振動防止構造
【課題】確実に共振を回避し、エンジン運転時の振動を低減することができる振動防止構造を提供する。
【解決手段】軸2を回転可能に支持するカゴバネ3と、カゴバネ3と接触することによって一体化することができるように構成された追加物4と、を備え、追加物4をカゴバネ3に接触させることによって軸2の支持剛性を高め、追加物4をカゴバネ3から離間させることによって軸2の支持剛性を低下させる。これにより、エンジンのローターの回転数が共振回転数に近づいた場合に追加物4の移動を行って、追加物4をカゴバネ3と接触させて略一体化することにより、軸2の支持剛性を変化させることを可能とする。これによって、支持剛性を変化させて共振を回避することで振動を低減する。
【解決手段】軸2を回転可能に支持するカゴバネ3と、カゴバネ3と接触することによって一体化することができるように構成された追加物4と、を備え、追加物4をカゴバネ3に接触させることによって軸2の支持剛性を高め、追加物4をカゴバネ3から離間させることによって軸2の支持剛性を低下させる。これにより、エンジンのローターの回転数が共振回転数に近づいた場合に追加物4の移動を行って、追加物4をカゴバネ3と接触させて略一体化することにより、軸2の支持剛性を変化させることを可能とする。これによって、支持剛性を変化させて共振を回避することで振動を低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸の振動を防止する振動防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンなどの回転物の振動を防止する振動防止構造として、回転数を検出する回転数検出器と、比較回路と、基準回転数設定器とを備え、所定の回転数になるとスイッチを切り替えてノッチフィルタ回路を動作させることにより、軸受剛性を低下させて固有振動数通過を回避し、これによって、軸振動のレベルを低減するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−141422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような振動防止構造では、共振回避の効果が不十分であり、確実に軸の共振を防止することができないという問題があった。その結果、エンジンの回転数上昇時に、共振によって異常振動が生じ、エンジンの回転数を十分に上昇させることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、確実に共振を回避し、エンジン運転時の振動を低減することができる振動防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、本発明に係る振動防止構造は、軸を回転可能に支持する第一支持部材と、第一支持部材と接触することによって一体化することができるように構成された第二支持部材と、を備え、第二支持部材を第一支持部材に接触させることによって軸の支持剛性を高め、第二支持部材を第一支持部材から離間させることによって軸の支持剛性を低下させることを特徴とする。
【0007】
この振動防止構造によれば、第二支持部材が移動して第一支持部材と接触、離間することによって、軸の支持剛性を変化させることができる。従って、回転数が共振回転数に近づいた場合に支持剛性を変化させることによって、共振を回避することができる。これによって、エンジン運転時の振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0008】
確実に共振を回避し、エンジン運転時の振動を低減することができる振動防止構造を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図2】振動防止構造の剛性Kと固有振動数Fあるいはエンジン回転数Nとの関係を示す線図である。
【図3】エンジンのローターの各振動モードにおける振動イメージを示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】本発明の第四実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図8】本発明の第五実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図9】本発明の第六実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図10】本発明の第七実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る振動防止構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る振動防止構造1の断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。
