説明

排ガス浄化用触媒

【課題】 貴金属元素の使用を低減しつつ、高温下または酸化還元変動下、さらには、長期使用時において、Coの優れた触媒活性を発現することのできる、排ガス浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】 Alを含有する酸化物にCoを混合することにより前駆体を調製し、その前駆体を、酸化還元雰囲気において焼成することにより、排ガス浄化用触媒を調製する。また、この排ガス浄化用触媒において、Coの含有量を1〜10重量%とする。この排ガス浄化用触媒を使用すれば、Coを活性成分として使用できるため、貴金属元素を低減しながら、低コストで、高温下または酸化還元変動下、長期にわたって優れた触媒活性を発現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用エンジンなどの排ガスを浄化するための排ガス用浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関から排出される排気ガスには、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などが含まれており、これらを浄化するための排ガス浄化用触媒が知られている。
これらを浄化するための触媒として、活性成分である貴金属(Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)など)が、セリア系複合酸化物、ジルコニア系複合酸化物、ペロブスカイト複合酸化物またはアルミナなどの耐熱性酸化物に、担持または固溶している排ガス浄化用触媒が種々知られている。
【0003】
しかし、Rhなどの貴金属元素は、一般的に高価であるため、工業的には、なるべく少量で、ガス浄化性能を有効に発現させることが求められている。
そこで、貴金属を不含有の触媒として、例えば、MgAlスピネルを含有する担体を硝酸コバルト水溶液に浸漬し、乾燥後、空気中で焼成することにより得られる、Co担持MgAlからなる触媒が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−212229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1に記載の触媒では、高温下または酸化還元変動下、さらには、長期使用時において、MgAlに担持されたCoが、スピネル型構造のMgAlの表面を移動、合体することにより粒成長を生じる。その結果、触媒活性が低下して、その排ガス浄化性能(とりわけ、NOxの浄化性能)が低下するという不具合がある。
本発明の目的は、貴金属元素の使用を低減しつつ、高温下または酸化還元変動下、さらには、長期使用時において、Coの優れた触媒活性を発現することのできる、排ガス浄化用触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の排ガス浄化用触媒は、Alを含有する酸化物にCoを混合することにより前駆体を調製し、前記前駆体を、酸化還元雰囲気において焼成することにより得られ、Coの含有量が1〜10重量%であることを特徴としている。
また、本発明の排ガス浄化用触媒では、Alを含有する前記酸化物が、スピネル構造を有することが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の排ガス浄化用触媒によれば、前駆体が酸化還元雰囲気において焼成され、また、Coの含有量が1〜10重量%であるため、Coの一部または全部が、Alを含有する酸化物と固溶体を形成する。そのため、Coが、Alを含有する酸化物に対して、酸化雰囲気下で固溶し、還元雰囲気下で析出する固溶再生(自己再生)を効率的に繰り返す。その結果、Alを含有する酸化物に対するCoの分散状態が、良好に保持される。
【0008】
そのため、長期にわたって、Coの粒成長による触媒活性低下を防止することができ、高い触媒活性を保持することができる。
したがって、本発明の排ガス浄化用触媒を使用すれば、Coを活性成分として使用できるため、貴金属元素を低減しながら、低コストで、高温下または酸化還元変動下、長期にわたって優れた触媒活性を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例および比較例の600℃におけるNOx浄化率を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の排ガス浄化用触媒を得るには、まず、Alを含有する酸化物(以下、アルミニウム系酸化物とする。)にCoを混合することにより、前駆体酸化物を調製する。
アルミニウム系酸化物としては、例えば、アルミナ単体、アルミナを結晶構造の一部として含有する酸化物などが挙げられる。
アルミナ単体としては、例えば、αアルミナ、θアルミナ、γアルミナなどが挙げられ、好ましくは、比表面積が大きいアルミナ(θアルミナ、γアルミナ)が挙げられる。
【0011】
