説明

挿入変異体ライブラリーを血清でスクリーニングすることによる、抗原的に重要な髄膜炎菌抗原の同定

その微生物にさらされた動物の免疫応答に関連する微生物のポリペプチドを同定する方法であって、(1)微生物の複数の異なる変異体を提供するステップと、(2)抗体が変異微生物に結合すると変異微生物が殺滅される条件下で、微生物またはその一部に対して免疫応答を惹起した動物の抗体に、複数の変異微生物を接触させるステップと、(3)ステップ(2)からの生残している変異微生物を選択するステップと、(4)生残しているいずれかの変異微生物における突然変異を含有する遺伝子を同定するステップと、(5)遺伝子でコードされたポリペプチドを同定するステップとを含む方法。同定されたポリペプチドまたはその変異体または断片、またはこれらの融合体は、ワクチンに有用である。ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、25、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはその断片もしくは変異体、またはそのような断片もしくは変異体の融合体になると考えられ、髄膜炎菌に対するワクチンに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチンに関し、特にワクチン候補となる微生物ポリペプチドを同定する方法に関する。
【0002】
本明細書における先行文献の列挙または記述は、文献が最先端技術の一部、または共通の一般知識であるとの認識にたったものとして必ずしもとらえる必要はない。本明細書に挙げた文献は、参照により本書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
微生物感染は、特に、多くの病原性微生物、特に細菌が、抗生剤などの抗菌剤に耐性となる、またはその可能性があるという事実に照らした場合、依然としてヒトおよび動物の健康に対する深刻なリスクであるといえる。
【0004】
ワクチン接種は、微生物感染を制御するための代替アプローチの1つであるが、病原性微生物、特に遺伝的に多様な微細物のさまざまな分離株に対する安全かつ有効なワクチンに用いる免疫原を同定することは、困難であることが多い。例えば、一般に毒性決定遺伝子1個に対し1つまたは複数の変異体を含む弱毒化生菌のような、実質的に無傷な微生物を免疫原に用いるワクチンの開発は可能であるが、全ての微生物がこのアプローチに適しているわけでなく、安全性が保証されるとは限らない特定の微生物にこのアプローチを適用することが必ずしも望ましいわけではない。また、微生物によっては宿主タンパク質を模倣する分子を発現するものもあり、これらはワクチンには望ましくない。
【0005】
さらなるワクチンを開発することが重要である特定の微生物グループは、髄膜炎菌性疾患の原因となる髄膜炎菌である。髄膜炎菌性疾患は、欧州、北米、途上国およびその他の地域において、血清型C多糖類結合ワクチンの導入にも関わらず、依然として小児の死亡率の重要な原因となっている致死的な感染症である。これは、α2-8結合ポリシアル酸莢膜を発現し、いまだに蔓延している血清型B株(NmB)による感染が原因である。髄膜炎菌との関連では「血清型」という用語は、この細菌に発現する多糖類莢膜をいう。英国で疾患原因となっている一般的な血清型はBであるのに対し、アフリカではAである。髄膜炎菌敗血症は、依然として高い致死率を伴う。生存者には、重大な精神的および/または身体的障害が残る場合が多い。非特異的前駆症状を示した後、髄膜炎菌敗血症は、適切な抗菌療法および全面的支援措置に不応性の劇症疾患となる可能性がある。したがって、髄膜炎菌性疾患という公衆衛生の脅威に有効な最善の方法は、予防ワクチンの接種となる。
【0006】
髄膜炎菌性疾患の非特異的な初期臨床徴候および劇症経過は、治療が奏効しない場合が多いことを意味する。したがって、ワクチン接種は、この病原菌による地球規模の疾患負荷を低減する最も有効な戦略と考えられる(Feavers(2000年) ABC of meningococcal diversity. Nature 404、451-2頁)。血清型A、C、W135、およびYの髄膜炎感染症を予防する既存のワクチンは、細菌表面の多糖類莢膜を基にしている(Andersonら(1994年) Safety and immunogencity of meningococcal A and C polysaccharide conjugate vaccine in adults. Infect Immun. 62、3391-33395頁; Leachら(1997年) Induction of immunologic memory in Gambian children by vaccination in infancy with a group A plus group C meningococcal polysaccharide-protein conjugate vaccine J.Infect Dis 175、200-4頁; Liebermanら(1996年) Safety and immunogenicity of a serogroups A/C Neisseria meningitidis oligosaccharide-protein conjugate vaccine in young children. A randomized controlled trial. J. American Med. Assoc. 275、1499-1503頁)。血清型B感染症に対するワクチンの進歩は、α2-8結合シアル酸のホモポリマーであるその莢膜が、ヒトにおいては比較的低い免疫原であるため、より困難になっている。これは、莢膜が、ヒト細胞接着分子のN-CAMIで発現するエピトープを共有することが原因である(Finneら(1983年) Antigenic similarities between brain components and bacteria causing meningitis. Implications for vaccine development and pathogenesis. Lancet 2、355-357頁)。事実、血清型Bの莢膜に対する免疫応答の発生は、有害であることが実際に示される可能性がある。したがって、血清型Bの髄膜炎菌感染症を予防する新たなワクチンの必要性は残っている。
【0007】
髄膜炎菌性疾患予防の最も有効な免疫学的関連は、血清殺滅性アッセイ(SBA)である。SBAは、細菌の細胞表面の補体沈着、細胞膜傷害複合体の集合、および細菌溶解を媒介する血清抗体(通常はIgG2aサブクラス)の能力を評価する。SBAでは、既知のいくつかの細菌が、血清連続希釈物において規定の補体源に曝露される。生存菌数が判定され、SBAは50%致死を媒介する血清の最大希釈の逆数と定義されている。SBAは、血清型C感染症予防の予測因子であり、NmB感染症に対する免疫代わりに広く使用されている。SBAは、ワクチン前臨床評価のための迅速な免疫マーカーであり、臨床試験においては好適なエンドポイントを提供する点が重要である。
【0008】
NmBワクチン開発におけるほとんどの研究は、有効なタンパク質サブユニットを明らかにすることに向けられている。異種抗原として発現するタンパク質で、細胞表面に発現する可能性のあるものについて、遺伝子配列をインタロゲートし、動物に有意な反応を発生させるその能力を試験する「逆ワクチン学」に多大な投資が行われている。しかし、このアプローチには、1)表面発現抗原を予測するためのコンピュータアルゴリズム、2)免疫原候補の多くを発現しない、3)ネズミの免疫応答に対する全般的信頼性の点で限界がある。
【非特許文献1】Feavers(2000年) ABC of meningococcal diversity. Nature 404、451-2頁
【非特許文献2】Andersonら(1994年) Safety and immunogencity of meningococcal A and C polysaccharide conjugate vaccine in adults. Infect Immun. 62、3391-33395頁
【非特許文献3】Leachら(1997年) Induction of immunologic memory in Gambian children by vaccination in infancy with a group A plus group C meningococcal polysaccharide-protein conjugate vaccine J.Infect Dis 175、200-4頁
【非特許文献4】Liebermanら(1996年) Safety and immunogenicity of a serogroups A/C Neisseria meningitidis oligosaccharide-protein conjugate vaccine in young children. A randomized controlled trial. J. American Med. Asoc. 275、1499-1503頁
【非特許文献5】Finneら(1983年) Antigenic similarities between brain components and bacteria causing meningitis. Implications for vaccine development and pathogenesis. Lancet 2、355-357頁
【非特許文献6】Cheungら(1992年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89、6462-6466頁
【非特許文献7】Albusら(1991年) Infect. Immun. 59、1008-1014頁
【非特許文献8】Camilliら(1990年) J.Bacteriol. 172、3738-3744頁
【非特許文献9】Villafaneら(1987年) J.Bacteriol. 169、4822-4829頁
【非特許文献10】Sunら(2000年) Nature Med. 6、1269-1273頁
【非特許文献11】Morrisonら(1984年) J.Bacteriol 159、870頁
