説明

振動片、振動子、物理量センサー、および電子機器

【課題】捩れ振動する振動片を備えた精度の高い物理量センサーを提供する。
【解決手段】振動片100は、捩れ振動モードで振動し、且つ、互いに並んでX軸方向に伸長した第1駆動梁11および第2駆動梁12と、第1駆動梁11および第2駆動梁12の一端同士および他端同士を結合する支持部21,22と、X軸方向に対し直交するY軸方向に第1駆動梁11および第2駆動梁12の各々から伸長した第1検出腕31と第2検出腕32と、を備え、駆動モードにおいて、第1駆動梁11および第2駆動梁12は互いに逆方向に捩れ振動し、第1検出腕31および第2検出腕32は、Z軸方向に振動し、且つ、第1検出腕31および第2検出腕32は、互いに同じ方向に振動し、検出モードにおいて、Y軸方向まわりに角速度が加わったときに、第1検出腕31および第2検出腕32は、X軸方向に振動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動片、振動子、角速度センサー等の物理量センサー、および電子機器に関
する。
【背景技術】
【0002】
回転角速度を検出する角速度センサーは、ナビゲーションシステム、各種装置の姿勢制
御システム、ビデオカメラやデジタルカメラの手振れ防止装置等、広範囲に採用されてい
る。これら電子機器においては小型化が可能な振動片センサーが多用されている。
【0003】
従来、振動片の角速度センサーとして、駆動振動する振動手段と、回転によって発生す
る検出振動を検出する検出手段を備える振動子であって、振動子は複数の振動系が回転軸
Zに対して交差する所定面内に伸びるように形成されているZ軸回転系の角速度を検出す
る角速度センサーが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、特許文献1の角速度センサーでは、垂直な回転軸、すなわちZ軸回転系の振動
成分の検出が可能なセンサーであり、複数の検出軸を要求するような機器に対してはセン
サーを立てて実装する必要があり、センサーデバイスとしては大型のものになってしまう

【0005】
そこで、振動子面に対して平行な回転軸を検出する角速度センサーとして、回転軸に交
差する捩れ中心軸周りに捩れ振動モードで駆動する駆動部に連設した検出部を捩れ回転振
動させ、回転運動によるコリオリ力によって生じる検出部の横屈曲振動を検出し角速度を
検出する角速度センサーが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−281372号公報
【特許文献2】特開2007−212355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の特許文献2による角速度センサーであっても、捩れ振動により端部に備
えた検出腕をZ方向に振動させるために、振動子の寸法精度、いわゆる加工ばらつきによ
って、振動漏れが発生し角速度に基づかない信号を出力することによる検出精度の低下を
起こすものであった。
【0008】
そこで、回転軸を振動子の面内に有しながら、振動漏れの少ない精度の高い角速度セン
サー(物理量センサー)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形
態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例にかかる振動片は、角速度により生ずるコリオリ力に応じた効果
により回転運動を検出する振動片であって、捩れ振動モードで振動し、伸長方向が互いに
平行となるように配置した第1梁と第2梁とを備えた駆動梁と、前記第1梁と前記第2梁
との両端を結合する支持部と、前記駆動梁の伸長方向に対して直交し、前記第1梁の側面
および前記第2梁の側面から他方の梁から離れる方向に延出し回転運動を検出する1以上
の検出腕と、を備え、前記第1梁から延出する前記検出腕の延出軸と前記第2梁から延出
する前記検出腕の延出軸とが略同一軸であることを特徴とする。
また、他の態様として、本適用例にかかる振動片は、捩れ振動モードで振動し、且つ、
互いに並んで第1方向に伸長した第1梁と第2梁とを備えた駆動梁と、前記第1梁および
前記第2梁の一端同士および他端同士を結合する支持部と、前記第1方向に対し平面視で
