説明

振動発生体の車体固定構造

【課題】部品数を増やすことなく且つ組付けを容易なものにしながら振動抑制機能を果たすことができる振動発生体の車体固定構造を提供する。
【解決手段】高周波振動を発生するPCUケース12を取付部材14を介して車体1に固定する固定構造である。取付部材14は、一端部24がPCUケース12に連結されて他端部28が車体1に連結されている。取付部材14が連結されるPCUケース12の取付部16にばねマス要素20をその一部として一体に形成することにより、ダイナミックダンパ機能を持たせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生体の車体固定構造に係り、特に、高周波振動を発生する振動発生体を取付部材を介して車体に固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特開2009−120109号公報(以下、特許文献1という)に、インバータと車体との間での振動伝達を抑制することを解決課題とした車体筐体固定構造が開示されている。
【0003】
この車体筐体固定構造は、インバータを収容したインバータ筐体を車体に固定するものであって、インバータ筐体に固定される筐体側ブラケットと、車体に固定される車体側ブラケットとを備える。筐体側ブラケット及び車体側ブラケットは、それぞれ、インバータ筐体または車体に接触して固定される固定側平面部を有するベース部と、相手ブラケットに結合される相手ブラケット結合部とを有している。また、相手ブラケット結合部は、それぞれのベース部の両端部から連続して、相手ブラケット側に向け屈曲した屈曲部の先端部に設けられている。
【0004】
このように構成される上記車体筐体固定構造では、ベース部によってインバータ筐体に接触して固定された筐体側ブラケットと、ベース部において車体に接触して固定された車体側ブラケットとが、各ベース部の両端部から連続する屈曲部の先端にある相手側ブラケット結合部によって互いに結合固定されている。これにより、筐体側ブラケットと車体側ブラケットとの間に空間が設けられ、インバータ筐体及び筐体側ブラケットの固定部と、車体及び車体側ブラケットとの位置が離れてインバータ筐体と車体との間の振動伝達経路の長さを大きくすることができ、その結果、距離減衰効果によってインバータと車体との間での振動伝達の抑制が図れる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−120109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の車体筐体固定構造では、インバータ筐体を車体に固定するために筐体側ブラケットおよび車体側ブラケットという2つの部材が必要になり、部品数が増えるという問題がある。また、2つのブラケットを結合させて組み合わせて車体に組付けなければならず、組付けに手間がかかるという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、部品数を増やすことなく且つ組付けを容易なものにしながら振動抑制機能を果たすことができる振動発生体の車体固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る振動発生体の車体固定構造は、高周波振動を発生する振動発生体を取付部材を介して車体に固定する固定構造であって、前記取付部材は、一端部が前記振動発生体に連結されて他端部が前記車体または前記車体に固定されるケースに連結されており、前記取付部材が連結される前記振動発生体の取付部、前記取付部材、および、前記ケースの側壁の少なくとも1つにばねマス要素をその一部として一体に形成することにより、ダイナミックダンパ機能を持たせたものである。
【0009】
本発明に係る振動発生体の車体固定構造において、前記取付部材の取付部は前記振動発生体の側面に突設されるとともにねじ挿通穴を有する締結部であり、前記ばねマス要素は前記側面に対して前記ねじ挿通穴よりも離れて位置する前記締結部の先端部に切り込みを形成することにより設けられていてもよい。
【0010】
また、本発明に係る振動発生体の車体固定構造において、前記締結部に対する切り込みは、幅または厚みが小さいばね部と、幅または厚みが大きいマス部とを区画するように形成されていてもよい。
【0011】
また、本発明に係る振動発生体の車体固定構造において、前記締結部の先端部には複数の切り込みが形成されて複数のばねマス要素が形成されていてもよい。
