排ガス浄化フィルタ及びその製造方法
【課題】捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】排ガス浄化フィルタ1において、セル4は、下流端202を栓部6によって閉塞してなり、排ガスGを流入させる流入側セル41と、上流端201を栓部6によって閉塞してなり、排ガスGを排出させる排出側セル42と、下流端202を栓部6によって閉塞してなり、栓部6より上流側の部分に高熱容量粉体を充填して焼成により焼結させると共に基材2に対して溶着させて形成してなる熱緩和層431を設けた熱緩和セル43とを有する。熱緩和層431の熱容量は流入側セル41及び排出側セル42の熱容量よりも大きく、かつ熱緩和層431と基材2との熱膨張係数の差は2×10-6/℃以下である。
【解決手段】排ガス浄化フィルタ1において、セル4は、下流端202を栓部6によって閉塞してなり、排ガスGを流入させる流入側セル41と、上流端201を栓部6によって閉塞してなり、排ガスGを排出させる排出側セル42と、下流端202を栓部6によって閉塞してなり、栓部6より上流側の部分に高熱容量粉体を充填して焼成により焼結させると共に基材2に対して溶着させて形成してなる熱緩和層431を設けた熱緩和セル43とを有する。熱緩和層431の熱容量は流入側セル41及び排出側セル42の熱容量よりも大きく、かつ熱緩和層431と基材2との熱膨張係数の差は2×10-6/℃以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関より排出される排ガス中のパティキュレート(Particulate Matter:以下、単にPMという)を捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタが知られている。
この排ガス浄化フィルタは、多孔質のセル壁をハニカム状に配して多数のセルを設けた基材としてのハニカム構造体を有するものである。そして、上記セルのうち、排ガスを流入させる流入側セルの下流端と、多孔質のセル壁を通過した排ガスを排出させる排出側セルの上流端とは、栓部によって閉塞されるのが一般的である。
【0003】
上記排ガス浄化フィルタを用いて排ガスを浄化する際には、流入側セルに流入した排ガスが多孔質のセル壁を通過して、排出側セルに移動する。このとき、排ガス中のPMがセル壁に存在する多数の細孔に捕集され、排ガスが浄化される。その後、浄化された排ガスは、排出側セルから排出される。
また、捕集されたPMは、定期的に燃焼除去される。そして、これにより、多孔質のセル壁の捕集機能は再生する。なお、燃焼除去方法としては、すでに公知の様々な方法が提案されている。例えば、触媒をセル壁の表面に担持させ、触媒反応により発熱させることで排ガス浄化フィルタを昇温させ、PMを燃焼する方法等がある。
【0004】
ところで、上記排ガス浄化フィルタに捕集されたPMを燃焼除去する際に、発生する燃焼熱によって過昇温状態となり、触媒の燃焼や劣化、基材の溶損や割れ等の問題が発生するおそれがあった。特に、捕集されたPMが多いほど燃焼熱は大きくなるため、上記の問題が発生するおそれが高くなる。
【0005】
そこで、特許文献1では、フィルタの中央部領域と外周領域との間において、セル壁によってPMが捕集されない無捕集領域を設け、フィルタの熱損傷を抑制する排気ガス微粒子浄化用フィルタが提案されている。
また、特許文献2では、フィルタの下流端に他の部位よりも熱容量が大きい熱吸収部を設け、触媒の劣化やフィルタの損傷を防止する内燃機関の排ガス浄化装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献3では、排ガスの流通が実質的に起こらない又は流通を大きく阻害する層である流路セパレーターが形成されているハニカム構造体が提案されている。
また、特許文献4では、第1の封止部材に加えて、少なくともハニカム構造体の中心軸から外周面までの2/3の中心部における中心軸に垂直な断面の面積に対して0.2〜2.5%に相当する開口部を封止するように配設された第2の封止部材をさらに備えてなるハニカムフィルタ及びその製造方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−44442号公報
【特許文献2】特開2005−2972号公報
【特許文献3】特開2003−161136号公報
【特許文献4】特開2005−169308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、無捕集領域が低温を維持することによりフィルタの局部的な過昇温を抑制することができるが、PM堆積量が多い場合には、PMを燃焼させた際に無捕集領域が瞬時に高温となり、フィルタの過昇温を充分に抑制することができない。
また、特許文献2は、熱吸収部を設けることによって熱容量を大きくすることができるが、やはりPMを燃焼させた際に熱吸収部を設けたセルも高温となり、フィルタの過昇温を充分に抑制することができない。
また、特許文献3や特許文献4においても、同様に、フィルタの過昇温を充分に抑制することができない。
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、外周壁と、該外周壁内にハニカム状に配設されたセル壁と、該セル壁内に区画された多数のセルとを有するセラミックハニカム構造体よりなる基材を備えた排ガス浄化フィルタにおいて、
上記セルは、下流端を栓部によって閉塞してなり、排ガスを流入させる流入側通路となる流入側セルと、
上流端を上記栓部によって閉塞してなり、上記流入側セルから上記セル壁を通過した排ガスを排出させる排出側通路となる排出側セルと、
下流端を上記栓部によって閉塞してなり、該栓部より上流側の部分に高熱容量粉体を充填して焼成により焼結させると共に上記基材に対して溶着させて形成してなる熱緩和層を設けた熱緩和セルとを有し、
上記熱緩和層の熱容量は、上記流入側セル及び上記排出側セルの熱容量よりも大きく、かつ上記熱緩和層と上記基材との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタにある(請求項1)。
【0011】
本発明の排ガス浄化フィルタにおいて、上記セルは、流入側セルと排出側セルと熱緩和セルとを有する。そして、該熱緩和セルは、高熱容量粉体を充填してなる熱緩和層を有し、該熱緩和層の熱容量は、上記流入側セル及び上記排出側セルの熱容量よりも大きい。そのため、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を上記熱緩和セルの上記熱緩和層によって吸収することができる。これにより、上記排ガス浄化フィルタが過昇温状態となることを抑制し、上記基材の溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる。
【0012】
また、上記熱緩和層は、上記高熱容量粉体を充填して焼成により焼結させると共に上記基材に対して溶着させて形成してなる。すなわち、上記熱緩和層は、上記基材と一体的に形成されている。そのため、上記排ガス浄化フィルタの使用中においても、上記熱緩和層が上記基材から剥がれたり、脱落したりすることがなく、耐震性を充分に確保することができる。
また、上記熱緩和層と上記基材との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下と小さい。そのため、上記熱緩和層と上記基材との間における熱応力を抑制し、上記排ガス浄化フィルタにおける耐熱衝撃性等の熱的信頼性を充分に確保することができる。
【0013】
また、上記熱緩和セルは、下流端にのみ上記栓部が設けられている。上記熱緩和層は、上記基材と一体的に形成されていることから、例えば、上記熱緩和層を構成している上記高熱容量粉体が上記熱緩和セル内から漏れ出すのを防ぐために、該熱緩和セルの両端に上記栓部を設けなくてもよい。そのため、上記排ガス浄化フィルタを製造する際に、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0014】
このように、本発明によれば、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる排ガス浄化フィルタを提供することができる。
【0015】
第2の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材を焼成する第1焼成工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
下流端に上記栓詰めスラリーを配設した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓詰め用スラリーよりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設して上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記栓部を形成すると共に上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第2焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項7)。
【0016】
本発明の製造方法は、上記のごとく、成形工程と乾燥工程と第1焼成工程と栓詰め工程と充填工程と第2焼成工程とを行う。これにより、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを得ることができる。
【0017】
また、本発明の製造方法では、上記充填工程において、下流端に上記栓詰めスラリーを配設した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓詰め用スラリーよりも上流側に上記高熱容量粉体を充填した後、上流端に上記栓詰めスラリーを配設しない。すなわち、上記熱緩和セルとなる上記セルの両端に上記栓部を設けるのではなく、下流端にのみ上記栓部を設ける。
【0018】
これは、上記充填工程の後の焼成工程(第2焼成工程)において、上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成し、該熱緩和層と上記基材とを一体的に形成するからである。例えば、上記熱緩和層を構成している上記高熱容量粉体が上記熱緩和セル内から漏れ出すのを防ぐために、該熱緩和セルの両端に上記栓部を設けなくてもよいのである。そのため、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0019】
このように、本発明の製造方法によれば、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる排ガス浄化フィルタを得ることができる。そして、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0020】
第3の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設した上記基材を焼成すると同時に、上記栓部を形成する第1焼成工程と、
下流端に上記栓部を形成した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓部よりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第2焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項8)。
【0021】
本発明の製造方法は、上記のごとく、成形工程と乾燥工程と栓詰め工程と第1焼成工程と充填工程と第2焼成工程とを行う。これにより、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを得ることができる。
また、上記熱緩和セルとなる上記セルの両端に上記栓部を設けるのではなく、下流端にのみ上記栓部を設けるため、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0022】
また、本発明の製造方法では、上記栓詰め工程の後に第1回目の焼成(第1焼成工程)を行い、上記基材と該基材に配設された上記栓詰めスラリーとを同時に焼成する。そのため、上記基材と上記栓詰めスラリーとを別々に焼成する場合に比べて焼成工程を1回省略することができ、大幅なコスト削減が可能である。