直交する第2方向に、前記第1梁および前記第2梁の各々から伸長した検出腕と、を備え
、駆動モードにおいて、前記第1梁および前記第2梁は互いに逆方向に捩れ振動し、前記
検出腕の各々は、前記第1方向および前記第2方向を含む平面の法線方向に振動し、且つ
、前記第1梁から伸長した前記検出腕と、前記第2梁から伸長した前記検出腕とは、互い
に同じ方向に振動し、検出モードにおいて、前記第2方向まわりに角速度が加わったとき
に、前記検出腕は前記第1方向に振動することを特徴とする。
また、他の態様として、本適用例にかかる振動片は、前記第1梁の前記検出腕は、前記
第2梁側とは反対側に伸長し、且つ、前記第2梁の前記検出腕は、前記第1梁側とは反対
側に伸長したことを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、捩れ振動する梁から延出した検出腕には面外方向の屈曲振動が与え
られる。この検出腕に回転運動、すなわち角速度が加わり生じるコリオリ力により面内振
動が発生する。しかし、検出腕自体には励振部材は備えていないため、製造能力(ばらつ
き)によって生じる検出腕断面形状におけるずれを原因とする機械結合を発生させない。
すなわち、回転角速度がかからない状態で、検出腕は正確に角速度=0を出力することが
できる。したがって、より正確な角速度検出をすることができる。
また、第1梁と第2梁とは、互いに逆方向に捩れ振動するため、支持部において支持部
を回転させようとするモーメントは相殺されて総和で零となる。よって、支持部の回転方
向の負荷が抑制され、パッケージとの固定品質を安定させることができる。
【0012】
[適用例2]上記適用例にかかる振動片において、前記第1梁および前記第2梁の捩れ
振動モードが、同一梁内において2以上の捩れ振動部を有し、隣り合う振動部の捩れ振動
モードが異相であることを特徴とする。
また、他の態様として、上記適用例にかかる振動片において、前記第1梁および前記第
2梁の各々は、同一梁内において捩れ振動モードが異なる第1領域と第2領域とを有し、
前記第1領域および前記第2領域の各々には前記検出腕が設けられ、且つ、前記駆動モー
ドにおいて、前記第1領域に設けられた前記検出腕と前記第2領域に設けられた前記検出
腕とが互いに逆方向に振動することを特徴とする。
【0013】
上述の適用例によれば、検出腕に発生するコリオリ力による面内振動により発生する電
荷が、異相の場合には各振動モードに対応する検出腕の面内振動モードが逆相となり、検
出される電荷を差動増幅することによって、加速度成分をキャンセルすることが可能とな
る。これにより、例えば、携帯機器に搭載した場合には、機器に加わる振動等の加速度成
分を排除し、正確に角速度成分のみを抽出できるため、より正確な角速度の検出をするこ
とができる。
【0014】
[適用例3]上記適用例にかかる振動片において、前記振動片が水晶であることを特徴
とする。
【0015】
上述の適用例によれば、温度特性に優れた小型・薄型の振動片を得ることができる。
【0016】
[適用例4]本適用例にかかる振動子は、上記適用例に記載の振動片を実装したことを
特徴とする。
また、他の態様として、本適用例にかかる振動子は、適用例1ないし適用例3のいずれ
か一例に記載の振動片と、前記振動片を収容するパッケージとを備えたことを特徴とする

【0017】
上述の適用例によれば、例えば、薄型の面内方向に回転軸を持つ回転を検出する角速度
センサーとなる振動子を得ることができる。
【0018】
[適用例5]本適用例にかかる物理量センサーは、適用例1ないし適用例3のいずれか
一例に記載の振動片を備えたことを特徴とする。
【0019】
上述の適用例によれば、例えば、薄型の面内方向に回転軸を持つ回転を検出する物理量
センサーとしての角速度センサーを得ることができる。
【0020】
[適用例6]本適用例にかかる電子機器は、適用例1ないし適用例3のいずれか一例に
記載の振動片を備えたことを特徴とする。
【0021】
上述の適用例によれば、上記適用例に記載の効果を奏する電子機器を得ることができる

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態を示す概略斜視図。
【図2】第1実施形態の動作を説明する(a)概略斜視図、(b)正面図。
【図3】第1実施形態の動作を説明する(a)概略斜視図、(b)正面図。
