説明

排ガス処理方法および排ガス処理装置

【課題】イニシャルコストおよびランニングコストを低減できる排ガス処理方法および排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】この排ガス処理装置によれば、洗浄水のTOC濃度をTOC計28で測定し、制御部としてのTOC調節計29は洗浄水のTOC濃度に応じて、吸着材としての微生物が繁殖したリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14と小型炭15に散水する散水量を制御する。したがって、吸着材への排ガスの流入量や排ガスの有機物濃度の変動に対応した散水量とすることができるので、排ガス処理の効率を向上できる。また、従来のような排ガスの前処理や吸着材の再生費用の発生を最小限に抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体工場や液晶工場における有機化合物を含有する排ガスに対する排ガス処理方法および排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体工場や液晶工場から出る排ガスを処理する方法としては、次の(1)〜(3)の方法がある。
【0003】
(1)活性炭やゼオライトによる吸着法
(2)排ガスを空気と混合して直接的に燃焼させる直接燃焼法
(3)水、酸、アルカリ溶液などの液体に対象とするガスを吸収させる方法
また、有機系排ガスを処理する場合、処理効率の観点から、上記(1),(2)のどちらかの方法が採用されている。
【0004】
しかし、上記(1)の方法は、有機系排ガスがダストやミストを含んでいると、バグフィルタやミストセパレータなどで有機系排ガスからダストやミストを除去する前処理が必要となる。このため、上記(1)の方法は、バグフィルタやミストセパレータ分、イニシャルコストが高くなるという問題がある。
【0005】
また、上記(1)の方法は、上記有機系排ガスの処理回数の増加に伴って、活性炭やゼオライトの吸着能力が低下するため、活性炭やゼオライトを再生する必要がある。したがって、上記(1)の方法は、前処理に掛かる費用が生じる上に、活性炭やゼオライトの再生費用が生じるため、ランニングコストが高いという問題がある。
【0006】
また、上記(2)の方法も、燃焼のための燃料が必要となるため、ランニングコストが高い問題がある。また、上記燃料を要する(2)の方法は、省エネを推進する時代では課題の多い方法である。
【特許文献1】特開2005−152701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明の課題は、イニシャルコストおよびランニングコストを低減できる排ガス処理方法および排ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の排ガス処理方法は、排ガスが含む有機化合物を吸着する吸着材に洗浄水を散水する工程と、
上記吸着材に排ガスを導入する工程と、
上記洗浄水のTOC濃度を測定する工程と、
上記洗浄水のTOC濃度に応じて、上記吸着材に散水する散水量を制御する工程とを備えたことを特徴としている。
【0009】
この発明の排ガス処理方法によれば、洗浄水のTOC濃度を測定し、この洗浄水のTOC濃度に応じて、吸着材に散水する散水量を制御する。したがって、吸着材への排ガスの流入量の変動に対応した散水量とすることができるので、排ガス処理の効率を向上できる。また、従来のような排ガスの前処理や吸着材の再生費用の発生を最小限に抑制できる。したがって、この発明の排水処理方法によれば、イニシャルコストおよびランニングコストを低減できる。
【0010】
また、一実施形態の排ガス処理装置は、排ガスが導入され、この排ガスが含む有機化合物を吸着する吸着材を有すると共に上記吸着材に洗浄水を散水する散水部と、
上記散水部に供給すべき上記洗浄水を溜める溜め部と、
上記溜め部の洗浄水のTOC濃度を測定するTOC計と、
上記TOC計で測定した上記洗浄水のTOC濃度に応じて、上記溜め部から上記散水部に供給する洗浄水の量を制御する制御部とを備える。
【0011】
ここで、TOCとは、トータル・オーガニック・カーボン(全有機炭素)ということの略である。
【0012】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、洗浄水のTOC濃度をTOC計で測定し、制御部は洗浄水のTOC濃度に応じて、吸着材に散水する散水量を制御する。したがって、吸着材への排ガスの流入量や排ガスの有機物濃度の変動に対応した散水量とすることができるので、排ガス処理の効率を向上できる。また、従来のような排ガスの前処理や吸着材の再生費用の発生を最小限に抑制できる。したがって、この実施形態の排水処理装置によれば、イニシャルコストおよびランニングコストを低減できる。
【0013】