【0012】
図1に示すように、振動防止構造1は、ガスタービンなどの回転物運動時において、エンジンの回転数が上昇したときの異常振動の発生を防止するための構造である。振動防止構造1は、ローターの軸2に取り付けられるカゴバネ(第一支持部材)3と、軸2の支持剛性を調節するためにカゴバネ3に設けられた追加物(第二支持部材)4とを備えて構成されている。
【0013】
カゴバネ3は、ローターの軸2の端部を支持する機能を有する円筒カゴ状の支持部材である。このカゴバネ3は、中心軸線が軸2と一致するように配置されると共に円筒状とされて軸受6を介して軸2を支持する支持部3aと、支持部3aの他端部側で外周へ広がると共にその外周部で屈曲して一端側へ延びる屈曲部3bと、屈曲部3bの一端部から外周側に広がって軸2を取り囲む壁部7に固定されるフランジ部3cとを備えるタイプのカゴバネである。カゴバネ3は、カゴの本数及び太さによって剛性が一定に定められる。
【0014】
追加物4は、カゴバネ3と接触して略一体化できるように構成された支持部材である。この追加物4は、カゴバネ3の支持部3aの外周側に配置されており、その内周端面4aは、カゴバネ3の支持部3aの外周面と一致するような曲面とされている。この追加物4は、径方向に往復移動可能に構成されており、通常使用時においては外周側へ移動することによって内周端面4aがカゴバネ3の支持部3aの外周面から離間しているが、内周側へ移動することによって内周端面4aがカゴバネ3の支持部3aと接触して締め付けて支持することによって、カゴバネ3と略一体化することができる。これによって、締付時における軸2の支持剛性を総合的に高めることができる。なお、この追加物4は、軸方向から見たときの形状は特に限定されず、例えば、扇状の部材や、内周端面4a以外を矩形状にした部材などでもよい。また、その数量も限定されず、中心軸線周りに複数個設けてもよい。追加物4を移動させる構成は、例えば、一般的に用いられる油圧などによるアクチュエータや、磁力を利用したアクチュエータや、形状記憶合金を利用した移動機構を適用することができる。
【0015】
次に、本発明に係る振動防止構造1の作用・効果について、図2及び図3を参照して説明する。
【0016】
図2は、振動防止構造1の剛性Kと固有振動数Fあるいはエンジン回転数Nとの関係を示す線図である。図2においては、各剛性に対する一次振動モード、二次振動モード、三次振動モード、四次振動モードの特性曲線が描かれている。また、図3は、エンジンのローターの各振動モードにおける振動イメージを示す図である。図3(a)は一次振動モードを示し、(b)は二次振動モードを示し、(c)は三次振動モードを示す。なお、以下の説明においては、追加物4の締め付けを解除して低くしたときの剛性を低剛性K1とし、追加物4で締め付けることで高くしたときの剛性を高剛性K2として説明する。
【0017】
図2に示す制御例においては、まず、エンジンの運転開始時においては高剛性K2としておき、回転数が上昇して一次振動モードに近づいたポイントP1において低剛性K1に変化させることによって一次通過させる(図2中においてAで示す)。一次振動モードを回避してしばらく回転数が上昇すると、再び高剛性K2に変化させる。更に回転数が上昇して二次振動モードに近づいたら、ポイントP2において低剛性K1に変化させることによって二,三次同時通過させる(図2中においてBで示す)。
【0018】
以上によって、第一実施形態に係る振動防止構造1によれば、径方向に往復移動させることができる追加物4でカゴバネ3を支持・支持解除することによって、ローターの軸2の支持剛性を変化させることができる。従って、回転数が共振回転数に近づいた場合に支持剛性を変化させることによって、共振を回避することができる。これによって、エンジン運転時の振動を低減することができる。
【0019】
[第二実施形態]
図4を参照して本発明の第二実施形態に係る振動防止構造20の構成について説明する。図4は本発明の第二実施形態に係る振動防止構造20の断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。第二実施形態に係る振動防止構造20は、追加物21が径方向に変えて軸方向に往復移動する点で、第一実施形態に係る振動防止構造1と主に相違している。
【0020】
