説明

排ガス浄化用触媒および排ガス浄化方法

【課題】酸素過剰の雰囲気において、アンモニアを還元剤とする窒素酸化物の還元反応やアンモニアの窒素への酸化反応と、一酸化炭素および炭化水素の除去を単一の触媒で行うことができる排ガス浄化触媒並びに、排ガス浄化方法を提供する。
【解決手段】触媒を、酸化チタン、鉄およびタングステンを含有する担体と、この担体に担持され、パラジウム、イリジウムおよびロジウムから選ばれた少なくとも1種の白金族金属とで構成する。このような触媒は、白金族金属が少なくともパラジウムを含んでいてもよく、このようなパラジウムの割合は、担体に対して質量比で0.005〜0.025%程度であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを還元剤として用いて燃焼排ガスなどに含まれる窒素酸化物を浄化したり、アンモニアを窒素に酸化するとともに、併せて一酸化炭素や炭化水素などの可燃性成分を酸化除去するための排ガス浄化用触媒および排ガスの浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼排ガスや硝酸製造プロセスの排ガスなどに含まれる窒素酸化物(NOx:x=1または2、すなわち、一酸化窒素および二酸化窒素)は、酸性雨や光化学スモッグ、呼吸器疾患などを引き起こすことから環境上有害であると考えられており、その排出は規制されている。ボイラーやディーゼルエンジン排ガスのように酸素を過剰に含む排ガス中の窒素酸化物の浄化には、還元剤としてアンモニアを添加して、酸化チタン−酸化バナジウムあるいは酸化チタン−酸化バナジウム−酸化タングステンからなる触媒に排ガスを接触させ、窒素酸化物を無害の窒素に変換するアンモニア選択還元法が広く用いられている。例えば、特開昭50−51966号公報(特許文献1)には、窒素酸化物を、アンモニアの存在下、酸化バナジウムを酸化チタンまたは酸化ジルコニウムに担持させた触媒と接触させる窒素酸化物の接触還元分解法が開示されている。
【0003】
アンモニア選択還元法は、排ガス中の窒素酸化物に対するアンモニアのモル比を厳密に制御すれば、ほぼ100%に近い脱硝率が得られる特徴がある。しかし、一部の燃焼排ガスなどでは、排ガス中の窒素酸化物濃度が時間的に変動するため、アンモニア注入量の制御が極めて難しく、アンモニアが過剰となった際に処理ガス中にアンモニアが残存するリーク(漏出)アンモニアの問題がある。この問題を避けるには、アンモニアの添加量を窒素酸化物の量に比べてやや少なめにする方法があるが、この方法では、脱硝率の低下を伴う。
【0004】
別の方法として、前述のアンモニア脱硝触媒に対し、少量の貴金属を添加して、過剰のアンモニアを分解する方法が提案されている。例えば、特開平5−146634号公報(特許文献2)には、チタン、バナジウム、タングステン、モリブデンから選ばれた一種以上の元素の酸化物を含む組成物を第一成分とし、白金、パラジウム、ロジウムから選ばれた貴金属の塩類もしくはゼオライト、アルミナ、シリカなどの多孔体にあらかじめ担持された前記貴金属を含有する組成物を第二成分とした組成物で構成され、窒素酸化物を接触還元すると同時に還元剤として注入された未反応状態のアンモニアを分解することを特徴とする脱硝機能を備えたアンモニア分解触媒が開示されている。この文献には、前記アンモニア分解触媒を用いると、アンモニアと窒素酸化物との反応に加えて、アンモニアの分解反応が併発するので、アンモニアが過剰となってもリークアンモニアを低く抑えられることが開示されている。また、特開平8−290062号公報(特許文献3)には、チタン酸化物およびモリブデン、タングステン、バナジウムから選ばれた一種以上の元素の酸化物を含む組成物または銅もしくは鉄を担持したゼオライトを含む組成物を第1成分とし、イリジウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選ばれた少なくとも一つの金属と白金とを含み、前記金属の白金に対する重量比が0を超えて5以下の割合で多孔体に担持した第2成分とで構成された、窒素酸化物のアンモニア還元機能とアンモニアの酸化分解機能を有する排ガス浄化触媒が開示されており、前記と同様の効果を奏することが開示されている。さらに、特開2002−336699号公報(特許文献4)には、アンモニアを含有するガスをアンモニア分解触媒と接触させてアンモニアを分解除去する方法において、アンモニア分解触媒として、γ−Al、θ−Al、ZrOなどから選ばれた少なくとも一種以上の多孔質物質を含む担体に活性金属としてルテニウムを担持した触媒を使用するアンモニア分解除去方法が開示されている。この文献には、酸性点を有する担体にルテニウムを担持した触媒を用いて、アンモニアを分解除去すると、窒素酸化物を生成することなく窒素を生成するので、アンモニア脱硝反応後の過剰のアンモニアを分解するのに有用であることが記載されている。
【0005】
酸化チタン−酸化バナジウム−酸化タングステン系触媒は、火力発電所やごみ焼却場などで幅広く使用されているが、自動車排ガス浄化のように振動で触媒が粉化、飛散するような用途では、使用に注意が必要であるとの指摘もある。この問題に対応して、特開2005−238195号公報(特許文献5)には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、および酸化タングステンから選ばれた2以上の酸化物からなる複合酸化物と、希土類金属又は遷移金属(ただし、Cu, Co, Ni, Mn, Cr, Vを除く)とを有効成分として含有する脱硝用触媒が開示されている。このほか、シュミーグ(Schmieg)およびリー(Lee)、SAEテクニカルペーパーシリーズ(SAE Technical Paper Series)、2005-01-3881(2005年)(非特許文献1)には、鉄や銅を担持したゼオライト触媒が開示されている。