【図4】振動片の支持部におけるモーメントを説明する模式図。
【図5】第1実施形態の電極膜の構成を示す、(a)は模式的斜視図、(b)(c)は矢視図。
【図6】第2実施形態を示す概略斜視図。
【図7】第2実施形態の動作を説明する(a)平面図、(b)(c)検出腕部断面図。
【図8】第2実施形態の他の実施例を示す概略斜視図。
【図9】実施形態の製造工程を示すフローチャート。
【図10】実施形態の製造方法を示す断面図。
【図11】第2実施形態の他の実施例を実装した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施形態を説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は本実施形態の振動片を示す概略斜視図である。振動片100は、例えば圧電材料
により形成されるが、本実施形態では水晶基板から形成される振動片100により説明す
る。振動片100は水晶の電気軸と呼ばれるX軸、機械軸と呼ばれるY軸および光学軸と
呼ばれるZ軸のうち、X軸とY軸とを平面方向に切り出したZカットの基板から形成され
ている。
【0025】
振動片100はX軸方向(第1方向)に平行に延在する第1駆動梁11と第2駆動梁1
2と、各駆動梁11,12の両端に備える支持部21と支持部22と、各駆動梁11,1
2の中央からY軸方向(第2方向)に沿って他の一方の駆動梁側とは反対側に延出(伸長
)する第1検出腕31と第2検出腕32とを備えている。
【0026】
第1駆動梁11と第2駆動梁12とには、第1駆動梁11と第2駆動梁12とを捩れ振
動モードで振動を駆動させる励振電極を備えている。また、第1検出腕31と第2検出腕
32とには、Y軸方向に回転軸を持つ回転(第2方向まわりの角速度)が振動片100に
加わった時に生じる各第1検出腕31、第2検出腕32に発生するコリオリ力による振動
を検出する検出電極を備えている。
【0027】
次に図2、図3に基づき、振動片100の動作を説明する。振動片100は第1検出腕
31、第2検出腕32の延在方向であるY軸に沿って回転中心軸を持つ角速度ωを検出す
るジャイロセンサーである。
【0028】
第1駆動梁11、第2駆動梁12はX軸方向に捩れ中心軸を持つ捩れ振動モードを励振
される。また、第1駆動梁11と第2駆動梁12との捩れ振動の方向は異相(逆相)とな
っている。すなわち図2(a)では第1駆動梁11はX(+)方向に対して時計回り、第
2駆動梁12はX(+)方向に対して反時計回りに捩れ、図3(a)では第1駆動梁11
はX(+)方向に対して反時計回り、第2駆動梁12はX(+)方向に対して時計回りに
捩れ、これを繰り返す捩れ振動をしている。
【0029】
第1駆動梁11、第2駆動梁12の捩れ振動により、第1駆動梁11、第2駆動梁12
に結合している第1検出腕31、第2検出腕32は振動片100の正面図となる図2(b
)および図3(b)に示すように第1検出腕31、第2検出腕32の先端部は矢印方向に
変位(振動)し、実質的にZ軸方向に屈曲振動する。いわゆる面外振動する振動腕となっ
ている。
【0030】
ここに、Y軸方向に沿った回転軸を持つ回転運動による角速度ωが負荷されると、第1
検出腕31、第2検出腕32にはコリオリ力により図2(a)、図3(a)に示すr方向
の振動、いわゆる面内屈曲振動が発生する。この第1検出腕31、第2検出腕32の面内
振動rを検出し、得られた信号から角速度ωを演算する。
【0031】
上述の通り、第1検出腕31、第2検出腕32自体には励振させる手段(励振電極)を
備えず、第1駆動梁11、第2駆動梁12の捩れ振動により駆動されていることで、第1
検出腕31、第2検出腕32の駆動振動に対する第1検出腕31、第2検出腕32の断面
形状におけるずれを原因とする機械結合はきわめて小さくできる。したがって角速度ωの
検出に対してノイズの少ない信号を第1検出腕31、第2検出腕32より得ることができ
る。
【0032】
更に、第1駆動梁11、第2駆動梁12を異相振動させることにより、図4に示すよう
に支持部21が第1駆動梁11、第2駆動梁12と接合する面21aでは逆方向の捩れモ
ーメントが掛っている。したがって支持部21の中央部では支持部21を回転させようと
するモーメントは相殺されて総和で零となる。よって、支持部21の回転方向の負荷が抑