【0012】
また、本発明に係る振動発生体の車体固定構造において、前記取付部材は金属板材を曲げ加工して形成されるブラケットであり、前記ブラケットは、ねじによって前記振動発生体の取付部が締結される上端締結部と、この上端締結部から両側に曲げられて延伸する2つの脚部と、前記脚部から曲げられていてねじによって前記車体に固定される固定物に締結される下端締結部とを備え、前記ブラケットの上端締結部は前記取付部の締結に必要以上に延びた延長部を有し、この延長部に切り込みが形成されることによって前記ばねマス要素が形成されていてもよい。
【0013】
また、本発明に係る振動発生体の車体固定構造において、前記延長部の先端が延長方向に対して曲げられていてもよい。
【0014】
また、本発明に係る振動発生体の車体固定構造において、前記振動発生体は、リアクトルを含む電力制御装置を収容した電力制御装置用ケースであってもよい。
【0015】
さらに、本発明に係る振動発生体の車体固定構造において、前記振動発生体はリアクトルであり、前記取付部材は前記リアクトルを収容する金属筐体からなるリアクトルケースに前記リアクトルを固定するための固定部材であり、前記リアクトルケースの側壁にマス部を付加するか、または、切り込みによってばね部およびマス部を形成することによって、前記ばねマス要素が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る振動発生体の車体固定構造では、振動発生体を車体に固定するための取付部材が連結される振動発生体の取付部、取付部材、および、振動発生体を収容するケースの側壁の少なくとも1つにばねマス要素をその一部として一体に形成することによってダイナミックダンパ機能を持たせているので、部品数の増加を招くことなく、しかも、組付けが容易でありながら、ばねマス要素によるダイナミックダンパ機能によって振動発生体から車体への振動伝達を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態である振動発生体の車体固定構造を示す側面図である。
【図2】図1中の上方から見た振動発生体の車体固定構造の平面図である。
【図3】図1中のばねマス要素を示す拡大図である。
【図4】(A)は本実施形態による振動減衰の様子を示す図であり、(B)は従来の振動伝達の様子を示す図である。
【図5】第1実施形態による振動抑制効果を表す実験データを示すグラフである。
【図6】第1実施形態の変形例を示す図である。
【図7】第1実施形態の別の変形例を示す図である。
【図8】第2実施形態の振動発生体の車体固定構造を示す断面図である。
【図9】図8中の上方から見た振動発生体の車体固定構造の平面図である。
【図10】第2実施形態における取付部材であるブラケットの斜視図である。
【図11】第2実施形態における振動伝達時の変形モードを示す図である。
【図12】第3実施形態の振動発生体の車体固定構造を示す部分断面図である。
【図13】第3実施形態のばねマス要素を示す図であり、(A)はマス部の付加によってケース側面にばねマス要素を設けた例を示し、(B)はケース側面に切り込みを形成することによってばねマス要素を設けた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0019】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の振動発生体の車体固定構造(以下、適宜に車体固定構造とだけいう)10の側面図であり、図2は図1中の車体固定構造10を上方から見た平面図である。本実施形態の車体固定構造10は、例えばリアクトル等の電力制御装置(PCU(Power Control Unit)ともいう)を内部に収容したPCUケース12を車体(不図示)に固定するための構造である。本実施形態では、PCUケース12が振動発生体に相当する。
【0020】
車体固定構造10では、PCUケース12が取付部材14を介して車体1に対して直接に又は不図示の他の部材(例えばPCUトレイ)を介して間接的に固定されている。図1では、PCUケース12の1つの下側角部が側面視で示されている。
【0021】
PCUケース12は、内部の電力制御装置から発生した高周波ノイズを吸収して漏らさないようにするのに好適な金属材料、例えばアルミニウム製又はアルミ合金製の筐体により構成される。PCUケース12は、側壁面13aと、底面13bとを有する。PCUケース12の側壁面13aには、取付部16がPCUケース12から横方向に突出して一体に設けられている。取付部16は、PCUケース12の周囲に複数設けられているが、図1では1つのみを拡大して図示する。