【0006】
内燃機関の排ガス中には、窒素酸化物に加えて一酸化炭素や、炭化水素も微量含まれている。一酸化炭素も有害であるので、その除去も併せて行えると有利である。しかし、酸化チタン−酸化バナジウム−酸化タングステン系触媒の一酸化炭素除去性能は低い。特開平1−266849号公報(特許文献6)には、主成分として酸化チタンを含有し、第二成分としてモリブデン、タングステン、バナジウム、セリウム、ニッケル、コバルト、マンガンのうち少なくとも1種を含有し、さらに第三成分として白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムのうち少なくとも1種以上、および/または鉄、クロム、銅の酸化物のうちから選ばれた少なくとも1種以上を含有する触媒が、アンモニアを還元剤とする窒素酸化物の還元と、一酸化炭素の同時浄化に有効であることが開示されている。しかし、この触媒では、窒素酸化物の還元と一酸化炭素の同時浄化が可能な温度範囲が限られる問題がある。特開2003−305338号公報(特許文献7)には、鉄置換型ゼオライトを第1成分、貴金属担持ゼオライト等を第2成分とし、貴金属の含有量が前記第1成分及び第2成分の総質量に対し0〜100ppmである触媒が、アンモニアを還元剤とする窒素酸化物の還元と、一酸化炭素の同時浄化に有効であることが開示されている。しかし、ゼオライトは、水蒸気の共存する条件では、格子中のアルミニウム原子の脱落や結晶格子の崩壊が起こるため、性能が低下する虞があり、耐久性に難点がある。
【0007】
炭化水素類は、アンモニアを還元剤とする窒素酸化物の還元反応を阻害することも知られている(例えば、非特許文献1)。炭化水素類は、光化学スモッグの原因物質ともなるので、やはり除去が望まれているが、酸化チタン−酸化バナジウム−酸化タングステン触媒は、炭化水素類の除去にはあまり有効ではない。特開2006−68663号公報(特許文献8)には、酸化チタンを主成分とする担体に酸化マンガンを担持した触媒が、アンモニアを還元剤とする窒素酸化物の還元反応と臭気成分(アセトアルデヒド)の酸化除去に有効であることが記載されている。しかし、この触媒は一酸化炭素の除去性能は十分ではない。そのため、内燃機関の排ガス処理では、アンモニアを還元剤とする窒素酸化物の還元用触媒と、白金族金属を担持した酸化用触媒とを併用するのが一般的である。例えば、特開2005−48733号公報(特許文献9)には、往復動式エンジンからの排ガスを浄化するための排ガス浄化装置を備えた熱電併給装置であって、前記排ガス浄化装置が、前記エンジンから排出させる排ガスの上流側から下流側に向かって、酸化触媒を含む酸化ユニット、排熱回収装置を含む回収ユニット、脱硝触媒を含む脱硝ユニットの順で配設されている熱電併給装置が開示されている。この文献には、前記酸化触媒は、耐火性無機担体に貴金属元素が担持されていること、及び貴金属元素としては、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金が好ましいことが記載されている。しかし、この装置では、2種の触媒が必要であり、費用がかさむ点が課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭50−51966号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平5−146634号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8−290062号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2002−336699号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2005−238195号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開平1−266849号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2003−305338号公報(特許請求の範囲)
【特許文献8】特開2006−68663号公報(特許請求の範囲)