第二実施形態に係る振動防止構造20の追加物21は、カゴバネ3と接触して略一体化できるように構成された支持部材である。この追加物21は、カゴバネ3の支持部3aの外周側に配置されており、その内周端面21aは、カゴバネ3の支持部3aの外周面と一致するような曲面とされており、支持部3aの外周面に対してスライド可能に接触している。また、追加物21の他端側には、傾斜面21bが設けられており、当該傾斜面21bで、カゴバネ3の屈曲部3bと支持部3aとの間の角部に設けられた傾斜面3dと接触可能に構成されている。追加物21は、軸方向に移動可能に構成されており、通常使用時においては一端側へ移動することによって傾斜面21bがカゴバネ3の傾斜面3dから離間しているが、他端側へ移動することによって傾斜面21bがカゴバネ3の傾斜面3dと接触して締め付けて支持することによって、カゴバネ3と略一体化することができる。これによって、締付時における軸2の支持剛性を総合的に高めることができる。なお、この追加物21は、軸方向から見たときの形状は特に限定されず、例えば、扇状の部材や、内周端面21a以外を矩形状にした部材などでもよい。また、その数量も限定されず、中心軸線周りに複数個設けてもよい。
【0021】
[第三実施形態]
図5及び図6を参照して本発明の第三実施形態に係る振動防止構造30の構成について説明する。図5は本発明の第三実施形態に係る振動防止構造30の断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。第三実施形態に係る振動防止構造30は、追加物31が径方向に変えて周方向に往復移動する点で、第一実施形態に係る振動防止構造1と主に相違している。
【0022】
図5及び図6に示すように、第三実施形態に係る振動防止構造30の追加物31は、カゴバネ3と接触して略一体化できるように構成された支持部材である。この追加物31は、八枚のハネ状部材31aがカゴバネ3の支持部3aと屈曲部3bとの間に配置されるように構成されたハネ車形状の部材である。この追加物31の内周面は、カゴバネ3の支持部3aの外周面と一致するような円筒面とされており、支持部3aの外周面に対して周方向に回動可能に接触している。カゴバネ3の屈曲部3bの内周面からは、ハネ状部材31a同士の間の隙間に入り込むように突出した八つの突出部3eが形成されている。ハネ状部材31aはいずれも中心軸線周りの一の方向へ傾斜することによって、一方の傾斜面31cが、カゴバネ3の突出部3eの一の傾斜面3fと接触することができるように構成されている。追加物31は、周方向に往復回動可能に構成されており、通常使用時においては一方向へ回動することによって傾斜面31cがカゴバネ3の傾斜面3fから離間しているが、他方向へ回動することによって傾斜面31cがカゴバネ3の傾斜面3fと接触して締め付けて支持することによって、カゴバネ3と略一体化することができる。これによって、締付時における軸2の支持剛性を総合的に高めることができる。なお、ハネ状部材31a及び突出部3eの数量は八つに限られず、四つや二つにしてもよい。また、追加物31の押し当て力を調整することにより、そのときに生じる摩擦力の影響によってダンピング効果を得ることができる。
【0023】
[第四実施形態]
図7を参照して本発明の第四実施形態に係る振動防止構造40の構成について説明する。図7は本発明の第四実施形態に係る振動防止構造40の断面図である。第四実施形態に係る振動防止構造40は、カゴバネ41が軸方法に取り付けるタイプのものである点で、第一実施形態に係る振動防止構造1と主に相違している。
【0024】
振動防止構造40のカゴバネ41は、ローターの軸2の端部を支持する機能を有する円筒カゴ状の支持部材である。このカゴバネ41は、軸2と中心軸線が一致すると共に軸2を取り囲むように配置されており、一端側の内周面で軸受6を介して軸2を回転可能に支持し、他端側で軸2と垂直な壁部47に固定されている。カゴバネ41は、カゴの本数及び太さによって剛性が一定に定められる。
【0025】
振動防止構造40の追加物42は、カゴバネ41を支持できるように構成された、円筒カゴ状の支持部材である。この追加物は、軸2と中心軸線が一致すると共にカゴバネ41を取り囲むように配置されており、一端側にはカゴバネ41を支持するために内周側へ広がる締付部42aが設けられ、他端側で壁部47に固定されている。この追加物42は、通常使用時においてはカゴバネ41と非接触の状態が維持されるが、締付部42aを内周側へ移動させることによってカゴバネ41と接触して支持する構成とされている。具体的には、通常使用時においては、追加物42の一端側が外周側に広がることによって締付部42aがカゴバネ41の外周面から離間しているが、追加物42の一端側が内周側へ移動することによって締付部42aがカゴバネ41を締め付けて支持する構成とされている。これによって、締付時における軸2の支持剛性を高めることができる。
【0026】
[第五実施形態]
図8を参照して本発明の第五実施形態に係る振動防止構造50の構成について説明する。図8は本発明の第五実施形態に係る振動防止構造50の断面図である。第五実施形態に係る振動防止構造50は、追加物52がカゴバネ41の内周側に設けられている点で、第四実施形態に係る振動防止構造40と主に相違している。
【0027】
