説明

排ガス処理システムと排ガス処理方法

【課題】排煙脱硫装置の循環タンク部で固体側のHg濃度が増加することを防止して脱硫処理後のHgの再放出を防止することにある。
【解決手段】脱硫装置3から硫黄酸化物の吸収液を吸収塔液溜め部から抜き出し、一部の石膏を第一固液分離装置38で分離して除去した後の石膏濃度の低い側のアンダーフロー44側の液を脱硫装置3の補給水として再利用する際に、第一固液分離装置38のオーバーフロー43側の液中に高濃度で粒子径の小さいHgが含まれていることが分かったので、アンダーフロー44側の液をフィルタ40で固液分離して、得られたアンダーフロー44側の液とオーバーフロー43側の液を循環ダンク41で一緒にして際循環水とし、該再循環水に凝集剤を添加して脱硫装置3に再循環される高濃度なHgを含む微粒子を凝縮させ粒子径を大きくして、凝集剤の添加位置より下流側に設置した吸収液の固液分離装置54で固体と液体を効率よく分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電用ボイラプラント等において、燃焼排ガスに含まれるSOx(硫黄酸化物)やHg(水銀)を除去する排ガス処理システムと排煙処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭を燃焼させる火力発電用ボイラプラントの例を図8に示す。該火力発電用ボイラプラントでは、ボイラ13で石炭25を燃焼させて発生するボイラ排ガスが脱硝装置14、空気予熱器(A/H)15、集塵装置16、脱硫装置3などで順次浄化処理されて煙突29から排出される。ボイラ13からの排ガスが導入される脱硝装置14で排ガス中のNOx(窒素酸化物)が分解される。また、脱硝装置14から排出された排ガスの温度を空気予熱器15で200〜160℃に調整し、集塵装置16で排ガスから煤塵が除去される。除塵された排ガスは脱硫装置3に供給されて排ガス中のSOxが除去されて煙突29から排出される。
【0003】
従来技術の湿式排煙脱硫装置(以下、単に、脱硫装置ということもある)3の構成を図6に示す。入口排ガス1は脱硫装置3内で脱硫処理されて出口ガス2として排出される。該脱硫装置3は主に、スプレノズル4、吸収液循環ポンプ5、ミストエリミネータ8、酸化用ガス供給部9、攪拌機10、吸収液溜め部11等から構成される。酸化用ガス供給部9から吸収液循環ポンプ5により汲み上げられた吸収液6はスプレノズル4から噴霧され、脱硫装置3内に導入された排ガス1と接触して排ガス中のSOが吸収除去される。なお、吸収液溜め部11より上方のスプレノズル4を含む脱硫装置内の空塔部を脱硫吸収部26ということがある。
【0004】
吸収液6に吸収されたSOは亜硫酸となり、亜硫酸の濃度が高くなると吸収液6のSOの吸収効率は低下する。このため、吸収液6中にアルカリ剤19を添加すると共に酸化用ガス供給部9に酸化用ガス27を供給することで亜硫酸を酸化して石膏とすることで、吸収液6のSO除去性能は回復する。
【0005】
また、従来技術の排水処理設備の構成を図7に示す。該排水処理設備は主にハイドロサイクロン(H/C)38、排水用ハイドロサイクロン(H/C)39、ベルトフィルタ40、循環水タンク41、pH調整、重金属除去、凝集剤添加部42等から構成される。
【0006】
脱硫装置3の吸収液6中の石膏濃度は排ガス中のSOを吸収することにより増加するため、吸収液6中の石膏濃度が10〜30%になるように、また、吸収液6中の塩素濃度が一定濃度以上にならないように、一部の吸収液6を抜き出し、抜き出し液36として前記排水処理設備に導入する。排水処理設備では前記抜き出し液36を石膏49、排水50及び再循環水37に分離して石膏49を脱流装置3の系外へ排出する。
【0007】