【特許文献9】特開2005−48733号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】シュミーグ(Schmieg)およびリー(Lee)、SAEテクニカルペーパーシリーズ(SAE Technical Paper Series)、2005-01-3881(2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、酸素雰囲気下において、アンモニアを還元剤とする窒素酸化物の還元反応と、可燃性成分(例えば、一酸化炭素及び炭化水素など)の除去とを単一の触媒で両立できる触媒(排気ガス浄化触媒)およびこの触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、窒素酸化物濃度が変動する条件でも、アンモニアの漏出を抑制しつつ高い脱硝率を得ることができる触媒及びこの触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、酸素雰囲気下において、アンモニアを窒素に酸化する酸化反応と、可燃性成分(例えば、一酸化炭素及び炭化水素など)の除去とを単一の触媒で両立できる触媒(排気ガス浄化触媒)およびこの触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、酸化チタン、鉄およびタングステンを含有する担体に、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)およびロジウム(Rh)から選ばれた少なくとも1種の白金族金属を担持した触媒が、(i)酸素過剰の雰囲気において、アンモニアを還元剤とする窒素酸化物の還元反応と、一酸化炭素および炭化水素などの可燃性成分の除去を同時に行うことができること、また窒素酸化物に対してアンモニアが過剰に存在する場合でもアンモニアを窒素に分解してアンモニアの漏出を抑制できること、及び/又は(ii)酸素過剰の雰囲気において、アンモニアを窒素に酸化する反応と、一酸化炭素および炭化水素などの可燃性成分の除去を同時に行うことができることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の触媒は、酸化チタン、鉄およびタングステンを含有する担体に、パラジウム、イリジウムおよびロジウムから選ばれた少なくとも1種の白金族金属を担持した触媒である。このような触媒は、例えば、酸素雰囲気下(酸素過剰の雰囲気)において、アンモニアの存在下に窒素酸化物を還元するとともに、可燃性成分(例えば、一酸化炭素及び/又は炭化水素など)を酸化除去するための触媒として利用できる。また、このような触媒は、酸素雰囲気下(酸素過剰の雰囲気)において、アンモニアを窒素に酸化(酸化して除去)するとともに、可燃性成分(例えば、一酸化炭素及び/又は炭化水素など)を酸化除去するための触媒としても利用できる。
【0015】
前記触媒において、白金族金属は少なくともパラジウムを含んでいてもよく、このパラジウムの割合は、前記担体に対して質量比で0.005〜0.025%程度であってもよい。特に、前記白金族金属は、パラジウムと、イリジウムおよびロジウムから選ばれた少なくとも1種とを含んでいてもよく、イリジウムおよびロジウムから選択された少なくとも1種の割合は、パラジウムに対して質量比で0.5〜5倍程度であってもよい。また、前記触媒(又は前記担体)は、さらに、硫酸成分を含んでいてもよい。
【0016】
本発明には、前記触媒を用いて、酸素雰囲気下、アンモニアの存在下に窒素酸化物を還元するとともに、可燃性成分を酸化除去する方法も含まれる。このような方法は、例えば、窒素酸化物、アンモニア、可燃性成分(一酸化炭素および炭化水素など)を含む燃焼排ガスを、前記触媒に接触させ、窒素酸化物を還元除去するとともに、一酸化炭素および炭化水素などの可燃性成分を酸化除去する排ガス浄化方法であってもよい。このような浄化方法は、代表的には、酸素を含む排ガス(詳細には、酸素、窒素酸化物、可燃性成分を含む排ガス)の浄化方法であって、前記排ガスに、アンモニア及び/又はその前駆体(まとめてアンモニア成分ということがある)を添加した後、前記排ガス(アンモニア成分を添加した前記排ガス)を前記触媒(すなわち、酸化チタン、鉄およびタングステンを含有する担体に、パラジウム、イリジウムおよびロジウムから選ばれた少なくとも1種の白金族金属を担持した触媒)に流通させ(又は接触させ)、前記排ガス中の窒素酸化物および可燃性成分を浄化する(詳細には、窒素酸化物を還元し、かつ可燃性成分を酸化除去して浄化する)方法であってもよい。このような方法において、排ガスは、例えば、内燃機関の燃焼排ガスであってもよい。この方法において、前記アンモニア及び/又はその前駆体(例えば、尿素、炭酸アンモニウムなど)は、排ガス中の窒素酸化物に対して、アンモニアのモル比で0.75〜1.25倍程度添加してもよい。
【0017】
また、本発明には、酸素を含む排ガス(詳細には、酸素、アンモニア、可燃性成分を含む排ガス)の浄化方法であって、前記排ガスを触媒に流通させ(又は接触させ)、前記排ガス中のアンモニアを窒素に酸化するとともに可燃性成分を浄化する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の触媒は、酸素雰囲気下において、アンモニアを還元剤とする窒素酸化物の還元反応と、可燃性成分(一酸化炭素、炭化水素など)の除去とを単一の触媒で両立できる。さらに、高い窒素酸化物還元能を有すると共に、過剰のアンモニアを窒素に変換する能力も有している。そのため、この触媒を用いて窒素酸化物の処理を行えば、窒素酸化物濃度が変動する条件でも、アンモニアの漏出を抑制しつつ高い脱硝率を得ることができる。このような本発明の触媒は、一酸化炭素や炭化水素などの可燃性成分の除去にも効果があるので、単一の触媒で総合的な排ガスの浄化が可能となる。また、本発明の触媒は、酸素雰囲気下において、アンモニアを窒素に酸化する酸化反応と、可燃性成分(例えば、一酸化炭素及び炭化水素など)の除去とを単一の触媒で両立できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の触媒は、酸化チタン、鉄およびタングステンを含有する担体(鉄およびタングステンを含む酸化チタン担体)に、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)およびロジウム(Rh)から選ばれた少なくとも1種の白金族金属が担持して構成されている。
