説明

排ガス浄化用触媒及びその製造方法

【課題】 浄化性能が十分に高く且つ高温耐久性に優れた排ガス浄化用触媒を製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】 高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕して得た平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に均一分散しているゾルを、ナノ一次粒子鎖状凝集体又は中空酸化物粉末からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体の表面に供給した後、前記ゾルを乾燥せしめて前記金属酸化物担体に前記コロイド粒子が担持されてなる排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関し、詳しくは、排ガス中のHC、NO、CO等を浄化するための排ガス浄化用触媒並びにその排ガス浄化用触媒を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間を取り巻く環境に存在し得る成分であって人体に影響を及ぼす可能性のある有害ガスの存在が問題視されるようになってきており、例えば排ガス中の有害成分であるHC、NO、CO等をより確実に浄化することが可能な排ガス浄化用触媒の開発が望まれている。
【0003】
このような背景の下で、排ガスを浄化するための各種の触媒が開発されており、例えば特開平9−155192号公報(特許文献1)には、助触媒と、担体上に担持された貴金属とからなる排ガス浄化用触媒であって、助触媒がセリウム酸化物とジルコニウム酸化物とが互いに固溶した酸化物固溶体を含む粒子であり、該粒子中のセリウム酸化物に対するジルコニウム酸化物の固溶度が50%以上で且つ該粒子を構成する結晶子の平均径が100nm以下であることを特徴とする排ガス浄化用触媒が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載されている排ガス浄化用触媒は、焼成して得た複合酸化物助触媒粉末と担体粉末とを混合することによって得ており、このような複合酸化物助触媒粉末及び担体粉末はサブミクロンから数ミクロンの粒径を有する2次凝集体を形成しているため、助触媒の偏在等によって浄化性能の向上に限界があった。
【0004】
また、特開平10−202101号公報(特許文献2)には、セリウム、アルミニウム及びジルコニウムの各イオンを含む混合溶液に、アルカリ性溶液と過酸化水素水とを添加して複合酸化物の前駆体が分散した懸濁液を形成し、該懸濁液に比表面積の大きな担体を添加して混合物とし、該混合物を焼成して形成されたことを特徴とする複合酸化物担持触媒担体が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載されている複合酸化物担持触媒担体にあっては、複合酸化物助触媒と担体とをナノレベルオーダーで均質混合できる点で優れているものの、複合酸化物助触媒の機能を発揮させるために必要な焼成工程における焼成温度が低いと反応及び固溶が十分に進行せず、逆に焼成温度が高いと粒成長や複合酸化物助触媒成分と担体成分との反応が発生してしまい、いずれにせよ触媒性能の向上に限界があった。
【0005】
さらに、特開2002−1120号公報(特許文献3)には、中空状酸化物粉末と中実状酸化物粉末を含む担体と、該担体に担持された触媒活性を有する金属又は金属酸化物とよりなることを特徴とする排ガス浄化用触媒が開示されている。しかしながら、特許文献3に記載されている排ガス浄化用触媒は、中空状酸化物粉末と中実状酸化物粉末とを乾式混合法や湿式混合法で混合する方法や、ゾルゲル法や沈殿法によって中空状酸化物粉末の表面に中実状酸化物粒子を析出させる方法によって得ており、前者の方法では中空状酸化物粉末及び中実状酸化物粉末がサブミクロンから数ミクロンの粒径を有する2次凝集体を形成しているため、浄化性能の向上に限界があった。また、後者の方法では、中実状酸化物粉末に複合酸化物助触媒としての機能を発揮させるために必要な焼成工程における焼成温度が低いと反応及び固溶が十分に進行せず、逆に焼成温度が高いと粒成長や複合酸化物助触媒成分と担体成分との反応が発生してしまい、いずれにせよ浄化性能の向上に限界があった。
【0006】
排ガス中の有害成分に対する規制が益々強化される昨今の状況下にあって、このような有害成分をより確実に浄化することが可能な排ガス浄化用触媒に要求される触媒性能は厳しくなる一方であり、より浄化性能が高く且つ高温耐久性に優れた排ガス浄化用触媒の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平9−155192号公報
【特許文献2】特開平10−202101号公報
【特許文献3】特開2002−1120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、浄化性能が十分に高く且つ高温耐久性に優れた排ガス浄化用触媒を製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を高度に粉砕して得た複合金属酸化物からなるコロイド粒子のゾルを特定の金属酸化物担体の表面に供給して担持せしめることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第一の排ガス浄化用触媒の製造方法は、高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕して得た平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に均一分散しているゾルを、金属種の気相状態からの凝縮酸化によって合成されたナノ一次粒子鎖状凝集体からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体の表面に供給した後、前記ゾルを乾燥せしめて前記金属酸化物担体に前記コロイド粒子が担持されてなる排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする方法である。