【非特許文献12】Smithら(1994年) Infect. Immunol. 62、5247-5254頁
【非特許文献13】Schiestl & Petes(1991年)
【非特許文献14】Luら(1994年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91、12649-12653頁
【非特許文献15】Jacobsら(2003年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100、14339-14344頁
【非特許文献16】Walport(2001年) N.Engl. J. Med. 344、1140-1144頁
【非特許文献17】Walport(2001年) N.Engl. J. Med. 344、1058-1066頁
【非特許文献18】Goldschneiderら(1969年) J. Exp. Med. 129、1307-1326頁
【特許文献1】WO第88/07378号
【非特許文献19】Bagshawe(1987年) Br.J. Cancer 56、531-532頁
【非特許文献20】Bagshaweら(1988年) Br.J. Cancer 58、700-703頁
【非特許文献21】Senterら(1988年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85、4842-4846頁
【非特許文献22】www.tigr.org
【非特許文献23】Sambrook & Russell(2001年) Molecular Cloning、a laboratory manual、第3版、Cold Spring Harbor laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク
【非特許文献24】Thompsonら (1994年) Nucleic Acids Res 22、4673-80頁
【特許文献2】EP109942
【特許文献3】EP180564
【特許文献4】EP231039
【特許文献5】GB-A-2 189141
【非特許文献25】Makelaら(2002年) Expert Rev. Vaccines 1、399-410頁
【非特許文献26】Kizilら(1999年) Infect Immun. 67、3533-41頁
【非特許文献27】Tbps Danveら(1993年) Vaccine 11、1214-1220頁
【非特許文献28】Bartら(1999年) Infect Immun. 67、3832-3846頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有効なワクチンの鍵は、血清型またはクローングループに関係なく、さまざまな疾患分離株に対する防御を引き出す抗原を決定することにある。本発明の目的は、新たな遺伝子スクリーニング(免疫原の遺伝学的スクリーニング、すなわちGSIと我々が呼んでいる)方法を用いて、微生物株の遺伝的多様性全般に維持される抗原を単離することであり、これは髄膜炎菌株に関連して例示されている。これは、髄膜炎菌抗体のような微生物抗原を、以下でより詳細に説明されるGSIにより同定することで行うことができ、組換え抗原により誘発される免疫応答機能、および抗原の予防効果を評価することで有効性を確認することができる。以前は、遺伝学がワクチン候補の探索に適用されていたが、これまではハイスループット分析の確立が難しく、免疫原性抗原と防御抗原の鑑別が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様では、その微生物にさらされた動物の免疫応答に関連している微生物のポリペプチドを同定する方法であって、
(1)微生物の複数の異なる変異体を提供するステップと、
(2)抗体が変異微生物に結合すると変異微生物が殺滅される条件下で、微生物またはその一部に対して免疫応答を引き起こした動物の抗体に、複数の変異微生物を接触させるステップと、
(3)ステップ(2)からの生残している変異微生物を選択するステップと、
(4)生残しているいずれかの変異微生物における突然変異を含有する遺伝子を同定するステップと、
(5)遺伝子にコードされたポリペプチドを同定するステップと
を含む方法が提供される。
【0011】
ポリペプチドが関連する免疫応答は、微生物による動物感染症の抑制に関連する可能性があるという意味で、機能的に重要なものである。
【0012】
微生物は、細菌または酵母のようないずれの微生物でもよい。微生物が病原性微生物であり、特に髄膜炎性疾患の原因となる髄膜炎菌、または淋病の原因となる淋菌、または少なくとも1種類のインフルエンザおよび中耳感染症の原因となるインフルエンザ菌のような病原性細菌であれば好ましい。
【0013】
「微生物にさらされた動物の免疫応答に関連するポリペプチド」により、我々はそのようなポリペプチドを含める。本発明の方法は、微生物のポリペプチドに動物の免疫系が接触している場合、ポリペプチドがこの動物において抗体を惹起するものであるところの微生物のポリペプチドを同定することができる。一般にポリペプチドは、微生物表面で発現されるものである。この動物の免疫応答は抗体反応であり、一般的にIgG反応である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の1つの実施形態では、動物は、例えば自然感染などの微生物感染により、微生物にさらされている。したがって、動物は一般に微生物の宿主である。本発明の別の実施形態では、動物は意図的に、微生物(生菌でも死菌でも)またはその部分を接種されている。どちらの方法も、動物の免疫応答が微生物に対する抗体を惹起しており、そのいくつかは、微生物の特定のポリペプチドに選択的であり、本発明の方法によるポリペプチドの特定に用いることができる。
【0015】
当然のことながら、「動物」という用語にはヒトが含まれ、本発明の特に好ましい実施形態では、以下に詳細に記述される通り、ステップ(2)で用いられる抗体は微生物に感染した、または感染している、または微生物の部分に免疫されているヒト由来のものである。
【0016】
微生物またはその部分に対し免疫応答を惹起している動物の抗体を用いることで、遺伝学的に関連のあるポリペプチドを同定することができる(免疫原性およびワクチン設計、および特に防御的なポリペプチドとの関連において)。
【0017】
したがって、当然のことながら、本発明の方法を用いて特定されるポリペプチドは、抗原または免疫原であり(これらの用語は、本明細書で同じ意味に用いられている)、一般に表面が露出しており、動物の免疫応答を惹起するものであり、ワクチン候補となるものである。
【0018】
複数(またはライブラリー)の異なる変異微生物は一般に、微生物の各遺伝子が変異する確率を高める(通常>95%)のに十分な多さである。必要な変異体数は、微生物のゲノム遺伝子の数に左右されるであろう。変異体がランダム変異体の場合、ゲノムの各遺伝子変異が示される確率を高めるのに必要な変異体数は、遺伝子数の約10倍である。したがって、一般に、ステップ(1)で提供される変異微生物の数は、微生物の遺伝子数の約10〜20倍である。
【0019】
一般に、1つの細菌は500〜5000個の遺伝子を有するため、使用されるランダム変異体数は、ほぼ5000〜100,000個程度である。髄膜炎菌の場合、ランダム変異体の至適数は約40,000個である。
【0020】
ランダム変異体は、化学的に導入されたものなどいずれのタイプのランダム変異体であってもよい。好ましくは、変異体は、トランスポゾン変異体などの挿入変異体であるが、これは(例えば、トランスポゾンなどの挿入要素に選択的なプローブまたはPCRプライマーなどによる)挿入位置の特定が簡単なためであり、一般にトランスポゾンは、トランスポゾン含有変異体の選択を可能にする抗生剤耐性マーカーを運搬するためである。
【0021】
グラム陰性菌のゲノムへの組み込みに適したトランスポゾンには、Tn5、Tn10、およびその誘導体がある。グラム陽性菌のゲノムへの組み込みに適したトランスポゾンには、Tn916およびその誘導体、またはその類似体がある。特に黄色ブドウ球菌との利用に適したトランスポゾンには、Tn917(Cheungら(1992年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89、6462-6466頁)およびTn918(Albusら(1991年) Infect. Immun. 59、1008-1014頁)がある。
【0022】
トランスポゾンが、Camilliら(1990年) J.BActeriol. 172、3738-3744頁に記載されているTn917誘導体の特性を有し、pE194Ts(Villafaneら(1987年) J.Bacteriol. 169、4822-4829頁)などの温度感受性ベクターにより運搬されるならば、特に好ましい。
【0023】
髄膜炎菌では、Tn10は好ましいトランスポゾンである(Sunら(2000年) Nature Med. 6、1269-1273頁参照)が、トランスポゾンおよびインビトロ活性を有するトランスポゾンはいずれも使用することができる。
【0024】
当然のことながら、トランスポゾンは、遺伝子の挿入不活化に便利であるが、他の既知の方法、または今後開発される方法のいずれも使用することができる。特に連鎖球菌など特定の細菌における遺伝子の挿入不活化のさらなる便利な方法は、肺炎球菌に関してMorrisonら(1984年) J.Bacteriol 159、870頁に記載された方法のような挿入重複突然変異を用いるものである。一般的な方法は、他の微生物、特に細菌に適用することもできる。
【0025】
真菌では、挿入変異は、DNA断片、または好ましくは、例えばハイグロマイシンBまたはフレオマイシン耐性をコードする選択可能なマーカーを有するプラスミドを用いた形質転換により発生させる(Smithら(1994年) Infect. Immunol. 62、5247-5254頁参照)。ハイグロマイシンB耐性をコードするDNA断片の糸状菌ゲノムへの、制限酵素による組み込みを用いたランダム単独組み込み(REMI;Schiestl & Petes(1991年); Luら(1994年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91、12649-12653頁)が知られている。