また、一実施形態の排ガス処理装置は、上記溜め部から上記洗浄水が導入されると共にこの洗浄水を炭を通して上記溜め部に戻す炭充填部を備えた。
【0014】
この実施形態によれば、炭充填部に充填されている炭が洗浄水に含まれる有機化合物を吸着するので、洗浄水の再利用効率を向上できると共に排ガス処理能力の向上を図れる。
【0015】
また、一実施形態の排ガス処理装置は、上記散水部で散水された上記洗浄水は、上記溜め部に戻って上記溜め部と上記散水部との間で循環し、上記散水部から戻って上記溜め部に溜まる上記洗浄水には、有機化合物を吸着する吸着材が浸漬されている。
【0016】
この実施形態によれば、散水部において、吸着材に散水された洗浄水は排ガスに含まれる有機化合物を含有することとなるが、この洗浄水に含まれる有機化合物は、溜め部が有する吸着材に吸着される。そして、この溜め部の吸着材に繁殖する微生物は溜め部の吸着材に吸着した有機化合物を分解する。また、溜め部の洗浄水が散水される散水部の吸着材にも微生物が繁殖することとなり、散水部の吸着材に繁殖した微生物が散水部の吸着材が吸着した有機化合物を分解する。
【0017】
したがって、この実施形態によれば、散水部と溜め部の両方において、排ガス中の有機化合物を効率よく処理できる。よって、洗浄水の再利用効率も向上できる。
【0018】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記散水部は、上記吸着材として、炭とリング型ポリ塩化ビニリデン充填材とを有する。
【0019】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、散水部において、吸着材としての炭と微生物が繁殖したリング型ポリ塩化ビニリデン充填材とに排ガス中の有機物が吸着され、洗浄水が散水されることで炭とリング型ポリ塩化ビニリデン充填材に繁殖する微生物によって排ガス中の有機物を処理できる。したがって、排ガス処理効率のさらなる向上を図れる。
【0020】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記散水部および上記溜め部は、吸着材としての炭を有する。
【0021】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、散水部と溜め部の両方において、炭に繁殖する微生物によって、排ガス中の有機物を処理できる。
【0022】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記散水部が有する炭を上記溜め部が有する炭よりも小型の炭とした。
【0023】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、散水部では小型の炭によって排ガスに含まれる有機物の吸収効率をよくすると共に、溜め部では散水部が有する炭よりも大型の炭によって循環水流が発生するような適度な隙間を形成できる。
【0024】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記吸着材としての炭は、活性炭、木炭、合成炭の3種の炭のうちの少なくとも1種の炭を含んでいる。
【0025】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、活性炭、合成炭、木炭は、程度や能力の差はあるものの、有機物吸着能力があるので、排ガス中の有機物の処理に対して有効となる。
【0026】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記吸着材としての炭は、備長炭である。
【0027】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、備長炭は有機物に対する吸着能力があるので、排ガス中の有機物を効率よく処理できる。また、備長炭は形状が比較的大きなものが得られることから、微生物等の汚泥による閉塞の回避に有効である。
【0028】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記溜め部内に、マイクロナノバブルを発生するマイクロナノバブル発生機が設置されている。
【0029】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、マイクロナノバブル発生機により、溜め部内に溜めた洗浄水にマイクロナノバブルを発生させて、微生物を活性化でき、その微生物により、洗浄水中の有機物を効率的に微生物分解できる。
【0030】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記排ガスは、揮発性有機化合物を含有する排ガスである。
【0031】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、排ガス中の各種揮発性有機化合物を効率よく処理できる。