【0010】
また、本発明の第二の排ガス浄化用触媒の製造方法は、高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕して得た平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に分散しているゾルを、エマルジョン燃焼法によって合成された中空酸化物粉末からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体の表面に供給した後、前記ゾルを乾燥せしめて前記金属酸化物担体に前記コロイド粒子が担持されてなる排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする方法である。
【0011】
上記本発明の第一及び第二の排ガス浄化用触媒の製造方法においては、前記ゾルが、前記複合金属酸化物凝集体を直径100μm以下のマイクロビーズを用いて粉砕して得たものであることが好ましい。
【0012】
また、上記本発明の第一及び第二の排ガス浄化用触媒の製造方法は、前記金属酸化物担体及び/又は前記コロイド粒子の表面に貴金属を担持せしめる担持工程を更に含んでいることが好ましい。
【0013】
本発明の第一の排ガス浄化用触媒は、高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕して得た平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に均一分散しているゾルを、金属種の気相状態からの凝縮酸化によって合成されたナノ一次粒子鎖状凝集体からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体の表面に供給した後、前記ゾルを乾燥せしめることによって前記金属酸化物担体に前記コロイド粒子が担持されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の第二の排ガス浄化用触媒は、高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕して得た平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に分散しているゾルを、エマルジョン燃焼法によって合成された中空酸化物粉末からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体の表面に供給した後、前記ゾルを乾燥せしめることによって前記金属酸化物担体に前記コロイド粒子が担持されていることを特徴とするものである。
【0015】
上記本発明の第一及び第二の排ガス浄化用触媒においては、前記ゾルが、前記複合金属酸化物凝集体を直径100μm以下のマイクロビーズを用いて粉砕して得たものであることが好ましい。
【0016】
また、上記本発明の第一及び第二の排ガス浄化用触媒においては、前記金属酸化物担体及び/又は前記コロイド粒子の表面に貴金属が更に担持されていることが好ましい。
【0017】
なお、本発明によって浄化性能が十分に高く且つ高温耐久性に優れた排ガス浄化用触媒が得られるようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、金属酸化物担体に担持される複合金属酸化物の触媒や助触媒としての機能は、その均質性に依存する。本発明にかかる複合金属酸化物は、高温焼成によって均質化された複合金属酸化物凝集体を粉砕して得られているため、従来のゾルゲル法や沈殿法によって得られる複合金属酸化物より均質性に優れており、その機能が最大限に発揮される。また、従来のように金属酸化物担体に担持される複合金属酸化物が凝集していると、担体の一部にしか複合金属酸化物粒子が被覆されないため、触媒や助触媒として機能すべき複合金属酸化物が有効利用されない。それに対して、本発明においては、平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が、凝集のない分散状態(ゾル状態)で多孔質又は中空状の金属酸化物担体の表面に供給されるため、触媒や助触媒として機能すべき複合金属酸化物のコロイド粒子が担体上に均質に被覆され、触媒や助触媒として有効利用される。さらに、従来のように複合金属酸化物が凝集して担体の細孔径より大きくなってしまっていると、複合金属酸化物粒子は担体の細孔内に入ることができないため、結果的に担体の2次凝集体表面にゾル粒子が凝集してしまい、均質な被覆状態にはならない。それに対して、本発明においては、担体の中心細孔直径が複合金属酸化物からなるコロイド粒子の粒径よりも大きいため、コロイド粒子の均質な被覆が細孔内にも形成され、しかもコロイド粒子が相互に接触しにくいため、その粒成長も十分に抑制される。したがって、本発明においては、複合金属酸化物からなるコロイド粒子の触媒や助触媒としての機能の向上と、その被覆の均質性による有効利用との相乗効果により、浄化性能が十分に高く且つ高温耐久性に優れた排ガス浄化用触媒が得られるようになると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、浄化性能が十分に高く且つ高温耐久性に優れた排ガス浄化用触媒を効率良く且つ確実に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0020】