【0022】
取付部16には、ねじ挿通孔18が縦方向または厚み方向に貫通して形成されている。取付部16は、ねじ挿通穴に挿通されるボルト19によって取付部材14の上端面に締結される締結部である。取付部16の突出方向の先端部17には、ばねマス要素20が取付部16の一部として一体に形成されている。詳細には、PCUケース12の側壁面13aに対してねじ挿通穴18よりも離れて位置する先端部17に切り込み22が横方向に形成されている。切り込み22は、ばねマス要素20を区画するように形成されている。具体的には、切り込み22の上下方向の幅は、取付部16の先端側から見て手前が狭く、奥側が広く形成されている。これにより、取付部16の先端部17には、幅または厚みが小さいばね部20aと、幅または厚みが大きいマス部(または質量部)20bとが形成され、これらのばね部20aおよびマス部20bによってばねマス要素20が構成されている。ここで、図3を参照すると、各ばねマス要素20は、ばね定数kのばね部20aと、質量mのマス部20bとで構成されることが表されている。
【0023】
図1を再び参照すると、本実施形態の車体固定構造10では、3つの切り込み22が縦方向に並んで形成されていることにより、3つのばねマス要素20が平行に形成されている。ただし、ばねマス要素20の数はこれに限定されず、1つ、2つ、または4つ以上であってもよい。また、ばねマス要素20のばね部20aおよびマス部20bの寸法、形状、大きさ等は、これらがダイナミックダンパとして機能する際にPCUケース12に生じる高周波振動を良好に減衰できる共振周波数となるように設計され得るものである。
【0024】
取付部材14は、PCUケース12を車体1に対して固定するための部材である。取付部材14は、PCUケース12の取付部16の下面に接触して連結される上端部24と、上端部24から折り曲げられて縦方向に延伸する延伸部26と、延伸部26から横方向に折り曲げられた下端部28とを有する。取付部材14の上端部24および下端部28には、それぞれ、ねじ挿通穴24a,28aが形成されている。また、取付部材14は、例えば帯状金属板を曲げ加工して好適に形成される。
【0025】
取付部材14の上端部24は、平坦な上面を有するが、PCUケース12の底面13bに接触しないように形成されている。あるいは、取付部材14は、取付部材14の上端部24が取付部16の下面だけに接触して底面13bと非接触となるのを確実にするために、図1中に一点鎖線で示すように斜めに傾斜した延伸部によって下端部28に連続するように形成されてもよい。
【0026】
取付部16に形成されたねじ挿通穴18に挿通されたボルト19が、取付部材14の上端部24のねじ挿通穴24aに挿通される。そして、取付部材14の上端部24の下方に突き出たボルト19の先端にナット30を螺合させて締め付ける。これにより、取付部材14がPCUケース12の取付部16に締結される。
【0027】
一方、取付部材14の下端部28は、ねじ挿通穴28aに挿通されたボルト29によって、車体1(または車体1に固定されることとなるPCUトレイ等の別部材)に締結される。これにより、PCUケース12が取付部材14を介して車体1に固定されることになる。
【0028】
続いて、上記構成からなる車体固定構造10の作用について説明する。図4(A)は本実施形態による振動減衰の様子を示す図であり、図4(B)は従来の振動伝達の様子を示す図である。
【0029】
図4(B)に示すように、従来のPCUケース12の車体固定構造では、PCUケース12から取付部16、取付部材14を介して車体1へとつながる振動伝達経路32が形成される。そのため、PCUに含まれるリアクトル等で生じた高周波振動がPCUケース12から車体1へと伝達されることにより、車内の乗員にとって不快なノイズとして聞こえることがあった。
【0030】