【0032】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記炭充填部は、導入された上記洗浄水にマイクロナノバブルを含有させるマイクロナノバブル発生機を有する。
【0033】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、マイクロナノバブル発生機が発生するマイクロナノバブルによって、炭充填部(例えば活性炭塔)の内部で繁殖した微生物を活性化できる。したがって、炭充填部の内部の炭(例えば活性炭、木炭、合成炭、備長炭等)が吸着した有機物を、炭充填部の内部に繁殖し活性化された微生物によって強力に分解できる。
【0034】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記散水部は、上記炭を有する炭層と上記リング型ポリ塩化ビニリデン充填材を有する充填材層とを積層した積層部を少なくとも1つ有する。
【0035】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、散水部において、炭層と充填材層が積層された積層部でもって、さらなる排ガス処理効率の向上を図れる。
【0036】
また、一実施形態の排ガス処理装置では、上記散水部が有する上記リング型ポリ塩化ビニリデン充填材に微粉炭を付着させた。
【0037】
この実施形態の排ガス処理装置によれば、散水部において、微粉炭を付着させたリング型ポリ塩化ビニリデン充填材によって、排ガス中の有機化合物の吸着と分解とを同時に実施できる。
【発明の効果】
【0038】
この発明の排ガス処理方法によれば、洗浄水のTOC濃度を測定し、この洗浄水のTOC濃度に応じて、吸着材に散水する散水量を制御する。したがって、吸着材への排ガスの流入量の変動に対応した散水量とすることができるので、排ガス処理の効率を向上できる。また、従来のような排ガスの前処理や吸着材の再生費用の発生を最小限に抑制できる。したがって、この発明の排水処理方法によれば、イニシャルコストおよびランニングコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0040】
(第1の実施の形態)
図1は、この発明の排ガス処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【0041】
図1において、符号1は排気入口であり、この排気入口1に設置された排気ファン20によって、半導体工場や液晶工場からの有機化合物を含有する排ガスが排ガスの一例とし排ガス処理装置4に導入される。この排ガスが含有する有機化合物としては、揮発性有機化合物としての、イソプロピールアルコール、アセトン、酢酸ブチルなどがある。また、上記有機化合物としては、揮発性有機化合物に加えて非揮発性有機化合物を含むものもある。
【0042】
この第1実施形態に排ガス処理装置4は、上部の散水部2と炭充填部としての活性炭塔部30と下部の処理部3を備えている。処理部3は水槽3Aを有し、散水部2に供給すべき洗浄水を溜める溜め部を構成する。この排ガス処理装置4によって処理された排ガスは、排ガス処理装置4の最上部に配置された排気出口18より排出される。
【0043】
この排ガス処理装置4では、下部の処理部3は、水槽3A内に多孔板5が設置され、この多孔板5上に大型炭6が積層されている。この実施形態では、大型炭6を活性炭としたが備長炭としてもよい。なお、大型炭6とは、一例として、容積が3〜6(cm)程度のものとし、代表的には約4(cm)のものとする。
【0044】
また、この多孔板5の端には縦方向(上下方向)に延びる仕切板12が設置されている。この仕切板12は積層された大型炭6と、TOC(全有機炭素)計28が設置された箇所とを仕切っている。また、積層された大型炭6の上には、マイクロナノバブル発生機9が配置されている。このマイクロナノバブル発生機9は、循環ポンプ10に接続された配管L1でもって処理部3の水槽3A内に溜まった洗浄水が供給されると共に、調節バルブ8Cを有する空気吸込管7から空気が供給される。一方、TOC計28は、水槽3Aの外に設置された制御部としてのTOC調節計29に接続され、このTOC調節計29は、TOC計28が測定した水槽3A内の洗浄水のTOC濃度に応じて、水槽3Aの底付近に配管で接続された散水ポンプ11の回転数を制御する。
【0045】
この散水ポンプ11は、水槽3A内の溜めた洗浄水を、バルブ8Aが設置された配管L3を経由して、散水部2の最上部に形成された排気出口18下の箇所に配置した散水ノズル17に送水し、この散水ノズル17から洗浄水を散水する。
【0046】