先ず、本発明において後述する金属酸化物担体の表面に供給するゾルについて説明する。すなわち、本発明にかかるゾルは、高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕して得た平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に均一分散している分散液(懸濁液)である。
【0021】
本発明において用いられる複合金属酸化物としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、酸化鉄、希土類元素酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び貴金属酸化物からなる群から選択される2種以上の複合金属酸化物が好ましい。希土類元素酸化物としては、セリウム、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム等の酸化物が挙げられ、アルカリ金属酸化物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等の酸化物が挙げられ、アルカリ土類金属酸化物としては、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム等の酸化物が挙げられ、貴金属酸化物としては、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム等の酸化物が挙げられる。
【0022】
このような本発明において用いられる複合金属酸化物としては、得られる複合金属酸化物粒子が排ガス浄化用触媒としてより有効に機能するという観点から、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、酸化鉄、セリア、ランタナ、ネオジア、イットリア、酸化バリウム、酸化リチウム及び酸化カリウムからなる群から選択される2種以上の複合金属酸化物が好ましく、中でも、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア及びシリカからなる群から選択される少なくとも一種を含有する複合金属酸化物であることが特に好ましい。
【0023】
また、本発明において用いられる2種以上の金属酸化物の組み合わせとしては、特に制限されないが、得られる複合金属酸化物粒子が排ガス浄化用触媒としてより有効に機能するという観点から、セリア/ジルコニア固溶体のような酸素吸放出剤、チタン酸バリウム、バリウムアルミネートのようなNOx吸着剤を含む複合酸化物、パラジウム系ペロブスカイトのような貴金属を含む複合酸化物等が挙げられる。
【0024】
なお、このような各種の複合金属酸化物における金属酸化物の組成比は特に制限されず、その用途等に応じて適宜調整される。
【0025】
本発明においては、上記の複合金属酸化物からなり且つ高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕することによって、平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子を得る。
【0026】
このような高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を得る具体的な方法は特に制限されないが、例えば、酸化して前述の複合金属酸化物となる2種以上の金属の塩を含有する溶液を高速攪拌しながらアルカリ性物質を添加することにより前駆体沈殿物を得た後、得られた前駆体沈殿物を高温焼成することにより均質化された複合金属酸化物凝集体が得られる。
【0027】
このような金属の塩としては、前記の金属の硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯塩(例えば、硝酸アルミニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸セリウム、酢酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、四塩化チタン、シュウ酸チタニルアンモニウム、硫酸チタニル、硝酸イットリウム)等の水溶性の塩が好適に用いられる。また、金属塩溶液を調製するための溶媒としては、特に制限されず、水、アルコール等の各種溶媒が挙げられる。さらに、アルカリ性物質としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられるが、焼成時に容易に分離できるアンモニアが特に好ましい。
【0028】
また、前駆体沈殿物を高温焼成する際における焼成条件としては、特に制限されないが、酸化雰囲気(例えば、空気)中において400〜1000℃程度の温度で10〜600分程度焼成するという条件が好ましい。
【0029】
このような本発明で用いる複合金属酸化物凝集体は、直径20nm以下(より好ましくは2〜10nm)の一次粒子(結晶子)の凝集体であることが必要である。一次粒子の直径が20nmを超えていると、粉砕しても平均粒径が20nm以下のコロイド粒子を得ることができず、結果として浄化性能及び高温耐久性に十分に優れた排ガス浄化用触媒が得られない。なお、複合金属酸化物の二次凝集体の平均粒径は特に制限されないが、200nm以下であることが好ましい。