制され、パッケージとの固定品質を安定させることができる。もちろん、第1駆動梁11
、第2駆動梁12の支持部21への振動漏れも抑制することができる。なお、図示はしな
いが支持部22においても同様の作用により、同様の効果を得ることができる。
【0033】
なお、第1検出腕31および第2検出腕32は、第1駆動梁11および第2駆動梁12
の間の内側に向かって伸長させても良い。好ましくは、図示のように第1駆動梁11およ
び第2駆動梁12の外側に向かって伸長する構成の方が、第1駆動梁11と第2駆動梁1
2とを近接させて配置することができ、第1駆動梁11と第2駆動梁12とで捩れ振動の
誤差が小さくなり、検出感度を高める上で有利である。
【0034】
上述の振動片100に形成されている電極膜について、電極膜の配置を模式的に示す図
5により説明する。図5(a)に示す振動片100の模式的斜視図において、矢印S方向
(以後、表面という)からの矢視図を図5(b)に、矢印T方向(以後、裏面という)か
らの矢視図を図5(c)に示す。
【0035】
図5(b)に示すように、第1駆動梁11の表面には表面駆動用電極51a,61a、
第2駆動梁12の表面には表面駆動用電極52a,62aが配置されている。表面駆動用
電極51a,52aは、表面駆動用電極61a,62aの外側に配置され、配線51c,
52cによって接続され接続電極50に接続されている。また、表面駆動用電極61a,
62aは、配線61c,62cによって接続され接続電極60に接続されている。
【0036】
また、図5(c)に示すように、第1駆動梁11の裏面には裏面駆動用電極51b,6
1b、第2駆動梁12の裏面には裏面駆動用電極52b,62bが配置されている。裏面
駆動用電極51b,52bは裏面駆動用電極61b,62bの内側に配置され、配線51
d,52dによって接続される。さらに裏面の配線51d,52dは、表面の配線51c
,52cと振動片100の側面で接続され、接続電極50に接続されている。
【0037】
裏面駆動用電極61b,62bは、配線61d,62dによって接続される。さらに裏
面の配線61d,62dは、表面の配線61c,62cと振動片100の側面で接続され
、接続電極60に接続されている。
【0038】
図5(b)に示すように、第1検出腕31の表面には表面検出電極71aが配置され、
側面配線71cによって接続電極71dに接続されている。同様に、第2検出腕32の表
面には表面検出電極72aが配置され、側面配線72cによって接続電極72dに接続さ
れている。
【0039】
図5(c)に示すように、第1検出腕31の裏面には裏面検出電極71bが配置され、
側面配線71cと接続され、接続電極71dに接続されている。同様に、第2検出腕32
の裏面には裏面検出電極72bが配置され、側面配線72cと接続され、接続電極72d
に接続されている。
【0040】
図5(b)に示すように、第1検出腕31の側面には第1検出腕側面電極81a,81
bが配置され、配線81cによって接続され、さらに側面配線81dによって接続電極8
1eに接続されている。また第2検出腕32の側面には第2検出腕側面電極82a,82
bが配置され、配線82cによって接続され、さらに側面配線82dによって接続電極8
2eに接続されている。
【0041】
なお、振動片100の材質として、水晶以外の圧電体材料では、例えばタンタル酸リチ
ウム、ニオブ酸リチウム等が挙げられ、また、圧電体材料以外では、シリコン等の半導体
を挙げることができる。
また、振動片100の駆動方法は、圧電体の圧電効果によるものの他に、クーロン力に
よる静電駆動であってもよい。
これらは、以下の実施形態にも適用される。
【0042】
(第2実施形態)
上述の実施形態の振動片では1本の駆動梁に1本の検出腕を備える振動片について説明
したが、次に1本の駆動梁に複数の検出腕を備える実施形態の振動片について説明する。
ここでは、1本の駆動梁に2本の検出腕を備える振動片について説明するが、3本以上の
検出腕を備える振動片であっても同様の作用と効果を得ることができる。
【0043】
図6は駆動梁に2本の検出腕を備える振動片200である。第1駆動梁211と第2駆
動梁212の両端には支持部221,222を備えている。第1駆動梁211、第2駆動
梁212からは、それぞれ検出腕231,232,233,234が延出している。第1