これに対し、本実施形態の車体固定構造10によれば、図4(A)に示すように、取付部16にばねマス要素20が一体に形成されており、ダイナミックダンパ機能を発揮する。これにより、PCUケース12から取付部16へ伝達する振動は、各ばねマス要素20が伝達振動に対して逆位相となるように矢印34方向にそれぞれ振動することによって減衰する。このため、振動伝達経路32を介して車体1に伝達される振動を低減することができ、その結果、車室空間の快適性を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態の車体固定構造10によれば、ばねマス要素20をPCUケース12の取付部16に一体に形成されているので、部品数を増やすことなく、ダイナミックダンパ機能を得ることができる。したがって、組付けも従来同様であって特別に手間はかからない。さらに、振動伝達経路長を長くとって振動を減衰させるものではないため、構造をコンパクトにすることができる。
【0032】
図5は、車体固定構造10による振動減衰効果を表す実験データの一例を示すグラフである。図5中の下側のグラフは、横軸にPCUケース12に発生する振動の周波数、縦軸に取付部16におけるイナータンスを示す。ここでイナータンスは、数値が小さいほど振動が減衰されていることを表している。また、図5中の上側のグラフは振動周波数に対する振動位相を示したもので、90度を跨ぐときが共振点となることを表している。また、各グラフにおいて、実線はダイナミックダンパ機能がない場合(すなわち図4(B))を示し、破線は本実施形態によるダイナミックダンパ機能を持たせた場合を示す。
【0033】
図5の下側のグラフを参照すると、周波数が約2kHzから10kHzを超えたところの広い周波数範囲で振動減衰効果があり、特に、9.5Hz辺りでの振動減衰効果を大きいことが判る。これは、PCUに含まれるスイッチング素子(例えばIGBT等)のスイッチング周波数9.5kHzに応じた高周波振動を効果的に抑えるようにばねマス要素20を設計してあることによる。したがって、ばねマス要素20のばね部20aのばね定数kおよびマス部20bの質量mを所望の周波数に応じて設計することによって、狙った高周波数帯の振動に対する大きな減衰効果が得られるのである。
【0034】
なお、上記実施形態では、ばねマス要素20を区画するための切り込み22を取付部16の横方向に延伸して形成したが、これに限定されるものではなく、種々の形態があり得る。例えば、図6に示すように、取付部16の上面から所定深さの切り込み22を形成することによってばね部20aとマス部20bとを区画形成してもよいし、あるいは、図7に示すように、取付部16の先端部17を縦方向に貫通する少なくとも1つの切り込み22によってばね部20aとマス部20bとが区画形成されてもよい。また、ばねマス要素20のマス部20bに例えば金属塊を溶接等で付けて質量を調整してもよい。
【0035】
(第2実施形態)
次に、図8〜9を参照して、第2実施形態の車体固定構造40について説明する。図8は、第2実施形態の車体固定構造40を示す断面図であり、図9は図8中の上方から見たときの車体固定構造の平面図であり、図10は、取付部材であるブラケット42の全体斜視図である。
【0036】
本実施形態の車体固定構造40では、PCUケース12がブラケット42を介して車体1に直接に又は間接的に固定されている。そして、本実施形態では、PCUケース12の取付部16にはねじ44を挿通するためのねじ挿通穴18が形成されているだけであり、ブラケット42にばねマス要素20が一体に設けられている。
【0037】
ブラケット42は、例えば金属板材を曲げ加工して形成されている。ブラケット42は、PCUケース12の取付部16がねじ44によって締結される上端締結部46と、この上端締結部46から両側に略直角に曲げられて延伸する2つの脚部48と、脚部48から略直角に曲げられて形成される下端締結部50とを備える。上端締結部46および2つの下端締結部50には、ねじ挿通穴47,51がそれぞれ形成されている。
【0038】
ブラケット42の上端締結部46は、取付部16の下面に接触する平坦な表面を有するが、取付部16の締結に必要以上に延びた延長部52を有している。この延長部52は、PCUケース12の側面13aから離れる方向に延伸している。そして、この延長部52の先端が延長方向に対して略直角に上側に曲げられている。
【0039】
また、ブラケット42の上端締結部46の延長部52には、延長方向に沿った両側縁部に切り込み22がそれぞれ形成されている。これらの切り込み22によって幅が狭くなった部分がばねマス要素20のばね部20aを形成し、切り込み22によって区画された延長部52の先端がマス部20bを形成している。このマス部20bに上方に折り曲げた部分を形成することによって、マス部20bの質量を確保しながら横方向の寸法を抑えることができる。
【0040】