【0026】
真菌での簡単な挿入変異導入法は、参照により本明細書に組み込まれているSchiestl & Petes(1994年) に記載されており、例えば、酵母のTy要素およびリボソームDNAの使用が含まれる。
【0027】
トランスポゾンまたは他のDNA配列のランダム組み込みは、各変異体において異なる遺伝子が挿入不活化されている、複数の独立に変異した微生物の単離を可能にする。
【0028】
一部の微生物では、トランスポゾンまたは他の挿入要素により、各遺伝子が変異した変異体のライブラリーが知られている。この場合、複数の微生物は、好都合にはライブラリーの各メンバーの1つまたは複数の代表をプールすることで作製することができる。例えば、緑膿菌の包括的なトランスポゾンライブラリーは、Jacobsら(2003年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100、14339-14344頁に記載されている。
【0029】
本方法のステップ(2)では、複数の変異微生物が、微生物またはその部分に対し免疫応答を惹起している動物の抗体に接触させる。抗体は、いずれの適切な形態であってよく、動物(ヒトを含む)のいずれの適切、便利な抗体源に由来することができる。一般に抗体は、動物由来の血清に現れる。しかし、抗体は、IgGに富む断片など、その他の形態で現れることもある。抗体はIgG抗体であれば好ましいが、IgAおよびIgMなど、他の抗体型を用いることもできる。抗体は、血清または血清由来物に現れるならば好ましいが、抗体は、唾液などのような他の体液または体液由来物に現れることもある。
【0030】
抗体は一般に、微生物に感染している、または感染した動物に由来する。本発明のこの実施形態の利点の1つは、微生物感染を制御しようと試みる際に、関連免疫応答を惹起している動物の抗体を利用することであり、そのような抗体は、ワクチンに有用なポリペプチドと結合すると考えられる。したがって、好適な抗体は、微生物に感染した、もしくは感染している、または微生物の弱毒化(例えばワクチン)株を接種されている、もしくは微生物の一部(外膜構成部分など)を含むワクチンを接種されているヒト由来のものである。一般に、本方法のステップ(2)で用いられる抗体は、微生物に対する防御反応を惹起している動物(ヒトなど)に由来する。
【0031】
あるいは、抗体は、微生物を接種され、免疫応答、好ましくは防御免疫応答を起こすことが可能な、マウス、ウサギ、ヒツジまたはウマといった実験動物などの動物に由来する。防御反応が惹起されているかどうかは、接種後、動物を生菌に負荷させることで判断することができる。実験動物には微生物の有毒病原性株を接種しておくことができ、あるいは、非病原性株または弱毒化株(生菌でも殺滅でも)を接種しておくことができる。
【0032】
好ましい実施形態では、抗体は、変異微生物の作製に用いられる株とは「異種」の微生物株に対して惹起される。多くの病原性微生物は、さまざまな血清型または株に存在し、各血清型または株は、他の血清型または株と同様のポリペプチドのほか、血清型または株に特有のポリペプチドも有することができる。1種または複数種の異種株に対し惹起した抗体を使用する利点は、微生物の全ての血清型(すなわち、保存された共通エピトープ)に共通するポリペプチドを同定する確率が増大する点である。そのようなポリペプチド(または断片または変異体またはその融合体)は、特定の微生物のさまざまな血清型に有効となる可能性が高い。したがって、微生物が髄膜炎菌である特に好ましい実施形態では、複数の変異微生物が血清型Bの親株に由来するのに対し、抗体は、血清型A株および/または血清型C株に惹起した動物(ヒトなど)に由来する。当然のことながら、抗体は、2種以上の抗体源からプールすることができる。例えば、血清型A株に感染した(または感染からの回復期にある)患者の血清は、血清型C株に感染した(または感染からの回復期にある)患者の血清とともにプールすることができる。血清型B株に感染した(または感染からの回復期にある)患者の血清もプールすることができる。微生物のなかには、細胞壁または細胞膜のポリペプチド成分に加えて、免疫原性であることの多い多糖類成分を有するものもある。さらなる好ましい実施形態では、抗体が産生される株として、多糖類成分の一部または全部を除外した微生物株を用いると便利である。したがって、多くの細菌は、大部分が多糖類からなる莢膜を有しているが、一般に株は、莢膜を欠損しているところに存在する。これらの「莢膜欠損」株は、好都合には本方法の第2ステップで使用する抗体を惹起するために用いることができる。
【0033】
髄膜炎菌との関係で、抗体は、好都合には以下の血清源に存在する可能性がある。すなわち、髄膜炎菌の異種(すなわち、選択の際に用いた変異体とは異なる)株を用いて全身経路により免疫されたマウス、髄膜炎菌に感染した急性期および回復期のヒト患者の両方、および血清型BのNmB分離株H44/76由来の所定の外膜小胞(OMVs)ワクチンで免疫されたヒト患者である。回復期の血清は、患者が感染菌に対する著しい免疫応答を惹起していると考えられるため、好適である。急性期の患者は、そのような著しい免疫応答を惹起していない可能性があるため、状況により、回復期の血清の対照として急性期の血清を用いることが有用となることがある。同等の抗体源は、他の微生物についても利用可能である。
【0034】
抗体が変異微生物に結合すると、変異微生物は殺滅され、抗体が微生物に結合しなければ、変異微生物は殺滅されないように条件を整える。このようにして、抗体に結合するポリペプチドをコードする遺伝子が変異していて、抗体が結合しないそれらの変異微生物は生存することがわかる。これは、そのような変異体の選択にきわめて効果を発揮し、微生物に感染した動物の免疫応答に関連するポリペプチドの特定を容易にする。対照として、同様に一定の条件化で殺滅される野生型微生物を用いる、または全ての野生型微生物が殺滅される条件を整えることが便利であると考えられる。
【0035】
抗体が変異微生物に接触していれば、ヒト、ウサギ、マウス、ヒツジおよびウマの補体のような補体源が添加される。好都合には、補体は、抗体として同じ補体源(すなわち動物種)に由来する。抗体(一般にはIgG2aサブクラス)は、微生物表面への補体沈着、細胞膜傷害複合体の集合、および微生物溶解を媒介する。補体媒介性殺滅は、血液由来細胞の存在とは無関係であるが、血清の存在を必要とする。補体媒介性殺滅は、血清の過熱により不活化することができる。
【0036】
好ましくは、この実施形態では、微生物は、グラム陽性菌またはグラム陰性菌いずれかの細菌である。補体媒介性殺滅は、Walport(2001年) N.Engl. J. Med. 344、1140-1144頁、およびWalport(2001年) N.Eng. J. Med.344、1058-1066頁に記載されている。
【0037】
抗体結合能力を保持する微生物の殺滅に対する補体沈着アプローチは、同様の原則に基づく血清殺滅性アッセイ(SBA;Goldschneiderら(1969年) J. Exp. Med. 129、1307-1326頁)が冒頭で述べた通り使用されているため、特に髄膜炎菌の使用に適している。もちろん、SBAの場合には、細菌の殺傷(および、抗体利用を惹起するために用いられる株による防御レベルのマーカーとしてのSBAの利用)における血清効果を評価するために、生存菌数が用いられる。本発明者が知る限り、この方法を微生物での抗体特定に適用できることは、これまで何ら示されていない。
【0038】
抗体が結合する細胞を死滅させるために補体を使用する代わりに、(細胞に結合する)抗体に選択的に結合し、細胞へ細胞毒性物質を送達する部分を使用することができる。例えば、その部分は、微生物に結合した抗体を認識し、細胞に細胞毒性物質を送達するさらなる抗体であってもよい。したがって、そのさらなる抗体は、変異微生物に結合する抗体がヒト抗体である場合、抗ヒト抗体になりうる。細胞毒性は、直接的な細胞毒性、または間接的な細胞毒性となる可能性がある。間接的な細胞毒性により、我々は、細胞毒性化合物に比べ比較的非毒性の化合物を活性化することができる酵素を含める。同様の方法は、腫瘍選択的抗体を用いて腫瘍細胞を標的にするために用いられており、ADEPTと呼ばれている(抗体介在性酵素プロドラッグ療法;WO88/07378;Bagshawe(1987年) Br.J. Cancer 56、531-532頁;Bagshaweら(1988年) Br.J. Cancer 58、700-703頁;およびSenterら(1988年) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85、4842-4846頁、いずれも参照により本明細書に組み込まれている)。
【0039】
酵素-プロドラッグの組み合わせには、以下が挙げられる:リン酸含有プロドラッグの遊離薬物への変換に有用なアルカリホスファターゼ、硫酸含有プロドラッグの遊離薬物への変換に有用なアリルスルファターゼ、非毒性5‐フルオロシトシンの抗癌剤5‐フルオロシトシンへの変換に有用なシストシンデアミナーゼ、ペプチド含有プロドラッグの遊離薬物への変換に有用なセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、およびカテプシンなどのプロテアーゼ、D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの変換に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ、グリコシル化プロドラッグの遊離薬物への変換に有用なβ-ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼなどの炭水化物酵素、β‐ラクタムにより誘導化された薬剤の遊離薬物への変換に有用なβ-ラクタマーゼ、およびフェノキシアセチル基またはフェニルアセチル基を伴うそのアミン窒素で誘導体化された薬剤の、遊離薬物への変換に有用なペニシリンアミダーゼ。
【0040】