すなわち、脱硫装置3からの抜き出し液36をハイドロサイクロン38に供給し、ハイドロサイクロン(H/C)オーバーフロー43側の液と、H/Cアンダーフロー44側に分ける。H/Cアンダーフロー44側のスラリーは粒子径の大きな石膏を多く含む液が排出され、H/Cオーバーフロー43側のスラリーは粒子径の小さな石膏を多く含む液が排出される。H/Cアンダーフロー44側のスラリーはベルトフィルタ40に供給され、脱水された石膏49をベルトフィルタ40上に回収する。ベルトフィルタ40上の石膏49は図示していない工水で洗浄され、ベルトフィルタ40のろ液と共にベルトフィルタ部排出液52として循環水タンク41に供給される。
【0008】
また、H/Cオーバーフロー43側の液も循環水タンク41に供給される。循環水タンク41の液の一部を抜き出し、排水用H/C供給部47から排水用ハイドロサイクロン39に供給される。排水用ハイドロサイクロン39によって排水用H/Cオーバーフロー45側の液と、排水用H/Cアンダーフロー46側の液に分けられ、排水用H/Cアンダーフロー46側の液は循環水タンク41に供給される。排水用H/Cオーバーフロー45側の液はpH調整、重金属除去、凝集剤添加部42で排水50中のpHを適切にし、TMT(トリメルカプトトリアジン)などを供給して重金属を捕捉し、ポリ塩化アルミニウム等の高分子凝集剤で固体粒子を凝集させ、沈殿させた固体粒子を図示していないプレス機などで固形物51として回収する。該固形物51を含まない排水50は図示していない冷却塔などで液温を適切にして海などへ排出される。しかし、再循環水37に示すように、海などへ排出される以外の液は、脱硫装置3の補給水として再循環される。
【0009】
特許文献1には排煙脱硫処理工程で水銀の再放出を防止するためのポリジチオカルバミン酸化合物を用いて水銀を捕捉する方法が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には排煙脱硫処理工程からの排水をアルカリ処理及び軟化処理をして排水中に含まれる重金属、弗素などを固形物として析出させる反応工程と、該反応工程で生成した固形物を排水から分離し、分離排水のpHを調整し、微細な重金属(Hgを含む)、弗素、カルシウム、マグネシウムなどを固形物として精密濾過膜で分離する処理工程と、処理工程で分離した排水に溶解している塩類を逆浸透膜で塩類分離処理工程とを備えた方法が開示されている。
【0011】
特許文献3には硫黄を含む鉱石の製錬を行う製錬炉から排出する排ガスを希塩酸で洗浄した後、固液分離して排水を活性炭やフライアッシュなどの水銀除去剤で除去する方法が開示されている。
【0012】
特許文献4には排煙脱硫排水にCaイオンを含む液を添加して排水中の未燃カーボン等の懸濁物を石膏中に取り込み、石膏を分離した排水に凝集剤として硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムなどを添加して真空濾過して清澄液を得ることが開示されている。
【0013】
特許文献5には脱硫排水から得られた石膏含有吸収液にキレート剤または酸化剤を添加して吸収液中に水銀成分を偏在させて固液分離し、水銀を多く含む液体を得ることからなる水銀固定化方法又は脱硫排水から石膏含有吸収液に硫化剤を添加して吸収液中に水銀成分を偏在させて固液分離し、水銀を多く含む固体を得ることからなる水銀固定化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011−506063号公報
【特許文献2】特開平10−137540号公報
【特許文献3】特開2003−1062号公報
【特許文献4】特開平10−332号公報
【特許文献5】特開2007−185558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
石炭の燃焼排ガス中に含まれるHgを従来の脱硫装置で除去した場合、吸収液中のHg濃度が増加し、一部のHgは吸収液中の液側から固体側へ移行する。また、脱硫装置の吸収液中の石膏濃度や塩素濃度を調整するため、脱硫吸収液の一部を排水処理設備に供給し、石膏を除去した後、石膏の濃度が低い側の液を脱硫装置の補給水として利用していたが、この再循環水中には高濃度なHgを含む微粒子が含まれていた。
【0016】
