説明

振動型乾燥機

【課題】充分な混合乾燥時間を稼ぐことができる振動型乾燥機を提供する。
【解決手段】筒体の軸方向の両端部が閉塞部材によって閉塞された容器本体4と、この容易機本体4の内部を加熱する加熱手段4a、4bと、上記容器本体を弾性体を介して揺動自在に支持する支持部材20、21と、上記容器本体に固定されて容器本体に振動を与える振動発生装置5とを備えた振動型乾燥機とした。上記容器本体は、軸方向を水平方向に向けて配設するとともに、軸方向の一端部に原料の供給口を形成し、その内部には下方空間を仕切る邪魔板43、44、45を上記軸方向に向けて複数枚設けて、当該邪魔板の下部には、上記原料の通過孔43a、44a、45aを形成した。上記容器本体の軸方向の他端部には、上記容器本体の底部に第1の原料排出口を、上記閉塞部材の上記邪魔板の上部よりも高い位置に第2の原料排出口をそれぞれ形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、化学、医薬、電子材料分野などで使用される粉体などの原料に振動を与えつつ上記原料を加熱乾燥させるための振動型乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品あるいは化学製品等の製造工程においては、各種粉末を乾燥処理するための様々な形式の乾燥機が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
図4は、上記乾燥機の一種である従来の振動型乾燥機を示すものである。
この乾燥機は、基台90上に立設された4本の支柱91と、これら支柱91に弾性を有するラバースプリング92を介して揺動自在に支承された容器本体9とから概略構成されたものである。
【0003】
ここで、容器本体9は、内部に温水や蒸気等の加熱媒体が供給される内殻9aと外殻9bとの2重構造に構成されるとともに、その外周面には保温材(図示を略す)が施されており、容器本体9の上部には、原料の投入管98が接続され、かつ底部には、ボールバルブを介してフレキシブルな原料排出管99が接続されている。
【0004】
そして、容器本体9の下部には、支柱91間を下方に垂下する厚板状の取付板93が一体化されており、これら取付板93の外周面には、それぞれ電動の振動発生装置94が上記支柱91間に位置するように固定されている。
【0005】
上記構成からなる従来の振動型乾燥機によれば、投入管98から容器本体9内に乾燥処理すべき粉末を投入し、これを内殻9aと外殻9bとの間に供給された熱媒体によって加熱しつつ、振動発生装置94を作動させて容器本体9自体を支柱91に対して揺動させることにより、上記粉末を均一に乾燥処理することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−73088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の振動型乾燥機にあっては、投入管98から容器本体9の内部に投入されてから、粉末原料が振動発生装置94による容器本体9の揺動によって原料排出管99に至るまでの間が混合乾燥時間となるため、揺動により速やかに排出管99へ移動してしまうことにより、充分な混合乾燥時間を稼ぎにくいという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、充分な混合乾燥時間を稼ぐことができる振動型乾燥機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、筒体の軸方向の両端部が閉塞部材によって閉塞されて構成された容器本体と、この容器本体の内部を加熱する加熱手段と、上記容器本体を弾性体を介して揺動自在に支持する支持部材と、上記容器本体に固定されて当該容器本体に振動を与える振動発生装置とを備えた振動型乾燥機において、上記容器本体は、上記軸方向を水平方向に向けて配設されるとともに、上記軸方向の一端部に原料の供給口が形成されており、上記容器本体の内部には、下方空間を仕切る邪魔板が上記軸方向に向けて複数枚設けられるとともに、当該邪魔板の下部には、上記原料の通過孔が形成されており、上記容器本体の軸方向の他端部には、上記容器本体の底部に第1の原料排出口が、上記閉塞部材の上記邪魔板の上部よりも高い位置に第2の原料排出口がそれぞれ形成されていることを特徴としている。
ここで、水平方向とは、垂直方向の対義語であって、重力の方向と直角をなす傾斜のない水平以外に、上記直角から外れて多少の傾斜を有する方向を含む意味である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の容器本体には、上記第2の原料排出口を開閉する開閉手段が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1または2に記載の振動型乾燥機によれば、容器本体の軸方向の一端部に設けられた原料の供給口から供給された原料が、他端部の底部に形成された第1の原料排出口に至るまでの間において混合乾燥されるため、最大限の混合乾燥時間を確保することができる。
【0012】