他の酵素およびプロドラッグには、加水分解酵素、アミダーゼ、スルファターゼ、リパーゼ、グルクロニダーゼ、ホスファターゼおよびカルボキシペプチダーゼがあり、プロドラッグは、例えばシクロホスファミド、ビスルファン、クロラムブシルおよびニトロソウレアを含むアルキル化剤(ナイトロジェンマスタード)、アドリアマイシンおよびダクチノマイシンを含む挿入剤、ビンカアルカロイドなどの紡錘体毒、および抗葉酸剤、プリン代謝拮抗薬、ピリミジン代謝拮抗薬またはヒドロキシウレアを含む代謝拮抗剤など、さまざまなクラスの抗腫瘍化合物のいずれかから調製される。
【0041】
また、炭水化物分解酵素と作用するとシアン化物を産生するアミグダリンなどのシアン発生性プロドラッグも挙げられる。
【0042】
例えば全ての野生型(または親)変異微生物を殺滅するような条件で生存する変異微生物は、そのような変異微生物が、抗体に結合(および、したがって免疫応答に関与する)ポリペプチドをコードする遺伝子において変異する可能性があるため、さらなる試験に選択される。1つの実施形態では、および生残している変異体での変異が、殺滅に対する抵抗能の付与を担うことを確認するためには、各変異体の変異を親株へ戻し交配し、戻し交配された変異体の、殺滅条件を生存する能力を確認することができる。
【0043】
変異を含有する遺伝子は、当技術分野ではよく知られた方法により同定される。例えば、変異が挿入変異である場合、挿入DNAから隣接する微生物のDNAへ配列を決定すると便利である。トランスポゾンが変異微生物の作製に使用されている場合は、トランスポゾンの外側で切断する制限酵素を用いて、ステップ(3)で選択された個々の変異体からのゲノムDNAを消化し、トランスポゾンを含有する分割した大きさのDNAをプラスミドに結合させ、プラスミドではなくトランスポゾンにより付与された抗生剤耐性に基づきプラスミドの組換え体を選択することにより、トランスポゾン変異を含有する遺伝子を同定すると便利である。トランスポゾンに隣接する微生物のゲノムDNAは、トランスポゾンの末端領域にアニールする2つのプライマー、およびプラスミドのポリリンカー配列付近にアニールする2つのプライマーを用いて配列を決定することができる。配列は、トランスポゾンが既知の遺伝子に挿入されているかどうかを判定するため、DNAデータベース検索の対象となりうる。したがって、好都合には、この方法により得られた配列は、EMBLおよびGenBankなどの利用可能な公開データベースの配列、または可能な場合は、全ゲノム塩基配列と比較される。
【0044】
「遺伝子」により、我々はポリペプチドをコードするDNA領域だけでなく、転写、翻訳および、微生物によってはRNAスプライシングを調節するDNA領域など、DNAの調節領域も含める。したがって、遺伝子には、プロモーター、転写ターミネーター、リボソーム結合配列、および生物によってはイントロンおよびスプライス認識部位が含まれる。
【0045】
一般に、ステップ4により得られる同定された遺伝子の配列情報が得られる。好都合には、トランスポゾンの末端付近の配列は、シークエンシングプライマーのハイブリダイゼーション部位に使用される。取り出した配列、または不活化された遺伝子自体に隣接するDNA制限断片は、同定に用いるハイブリダイゼーションプローブを作製し、野生型有機体である、対応する野生型遺伝子から単離するために使用される。
【0046】
ハイブリダイゼーションプロービングが厳密な条件下で行われるのであれば、少なくとも遺伝子を同定する場合は、相対遺伝子ではなく、その遺伝子を確実に得ることが好ましい。
【0047】
遺伝子は、標準的な方法を用いて配列を決定することができ、例えば遺伝子のコード配列の翻訳により同定された遺伝子にコードされたポリペプチド、または配列は、配列が決定した微生物ゲノムの一部として既に入手可能な可能性がある。
【0048】
実施例に詳しく記載した通り、本発明の方法により同定された特定の遺伝子は、髄膜炎菌の、NBM0341(TspA)、NMB0338、NMB1345、NMB0738、NBM0792(NadCファミリー)、NMB0279、NMB2050、NMB1335(CreA)、NMB2035、NMB1351(FmuおよびFmv)、NMB1574(IIvC)、NMB1298(rsuA)、NMB1856(LysRファミリー)、NMB0119、NMB1705(rfak)、NMB2065(HemK)、NMB0339、NMB0401(putA)、NMB1467(PPX)、NMB2056、MB0808、NMB0774(upp)、NMA0078、NMB0337(分岐鎖アミノ酸トランスフェラーゼ)、NMB0191(ParAファミリー)、NMB1710(グルタミン酸脱水素酵素(gdhA)、NMB0062(rfbA-1)およびNMB1583(hisB)遺伝子である。髄膜炎菌のゲノム配列は、例えばゲノム研究所(TIGR);www.tigr.orgから入手可能である。これらの遺伝子は、既に配列が決定されていたゲノムの一部を成すが、本発明者が気づいたかぎり、それらは単離されておらず、それらがコードするポリペプチドも作製されておらず、それらがコードするポリペプチドが、ワクチン成分として有用となりうることも示されていない。
【0049】
したがって、本発明には、上述ならびに実施例の単離遺伝子、および変異体ならびに断片、およびそのような変異体ならびに断片の融合体が含まれ、上記に記載した通り、遺伝子がコードするポリペプチドのほか、その変異体および断片、およびそのような断片ならびに変異体の融合体も含まれる。変異体、断片および融合体は、以下でより詳細に説明される。好ましくは、上記所与の遺伝子の変異体、断片および融合体は、髄膜炎菌に対する抗体の中和を惹起するポリペプチドをコードするものである。同様に、好ましくは、配列が上記に示されたポリペプチドの変異体、断片および融合体は、髄膜炎菌に対する抗体の中和を惹起するものである。本発明にはまた、配列が実施例に示されたポリペプチド(好ましくは単離されたコード領域)をコードする、または変異体、断片もしくは融合体をコードする単離ポリヌクレオチドも含まれる。本発明にはまた、そのようなポリヌクレオチドを含む発現ベクター、およびそのようなポリヌクレオチドならびにベクター(以下でより詳細に説明される)を含む宿主細胞も含まれる。実施例に記載されたポリペプチドは、本発明の方法により同定された抗体である。
【0050】
本発明の方法の実施に使用する分子生物学的方法は、例えば、Sambrook & Russell(2001年) Molecular Cloning、a laboratory manual、第3版、Cold Spring Harbor laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨークなど、参照により本明細書に組み込まれている当技術分野ではよく知られている。
【0051】
当然のことながら、本発明にはまた、微生物にさらされた動物の免疫応答に関連するポリペプチドをコードする遺伝子を同定できるよう、ステップ(1)〜(4)の方法(だが、必ずしもステップ(5)は必要ではない)を実行することも含まれる。遺伝子はクローン化し、配列を決定することができ、例えばその配列に基づくプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により、単離または合成することができる。遺伝子の変異体は、例えば他の微生物、またはその微生物の他の株の関連遺伝子を同定して、その遺伝子をクローニングし、単離または合成することで作製することができる。一般に、遺伝子の変異体は、本発明の方法により単離された遺伝子と、少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも85%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するものである。もちろん、置換、欠失、および挿入は許容されうる。ある核酸配列と別の核酸配列の類似性の程度は、ウイスコンシン大学コンピュータグループのGAPプログラムを用いて判定することができる。
【0052】
遺伝子の変異体はまた、厳密な条件下で遺伝子にハイブリダイズしたものでもある。「厳密な」とは、我々は、遺伝子は膜に固定化され、プローブ(この場合、>200ヌクレオチド長)は溶液であり、固定化した遺伝子/ハイブリダイズしたプローブは、65℃にて10分間0.1×SSCで洗浄される場合に、遺伝子がプローブにハイブリダイズすることを意味している。SSCは0.15M塩化ナトリウム/0.015Mクエン酸ナトリウムである。
【0053】
遺伝子(または変異体遺伝子)の断片は、例えば、遺伝子全体の20%または30%または40%または50%または60%または70%または80%または90%となるものを作製することができる。好ましい断片には、コード配列の全てまたは一部が含まれる。変異体および断片は、他の無関係のポリヌクレオチドと融合することができる。
【0054】
したがって、本発明にはまた、ポリヌクレオチドを作製する方法であって、本発明の方法のステップ(1)〜(4)を実行し、同定された遺伝子またはその変異体もしくは断片、またはそのような遺伝子もしくは変異体もしくは断片の融合体を単離または合成することを含む方法も含まれる。本発明にはまた、この方法により得ることができる、または得られたポリヌクレオチドも含まれる。
【0055】
好ましくは、ポリヌクレオチドは、免疫原性であり、遺伝子が同定された微生物にさらされた動物由来の抗体に反応するポリペプチドをコードする。
【0056】
本発明にはまた、微生物にさらされた動物の免疫応答に関連するポリペプチドをコードする遺伝子において変異した微生物を選択する方法も含まれる。この方法は、本発明の方法のステップ(1)〜(3)を(ステップ(4)および(5)は実行されようとされまいと)実行することを含む。本発明にはまた、抗体に結合できない方法により得ることができる、または得られた変異微生物も含まれる。
【0057】
上述の通り、本発明の方法は、遺伝子の同定および変異微生物の選択に有用であるが、免疫応答に関連する、微生物のポリペプチドの同定に、本方法が用いられるのであれば特に好ましい。ひとたび同定されれば、そのポリペプチドに基づき抗体を作製することが望ましい。
【0058】
抗原は、同定した遺伝子によりコードされるポリペプチドであってよく、ポリペプチドの配列は、遺伝子配列から容易に推定することができる。さらなる実施形態では、抗原は、同定したポリペプチドの断片であってよく、または同定したポリペプチドの変異体であってよく、またはポリペプチドもしくは断片もしくは変異体の融合体であってよい。