従来技術は、脱硫装置が排ガス中の排ガス処理システムガスを吸収することによりpHが低下する過程で、再循環された微粒子中のHgが液側に再溶解することで液側のHg濃度が高くなる場合がある点について配慮がされておらず、Hgの再放出を防止することが困難になる問題があった。
【0017】
本発明の課題は、排煙脱硫装置の循環タンク部で固体側のHg濃度が増加することを防止してHgの再放出を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記本発明の課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置からの排ガスの流路に石灰石を含む吸収液を噴霧するスプレノズルを設けた硫黄酸化物の吸収部及び該吸収部下部に設けた吸収液溜め部と該吸収液溜め部内に設けた酸化用ガス供給部とを備えた排煙脱硫装置及び前記脱硫装置の吸収液溜め部の吸収液抜き出し部の下流に配置した吸収液の第一固液分離装置及び該第一固液分離装置での吸収液の固液分離後の液を前記脱硫装置の補給水として前記吸収液溜め部に再循環させる構成を備えた排水処理システムにおいて、前記吸収液の第一固液分離装置で分離された液と該第一固液分離装置のオーバーフロー側の液を回収する循環水タンクを設け、該循環水タンクから前記脱硫装置の吸収液溜め部に再循環水を再循環させる再循環ラインを設け、前記再循環ラインに凝集剤添加装置と再循環水の第二固液分離装置を設けることを特徴とする排ガス処理システムである。
【0019】
請求項2記載の発明は、前記吸収液の第一固液分離装置は、オーバーフロー側の液の重量累積50%径を1〜20μmとなるようなハイドロサイクロンから構成したことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理システムである。
【0020】
請求項3記載の発明は、排煙脱硫装置の前記吸収液抜き出し部と前記凝集剤添加装置の間の流路に重金属除去剤を供給する重金属除去剤添加装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理システムである。
【0021】
請求項4記載の発明は、排煙脱硫装置内でボイラを含む燃焼装置からの排ガスの流路に石灰石を含む吸収液を用いて前記排ガス中の硫黄酸化物を吸収させ、硫黄酸化物を吸収した吸収液に酸化用ガスを供給して石膏を生成させ、脱硫装置内から抜き出した石膏を含む吸収液を固液分離処理し、該固液分離後の液を前記脱硫装置の補給水として脱硫装置に再循環させる排水処理方法において、前記石膏を含む吸収液の固液分離処理後の液と前記固液分離処理時のオーバーフロー側の液を循環水として回収し、該回収した循環水を凝集剤を添加した後に再度固液分離して、前記固液分離後の液を再循環水として前記脱硫装置に再循環させることを特徴とする排ガス処理方法である。
【0022】
請求項5記載の発明は、前記循環水中の固体粒子の重量累積50%径を1〜20μmとすることを特徴とする請求項4記載の排ガス処理方法である。
【0023】
請求項6記載の発明は、前記脱硫装置内から抜き出した石膏を含む吸収液に凝集剤を添加する前に重金属除去剤を供給することを特徴とする請求項4に記載の排ガス処理方法である。
【0024】
(作用)
排煙脱硫装置から吸収液を抜き出し、ハイドロサイクロン等の固液分離装置(実施例の固液分離装置38)で一部の石膏を分離して除去した後の石膏濃度の低い側の液を、前記脱硫装置の補給水として再循環する場合に、該再循環水に凝集剤を添加することで、脱硫装置に再循環される高濃度なHgを含む微粒子を凝縮させ粒子径を大きくできるので、凝集剤の添加位置より下流側に設置したハイドロサイクロン、ベルトフィルタ又はシックナーなどの吸収液の固液分離装置(実施例の固液分離装置54)で固体と液体を効率よく分離でき、また該微粒子を除去した液のみを脱硫装置に再循環できるので、高濃度なHgを含む微粒子を分離した再循環水として脱硫装置へ供給して脱硫吸収液中のHg濃度の増加を防止できる。
【0025】
