説明

振動型リニアアクチュエータとそれを有する光学機器

【課題】騒音の発生を抑制することが可能な振動型リニアアクチュエータとそれを有する光学機器を有する光学機器を提供すること
【解決手段】電気−機械エネルギー変換作用により、振動が励起される振動部材208と、振動部材と圧接する接触部材207と、を相対移動させる振動型リニアアクチュエータは、振動部材に電気信号を与えるフレキシブル配線板209を有し、振動部材は、電気機械変換素子208aが取り付けられる平面部208cから突出する取付部208eを有する弾性部材208bを有し、フレキシブル配線板は弾性部材の取付部208eに固定される第1の固定部209cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型リニアアクチュエータを用いてレンズ等の光学素子を移動させる光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
振動型リニアアクチュエータは、電機―機械エネルギー作用によって振動が励起される振動子(振動部材)と振動子に圧接する接触部材とを直線的に相対移動させるアクチュエータである。特許文献1は、振動部材と接触部材の面接触状態を維持してレンズを安定して駆動するために、振動部材と接触部材の一方を保持し、両者の圧接力よりも小さな力を受けて前記一方の部材の位置及び傾きを変化させる板ばねを有する光学機器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−22388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の光学素子では、接触部材の振動が配線板に伝わり、配線板が振動することにより騒音が発生し、撮影時の障害になるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、騒音の発生を抑制することが可能な振動型リニアアクチュエータとそれを有する光学機器を有する光学機器を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の振動型リニアアクチュエータは、電気−機械エネルギー変換作用により、振動が励起される振動部材と、前記振動部材と圧接する接触部材と、を相対移動させる振動型リニアアクチュエータであって、前記振動部材に電気信号を与える配線板を有し、前記振動部材は、前記電気−機械エネルギー変換作用を行う電気機械変換素子が取り付けられる第1の取付部と、当該第1の取付部から突出する第2の取付部と、を有する弾性部材を有し、前記配線板は前記弾性部材の前記第2の取付部に固定される固定部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、騒音の発生を抑制することが可能な振動型リニアアクチュエータとそれを有する光学機器を有する光学機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】振動型リニアアクチュエータの分解斜視図と組み立て状態の側面図である。(実施例1)
【図2】光学機器の光軸を含む面の断面図である。(実施例1)
【図3】光学機器の光軸に垂直な面の断面図である。(実施例1)
【図4】振動子の振動状態を説明するための図である。(実施例1)
【図5】振動型リニアアクチュエータの分解斜視図と組み立て状態の断面図である。(実施例2)
【図6】振動型リニアアクチュエータの分解斜視図である。(実施例3)
【図7】図6に示す振動型リニアアクチュエータの組み立て状態の平面図である。(実施例3)
【図8】図7のA−A断面図である。(実施例3)
【図9】光学機器の光軸を含む面の断面図である。(実施例3)
【図10】光学機器の光軸に垂直な面の断面図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1(a)は、実施例1のビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の光学機器(撮像装置)に用いられる振動型リニアアクチュエータの分解斜視図であり、図1(b)はその組み立て状態を示す側面図である。図2(a)は実施例1の光学機器の光軸を含む面の断面図であり、図2(b)は図2(a)の丸で囲った部分の拡大図である。図3はその光軸に垂直な面の断面図である。
【0011】
図2に示す光学機器のレンズ鏡筒は、被写体の光学像を形成する撮影レンズ(撮影光学系)として凸凹凸凸凸のパワーを有する5群構成の変倍光学系を有する。より詳細には、撮影レンズは、被写体側から光路に沿って順に、第1群レンズL51、第2群レンズL52、第3群レンズL53、第4群レンズL54、第5群レンズL55を有する。