【0059】
同定したポリペプチドの断片は、例えば、ポリペプチド全体の20%または30%または40%または50%または60%または70%または80%または90%となるものを作製することができる。一般に、断片は、少なくとも10、15、20、30、40、50、100個以上のアミノ酸であるが、500、400、300、200個未満のアミノ酸である。ポリペプチドの変異体を作製してもよい。「変異体」により、我々は、挿入、欠失、および保存的置換または非保存的置換のどちらかの置換を含め、そのような変化が、実質的にタンパク質の通常の機能を変化させないことを意味する。「保存的置換」により、Gly、Ala; Val、Ile、Leu; Asp、Glu; Asn、Gln; Ser、Thr; Lys、Arg;およびPhe、Tyrなどの組み合わせが意図される。そのような変異体は、タンパク質工学および部位特異的変異の十分に既知の方法を用いて作製することができる。
【0060】
変異体の特定のクラスは、例えば関連した微生物、またはその微生物の他の株などに由来する、上述した通りの変異体遺伝子にコードされたものである。一般には、変異体のポリペプチドは、本発明の方法により同定されたポリペプチドと、少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも85%の配列同一性、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0061】
2つのポリペプチド間の配列同一性割合は、例えばウイスコンシン大学ゲノム計算グループのGAPプログラムなど、適当なコンピュータプログラム用いて判定することができ、当然のことながら、同一性割合は、配列が最適に並んでいるポリペプチドに関して算出される。
【0062】
アライメントは、あるいはクラスタルWプログラム(Thompsonら (1994年) Nucleic Acids Res 22、4673-80頁)を用いて実行することができる。使用パラメータは以下にすることができる。
迅速ペアワイズアライメントパラメータ:K-tuple(単語)サイズ; 1、ウィンドウサイズ; 5、ギャップペナルティ; 3、トップダイアゴナル数; 5。スコアリング方法: xパーセント。マルチプルアライメントパラメータ: ギャップオープンペナルティ; 10、ギャップ延長ペナルティ; 0.05。スコアリングマトリックス: BLOSUM。
【0063】
融合は、いずれの適当なポリペプチドを用いた融合であってもよい。一般には、ポリペプチドは、それが融合されるポリペプチドに対し免疫応答を高めることが可能なものである。融合パートナーは、例えば、親和性クロマトグラフィーカラムなどに固定化することが可能な部分の結合部位を構成することなどにより、精製を促進するポリペプチドにすることができる。したがって、融合パートナーは、コバルトやニッケルイオンに結合するオリゴヒスチジンまたは他のアミノ酸を含むことができる。それはまた、Mycエピトープなどのモノクロナール抗体のエピトープであってもよい。
【0064】
したがって、本発明にはまた、上述した抗原、および本方法により得ることができる、または得られた抗原を作製する方法も含まれる。
【0065】
本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野でよく知られているように、発現ベクターなどのベクターへクローン化することができる。そのようなベクターは、恐らく、細菌、酵母菌、哺乳類、および昆虫の宿主細胞などの宿主細胞に存在している。本発明の抗原は、適当な宿主細胞のポリヌクレオチドから容易に発現し、ワクチンに使用するため、それから単離することができる。
【0066】
典型的な発現系には、市販のpET発現ベクターシリーズ、およびBL21などの大腸菌宿主細胞が挙げられる。発現したポリペプチドは、当技術分野でいずれか既知の方法により精製することができる。好都合には、抗原は、上述した親和性カラムに結合する融合パートナーに融合され、融合は親和性カラム(例えば、ニッケルまたはコバルト親和性カラムなど)を用いて精製される。
【0067】
当然のことながら、抗原または抗原(DNA分子など)をコードするポリヌクレオチドは、ワクチンなどでの使用に特に適している。その場合、抗原は、それが産生される宿主細胞から精製される(または、ペプチド合成により産生されるのであれば、合成のいずれかの汚染物質から精製される)。一般に、抗原は、ワクチン使用用に製剤される前には、5%未満、好ましくは2%、1%、0.5%、0.01%未満の汚染物質を含有している。抗原は、実質的に発熱物質を含まないことが望ましい。したがって、本発明にはさらに、抗原を含むワクチン、およびリン酸緩衝生理食塩水などの適当な担体に抗原を結合することを含む、ワクチンの作製法が含まれる。本発明の抗原は、単独投与することが可能であるが、1種または複数種の許容可能な担体とともに、医薬製剤として提示することが好ましい。担体は、本発明の抗原に適合し、そのレシピエントに有害でないという意味で、「許容可能」でなければならない。一般に、担体は、滅菌され、かつピロゲンフリーであろう水、または生理食塩水となろう。
【0068】
ワクチンにはまた、好都合にはアジュバントも含まれる。患者の能動免疫が好ましい。このアプローチでは、1種または複数種の抗原が、適当なアジュバントおよび担体を含有する免疫原性製剤に調製され、既知の方法で患者に投与される。適当なアジュバントには、完全フロインドアジュバントまたは不完全フロインドアジュバント、ムラミルジペプチド、「Iscoms」のEP 109 942、EP 180 564およびEP 231 039、水酸化アルミニウム、サポニン、DEAE-デキストラン、中性油(ミグリオールなど)、植物油(ラッカセイ油など)、リポソーム、プルロニックポリオール、またはRibiアジュバントシステム(例えば、GB-A-2 189 141参照)が挙げられる。「プルロニック」は、登録商標である。免疫化された患者は、微生物感染から防御する必要がある患者である。
【0069】
本発明の上述の抗原(またはそのような抗原をコードするポリヌクレオチド)、またはその製剤は、経口および非経口(例えば皮下または筋肉内)注射をはじめ、いずれか従来の方法により投与することができる。治療は、一定期間に単回投与または複数回投与で構成することができる。
【0070】
当然のことながら、本発明のワクチンは、その抗原成分(またはポリヌクレオチド)次第で、医学および獣医学の分野で有用となる可能性がある。
【0071】
微生物による疾患は、家畜などの多くの動物で知られている。本発明のワクチンは、抗原をコードする適当な抗原またはポリヌクレオチドを含有する場合、ヒトに有用であるが、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、およびニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウなどの家禽においても有用である。
【0072】
したがって、本発明には、微生物に対するワクチン接種を個体に行う方法で、上述の抗原(または抗原をコードするポリヌクレオチド)、またはワクチンを個体に投与することを含む方法も含まれる。本発明にはまた、個体にワクチン接種するためのワクチンの製造における、上述の抗原(または抗原をコードするポリヌクレオチド)の使用も含まれる。
【0073】
本発明の抗原は、ワクチン中の単一抗原として使用することができ、または同一の疾患微生物を対象にしようと異なる疾患微生物を対象にしようと、他の抗原と併用して使用することができる。髄膜炎菌に関しては、MnBに反応する、得られた抗原は、Aおよび/またはCの血清型ワクチンに使用される成分と併用することができる。好都合には、抗原はまた、ヘモフィルス菌および/または肺炎連鎖球菌に対する防御を提供する抗原性成分と併用することもできる。追加の抗原性成分は、ポリペプチドでよく、またはそれらは、多糖類などの他の抗原性成分でよい。多糖類は、免疫応答を高めるために用いることもできる(例えば、Makelaら(2002年) Expert Rev. Vaccines 1、399-410頁)。
【0074】
上記ワクチンおよびワクチン接種の方法では、抗原が、NMB0338などの上述した(および実施例の)遺伝子のいずれか、または上述した変異体または断片または融合(または抗原をコードするポリヌクレオチド)によりコードされたポリペプチドである場合、およびワクチン接種すべき疾患が、髄膜炎菌感染症(髄膜炎菌性疾患)であることが、より好ましい。
【0075】
本発明は、以下の限定されない実施例および図の参照により、これからより詳細に説明されるであろう。
【0076】
(実施例1)
髄膜炎菌における免疫原の遺伝学的スクリーニング(GSI)
この実施例におけるGSIの適用は、殺滅性抗体による殺滅に低感受性である株について、髄膜炎菌の挿入変異体ライブラリーをスクリーニングすることに関係する。
【0077】
配列を決定されたNmB分離株、MC58の変異体のライブラリーを、同じ株の莢膜マイナスに対しマウスで惹起された血清を用いてスクリーニングすることで、GSIの効果を明らかにした。合計40,000変異体を、同種株による腹腔内免疫法により、マウスで惹起された血清を用いて分析した。この血清のSBAは、野生株では約2,000である。生残している変異体は、ライブラリーが1:560希釈で(全ての野生型細菌を殺滅する)血清に曝露された場合に検出された。生残している変異体におけるトランスポゾン挿入が、殺滅に耐える能力を担っているかどうかを確定するため、変異体を親株へ戻し交配し、戻し交配された変異体が、SBAでは野生型より殺滅耐性であることが確認された。トランスポゾンに影響された遺伝子配列は、マーカーレスキュー法によりトランスポゾン挿入部位を単離して調べた。影響された遺伝子の2つは、TspAおよびNMB0038であることがわかった。TspAは、強力なCD4+ T細胞反応を誘発する表面抗原であり、患者の血清により認識される(Kizilら(1999年) Infect Immun. 67、3533-41頁)。NMB0338は、2つの膜貫通領域を含有すると予測されたポリペプチドをコードする、以前は知られていなかった機能の遺伝子であり、細胞表面に位置している。NMB0338によりコードされたアミノ酸配列は以下の通りである。
【0078】
【化1】