特に、吸収塔液溜め部の出口側に設けられるハイドロサイクロン等の固液分離装置(実施例の固液分離装置38)のオーバーフロー部から、循環水タンクに回収される液が循環水タンク全体で回収される液の大部分を占めるシステム構成となっている。
【0026】
本発明者らは、ハイドロサイクロン等の固液分離装置(実施例の固液分離装置38)のオーバーフロー側の液中のHg濃度がハイドロサイクロン等の固液分離装置(実施例の固液分離装置38)で石膏を分離して除去した石膏濃度の低い側の液(アンダフロー側の液)中のHg濃度に比べて高いことを見出した。そこでハイドロサイクロン等の固液分離装置(実施例の固液分離装置38)のオーバーフロー側の液の重量累積50%粒径が1〜20μmとなるようなハイドロサイクロン等の固液分離装置(実施例の固液分離装置38)を用いることで凝集剤により固体粒子の大径化が効率的に行われ、凝集剤添加後の固液分離装置(実施例の固液分離装置54)により、固体と液体を効率よく分離できる。
【0027】
また、高濃度なHgを含む固体と石膏を分離して回収できるため、回収する石膏の品質を向上することができる。また、固体側のHg濃度を低減できるので、固体側のHgが液側に再溶出するのを防止することができ、排ガス側へHgが再放出することがない。また、重金属除去剤を凝集剤の供給位置より上流側のハイドロサイクロン等の固液分離装置(実施例の固液分離装置38)のオーバーフロー側の液に供給することで、吸収液中の液側に存在していたHgを固体側へ移行させることができるので、凝集剤と固体分離装置(実施例の固液分離装置54)で効率良く除去することができ、Hg濃度を低減した再循環水を脱硫装置の補給水として利用できる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1,4記載の発明によれば、排煙脱硫装置から吸収液を抜き出し、固液分離装置(第一固液分離装置)で一部の石膏を分離して除去した後、脱硫装置の補給水として利用する場合に、該補給水中の高濃度なHgを含む微小粒子を多く含む固液分離装置(第一固液分離装置)のオーバーフロー液に凝集材を添加して前記高濃度なHgを含む微小粒子の粒径を大きくした後、再度固液分離装置(第二固液分離装置)で分離するので、前記高濃度なHgを含む液を、そのまま脱硫装置に再循環することがないので、前記脱硫装置の吸収液中のHgの高濃度化を防止でき、Hg再放出を抑制する効果がある。
【0029】
請求項2,5記載の発明によれば、固液分離装置(第一固液分離装置)のオーバーフロー側の液が、高濃度なHgを含む重量累積50%粒子径1〜20μmの固体粒子を含むので、石膏を回収した後の排水処理系に凝集剤を供給することで、前記高濃度なHgを含む固体粒子の径を30μm以上と大きくすることができ、凝集剤供給部よりも下流に設置した固液分離装置(第二固液分離装置)で固体と液体を分離することができる。
【0030】
請求項3,6記載の発明によれば、凝集剤を供給する前に、重金属除去剤を供給することで、吸収液中の液側に存在していたHgを固体側へ移行することができ、凝集剤と固液分離装置(第二固液分離装置)の組み合わせにより、重金属除去剤により捕捉されたHgを含む微粒子が脱硫装置に供給されるのを防止できるので、脱硫吸収液中のHg濃度の高濃度化を防止でき、Hg再放出を抑制する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の脱硫装置の再循環水に凝集剤添加装置と固液分離装置を設置した構成の排ガス処理システムを示す図である。
【図2】図1に記載の排水用H/Cを取り除き、固液分離装置の出口排水の一部をpH調整、重金属除去、凝集剤添加部に供給する構成とした排ガス処理システムを示す図である。
【図3】図1に記載の排ガス処理装置において、脱硫装置の抜き出し液に重金属除去剤添加装置を設置した構成の排ガス処理装置を示す図である。
【図4】図1に記載の排ガス処理装置において、循環水タンク中に重金属除去剤添加装置を設置した構成の排ガス処理装置を示す図である。
【図5】図1に記載の排ガス処理装置において、凝集剤の添加による粒子径の増大効果を確認した結果を示す図である。