また、上記基材及び上記栓詰めスラリーの焼成(第1焼成工程)を行った後に、上記基材に充填した上記高熱容量粉体の焼成(第2焼成工程)を行うため、上記高熱容量粉体の焼結中に異種材料(例えば、上記基材及び上記栓部を構成する材料)が混同することなく、上記熱緩和層の品質を確保することができる。
【0023】
第4の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材を焼成する第1焼成工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設した上記基材を焼成し、上記栓部を形成する第2焼成工程と、
下流端に上記栓部を形成した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓部よりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第3焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項9)。
【0024】
本発明の製造方法は、上記のごとく、成形工程と乾燥工程と第1焼成工程と栓詰め工程と第2焼成工程と充填工程と第3焼成工程とを行う。これにより、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを得ることができる。
また、上記熱緩和セルとなる上記セルの両端に上記栓部を設けるのではなく、下流端にのみ上記栓部を設けるため、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0025】
また、本発明の製造方法では、上記乾燥工程の後に第1回目の焼成(第1焼成工程)を行い、上記栓詰め工程の後に第2回目の焼成(第2焼成工程)を行い、上記充填工程の後に第3回目の焼成(第3焼成工程)を行う。
すなわち、上記栓詰めスラリーを配設してから上記基材の第1回目の焼成を行う場合に比べて、焼成途中における上記基材(ハニカム構造体)内の通気性を向上させることができる。そのため、焼成途中の上記基材内に生じる温度差を低減して焼成割れを抑制することができ、焼成歩留まりを向上させることができる。
また、上記基材及び上記栓詰めスラリーの焼成(第1焼成工程、第2焼成工程)を行った後に、上記基材に充填した上記高熱容量粉体の焼成(第3焼成工程)を行うため、上記高熱容量粉体の焼結中に異種材料(例えば、上記基材及び上記栓部を構成する材料)が混同することなく、上記熱緩和層の品質を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
上記第1の発明において、上記熱緩和層と上記基材との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下である。これは、上記熱緩和層のほうが上記基材よりも熱膨張係数が大きい場合も、上記基材のほうが上記熱緩和層よりも熱膨張係数が大きい場合も含む。
【0027】
また、上記熱緩和層の熱容量は、1.30(J/cc・K)以上であることが好ましい(請求項2)。
上記熱緩和層の熱容量が1.30(J/cc・K)未満の場合には、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を上記熱緩和層によって充分に吸収することができないおそれがある。
【0028】
なお、上記熱緩和層の熱容量(J/cc・K)は、充填する上記高熱容量粉体の比熱(J/cc・K)と比重(g/cc)と充填率(単位なし)との積で表すことができる。また、上記熱緩和層の比熱は、レーザーフラッシュ法により測定することができる。
また、上記流入側セル及び上記排出側セルの熱容量も上記熱緩和層と同様に求めることができる。
【0029】
また、上記熱緩和層の熱膨張係数は、2.5×10-6/℃以下であることが好ましい(請求項3)。
上記熱緩和層の熱膨張係数が2.5×10-6/℃を超える場合には、上記熱緩和層と上記基材との間における熱応力を抑制し、上記排ガス浄化フィルタにおける耐熱衝撃性等の熱的信頼性を充分に確保することができないおそれがある。
【0030】
また、上記熱緩和セルの占有率は、上記基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域の面積に対して5〜30%であることが好ましい(請求項4)。
上記熱緩和セルの占有率が5%未満の場合には、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を上記熱緩和層によって充分に吸収することができないおそれがある。一方、30%を超える場合には、排ガスの通過が実質的になされない上記熱緩和セルの増加により、圧力損失の増大という問題が生じるおそれがある。
【0031】
また、上記セル壁は、一方の方向に形成されたセル壁と該セル壁に直交する他方の方向に形成されたセル壁とによって四角形格子状に配設されており、上記熱緩和セルは、上記基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域にのみ配設されており、かつ、上記一方のセル壁に沿って形成された熱緩和セルと上記他方のセル壁に沿って形成された熱緩和セルとによって四角形格子状に配設されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記熱緩和セルの形成による濾過面積(排ガスを上記流入側セルから上記排出側セルへと通過させることができる上記セル壁の面積)の減少を抑えながら、上記排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制する効果を効率的に得ることができる。
【0032】
上記構成の例として、後述の実施例1の図5(a)を参照のごとく、上記セル壁が一方の方向に形成されたセル壁と該セル壁に直交する他方の方向に形成されたセル壁とによって四角形格子状に配設されている場合には、上記一方のセル壁又は上記他方のセル壁に沿って、上記排出側セルと排出側セルとの間に位置する上記セルに上記熱緩和セルを配置することが有効である。
【0033】
また、上記熱緩和セルの配置は、後述する実施例1の図3(b)、図6(a)〜(d)を参照のごとく、様々な配置パターンとすることができる。
また、上記熱緩和セルは、上記基材の径方向断面において、偏りなく均一に満遍無く存在していることが好ましい。
【0034】
また、上記熱緩和セルは、排ガスの通過が実質的になされないことから、圧力損失の増大を抑制するために、濾過面積をなるべく大きく確保しながら上記熱緩和セルを配置することが好ましい。
例えば、上記熱緩和セルは、上記基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域に配設されていることが好ましい。
この場合には、上記熱緩和セルの形成による濾過面積の減少を抑え、すなわち濾過面積を十分に確保しながら、上記排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制する効果を効率的に得ることができる。
【0035】
また、上記熱緩和セルは、少なくとも、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の65%以下の領域に配設されていることが好ましい。
上記熱緩和セルが、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の65%未満の領域にのみ存在している場合には、上記熱緩和セルが存在している領域よりも外側の領域で過昇温が発生し、上記排ガス浄化フィルタの熱損傷を引き起こすおそれがある。
【0036】
また、上記高熱容量粉体は、チタン酸アルミニウム、炭化珪素(シリコンカーバイド)、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネルのうち1種又は2種以上を含有すること好ましい(請求項6)。
この場合には、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を上記高熱容量粉体により構成された上記熱緩和層によって充分に吸収することができる。
【0037】
また、上記基材を構成する材料としては、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化珪素(シリコンカーバイド)、ムライト、アルミナ等を用いることができる。
【0038】
上記第2〜4の発明において、上記充填工程では、上記基材の上流端を上方に向けた状態で、上記熱緩和セルとなる上記セルの上流端の開口部から上記高熱容量粉体を充填することが好ましい(請求項10)。
この場合には、上記高熱容量粉体を上記熱緩和セルとなる上記セル内に容易かつ確実に充填することができる。
【0039】
また、上記充填工程の後に行う焼成工程では、上記基材の上流端を上方に向けた状態で、該基材を焼成することが好ましい(請求項11)。
この場合には、上記高熱容量粉体がしっかりと充填された状態で、該高熱容量粉体を焼結させ、上記基材に対して溶着させることができる。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる排ガス浄化フィルタについて、図を用いて説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1は、図1に示すごとく、外周壁5と、該外周壁5内にハニカム状に配設されたセル壁3と、該セル壁3内に区画された多数のセル4とを有するハニカム構造体よりなる基材2を備えている。
【0041】
基材2は、コージェライトを主成分とするセラミックスより構成されており、円筒形状を呈している。基材2のサイズは、直径160mm、長さ100mmである。
また、セル壁3には、通過する排ガスG中のPMを捕集するための細孔が多数形成されている。セル壁3の厚みは0.3mmである。
【0042】
また、図2に示すごとく、セル4は、下流端202を栓部6によって閉塞してなり、排ガスGを流入させる流入側通路となる流入側セル41と、上流端201を栓部6によって閉塞してなり、流入側セル41からセル壁3を通過した排ガスGを排出させる排出側通路となる排出側セル42と、下流端202を栓部6によって閉塞してなり、該栓部6より上流側の部分に熱緩和層431を設けた熱緩和セル43とを有している。
【0043】
熱緩和層431は、高熱容量粉体を充填して焼成により焼結させると共に基材2に対して溶着させて形成してなる。本例では、高熱容量粉体としてチタン酸アルミニウムを用いた。
栓部6は、基材2と同様に、コージェライトを主成分とするセラミックスより構成されている。
【0044】
また、図3(a)に示すごとく、基材2を上流側から軸方向に見た場合、セル4(流入側セル41、排出側セル42及び熱緩和セル43)は、四角形格子状のセル壁3に囲まれて構成されている。
また、セル4には、縦横方向一つおきに、いわゆる市松模様状に栓部6が配設されている。また、栓部6が配設されていないセル4には、ある一定の規則性を持って熱緩和セル43が配置されている。
【0045】
本例では、図5(a)に示すごとく、セル壁3は、一方の方向に形成されたセル壁31とセル壁31に直交する他方の方向に形成されたセル壁32とによって四角形格子状に配設されている。
そして、熱緩和セル43は、一方のセル壁31又は他方のセル壁32に沿って、排出側セル42と排出側セル42との間に位置するセル4に配置されている。
【0046】
また、図3(b)に示すごとく、熱緩和セル43は、縦横方向に規則正しく、碁盤の目のように四角形格子状に配設されている。なお、図3(b)は、熱緩和セル43の配置パターンを簡略化して示したものである。
また、同図に示すごとく、熱緩和セル43は、基材2の径方向断面において、中心Oからの距離(n)が該中心Oから外周面51までの距離(m)の80%以下の領域(図3(b)における点線A)に存在している。なお、n=0.8×mである。
また、熱緩和セル43の占有率は、基材2の径方向断面において、中心Oからの距離が該中心Oから外周面51までの距離の80%以下の領域(図3(b)における点線Aよりも内側の領域)の面積に対して14%である。
【0047】
また、本例の排ガス浄化フィルタ1において、熱緩和層431の熱容量は、流入側セル41及び排出側セル42の熱容量よりも大きい。