【0012】
固定の第1群レンズL51は固定鏡筒51に保持されている。光軸O方向に移動して変倍動作を行う第2群レンズ(光学素子)L52は変倍移動枠52に保持されている。光軸O方向に移動して補正動作を行う第3群レンズL(光学素子)53は補正移動枠53に保持されている。固定の第4群レンズL54はアフォーカル鏡筒54に保持されている。光軸O方向に移動して合焦動作を行う第5群レンズL55は合焦移動枠55に保持されている。
【0013】
光学像を光電変換する撮像素子57は後部鏡筒58に固定されている。フィルタ56は、後部鏡筒58と撮影素子57とゴム枠75に挟まれて固定されている。
【0014】
カム環201は、固定鏡筒51の内径に嵌合している。
【0015】
コロ202は変倍移動枠52に取り付けられている。コロ202は、カム環201のカム201aと固定鏡筒51の直進溝51aに嵌合している。これによりカム環201の回転により変倍移動枠52が光軸方向に移動する。
【0016】
コロ203は補正移動枠53に取り付けられている。コロ203は、カム環201のカム201bと固定鏡筒51の直進溝51aに嵌合している。これによりカム環201の回転により補正移動枠53が光軸方向に移動する。
【0017】
吸着部材204は、ねじ205でカム環201に固定されている。振動吸収部材であるゴムリング206は吸着部材204に接している。
【0018】
3個の振動子(振動部材)208が磁石で構成されている接触環207に磁力で吸引されて配置されている。振動子208には電機―機械エネルギー変換作用により、振動が励起され、接触環207は振動を外部出力として取り出す接触部材であり、振動子208と接触環207は振動型リニアアクチュエータを構成する。
【0019】
振動子208は、矩形平板形状を有する電気機械変換素子208aと、平板状の弾性体である弾性部材208bと、を有する。
【0020】
電気機械変換素子208aは、電気量(電圧)を機械量(振動)に変換する(電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電素子や電歪素子などから構成される。
【0021】
弾性部材208bには電気機械変換素子208aにより振動が励起され、強磁性体から構成されている。弾性部材208bは、中央部に設けられた矩形形状の平面部(第1の取付部)208c、平面部208cの両側から突出した取付部(第2の取付部)208e、208f、一対の突起部208gを有する。弾性部材208bは、電気機械変換素子208aと反対側において接触環207と圧接している。
【0022】
電気機械変換素子208aはその接着面208dが弾性部材208bの平面部208cに接着され、平面部208cは電気機械変換素子208aの接着面208dが収まるような寸法を有する。
【0023】
取付部208e、208fは、面外1次曲げ振動の節近傍から突出し、それぞれ、図1に点線で示すような、矩形形状の固定部208e、208fを有する。突起部208gは接触環207に圧接される。なお、取付部208e、208fにそれぞれ設けられている穴は弾性部材208bに電気機械変換素子208aとフレキシブル配線板209と板ばね210を取り付けるときの工具の位置決め穴である。
【0024】
フレキシブル配線板209は、一対の接続部209a、209bと、第1の固定部209cと、第2の固定部209dを有する。
【0025】
接続部209a、209bは、電気機械変換素子208aの弾性部材208bとの接着面208dと反対側にある接着面208dに通電可能に接着されている。フレキシブル配線板209は、接続部209a、209bを介して、2つの位相が異なる電気信号(パルス信号または交番信号)を電気機械変換素子208aに与えることによって突起部208gに楕円運動を発生させ、接触環207に駆動力を発生させる。
【0026】
図4は、取付部208e、208fを除いた振動子の振動状態を説明するための図であり、振動子の平面図と振動子をX方向とY方向から見た側面図がそれぞれ示されている。図4に示すように異なる2つの曲げ振動を時間的な位相を0°から90°ずらして同時に発生させることにより、駆動力を得ることができる。
【0027】
2つの曲げ振動は、面外2次曲げ振動と面外1次曲げ振動である。2つの突起部208gは、面外2次曲げ振動の節近傍に配置されており、この振動により2つの突起部の先端はX方向に変位する。また、2つの突起部208gは面外1次曲げ振動の腹近傍に配置されており、この振動により2つの突起部208gの先端はZ方向に変位する。これら異なる2つの曲げ振動からなる複合振動を生成することで、2つの突起部の先端に楕円運動または円運動を発生させることができる。突起部208gの先端を接触部材(接触環207)に加圧して接触させることで、振動子208と接触環207との間に相対移動が生成され、振動型リニアアクチュエータ(振動波駆動装置)を構成することができる。