【0030】
本発明において、複合金属酸化物凝集体を粉砕し、平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に均一分散しているゾルを得る方法は特に限定されず、公知の粉砕方法、分級方法、分散方法等が適宜用いられるが、直径100μm以下(特に好ましくは30〜50μm)のマイクロビーズを用いて複合金属酸化物凝集体を粉砕し、分散媒中に分散せしめる方法が特に好ましい。このように特定のマイクロビーズを用いて本発明にかかるゾルを得ると、複合金属酸化物からなるコロイド粒子がナノレベルで均一に混合され、極めて均一なゾルが得られる傾向にある。このようなマイクロビーズの直径が100μmを超えていると、平均粒径が20nm以下であるコロイド粒子、更にはナノレベルの均一混合状態が達成されず、結果として浄化性能及び高温耐久性に十分に優れた排ガス浄化用触媒が得られにくくなる傾向にある。また、このようなマイクロビーズの直径は、複合金属酸化物の二次凝集体の平均粒径の250〜1000倍のものが好ましい。マイクロビーズの直径が前記下限未満では分散の効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると平均粒径が20nm以下であるコロイド粒子が得られにくくなる傾向にある。なお、マイクロビーズの材質は特に制限されず、例えばジルコニア、ガラス等が挙げられる。
【0031】
また、本発明において用いる分散媒は、前記複合金属酸化物からなるコロイド粒子を分散させることができる液体であればよく、特に制限されないが、水、アルコール等が好適に用いられる。また、かかる分散媒に他の成分を添加する必要は特にないが、酢酸等の酸、アンモニア等の塩基、緩衝剤等を適宜添加して分散媒のpHを調整してもよい。
【0032】
さらに、本発明にかかるゾルにおける複合金属酸化物からなるコロイド粒子の含有量(固形分濃度)は特に制限されず、後述する金属酸化物担体の表面に担持せしめるコロイド粒子の量等に応じて適宜調整されるが、0.1〜50質量%程度であることが好ましい。
【0033】
次に、本発明において担体として用いられる金属酸化物担体について説明する。すなわち、本発明においては、
(i)金属種の気相状態からの凝縮酸化によって合成されたナノ一次粒子鎖状凝集体からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体(多孔質金属酸化物担体)、或いは、
(ii)エマルジョン燃焼法によって合成された中空酸化物粉末からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体(中空金属酸化物担体)、
を担体として用いる。
【0034】
このような金属酸化物担体を構成する金属酸化物としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、酸化鉄、希土類元素酸化物、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物からなる群から選択される1種以上の金属酸化物が好ましく、排ガス浄化用触媒の担体としてより有効に機能するという観点から、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、酸化鉄、セリア、ランタナ、ネオジア、イットリア、酸化バリウム、酸化リチウム及び酸化カリウムからなる群から選択される1種以上の金属酸化物がより好ましく、中でも、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア及びシリカからなる群から選択される単純酸化物、或いはそれらと希土類元素酸化物、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物との複合金属酸化物が特に好ましい。さらに、高比表面積と高耐熱性との双方がより高水準に達成される傾向にあることから、金属酸化物担体を構成する金属酸化物としては、アルミナ、希土類元素添加アルミナ、アルカリ金属添加アルミナ、アルカリ土類金属添加アルミナが特に好ましい。
【0035】
また、本発明において用いられる金属酸化物担体はいずれも、前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有していることが必要であり、前記コロイド粒子の平均粒径の2倍以上の中心細孔直径を有していることがより好ましい。このように担体の中心細孔直径がコロイド粒子の粒径よりも大きいと、コロイド粒子の均質な被覆が細孔内にも形成され、しかも触媒内におけるガスの拡散性も良好となることから、複合金属酸化物からなるコロイド粒子の触媒や助触媒としての機能の向上と、その被覆の均質性による有効利用との相乗効果により、得られる排ガス浄化用触媒の浄化性能が十分に高くなる。このような金属酸化物担体は、細孔容量が大きく、0.5cc/g以上の細孔容量を有していることがより好ましい。
【0036】
このような本発明にかかる金属酸化物担体(i)(金属種の気相状態からの凝縮酸化によって合成されたナノ一次粒子鎖状凝集体からなる多孔質金属酸化物担体)を得る方法としては、例えば、T.Tani et al.,"Evolution of the Morphology of Zinc Oxide/Silica Particles Made by Spray Combustion", J.Am.Ceram.Soc.,vol.87,No.3,p.365-370,(2004)に記載されている気相合成法が好適に採用される。