散水部2は、多孔板13上にリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14が縦方向に2段に積層され、この積層されたリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14上に網16に入れた小型炭15が積層されている。ここで、小型炭15とは、前述の大型炭6よりも容積が小さなものとする。このリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14と小型炭15との積層部が縦方向に3段設置され、この3段の積層部上にさらにリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14が縦方向に2段に積層されている。
【0047】
散水部2では、下部処理部3からの洗浄水が散水ノズル17からリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14および小型炭15に散水される。下部の処理部3からの洗浄水には処理部3で繁殖した微生物27が含有されている。このため、この洗浄水が散水されるリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14の表面には時間の経過とともに微生物27が繁殖する。リング型ポリ塩化ビニリデン充填材14に微生物が繁殖すると、この微生物は排ガス中の有機化合物を吸収、吸着、および分解する。
【0048】
また、リング型ポリ塩化ビニリデン充填材14と同様に、小型炭15にも微生物が繁殖する。小型炭15は、排ガス中の有機化合物を吸着し、その後小型炭15に繁殖した微生物により、吸着した有機化合物を分解する。
【0049】
なお、小型炭15としては、活性炭、合成炭、木炭などがあるが、排ガス入口1から導入される排ガスの濃度と排気出口18から排気すべき処理後の排ガス濃度によって、最適な炭を選定すればよい。排ガス中の有機化合物の除去率を高めるためには活性炭が最も良い。
【0050】
上記した如く、この排ガス処理装置4の下部の処理部3の水槽3Aは、その内部に大型炭6を収納するための多孔板5と仕切壁12が設置されていて、大型炭6は洗浄水中の有機化合物を吸着処理する。
【0051】
この大型炭6には、時間の経過とともに、微生物27が繁殖する。下部の処理部3の水槽3A内に設置されたマイクロナノバブル発生機9から発生したマイクロナノバブルによって、その微生物27は活性化してくる。この活性化した微生物27によって、大型炭6が吸着した有機化合物を分解する。よって、大型炭6は自動再生された状態となる。なお、水槽3A内では、一例として矢印で示されているような方向に水流が生じている。
【0052】
マイクロナノバブル発生機9は、上述したように、配管L1によって循環ポンプ10に接続されており、下部の処理部3の洗浄水をマイクロナノバブル発生機9に必要な圧力を加えた状態で供給している。また、マイクロナノバブル発生機9は、マイクロナノバブルを発生するために、空気が必要となるが、必要量の空気は、バルブ8Cと空気吸込管7から確保している。そして、上述の如く、処理部3における洗浄水中の一部の微生物27は、散水ポンプ11によって、上部の散水部2に移送され、リング型ポリ塩化ビニリデン充填材14と小型炭15に微生物が繁殖することとなる。マイクロナノバブル発生機9は、市販されているものならば、メーカーを限定するものではなく、この実施形態では、具体的には、株式会社ナノプラネット研究所と株式会社オーラテックのものを採用した。
【0053】
また、この実施形態の排ガス処理装置4は、活性炭塔部30を有し、この活性炭塔部30は、配管L3から分岐した配管L2に接続された活性炭塔24を有している。この配管はバルブ8Bを有する。よって、この活性炭塔部30へは、散水ポンプ11によって、洗浄水の一部が移送される。活性炭塔部30により、洗浄水中の有機化合物が処理される。
【0054】
この排ガス処理装置4に導入される排ガス中の有機化合物濃度が上昇したときは、処理部3の水槽3A内の洗浄水のTOC(全有機炭素)濃度も上昇する。そして、処理部3の水槽3A内に設置されているTOC計28が洗浄水のTOC濃度の上昇を感知して、このTOC濃度を表す信号をTOC調節計29に出力する。このTOC調節計29は上記TOC濃度の上昇に連動して散水ポンプ11を駆動するインバーターを制御して、散水ポンプ11の出力を増加させる。その結果、散水部2での散水ノズル17からの散水量が増加すると共に、活性炭塔24への送水量が増加する。
【0055】
これにより、散水部2での排ガス処理能力が上昇すると共に、活性炭塔24の活性炭によって有機化合物を吸着してから水槽3Aに戻される洗浄水の量が増加する。その結果、排ガス中の有機化合物濃度の上昇に対応できる。
【0056】
ここで、3種類のバブルについて説明する。通常のバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。一方、マイクロバブルは、直径が50ミクロン(μm)以下の微細気泡で、水中で縮小していき、ついには消滅(完全溶解)してしまう。また、ナノバブルは、マイクロバブルよりさらに小さいバブル(直径が1ミクロン以下の100〜200nm)でいつまでも水の中に存在することが可能なバブルといわれている。そして、マイクロナノバブルとは、マイクロバブルとナノバブルとが混合したバブルといえる。