【0028】
第1の固定部209cの一端から接続部209a、209bが繋がっていて、第1の固定部209cの他端から第2の固定部209dが繋がっている。一対の接続部209a、209bは、それぞれほぼ細長平板形状を有し、その間の第1の固定部209c付近には後述する先端部210aが挿入可能な孔部209eを有する。
【0029】
第1の固定部209cは、接続部209a、209bとの間に傾斜部209cを有すると共に第2の固定部209dとの間に傾斜部209c有する。第1の固定部209cの底面の一部は後述する板ばね210の先端部210aに固定され、フレキシブル配線板209の振動による騒音の発生を防止している。
【0030】
第2の固定部209dはネジ穴209dと位置決め穴209dを有し、これらは後述する板ばね210の取付部210cのネジ穴210cと位置決め穴210cに対応している。ネジ穴209dとネジ穴210cにはねじ211が挿入され、位置決め穴209d、210cには不図示の位置決めピンが挿入されて第2の固定部209dは取付部210cと共に振動子保持枠(振動子保持部材)212に固定される。この結果、フレキシブル配線板209の振動による騒音の発生を防止することができる。
【0031】
板ばね210は、略矩形形状のフレーム210eと、フレーム210eの両側に突出した取付部210c、210dを有する。
【0032】
板ばね210の取付部210c、210dは、ねじ211で振動子保持枠212の3ヶ所の振動子固定部212bに取り付けられている。取付部210c、210dはネジ穴210c、210dと位置決め穴210c、210dを有する。ネジ穴210c、210dにはねじ211が挿入され、位置決め穴210c、210dには不図示の位置決めピンが挿入される。なお、フレキシブル配線板209の第2の固定部209dは板ばね210の取付部210cにねじ211で共締めされている。
【0033】
フレーム210eは中央部に短手方向に延びる中央梁210eを有し、中央梁210eの両側には2つの中空部210eが形成されている。また、中央梁210eの両側から長手方向に沿って張出部210a、210bが中空部内に延びている。
【0034】
張出部210a、210bは、中央梁210eで片持ち支持され、折り曲げ加工によって先端部210a、210b、傾斜部210a、210b、基部210a、210bが形成されている。
【0035】
基部210a、210bは、中央梁210eの中央に結合し、その表面はフレーム210eと同一平面を構成する平板部である。傾斜部210a、210bは、基部210a、210bから斜め下方向に傾斜している平板部である。先端部210a、210bは傾斜部210a、210bの先端に結合し、基部210a、210bと平行な面を有する平板部である。
【0036】
先端部210a、210bは、図1(b)に示すように、弾性部材208bの取付部208e、208fの固定部208e、208fにレーザー溶着や接着で固定されている。第1の固定部209cは、先端部210aの上面に両面テープや接着や粘着により固定されている。
【0037】
板ばね210は、振動子208と接触環207の面接触状態を維持するために振動子208と接触環207の一方(本実施例では振動子208)を保持し、両者の圧接力よりも小さな力を受けて前記一方の他方に対する部材の位置及び傾きを変化させる。板ばね210はこの機能を先端部210a、210bにおいて行っている。
【0038】
板ばね210は、板面の面内方向には弾性変形しにくく板面に垂直な方向には弾性変形しやすい形状を有する。また、板ばね210は、その面内に含まれる任意の軸を中心とした回転方向の弾性変形が容易で突起部208gと接触環207との平行度を維持する。板ばね210が面内方向に弾性変形しにくいことにより、振動子208の光軸方向(駆動方向)への変位は制限される。また、板ばね210は、振動子208の突起部208gと接触環207の圧接力よりも小さな力で変形するようにばね定数が設定されている。
【0039】
取付部208eは、振動子208の駆動時の面外1次曲げ振動の節近傍から突出して板ばね210やフレキシブル配線板209に振動を伝えにくいように構成されていると共に、振動子208の振動を妨げないように構成されている。
【0040】
また、フレキシブル配線板209は、面外1次曲げ振動の節近傍から引き出されているので振動を伝えにくくなっている。なお、フレキシブル配線板209は面外1次曲げ振動の節近傍の2箇所から引き出されているが、一箇所から引き出してもよい。