【図6】従来技術の脱硫装置を示す図である。
【図7】従来技術の排水処理設備を示す図である。
【図8】従来技術の石炭燃焼排ガスを処理するシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施例を図面と共に説明する。従来技術と共通する構成、作用については前述の通りであり、説明を省略する。
本発明の排ガス処理システムの構成の一例を図1に示す。排ガス処理システムは主に、ハイドロサイクロン(H/C)38(本発明の第一固体分離装置)、排水用H/C39、ベルトフィルタ40、循環水タンク41、pH調整、重金属除去、凝集剤添加部42、凝集剤添加装置53、固液分離装置54(本発明の第二固体分離装置)等から構成される。表1にハイドロサイクロン38を用いて、石膏スラリーを分離した試験の結果を示す。
【表1】

排ガス量は2,500,000mN/h、排煙脱硫装置3の入口排ガス中のHg濃度は26μg/mの条件で試験を行った。ハイドロサイクロン38に供給された排煙脱硫装置3からの抜き出し液36の量は65m/hであり、ハイドロサイクロン38によって石膏スラリーの流量はH/Cオーバーフロー43側で50m/h、H/Cアンダーフロー44側で15m/hに分離される。また、このときに含まれる石膏濃度はH/Cオーバーフロー43側で33g/L、H/Cアンダーフロー44側で1003g/Lとなり、H/Cアンダーフロー44の方が石膏濃度は高くなる。前記H/Cアンダーフロー44はベルトフィルタ40で固液分離されて、固体は石膏49として回収され、液体はベルトフィルタ部排出液52として循環水タンク41に供給される。
【0033】
また、重量累積50%粒子径は、H/Cオーバーフロー43側で14μm、H/Cアンダーフロー44側で33μmとなる。H/Cオーバーフロー43側の液とベルトフィルタ部排出液52は循環水タンク41に供給され、循環水タンク41の液の一部は、排水用H/C供給部47から排水用H/C39に供給される。
【0034】
排水用H/C39によって、排水用H/Cオーバーフロー45側の液と、排水用H/Cアンダーフロー46側の液に分けられ、排水用H/Cアンダーフロー46側の液は循環水タンク41に供給される。循環水タンク41に供給される液量は、H/Cオーバーフロー43で50m/h、ベルトフィルタ部排出液52で8m/h、排水用H/Cアンダーフロー46で1.5m/hとなる。
【0035】
このように、ほとんどの液はH/Cオーバーフロー43で排出されたものであり、H/Cオーバーフロー43側の液の重量累積50%粒径が1〜20μmとなるようなハイドロサイクロン(H/C)38を設けることで、循環水タンク41内の重量累積50%粒子径を1〜20μmとすることができる。
【0036】
このとき、H/Cオーバーフロー43側の小さな粒子の方にはHgが14193μg/kg、H/Cアンダーフロー44側の大きな粒子の方にはHgが1330μg/kg含まれており、H/Cオーバーフロー43側の方がH/Cアンダーフロー44側より約10倍高いHg濃度であった。
【0037】
本発明者らはH/Cオーバーフロー43側から排出される固体粒子の量はH/Cアンダーフロー44側から排出される固体粒子の量に比べて少ないものの、固体粒子中のHg濃度が比較的高いことを見出した。Hgの排出量で比べると、H/Cオーバーフロー43側で24g/h、H/Cアンダーフロー44側で20g/hとなり、石膏49と共にHgが排出される。Hgの量は抜き出し液36中に含まれるHgの約50%程度であった。残りの約50%のHgは循環水タンク41から脱硫装置3へ再循環水37として供給されることになる。この再循環水37に含まれるHgの量は、脱硫装置3に供給される脱硫装置入口排ガス1中に含まれるHg量の約半分の量と同程度である。
【0038】
本発明の排ガス処理装置では、再循環水37中にポリ塩化アルミニウム等の凝集剤を凝集剤添加装置53から供給して、固液分離装置54を用いて、高濃度なHgを含む固体とHgを含まない液とに分離し、Hgを含まない液を再循環水37として脱硫装置3に供給することで、吸収液6中のHg濃度を低減させることができる。