【0037】
このように金属種(金属微粒子、クラスタ等)の気相状態からの凝縮酸化によって多孔質金属酸化物を合成する気相合成法によれば、一般にナノサイズの一次粒子が鎖状に凝集した構造の二次粒子からなる多孔質金属酸化物粉末(ナノ一次粒子鎖状凝集体)となるので、共沈法等の湿式合成法で得られる金属酸化物粉末と比較すると、一次粒子どうしの接触面積が小さい。そのため、このようなナノ一次粒子鎖状凝集体においては粒成長が抑制され、比表面積の低下が十分に抑制される。さらに、このようなナノ一次粒子鎖状凝集体は、合成時に高温を経ているため、共沈法等の湿式合成法で得られる金属酸化物粉末より耐熱性にも優れている。
【0038】
このような気相合成法としては、気相火炎法、噴霧火炎法、プラズマ法、レーザー法等が例示されるが、火炎を熱源としておりエネルギー効率のよい気相火炎法、噴霧火炎法が好ましく、中でも、金属元素を含む有機溶液を噴霧燃焼させる噴霧火炎法が好ましい。噴霧火炎法によれば、ガス原料を用いる気相火炎法に比べて原料選択の自由度が高く、また複数種の原料の混合も容易である。
【0039】
気相合成法として噴霧火炎法を用いる場合、原料として、有機金属錯体、金属アルコキシド、金属塩化物、金属硫酸塩、金属酢酸塩、金属プロピオン酸塩等の有機溶媒に可溶な金属化合物を用いることができる。また、有機溶媒は特に制限されず、用いる原料の溶解性、合成条件等を考慮して、炭化水素、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エーテル、エステル等から選択して用いることができる。さらに、水、過酸化水素、アンモニア水等の無機溶媒を混合することも可能である。なお、溶媒中の原料濃度は、特に制限されないが、合成速度の観点から0.1モル/L以上であることが好ましい。
【0040】
このような噴霧火炎法による具体的な合成条件は特に制限されず、必要な合成速度、火炎温度等に応じて、溶液流量、噴霧ガス種、噴霧ガス流量、補助火炎用ガス種、補助火炎用ガス流量、燃焼補助ガス種、燃焼補助ガス流量等を適宜設定すればよい。
【0041】
また、本発明にかかる金属酸化物担体(ii)(エマルジョン燃焼法によって合成された中空酸化物粉末からなる中空金属酸化物担体)を得る方法としては、例えば、T.Tani et al.,"Morphology of Oxide Particles Made by the Emulsion Combustion Method", J.Am.Ceram.Soc.,vol.86,No.6,p.898-904,(2003)、特開2000−203810号公報、特開2002−1120号公報に記載されているエマルジョン燃焼法が好適に採用される。
【0042】
このような中空酸化物粉末は、合成時に高温を経ているため、共沈法等の湿式合成法で得られる金属酸化物粉末より耐熱性にも優れている。
【0043】
このようなエマルジョン燃焼法においては、原料となる金属元素を含む水溶液又は水分散液が有機溶媒中に分散してなるW/O型エマルジョンを噴霧燃焼することにより中空酸化物粉末を製造することができる。
【0044】
現時点ではこの原因は明らかではないが、表面酸化膜形成速度が大きいために、粒子収縮の小さい段階で粒子表面に表面酸化膜が形成され、結果として非常に肉薄の多孔質中空体となると推察される。
【0045】
このようなW/O型エマルジョンの噴霧燃焼においては、上記のように一つの分散粒子径が一つの反応の場となるが、エマルジョン中の分散粒子径が100nmよりも小さいと表面酸化膜形成前に粒子が完全に収縮してしまい、中空状とはならないため、好ましくない。一方、分散粒子径が10μmよりも大きいと、反応場が大きくなりすぎて不均質になる可能性があり好ましくない。エマルジョン中の分散粒子径が100nm〜10μmの範囲であれば、製造される金属酸化物からなる中空状粒子の外径が20〜2000nmとなる。外径が20nmより小さいと中空部が存在しなくなり、2000nmを超える中空状粉末を上記方法で製造することは困難である。
【0046】
また、噴霧燃焼時の燃焼温度は1000℃以下(より好ましくは700〜900℃)とすることが好ましい。燃焼温度が1000℃を超えると生成物の一部が粒成長して中空構造が破壊するおそれがあり、また比表面積が低下する傾向にあるので好ましくない。他方、燃焼温度が低すぎると、有機成分が完全に燃焼せず、炭素成分が残留し易くなる傾向にある。
【0047】
このようなエマルジョン燃焼法において使用する金属元素の原料としては、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属塩化物塩、錯塩等の水溶性の金属塩を用いることができる。そしてW/Oエマルジョンは、この金属塩の水溶液と有機溶媒とを分散剤を介して攪拌することで形成できる。使用する有機溶媒としては、ヘキサン、オクタン、ケロシン、ガソリン等、水溶液とW/Oエマルジョンを形成可能な有機溶媒であればよい。また、使用する分散剤の種類及び添加量は特に限定されず、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれでもよく、水溶液、有機溶媒の種類及び必要とするエマルジョンの分散粒子径に応じて、分散剤の種類及び添加量を変化させればよい。
【0048】