【0041】
振動子保持枠212は、ねじ213で固定鏡筒51に固定されている。振動子保持枠212のストッパー部212aと接触環207との隙間は、板ばね210による振動子208の可動量以下になっている。
【0042】
接触環207は、吸着部材204に磁力で吸引されてゴムリング206に圧接されている。これにより衝撃で接触環207がゴムリング206から離れても、ストッパー部212aにより移動を規制され、磁力による吸着力により元の位置にもどる。
【0043】
アフォーカル鏡筒54と後部鏡筒58との間には、第1と第2のガイドバー59と60が設けられ、合焦移動枠55はこれらの第1と第2のガイドバー59と60により光軸方向に移動可能に支持されている。また、合焦移動枠55は第2のガイドバー60に対して光軸方向に所定の長さを有するスリーブ部を介して嵌合することにより、光軸方向への倒れが防止されている。更に、合焦移動枠55はU溝部を介して第1のガイドバー59に係合することにより、第2のガイドバー60回りでの回転が防止されている。
【0044】
アフォーカル鏡筒54は、後部鏡筒58に固定されている。絞りユニット61は、後部鏡筒58に固定されている。絞りユニット61は複数枚の絞り羽根を互いに逆方向に移動させて開口径を変化させる。
【0045】
また後部鏡筒58には、フォーカスリセットスイッチ62が設けられている。このフォーカスリセットスイッチ62はフォトインタラプタから成り、合焦移動枠55に形成された遮光部55aの光軸方向への移動による遮光、透光の切換わりを検出して電気信号を出力する。フォーカスリセットスイッチ62からの電気信号に基づいて、図示しない制御回路は第5群レンズL55が基準位置に位置するか否かを判別する。
【0046】
カメラの電源が投入されると、マイコン32はフォーカスリセット回路33及びカム環リセット回路64の出力を監視する。また、マイコン32はカメラ信号処理回路40からの出力を得て被写体の画像データを表示、保存用に取得すると共に焦点検出情報も取得する。
【0047】
この監視をしながら、フォーカスモーター駆動回路37はフォーカスモーターを回転させ、合焦移動枠4を光軸方向に移動させる。また、カム環モーター駆動回路63は振動子208と接触環207からなる振動型リニアアクチュエータを駆動し、カム環201を回転させて変倍移動枠52と補正移動枠53を光軸方向に移動させる。
【0048】
フォーカスリセット回路33及びカム環リセット回路64の出力は、それぞれ合焦移動枠55及びカム環201が予め設定された位置、つまり合焦移動枠55とカム環201に設けられた遮光部がリセットスイッチの発光部を遮光する境界位置に至ると反転する。この一連の動作を合焦移動枠55及びカム環201のリセット動作という。
【0049】
マイコン32は、フォーカスリセット位置を基準として、以後のフォーカスモーターの駆動ステップ数を計数することにより、合焦移動枠55の絶対位置を含む正確な距離情報を得ることができる。また、マイコン32は、カム環リセット位置を基準として、以後のカム環位置センサー65のステップ数を計数することにより、カム環201の絶対位置を含む正確な距離情報を得ることができる。
【0050】
絞り駆動回路39は絞りユニット61を駆動し、マイコン32に取り込まれた映像信号の明るさ情報に基づいて絞り開口径が制御される。
【0051】
また、フォーカス操作スイッチ42の操作により、合焦移動枠55を移動させることにより、合焦位置を調整することができる。また、ズーム操作スイッチ43を操作することにより、カム環モーター駆動回路63とフォーカスモーター駆動回路37により、カム環201を駆動するとともに、合焦移動枠55を移動させて変倍動作を行うことができる。
【0052】
実施例1によれば、振動子208の取付部208eの固定部210eに取り付けられた板ばね210の先端部210aにフレキシブル配線板209の第1の固定部209cを取り付けることにより、フレキシブル配線板209の振動を抑制することができる。フレキシブル配線板209は振動の大きい電気機械変換素子208aに取り付けられた箇所から、振動の少ない箇所へ取り付けられるまでの長さを短くすることができ、フレキシブル配線板209が振動する範囲を小さくすることが出来る。この結果、フレキシブル配線板209からの騒音の発生を抑制して撮影時の障害を防止することができる。
【0053】
なお、本実施例はフレキシブル配線板209の第1の固定部209cを板ばね210の先端部210aに固定しているが、板ばね210を介さずに弾性部材208bの取付部208eに固定してもよい。また、本実施例はフレキシブル配線板209の第2の固定部209dを板ばね210の取付部210cを介して振動子保持枠212に固定しているが、板ばね210を介さずに振動子保持枠212に固定してもよい。