【0020】
担体は、酸化チタン、鉄(鉄成分)、タングステン(タングステン成分)を含んでいる限り、これらの含有形態は限定されないが、通常、酸化チタンを主成分として、鉄およびタングステンを含む場合が多い。代表的には、担体は、鉄およびタングステンが酸化チタンに担持された形態(すなわち、前記担体は、担体としての酸化チタンに鉄およびタングステンが担持された担体)である場合が多い。例えば、前記担体(又は前記触媒)における酸化チタンの割合は、質量比で40〜99%、好ましくは50〜98%(例えば、55〜97%)、さらに好ましくは60〜96%(例えば、70〜95%)程度であってもよい。
【0021】
前記担体又は前記触媒において、酸化チタンに対する鉄の割合(酸化物などとして含まれている場合は金属原子換算の割合、以下、タングステン、Pd、Ir、Rhにおいて同じ)は、質量比で0.3〜20%(例えば、0.4〜15%)、好ましくは0.5〜10%(例えば、0.7〜7%)、さらに好ましくは1〜5%程度であってもよい。また、酸化チタンに対するタングステンの割合は、質量比で0.3〜30%(例えば、0.5〜25%)、好ましくは1〜20%(例えば、3〜18%)、さらに好ましくは5〜15%程度であってもよい。
【0022】
さらに、タングステンの割合は、鉄に対して質量比で、例えば、0.03〜20倍(例えば、0.05〜15倍)、好ましくは0.1〜10倍(例えば、0.5〜8倍)、さらに好ましくは1〜7倍(例えば、1.5〜5倍)程度であってもよい。
【0023】
なお、前記担体における鉄およびタングステンの含有形態は、特に限定されず、酸化物、塩(硫酸塩などの無機塩など)などの形態で担体に含有されていてもよい。代表的には、前記担体は、酸化チタン粒子上に、鉄およびタングステンが酸化物粒子(微細粒子)として担持(分散担持)されている場合が多い。
【0024】
本発明の触媒は、上記のような担体に、Pd、IrおよびRhから選ばれる少なくとも1つの白金族金属が担持された触媒である。本発明の触媒は、担体としての酸化チタンに、鉄成分(例えば、酸化鉄)、タングステン成分(例えば、酸化タングステン)、および前記白金族金属が担持された触媒であってもよい。このような触媒において、白金族金属は、Pd、IrおよびRhをどのように組み合わせて用いてもよいが、可燃性成分の除去性能を確保する上では、少なくともPdを含んでいるのが好ましく、特に、Pdと、IrおよびRhから選択された少なくとも1種とで構成されているのが好ましい。
【0025】
前記触媒において、前記担体(又は酸化チタン)に対する白金族金属の割合は、質量比で、例えば、0.001〜0.1%(例えば、0.002〜0.08%)、好ましくは0.005〜0.07%(例えば、0.007〜0.06%)、さらに好ましくは0.008〜0.05%(例えば、0.01〜0.04%)程度であってもよい。
【0026】
特に、前記触媒において、前記担体(又は酸化チタン)に対するPdの割合は、質量比で、例えば、0.001〜0.035%(例えば、0.002〜0.03%)、好ましくは0.005〜0.025%(例えば、0.006〜0.02%)、さらに好ましくは0.007〜0.018%(例えば、0.008〜0.015%)程度であってもよい。Pdの含有量をこのような範囲とすると、可燃性成分の除去性能を高めやすく、また、アンモニアの酸化を適度に進行させ、窒素酸化物の浄化性能を高めやすい。また、IrおよびRhから選択された少なくとも1種の割合は、Pdに対して、例えば、質量比で、0.1〜10倍(例えば、0.3〜7倍)、好ましくは0.5〜5倍(例えば、0.7〜4倍)、さらに好ましくは1〜4倍(例えば、1.5〜3倍)程度であってもよく、通常1〜3倍程度であってもよい。さらに、IrとRhとの割合(質量比)は、前者/後者=0/100〜100/0の範囲から選択でき、例えば、10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは30/70〜70/30程度であってもよい。
【0027】
なお、前記触媒(又は前記担体)は、本発明の効果を害しない範囲であれば、鉄およびタングステン以外の金属(例えば、マンガン、ニッケルなど)を微量含んでいてもよいが、触媒活性の点で、通常、バナジウムを含まない(実質的に含まない)場合が多い。
【0028】
また、前記触媒(又は前記担体)は、硫酸成分を含んで(担持して)いてもよい。例えば、担体は、硫酸成分(又は硫酸基)を、硫黄(S)原子基準で、例えば、0.1〜10質量%(例えば、0.2〜8質量%)、好ましくは0.3〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%程度含んでいてもよい。このような硫酸成分は、触媒活性の点で好ましい。
【0029】
本発明の触媒の比表面積は、通常10〜100m/g程度であり、好ましくは20〜80m/g、さらに好ましくは30〜70m/g程度であってもよい。
【0030】