本実施形態の車体固定構造40では、ねじ44がワッシャ54を介して取付部16のねじ挿通穴18およびブラケット42のねじ挿通穴47に挿通し、上端締結部46の下方に突出したねじ先端にナット56を螺合して締め付ける。これにより、PCUケース12にブラケット42が締結される。そして、ブラケット42の下端締結部50をねじ45によりPCUトレイに締結されると、PCUケース12はブラケット42およびPCUトレイを介して車体1に固定されることになる。なお、他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一または類似の要素に同一または類似の符合を付して説明を省略する。
【0041】
上記構成からなる第2実施形態の車体固定構造40によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、ブラケット42にばねマス要素20が一体に形成されており、ダイナミックダンパ機能を発揮する。これにより、PCUケース12から取付部16へ伝達する振動は、図11に示すように、各ばねマス要素20が伝達振動に対して逆位相となるように矢印34方向にそれぞれ振動することによって減衰する。このため、振動伝達経路32を介して車体1に伝達される振動を低減することができ、その結果、車室空間の快適性を向上させることができる。
【0042】
また、部品数を増やすことなく、組付けが容易であって、構造をコンパクトにできる点も、上記第1実施形態の場合と同様である。
【0043】
なお、本実施形態では、ばねマス要素20をブラケット42だけに設けているが、第1実施形態と同様にPCUケースの取付部16にもばねマス要素20を併せて設けてもよい。これにより、より大きな振動減衰効果が得られる。また、ばねマス要素20のマス部20bに例えば金属塊を溶接等で付けて質量を調整してもよい。
【0044】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の車体固定構造60について説明する。図12は、第3実施形態の車体固定構造60を示す部分断面図である。また、図13は、第3実施形態のばねマス要素20を示す図であり、(A)はマス部の付加によってケース側面にばねマス要素を設けた例を示し、(B)はケース側面に切り込みを形成することによってばねマス要素を設けた例を示す。
【0045】
本実施形態の車体固定構造60は、振動発生体であるリアクトル62をリアクトルケース68内に収容したうえで車体1に対して固定するための構造である。そして、本実施形態の車体固定構造60では、リアクトルケース68の側壁68aにばねマス要素20が一体に設けられている。
【0046】
リアクトル62は、磁性材料により形成される環状のリアクトルコア64と、リアクトルコア64に形成されるギャップ部の周囲に巻装されるコイル66とから構成される。リアクトルコア64の端部には、金属板材を折り曲げて形成されるリアクトルステイ(取付部材)70の一端部72が接着等により連結固定されている。リアクトルステイ70の他端部は、リアクトルケース68の底部にねじ76によって締結固定されている。また、リアクトル62とリアクトルケース68の底部との間には、リアクトル62の放熱性を高めるための樹脂77が充填されている。
【0047】
図13に示すように、リアクトルケース68にはばねマス要素20が一体に設けられている。ばねマス要素20は、図13(A)に示すようにリアクトルケース68の側壁68aの外面に、たとえばケースと同一材料からなる金属塊78を溶接等で付けてマス部20bを形成して側壁68aをそのままでばね部20aとして用いてもよいし、あるいは、図13(B)に示すように、側壁68aの表面に切り込み22を設けてばね部20aとマス部20bとを区画形成してもよい。
【0048】
このように構成される第3実施形態の車体固定構造60では、リアクトル62に生じた高周波振動がリアクトルステイ70を介してリアクトルケース68に伝達される。このとき、リアクトルケース68の側壁68aにばねマス要素20が一体に設けられていることでダイナミックダンパ機能を発揮し、伝達される高周波振動を減衰させることができる。
【0049】
なお、リアクトル62を収容したリアクトルケース68は、PCUケース内にインバータ等の他の電力変換装置と共に収容されて車体1に固定される場合がある。この場合、PCUケースの車体に固定するための構造として第1実施形態および第2実施形態の少なくとも一方を適用してもよい。そうすれば、リアクトルケース68による振動減衰効果と併せて、PCUケースの取付部やブラケットによる振動減衰効果も得られる。