【実施例2】
【0054】
実施例2は、フレキシブル配線板309の固定構造が実施例1と異なる。図5(a)は、実施例2の光学機器(撮像装置)に用いられる振動型リニアアクチュエータの分解斜視図であり、図5(b)は図5(a)に示す振動型リニアアクチュエータの組み立て状態を示す断面図である。これらの図において図1と同一の部材には同一の参照符号を付している。
【0055】
本実施例のフレキシブル配線板309は、一対の接続部309a、309bと、それらが固定される固定部309cを有する。
【0056】
接続部309a、309bは、接続部209a、209bと同様に、電気機械変換素子208aの弾性部材208bの接着面208dと反対側の面208dに通電可能に接着されている。
【0057】
一方、固定部309cは、弾性部材208bに固定されていない。固定部309cは、ネジ穴309cと位置決め穴309cを有し、これらは板ばね210の取付部210cのネジ穴210cと位置決め穴210cに対応する。固定部309cは、第2の固定部209dと同様に、板ばね210の取付部210cにねじ211で共締めされて振動子保持枠212に固定される。
【0058】
上述したように、取付部208eは、振動子208の駆動時の面外1次曲げ振動の節近傍から突出して板ばね210に振動を伝えにくいように構成されていると共に、振動子208の振動の妨げないように構成されている。フレキシブル配線板309は、板ばね210の取付部210cと共締めされているので、フレキシブル配線板309の振動を抑制することができる。
【0059】
本実施例によれば、フレキシブル配線板309の固定部309cを板ばね210を介して振動子保持枠212に固定している。これにより、他にフレキシブル配線板309を固定することなく簡単な構成でフレキシブル配線板309の振動を抑制することができる。フレキシブル配線板209は振動の大きい電気機械変換素子208aに取り付けられた箇所から、振動の少ない箇所へ取り付けられるまでの長さを短くすることができ、フレキシブル配線板209が振動する範囲を小さくすることが出来る。フレキシブル配線板309からの騒音の発生を抑制して撮影時の障害を防止することができる。
【0060】
なお、固定部309cはビスではなく接着や両面テープなど他の手段によって固定されてもよい。また、本実施例はフレキシブル配線板309の固定部309cを板ばね210の取付部210cを介して振動子保持枠212に固定しているが、板ばね210を介さずに振動子保持枠212に固定してもよい。
【実施例3】
【0061】
図6は実施例1のビデオカメラ等の光学機器(撮像装置)に用いられる振動型リニアアクチュエータの分解斜視図であり、図7はその組み立て状態の平面図である。図8は図7のA−A断面図である。図9(a)は実施例3の光学機器の光軸を含む面の断面図であり、
図9(b)は図9(a)の丸で囲った部分の拡大図である。図10はその光軸に垂直な面の断面図である。
【0062】
図9に示す光学機器のレンズ鏡筒は、被写体の光学像を形成する撮影レンズ(撮影光学系)として凸凹凸凸のパワーを有する4群構成の変倍光学系を有する。より詳細には、撮影レンズは、被写体側から光路に沿って順に、第1群レンズL1、第2群レンズL2、第3群レンズL3、第4群レンズL4を有する。
【0063】
固定の第1群レンズL1は固定鏡筒1に保持されている。光軸O方向に移動して変倍動作を行う第2群レンズ(光学素子)L2は変倍移動枠2に保持されている。固定の第3群レンズL3はアフォーカル鏡筒3に保持されている。光軸O方向に移動して合焦動作を行う第4群レンズL4は合焦移動枠4に保持されている。
【0064】
光学像を光電変換する撮像素子6は後部鏡筒7に固定されている。フィルタ5は、後部鏡筒7と撮影素子6とゴム枠25に挟まれて固定されている。
【0065】
固定鏡筒1と後部鏡筒7との間には、第1と第2のガイドバー8と9が設けられ、変倍移動枠2及び合焦移動枠4はこれらの第1と第2のガイドバー8と9により光軸方向に移動可能に支持されている。また、変倍移動枠2、合焦移動枠4はそれぞれ第1と第2のガイドバー8、9に対して光軸方向に所定の長さを有するスリーブ部を介して嵌合することにより、光軸方向への倒れが防止されている。更に、変倍移動枠2、合焦移動枠4はU溝部を介して第1と第2のガイドバー8,9に係合することにより、第1と第2のガイドバー8,9回りでの回転が防止されている。
【0066】
アフォーカル鏡筒3は、後部鏡筒7に固定されている。絞りユニット10は、後部鏡筒7に固定されている。絞りユニット10は複数枚の絞り羽根を互いに逆方向に移動させて開口径を変化させる。