本発明の触媒の製造方法は、特に限定されず、例えば、(i)酸化チタン、鉄およびタングステンを含む担体に、前記白金族金属を担持させることにより製造してもよく、(ii)酸化チタンを含む担体に、前記白金族金属を担持させた後、鉄およびタングステンを含有させて製造してもよい。通常、本発明の触媒は、上記方法(i)により製造する場合が多い。
【0031】
方法(i)において、酸化チタン、鉄およびタングステンを含む担体は、例えば、酸化チタンに、鉄およびタングステンを含有させることにより製造できる。鉄およびタングステンは、酸化チタンに同時に含有させてもよく、酸化チタンに一方の成分(タングステン又は鉄)を含有(又は担持)させた後、他方の成分(鉄又はタングステン)を含有(担持)させてもよい。特に、酸化チタンにタングステンを含有(又は担持)させた後、鉄を含有させる場合が多い。なお、酸化チタンは、市販品を用いてもよく、慣用の方法(例えば、チタンテトラアルコキシドやチタンテトラハライドを縮合させる方法など)で合成したものを用いてもよい。また、一方の成分(タングステン又は鉄)を含む酸化チタン(例えば、酸化チタン−酸化タングステン触媒)を市販品として用い、この酸化チタンに他方の成分(例えば、鉄)を含有させてもよい。
【0032】
含有(担持)させる方法としては、含浸法や混練法など公知の方法を利用できる。いずれの方法においても、含有(担持)には、通常、焼成工程を要する場合が多い。例えば、酸化チタン(又は鉄を含有する酸化チタン)にタングステンを含有させる場合、酸化チタン(又は鉄を含有する酸化チタン)とタングステン化合物(タングステン源)との混合物を、例えば、400℃以上(例えば、400〜650℃)、好ましくは420〜600℃、さらに好ましくは450〜550℃程度の温度で焼成してもよい。また、酸化チタン(又はタングステンを含有する酸化チタン)に鉄を含有させる場合、酸化チタン(又はタングステンを含有する酸化チタン)と鉄化合物(鉄源)との混合物を、例えば、400℃以上(例えば、400〜650℃)、好ましくは420〜600℃、さらに好ましくは450〜550℃程度の温度で焼成してもよい。焼成は、酸素雰囲気下(例えば、空気中)で行ってもよい。なお、鉄化合物やタングステン化合物は、含浸法、混練法のいずれにおいても、通常、溶液(特に水溶液)の形態(又は溶解可能な溶媒の存在下)で使用する場合が多い。例えば、前記混合物は、一方の成分(例えば、鉄化合物)を含む溶液に、他方の成分(酸化チタン、タングステンを含有する酸化チタンなど)を浸漬することにより得られる。このような場合、通常、混合物から溶媒(特に水)を蒸発(蒸発乾固)などにより除去した後、焼成する場合が多い。
【0033】
鉄化合物としては、無機酸鉄[硫酸鉄(硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)など)、硝酸鉄など]、ハロゲン化鉄(塩化鉄、臭化鉄など)などが挙げられる。これらの鉄化合物は、通常、水溶性であり、好適に使用できる。これらの鉄化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの鉄化合物のうち、無機酸鉄を用いる場合が多い。特に、硫酸鉄を用いると、前記触媒(又は担体)に簡便に硫酸成分を含有させることができる。
【0034】
タングステン化合物としては、タングステン酸(パラタングステン酸、メタタングステン酸など)、タングステン酸アンモニウム(タングステン酸アンモニウム・パラ五水和物など)などが挙げられる。これらのタングステン化合物もまた、通常、水溶性であり、好適に使用できる。これらのタングステン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
前記担体(又は酸化チタン)に対する白金族金属(パラジウム、イリジウム、ロジウム)の担持方法もまた、前記と同様に、含浸法など公知の方法が適用できる。いずれの方法においても、含有(担持)には、焼成工程を要する場合が多い。なお、白金族金属を2種以上組み合わせる場合、これらの白金族金属は、前記担体に同時に含有(担持)させてもよく、別々に(段階的に)含有(担持)させてもよい。例えば、前記担体(又は酸化チタン)と白金族金属化合物(白金族金属源)との混合物を、例えば、400℃以上(例えば、400〜650℃)、好ましくは420〜600℃、さらに好ましくは450〜550℃、通常400〜600℃程度の温度で焼成してもよい。焼成は、酸素雰囲気下(例えば、空気中)で行ってもよい。なお、白金族金属化合物は、含浸法、混練法のいずれにおいても、通常、溶液(特に水溶液)の形態(又は溶解可能な溶媒の存在下)で使用する場合が多い。このような場合、通常、混合物から溶媒(特に水)を蒸発(蒸発乾固)などにより除去した後、焼成する場合が多い。
【0036】
白金族金属化合物としては、塩[無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩(硝酸パラジウム、硝酸イリジウム、硝酸ロジウムなど)、錯塩(テトラアンミンパラジウム硝酸塩、ペンタアンミンアクアロジウム硝酸塩、ヘキサアンミンイリジウム水酸化物など)など]、ハロゲン化物(塩化パラジウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸など)などが挙げられる。これらの白金族金属化合物は、通常、水溶性である場合が多く、好適に使用できる。これらの白金族金属化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