なお、本例においては、熱緩和層431の熱容量は1.4(J/cc・K)である。また、セル壁4を含めた流入側セル41の熱容量は0.52(J/cc・K)であり、セル壁4を含めた排出側セル42の熱容量は0.52(J/cc・K)である。
【0048】
また、熱緩和層431と基材2との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下である。
なお、本例においては、熱緩和層431の熱膨張係数は2.5×10-6/℃であり、基材2の熱膨張係数は0.5×10-6/℃である。両者の熱膨張係数の差は、2×10-6/℃である。
【0049】
次に、本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法について説明する。
本例では、図7(a)に示すごとく、セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる基材を作製する成形工程と、基材を乾燥させる乾燥工程と、基材を焼成する第1焼成工程と、基材の上流端及び下流端におけるセルの開口部のうち、栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、熱緩和セルとなるセルにおいて、セルに配設した栓詰め用スラリーよりも上流側に高熱容量粉体を充填する充填工程と、栓詰め用スラリーを配設して高熱容量粉体を充填した基材を焼成し、栓部を形成すると共に高熱容量粉体を焼結させることにより基材に対して溶着させて熱緩和層を形成する第2焼成工程とを順に行い、排ガス浄化フィルタを製造した。
以下、これを詳説する。
【0050】
まず、カオリン、溶融シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、タルク、造孔材(カーボン)を含有し、化学組成が重量比にて最終的にSiO2:45〜55%、Al2O3:33〜42%、MgO:12〜18%よりなるコージェライトを主成分とする組成となるように調整した原料粉末を水に混合し、有機バインダを加えて混練することにより、粘土質のセラミックス材料を得た。
【0051】
次いで、粘土質のセラミックス材料を押出機により押出成形し、所望の長さで切断してハニカム構造体よりなる基材を作製した(成形工程)。
本例においては、粘土質のセラミックス材料を直径168mm、長さ101mm、セル壁の厚み0.31mm、セル数310メッシュのハニカム構造体に成形した。なお、このサイズは一例を示したものであり、用途に応じてその他のサイズを採用することもできる。
【0052】
次いで、基材を乾燥させた(乾燥工程)後、焼成炉にて1430℃で20時間保持し、第1回目の焼成を行った(第1焼成工程)。
【0053】
次いで、図4(a)を参照のごとく、基材2の上流端201及び下流端202におけるセル4の開口部において、栓部を形成する部分に栓詰め用スラリー60を配設した(栓詰め工程)。
【0054】
次いで、図4(a)に示すごとく、基材2の上流端201を覆うようにマスキングテープ71を貼り、熱緩和セルとなるセル4に対応する部分のマスキングテープ71をハンダ小手にて穴を開けた。
次いで、図4(b)に示すごとく、基材2の上流端201にシャンプーハット72を装着し、基材2を振動器73上に載置した。このとき、基材2の上流端201を上方に向けた状態で載置した。そして、高熱容量粉体430であるチタン酸アルミニウムよりなる粉体をマスキングテープ71上に充満させた。
【0055】
その後、図4(c)に示すごとく、振動器73を振動させ、高熱容量粉体430を熱緩和セルとなるセル4内に充填させた(充填工程)。これにより、熱緩和セルとなるセル4内の栓詰め用スラリー60よりも上流側に高熱容量粉体430を充填した。
充填後、基材2からシャンプーハット71を外し、充填されずに残った高熱容量粉体430を除去した。
【0056】
次いで、栓詰め用スラリーを配設し、高熱容量粉体を充填した基材を焼成炉にて1350℃で4時間保持し、第2回目の焼成を行った(第2焼成工程)。このとき、基材の上流端を上方に向けた状態で焼成した。
これにより、栓部を形成した。また、高熱容量粉体を焼結させ、基材に対して溶着させて熱緩和層を形成した。
以上により、排ガス浄化フィルタを作製した。
【0057】
次に、本例の排ガス浄化フィルタ1における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1において、セル4は、流入側セル41と排出側セル42と熱緩和セル43とを有する。そして、熱緩和セル43は、高熱容量粉体430を充填してなる熱緩和層431を有し、熱緩和層431の熱容量は、流入側セル41及び排出側セル42の熱容量よりも大きい。そのため、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を熱緩和セル43の熱緩和層431によって吸収することができる。これにより、排ガス浄化フィルタ1が過昇温状態となることを抑制し、基材2の溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる。
【0058】
また、熱緩和層431は、高熱容量粉体430を充填して焼成により焼結させると共に基材2に対して溶着させて形成してなる。すなわち、熱緩和層431は、基材2と一体的に形成されている。そのため、排ガス浄化フィルタ1の使用中においても、熱緩和層431が剥がれたり、脱落したりすることがなく、耐震性を充分に確保することができる。
また、熱緩和層431と基材2との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下と小さい。そのため、熱緩和層431と基材2との間における熱応力を抑制し、排ガス浄化フィルタ1における耐熱衝撃性等の熱的信頼性を充分に確保することができる。
【0059】
また、本例では、熱緩和層431の熱容量は、1.30(J/cc・K)以上である。そのため、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を熱緩和層431によってより一層充分に吸収することができる。
また、熱緩和層431の熱膨張係数は、2.5×10-6/℃以下である。そのため、排ガス浄化フィルタ1における耐熱衝撃性等の熱的信頼性を充分に確保することができる。
【0060】
また、熱緩和セル43の占有率は、基材2の径方向断面において、中心Oからの距離が該中心Oから外周面51までの距離の80%以下の領域の面積に対して5〜30%である。そのため、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を熱緩和層431によって吸収する効果と、排ガスGの通過が実質的になされない熱緩和セル43による圧力損失の増大を抑制する効果とを両立させることができる。
【0061】
また、本例の製造方法では、充填工程において、下流端202に栓詰めスラリー60を配設したセル4のうち、熱緩和セル43となるセル4における栓詰め用スラリー60よりも上流側に高熱容量粉体430を充填した後、上流端201に栓詰めスラリー60を配設しない。すなわち、熱緩和セル43となるセル4の両端に栓部6を設けるのではなく、下流端202のみに栓部6を設ける。
【0062】
これは、充填工程の後の焼成工程(第2焼成工程)において、高熱容量粉体430を焼結させることにより基材2に対して溶着させて熱緩和層431を形成し、熱緩和層431と基材2とを一体的に形成するからである。例えば、熱緩和層43を構成している高熱容量粉体430が漏れ出すのを防ぐために、熱緩和セル43の両端に栓部6を設けなくてもよいのである。そのため、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0063】
このように、本例によれば、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供することができる。
【0064】
なお、本例では、図5(a)に示すごとく、熱緩和セル43は、セル壁3のうちの一方のセル壁31又は他方のセル壁32に沿って配置されているが、図5(b)に示すごとく、セル壁3のうちの一方のセル壁31又は他方のセル壁32に対して45°の方向に配置することもできる。
また、熱緩和セル43の配置パターンは、図3(a)に示すようなパターンとしたが、図6(a)〜(d)に示すようなパターンとすることもできる。また、これ以外のパターンとすることもできる。
【0065】
例えば、図6(a)に示した排ガス浄化フィルタ1では、熱緩和セル43は、基材2の径方向断面において、中心Oからの距離が該中心Oから外周面51までの距離の80%以下の領域にのみ配設されており、その領域にできるだけ均一に満遍無く存在している。また、熱緩和セル43は、セル壁3のうちの一方のセル壁31又は他方のセル壁32に沿って(図5(a)参照)、四角形格子状に配設されている。
【0066】
(実施例2)
本例は、排ガス浄化フィルタの製造方法を変更した例である。
本例では、図7(b)に示すごとく、成形工程、乾燥工程、栓詰め工程、第1焼成工程、充填工程及び第2焼成工程を順に行い、排ガス浄化フィルタを製造した。
以下に、これを詳説する。
【0067】
本例では、ハニカム構造体よりなる基材を成形し(成形工程)、乾燥させた(乾燥工程)後、基材の所望の場所に栓詰め用スラリーを配設した(栓詰め工程)。そして、栓詰め用スラリーを配設した基材を焼成した(第1焼成工程)。これにより、上記基材の焼成と同時に栓部を形成した。
【0068】
次いで、高熱容量粉体を基材の所望のセル内に充填した(充填工程)。そして、高熱容量粉体を充填した基材を焼成した(第2焼成工程)。これにより、高熱容量粉体を焼結させ、基材に対して溶着させて熱緩和層を形成した。
以上により、排ガス浄化フィルタを作製した。
なお、各工程の内容は、実施例1と同様である。
【0069】
また、本例の製造方法では、栓詰め工程の後に第1回目の焼成(第1焼成工程)を行い、基材と該基材に配設された栓詰めスラリーとを同時に焼成する。そのため、基材と栓詰めスラリーとを別々に焼成する場合に比べて焼成工程を1回省略することができ、大幅なコスト削減が可能である。
また、基材及び栓詰めスラリーの焼成(第1焼成工程)を行った後に、基材に充填した高熱容量粉体の焼成(第2焼成工程)を行うため、高熱容量粉体の焼結中に異種材料(例えば、基材及び栓部を構成する材料)が混同することなく、熱緩和層の品質を確保することができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0070】
(実施例3)
本例は、排ガス浄化フィルタの製造方法を変更した例である。
本例では、図7(c)に示すごとく、排ガス浄化フィルタを製造するに当たっては、成形工程、乾燥工程、第1焼成工程、栓詰め工程、第2焼成工程、充填工程及び第3焼成工程を順に行う。
【0071】
本例では、ハニカム構造体よりなる基材を成形し(成形工程)、乾燥させた(乾燥工程)後、焼成した(第1焼成工程)。
次いで、基材の所望の場所に栓詰め用スラリーを配設した(栓詰め工程)。そして、栓詰め用スラリーを配設した基材を焼成した(第2焼成工程)。これにより、栓部を形成した。
【0072】
次いで、高熱容量粉体を基材の所望のセル内に充填した(充填工程)。そして、高熱容量粉体を充填した基材を焼成した(第3焼成工程)。これにより、高熱容量粉体を焼結させ、基材に対して溶着させて熱緩和層を形成した。
以上により、排ガス浄化フィルタを作製した。
なお、各工程の内容は、実施例1と同様である。
【0073】
また、本例の製造方法では、乾燥工程の後に第1回目の焼成(第1焼成工程)を行い、栓詰め工程の後に第2回目の焼成(第2焼成工程)を行い、充填工程の後に第3回目の焼成(第3焼成工程)を行う。
すなわち、栓詰めスラリーを配設してから基材の第1回目の焼成を行う場合に比べて、焼成途中における基材(ハニカム構造体)内の通気性を向上させることができる。そのため、焼成途中の基材内に生じる温度差を低減して焼成割れを抑制することができ、焼成歩留まりを向上させることができる。
また、基材及び栓詰めスラリーの焼成(第1焼成工程、第2焼成工程)を行った後に、基材に充填した高熱容量粉体の焼成(第3焼成工程)を行うため、高熱容量粉体の焼結中に異種材料(例えば、基材及び栓部を構成する材料)が混同することなく、熱緩和層の品質を確保することができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0074】
(実施例4)