αアルミナは、結晶相としてα相を有する。αアルミナの具体的な市販品としては、例えば、住友化学社製の「AKP−53 高純度アルミナ」などが挙げられる。このようなαアルミナは、例えば、アルコキシド法、ゾルゲル法、共沈法などの方法によって得ることができる。
θアルミナは、結晶相としてθ相を有し、αアルミナに遷移するまでの中間(遷移)アルミナの一種である。θアルミナの具体的な市販品としては、例えば、プロキャタリゼ社製の「SPHERALITE 531P」などが挙げられる。このようなθアルミナは、例えば、市販の活性アルミナ(γアルミナ)を、大気中にて、900〜1100℃で、1〜10時間熱処理することによって得ることができる。
【0012】
γアルミナは、結晶相としてγ相を有する。γアルミナとしては、特に限定されず、例えば、排ガス浄化用触媒などに用いられている公知のものが挙げられる。
また、これらのアルミナにLaおよび/またはBaが含まれるアルミナを用いることもできる。Laおよび/またはBaを含むアルミナは、特開2004−243305号の段落番号〔0073〕の記載に準拠して、製造することができる。
【0013】
アルミナを結晶構造の一部として含有する酸化物としては、例えば、下記一般式(1)で表わされるスピネル型複合酸化物などが挙げられる。
MO・nAl (1)
(式中、Mは、Mg、FeおよびNiから選択される少なくとも1種の元素を示し、nは、0.5〜6を示す。)
上記一般式(1)において、Mは、Mg、FeおよびNiから選択される少なくとも1種の元素を示している。これらの元素は、単独でもよく、また、2種類以上併用もできる。
【0014】
また、上記一般式(1)において、Mは、好ましくは、Mgであり、その場合、スピネル型複合酸化物は、例えば、下記一般式(1´)で示される、いわゆるマグネシアスピネルである。
MgO・nAl (1´)
(式中、nは、0.5〜6を示す。)
そして、上記一般式(1)で表わされるスピネル型複合酸化物は、特に制限されることなく、複合酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などによって、製造することができる。
【0015】
共沈法では、例えば、上記した各元素の塩を所定の化学量論比で含む混合塩水溶液を調製し、この混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈させた後、得られた共沈物を乾燥後、熱処理する。
各元素の塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、りん酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。また、混合塩水溶液は、例えば、各元素の塩を、所定の化学量論比となるような割合で水に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
【0016】
その後、この混合塩水溶液に、中和剤を加えて共沈させる。中和剤としては、例えば、アンモニア、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン類などの有機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどの無機塩基が挙げられる。なお、中和剤は、その中和剤を加えた後の溶液のpHが6〜10程度となるように加える。
【0017】
そして、得られた共沈物を、必要により水洗し、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、500〜1000℃、好ましくは、600〜950℃で熱処理することにより、上記一般式(1)で表わされるスピネル型複合酸化物を得る。
また、クエン酸錯体法では、例えば、クエン酸と上記した各元素の塩とを、上記した各元素に対し化学量論比よりやや過剰のクエン酸水溶液を加えてクエン酸混合塩水溶液を調製し、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させた後、得られたクエン酸錯体を仮焼成後、熱処理する。
【0018】
各元素の塩としては、上記と同様の塩が挙げられ、また、クエン酸混合塩水溶液は、例えば、上記と同様に混合塩水溶液を調製して、その混合塩水溶液に、クエン酸の水溶液を加えることにより、調製することができる。
その後、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させる。乾固は、形成されるクエン酸錯体が分解しない温度、例えば、室温〜150℃程度で、水分を除去する。これによって、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させることができる。
【0019】
そして、形成されたクエン酸錯体を仮焼成後、熱処理する。仮焼成は、例えば、真空または不活性雰囲気下において、250〜350℃で加熱する。その後、例えば、500〜1200℃、好ましくは、600〜1000℃で熱処理することにより、上記一般式(1)で表わされるスピネル型複合酸化物を得る。