なお、前記のように、硫酸成分を含有させる場合、硫酸成分は金属化合物(硫酸鉄など)の形態で使用することにより含有させてもよく、上記製造工程の適当な段階(例えば、酸化チタンに鉄及び/又はタングステンを含有させる段階)で硫酸基を含む化合物(例えば、硫酸アンモニウムなど)を使用して含有させてもよく、これらを組み合わせて含有させてもよい。
【0038】
本発明の触媒は、その形状を問わず、顆粒状、ペレット成型体あるいはハニカム成型体として使用できるが、圧力損失を低減する観点からはハニカム成型体とするのが好ましい。ハニカムに成型する方法として、耐火性セラミック上に触媒をコートする方法と、必要に応じてバインダーを添加し、ハニカム形状に押し出し成型する(さらに必要により焼成する)方法があるが、触媒性能の点からは後者の方が優れている。
【0039】
ハニカム成型体とする場合には、成型工程は任意の段階で行うことができ、例えば、(i)酸化チタンを成型した後、これに順次、タングステン、鉄、白金族金属を担持(例えば、含浸担持)して成型体触媒としてもよく、(ii)タングステンを担持した酸化チタンをまず調製してこれを成型し、この成型体に鉄、白金族金属を担持(例えば、含浸担持)して成型体触媒としてもよく、(iii)すべての成分を担持した触媒を成型して成型体触媒としてもよい。
【0040】
このような本発明の触媒は、排ガスの浄化に有効である。そのため、本発明には、上記の触媒を用いた排ガスの浄化方法も含む。このような浄化方法は、例えば、(i)排ガス(被処理ガス)に、アンモニア及び/又はその前駆体(アンモニア成分)を添加した後、前記排ガスを前記触媒に流通させ、前記排ガス中の窒素酸化物および可燃性成分を浄化する方法や、(ii)排ガス(被処理ガス)を前記触媒に流通させ、前記排ガス中のアンモニアを窒素に酸化するとともに可燃性成分を浄化する方法などが含まれる。
【0041】
処理するガス(被処理ガス)の対象は限定されないが、被処理ガス(排ガス)は、通常、酸素(例えば、2〜15%程度の酸素)を含んでいる。また、前記浄化方法(i)において、被処理ガスは、窒素酸化物を10〜3000ppm(モル又は体積割合、ガスの割合において同じ)程度の濃度で含んでいてもよい。さらに、被処理ガスは、2〜20%の水蒸気、1〜10%の二酸化炭素を含んでいてもよい。また、燃焼排ガスは硫黄酸化物を含むことが多いが、本発明の触媒は、0.1〜100ppm程度の硫黄酸化物を含むガスにも適用できる。
【0042】
排ガス(燃焼排ガスなど)は、通常可燃性成分として微量の一酸化炭素を含むが、その濃度がTHC(全炭化水素)換算で1000ppm程度の高濃度[例えば、1000ppm以上(例えば、1000〜5000ppm、特に、1500〜4500ppm程度)]であっても、本発明の触媒の窒素酸化物還元性能は大きな影響を受けることはない。また、排ガス(燃焼排ガスなど)では、しばしば炭化水素や含酸素化合物などの可燃性成分を含むが、このような可燃性成分(例えば、炭化水素)の濃度がTHC(全炭化水素)換算で200〜2000ppm(例えば、300〜1800ppm、特に、500〜1500ppm)程度であっても、本発明の触媒の窒素酸化物還元性能は大きな影響を受けることはない。
【0043】
本発明の排ガス浄化方法(i)では、アンモニア(アンモニア成分)を含む排ガス(窒素酸化物含有ガス)を前記触媒に通じる(流通させる又は接触させる)。アンモニアを含む排ガスは、通常、排ガス(酸素、窒素酸化物、さらには一酸化炭素、炭化水素などの可燃性成分を含む排ガス)にアンモニアを添加することにより得ることができ、アンモニアの添加の方法は、公知の方法が適用できる。例えば、液化アンモニアを用いてガス状のアンモニアを添加してもよく、尿素や炭酸アンモニウムなどの熱分解によりアンモニアを生じる化合物(アンモニア前駆体)の水溶液を噴霧してもよい。例えば、アンモニア成分は、アンモニア、アンモニア前駆体(アンモニアを生成する化合物)のいずれか又はその双方を用いてもよい。アンモニア(アンモニア成分)の添加量は、少なすぎると十分な脱硝率が得られず、多すぎるとアンモニアリーク量が増えるおそれがあり、また経済性も悪化するので、窒素酸化物に対するアンモニアのモル比で、通常0.75〜1.25倍、好ましくは0.8〜1.2倍、さらに好ましくは0.9〜1.1倍程度であってもよい。
【0044】
触媒の使用温度(排ガスと接触させる際の温度、接触温度、流通温度)は、鉄、タングステンおよび白金族金属成分の担持量、除去したい炭化水素類の種類によって適宜選択してよいが、通常は300〜500℃程度で使用するのが好ましく、より好ましくは300〜450℃、さらに好ましくは350〜450℃程度で使用する。ホルムアルデヒドなどアルデヒド類は比較的容易に酸化除去されるが、エチレンや酢酸などは反応性が比較的低いので、より高い温度で触媒を使用することが望ましい。なお、触媒の使用温度(排ガスと接触させる際の温度、接触温度、流通温度)は、低すぎると触媒性能が不十分となって、脱硝率や可燃性成分の除去率が低下し、またアンモニアのリーク量が増えるおそれがある。一方、高すぎても脱硝率が低下し、触媒の耐久性も悪化する。
【0045】
触媒の使用量は、多すぎると経済性が悪化し、少なすぎると性能が不十分となる虞がある。従って、ガス時間あたり空間速度(GHSV)は、2,000〜100,000h−1、好ましくは3,000〜50,000h−1、さらに好ましくは5,000〜30,000h−1程度であってもよい。このような範囲であると、経済性および脱硝性能を両立して好適である。なお、反応性が比較的低い可燃性成分に対して高い転化率を要する場合には、2,000〜15,000h−1の範囲としてもよい。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