本例では、排ガス浄化フィルタについて、熱緩和層と基材との熱膨張係数の差を変化させ、過昇温試験時における発生応力をシミュレーションによって算出した。
【0075】
本例では、直径160mm、長さ100mm、セル壁の厚み0.3mm、セル密度300cpsiのコージェライト製のハニカム構造体(基材)に対して、高熱容量粉体であるチタン酸アルミニウムによって形成した熱緩和層を有する熱緩和セルを図6(a)に示すパターンに配置した排ガス浄化フィルタを用いた。また、基材の熱膨張係数は、1.65×10-6/℃とした。また、熱緩和層の熱膨張係数は、基材の熱膨張係数よりも大きい。
【0076】
また、過昇温試験は、排気量2リットルのコモンレール式ディーゼルエンジンの排気管に容量1.3リットルの酸化触媒と排ガス浄化フィルタとを装着し、排ガス浄化フィルタにPMを12g堆積させる。そして、エンジン制御(ポスト噴射)により基材内温度を650℃まで昇温した後、エンジン回転数をアイドリング状態まで低下させ、PMを爆発的に燃焼させる条件とした。
【0077】
そして、発生応力は、過昇温試験時において、基材内で最も高い温度(最高到達温度)が965℃となる場合における基材及び熱緩和層のそれぞれの変位を求め、そこから排ガス浄化フィルタの歪みを算出し、それらの値を3次元の有限要素法解析モデルを用いて非定常解析を行うことによって算出した。
【0078】
次に、発生応力の結果を図8に示す。同図において、縦軸は発生応力(MPa)、横軸は熱膨張係数差(×10-6/℃)である。
同図から、発生応力が実使用上許容される応力値P1である3.95MPa以下となるのは、熱膨張係数差が2×10-6/℃以下の場合であることがわかる。よって、排ガス浄化フィルタにおいて、熱緩和層と基材との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下であることが好ましいことがわかる。
【0079】
(実施例5)
本例では、排ガス浄化フィルタについて、熱緩和セルの占有率を変化させ、過昇温試験時における基材内の最高到達温度を測定した。
ここでの熱緩和セルの占有率とは、基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域の面積に対して熱緩和セルが占める割合のことである。
【0080】
本例では、直径160mm、長さ100mm、セル壁の厚み0.3mm、セル密度300cpsiのコージェライト製のハニカム構造体(基材)に対して、高熱容量粉体(例えば、チタン酸アルミニウム、コージェライト等)によって形成した熱緩和層を有する熱緩和セルを図3(b)、図6(a)〜(d)等に示すパターンに配置した排ガス浄化フィルタを用いた。
【0081】
また、過昇温試験は、排気量2リットルのコモンレール式ディーゼルエンジンの排気管に容量1.3リットルの酸化触媒と排ガス浄化フィルタとを装着し、排ガス浄化フィルタにPMを12g堆積させる。そして、エンジン制御(ポスト噴射)により基材内温度を650℃まで昇温した後、エンジン回転数をアイドリング状態まで低下させ、PMを爆発的に燃焼させることによって行った。
そして、基材内の最高到達温度は、熱電対を基材内に30箇所均一に配置しておき、過昇温試験時に計測した中で最も高い温度とした。
【0082】
次に、基材内の最高到達温度の結果を図9に示す。同図において、縦軸は最高到達温度(℃)、横軸は熱緩和セル占有率(%)である。
同図から、基材内の最高到達温度が実使用上許容される温度値T1である960℃以下となるのは、熱緩和セル占有率が5%以上の場合であることがわかる。したがって、熱緩和セルの占有率は、5%以上であることが好ましいことがわかる。
なお、熱緩和セルの占有率が30%を超える場合には、排ガスの通過が実質的になされない熱緩和セルの増加により、圧力損失の増大という問題が生じるおそれがある。そのため、熱緩和セルの占有率は、30%以下であることが好ましい。
【0083】
(実施例6)
本例では、様々な条件の排ガス浄化フィルタ(試料E1〜E6)を準備し、基材内の最高到達温度、熱容量及び圧力損失を求め、それぞれの関係を調べたものである。
【0084】
本例において準備した排ガス浄化フィルタ(試料E1〜E6)は、いずれも、直径160mm、長さ100mm、セル壁の厚み0.3mm、セル密度300cpsiのコージェライト製のハニカム構造体(基材)に対して、任意の高熱容量粉体によって形成した熱緩和層を有する熱緩和セルを任意のパターンで配置したものである。
【0085】
また、表1に、各試料E1〜E6における高熱容量粉体、熱緩和セルの配置パターン、熱緩和層の熱容量、熱緩和セルの占有率を示した。
なお、熱緩和セルの配置パターンは、図3(b)、図6(a)〜(d)のいずれかに示
すパターンである。また、熱緩和セルの占有率は、基材の径方向断面において、中心から
の距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域の面積に対して熱緩和セルが占める割合のことである。
【0086】
【表1】
【0087】
また、基材内の最高到達温度は、実施例5と同様の方法で測定した。
また、熱容量は、排ガス浄化フィルタ全体(基材+熱緩和層)の熱容量であり、基材及び熱緩和層の比熱、比重等から求めた。
また、圧力損失は、排ガス浄化フィルタに体積流量5000リットル/分で排ガスを流通させ、流入側圧力と排出側圧力との圧力差を圧力損失として求めた。
【0088】
次に、基材内の最高到達温度、熱容量及び圧力損失の結果を図10及び図11に示す。図10は、基材内の最高到達温度と圧力損失との関係を示したものである。同図において、縦軸は最高到達温度(℃)、横軸は圧力損失(kPa)である。また、図11は、基材内の最高到達温度と熱容量との関係を示したものである。同図において、縦軸は最高到達温度(℃)、横軸は熱容量(J/K)である。
【0089】
図10及び図11から、熱緩和層の熱容量が1.30(J/cc・K)以上であり、かつ、熱緩和セルの占有率が5〜30%の範囲内である試料E5は、上記条件を満たしていない他の試料E1〜E4、E6に比べて、過昇温抑制と圧力損失増加抑制との両立の観点から非常に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施例1における、排ガス浄化フィルタを示す斜視図。
【図2】実施例1における、排ガス浄化フィルタの軸方向断面を示す説明図。
【図3】実施例1における、(a)セルの配置を示す説明図、(b)熱緩和セルの配置パターンを示す説明図。
【図4】実施例1における、(a)マスキングテープを貼る工程を示す説明図、(b)高熱容量粉体を充填する様子を示す説明図、(c)高熱容量粉体を充填した状態を示す説明図。
【図5】実施例1における、(a)〜(d)熱緩和セルの配置パターンを示す説明図。
【図6】実施例1における、(a)、(b)熱緩和セルと流入側セル及び排出側セルとの配置関係を示す説明図。
【図7】実施例1〜3における、(a)〜(c)製造工程を示すフローチャート。
【図8】実施例4における、発生応力と熱膨張係数差との関係を示すグラフ。
【図9】実施例5における、最高到達温度と熱緩和セル占有率との関係を示すグラフ。
【図10】実施例6における、最高到達温度と圧力損失との関係を示すグラフ。
【図11】実施例6における、最高到達温度と熱容量との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0091】
1 排ガス浄化フィルタ
2 基材
201 上流端
202 下流端
3 セル壁
4 セル
41 流入側セル
42 排出側セル
43 熱緩和セル
430 高熱容量粉体
431 熱緩和層
5 外周壁
6 栓部
G 排ガス
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関より排出される排ガス中のパティキュレート(Particulate Matter:以下、単にPMという)を捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタが知られている。
この排ガス浄化フィルタは、多孔質のセル壁をハニカム状に配して多数のセルを設けた基材としてのハニカム構造体を有するものである。そして、上記セルのうち、排ガスを流入させる流入側セルの下流端と、多孔質のセル壁を通過した排ガスを排出させる排出側セルの上流端とは、栓部によって閉塞されるのが一般的である。
【0003】
上記排ガス浄化フィルタを用いて排ガスを浄化する際には、流入側セルに流入した排ガスが多孔質のセル壁を通過して、排出側セルに移動する。このとき、排ガス中のPMがセル壁に存在する多数の細孔に捕集され、排ガスが浄化される。その後、浄化された排ガスは、排出側セルから排出される。
また、捕集されたPMは、定期的に燃焼除去される。そして、これにより、多孔質のセル壁の捕集機能は再生する。なお、燃焼除去方法としては、すでに公知の様々な方法が提案されている。例えば、触媒をセル壁の表面に担持させ、触媒反応により発熱させることで排ガス浄化フィルタを昇温させ、PMを燃焼する方法等がある。
【0004】
ところで、上記排ガス浄化フィルタに捕集されたPMを燃焼除去する際に、発生する燃焼熱によって過昇温状態となり、触媒の燃焼や劣化、基材の溶損や割れ等の問題が発生するおそれがあった。特に、捕集されたPMが多いほど燃焼熱は大きくなるため、上記の問題が発生するおそれが高くなる。
【0005】
そこで、特許文献1では、フィルタの中央部領域と外周領域との間において、セル壁によってPMが捕集されない無捕集領域を設け、フィルタの熱損傷を抑制する排気ガス微粒子浄化用フィルタが提案されている。
また、特許文献2では、フィルタの下流端に他の部位よりも熱容量が大きい熱吸収部を設け、触媒の劣化やフィルタの損傷を防止する内燃機関の排ガス浄化装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献3では、排ガスの流通が実質的に起こらない又は流通を大きく阻害する層である流路セパレーターが形成されているハニカム構造体が提案されている。
また、特許文献4では、第1の封止部材に加えて、少なくともハニカム構造体の中心軸から外周面までの2/3の中心部における中心軸に垂直な断面の面積に対して0.2〜2.5%に相当する開口部を封止するように配設された第2の封止部材をさらに備えてなるハニカムフィルタ及びその製造方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−44442号公報
【特許文献2】特開2005−2972号公報
【特許文献3】特開2003−161136号公報
【特許文献4】特開2005−169308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、無捕集領域が低温を維持することによりフィルタの局部的な過昇温を抑制することができるが、PM堆積量が多い場合には、PMを燃焼させた際に無捕集領域が瞬時に高温となり、フィルタの過昇温を充分に抑制することができない。
また、特許文献2は、熱吸収部を設けることによって熱容量を大きくすることができるが、やはりPMを燃焼させた際に熱吸収部を設けたセルも高温となり、フィルタの過昇温を充分に抑制することができない。
また、特許文献3や特許文献4においても、同様に、フィルタの過昇温を充分に抑制することができない。
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、外周壁と、該外周壁内にハニカム状に配設されたセル壁と、該セル壁内に区画された多数のセルとを有するセラミックハニカム構造体よりなる基材を備えた排ガス浄化フィルタにおいて、
上記セルは、下流端を栓部によって閉塞してなり、排ガスを流入させる流入側通路となる流入側セルと、
上流端を上記栓部によって閉塞してなり、上記流入側セルから上記セル壁を通過した排ガスを排出させる排出側通路となる排出側セルと、
下流端を上記栓部によって閉塞してなり、該栓部より上流側の部分に高熱容量粉体を充填して焼成により焼結させると共に上記基材に対して溶着させて形成してなる熱緩和層を設けた熱緩和セルとを有し、
上記熱緩和層の熱容量は、上記流入側セル及び上記排出側セルの熱容量よりも大きく、かつ上記熱緩和層と上記基材との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタにある(請求項1)。
【0011】