振動防止構造50の追加物52は、カゴバネ41を支持できるように構成された、円筒カゴ状の支持部材である。この追加物は、軸2と中心軸線が一致すると共にカゴバネ41に取り囲まれるように配置されており、一端側にはカゴバネ41を支持するために外周側へ広がる締付部52aが設けられ、他端側で壁部47に固定されている。この追加物52は、通常使用時においてはカゴバネ41と非接触の状態が維持されるが、締付部52aを外周側へ移動させることによってカゴバネ41と接触して支持する構成とされている。具体的には、通常使用時においては、追加物52の一端側が内周側へ周収縮することによって締付部52aがカゴバネ41の内周面から離間しているが、追加物52の一端側が外周側へ移動することによって締付部52aがカゴバネ41を内側から締め付けて支持する構成とされている。これによって、締付時における軸2の支持剛性を高めることができる。
【0028】
[第六実施形態]
図9を参照して本発明の第六実施形態に係る振動防止構造60の構成について説明する。図9は本発明の第六実施形態に係る振動防止構造60の断面図である。第六実施形態に係る振動防止構造60は、追加物62が軸方向に往復移動する点で、第五実施形態に係る振動防止構造50と主に相違している。
【0029】
振動防止構造60の追加物62は、カゴバネ41を支持できるように構成されており、軸2と中心軸線が一致するようにカゴバネ41の内部に配置されると共に壁部47を貫通する棒状部62aと、棒状部62aの一端部に設けられてカゴバネ41の側面に設けられた穴部41aを通過して外周側に広がる拡大部62bとを備えて構成されている。この追加物62は、通常使用時においてはカゴバネ41と非接触の状態が維持されるが、軸方向に移動することによってカゴバネ41と接触して支持する構成とされている。具体的には、通常使用時においては、追加物62の拡大部62bがカゴバネ41の穴部41aの内周面と離間しているが、追加物62が軸方向の一端側へ移動することによって拡大部62bが穴部41aの内周面と接触して締め付けて支持する構成とされている。これによって、締付時における軸2の支持剛性を高めることができる。
【0030】
[第七実施形態]
図10及び図11を参照して本発明の第七実施形態に係る振動防止構造70の構成について説明する。図10は本発明の第七実施形態に係る振動防止構造70の断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。図11は、図10のXI−XI線に沿った断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。第七実施形態に係る振動防止構造70は、追加物72が径方向に変えて周方向に往復移動する点で、第五実施形態に係る振動防止構造50と主に相違している。
【0031】
図10及び図11に示すように、第七実施形態に係る振動防止構造70の追加物72は、カゴバネ41と接触して略一体化できるように構成された支持部材である。この追加物72は、八枚のハネ状部材72aがカゴバネ41の内周側に配置されるように構成されたハネ車形状の部材である。カゴバネ41の内周面からは、ハネ状部材72a同士の間の隙間に入り込むように突出した八つの突出部41eが形成されている。ハネ状部材72aはいずれも中心軸線周りの一の方向へ傾斜することによって、一方の傾斜面72cが、カゴバネ41の突出部41eの一の傾斜面41fと接触することができるように構成されている。追加物72は、周方向に往復回動可能に構成されており、通常使用時においては一方向へ回動することによって傾斜面72cがカゴバネ41の傾斜面41fから離間しているが、他方向へ回動することによって傾斜面72cがカゴバネ41の傾斜面41fと接触して締め付けて支持することによって、カゴバネ41と略一体化することができる。これによって、締付時における軸2の支持剛性を総合的に高めることができる。なお、ハネ状部材72a及び突出部41eの数量は八つに限られず、四つや二つにしてもよい。また、追加物72の押し当て力を調整することにより、そのときに生じる摩擦力の影響によってダンピング効果を得ることができる。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0033】
例えば、本実施形態においては、振動防止構造の追加物は一種類のみ設けていたが、これに代えて、二種類、あるいはそれ以上の種類のカゴバネによって構成してもよい。カゴバネの種類を増やすことによって、変更可能な剛性値の数が増加し、一層確実に共振を回避することができる。
【0034】