【0057】
尚、上記実施形態では、炭充填部としての活性炭塔部30を備えたが、活性炭以外の炭(木炭、合成炭、備長炭等)が充填された炭充填部を採用してもよい。また、上記実施形態において、散水部2が有するリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14に微粉炭を付着させてもよい。この場合には、散水部2において、微粉炭を付着させたリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14によって、排ガス中の有機化合物の吸着と分解とを同時に実施できる。
【0058】
(第2の実施の形態)
次に、図2に、この発明の排ガス処理装置の第2実施形態を示す。この第2実施形態は、処理部3が大型炭6に替えて小型炭15Fを有する点と、この小型炭15Fが網16Fに収納されている点が、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第2実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0059】
前述の第1実施形態では、処理部3の水槽3Aに大型炭6(一例として活性炭)を設置したので、揮発性有機化合物が洗浄水に多量に溶解した場合、大型炭6の揮発性有機化合物に対する吸着能力が不十分となる場合がある。
【0060】
これに対して、この第2実施形態では、図2に示すように、水槽3A内に小型炭15F(一例として活性炭)を設置した。すなわち、複数の小型炭15Fを収納した網16Fを、多孔板5上に複数個配列した。この小型炭15Fは大型炭6に比べて全体の表面積が大きく吸着能力に優れている。したがって、排ガスが含有する揮発性有機化合物が洗浄水に多量に溶解した場合に対応できるだけの排ガス処理能力を発揮できる。
【0061】
(第3の実施の形態)
次に、図3に、この発明の排ガス処理装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態は、図1の処理部3が有する大型炭6を備長炭19に変更した点だけが、先述の第1の実施形態と異なる。よって、この第3実施形態では、先述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて、詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0062】
この第3実施形態は、排ガスが含有する揮発性有機化合物が比較的少量であり、揮発性有機化合物が洗浄水に少量に溶解している場合に適合する。備長炭19にも活性炭と同様に微生物が繁殖して、吸着した洗浄水中の揮発性有機化合物を分解することとなる。
【0063】
この第3実施形態では、水槽3A内に配置する炭としては、活性炭と比較すると吸着能力の低い備長炭19を採用したことにより、コストの低減を図れる。すなわち、備長炭19は、活性炭ほどの吸着能力はないが、低濃度の揮発性有機化合物に対しては、有効である。また、備長炭19は、活性炭と比較してコストが格段に低い。
【0064】
(第4の実施の形態)
次に、図4に、この発明の排ガス処理装置の第4実施形態を示す。図1の第1実施形態では通常の活性炭塔24が炭充填部として設置されていたのに対し、この第4実施形態では、活性炭塔24に替えてマイクロナノバブル発生機9Fを内蔵した活性炭塔24Fを備えた点だけが先述の第1実施形態と異なる。よって、この第4実施形態では、先述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、先述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0065】
図4に示すように、この第4実施形態は、活性炭塔24Fはマイクロナノバブル発生機9Fを内蔵している。このマイクロナノバブル発生機9Fは空気吸込管7Fからバルブ8Fを経由して空気が供給されると共にポンプ9Fによってこの活性炭塔24F内からの洗浄水が供給される。
【0066】
このマイクロナノバブル発生機9Fが発生するマイクロナノバブルによって、活性炭塔24F内の大型炭6Fの一例としての活性炭に繁殖した微生物が特に活性化する。したがって、水槽3Aから散水ポンプ11によって配管L3を経由して活性炭塔24Fに導入された洗浄水中の揮発性有機化合物は、活性炭塔24F内で、活性炭で吸着されると共に活性化した微生物によって効率的に分解される。したがって、排ガス中の揮発性有機化合物が高濃度である場合や、洗浄水の揮発性有機化合物濃度が高濃度になった場合にも対応できる処理能力を有する。