本発明の排ガス浄化フィルタにおいて、上記セルは、流入側セルと排出側セルと熱緩和セルとを有する。そして、該熱緩和セルは、高熱容量粉体を充填してなる熱緩和層を有し、該熱緩和層の熱容量は、上記流入側セル及び上記排出側セルの熱容量よりも大きい。そのため、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を上記熱緩和セルの上記熱緩和層によって吸収することができる。これにより、上記排ガス浄化フィルタが過昇温状態となることを抑制し、上記基材の溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる。
【0012】
また、上記熱緩和層は、上記高熱容量粉体を充填して焼成により焼結させると共に上記基材に対して溶着させて形成してなる。すなわち、上記熱緩和層は、上記基材と一体的に形成されている。そのため、上記排ガス浄化フィルタの使用中においても、上記熱緩和層が上記基材から剥がれたり、脱落したりすることがなく、耐震性を充分に確保することができる。
また、上記熱緩和層と上記基材との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下と小さい。そのため、上記熱緩和層と上記基材との間における熱応力を抑制し、上記排ガス浄化フィルタにおける耐熱衝撃性等の熱的信頼性を充分に確保することができる。
【0013】
また、上記熱緩和セルは、下流端にのみ上記栓部が設けられている。上記熱緩和層は、上記基材と一体的に形成されていることから、例えば、上記熱緩和層を構成している上記高熱容量粉体が上記熱緩和セル内から漏れ出すのを防ぐために、該熱緩和セルの両端に上記栓部を設けなくてもよい。そのため、上記排ガス浄化フィルタを製造する際に、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0014】
このように、本発明によれば、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる排ガス浄化フィルタを提供することができる。
【0015】
第2の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材を焼成する第1焼成工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
下流端に上記栓詰めスラリーを配設した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓詰め用スラリーよりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設して上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記栓部を形成すると共に上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第2焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項7)。
【0016】
本発明の製造方法は、上記のごとく、成形工程と乾燥工程と第1焼成工程と栓詰め工程と充填工程と第2焼成工程とを行う。これにより、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを得ることができる。
【0017】
また、本発明の製造方法では、上記充填工程において、下流端に上記栓詰めスラリーを配設した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓詰め用スラリーよりも上流側に上記高熱容量粉体を充填した後、上流端に上記栓詰めスラリーを配設しない。すなわち、上記熱緩和セルとなる上記セルの両端に上記栓部を設けるのではなく、下流端にのみ上記栓部を設ける。
【0018】
これは、上記充填工程の後の焼成工程(第2焼成工程)において、上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成し、該熱緩和層と上記基材とを一体的に形成するからである。例えば、上記熱緩和層を構成している上記高熱容量粉体が上記熱緩和セル内から漏れ出すのを防ぐために、該熱緩和セルの両端に上記栓部を設けなくてもよいのである。そのため、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0019】
このように、本発明の製造方法によれば、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる排ガス浄化フィルタを得ることができる。そして、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0020】
第3の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設した上記基材を焼成すると同時に、上記栓部を形成する第1焼成工程と、
下流端に上記栓部を形成した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓部よりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第2焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項8)。
【0021】
本発明の製造方法は、上記のごとく、成形工程と乾燥工程と栓詰め工程と第1焼成工程と充填工程と第2焼成工程とを行う。これにより、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを得ることができる。
また、上記熱緩和セルとなる上記セルの両端に上記栓部を設けるのではなく、下流端にのみ上記栓部を設けるため、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0022】
また、本発明の製造方法では、上記栓詰め工程の後に第1回目の焼成(第1焼成工程)を行い、上記基材と該基材に配設された上記栓詰めスラリーとを同時に焼成する。そのため、上記基材と上記栓詰めスラリーとを別々に焼成する場合に比べて焼成工程を1回省略することができ、大幅なコスト削減が可能である。
また、上記基材及び上記栓詰めスラリーの焼成(第1焼成工程)を行った後に、上記基材に充填した上記高熱容量粉体の焼成(第2焼成工程)を行うため、上記高熱容量粉体の焼結中に異種材料(例えば、上記基材及び上記栓部を構成する材料)が混同することなく、上記熱緩和層の品質を確保することができる。
【0023】
第4の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材を焼成する第1焼成工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設した上記基材を焼成し、上記栓部を形成する第2焼成工程と、
下流端に上記栓部を形成した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓部よりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第3焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項9)。
【0024】
本発明の製造方法は、上記のごとく、成形工程と乾燥工程と第1焼成工程と栓詰め工程と第2焼成工程と充填工程と第3焼成工程とを行う。これにより、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを得ることができる。
また、上記熱緩和セルとなる上記セルの両端に上記栓部を設けるのではなく、下流端にのみ上記栓部を設けるため、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0025】
また、本発明の製造方法では、上記乾燥工程の後に第1回目の焼成(第1焼成工程)を行い、上記栓詰め工程の後に第2回目の焼成(第2焼成工程)を行い、上記充填工程の後に第3回目の焼成(第3焼成工程)を行う。
すなわち、上記栓詰めスラリーを配設してから上記基材の第1回目の焼成を行う場合に比べて、焼成途中における上記基材(ハニカム構造体)内の通気性を向上させることができる。そのため、焼成途中の上記基材内に生じる温度差を低減して焼成割れを抑制することができ、焼成歩留まりを向上させることができる。
また、上記基材及び上記栓詰めスラリーの焼成(第1焼成工程、第2焼成工程)を行った後に、上記基材に充填した上記高熱容量粉体の焼成(第3焼成工程)を行うため、上記高熱容量粉体の焼結中に異種材料(例えば、上記基材及び上記栓部を構成する材料)が混同することなく、上記熱緩和層の品質を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
上記第1の発明において、上記熱緩和層と上記基材との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下である。これは、上記熱緩和層のほうが上記基材よりも熱膨張係数が大きい場合も、上記基材のほうが上記熱緩和層よりも熱膨張係数が大きい場合も含む。
【0027】
また、上記熱緩和層の熱容量は、1.30(J/cc・K)以上であることが好ましい(請求項2)。
上記熱緩和層の熱容量が1.30(J/cc・K)未満の場合には、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を上記熱緩和層によって充分に吸収することができないおそれがある。
【0028】
なお、上記熱緩和層の熱容量(J/cc・K)は、充填する上記高熱容量粉体の比熱(J/cc・K)と比重(g/cc)と充填率(単位なし)との積で表すことができる。また、上記熱緩和層の比熱は、レーザーフラッシュ法により測定することができる。
また、上記流入側セル及び上記排出側セルの熱容量も上記熱緩和層と同様に求めることができる。
【0029】
また、上記熱緩和層の熱膨張係数は、2.5×10-6/℃以下であることが好ましい(請求項3)。
上記熱緩和層の熱膨張係数が2.5×10-6/℃を超える場合には、上記熱緩和層と上記基材との間における熱応力を抑制し、上記排ガス浄化フィルタにおける耐熱衝撃性等の熱的信頼性を充分に確保することができないおそれがある。
【0030】
また、上記熱緩和セルの占有率は、上記基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域の面積に対して5〜30%であることが好ましい(請求項4)。
上記熱緩和セルの占有率が5%未満の場合には、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を上記熱緩和層によって充分に吸収することができないおそれがある。一方、30%を超える場合には、排ガスの通過が実質的になされない上記熱緩和セルの増加により、圧力損失の増大という問題が生じるおそれがある。
【0031】
また、上記セル壁は、一方の方向に形成されたセル壁と該セル壁に直交する他方の方向に形成されたセル壁とによって四角形格子状に配設されており、上記熱緩和セルは、上記基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域にのみ配設されており、かつ、上記一方のセル壁に沿って形成された熱緩和セルと上記他方のセル壁に沿って形成された熱緩和セルとによって四角形格子状に配設されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記熱緩和セルの形成による濾過面積(排ガスを上記流入側セルから上記排出側セルへと通過させることができる上記セル壁の面積)の減少を抑えながら、上記排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制する効果を効率的に得ることができる。
【0032】
上記構成の例として、後述の実施例1の図5(a)を参照のごとく、上記セル壁が一方の方向に形成されたセル壁と該セル壁に直交する他方の方向に形成されたセル壁とによって四角形格子状に配設されている場合には、上記一方のセル壁又は上記他方のセル壁に沿って、上記排出側セルと排出側セルとの間に位置する上記セルに上記熱緩和セルを配置することが有効である。
【0033】