駆動梁211、第2駆動梁212の捩れ振動は、詳細は後述するが、駆動梁の中央部の仮
想面211a,212aを挟んで異相(逆相)の捩れ振動モードで駆動される。また、向
かい合う第1駆動梁211と第2駆動梁212は異相(逆相)の捩れ振動モードで駆動さ
れる。
【0044】
すなわち、図6に示すとおり、X(+)軸方向に対して時計回り回転をα、反時計回り
をβとし、仮想面211a,212aから支持部221側(第1領域)の駆動梁を211
b,212b、同じく支持部222側(第2領域)の駆動梁を211c,212cとした
場合、それぞれの捩れ振動方向は次のようになる。
【0045】
第1駆動梁211における支持部221側の駆動梁211bがαの捩れ方向であると、
同じ第1駆動梁211の他方の支持部222側の駆動梁211cは反対方向であるβの捩
れ方向が与えられる。また第2駆動梁212では、第2駆動梁212の支持部221側の
駆動梁212bは駆動梁211bとは反対のβの捩れ方向が与えられ、他方の支持部22
2側の駆動梁212cには駆動梁212bと反対のαの捩れ方向が与えられる。
つまり、振動片200は、同一梁(211,212)内において捩れ振動モードの捩れ
方向が異なる第1領域と第2領域とを有する。
【0046】
次に、上述の回転方向とは逆の捩れ方向が与えられ、第1駆動梁211、第2駆動梁2
12は捩れ振動モードで駆動される。この時、上述で説明したように検出腕231,23
2,233,234の先端部はZ方向に振れて、検出腕231,232,233,234
は面外振動を駆動される。
【0047】
図7で更に詳しく説明する。図7(a)に示す検出腕231,232,233,234
部分が第1駆動梁211、第2駆動梁212の捩れ振動によって変位する状態をL−L’
およびM−M’断面で図7(b)(c)に示す。図7(b)では図示する方向への駆動梁
211b,212bの捩れによって検出腕231,232の端部は図面下方への変位とな
る。この時、他方の駆動梁211c,212cは異相(逆相)に捩れ駆動され検出腕23
3,234の端部は図示上方への変位となる。
【0048】
次に、上述とは逆の捩れ方向で第1駆動梁211、第2駆動梁212は駆動され図7(
c)に示すように、図7(b)とは逆の変位が与えられ、これを繰り返して検出腕231
,232,234,235はZ軸方向に駆動され面外振動する。
【0049】
ここに、Y軸方向に沿った回転軸を持つ回転運動による角速度ωが負荷されると、検出
腕231,232,233,234にはコリオリ力により図7(a)に示すそれぞれr1
,r2,r3,r4方向の振動、いわゆる面内屈曲振動が発生する。この検出腕231,
232,233,234の面内屈曲振動r1,r2,r3,r4を検出し、得られた信号
から角速度ωを演算する。
【0050】
上述したように、検出腕231,232と検出腕233,234とは異相(逆相、互い
に逆方向)で面外振動しているため、加えられた角速度ωに対して面内屈曲振動r1,r
2と面内屈曲振動r3,r4とは逆相の屈曲振動を生じる。したがって、角速度ωだけで
はなくX軸方向の加速度が加わった場合に、検出腕231,232から得られる信号と検
出腕233,234から得られる信号とを差動増幅することによって、X軸方向の加速度
を相殺することができ、角速度ω成分のみのデータに演算することができ、誤差の少ない
角速度検出が可能となる。
【0051】
第1駆動梁211、第2駆動梁212の仮想面211a,212a位置では、上述の通
り異相(逆相)捩れ振動の境界部であり、捩れモーメントは発生していない。しかし、例
えば振動片200の製造誤差や、第1駆動梁211、第2駆動梁212は相対的に長い梁
となってしまうため、図8に示す振動片300のように駆動梁311,312の中央の仮
想面311a,312a部に中間支持部323を設けることもできる。後述する実装にお
いて、振動片300を収納するパッケージに支持部321,322の載置部に加えて、中
間支持部323に対応する位置に設けられる載置部に中間支持部323を載置・固定する
ことで、振動片300の落下による破損を抑制する振動子が得られる。
【0052】
〔振動子の製造〕
上述の振動片と、振動片を収容するパッケージと、を備えた振動子である角速度センサ