また、容器本体の内部に、下部空間を仕切る邪魔板を軸方向に向けて複数枚設けることによって、原料が揺動により第1の原料排出口方向に向けて移動した際に、邪魔板に接触することにより供給口側に戻される等して、原料の揺動による混合を促進させることができるとともに、効率的に混合乾燥時間を稼ぐこともできる。
【0013】
その際、容器本体の閉塞部材にも邪魔板の上部よりも高い位置に、第2の原料排出口が形成されているため、この第2の原料排出口から邪魔板の上方を移動してしまうオーバーフロー原料が排出される。このため、邪魔板の上方を大量のオーバーフロー原料が、殆ど混合されることなく、短時間で第1の原料排出口に向けて移動して、同排出口から排出されてしまうことを阻止できる。
換言すると、閉塞部材の開口よりも高い位置を移動する一部のオーバーフロー原料が閉塞部材の第2の原料排出口から排出されるため、残部のオーバーフロー原料は、邪魔板の上方を移動するにしても、確実に邪魔板に接触する粉体原料と混合されつつ加熱乾燥されて、第1の原料排出口に向けて移動する。従って、揺動により混合させつつ、効率的に混合乾燥時間を稼いで、充分に加熱乾燥させた残部のオーバーフロー原料を第1の原料排出口に向けて移動させることができる。
【0014】
また、大量のオーバーフロー原料が邪魔板の上方を移動することを防止することによって、供給口から供給された原料を邪魔板の下部の通過孔を通じて移動させることができる。このため、この通過孔の大きさに応じた速度で原料を移動させて、充分に混合乾燥させることができる。
【0015】
特に、請求項2に記載の振動型乾燥機によれば、開閉手段によって閉塞部材の第2の原料排出口を閉じることができるため、容器本体内を加圧または減圧雰囲気にした上で、原料を乾燥させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1および図2は、本発明に係る振動型乾燥機に適用した一実施形態を示すもので、図中符号20がこの乾燥機全体を床上に固定するための下部ベースである。この下部ベース20には、複数本(本実施形態においては6本)の支柱21が立設されており、これらの支柱21は、後述の容器本体4の周方向に離間して配設された2本を一対とする複数対(本実施形態においては3対)となって設けられている。これら下部ベース20および支柱21によってこの乾燥機における支持部材が構成されている。
【0017】
そして、支柱21の上端部に、ゴム製のスプリング(弾性体)22を間に介して容器本体4が一体的に設けられている。
この容器本体4は、円筒体の両端部がそれぞれ円板状の閉塞部材40、41によって閉塞されるとともに、上記円筒体が内殻4aと外殻4bとによる二重管構造となっており、この内殻4aと外殻4bとの間には、図示されない流入口や流出口により温水や蒸気等の加熱媒体が循環供給されるようになっている。従って、この内殻4a、外殻4bおよび加熱媒体の循環供給手段によって容器本体4の加熱手段が構成されている。
【0018】
また、容器本体4は、その軸方向の一端の天井部に原料の投入口(供給口)が形成されており、この投入口には、投入配管42が接続されている。
【0019】
さらに、容器本体4の内部には、下部空間を仕切る略半円板状の邪魔板43、44、45が軸方向に向けて複数枚(本実施形態においては3枚)設置されており、各邪魔板43、44、45は、それぞれ直線状の外周部を水平に配置するように、円弧状の外周部が容器本体4と一体に設けられている。また、各邪魔板43、44、45の下部には、それぞれ2焦点を容器本体4の周方向に離間させた楕円状の開口43a、44a、45aが原料の通過孔として形成されている。
【0020】
さらにまた、容器本体4の軸方向の他端側には、容器本体4の底部に第1の原料排出口が形成されるとともに、閉塞部材41にも第2の原料排出口が形成されており、この第1の原料排出口に連通するようにボールバルブ46が容器本体4の底部に直に取り付けられ、かつこのボールバルブ46には、排出管(図示を略す)が接続されている。
【0021】
他方、閉塞部材41の第2の原料排出口は、邪魔板43、44、45の上部より上方に形成されるとともに、排出管47が接続されており、容器本体4には、この第2の原料排出口からの粉末原料の排出を遮断する遮断板48aが閉塞部材41に沿って上下方向にスライド自在に設けられ、かつこの遮断板48aは、当該遮断板48aを上下方向にスライドさせるガイド板48bなどのスライド機構とともにスライド式ゲート(開閉手段)48を構成している。
さらに、この閉塞部材41は、ヒンジなどの金具によって容器本体4の円筒体に止められた部分を軸として孤を描くように開閉可能な片開き戸構造となっている。
また、容器本体4の投入配管42側の外周には、図示されない保温材が設けられている。
【0022】
そして、容器本体4の下部には、当該下部に一体に設けられて、下方に垂下する厚板状の3本の取付板49が、それぞれ容器本体4の周方向に離間して設けられた各対の支柱21間に配設されている。各取付板49の外周面には、それぞれ振動発生装置5が、支柱21間に位置するように固定されており、本実施形態の振動型乾燥機は、これらの振動発生装置5を作動させる電動機50が設けられている。
【0023】