【0079】
公衆衛生的必要とは別に、GSIにNmBを用いることにはいくつかの実用上の利点がある: a)細菌が遺伝子操作上扱いやすい; b)エフェクター免疫機構により、殺滅が評価しやすい; c)ゲノム配列は、異なる血清型およびクローン系統の3つの分離株(血清型A、B、Cに対し、それぞれIV-A、ET-5、ET-37)について入手可能である; d)この作業では、特徴が十分に明らかにされている臨床資源が入手可能である。
【0080】
GSIは、2つの潜在的限界がある。第1に、細菌抗体の標的は不可欠となる可能性がある。NmBでは、細菌抗体の既知の標的は全て不必要であり、現在認可されている細菌ワクチンで、必須遺伝子産物を標的とするものはないため、これは可能性が低い。第2に、血清は、複数の抗原に対する抗体を含有するであろうが、1つの抗原を失うことにより、変異体の生存は影響されない可能性がある。我々は既に、同種株に対して惹起された血清による選択の間でも、関連遺伝子はそれでもなお、適当な血清希釈物を用いて同定されたことを示している。
【0081】
GSIの主な利点は、1)ハイスループットステップは、技術的要求の厳しい、またはコストのかさむ方法(タンパク質の発現/精製および免疫など)とは無関係である、2)動物データに頼るだけでなく、アッセイにヒト検体を使用することができる点にある。GSIは、殺滅活性を誘発する表面タンパク質のサブセットを迅速に同定するため、より少数の候補を詳細に分析することが可能となろう。
【0082】
1. GSIを用いた殺滅性抗体の標的の同定
異種株に対して惹起されたマウス血清、およびヒト血清を、交差反応性抗原の同定に使用する。血清は、以下から得る。
i)全身経路で異種株で免疫されたマウス: 株は、同じ免疫型およびサブ血清型を有する分離株を避けるために、選択および/または構成されるであろう。
ii)髄膜炎菌の既知の分離株に感染した患者の急性期および回復期の血清(Dr R. Wall、Northwick Parkにより提供)
iii)NmB分離株、H44/76由来の規定の外膜小胞(OMV)ワクチンを服用しているボランティアの、免疫化前および免疫化後の検体(Meningococcal Reference Laboratoryにより提供)
【0083】
これらの血清源はそれぞれ、特有の利点と欠点を有する。
【0084】
【表1】