市販の酸化チタン−酸化タングステン系脱硝触媒(堺化学工業製、SCN−515)を破砕して篩い分けて粒径1〜2mmに揃えた。得られた粉状物18.7gを、硫酸鉄(III)水和物(Feとして24.3質量%含有)3.9gを純水20gに溶解した水溶液に15時間浸漬した。その後、120℃のホットプレート上で蒸発乾固した後、120℃の乾燥器で1時間乾燥し、さらに500℃で6時間焼成して、鉄タングステンチタニアを得た。
【0048】
テトラアンミンパラジウム硝酸塩(Pd(NH(NO)0.0028gとヘキサアンミンイリジウム水酸化物(Ir(NH(OH))水溶液(Irとして5質量%含有)0.04gとを9mlの純水で混合希釈した。得られた水溶液に、前記鉄タングステンチタニア10gを浸漬し、100℃のホットプレート上で乾燥し、さらに500℃で4時間焼成して、0.01%Pd−0.02%Ir/鉄タングステンチタニア触媒(鉄タングステンチタニアに対して0.01質量%のPdおよび0.02質量%のIrを含む触媒を意味する。以下同様。)を得た。
【0049】
この触媒を4.5ml量りとり、石英製反応管(内径20mm)に充填した。加熱炉で触媒層温度を所定の温度に保ち、所定のガスを流通して触媒活性を評価した。試験に用いたガスの組成(モル%)は:一酸化窒素300ppm、酸素10%、水蒸気10%、一酸化炭素500ppm,エチレン200ppm,二酸化硫黄0.5ppmと、アンモニアが225,300,375,450ppm(それぞれ、後述の表の[NH]/[NO]=0.75,1.0,1.25,1.5に対応)で残部がヘリウムである。
【0050】
まず、触媒層の温度を300〜500℃(300℃、350℃、400℃、450℃、おおよび500℃)のそれぞれの温度で[NH]/[NO]=0.75,1.0,1.25,1.5に順次変えて、触媒の初期活性を測定した。次いで、触媒層の温度を500℃に保って[NH]/[NO]=1.0のガスを12時間流通し、引き続いて触媒層の温度を300〜500℃のそれぞれの温度で[NH]/[NO]=0.75,1.0,1.25,1.5に順次変えて、耐久処理後の触媒活性を測定した。ガス流量は、いずれの条件でも毎分1.2リットル(0℃、1気圧の状態における体積)とした(GHSV 16,000h−1)。反応前後のガスの窒素酸化物濃度を化学発光式NOx分析計で、エチレン、一酸化炭素濃度をガスクロマトグラフで測定し、NOx、COおよびHC転化率を計算した。
【0051】
なお、各転化率は下記の式で計算される。
NOx転化率(%)=100×{1−(反応後NOx濃度)/(反応前NOx濃度)}
CO転化率(%)=100×{1−(反応後CO濃度)/(反応前CO濃度)}
HC転化率(%)=100×{1−(反応後エチレン濃度)/(反応前エチレン濃度)}
ここで、反応前とはガス流通方向に対して触媒より上流側、反応後とはガス流通方向に対して触媒より下流側で測定したことを意味する。
【0052】
結果を表1に示す。表1に示すとおり、NH/NO=1.0の条件では、450℃以下の温度で80%以上のNOx転化率が得られる一方、350℃以上の温度では、COおよびHC転化率は90%を超える。従って、350℃〜450℃の範囲で、窒素酸化物の還元と、COおよび炭化水素の酸化除去を同時に行うことが可能となる。
【0053】
また、反応後のアンモニア濃度は、400℃の場合、NH/NO=1.25および1.5のいずれの条件でも20ppm以下であった。すなわち、実施例1で得られた触媒によれば、NOxに対してNHが過剰となっても、リークアンモニアは、最小限に抑制できる。
【0054】
【表1】

【0055】
(比較例1)
実施例1で調製したパラジウムおよびイリジウムを担持する前の鉄タングステンチタニアの触媒活性を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。表2に示すとおり、この触媒は、窒素酸化物の還元には高い活性を示すものの、COおよび炭化水素の酸化除去活性は低い。なお、CO転化率が負となるのは、エチレンの不完全酸化によりCOが生成したためと考えられる。
【0056】
【表2】

【0057】
(実施例2)
実施例1において、ガスの組成(モル%)を:酸素10%、水蒸気10%、一酸化炭素500ppm,エチレン200ppm,二酸化硫黄0.5ppm、アンモニア300ppmで残部がヘリウム(一酸化窒素を含まない)としたこと以外は実施例1と同様にして、触媒活性(COおよびHC転化率ならびにアンモニア分解によるNおよびNOx生成率)を測定した。
【0058】
なお、COおよびHCは前記式で計算され、N生成率およびNOx生成率は下記の式で計算される。
生成率(%)=200×{(反応後窒素濃度)/(反応前NH濃度)}
NOx生成率(%)=100×{(反応後窒素酸化物濃度)/(反応前NH濃度)}
結果を表3に示す。表3に示すとおり、実施例1で得られた触媒は、アンモニア分解活性が高く、窒素酸化物を多量に生成することもなく、可燃性成分の酸化にも有効である。
【0059】
【表3】

【0060】
(比較例2)