さらに、W/Oエマルジョンの噴霧燃焼雰囲気は特に限定されないが、酸素が充分でないと不完全燃焼によって有機溶媒中の炭素成分が残留し易くなる傾向にあるため、エマルジョン中の有機溶媒が完全燃焼できる程度の酸素(空気)を供給することが好ましい。
【0049】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法においては、前述の複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に均一分散しているゾルを、上記多孔質又は中空状の金属酸化物担体の表面に供給した後、前記ゾルを乾燥せしめて本発明の排ガス浄化用触媒を得る。
【0050】
ここで金属酸化物担体の表面にゾルを供給する具体的な方法は特に制限されず、例えば、前記ゾルに担体を浸漬する方法や、前記ゾルをスプレー等により担体表面にコーティングする方法が好適に採用される。また、金属酸化物担体の表面に供給するゾルの量は特に制限されず、得られる排ガス浄化用触媒の要求性能等に応じて適宜調整されるが、金属酸化物担体100質量部に対して担持されるコロイド粒子の量が0.1〜50質量部程度であることが好ましい。コロイド粒子の担持量が前記下限未満では、コロイド粒子により得られる触媒活性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒活性が飽和すると共にコストが高騰する傾向にある。
【0051】
本発明において、金属酸化物担体の表面に供給されたゾルを乾燥させる乾燥処理の具体的な条件は特に制限されず、例えば、80〜200℃程度の温度で1〜24時間程度の時間をかけて乾燥せしめる常温又は加熱乾燥、液体窒素を用いて0°以下の温度に凍結させた後に減圧下で乾燥せしめる凍結乾燥といった手法が適宜採用される。
【0052】
また、本発明においては、上記の乾燥工程の後に焼成工程を含んでいてもよく、かかる焼成工程においては排ガス浄化用触媒を400〜1000℃程度の温度で1〜10時間程度の時間保持することが好ましい。このような焼成工程を採用することにより、担体の比表面積低下をより確実に抑制できる傾向にある。
【0053】
さらに、本発明においては、前記金属酸化物担体及び/又は前記コロイド粒子の表面に貴金属(貴金属微粒子)を担持せしめることがより好ましい。かかる担持工程において用いられる貴金属は特に制限されず、Pt、Pd、Rh、Ru、Au、Ag、Os、Irからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属が挙げられ、中でも触媒活性の観点からPt、Rh、Pd、Irが好ましく、Ptが特に好ましい。また、排ガス浄化用触媒に担持される貴金属の量も特に制限されないが、前記コロイド粒子が担持されている金属酸化物担体100質量部に対して担持される貴金属の量が0.1〜10質量部程度であることが好ましい。貴金属の量が上記下限未満では、貴金属により得られる触媒活性が不十分となる傾向にあり、他方、上記上限を超えると、貴金属による触媒活性が飽和すると共にコストが高騰する傾向にある。さらに、貴金属を担持せしめる具体的な方法も特に制限されず、例えば、前記コロイド粒子が担持された金属酸化物担体を貴金属塩の溶液に接触せしめ、更に必要に応じて還元処理及び/又は焼成処理を施すといった方法が適宜採用される。また、担持される貴金属微粒子の粒径も特に制限されないが、平均粒径が0.1〜10nm程度であることが一般的である。
【0054】
以上説明した本発明の方法によって得られる本発明の排ガス浄化用触媒においては、前述の金属酸化物担体の表面に前記複合金属酸化物からなるコロイド粒子(貴金属を担持させた場合は更に貴金属微粒子)がナノレベルの均一状態で担持されている。このような本発明の排ガス浄化用触媒は、粉末の状態で使用してもよいが、必要に応じて成形して使用してもよい。成形する手段はどのようなものでも良いが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIP等が好ましい。また、その形状は使用箇所、方法に応じて決めることができ、例えば円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状等が挙げられる。
【0055】
さらに、本発明の排ガス浄化用触媒の具体的な使用方法は特に制限されず、処理対象となる有害成分を含む気体と触媒とをバッチ式或いは連続的に接触させることによって有害成分の浄化が達成される。なお、処理対象となる有害成分としては、特に制限されないが、排ガス中のNO、CO、HC、SO等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
硝酸セリウム水溶液(Ce濃度:1.0mol/L)とオキシ硝酸ジルコニル水溶液(Zr濃度:1.0mol/L)とを金属イオンモル比がCe:Zr=50:50になるように混合した。得られた混合溶液にセリウムイオンの1.1モル倍のHを含有するH水溶液を添加し、十分に攪拌した。その後、混合溶液にアンモニア水を加え(添加量:中和当量の1.1倍)、前駆体沈殿を得た。得られた前駆体沈殿を遠心分離し、110℃に12時間保持して乾燥した後、大気中で400℃に3時間保持して仮焼成し、更に700℃に5時間保持して焼成してセリア(CeO)−ジルコニア(ZrO)固溶体(Ce/Zr=50/50(モル比)、以後「CZ」という)からなる複合金属酸化物凝集体を得た。得られた複合金属酸化物凝集体(CZ凝集体)の1次粒子の平均粒径は8nm、2次凝集体の平均粒径は200nmであった。
【0058】