【0085】
a)異種株(すなわち、配列が決定された血清型A株またはC株)に免疫された動物の血清を、GSIではMC58変異体のライブラリーを選択するために使用する。我々は、生きた弱毒化NmBによる免疫化は、血清型A株およびC株に対する交差反応性殺滅性抗体反応を誘発することを示した。ヒト血清に直面して、生存が増大した変異体に欠けている抗原は、分断された遺伝子のマーカーレスキュー法により同定する。
【0086】
b)異種血清による殺滅に耐性を付与する変異が同定され、遺伝子産物が、配列が決定された血清型A株およびC株である、それぞれZ2491およびFAM18の殺滅標的にもなるかどうかを判定する。ゲノムデータベースを、遺伝子相同体について調べる。相同体があった場合、トランスポゾン挿入は、MC58変異体から増幅され、形質転換により血清型A株およびC株へ導入する。各血清型の変異体および野生株の相対的生存率が比較される。したがって、GSIは、血清型、免疫型、およびサブ血清型に関係なく、殺滅作用の標的が髄膜炎菌のさまざまな株で保存され、利用可能かどうか迅速に情報を提供することができる。
【0087】
c)マウスで惹起された血清に対する生存が高まった変異体は、回復期の患者または異種OMVワクチン(H44/76由来)接種を受けた患者のいずれかに由来するヒト血清を用いて試験する。これは、標的がヒトにおいて殺滅抗原を誘発することができるかどうかの重要な問題を扱うものである。他のワクチン法では、この情報は、ワクチン候補のGMP製造を必要とする臨床試験後期の、高額な段階になってはじめて得られる。
【0088】
GSIは、単純で入手可能な技術により行われるハイスループット分析である点が利点である。ヒトにおいて殺滅性抗体を誘発する抗原、および複数の株の殺滅を媒介する抗原は、GSIが、使用する細菌株および血清に関して柔軟であることから、迅速に同定することができる。ヒト血清を用いて選択された変異体は、マウス血清により選択されたものと同じ方法で分析される。
【0089】
2. 組換えGSI抗原の抗体反応に関する評価
回復期の患者の血清およびワクチンにより認識される、殺滅性抗体の標的であるタンパク質を、市販のベクターを用いて大腸菌で発現させる。対応するオープンリーディングフレームを、MC58のPCRにより増幅し、pCR Topo CTまたはpBAD/Hisなどのベクターにライゲーションし、それぞれT7またはアラビノース誘導プロモーターの制御下でタンパク質を発現させることができる。全ての細胞タンパク質からの組換えタンパク質の精製は、ニッケルまたはコバルトカラム上のタンパク質のC末端と融合するHis Tagにより行われる。
【0090】
成齢のニュージーランドシロウサギは、不完全フロインドアジュバントによる精製タンパク質25μgの皮下注射により、4週間ごとに2回免疫する。動物血清は、免疫化前に、全細胞のELISAにより既存の抗Nm抗体について確認されるであろう。初回血清力価<1:2を有する動物が、免疫化実験に使用される。免疫化後の血清は、第2回免疫化の2週間後に得られる。特異的抗体が惹起されていることを確認するため、免疫化前および後の血清は、i)精製タンパク質に対するウエスタン分析、およびii)野生型変異体ならびに対応する変異体(GSIにより生成)の細胞を用いたELISAにより試験される。
【0091】
SBAは、MC58(同種株)、およびウサギの免疫血清により配列が決定された血清型A株およびC株に対して行われるであろう。アッセイは、少なくとも2度、3回ずつ行われるであろう。8<のSBAが有意と考えられよう。その結果は、タンパク質候補が、組換えタンパク質として殺滅性抗体を誘発できるかどうかの証拠を提供する。
【0092】
GSI抗原の予防効果の確定
候補は全て、生菌負荷に対し動物を防御するその能力が試験されるが、これは、免疫(細胞性または体液性)のいずれの態様も、1度のアッセイで評価できるようにするためである。我々は、能動免疫および生菌感染防御のモデルを確定した。このモデルでは、成齢マウスは、0日目、21日目、28日目に、デキストラン鉄(鉄源補給として)中のMC58生菌106または107 CFUを腹腔内に負荷して免疫される。このモデルは、Tbps Danveら(1993年) Vaccine 11、1214-1220頁免疫化の予防効果を評価するため記載したものと類似している。非免疫動物は、感染の4時間以内に菌血症を発症し、24時間までに全身性疾患の徴候を示す。我々は既に、弱毒化Nm株、および生きた髄膜炎菌負荷に対するタンパク質抗原の予防効果を明らかにすることに成功している。PorAは、殺滅性抗体を誘発するものの、広範な抗原性変異(Bartら(1999年) Infect Immun. 67、3832-3846頁のためワクチン候補とはならない、外膜タンパク質の1つである。
【0093】
6週齢のBALB/cマウス(群サイズ、35匹)は、0日目および21日目に、不完全フロインドアジュバントとともに組換えタンパク質25μgを皮下注射され、その後28日目に、106 (15匹)または107 (15匹)CFUのMC58を腹腔内注射により負荷される。2つの負荷量は、高負荷量および低負荷量でのワクチン効率を調べるために使用される。血清は、28日目に、各群の残りの5匹、および初回免疫化前の5匹から得られ、さらなる免疫アッセイ用に-70℃で保管する。対照群の動物は、i)アジュバント単独、ii)組換えリフォールドPorA、およびiii)生きている弱毒化Nm株のいずれか1つを投与する。対照群動物の全体数を減らすため、1度に5候補1組が試験されよう(群数=5候補+3対照)。群の生残している動物は、マンホイットニー検定により比較される。群サイズ15匹/用量により、実験は、群間生存率の差25%を示す検定力となる。
【0094】
負荷に対する有意な防御を示すワクチンについては、反復実験を行い所見を確認する。さらに、ワクチン候補によるワクチン接種は、菌血症に対する防御も誘発することを立証するため、2回目の実験の際に菌血症レベルを判定する。血液は、免疫動物および非免疫動物において、感染後22時間で採取する(菌血症はこの時点で最大となる)。結果は、ワクチン接種動物における菌血症の有意な低下が認められるかどうかを判定するため、両側スチューデントT検定により分析される。
【0095】
さらなる材料および使用される方法
髄膜炎菌の突然変異誘発
髄膜炎菌を用いた作業では、変異体はインビトロ突然変異誘発により作製された。髄膜炎菌のゲノムDNAは、カナマイシン耐性をコードするマーカー、および大腸菌で機能する複製源を含有するTn5誘導体を用いた突然変異誘発にさらされた。これらの要素は、混合Tn5末端に結合している。転位反応は、Tn5の過反応性変異体、およびATPならびにヌクレオチドの存在下でT4 DNAポリメラーゼおよびリガーゼにより修復されたDNAを用いて行われた。修復したDNAを使用して髄膜炎菌をカナマイシン耐性に形質転換した。サザン分析により、トランスポゾンのみの単独挿入を含有する各変異体が確認された。
【0096】
血清殺滅性アッセイ(SBA)
細菌は、固体培地(レヴァンタールサプリメントによるブレインハートインフュージョン培地)にて、一晩培養され、次に実験当日の朝、4時間かけて固体培地に再びストリークされた。この後、細菌はリン酸緩衝生理食塩水に集菌され、数がかぞえられた。SBAは、1mlに、1補体源(ミニウサギまたはヒト)および約105コロニー形成単位を含有する状態で行われた。細菌は、培養の最後に集菌され、生残している細菌を回収するため固体培地にプレートされた。
【0097】
トランスポゾン挿入部位の単離
ゲノムDNAは、標準的方法により挿入変異体から回収され、PvuII、EcoRVおよびDraIを用いて3時間消化された後、フェノール抽出法により精製されよう。DNAは次に、100マイクロリットル体積をT4 DNAリガーゼの存在下で、16℃にて一晩セルフライゲートされた後、沈降され、エレクトロポレーションにより、大腸菌をカナマイシン耐性へ形質転換するために使用されよう。
【0098】
(実施例2)
さらなるスクリーニングおよびその結果
GSIは、MC58の約40,000挿入変異体のライブラリーをスクリーニングするために用いられてきた。ライブラリーは、pACYC184からの複製源を有するトランスポゾンを用いて、インビトロでのTn5突然変異誘発により作製された。
【0099】
MC58は、髄膜炎菌の血清型B分離株の1つであり、この株の全ゲノム配列が知られているため、選択された。
【0100】
ライブラリーは常に、対照の野生型株と平行してスクリーンされ、ライブラリーおよび野生型から回収されたコロニー数が示される。
【0101】
マウス血清を用いた選択
まず、ライブラリーは、弱毒化株YH102により免疫された動物の血清を用いて分析された。成齢マウス(Balb/C)、108コロニー形成単位を3度腹腔内注射され、最終免疫化後10日目に採取された。
【0102】
スクリーンにより、血清殺滅性耐性が高まったいくつかの変異体が同定された。これは、個々の変異体を単離し、元々の遺伝的背景における変異を再現し、野生型に対する補体介在性溶解へのそれらの感受性について個々の変異体を再試験することにより確認された。以下の遺伝子にトランスポゾン挿入がある。
【0103】
NMB0341(TspA)DNA配列
【0104】
【化2】