【0067】
後部鏡筒7には、フォーカスリセットスイッチ11が設けられている。フォーカスリセットスイッチ11はフォトインタラプタから構成され、合焦移動枠4に形成された遮光部4aの光軸方向への移動による遮光、透光の切換わりを検出して電気信号を出力する。フォーカスリセットスイッチ11からの電気信号に基づいて図示しない制御回路は第4群レンズL4が基準位置に位置するか否かを判別する。
【0068】
光軸方向に剛性が強く、光軸垂直方向の剛性が弱く、光軸方向の回転方向の剛性が弱い板ばね12は取付部12c、12dとねじ13と14で変倍移動枠2に取り付けられている。取付部12c、12dは、ねじ13と14が挿入されるネジ穴12c、12dと不図示の位置決めピンが挿入される位置決め穴12c、12dを有する。
【0069】
また、板ばね12は取付部12a、12bを有する。これらにより、板ばね12は、振動子16とスライダー21の面接触状態を維持するために振動子16とスライダー16の一方(本実施例では振動子16)を保持し、両者の圧接力よりも小さな力を受けて前記一方の他方に対する位置及び傾きを変化させる。
【0070】
取付部12a、12bは、それぞれ、ネジ穴12a、12bと位置決め穴12a、12bを有する。
【0071】
振動子保持部材15は、振動子(振動部材)16を保持する中空矩形形状を有し、板ばね12の取付部12a、12bが取り付けられる凹部としての一対の取付部15a、15bを有する。また、振動子保持部材15は、取付部15a、15bの下側にそれぞれ一対の位置決めピン15cを有する(図6には2つのみ図示されている)。位置決めピン15cは押さえ部411、413の位置決め穴411a、413aに挿入され、押さえ部411、413を振動子保持部材15に対して位置決めする。
【0072】
取付部15a、15bは、それぞれ、ネジ穴15a、15bと位置決めピン15a、15bを有する。ネジ穴15aと12aが位置合わせされてネジ410が挿入され押さえ部411のネジ穴411bで固定される。また、ネジ穴15bと12bが位置合わせされてネジ412と押さえ部413のネジ穴413bで固定される。位置決めピン15aは位置決め穴12aに挿入され、位置決めピン15bは位置決め穴12bに挿入されて板ばね12を位置決めする。ネジ穴411b、413bはナットとして機能する。
【0073】
磁石を含むスライダー21は、振動吸収板20に取り付けられ、スライダー21は振動子16と接触し、振動子16とスライダー21は磁気で吸引されて圧接している。振動子208には電機―機械エネルギー作用によって振動が励起され、スライダー21は振動を外部出力として取り出す接触部材であり、振動子16とスライダー21は振動型リニアアクチュエータ(振動波駆動装置)を構成する。
【0074】
振動子16は、振動子208に対応し、電気機械変換素子208aと同様の電気機械変換素子16aと、弾性部材208bに対応する平板状の弾性体である弾性部材16bと、を有する。振動子16の曲げ振動は、実施例1と同様である。
【0075】
弾性部材16bは、中央部に電気機械変換素子16aが接着される矩形形状の平面部16cを有し、平面部16cの両側に突出した取付部16e、16fを有する。平面部16cは電気機械変換素子16aの接着面16dが収まるような寸法を有する。取付部16e、16fは、面外2次曲げ振動の節近傍から突出し、ネジ穴16e、16fを有する。
【0076】
ネジ穴16eはネジ穴15aの下に配置され、ネジ穴16fはネジ穴15bの下に配置され、ネジ410、412と押さえ部411、413で振動子16は振動子保持部材15に固定される。
【0077】
フレキシブル配線板409は、接続部409aと接続部409aが取り付けられている平面部である固定部409を有する。
【0078】
接続部409aは、振動子保持部材15の中空部を介して、電気機械変換素子16aの弾性部材16bの接着面16dと反対側の接着面16dに通電可能に接着されている。
【0079】
固定部409bは面外2次曲げ振動の節近傍から引き出され、ネジ穴409bと位置決め穴409bを有する。ネジ穴409bはネジ穴15aとネジ穴12aの間に配置され、位置決め穴409bは取付部15aと位置決め穴12aの下に配置されて位置決めピン15aが挿入される。即ち、固定部409bは板ばね12の取付部12aと振動子保持部材15の取付部15aの間にはさまれて、ねじ410と押さえ部411で固定される。
【0080】
フレキシブル配線板409は面外2次曲げ振動の節近傍から引き出されているので、振動子16の振動が伝わりにくくなっている。フレキシブル配線板409は、振動子保持枠15の取付部15aと板ばね12の取付部12aで固定されているので、振動が伝わりにくい構成となっており、騒音の発生を抑制して撮影時の障害を防止することができる。