また、追加物によってカゴバネの締め付けられる部分の肉厚を厚くすることによって、カゴバネのたわみを防止して、確実に剛性変化を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1,20,30,40,50,60,70…振動防止構造、2…軸、3,41…カゴバネ(第一支持部材)、4,21,31,42,52,62,72…追加物(第二支持部材)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸の振動を防止する振動防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンなどの回転物の振動を防止する振動防止構造として、回転数を検出する回転数検出器と、比較回路と、基準回転数設定器とを備え、所定の回転数になるとスイッチを切り替えてノッチフィルタ回路を動作させることにより、軸受剛性を低下させて固有振動数通過を回避し、これによって、軸振動のレベルを低減するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−141422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような振動防止構造では、共振回避の効果が不十分であり、確実に軸の共振を防止することができないという問題があった。その結果、エンジンの回転数上昇時に、共振によって異常振動が生じ、エンジンの回転数を十分に上昇させることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、確実に共振を回避し、エンジン運転時の振動を低減することができる振動防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、本発明に係る振動防止構造は、軸を回転可能に支持する第一支持部材と、第一支持部材と接触することによって一体化することができるように構成された第二支持部材と、を備え、第二支持部材を第一支持部材に接触させることによって軸の支持剛性を高め、第二支持部材を第一支持部材から離間させることによって軸の支持剛性を低下させることを特徴とする。
【0007】
この振動防止構造によれば、第二支持部材が移動して第一支持部材と接触、離間することによって、軸の支持剛性を変化させることができる。従って、回転数が共振回転数に近づいた場合に支持剛性を変化させることによって、共振を回避することができる。これによって、エンジン運転時の振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0008】
確実に共振を回避し、エンジン運転時の振動を低減することができる振動防止構造を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図2】振動防止構造の剛性Kと固有振動数Fあるいはエンジン回転数Nとの関係を示す線図である。
【図3】エンジンのローターの各振動モードにおける振動イメージを示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】本発明の第四実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図8】本発明の第五実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図9】本発明の第六実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図10】本発明の第七実施形態に係る振動防止構造の断面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る振動防止構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る振動防止構造1の断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。
【0012】
図1に示すように、振動防止構造1は、ガスタービンなどの回転物運動時において、エンジンの回転数が上昇したときの異常振動の発生を防止するための構造である。振動防止構造1は、ローターの軸2に取り付けられるカゴバネ(第一支持部材)3と、軸2の支持剛性を調節するためにカゴバネ3に設けられた追加物(第二支持部材)4とを備えて構成されている。
【0013】
カゴバネ3は、ローターの軸2の端部を支持する機能を有する円筒カゴ状の支持部材である。このカゴバネ3は、中心軸線が軸2と一致するように配置されると共に円筒状とされて軸受6を介して軸2を支持する支持部3aと、支持部3aの他端部側で外周へ広がると共にその外周部で屈曲して一端側へ延びる屈曲部3bと、屈曲部3bの一端部から外周側に広がって軸2を取り囲む壁部7に固定されるフランジ部3cとを備えるタイプのカゴバネである。カゴバネ3は、カゴの本数及び太さによって剛性が一定に定められる。
【0014】
