステップ6において、ホイール23の変位がアクチュエータ2のストローク範囲より小さい場合、ステップ10で、ステップ3における推力演算値に基づいてアクチュエータ2の推力を出力する(ST10)。
【0024】
次に、ステップ5において、変位調整開始フラグがONの場合、ステップ11で、ホイール23の変位がアクチュエータ2のストローク範囲より大きいか判断する(ST11)。
【0025】
ステップ11において、図5に示すように、変位調整開始フラグがONで、調整している時に、さらにホイール23の変位がアクチュエータ2のストローク範囲より大きくなった場合、ステップ12で、ECU5によりアクチュエータ2のストローク範囲内でアクチュエータ出力の目標値を再計算する(ST12)。次に、ステップ9で、ステップ12において再計算した目標値になるように、アクチュエータ2を、定ジャークで調整処理する(ST9)。次に、ステップ10で、ステップ3における推力演算値に基づいてアクチュエータの推力を出力する(ST10)。
【0026】
また、ステップ11において、変位調整開始フラグがONで、調整している時に、ホイール23の変位がアクチュエータ2のストローク範囲より小さくなった場合、ステップ13で、荷重支持部10としての座席10が目標変位に到達したか判断する。
【0027】
ステップ13において、座席10が目標変位に到達した場合、ステップ14で、変位調整開始フラグをOFFとする(ST14)。次に、ステップ10で、ステップ3における推力演算値に基づいてアクチュエータ2の推力を出力する(ST10)。
【0028】
また、ステップ13において、座席10が目標変位に到達していない場合、ステップ9で、ステップ12において再計算した目標値になるように、アクチュエータ2を、定ジャークで調整処理する(ST9)。次に、ステップ10で、ステップ3における推力演算値に基づいてアクチュエータ2の推力を出力する(ST10)。
【0029】
なお、変位調整のためのアクチュエータ2の出力と、制振制御のためのアクチュエータ2の出力は、それぞれの信号を加算して推力を発生させてもよい。
【0030】
このように本実施形態によれば、設置部Fに設置された荷重支持部10と、荷重支持部10の設置部Fに対する振動を制御するアクチュエータ2を有する振動制御部2と、荷重支持部10の加速度を検知する加速度検知手段4と、加速度検知手段4の検知結果によりアクチュエータ2を制御する制御部5と、設置部Fを支持する弾性部材22と、弾性部材22を支持する支持部材23と、支持部材23の変位を検出する変位検出手段24と、を備えた振動制御装置1において、変位検出手段24の検出値と、アクチュエータ2のストローク範囲とを比較し、変位検出手段24の検出値の方がアクチュエータ2のストローク範囲より大きい場合、アクチュエータ2の出力がストローク範囲内となるように制御するので、アクチュエータ2のストローク以上の作動信号が入力された場合であっても、ストロークエンドに到達することなく、衝撃を発生することがない。
【0031】
また、アクチュエータ2の出力がストローク範囲内となるように制御中、さらに、変位検出手段24の検出値の方がアクチュエータ2のストローク範囲より大きくなった場合、アクチュエータ2の出力がストローク範囲内となるように出力値を変更し制御することを特徴とする力を計算するので、再度アクチュエータ21のストローク以上の作動信号が入力された場合であっても、ストロークエンドに到達することなく、衝撃を発生することがない。
【0032】
また、アクチュエータ2の出力の制御は、定ジャーク制御であるので、円滑に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図2】振動制御装置のシステム構成を示したブロック図である。
【図3】振動制御のフローチャートを示す図である。
【図4】ホイールの変位がアクチュエータのストローク範囲より大きい場合を示す図である。
【図5】調整している時に、さらにホイールの変位がアクチュエータのストローク範囲より大きくなった場合を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1…振動制御装置、2…アクチュエータ(振動制御手段)3…連結機構、4…加速度センサ(加速度検知手段)、4a…設置部加速度センサ(設置部加速度検出手段)、4b…荷重支持部加速度センサ(荷重支持部加速度検出手段)、5…制御部、10…座席(荷重支持部)、20…車両、21…車体、22…懸架装置(弾性部材)、23…ホイール(支持部材)、24…ホイール部変位センサ(支持部材変位検出手段)、F…床(設置部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する振動制御手段を有する振動制御部と、前記荷重支持部の加速度を検知する加速度検知手段と、前記加速度検知手段の検知結果により前記振動制御手段を制御する制御部と、前記設置部を支持する弾性部材と、前記弾性部材を支持する支持部材と、前記支持部材の変位を検出する変位検出手段と、を備えた振動制御装置において、
前記変位検出手段の検出値と、前記振動制御手段の可動範囲とを比較し、前記変位検出手段の検出値の方が前記振動制御手段の可動範囲より大きい場合、前記振動制御手段の出力が可動範囲内となるように制御することを特徴とする振動制御装置。
【請求項2】
前記振動制御手段の出力が可動範囲内となるように制御中、さらに、前記変位検出手段の検出値の方が前記振動制御手段の可動範囲より大きくなった場合、前記振動制御手段の出力が可動範囲内となるように出力値を変更し制御することを特徴とする力を計算することを特徴とする請求項1に記載の振動制御装置。
【請求項3】
前記前記振動制御手段の出力の制御は、定ジャーク制御であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−154774(P2009−154774A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336877(P2007−336877)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】