【0081】
強磁性体のスライダー固定枠(吸着部材)17は、ねじ18と19で固定鏡筒1と後部鏡筒7に取り付けられている。ゴムやエラストマー樹脂でできた振動吸収板(振動吸収部材)20はスライダー固定枠17に固定されている。
【0082】
スライダー21は、スライダー固定枠17と磁気で吸引されて、スライダー21を振動吸収板20に圧接している。スライター21が磁石から構成されているので、スライダー固定枠17に吸引されている磁力はスライダー21の光軸方向に均等に発生し、均等に圧接力を発生することができる。
【0083】
光学式の位置センサー22は固定鏡筒1に固定されている。スケール23は、位置センサー22に対向する位置に配置され、変倍移動枠2に固定される。位置センサー22は、位置センサー22からの投光をスケール23で反射し、その反射光を位置センサー22で受光し、位置センサー22の出力により、変倍移動枠2の相対的な移動量を検出する。
【0084】
固定鏡筒1のストッパー部1aとスライダー21との隙間25は、板ばね12により移動可能な量よりも小さく、接触してもよい。
【0085】
スライダー21の磁石により、磁力24がスライダー21と振動子16とスライダー固定枠17に働いてスライダー21に振動子16を圧接するとともに、スライダー21はスライダー固定枠17に吸着されて、スライダー21は振動吸収板20に圧接される。
【0086】
衝撃などで、スライダー21は、スライダー21からずれた場合でも、スライダー21はストッパー部1aにより、規制されスライダー21は、磁気力により吸引されて元の位置に戻ることができる。
【0087】
カメラの電源が投入されると、マイコン32はフォーカスリセット回路33及びズームリセット回路34の出力を監視する。また、マイコン32はカメラ信号処理回路40からの出力を得て被写体の画像データを表示、保存用に取得すると共に焦点検出情報も取得する。
【0088】
この監視をしながら、フォーカスモーター駆動回路37はフォーカスモーターを回転させ、合焦移動枠4を光軸方向に移動させる。また、ズームモーター駆動回路38は、振動子16とスライダー21からなる振動型リニアアクチュエータを駆動し、変倍移動枠2を光軸方向に移動させる。
【0089】
フォーカスリセット回路33及びズームリセット回路34の出力は、それぞれ合焦移動枠4及び変倍移動枠2が予め設定された位置、つまり各移動枠4、2に設けられた遮光部が、リセットスイッチの発光部を遮光する境界位置に至ると反転する。この一連の動作を合焦移動枠4及び変倍移動枠2のリセット動作という。
【0090】
マイコン32はフォーカスリセット位置を基準として、以後のフォーカスモーターの駆動ステップ数を計数することにより、合焦移動枠4の絶対位置を含む正確な距離情報を得ることができる。また、マイコン32は、ズームリセット位置を基準として、以後のズーム位置センサー41のステップ数を計数することにより、変倍移動枠2の絶対位置を含む正確な距離情報を得ることができる。
【0091】
絞り駆動回路39は絞りユニット61を駆動し、撮像素子6の信号をカメラ信号処理回路40で信号処理する。その信号とマイコン32に取り込まれた映像信号の明るさ情報に基づいて絞り開口径が制御される。
【0092】
また、フォーカス操作スイッチ42の操作により、合焦移動枠4を移動させることにより、合焦位置を調整することができる。また、ズーム操作スイッチ43を操作することにより、ズームモーター駆動回路38とフォーカスモーター駆動回路37により、変倍移動枠2を駆動するとともに合焦移動枠4を移動させて変倍動作を行うことができる。
【0093】
スライダー21の着磁は、2方向に着磁された2極着磁であるが、1方向の1極着磁でもよい。
【0094】
本実施例によれば、振動子16の取付部16eに取り付けられた振動子保持部材15の取付部15aにフレキシブル配線板409の固定部409bを取り付けることにより、フレキシブル配線板409の振動を抑制することができる。フレキシブル配線板409は振動の大きい電気機械変換素子16aに取り付けられた箇所から、振動の少ない箇所へ取り付けられるまでの長さを短くすることができ、フレキシブル配線板409が振動する範囲を小さくすることが出来る。この結果、フレキシブル配線板409からの騒音の発生を抑制して撮影時の障害を防止することができる。
【0095】
本実施例は、振動子保持部材15と板ばね12の間にフレキシブル配線板409を取り付けたが、振動子保持部材15と振動子16の弾性部材16bの取付部16eとの間にフレキシブル配線板409を取り付けてもよい。