追加物4は、カゴバネ3と接触して略一体化できるように構成された支持部材である。この追加物4は、カゴバネ3の支持部3aの外周側に配置されており、その内周端面4aは、カゴバネ3の支持部3aの外周面と一致するような曲面とされている。この追加物4は、径方向に往復移動可能に構成されており、通常使用時においては外周側へ移動することによって内周端面4aがカゴバネ3の支持部3aの外周面から離間しているが、内周側へ移動することによって内周端面4aがカゴバネ3の支持部3aと接触して締め付けて支持することによって、カゴバネ3と略一体化することができる。これによって、締付時における軸2の支持剛性を総合的に高めることができる。なお、この追加物4は、軸方向から見たときの形状は特に限定されず、例えば、扇状の部材や、内周端面4a以外を矩形状にした部材などでもよい。また、その数量も限定されず、中心軸線周りに複数個設けてもよい。追加物4を移動させる構成は、例えば、一般的に用いられる油圧などによるアクチュエータや、磁力を利用したアクチュエータや、形状記憶合金を利用した移動機構を適用することができる。
【0015】
次に、本発明に係る振動防止構造1の作用・効果について、図2及び図3を参照して説明する。
【0016】
図2は、振動防止構造1の剛性Kと固有振動数Fあるいはエンジン回転数Nとの関係を示す線図である。図2においては、各剛性に対する一次振動モード、二次振動モード、三次振動モード、四次振動モードの特性曲線が描かれている。また、図3は、エンジンのローターの各振動モードにおける振動イメージを示す図である。図3(a)は一次振動モードを示し、(b)は二次振動モードを示し、(c)は三次振動モードを示す。なお、以下の説明においては、追加物4の締め付けを解除して低くしたときの剛性を低剛性K1とし、追加物4で締め付けることで高くしたときの剛性を高剛性K2として説明する。
【0017】
図2に示す制御例においては、まず、エンジンの運転開始時においては高剛性K2としておき、回転数が上昇して一次振動モードに近づいたポイントP1において低剛性K1に変化させることによって一次通過させる(図2中においてAで示す)。一次振動モードを回避してしばらく回転数が上昇すると、再び高剛性K2に変化させる。更に回転数が上昇して二次振動モードに近づいたら、ポイントP2において低剛性K1に変化させることによって二,三次同時通過させる(図2中においてBで示す)。
【0018】
以上によって、第一実施形態に係る振動防止構造1によれば、径方向に往復移動させることができる追加物4でカゴバネ3を支持・支持解除することによって、ローターの軸2の支持剛性を変化させることができる。従って、回転数が共振回転数に近づいた場合に支持剛性を変化させることによって、共振を回避することができる。これによって、エンジン運転時の振動を低減することができる。
【0019】
[第二実施形態]
図4を参照して本発明の第二実施形態に係る振動防止構造20の構成について説明する。図4は本発明の第二実施形態に係る振動防止構造20の断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。第二実施形態に係る振動防止構造20は、追加物21が径方向に変えて軸方向に往復移動する点で、第一実施形態に係る振動防止構造1と主に相違している。
【0020】
第二実施形態に係る振動防止構造20の追加物21は、カゴバネ3と接触して略一体化できるように構成された支持部材である。この追加物21は、カゴバネ3の支持部3aの外周側に配置されており、その内周端面21aは、カゴバネ3の支持部3aの外周面と一致するような曲面とされており、支持部3aの外周面に対してスライド可能に接触している。また、追加物21の他端側には、傾斜面21bが設けられており、当該傾斜面21bで、カゴバネ3の屈曲部3bと支持部3aとの間の角部に設けられた傾斜面3dと接触可能に構成されている。追加物21は、軸方向に移動可能に構成されており、通常使用時においては一端側へ移動することによって傾斜面21bがカゴバネ3の傾斜面3dから離間しているが、他端側へ移動することによって傾斜面21bがカゴバネ3の傾斜面3dと接触して締め付けて支持することによって、カゴバネ3と略一体化することができる。これによって、締付時における軸2の支持剛性を総合的に高めることができる。なお、この追加物21は、軸方向から見たときの形状は特に限定されず、例えば、扇状の部材や、内周端面21a以外を矩形状にした部材などでもよい。また、その数量も限定されず、中心軸線周りに複数個設けてもよい。
【0021】
[第三実施形態]
図5及び図6を参照して本発明の第三実施形態に係る振動防止構造30の構成について説明する。図5は本発明の第三実施形態に係る振動防止構造30の断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。第三実施形態に係る振動防止構造30は、追加物31が径方向に変えて周方向に往復移動する点で、第一実施形態に係る振動防止構造1と主に相違している。
【0022】