また、上記熱緩和セルの配置は、後述する実施例1の図3(b)、図6(a)〜(d)を参照のごとく、様々な配置パターンとすることができる。
また、上記熱緩和セルは、上記基材の径方向断面において、偏りなく均一に満遍無く存在していることが好ましい。
【0034】
また、上記熱緩和セルは、排ガスの通過が実質的になされないことから、圧力損失の増大を抑制するために、濾過面積をなるべく大きく確保しながら上記熱緩和セルを配置することが好ましい。
例えば、上記熱緩和セルは、上記基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域に配設されていることが好ましい。
この場合には、上記熱緩和セルの形成による濾過面積の減少を抑え、すなわち濾過面積を十分に確保しながら、上記排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制する効果を効率的に得ることができる。
【0035】
また、上記熱緩和セルは、少なくとも、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の65%以下の領域に配設されていることが好ましい。
上記熱緩和セルが、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の65%未満の領域にのみ存在している場合には、上記熱緩和セルが存在している領域よりも外側の領域で過昇温が発生し、上記排ガス浄化フィルタの熱損傷を引き起こすおそれがある。
【0036】
また、上記高熱容量粉体は、チタン酸アルミニウム、炭化珪素(シリコンカーバイド)、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネルのうち1種又は2種以上を含有すること好ましい(請求項6)。
この場合には、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を上記高熱容量粉体により構成された上記熱緩和層によって充分に吸収することができる。
【0037】
また、上記基材を構成する材料としては、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化珪素(シリコンカーバイド)、ムライト、アルミナ等を用いることができる。
【0038】
上記第2〜4の発明において、上記充填工程では、上記基材の上流端を上方に向けた状態で、上記熱緩和セルとなる上記セルの上流端の開口部から上記高熱容量粉体を充填することが好ましい(請求項10)。
この場合には、上記高熱容量粉体を上記熱緩和セルとなる上記セル内に容易かつ確実に充填することができる。
【0039】
また、上記充填工程の後に行う焼成工程では、上記基材の上流端を上方に向けた状態で、該基材を焼成することが好ましい(請求項11)。
この場合には、上記高熱容量粉体がしっかりと充填された状態で、該高熱容量粉体を焼結させ、上記基材に対して溶着させることができる。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる排ガス浄化フィルタについて、図を用いて説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1は、図1に示すごとく、外周壁5と、該外周壁5内にハニカム状に配設されたセル壁3と、該セル壁3内に区画された多数のセル4とを有するハニカム構造体よりなる基材2を備えている。
【0041】
基材2は、コージェライトを主成分とするセラミックスより構成されており、円筒形状を呈している。基材2のサイズは、直径160mm、長さ100mmである。
また、セル壁3には、通過する排ガスG中のPMを捕集するための細孔が多数形成されている。セル壁3の厚みは0.3mmである。
【0042】
また、図2に示すごとく、セル4は、下流端202を栓部6によって閉塞してなり、排ガスGを流入させる流入側通路となる流入側セル41と、上流端201を栓部6によって閉塞してなり、流入側セル41からセル壁3を通過した排ガスGを排出させる排出側通路となる排出側セル42と、下流端202を栓部6によって閉塞してなり、該栓部6より上流側の部分に熱緩和層431を設けた熱緩和セル43とを有している。
【0043】
熱緩和層431は、高熱容量粉体を充填して焼成により焼結させると共に基材2に対して溶着させて形成してなる。本例では、高熱容量粉体としてチタン酸アルミニウムを用いた。
栓部6は、基材2と同様に、コージェライトを主成分とするセラミックスより構成されている。
【0044】
また、図3(a)に示すごとく、基材2を上流側から軸方向に見た場合、セル4(流入側セル41、排出側セル42及び熱緩和セル43)は、四角形格子状のセル壁3に囲まれて構成されている。
また、セル4には、縦横方向一つおきに、いわゆる市松模様状に栓部6が配設されている。また、栓部6が配設されていないセル4には、ある一定の規則性を持って熱緩和セル43が配置されている。
【0045】
本例では、図5(a)に示すごとく、セル壁3は、一方の方向に形成されたセル壁31とセル壁31に直交する他方の方向に形成されたセル壁32とによって四角形格子状に配設されている。
そして、熱緩和セル43は、一方のセル壁31又は他方のセル壁32に沿って、排出側セル42と排出側セル42との間に位置するセル4に配置されている。
【0046】
また、図3(b)に示すごとく、熱緩和セル43は、縦横方向に規則正しく、碁盤の目のように四角形格子状に配設されている。なお、図3(b)は、熱緩和セル43の配置パターンを簡略化して示したものである。
また、同図に示すごとく、熱緩和セル43は、基材2の径方向断面において、中心Oからの距離(n)が該中心Oから外周面51までの距離(m)の80%以下の領域(図3(b)における点線A)に存在している。なお、n=0.8×mである。
また、熱緩和セル43の占有率は、基材2の径方向断面において、中心Oからの距離が該中心Oから外周面51までの距離の80%以下の領域(図3(b)における点線Aよりも内側の領域)の面積に対して14%である。
【0047】
また、本例の排ガス浄化フィルタ1において、熱緩和層431の熱容量は、流入側セル41及び排出側セル42の熱容量よりも大きい。
なお、本例においては、熱緩和層431の熱容量は1.4(J/cc・K)である。また、セル壁4を含めた流入側セル41の熱容量は0.52(J/cc・K)であり、セル壁4を含めた排出側セル42の熱容量は0.52(J/cc・K)である。
【0048】
また、熱緩和層431と基材2との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下である。
なお、本例においては、熱緩和層431の熱膨張係数は2.5×10-6/℃であり、基材2の熱膨張係数は0.5×10-6/℃である。両者の熱膨張係数の差は、2×10-6/℃である。
【0049】
次に、本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法について説明する。
本例では、図7(a)に示すごとく、セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる基材を作製する成形工程と、基材を乾燥させる乾燥工程と、基材を焼成する第1焼成工程と、基材の上流端及び下流端におけるセルの開口部のうち、栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、熱緩和セルとなるセルにおいて、セルに配設した栓詰め用スラリーよりも上流側に高熱容量粉体を充填する充填工程と、栓詰め用スラリーを配設して高熱容量粉体を充填した基材を焼成し、栓部を形成すると共に高熱容量粉体を焼結させることにより基材に対して溶着させて熱緩和層を形成する第2焼成工程とを順に行い、排ガス浄化フィルタを製造した。
以下、これを詳説する。
【0050】
まず、カオリン、溶融シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、タルク、造孔材(カーボン)を含有し、化学組成が重量比にて最終的にSiO2:45〜55%、Al2O3:33〜42%、MgO:12〜18%よりなるコージェライトを主成分とする組成となるように調整した原料粉末を水に混合し、有機バインダを加えて混練することにより、粘土質のセラミックス材料を得た。
【0051】
次いで、粘土質のセラミックス材料を押出機により押出成形し、所望の長さで切断してハニカム構造体よりなる基材を作製した(成形工程)。
本例においては、粘土質のセラミックス材料を直径168mm、長さ101mm、セル壁の厚み0.31mm、セル数310メッシュのハニカム構造体に成形した。なお、このサイズは一例を示したものであり、用途に応じてその他のサイズを採用することもできる。
【0052】
次いで、基材を乾燥させた(乾燥工程)後、焼成炉にて1430℃で20時間保持し、第1回目の焼成を行った(第1焼成工程)。
【0053】
次いで、図4(a)を参照のごとく、基材2の上流端201及び下流端202におけるセル4の開口部において、栓部を形成する部分に栓詰め用スラリー60を配設した(栓詰め工程)。
【0054】
次いで、図4(a)に示すごとく、基材2の上流端201を覆うようにマスキングテープ71を貼り、熱緩和セルとなるセル4に対応する部分のマスキングテープ71をハンダ小手にて穴を開けた。
次いで、図4(b)に示すごとく、基材2の上流端201にシャンプーハット72を装着し、基材2を振動器73上に載置した。このとき、基材2の上流端201を上方に向けた状態で載置した。そして、高熱容量粉体430であるチタン酸アルミニウムよりなる粉体をマスキングテープ71上に充満させた。
【0055】
その後、図4(c)に示すごとく、振動器73を振動させ、高熱容量粉体430を熱緩和セルとなるセル4内に充填させた(充填工程)。これにより、熱緩和セルとなるセル4内の栓詰め用スラリー60よりも上流側に高熱容量粉体430を充填した。
充填後、基材2からシャンプーハット71を外し、充填されずに残った高熱容量粉体430を除去した。
【0056】
次いで、栓詰め用スラリーを配設し、高熱容量粉体を充填した基材を焼成炉にて1350℃で4時間保持し、第2回目の焼成を行った(第2焼成工程)。このとき、基材の上流端を上方に向けた状態で焼成した。
これにより、栓部を形成した。また、高熱容量粉体を焼結させ、基材に対して溶着させて熱緩和層を形成した。
以上により、排ガス浄化フィルタを作製した。
【0057】
次に、本例の排ガス浄化フィルタ1における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1において、セル4は、流入側セル41と排出側セル42と熱緩和セル43とを有する。そして、熱緩和セル43は、高熱容量粉体430を充填してなる熱緩和層431を有し、熱緩和層431の熱容量は、流入側セル41及び排出側セル42の熱容量よりも大きい。そのため、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を熱緩和セル43の熱緩和層431によって吸収することができる。これにより、排ガス浄化フィルタ1が過昇温状態となることを抑制し、基材2の溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる。
【0058】
また、熱緩和層431は、高熱容量粉体430を充填して焼成により焼結させると共に基材2に対して溶着させて形成してなる。すなわち、熱緩和層431は、基材2と一体的に形成されている。そのため、排ガス浄化フィルタ1の使用中においても、熱緩和層431が剥がれたり、脱落したりすることがなく、耐震性を充分に確保することができる。
また、熱緩和層431と基材2との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下と小さい。そのため、熱緩和層431と基材2との間における熱応力を抑制し、排ガス浄化フィルタ1における耐熱衝撃性等の熱的信頼性を充分に確保することができる。
【0059】
また、本例では、熱緩和層431の熱容量は、1.30(J/cc・K)以上である。そのため、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を熱緩和層431によってより一層充分に吸収することができる。
また、熱緩和層431の熱膨張係数は、2.5×10-6/℃以下である。そのため、排ガス浄化フィルタ1における耐熱衝撃性等の熱的信頼性を充分に確保することができる。