以上の構成からなる振動型乾燥機においては、従来のものと同様に、原料の粉末を投入配管42から容器本体4内に投入し、容器本体4の内殻4aと外殻4bとの間に加熱媒体を供給して内部の粉末を加熱しつつ、電動機50によって振動発生装置5を作動させて容器本体4自体を支柱21に対して揺動させる。
【0024】
これにより、内部の上記粉末が飛散流動して、均一かつ効率的に乾燥処理されるため、ボールバルブ46を開くことにより、乾燥処理した粉体を、容器本体4の底部の第1の原料排出口から別途容器等へと排出することができる。
また、スライド式ゲート48における遮断板48aを上方にスライドさせて、閉塞部材41の第2の原料排出口を開くことにより、邪魔板43、44、45の上方を移動するオーバーフロー原料を排出することができる。従って、邪魔板43、44、45の上方を大量のオーバーフロー原料が、殆ど混合されることなく、短時間で底部の第1の原料排出口に向けて移動してしまうことを防止できる。故に、オーバーフロー原料は、邪魔板43、44、45の上方を移動するにしても、確実に邪魔板43、44、45に接触する粉体原料と混合されつつ加熱乾燥されて、第1の原料排出口に向けて移動する。従って、粉体原料を効率的に混合乾燥することができる。
【0025】
また、邪魔板43、44、45の下部に、楕円状に形成された開口43a、44a、45aを通じて粉末原料を移動させることができるため、この粉末原料を容器本体4の内殻4aおよび外殻4b内に供給される加熱媒体によって効率的に加熱乾燥させることができる。
以上のように、効率的な混合加熱乾燥を可能としたため、粉体原料の混合加熱乾燥をバッチ方式のみならず、連続方式で行うこともできる。
加えて、閉塞部材41の第2の原料排出口から排出されたオーバーフロー原料は、充分に加熱乾燥されている場合には、第1の原料排出口から排出された原料とともに別途容器などへと排出してもよいし、必要に応じて投入配管42から再度、容器本体4内に投入することもできる。
【0026】
また、容器本体4は、円筒体を閉塞する閉塞部材41が片開き戸構造となっているため、閉塞部材41を開くことにより、簡易に洗浄などのメンテナンスを行うことができる。
【0027】
なお、本発明は、上述の実施形態に何ら限定されるものでなく、例えば、円筒体の両端部を閉塞部材40、41によって閉塞した容器本体4でなく、図3に示す縦断面における上部が直線状の傾斜を有する形状の容器本体4であってもよい。また、加熱手段として、容器本体4の内殻4aおよび外殻の間に加熱媒体を供給する構成を例示したが、これに限らず、容器本体4の外周に伝熱式のヒーターを巻回する等の他の加熱手段を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態の振動型乾燥機の外観図であって、(a)は、側面図であり、(b)は正面図である。
【図2】容器本体4の断面図であって、(a)は、図1(a)のIIa−IIa線断面図であり、(b)は、図1(b)のIIb−IIb線断面図である。
【図3】その他の実施形態における容器本体4の断面図である。
【図4】従来の振動型乾燥機を示す一部断面視した正面図である。
【符号の説明】
【0029】
4 容器本体
4a 内殻
4b 外殻
5 振動発生装置
20 下部ベース(支持部材)
21 支柱(支持部材)
40 41 閉塞部材
42 投入配管(原料の供給口に接続された配管)
43、44、45 邪魔板
43a、44a、45a 邪魔板の開口(原料の通過孔)
46 ボールバルブ (第1の原料排出口に連通するように容器本体の底部に直に取付られたバルブ)
47 排出管(第2の原料排出口に連通している排出管)
48 スライド式ゲート(開閉手段)
48a 遮断板
48b ガイド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体の軸方向の両端部が閉塞部材によって閉塞されて構成された容器本体と、この容器本体の内部を加熱する加熱手段と、上記容器本体を弾性体を介して揺動自在に支持する支持部材と、上記容器本体に固定されて当該容器本体に振動を与える振動発生装置とを備えた振動型乾燥機において、
上記容器本体は、上記軸方向を水平方向に向けて配設されるとともに、上記軸方向の一端部に原料の供給口が形成されており、
上記容器本体の内部には、下方空間を仕切る邪魔板が上記軸方向に向けて複数枚設けられるとともに、当該邪魔板の下部には、上記原料の通過孔が形成されており、
上記容器本体の軸方向の他端部には、上記容器本体の底部に第1の原料排出口が、上記閉塞部材の上記邪魔板の上部よりも高い位置に第2の原料排出口がそれぞれ形成されていることを特徴とする振動型乾燥機。
【請求項2】
上記容器本体には、上記第2の原料排出口を開閉する開閉手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の振動型乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−264697(P2009−264697A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117133(P2008−117133)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】