図5及び図6に示すように、第三実施形態に係る振動防止構造30の追加物31は、カゴバネ3と接触して略一体化できるように構成された支持部材である。この追加物31は、八枚のハネ状部材31aがカゴバネ3の支持部3aと屈曲部3bとの間に配置されるように構成されたハネ車形状の部材である。この追加物31の内周面は、カゴバネ3の支持部3aの外周面と一致するような円筒面とされており、支持部3aの外周面に対して周方向に回動可能に接触している。カゴバネ3の屈曲部3bの内周面からは、ハネ状部材31a同士の間の隙間に入り込むように突出した八つの突出部3eが形成されている。ハネ状部材31aはいずれも中心軸線周りの一の方向へ傾斜することによって、一方の傾斜面31cが、カゴバネ3の突出部3eの一の傾斜面3fと接触することができるように構成されている。追加物31は、周方向に往復回動可能に構成されており、通常使用時においては一方向へ回動することによって傾斜面31cがカゴバネ3の傾斜面3fから離間しているが、他方向へ回動することによって傾斜面31cがカゴバネ3の傾斜面3fと接触して締め付けて支持することによって、カゴバネ3と略一体化することができる。これによって、締付時における軸2の支持剛性を総合的に高めることができる。なお、ハネ状部材31a及び突出部3eの数量は八つに限られず、四つや二つにしてもよい。また、追加物31の押し当て力を調整することにより、そのときに生じる摩擦力の影響によってダンピング効果を得ることができる。
【0023】
[第四実施形態]
図7を参照して本発明の第四実施形態に係る振動防止構造40の構成について説明する。図7は本発明の第四実施形態に係る振動防止構造40の断面図である。第四実施形態に係る振動防止構造40は、カゴバネ41が軸方法に取り付けるタイプのものである点で、第一実施形態に係る振動防止構造1と主に相違している。
【0024】
振動防止構造40のカゴバネ41は、ローターの軸2の端部を支持する機能を有する円筒カゴ状の支持部材である。このカゴバネ41は、軸2と中心軸線が一致すると共に軸2を取り囲むように配置されており、一端側の内周面で軸受6を介して軸2を回転可能に支持し、他端側で軸2と垂直な壁部47に固定されている。カゴバネ41は、カゴの本数及び太さによって剛性が一定に定められる。
【0025】
振動防止構造40の追加物42は、カゴバネ41を支持できるように構成された、円筒カゴ状の支持部材である。この追加物は、軸2と中心軸線が一致すると共にカゴバネ41を取り囲むように配置されており、一端側にはカゴバネ41を支持するために内周側へ広がる締付部42aが設けられ、他端側で壁部47に固定されている。この追加物42は、通常使用時においてはカゴバネ41と非接触の状態が維持されるが、締付部42aを内周側へ移動させることによってカゴバネ41と接触して支持する構成とされている。具体的には、通常使用時においては、追加物42の一端側が外周側に広がることによって締付部42aがカゴバネ41の外周面から離間しているが、追加物42の一端側が内周側へ移動することによって締付部42aがカゴバネ41を締め付けて支持する構成とされている。これによって、締付時における軸2の支持剛性を高めることができる。
【0026】
[第五実施形態]
図8を参照して本発明の第五実施形態に係る振動防止構造50の構成について説明する。図8は本発明の第五実施形態に係る振動防止構造50の断面図である。第五実施形態に係る振動防止構造50は、追加物52がカゴバネ41の内周側に設けられている点で、第四実施形態に係る振動防止構造40と主に相違している。
【0027】
振動防止構造50の追加物52は、カゴバネ41を支持できるように構成された、円筒カゴ状の支持部材である。この追加物は、軸2と中心軸線が一致すると共にカゴバネ41に取り囲まれるように配置されており、一端側にはカゴバネ41を支持するために外周側へ広がる締付部52aが設けられ、他端側で壁部47に固定されている。この追加物52は、通常使用時においてはカゴバネ41と非接触の状態が維持されるが、締付部52aを外周側へ移動させることによってカゴバネ41と接触して支持する構成とされている。具体的には、通常使用時においては、追加物52の一端側が内周側へ周収縮することによって締付部52aがカゴバネ41の内周面から離間しているが、追加物52の一端側が外周側へ移動することによって締付部52aがカゴバネ41を内側から締め付けて支持する構成とされている。これによって、締付時における軸2の支持剛性を高めることができる。
【0028】
[第六実施形態]
図9を参照して本発明の第六実施形態に係る振動防止構造60の構成について説明する。図9は本発明の第六実施形態に係る振動防止構造60の断面図である。第六実施形態に係る振動防止構造60は、追加物62が軸方向に往復移動する点で、第五実施形態に係る振動防止構造50と主に相違している。
【0029】