【0096】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は本実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の光学機器はカメラなどの用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
16、208…振動子(振動部材)、16a、208a…電気機械変換素子、16b、208b…弾性部材、208c…平面部(第1の取付部)、208e…取付部(第2の取付部)209c…第1の固定部、209d…第2の固定部、21…スライダー(接触部材)、207…接触環(接触部材)、209、309、409…フレキシブル配線板、15…振動子保持部材、212…振動子保持枠(振動子保持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換作用により、振動が励起される振動部材と、前記振動部材と圧接する接触部材と、を相対移動させる振動型リニアアクチュエータであって、
前記振動部材に電気信号を与える配線板を有し、
前記振動部材は、前記電気−機械エネルギー変換作用を行う電気機械変換素子が取り付けられる第1の取付部と、当該第1の取付部から突出する第2の取付部と、を有する弾性部材を有し、
前記配線板は前記弾性部材の前記第2の取付部に固定される固定部を有することを特徴とする振動型リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記振動部材の前記接触部材に対する位置または傾きを変化させ、前記振動部材と前記接触部材との圧接力よりも小さな力を受けて弾性変形する板ばねを更に有し、
前記配線板の固定部は、前記板ばねを介して前記弾性部材の前記第2の取付部に固定されることを特徴とする請求項1に記載の振動型リニアアクチュエータ。
【請求項3】
振動部材は、面外1次曲げ振動と面外2次曲げ振動を発生し、
前記弾性部材の前記第2の取付部は、前記振動部材の面外1次曲げ振動の節近傍から突出していることを特徴とする請求項1または2に記載の振動型リニアアクチュエータ。
【請求項4】
振動部材は、面外1次曲げ振動と面外2次曲げ振動を発生し、
前記弾性部材の前記第2の取付部は、前記振動部材の面外2次曲げ振動の節近傍から突出していることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の振動型リニアアクチュエータ。
【請求項5】
振動部材は、面外1次曲げ振動と面外2次曲げ振動を発生し、
前記配線板は、フレキシブル配線板であり、前記振動部材の面外1次曲げ振動の節近傍から引き出されていることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載の振動型リニアアクチュエータ。
【請求項6】
振動部材は、面外1次曲げ振動と面外2次曲げ振動を発生し、
前記配線板は、フレキシブル配線板であり、前記振動部材の面外2次曲げ振動の節近傍から引き出されていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項に記載の振動型リニアアクチュエータ。
【請求項7】
電気−機械エネルギー変換作用により、振動が励起される振動部材と、前記振動部材と圧接する接触部材と、を相対移動させる振動型リニアアクチュエータであって、
前記振動部材を保持する振動子保持部材と、
前記振動子保持部材に固定される固定部を有し、前記振動部材に電気信号を与える配線板と、
を有することを特徴とする振動型リニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記振動部材の前記接触部材に対する位置または傾きを変化させ、前記振動部材と前記接触部材との圧接力よりも小さな力を受けて弾性変形する板ばねを更に有し、
前記配線板の固定部は、前記板ばねを介して前記振動子保持部材に固定されていることを特徴とする請求項7に記載の振動型リニアアクチュエータ。
【請求項9】
光学素子と、
当該光学素子を駆動する請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の振動型リニアアクチュエータと、
を有することを特徴とする光学機器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−227988(P2012−227988A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90641(P2011−90641)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】