【0060】
また、熱緩和セル43の占有率は、基材2の径方向断面において、中心Oからの距離が該中心Oから外周面51までの距離の80%以下の領域の面積に対して5〜30%である。そのため、捕集されたPMを燃焼除去する際に発生する燃焼熱を熱緩和層431によって吸収する効果と、排ガスGの通過が実質的になされない熱緩和セル43による圧力損失の増大を抑制する効果とを両立させることができる。
【0061】
また、本例の製造方法では、充填工程において、下流端202に栓詰めスラリー60を配設したセル4のうち、熱緩和セル43となるセル4における栓詰め用スラリー60よりも上流側に高熱容量粉体430を充填した後、上流端201に栓詰めスラリー60を配設しない。すなわち、熱緩和セル43となるセル4の両端に栓部6を設けるのではなく、下流端202のみに栓部6を設ける。
【0062】
これは、充填工程の後の焼成工程(第2焼成工程)において、高熱容量粉体430を焼結させることにより基材2に対して溶着させて熱緩和層431を形成し、熱緩和層431と基材2とを一体的に形成するからである。例えば、熱緩和層43を構成している高熱容量粉体430が漏れ出すのを防ぐために、熱緩和セル43の両端に栓部6を設けなくてもよいのである。そのため、工程の削減を実現することができ、製造コスト低減を図ることができる。
【0063】
このように、本例によれば、捕集されたPMを燃焼させる際における排ガス浄化フィルタの過昇温を抑制し、溶損や割れ等の熱損傷を防止することができる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供することができる。
【0064】
なお、本例では、図5(a)に示すごとく、熱緩和セル43は、セル壁3のうちの一方のセル壁31又は他方のセル壁32に沿って配置されているが、図5(b)に示すごとく、セル壁3のうちの一方のセル壁31又は他方のセル壁32に対して45°の方向に配置することもできる。
また、熱緩和セル43の配置パターンは、図3(a)に示すようなパターンとしたが、図6(a)〜(d)に示すようなパターンとすることもできる。また、これ以外のパターンとすることもできる。
【0065】
例えば、図6(a)に示した排ガス浄化フィルタ1では、熱緩和セル43は、基材2の径方向断面において、中心Oからの距離が該中心Oから外周面51までの距離の80%以下の領域にのみ配設されており、その領域にできるだけ均一に満遍無く存在している。また、熱緩和セル43は、セル壁3のうちの一方のセル壁31又は他方のセル壁32に沿って(図5(a)参照)、四角形格子状に配設されている。
【0066】
(実施例2)
本例は、排ガス浄化フィルタの製造方法を変更した例である。
本例では、図7(b)に示すごとく、成形工程、乾燥工程、栓詰め工程、第1焼成工程、充填工程及び第2焼成工程を順に行い、排ガス浄化フィルタを製造した。
以下に、これを詳説する。
【0067】
本例では、ハニカム構造体よりなる基材を成形し(成形工程)、乾燥させた(乾燥工程)後、基材の所望の場所に栓詰め用スラリーを配設した(栓詰め工程)。そして、栓詰め用スラリーを配設した基材を焼成した(第1焼成工程)。これにより、上記基材の焼成と同時に栓部を形成した。
【0068】
次いで、高熱容量粉体を基材の所望のセル内に充填した(充填工程)。そして、高熱容量粉体を充填した基材を焼成した(第2焼成工程)。これにより、高熱容量粉体を焼結させ、基材に対して溶着させて熱緩和層を形成した。
以上により、排ガス浄化フィルタを作製した。
なお、各工程の内容は、実施例1と同様である。
【0069】
また、本例の製造方法では、栓詰め工程の後に第1回目の焼成(第1焼成工程)を行い、基材と該基材に配設された栓詰めスラリーとを同時に焼成する。そのため、基材と栓詰めスラリーとを別々に焼成する場合に比べて焼成工程を1回省略することができ、大幅なコスト削減が可能である。
また、基材及び栓詰めスラリーの焼成(第1焼成工程)を行った後に、基材に充填した高熱容量粉体の焼成(第2焼成工程)を行うため、高熱容量粉体の焼結中に異種材料(例えば、基材及び栓部を構成する材料)が混同することなく、熱緩和層の品質を確保することができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0070】
(実施例3)
本例は、排ガス浄化フィルタの製造方法を変更した例である。
本例では、図7(c)に示すごとく、排ガス浄化フィルタを製造するに当たっては、成形工程、乾燥工程、第1焼成工程、栓詰め工程、第2焼成工程、充填工程及び第3焼成工程を順に行う。
【0071】
本例では、ハニカム構造体よりなる基材を成形し(成形工程)、乾燥させた(乾燥工程)後、焼成した(第1焼成工程)。
次いで、基材の所望の場所に栓詰め用スラリーを配設した(栓詰め工程)。そして、栓詰め用スラリーを配設した基材を焼成した(第2焼成工程)。これにより、栓部を形成した。
【0072】
次いで、高熱容量粉体を基材の所望のセル内に充填した(充填工程)。そして、高熱容量粉体を充填した基材を焼成した(第3焼成工程)。これにより、高熱容量粉体を焼結させ、基材に対して溶着させて熱緩和層を形成した。
以上により、排ガス浄化フィルタを作製した。
なお、各工程の内容は、実施例1と同様である。
【0073】
また、本例の製造方法では、乾燥工程の後に第1回目の焼成(第1焼成工程)を行い、栓詰め工程の後に第2回目の焼成(第2焼成工程)を行い、充填工程の後に第3回目の焼成(第3焼成工程)を行う。
すなわち、栓詰めスラリーを配設してから基材の第1回目の焼成を行う場合に比べて、焼成途中における基材(ハニカム構造体)内の通気性を向上させることができる。そのため、焼成途中の基材内に生じる温度差を低減して焼成割れを抑制することができ、焼成歩留まりを向上させることができる。
また、基材及び栓詰めスラリーの焼成(第1焼成工程、第2焼成工程)を行った後に、基材に充填した高熱容量粉体の焼成(第3焼成工程)を行うため、高熱容量粉体の焼結中に異種材料(例えば、基材及び栓部を構成する材料)が混同することなく、熱緩和層の品質を確保することができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0074】
(実施例4)
本例では、排ガス浄化フィルタについて、熱緩和層と基材との熱膨張係数の差を変化させ、過昇温試験時における発生応力をシミュレーションによって算出した。
【0075】
本例では、直径160mm、長さ100mm、セル壁の厚み0.3mm、セル密度300cpsiのコージェライト製のハニカム構造体(基材)に対して、高熱容量粉体であるチタン酸アルミニウムによって形成した熱緩和層を有する熱緩和セルを図6(a)に示すパターンに配置した排ガス浄化フィルタを用いた。また、基材の熱膨張係数は、1.65×10-6/℃とした。また、熱緩和層の熱膨張係数は、基材の熱膨張係数よりも大きい。
【0076】
また、過昇温試験は、排気量2リットルのコモンレール式ディーゼルエンジンの排気管に容量1.3リットルの酸化触媒と排ガス浄化フィルタとを装着し、排ガス浄化フィルタにPMを12g堆積させる。そして、エンジン制御(ポスト噴射)により基材内温度を650℃まで昇温した後、エンジン回転数をアイドリング状態まで低下させ、PMを爆発的に燃焼させる条件とした。
【0077】
そして、発生応力は、過昇温試験時において、基材内で最も高い温度(最高到達温度)が965℃となる場合における基材及び熱緩和層のそれぞれの変位を求め、そこから排ガス浄化フィルタの歪みを算出し、それらの値を3次元の有限要素法解析モデルを用いて非定常解析を行うことによって算出した。
【0078】
次に、発生応力の結果を図8に示す。同図において、縦軸は発生応力(MPa)、横軸は熱膨張係数差(×10-6/℃)である。
同図から、発生応力が実使用上許容される応力値P1である3.95MPa以下となるのは、熱膨張係数差が2×10-6/℃以下の場合であることがわかる。よって、排ガス浄化フィルタにおいて、熱緩和層と基材との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下であることが好ましいことがわかる。
【0079】
(実施例5)
本例では、排ガス浄化フィルタについて、熱緩和セルの占有率を変化させ、過昇温試験時における基材内の最高到達温度を測定した。
ここでの熱緩和セルの占有率とは、基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域の面積に対して熱緩和セルが占める割合のことである。
【0080】
本例では、直径160mm、長さ100mm、セル壁の厚み0.3mm、セル密度300cpsiのコージェライト製のハニカム構造体(基材)に対して、高熱容量粉体(例えば、チタン酸アルミニウム、コージェライト等)によって形成した熱緩和層を有する熱緩和セルを図3(b)、図6(a)〜(d)等に示すパターンに配置した排ガス浄化フィルタを用いた。
【0081】
また、過昇温試験は、排気量2リットルのコモンレール式ディーゼルエンジンの排気管に容量1.3リットルの酸化触媒と排ガス浄化フィルタとを装着し、排ガス浄化フィルタにPMを12g堆積させる。そして、エンジン制御(ポスト噴射)により基材内温度を650℃まで昇温した後、エンジン回転数をアイドリング状態まで低下させ、PMを爆発的に燃焼させることによって行った。
そして、基材内の最高到達温度は、熱電対を基材内に30箇所均一に配置しておき、過昇温試験時に計測した中で最も高い温度とした。
【0082】
次に、基材内の最高到達温度の結果を図9に示す。同図において、縦軸は最高到達温度(℃)、横軸は熱緩和セル占有率(%)である。
同図から、基材内の最高到達温度が実使用上許容される温度値T1である960℃以下となるのは、熱緩和セル占有率が5%以上の場合であることがわかる。したがって、熱緩和セルの占有率は、5%以上であることが好ましいことがわかる。
なお、熱緩和セルの占有率が30%を超える場合には、排ガスの通過が実質的になされない熱緩和セルの増加により、圧力損失の増大という問題が生じるおそれがある。そのため、熱緩和セルの占有率は、30%以下であることが好ましい。
【0083】
(実施例6)
本例では、様々な条件の排ガス浄化フィルタ(試料E1〜E6)を準備し、基材内の最高到達温度、熱容量及び圧力損失を求め、それぞれの関係を調べたものである。
【0084】
本例において準備した排ガス浄化フィルタ(試料E1〜E6)は、いずれも、直径160mm、長さ100mm、セル壁の厚み0.3mm、セル密度300cpsiのコージェライト製のハニカム構造体(基材)に対して、任意の高熱容量粉体によって形成した熱緩和層を有する熱緩和セルを任意のパターンで配置したものである。
【0085】
また、表1に、各試料E1〜E6における高熱容量粉体、熱緩和セルの配置パターン、熱緩和層の熱容量、熱緩和セルの占有率を示した。
なお、熱緩和セルの配置パターンは、図3(b)、図6(a)〜(d)のいずれかに示
すパターンである。また、熱緩和セルの占有率は、基材の径方向断面において、中心から
の距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域の面積に対して熱緩和セルが占める割合のことである。
【0086】
【表1】
【0087】
また、基材内の最高到達温度は、実施例5と同様の方法で測定した。
また、熱容量は、排ガス浄化フィルタ全体(基材+熱緩和層)の熱容量であり、基材及び熱緩和層の比熱、比重等から求めた。
また、圧力損失は、排ガス浄化フィルタに体積流量5000リットル/分で排ガスを流通させ、流入側圧力と排出側圧力との圧力差を圧力損失として求めた。
【0088】
次に、基材内の最高到達温度、熱容量及び圧力損失の結果を図10及び図11に示す。図10は、基材内の最高到達温度と圧力損失との関係を示したものである。同図において、縦軸は最高到達温度(℃)、横軸は圧力損失(kPa)である。また、図11は、基材内の最高到達温度と熱容量との関係を示したものである。同図において、縦軸は最高到達温度(℃)、横軸は熱容量(J/K)である。
【0089】
図10及び図11から、熱緩和層の熱容量が1.30(J/cc・K)以上であり、かつ、熱緩和セルの占有率が5〜30%の範囲内である試料E5は、上記条件を満たしていない他の試料E1〜E4、E6に比べて、過昇温抑制と圧力損失増加抑制との両立の観点から非常に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施例1における、排ガス浄化フィルタを示す斜視図。