【0039】
このように、H/Cオーバーフロー43側から比較的微粒子からなるHgを含む液をH/Cアンダーフロー44側より約10倍高い濃度で循環タンク41に回収し、石膏などの他の固体含有量が少ない状態の循環水を得て、この循環水に凝集剤添加装置53で凝集剤を添加することで、粒径が大きくなったHgを中心とした固体を含む液を固液分離装置54で効果的に回収できる。
図1に、固液分離装置54を再循環水用ベルトフィルタ56とろ液回収部57から構成した例を示す。凝集剤添加装置53から供給された凝集剤により、サイズの大きくなった粒子を含む液が再循環水用ベルトフィルタ56に供給され、Hgを含む固形物はHg含有固形物58として系外へ排出され、固形物の除去されたろ液はろ液回収部57に溜められ、該ろ液回収部57に回収されたろ液は図示していないポンプにより脱硫装置3に再循環される。固液分離装置54としては、再循環水用ベルトフィルタ56に限らず、ハイドロサイクロンやシックナー等も適用でき、固体と液体を分離できる装置であれば問題ない。
【0040】
図5に凝集剤を添加する前と後の重量累積50%粒子径を示す。凝集剤を添加する前は14μmであった粒子が、凝集剤を添加することにより34μmまで粒子径が大きくなっていることが分かる。したがって、ベルトフィルタ56や図示しないハイドロサイクロンやシックナーなどの固液分離装置54での微粒子の除去効率が高まり、脱硫装置3に供給する高濃度なHgを含む微小粒子の量を低減できる。
【0041】
図2に示す排ガス処理システムは、図1に示す排ガス処理システムにおける排水用H/C39を取り除き、固液分離装置54の出口排水の一部をpH調整、重金属除去、凝集剤添加部42に供給した場合の構成を示す。このように、固液分離装置54の出口の固液分離装置出口排液59には固体粒子がほとんど含まれていないため、図1に示す排ガス処理システムと同様に、そのままpH調整、重金属除去、凝集剤添加部42に供給して、最終的な排水50を生成する構成としても、特に問題なく処理することができる。
【0042】
図3に示す排ガス処理システムは、図1に示す排ガス処理システムに重金属除去剤添加装置55を加えて脱硫装置3の抜き出し液36中にTMT(トリメルカトトリアジン)などの重金属除去剤を供給する構成とした排ガス処理システムである。
【0043】
通常、脱硫装置3の運転pHなどの影響により、脱硫吸収液6中のHgがすべて固体側に移行するとは限らず、 液側に保持される場合がある。液側に存在しているHgは凝集剤で除去することがほとんどできないが、TMT等の重金属除去剤を凝集剤添加装置53の上流側の位置から供給することで、液側のHgを固体側へ移行させることができる。この生成したHgを含む固体粒子は10μm程度と小さいことからH/Cオーバーフロー43側から排出され、回収される石膏49中のHg濃度を低減できる。
【0044】
また、図3に示す排ガス処理システムは図1のシステムと同様に、凝集剤添加装置53や固液分離装置54の作用により、高濃度なHgを含む微粒固体を脱硫装置3に再循環させることがないので、Hgの再放出を防止することができる。また、脱硫装置3が排ガスのSOガスを吸収することにより液滴のpHが低下する過程で、重金属除去剤で捕捉されたHgは液側へ再溶解する場合もある。しかし、凝集剤添加装置53や固液分離装置54を設置することで重金属に捕捉されたHgを含む微粒子を除去することにより、脱硫装置3の吸収液6中のHg濃度を低減できるので、Hg再放出を防止することができる。
【0045】
図4に示す排ガス処理システムは、循環水タンク41に重金属除去剤添加装置55から重金属除去剤を添加する構成であるが、この場合も、図3に示す排ガス処理システムと同様の効果を得ることができる。この場合に限らず、重金属除去剤を供給する位置は、凝集剤添加装置53の上流側であれば、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 入口排ガス 2 出口ガス