次に、得られたCZ凝集体を、直径50μmのジルコニア製マイクロビーズ及び寿工業株式会社製「ウルトラアペックスミル」を用いて水溶液中で120分間粉砕及び混合して分散させ、平均粒径が15nmの均質なCZコロイド粒子が均一分散しているCZゾル溶液を得た。
【0059】
また、金属酸化物担体として、以下のようにして噴霧火炎法により合成したアルミナのナノ一次粒子鎖状凝集体を用いた。すなわち、アルミニウムアルコキシドのアルコール溶液(Al濃度:0.5mol/L)を2流体ノズルを用いて噴霧し、ノズル周囲に配置したメタン/酸素予混合火炎のバーナーで着火し、溶液の噴霧火炎を形成した。その結果、噴霧火炎中での気相反応により、アルミナからなるナノ一次粒子鎖状凝集体が生成された。得られたナノ一次粒子鎖状凝集体(アルミナ多孔質担体)の1次粒子の平均粒径は20nm、2次凝集体の平均粒径は300nm、中心細孔直径は30nmであった。
【0060】
次いで、前記で得られたCZゾル溶液(濃度:固形分10wt%)中に噴霧火炎法で合成したアルミナ多孔質担体を加え、十分に湿式混合せしめた。次に、得られたスラリーを蒸発乾固させ、表面にCZコロイド粒子が均一に担持されているアルミナ多孔質担体を得た。CZコロイド粒子の担持量は、アルミナ多孔質担体100質量部に対して10質量部であった。
【0061】
続いて、CZコロイド粒子が担持されているアルミナ多孔質担体を白金ジニトロジアンミン水溶液(Pt濃度:5.0wt%)に含浸せしめた後、得られたスラリーを蒸発乾固させ、更に大気中で300℃に3時間保持して焼成して白金及びCZコロイド粒子が担持されているアルミナ多孔質担体からなる触媒粉末を得た。白金の担持量は、CZコロイド粒子が担持されているアルミナ多孔質担体100質量部に対して1質量部であった。得られた触媒粉末を金型プレス(1トン/cm)で圧粉成形し、粉砕して直径0.5〜1mmのペレット状の排ガス浄化用触媒を得た。
【0062】
(実施例2)
金属酸化物担体として、以下のようにしてエマルジョン燃焼法により合成した中空アルミナ粉末を用いるようにした以外は、実施例1と同様にしてペレット状の排ガス浄化用触媒を得た。すなわち、硝酸アルミニウム水溶液(濃度:1mol/L)と、界面活性剤(第一工業製薬社製、ソルゲン90)入りのケロシン(濃度:5wt%)とを65:35(体積比)の割合で混合し、高速攪拌してW/O型エマルジョンを得た。そしてこのようにして得られたW/O型エマルジョンを2流体ノズルを用いて噴霧し、ノズル周囲に配置したメタン/酸素予混合火炎のバーナーで着火し、溶液の噴霧火炎を形成した。その結果、燃焼熱によってW/O型エマルジョンの個々の水滴中で溶媒蒸発及び酸化反応が発生し、アルミナからなる殻厚10nmの中空アルミナ粉末(ナノシェル中空アルミナ)が生成された。このようにして得られたナノシェル中空アルミナ(アルミナ多孔質担体)の1次粒子の平均粒径は300nm、2次凝集体の平均粒径は6μm、中心細孔直径は100nmであった。
【0063】
(比較例1)
マイクロビーズを用いた分散処理を行わず、実施例1において得られたCZ凝集体をそのまま噴霧火炎法で合成したアルミナ多孔質担体と湿式混合せしめるようにした以外は、実施例1と同様にしてペレット状の排ガス浄化用触媒を得た。
【0064】
(比較例2)
金属酸化物担体として、硝酸アルミニウム水溶液(Al濃度:1.0mol/L)からの沈殿反応によって合成した高比表面積アルミナ多孔体(1次粒子の平均粒径:6nm、2次凝集体の平均粒径:1μm、中心細孔直径:8nm)を用いるようにした以外は実施例1と同様にしてペレット状の排ガス浄化用触媒を得た。
【0065】
(比較例3)
硝酸セリウム及びオキシ硝酸ジルコニウムを含有する水溶液(Ce濃度:1.0mol/L、Zr濃度:1.0mol/L)に、噴霧火炎法で合成したアルミナ多孔質担体を加え(添加量:水溶液から生成するセリア/ジルコニアの量の10倍質量)、十分に湿式混合せしめるようにした以外は実施例1と同様にしてペレット状の排ガス浄化用触媒を得た。
【0066】
<高温耐久性試験及び触媒活性試験>
実施例1〜2及び比較例1〜3で得られたペレット状の排ガス浄化用触媒に対して、ペレット触媒耐久試験装置を用いて以下のようにして高温耐久性試験及び触媒活性試験を行った。
【0067】
すなわち、先ず、表1に示す組成を有するリッチガスとリーンガスを全流量が350ml/minとなるように5分間隔で交互に流した雰囲気中で、実施例1〜2及び比較例1〜3で得られた各ペレット状の排ガス浄化用触媒1.5gを1000℃に5時間保持した。
【0068】
【表1】

【0069】
次に、かかる高温耐久性試験後のペレット状の排気ガス浄化性能を、ペレット触媒耐久試験装置を用いてダイナミックストイキ昇温試験により以下のようにして評価した。すなわち、表2に示す組成を有するリッチガスとリーンガスを全流量が7000ml/minとなるように1秒間隔で交互に流した雰囲気中で、実施例1〜2及び比較例1〜3で得られた各ペレット状の排ガス浄化用触媒1.5gを12℃/minの昇温速度で加熱していき、各温度(入りガス温度)におけるHC、CO及びNOxに対する浄化率を連続的に測定した。
【0070】
【表2】

【0071】
測定時のSVは約200,000h−1とし、各有害成分(HC、CO、NO)が80%浄化される温度(80%浄化温度)を算出した。なお、自動車用排ガス浄化用触媒の実使用条件においては、排気ガス流速が早いことから排気ガスの触媒内部への拡散が律速になる場合があり、本試験においては拡散律速領域での触媒性能に相当する80%浄化温度を評価指標として用いた。
【0072】
表3に、高温耐久性試験後の各排ガス浄化用触媒のC(HC)に対する80%浄化温度を示す。また、高温耐久性試験後の各排ガス浄化用触媒は、CO及びNOに関しても定性的に同様の浄化性能を示した。