【符号の説明】
【0050】
1 車体、10,40,60 車体固定構造、12 PCUケース、13a 側面、13b 底面、14 取付部材、16 取付部、17 先端部、18,24a,28a,47,51 ねじ挿通孔、19,29 ボルト、20 ばねマス要素、20a ばね部、20b マス部、24 上端部または一端部、26 延伸部、28 下端部または他端部、30,56 ナット、32 振動伝達経路、42 ブラケット、46 上端締結部、48 脚部、50 下端締結部、52 延長部、54 ワッシャ、62 リアクトル、64 リアクトルコア、66 コイル、68 リアクトルケース、68a 側壁、70 リアクトルステイ、72 一端部、77 樹脂、78 金属塊。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波振動を発生する振動発生体を取付部材を介して車体に固定する固定構造であって、
前記取付部材は、一端部が前記振動発生体に連結されて他端部が前記車体または前記車体に固定されるケースに連結されており、
前記取付部材が連結される前記振動発生体の取付部、前記取付部材、および、前記ケースの側壁の少なくとも1つにばねマス要素をその一部として一体に形成することにより、ダイナミックダンパ機能を持たせた、振動発生体の車体固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の振動発生体の車体固定構造において、
前記取付部材の取付部は前記振動発生体の側面に突設されるとともにねじ挿通穴を有する締結部であり、前記ばねマス要素は前記側面に対して前記ねじ挿通穴よりも離れて位置する前記締結部の先端部に切り込みを形成することにより設けられていることを特徴とする、振動発生体の車体固定構造。
【請求項3】
請求項2に記載の振動発生体の車体固定構造において、
前記締結部に対する切り込みは、幅または厚みが小さいばね部と、幅または厚みが大きいマス部とを区画するように形成されていることを特徴とする、振動発生体の車体固定構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の振動発生体の車体固定構造において、
前記締結部の先端部には複数の切り込みが形成されて複数のばねマス要素が形成されていることを特徴とする振動発生体の車体固定構造。
【請求項5】
請求項1に記載の振動発生体の車体固定構造において、
前記取付部材は金属板材を曲げ加工して形成されるブラケットであり、前記ブラケットは、ねじによって前記振動発生体の取付部が締結される上端締結部と、この上端締結部から両側に曲げられて延伸する2つの脚部と、前記脚部から曲げられていてねじによって前記車体に固定される固定物に締結される下端締結部とを備え、前記ブラケットの上端締結部は前記取付部の締結に必要以上に延びた延長部を有し、この延長部に切り込みが形成されることによって前記ばねマス要素が形成されていることを特徴とする、振動発生体の車体固定構造。
【請求項6】
請求項5に記載の振動発生体の車体固定構造において、
前記延長部の先端が延長方向に対して曲げられていることを特徴とする、振動発生体の車体固定構造。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の振動発生体の車体固定構造において、
前記振動発生体は、リアクトルを含む電力制御装置を収容した電力制御装置用ケースであることを特徴とする、振動発生体の車体固定構造。
【請求項8】
請求項1に記載の振動発生体の車体固定構造において、
前記振動発生体はリアクトルであり、前記取付部材は前記リアクトルを収容する金属筐体からなるリアクトルケースに前記リアクトルを固定するための固定部材であり、前記リアクトルケースの側壁にマス部を付加するか、または、切り込みによってばね部およびマス部を形成することによって、前記ばねマス要素が設けられることを特徴とする、振動発生体の車体固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−136072(P2012−136072A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288093(P2010−288093)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】