振動防止構造60の追加物62は、カゴバネ41を支持できるように構成されており、軸2と中心軸線が一致するようにカゴバネ41の内部に配置されると共に壁部47を貫通する棒状部62aと、棒状部62aの一端部に設けられてカゴバネ41の側面に設けられた穴部41aを通過して外周側に広がる拡大部62bとを備えて構成されている。この追加物62は、通常使用時においてはカゴバネ41と非接触の状態が維持されるが、軸方向に移動することによってカゴバネ41と接触して支持する構成とされている。具体的には、通常使用時においては、追加物62の拡大部62bがカゴバネ41の穴部41aの内周面と離間しているが、追加物62が軸方向の一端側へ移動することによって拡大部62bが穴部41aの内周面と接触して締め付けて支持する構成とされている。これによって、締付時における軸2の支持剛性を高めることができる。
【0030】
[第七実施形態]
図10及び図11を参照して本発明の第七実施形態に係る振動防止構造70の構成について説明する。図10は本発明の第七実施形態に係る振動防止構造70の断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。図11は、図10のXI−XI線に沿った断面図であり、(a)は低支持剛性時の状態を示し、(b)は高支持剛性時の状態を示す図である。第七実施形態に係る振動防止構造70は、追加物72が径方向に変えて周方向に往復移動する点で、第五実施形態に係る振動防止構造50と主に相違している。
【0031】
図10及び図11に示すように、第七実施形態に係る振動防止構造70の追加物72は、カゴバネ41と接触して略一体化できるように構成された支持部材である。この追加物72は、八枚のハネ状部材72aがカゴバネ41の内周側に配置されるように構成されたハネ車形状の部材である。カゴバネ41の内周面からは、ハネ状部材72a同士の間の隙間に入り込むように突出した八つの突出部41eが形成されている。ハネ状部材72aはいずれも中心軸線周りの一の方向へ傾斜することによって、一方の傾斜面72cが、カゴバネ41の突出部41eの一の傾斜面41fと接触することができるように構成されている。追加物72は、周方向に往復回動可能に構成されており、通常使用時においては一方向へ回動することによって傾斜面72cがカゴバネ41の傾斜面41fから離間しているが、他方向へ回動することによって傾斜面72cがカゴバネ41の傾斜面41fと接触して締め付けて支持することによって、カゴバネ41と略一体化することができる。これによって、締付時における軸2の支持剛性を総合的に高めることができる。なお、ハネ状部材72a及び突出部41eの数量は八つに限られず、四つや二つにしてもよい。また、追加物72の押し当て力を調整することにより、そのときに生じる摩擦力の影響によってダンピング効果を得ることができる。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0033】
例えば、本実施形態においては、振動防止構造の追加物は一種類のみ設けていたが、これに代えて、二種類、あるいはそれ以上の種類のカゴバネによって構成してもよい。カゴバネの種類を増やすことによって、変更可能な剛性値の数が増加し、一層確実に共振を回避することができる。
【0034】
また、追加物によってカゴバネの締め付けられる部分の肉厚を厚くすることによって、カゴバネのたわみを防止して、確実に剛性変化を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1,20,30,40,50,60,70…振動防止構造、2…軸、3,41…カゴバネ(第一支持部材)、4,21,31,42,52,62,72…追加物(第二支持部材)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を回転可能に支持する第一支持部材と、
前記第一支持部材と接触することによって略一体化することができるように構成された第二支持部材と、を備え、
前記第二支持部材を前記第一支持部材に接触させることによって前記軸の支持剛性を高め、前記第二支持部材を前記第一支持部材から離間させることによって前記軸の支持剛性を低下させることを特徴とする振動防止構造。
【請求項1】
軸を回転可能に支持する第一支持部材と、
前記第一支持部材と接触することによって略一体化することができるように構成された第二支持部材と、を備え、
前記第二支持部材を前記第一支持部材に接触させることによって前記軸の支持剛性を高め、前記第二支持部材を前記第一支持部材から離間させることによって前記軸の支持剛性を低下させることを特徴とする振動防止構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−196724(P2010−196724A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39252(P2009−39252)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]