【0067】
(第5の実施の形態)
次に、図5に、この発明の排ガス処理装置の第5実施形態を示す。この第5実施形態は、第1実施形態の散水部2に替えて散水部2Gを備え、この散水部2Gが散水部2のリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14に替えてプラスチック充填材25を備えた点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第5実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細な説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0068】
この第5実施形態が備える散水部2Gは、充填材として、網16に収納された小型炭15とプラスチック充填材25を有している。この小型炭15とプラスチック充填材25は、前述の第1実施形態の小型炭15とリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14と同様に積層されている。このプラスチック充填材25は、一般の排ガス処理装置に充填材として採用されており、リング型ポリ塩化ビニリデン充填材14に比べて、空気抵抗の少ない充填材である。
【0069】
プラスチック充填材25は、吸着能力が実質的に全くないので、揮発性有機化合物の処理は、散水部2の網16に収納された小型炭15と処理部3の大型炭6で行う。ただし、プラスチック充填材25は、気体と液体とを接触させるには優れた充填材である。よって、このため、プラスチック充填材25に導入された排ガスが含有する揮発性有機化合物はプラスチック充填材25に散水された洗浄水へ効率よく移行されることとなる。そして、洗浄水が散水部2Gと処理部3との間を循環することによって、排ガスが含有する揮発性有機化合物は洗浄水へ吸収され、さらに、網16に収納された小型炭15、大型炭6および活性炭塔24の活性炭に吸着され、それらに繁殖した活性化した微生物によって、分解されることとなる。
【0070】
(第6の実施の形態)
次に、図6にこの発明の排ガス処理装置の第6実施形態を示す。この第6実施形態は、前述の第1実施形態の散水部2に替えて散水部2Hを備えた点だけが第1実施形態と異なる。よって、この第6実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0071】
この第6実施形態が備える散水部2Hは、第1実施形態の散水部2の小型炭15とリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14との積層構造に替えて、プラスチック充填材25のみの積層構造を備えている。この散水部2Hでは、充填材の全量がプラスチック充填材25で構成されているので、排ガスに含まれる揮発性有機化合物を洗浄水へ吸収させる能力は増大する。そして、洗浄水中の揮発性有機物は、処理部3の大型炭6と活性炭塔24の活性炭とによって吸着された後、微生物によって分解される。
【0072】
(実験例)
図1の第1実施形態の排ガス処理装置に対応する排ガス処理の実験装置を製作した。この排ガス処理の実験装置における散水部2の容量を約1mとし、活性炭塔部30の活性炭塔24の容量を0.2mとし、処理部3の容量を約0.5mとした。また、この排ガス処理の実験装置では、上部の散水部2には、小型炭15としての活性炭とリング型ポリ塩化ビニリデン充填材14を設置し、また、活性炭塔部30の活性炭塔24に活性炭を充填し、下部の処理部3に大型炭として大型合成活性炭を設置した。そして、1ケ月間、試運転を行った。この1ヶ月の試運転後、半導体工場からのアセトンを含有する排ガスを導入して、7日後のアセトンの処理前濃度と処理後の濃度を測定し、アセトンの除去率を測定したところ、94%であった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の排ガス処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【図2】この発明の排ガス処理装置の第2実施形態を模式的に示す図である。
【図3】この発明の排ガス処理装置の第3実施形態を模式的に示す図である。
【図4】この発明の排ガス処理装置の第4実施形態を模式的に示す図である。
【図5】この発明の排ガス処理装置の第5実施形態を模式的に示す図である。
【図6】この発明の排ガス処理装置の第6実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 排気入口
2、2G、2H 散水部
3 処理部
3A 水槽
4 排ガス処理装置
5 多孔板
6、6F 大型炭
7、7F 空気吸込管
8A、8B、8C バルブ
9、9F マイクロナノバブル発生機
10 循環ポンプ
11 散水ポンプ
12 仕切壁
13 多孔板