ーの製造方法について説明する。図9は角速度センサーの製造工程を示すフローチャート
、図10は角速度センサーの製造方法を示す断面図である。
【0053】
(振動片形成工程)
まず、振動片形成工程(S101)にて、図10(a)に示す平面形状の振動片を形成
する。一例として、振動片100は水晶基板からフォトリソグラフィー、エッチングによ
り外形形状を形成する。外形形成された水晶片に蒸着、スパッタリングあるいはCVD等
の方法によって表面に電極となるAu膜を成膜し、フォトリソグラフィー、エッチングに
より所定の電極膜に形成する。なお、電極膜としてはCu、Ag、W等も適用可能である

【0054】
(振動片実装工程)
次に振動片実装工程(S102)に移行する。図10(b)に示すように、パッケージ
ベース400aの内部に形成された載置部411,412に、図示しない振動片100の
一方の面に形成された接続電極を、パッケージベース400aの開口側に向けて支持部2
1,22を載置し、接着剤421,422により振動片100をパッケージベース400
aに固着する。
【0055】
次に振動片100の接続電極と、載置部411,412に設けた電極431,432と
を導電ワイヤー441,442によって電気的に接続する、いわゆるワイヤーボンディン
グを行う。電極431,432からは図示しない配線によってパッケージベース400a
の外部に形成した外部接続電極451,452に電気的に接続されている。
【0056】
(離調工程)
次に離調工程(S103)に移行する。離調工程(S103)は図10(c)に示すよ
うに、振動片100に備える図示しない電極膜と同じAu膜により形成されている調整膜
に、図示しないレーザー装置からYAGレーザー等のレーザー光500を照射し、調整膜
の一部を除去しながら行う。第1検出腕31、第2検出腕32における検出振動(屈曲振
動および捩れ振動)の周波数は、予め調整膜を付加することで所望の周波数より低く設定
されている。ここに、レーザー光500を照射し調整膜の一部を除去することで、調整膜
の質量が減り、第1検出腕31、第2検出腕32の検出振動の周波数が高くなる方向で調
整を行う。調整膜を除去する方法としては、YAGレーザーの他に電子ビーム、逆スパッ
タリング等の手法を用いることができる。
【0057】
(封止工程)
次に封止工程(S104)に移行する。封止工程(S104)において、振動片100
を実装したパッケージ400の内部を気密に封止する。図10(d)に示すように、パッ
ケージベース400aの上面に配置した蓋体600がコバール等の金属の場合、蓋体60
0とパッケージベース400aとの接合部をシーム溶接して、パッケージ400の内部を
不活性雰囲気または減圧雰囲気で気密に封止する。
また蓋体600に透明ガラスを用いた場合、蓋体600とパッケージベース400aと
の接合面413に低融点ガラスを配置して、低融点ガラスの溶融による接合を行い、パッ
ケージ400の内部を不活性雰囲気または減圧雰囲気で気密に封止する。このようにして
角速度センサー700が完成する。
【0058】
なお、蓋体600に透明ガラスを用いた場合、レーザー光は蓋体600を透過して振動
片100の調整膜に照射することができるため、封止工程(S104)の後に離調工程を
実施することも可能である。
【0059】
上述の製造方法において、図8に示す中間支持部323を備える振動片300を用いた
場合は、図11に示すパッケージを用いることが好ましい。すなわち、図11に示すパッ
ケージ400は、パッケージベース400aにおける振動片300の中間支持部323に
対応する位置に、載置部414を備え、振動片300の両端の支持部321,322をパ
ッケージベース400aに載置し固着すると同時に、中間支持部323を載置し固着する
。これにより、落下による破損を抑制することができ、信頼性の高い角速度センサーを得
ることができる。
【0060】
なお、パッケージは、平板状のパッケージベースと凹部を有する蓋体等から構成されて
いても良い。また、パッケージは、パッケージベース及び蓋体の両方に凹部を有していて
も良い。
【0061】
なお、物理量センサーとしての角速度センサーは、上記構成要素に加えて、振動片の振
動腕を捩れ振動モードで励振する励振手段としての図示しない発振回路と、角速度の発生
(コリオリ力の発生)に伴う振動から出力された出力信号を処理する検出手段としての図