比較例1の触媒について、実施例2と同様にして、COおよびHC転化率ならびにアンモニア分解によるNおよびNOx生成率を測定した。結果を表4に示す。表4に示すとおり、比較例1で得られた触媒では、アンモニア分解活性も可燃性成分の酸化活性も低い。
【0061】
【表4】

【0062】
(比較例3)
市販の酸化チタン(石原産業社製 MC−90)60gを、硫酸バナジル(VOSO・nHO;VOSOとして62%含有)15gを90gの純水に溶解した溶液に15時間浸漬した。エバポレーターで水分を除去し、120℃の乾燥器で乾燥した後、空気中480℃で焼成して、チタニア−バナジア触媒(BET比表面積43m/g)を得た。この触媒の活性を実施例1と同様に評価した。ただし、[NH]/[NO]=1.0のガスを12時間流通する温度は450℃とし、450℃、400℃、350℃、300℃および275℃における活性を測定した。結果を表5に示す。表5に示すとおり、この触媒ではCO転化率が低く、温度によっては負の転化率となった。これはエチレンの不完全酸化によりCOが生成されるためと考えられる。
【0063】
【表5】

【0064】
(比較例4)
前記のチタニア−バナジア触媒に、塩化白金酸(HPtCl)を用いて0.02%(質量基準)のPtを担持し、0.02%Pt/チタニア−バナジア触媒を得て、その活性を比較例3と同様に評価した。結果を表6に示す。表6に示す通り、CO除去性能はある程度改善するが、450℃でもCO転化率は40%程度にすぎない。
【0065】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、原動機などの燃焼機器から排出される燃焼排ガスや化学プロセスの排ガスなどに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素および炭化水素など可燃性成分の浄化に利用できる。窒素酸化物に対して過剰量のアンモニアが添加された場合にも漏出するアンモニア量が低く抑制されるので、窒素酸化物濃度の時間変動の大きい燃焼排ガスやプロセス排ガスの処理に特に有用である。また、一酸化炭素や炭化水素類も酸化除去できるので、酸化触媒を別置することなく、有害成分の同時浄化が可能となって、環境面および経済面に優れる。
【0067】
また、本発明の触媒は、排ガス中のアンモニアおよび可燃性成分の除去にも有効であり、これらの成分を含有する排ガスの浄化にも適用できる。また、本発明の触媒は、公知の脱硝触媒と併用することもできる。例えば、排ガスを、まず、酸化チタン−酸化バナジウム−酸化タングステン触媒などの公知の触媒に通じ、次いで本発明の触媒に通じるように構成した場合には、次の効果が得られる。まず、前段の触媒で脱硝反応が完結しなかった場合には、本発明の触媒に通じるガスには窒素酸化物、アンモニアおよび可燃性成分が含まれることになるが、本発明の触媒により、これらのすべてが低減される。前段の触媒で、脱硝反応は完結したがリークアンモニアが残存した場合には、本発明の触媒に通じるガスには、アンモニアおよび可燃性成分が含まれることになるが、本発明の触媒によれば、アンモニアおよび可燃性成分が低減されるとともに、窒素酸化物を増加させることもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素雰囲気下において、アンモニアの存在下に窒素酸化物を還元するとともに、可燃性成分を酸化除去するための触媒であって、酸化チタン、鉄およびタングステンを含有する担体に、パラジウム、イリジウムおよびロジウムから選ばれた少なくとも1種の白金族金属を担持した触媒。
【請求項2】
酸素雰囲気下において、アンモニアを窒素に酸化するとともに、可燃性成分を酸化除去するための触媒であって、酸化チタン、鉄およびタングステンを含有する担体に、パラジウム、イリジウムおよびロジウムから選ばれた少なくとも1種の白金族金属を担持した触媒。
【請求項3】
白金族金属が少なくともパラジウムを含み、パラジウムの割合が担体に対して質量比で0.005〜0.025%である請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
白金族金属が、パラジウムと、イリジウムおよびロジウムから選ばれた少なくとも1種とを含み、イリジウムおよびロジウムから選択された少なくとも1種の割合が、パラジウムに対して質量比で0.5〜5倍である請求項1〜3のいずれかに記載の触媒。
【請求項5】
さらに、硫酸成分を含む請求項1〜4のいずれかに記載の触媒。
【請求項6】
酸素を含む排ガスの浄化方法であって、前記排ガスに、アンモニア及び/又はその前駆体を添加した後、前記排ガスを請求項1および3〜5のいずれかに記載の触媒に流通させ、前記排ガス中の窒素酸化物および可燃性成分を浄化する方法。
【請求項7】
アンモニア及び/又はその前駆体を、排ガス中の窒素酸化物に対して、アンモニアのモル比で0.75〜1.25倍添加する請求項6記載の方法。
【請求項8】
酸素を含む排ガスの浄化方法であって、前記排ガスを請求項2〜5のいずれかに記載の触媒に流通させ、前記排ガス中のアンモニアを窒素に酸化するとともに可燃性成分を浄化する方法。

【公開番号】特開2010−184171(P2010−184171A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28484(P2009−28484)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】