3 脱硫装置 4 スプレノズル
5 吸収液循環ポンプ 6 吸収液
8 ミストエリミネータ 9 酸化用ガス供給部
10 攪拌機 11 吸収液溜め部
13 ボイラ 14 脱硝装置
15 空気予熱器(A/H) 16 集塵装置
19 アルカリ剤 25 石炭
26 脱硫吸収部 27 酸化用ガス
29 煙突 36 抜き出し液
37 再循環水
38 ハイドロサイクロン(H/C)
39 排水用ハイドロサイクロン(H/C)
40 ベルトフィルタ 41 循環水タンク
42 pH調整、重金属除去、凝集剤添加部
43 H/Cオーバーフロー
44 H/Cアンダーフロー
45 排水用H/Cオーバーフロー
46 排水用H/Cアンダーフロー
47 排水用H/C供給部 49 石膏
50 排水 51 固形物
52 ベルトフィルタ部排出液
53 凝集剤添加装置 54 固液分離装置
55 重金属除去剤添加装置
56 再循環水用ベルトフィルタ
57 ろ液回収部 58 Hg含有固形物
59 固液分離装置出口排液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラを含む燃焼装置からの排ガスの流路に石灰石を含む吸収液を噴霧するスプレノズルを設けた硫黄酸化物の吸収部及び該吸収部下部に設けた吸収液溜め部と該吸収液溜め部内に設けた酸化用ガス供給部とを備えた排煙脱硫装置及び前記脱硫装置の吸収液溜め部の吸収液抜き出し部の下流に配置した吸収液の第一固液分離装置及び該第一固液分離装置での吸収液の固液分離後の液を前記脱硫装置の補給水として前記吸収液溜め部に再循環させる構成を備えた排水処理システムにおいて、
前記吸収液の第一固液分離装置で分離された液と該第一固液分離装置のオーバーフロー側の液を回収する循環水タンクを設け、該循環水タンクから前記脱硫装置の吸収液溜め部に再循環水を再循環させる再循環ラインを設け、前記再循環ラインに凝集剤添加装置と再循環水の第二固液分離装置を設けることを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項2】
前記吸収液の第一固液分離装置は、オーバーフロー側の液の重量累積50%径を1〜20μmとなるようなハイドロサイクロンから構成したことを特徴とする請求項1記載の排ガス処理システム。
【請求項3】
排煙脱硫装置の前記吸収液抜き出し部と前記凝集剤添加装置の間の流路に重金属除去剤を供給する重金属除去剤添加装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理システム。
【請求項4】
排煙脱硫装置内でボイラを含む燃焼装置からの排ガスの流路に石灰石を含む吸収液を用いて前記排ガス中の硫黄酸化物を吸収させ、硫黄酸化物を吸収した吸収液に酸化用ガスを供給して石膏を生成させ、脱硫装置内から抜き出した石膏を含む吸収液を固液分離処理し、固液分離後の液を前記脱硫装置の補給水として脱硫装置に再循環させる排水処理方法において、
前記石膏を含む吸収液の固液分離処理後の液と前記固液分離処理時のオーバーフロー側の液を循環水として回収し、該回収した循環水に凝集剤を添加した後に再度固液分離して、前記固液分離後の液を再循環水として前記脱硫装置に再循環させることを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項5】
前記循環水中の固体粒子の重量累積50%径を1〜20μmとすることを特徴とする請求項4記載の排ガス処理方法。
【請求項6】
前記脱硫装置内から抜き出した石膏を含む吸収液に凝集剤を添加する前に重金属除去剤を供給することを特徴とする請求項4に記載の排ガス処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−81876(P2013−81876A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221536(P2011−221536)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】