14 リング型ポリ塩化ビニリデン充填材
15 小型炭
16 網
17 散水ノズル
18 排気出口
19 備長炭
20 排気ファン
24、24F 活性炭塔
25 プラスチック充填材
27 微生物
28 TOC計
29 TOC調節計
30 活性炭塔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが含む有機化合物を吸着する吸着材に洗浄水を散水する工程と、
上記吸着材に排ガスを導入する工程と、
上記洗浄水のTOC濃度を測定する工程と、
上記洗浄水のTOC濃度に応じて、上記吸着材に散水する散水量を制御する工程とを備えたことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項2】
排ガスが導入され、この排ガスが含む有機化合物を吸着する吸着材を有すると共に上記吸着材に洗浄水を散水する散水部と、
上記散水部に供給すべき上記洗浄水を溜める溜め部と、
上記溜め部の洗浄水のTOC濃度を測定するTOC計と、
上記TOC計で測定した上記洗浄水のTOC濃度に応じて、上記溜め部から上記散水部に供給する洗浄水の量を制御する制御部とを備えることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排ガス処理装置において、
上記溜め部から上記洗浄水が導入されると共にこの洗浄水を炭を通して上記溜め部に戻す炭充填部を備えたことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の排ガス処理装置において、
上記散水部で散水された上記洗浄水は、上記溜め部に戻って上記溜め部と上記散水部との間で循環し、
上記散水部から戻って上記溜め部に溜まる上記洗浄水には、有機化合物を吸着する吸着材が浸漬されていることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の排ガス処理装置において、
上記散水部は、上記吸着材として、炭とリング型ポリ塩化ビニリデン充填材とを有することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項6】
請求項2に記載の排ガス処理装置において、
上記散水部および上記溜め部は、吸着材としての炭を有することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の排ガス処理装置において、
上記散水部が有する炭を上記溜め部が有する炭よりも小型の炭としたことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項8】
請求項6に記載の排ガス処理装置において、
上記吸着材としての炭は、活性炭、木炭、合成炭の3種の炭のうちの少なくとも1種の炭を含んでいることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項9】
請求項6に記載の排ガス処理装置において、
上記吸着材としての炭は、備長炭であることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項10】
請求項2に記載の排ガス処理装置において、
上記溜め部内に、マイクロナノバブルを発生するマイクロナノバブル発生機が設置されていることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項11】
請求項2に記載の排ガス処理装置において、
上記排ガスは、揮発性有機化合物を含有する排ガスであることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項12】
請求項3に記載の排ガス処理装置において、
上記炭充填部は、
導入された上記洗浄水にマイクロナノバブルを含有させるマイクロナノバブル発生機を有することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項13】
請求項5に記載の排ガス処理装置において、
上記散水部は、
上記炭を有する炭層と上記リング型ポリ塩化ビニリデン充填材を有する充填材層とを積層した積層部を少なくとも1つ有することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項14】
請求項5に記載の排ガス処理装置において、
上記散水部が有する上記リング型ポリ塩化ビニリデン充填材に微粉炭を付着させたことを特徴とする排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−136410(P2007−136410A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336828(P2005−336828)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】