示しない検出回路とを含んで構成される。
なお、検出手段には、増幅器、A/D変換回路、検出した電荷量を角速度に変換する演
算処理回路等が含まれる他、ノイズキャンセル回路等が含まれる。
【0062】
(電子機器)
上述した振動片を備えた電子機器について説明する。なお、図示は省略する。
上記振動片は、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ナビゲーション装置、ポイン
ティングデバイス、ゲームコントローラー、携帯電話、電子ブック、パーソナルコンピュ
ーター、テレビ、ビデオレコーダー、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー
、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等の電子機
器に、センシングデバイスまたはタイミングデバイスとして好適に用いることができ、い
ずれの場合にも上記実施形態で説明した効果を奏する電子機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
11…第1梁としての第1駆動梁、12…第2梁としての第2駆動梁、21,22…支
持部、31…第1検出腕、32…第2検出腕、100…振動片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捩れ振動モードで振動し、且つ、互いに並んで第1方向に伸長した第1梁と第2梁とを
備えた駆動梁と、
前記第1梁および前記第2梁の一端同士および他端同士を結合する支持部と、
前記第1方向に対し平面視で直交する第2方向に、前記第1梁および前記第2梁の各々
から伸長した検出腕と、を備え、
駆動モードにおいて、前記第1梁および前記第2梁は互いに逆方向に捩れ振動し、
前記検出腕の各々は、前記第1方向および前記第2方向を含む平面の法線方向に振動し

且つ、前記第1梁から伸長した前記検出腕と、前記第2梁から伸長した前記検出腕とは
、互いに同じ方向に振動し、
検出モードにおいて、前記第2方向まわりに角速度が加わったときに、前記検出腕は前
記第1方向に振動することを特徴とする振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の振動片において、前記第1梁の前記検出腕は、前記第2梁側とは反対
側に伸長し、
且つ、前記第2梁の前記検出腕は、前記第1梁側とは反対側に伸長したことを特徴とす
る振動片。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の振動片において、前記第1梁および前記第2梁の各々
は、同一梁内において捩れ振動モードが異なる第1領域と第2領域とを有し、
前記第1領域および前記第2領域の各々には前記検出腕が設けられ、
且つ、前記駆動モードにおいて、前記第1領域に設けられた前記検出腕と前記第2領域
に設けられた前記検出腕とが互いに逆方向に振動することを特徴とする振動片。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の振動片において、前記振動片が水晶で
あることを特徴とする振動片。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の振動片と、
前記振動片を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする振動子。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の振動片を備えたことを特徴とする物理
量センサー。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の振動片を備えたことを特徴とする電子
機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−145278(P2011−145278A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226379(P2010−226379)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】