【0105】
NBM0341タンパク質配列
【0106】
【化3】

【0107】
NMB0338 DNA配列
【0108】
【化4】


【0109】
NMB0338タンパク質配列
【0110】
【化5】

【0111】
ポリペプチドの分析は、残基54〜70および残基88〜107の2つの膜貫通ドメインを有すると予測されることを示している。したがって、領域1〜53、および108〜末端(C-末端)の断片は、免疫原として特に有用となる可能性がある。
【0112】
NMB1345 DNA配列
【0113】
【化6】

【0114】
NMB1345タンパク質配列
【0115】
【化7】

【0116】
ワクチン接種を受けた血清の選択
マンチェスターにあるMeningococcal Reference Laboratoryの血清が、我々には入手可能である。この血清は、ボランティアのOMV免疫化臨床試験から得られたものである。
【0117】
ワクチンC1血清により選択された変異体(スクリーン1回)
以下の配列が単離された。
【0118】
NMB0338(上述通り)
【0119】
NMB0738 DNA配列
【0120】
【化8】

【0121】
NMB0738タンパク質配列
【0122】
【化9】

【0123】
NMB0792 NadCファミリー(トランスポーター)DNA配列
【0124】
【化10】


【0125】
NMB0792タンパク質配列
【0126】
【化11】

【0127】
NMB0792 DNA配列
【0128】
【化12】

【0129】
NMB0279タンパク質配列
【0130】
【化13】

【0131】
NMB2050 DNA配列
【0132】
【化14】


【0133】
NMB2050タンパク質配列
【0134】
【化15】

【0135】
NMB1335 CreA タンパク質DNA配列
【0136】
【化16】

【0137】
NMB1335タンパク質配列
【0138】
【化17】

【0139】
NMB2035 DNA配列
【0140】
【化18】


【0141】
NMB2035タンパク質配列
【0142】
【化19】

【0143】
NMB1351 FmuおよびFmvタンパク質DNA配列
【0144】
【化20】

【0145】
NMB1351タンパク質配列
【0146】
【化21】

【0147】
NMB1574 IlvC DNA配列
【0148】
【化22】


【0149】
NMB1574タンパク質配列
【0150】
【化23】

【0151】
NMB1298 rsuA DNA配列
【0152】
【化24】

【0153】
NMB1298タンパク質配列
【0154】
【化25】

【0155】
NMB1856 Lys Rファミリー(転写調節因子)DNA配列
【0156】
【化26】

【0157】
NMB1856タンパク質配列
【0158】
【化27】


【0159】
NMB0119 DNA配列
【0160】
【化28】

【0161】
NMB0119タンパク質配列
【0162】
【化29】

【0163】
NMB1705 rfaK DNA配列
【0164】
【化30】

【0165】
NMB1705タンパク質配列
【0166】
【化31】

【0167】
NMB2065 Hemkタンパク質DNA配列
【0168】
【化32】


【0169】
NMB2065タンパク質配列
【0170】
【化33】

【0171】
ワクチン接種を受けた17D血清により選択された変異体(スクリーン1回のみ)
【0172】
NMB0339 DNA配列
【0173】
【化34】

【0174】
NMB0339タンパク質配列
【0175】
【化35】


【0176】
患者の血清による選択
我々はスクリーニング用に入手可能な、急性期および回復期の血清を採取している。これは、髄膜炎菌の異なる血清型に感染した個体に由来している。スクリーンは、急性期(A)または回復期(C)の血清により行われた。急性感染から血清採取までの期間は、2週間〜3ヵ月であった。
【0177】
NMB0401 putA DNA配列
【0178】
【化36】


【0179】
NMB0401タンパク質配列
【0180】
【化37】

【0181】
NMB1335 CreA
上記のDNA配列およびタンパク質配列
【0182】
NMB1467 PPX DNA配列
【0183】
【化38】


【0184】
NMB1467タンパク質配列
【0185】
【化39】

【0186】
NMB2056 HemK
【0187】
【化40】

【0188】
NMB2056タンパク質配列
【0189】
【化41】

【0190】
NMB0808 DNA配列
【0191】
【化42】


【0192】
NMB0808タンパク質配列
【0193】
【化43】

【0194】
NMB0774 upp DNA配列
【0195】
【化44】

【0196】
NMB0774タンパク質配列
【0197】
【化45】

【0198】
NMA0078推定膜タンパク質DNA配列
【0199】
【化46】

【0200】
NMA0078タンパク質配列
【0201】
【化47】

【0202】
NMB分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼDNA配列
【0203】
【化48】


【0204】
NMB0337タンパク質配列
【0205】
【化49】

【0206】
NMB0191 ParAファミリータンパク質DNA配列
【0207】
【化50】

【0208】
NMB0191タンパク質配列
【0209】
【化51】

【0210】
NMB1710グルタミン酸脱水素酵素(gdhA)DNA配列
【0211】
【化52】


【0212】
NMB1710タンパク質配列
【0213】
【化53】

【0214】
NMB0062グルコース‐1‐リン酸チミジルトランスフェラーゼ(rfbA-1)DNA配列
【0215】
【化54】

【0216】
NMB0062タンパク質配列
【0217】
【化55】

【0218】
NMBイミダゾールグリセロール‐リン酸脱水酵素(hisB)DNA配列
【0219】
【化56】


【0220】
NMB1583タンパク質配列
【0221】
【化57】

【0222】
【表2】


【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】本発明の方法の好ましい実施形態の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その微生物にさらされた動物の免疫応答に関連している微生物のポリペプチドを同定する方法であって、
(1)微生物の複数の異なる変異体を提供するステップと、
(2)抗体が変異微生物に結合すると変異微生物が殺滅される条件下で、微生物またはその一部に対して免疫応答を引き起こした動物の抗体に、複数の変異微生物を接触させるステップと、
(3)ステップ(2)からの生残している変異微生物を選択するステップと、
(4)生残しているいずれかの変異微生物における突然変異を含有する遺伝子を同定するステップと、
(5)遺伝子でコードされたポリペプチドを同定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
微生物が病原性微生物である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
微生物にさらされた動物が、微生物の宿主である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
微生物にさらされた動物が微生物に感染している、または感染したヒトである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
微生物が細菌である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
細菌が髄膜炎菌である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
変異微生物が挿入突然変異である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップ(3)で選択された生残している変異体が、微生物の親株に戻し交配し、その結果得られる交配種が、ステップ(2)に示したような条件下での殺滅に耐性であるかどうかを判断する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ステップ(2)において、抗体が結合する微生物の殺滅を補体が媒介する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
その微生物にさらされた動物の免疫応答に関連している微生物のポリペプチドをコードする遺伝子を同定する方法であって、請求項1に記載のステップ(1)から(4)を行うことを含む方法。
【請求項11】
その微生物にさらされた動物の免疫応答に関連しているポリペプチドをコードする遺伝子が変異した微生物を選択する方法であって、請求項1に記載のステップ(1)から(3)を行うことを含む方法。
【請求項12】
抗原を作製する方法であって、請求項1から9のいずれかに記載の方法を行うことおよび、ステップ(5)で同定されたポリペプチドまたはその抗原性断片もしくは抗原変異体、あるいはそうしたポリペプチドまたは断片もしくは変異体の融合体を合成することを含む方法。
【請求項13】
変異体が関連微生物の相同ポリペプチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
微生物を抑制するワクチンを作製する方法であって、請求項12または13の方法による抗原、または抗原をコードするポリヌクレオチドを作製することおよび、抗原またはポリヌクレオチドを好適な担体と合わせることを含む方法。
【請求項15】
抗原またはポリヌクレオチドをアジュバントと合わせる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項12または13の方法により得られる抗原、または抗原をコードするポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項14または15の方法により得られるワクチン。
【請求項18】
ワクチンに使用するための請求項16に記載の抗原またはポリヌクレオチド。
【請求項19】
微生物に対して個体にワクチン接種を行う方法であって、請求項16に記載の抗原もしくはポリヌクレオチド、または請求項17に記載のワクチンを、個体に投与することを含む方法。
【請求項20】
微生物に対して個体にワクチン接種を行うためのワクチン製造における、請求項16に記載の抗原もしくはポリヌクレオチド、または請求項17に記載のワクチンの使用。
【請求項21】
ポリヌクレオチドを作製する方法であって、請求項10のステップを行うこと、同定された遺伝子、またはその変異体もしくは断片、またはそうした遺伝子もしくは変異体もしくは断片の融合体を単離し合成することを含む方法。
【請求項22】
請求項20の方法により得られるポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項11の方法により得られる変異微生物。
【請求項24】
本明細書に記載の微生物の抗原を同定するための新たな方法。
【請求項25】
配列番号4、2、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体、またはそうした断片もしくは変異体の融合体を含むポリペプチド。
【請求項26】
請求項25に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項27】
薬剤に使用するための請求項25に記載のポリペプチド、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
ワクチンに使用するための請求項25に記載のポリペプチド、または請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
請求項25に記載のポリペプチドを作製する方法であって、請求項26のポリヌクレオチドを宿主細胞において発現することおよび、ポリペプチドを単離することを含む方法。
【請求項30】
ポリペプチドを化学合成することを含む、請求項26に記載のポリペプチドを作製する方法。
【請求項31】
髄膜炎菌に対して個体にワクチン接種を行う方法であって、請求項25に記載のポリペプチド、または請求項26に記載のポリヌクレオチドを個体に投与することを含む方法。
【請求項32】
髄膜炎菌に対して個体にワクチン接種を行うためのワクチン製造における、請求項25に記載のポリペプチド、または請求項26に記載のポリヌクレオチドの使用。
【請求項33】
本明細書に開示の、いずれか新規の髄膜炎菌ワクチン。


【図1】
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【公表番号】特表2007−517505(P2007−517505A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546330(P2006−546330)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005441
【国際公開番号】WO2005/060995
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(599008621)インペリアル イノベーションズ リミテッド (25)
【Fターム(参考)】