【図2】実施例1における、排ガス浄化フィルタの軸方向断面を示す説明図。
【図3】実施例1における、(a)セルの配置を示す説明図、(b)熱緩和セルの配置パターンを示す説明図。
【図4】実施例1における、(a)マスキングテープを貼る工程を示す説明図、(b)高熱容量粉体を充填する様子を示す説明図、(c)高熱容量粉体を充填した状態を示す説明図。
【図5】実施例1における、(a)〜(d)熱緩和セルの配置パターンを示す説明図。
【図6】実施例1における、(a)、(b)熱緩和セルと流入側セル及び排出側セルとの配置関係を示す説明図。
【図7】実施例1〜3における、(a)〜(c)製造工程を示すフローチャート。
【図8】実施例4における、発生応力と熱膨張係数差との関係を示すグラフ。
【図9】実施例5における、最高到達温度と熱緩和セル占有率との関係を示すグラフ。
【図10】実施例6における、最高到達温度と圧力損失との関係を示すグラフ。
【図11】実施例6における、最高到達温度と熱容量との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0091】
1 排ガス浄化フィルタ
2 基材
201 上流端
202 下流端
3 セル壁
4 セル
41 流入側セル
42 排出側セル
43 熱緩和セル
430 高熱容量粉体
431 熱緩和層
5 外周壁
6 栓部
G 排ガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、該外周壁内にハニカム状に配設されたセル壁と、該セル壁内に区画された多数のセルとを有するハニカム構造体よりなる基材を備えた排ガス浄化フィルタにおいて、
上記セルは、下流端を栓部によって閉塞してなり、排ガスを流入させる流入側通路となる流入側セルと、
上流端を上記栓部によって閉塞してなり、上記流入側セルから上記セル壁を通過した排ガスを排出させる排出側通路となる排出側セルと、
下流端を上記栓部によって閉塞してなり、該栓部より上流側の部分に高熱容量粉体を充填して焼成により焼結させると共に上記基材に対して溶着させて形成してなる熱緩和層を設けた熱緩和セルとを有し、
上記熱緩和層の熱容量は、上記流入側セル及び上記排出側セルの熱容量よりも大きく、かつ上記熱緩和層と上記基材との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項2】
請求項1において、上記熱緩和層の熱容量は、1.30(J/cc・K)以上であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記熱緩和層の熱膨張係数は、2.5×10-6/℃以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記熱緩和セルの占有率は、上記基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域の面積に対して5〜30%であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項5】
請求項4において、上記セル壁は、一方の方向に形成されたセル壁と該セル壁に直交する方向に形成された他方のセル壁とによって四角形格子状に配設されており、
上記熱緩和セルは、上記基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域にのみ配設されており、かつ、上記一方のセル壁に沿って形成された熱緩和セルと上記他方のセル壁に沿って形成された熱緩和セルとによって四角形格子状に配設されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記高熱容量粉体は、チタン酸アルミニウム、炭化珪素(シリコンカーバイド)、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネルのうち1種又は2種以上を含有することを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材を焼成する第1焼成工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
下流端に上記栓詰めスラリーを配設した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓詰め用スラリーよりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設して上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記栓部を形成すると共に上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第2焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設した上記基材を焼成すると同時に、上記栓部を形成する第1焼成工程と、
下流端に上記栓部を形成した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓部よりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第2焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材を焼成する第1焼成工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設した上記基材を焼成し、上記栓部を形成する第2焼成工程と、
下流端に上記栓部を形成した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓部よりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第3焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項において、上記充填工程では、上記基材の上流端を上方に向けた状態で、上記熱緩和セルとなる上記セルの上流端の開口部から上記高熱容量粉体を充填することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項10において、上記充填工程の後に行う焼成工程では、上記基材の上流端を上方に向けた状態で、該基材を焼成することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項1】
外周壁と、該外周壁内にハニカム状に配設されたセル壁と、該セル壁内に区画された多数のセルとを有するハニカム構造体よりなる基材を備えた排ガス浄化フィルタにおいて、
上記セルは、下流端を栓部によって閉塞してなり、排ガスを流入させる流入側通路となる流入側セルと、
上流端を上記栓部によって閉塞してなり、上記流入側セルから上記セル壁を通過した排ガスを排出させる排出側通路となる排出側セルと、
下流端を上記栓部によって閉塞してなり、該栓部より上流側の部分に高熱容量粉体を充填して焼成により焼結させると共に上記基材に対して溶着させて形成してなる熱緩和層を設けた熱緩和セルとを有し、
上記熱緩和層の熱容量は、上記流入側セル及び上記排出側セルの熱容量よりも大きく、かつ上記熱緩和層と上記基材との熱膨張係数の差は、2×10-6/℃以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項2】
請求項1において、上記熱緩和層の熱容量は、1.30(J/cc・K)以上であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記熱緩和層の熱膨張係数は、2.5×10-6/℃以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記熱緩和セルの占有率は、上記基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域の面積に対して5〜30%であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項5】
請求項4において、上記セル壁は、一方の方向に形成されたセル壁と該セル壁に直交する方向に形成された他方のセル壁とによって四角形格子状に配設されており、
上記熱緩和セルは、上記基材の径方向断面において、中心からの距離が該中心から外周面までの距離の80%以下の領域にのみ配設されており、かつ、上記一方のセル壁に沿って形成された熱緩和セルと上記他方のセル壁に沿って形成された熱緩和セルとによって四角形格子状に配設されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記高熱容量粉体は、チタン酸アルミニウム、炭化珪素(シリコンカーバイド)、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネルのうち1種又は2種以上を含有することを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材を焼成する第1焼成工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
下流端に上記栓詰めスラリーを配設した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓詰め用スラリーよりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設して上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記栓部を形成すると共に上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第2焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設した上記基材を焼成すると同時に、上記栓部を形成する第1焼成工程と、
下流端に上記栓部を形成した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓部よりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第2焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタを製造する方法において、
セラミックス材料を押出成形し、ハニカム構造体よりなる上記基材を作製する成形工程と、
上記基材を乾燥させる乾燥工程と、
上記基材を焼成する第1焼成工程と、
上記基材の上流端及び下流端における上記セルの開口部のうち、上記栓部を形成する部分に栓詰め用スラリーを配設する栓詰め工程と、
上記栓詰め用スラリーを配設した上記基材を焼成し、上記栓部を形成する第2焼成工程と、
下流端に上記栓部を形成した上記セルのうち、上記熱緩和セルとなる上記セルにおける上記栓部よりも上流側に上記高熱容量粉体を充填する充填工程と、
上記高熱容量粉体を充填した上記基材を焼成し、上記高熱容量粉体を焼結させることにより上記基材に対して溶着させて上記熱緩和層を形成する第3焼成工程とを有することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項において、上記充填工程では、上記基材の上流端を上方に向けた状態で、上記熱緩和セルとなる上記セルの上流端の開口部から上記高熱容量粉体を充填することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項10において、上記充填工程の後に行う焼成工程では、上記基材の上流端を上方に向けた状態で、該基材を焼成することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−101344(P2009−101344A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236921(P2008−236921)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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