【0073】
【表3】

【0074】
表3に示した結果から明らかな通り、本発明の方法によって得られた本発明の排ガス浄化用触媒(実施例1〜2)によって達成された80%浄化温度は、比較例1〜3で得られた触媒の80%浄化温度よりも低く、高温耐久性に優れた高性能の浄化性能を有していることが確認された。
【0075】
一方、CZ凝集体をゾル化することなくアルミナ多孔質担体に担持せしめた比較例1で得られた触媒においては、CZ粒子が凝集して不均質に担持されており、CZによる触媒活性が有効に活用されていないことが確認された。
【0076】
また、比較例2で得られた触媒においては、アルミナ多孔質担体の細孔径が小さいためにCZコロイド粒子が細孔内部まで入ることができず、CZ粒子が凝集して不均質に担持されており、CZによる触媒活性が有効に活用されていないことが確認された。
【0077】
さらに、比較例3で得られた触媒においては、CZを金属塩の状態でアルミナ多孔質担体に担持せしめているためある程度均質ではあるが、反応及び固溶が不十分で組成が不均質なため、CZによる本来の触媒機能が十分には発現されていないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明によれば、浄化性能が十分に高く且つ高温耐久性に優れた排ガス浄化用触媒を効率良く且つ確実に製造することが可能となる。したがって、本発明の方法は、浄化性能及び高温耐久性に優れた排ガス浄化用触媒の製造方法として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕して得た平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に均一分散しているゾルを、金属種の気相状態からの凝縮酸化によって合成されたナノ一次粒子鎖状凝集体からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体の表面に供給した後、前記ゾルを乾燥せしめて前記金属酸化物担体に前記コロイド粒子が担持されてなる排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項2】
高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕して得た平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に分散しているゾルを、エマルジョン燃焼法によって合成された中空酸化物粉末からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体の表面に供給した後、前記ゾルを乾燥せしめて前記金属酸化物担体に前記コロイド粒子が担持されてなる排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項3】
前記ゾルが、前記複合金属酸化物凝集体を直径100μm以下のマイクロビーズを用いて粉砕して得たものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物担体及び/又は前記コロイド粒子の表面に貴金属を担持せしめる担持工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項5】
高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕して得た平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に均一分散しているゾルを、金属種の気相状態からの凝縮酸化によって合成されたナノ一次粒子鎖状凝集体からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体の表面に供給した後、前記ゾルを乾燥せしめることによって前記金属酸化物担体に前記コロイド粒子が担持されていることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
高温焼成によって均質化した複合金属酸化物凝集体を粉砕して得た平均粒径が20nm以下である複合金属酸化物からなるコロイド粒子が分散媒中に分散しているゾルを、エマルジョン燃焼法によって合成された中空酸化物粉末からなり且つ前記コロイド粒子の平均粒径より大きい中心細孔直径を有している金属酸化物担体の表面に供給した後、前記ゾルを乾燥せしめることによって前記金属酸化物担体に前記コロイド粒子が担持されていることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記ゾルが、前記複合金属酸化物凝集体を直径100μm以下のマイクロビーズを用いて粉砕して得たものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記金属酸化物担体及び/又は前記コロイド粒子の表面に貴金属が更に担持されていることを特徴とする請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。

【公開番号】特開2006−159134(P2006−159134A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356908(P2004−356908)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】