また、アルコキシド法では、例えば、上記した各元素のアルコキシドを、上記した化学量論比で含む混合アルコキシド溶液を調製し、この混合アルコキシド溶液に、水を加えて加水分解することにより、沈殿物を得る。
【0020】
各元素のアルコキシドとしては、例えば、各元素と、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシなどのアルコキシとから形成される(モノ、ジ、トリ)アルコラートや、下記一般式(2)で示される各元素の(モノ、ジ、トリ)アルコキシアルコラートなどが挙げられる。
E[OCH(R)−(CH−OR (2)
(式中、Eは、各元素を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示し、iは、1〜3の整数、jは、2〜4の整数を示す。)
アルコキシアルコラートは、より具体的には、例えば、メトキシエチレート、メトキシプロピレート、メトキシブチレート、エトキシエチレート、エトキシプロピレート、プロポキシエチレート、ブトキシエチレートなどが挙げられる。
【0021】
そして、混合アルコキシド溶液は、例えば、各元素のアルコキシドを、上記した化学量論比となるように有機溶媒に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
有機溶媒としては、各元素のアルコキシドを溶解できれば、特に制限されないが、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類などが挙げられる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0022】
次いで、得られた沈殿物を、蒸発乾固し、その後、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、500〜1000℃、好ましくは、600〜950℃で熱処理することにより、上記一般式(1)で表わされるスピネル型複合酸化物を得る。
上記したアルミニウム系酸化物のうち、好ましくは、アルミナを結晶構造の一部として含有する酸化物が挙げられ、具体的に好ましくは、上記一般式(1´)で示されるマグネシアスピネルが挙げられる。アルミナを結晶構造の一部として含有する酸化物を用いることにより、後述する酸化還元雰囲気における焼成により、アルミニウム系酸化物に担持されたCoを酸化物中に効率よく固溶させることができる。そのため、アルミニウム系酸化物に対するCoの分散状態を一層良好に保持することができる。その結果、本発明の排ガス浄化用触媒のNOx浄化率を向上させることができる。
【0023】
そして、アルミニウム系酸化物にCoを混合するには、例えば、アルミニウム系酸化物にCoを担持させる。
アルミニウム系酸化物にCoを担持させるには、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、Coを含む塩の溶液を調製し、この含塩溶液を、アルミニウム系酸化物に含浸させた後、焼成すればよい。
【0024】
含塩溶液としては、上記した例示の塩の溶液を用いてもよく、また実用的には、硝酸塩水溶液、塩化物水溶液などが挙げられる。具体的には、硝酸コバルト水溶液、塩化コバルト水溶液などが挙げられる。
アルミニウム系酸化物にCoを含浸させた後は、例えば、50〜200℃で1〜48時間乾燥し、さらに、大気中、300〜1000℃で1〜12時間焼成する。これにより、Coが担持されたアルミニウム系酸化物からなる前駆体酸化物を得る。
【0025】
また、アルミニウム系酸化物がαアルミナ、θアルミナあるいはγアルミナである場合には、そのαアルミナ、θアルミナあるいはγアルミナの製造工程において、アルミニウム塩水溶液からアンモニアなどを用いて沈殿させるときに、Co塩の溶液を加えて、αアルミナ、θアルミナあるいはγアルミナとともにCoを共沈させて、その後、焼成する方法が例示される。
【0026】
また、アルミニウム系酸化物がアルミナを結晶構造の一部として含有する酸化物である場合には、例えば、アルミニウム系酸化物を構成する各元素を含む塩の溶液や混合アルコキシド溶液を共沈あるいは加水分解するときに、Co塩の溶液を加えて、アルミニウム系酸化物の各成分とともにCoを共沈させて、その後、焼成する方法が例示される。
アルミニウム系酸化物に対するCoの担持量(含有量)は、その目的および用途により適宜決定されるが、例えば、Coが担持されたアルミニウム系酸化物(総量)に対して、1〜10重量%、好ましくは、1〜5重量%であり、さらに好ましくは、2〜4重量%である。
【0027】
また、アルミニウム系酸化物は、全体として、すべてのアルミニウム系酸化物にCoが担持されていてもよく、また、Coが担持されているアルミニウム系酸化物と、Coが担持されていないアルミニウム系酸化物との両方を含んでいてもよい。
そして、前駆体酸化物の調製後、前駆体酸化物を、酸化還元雰囲気において焼成する。
具体的には、酸化雰囲気を、例えば、1〜30分、還元雰囲気を、例えば、1〜30分の処理工程を含む1サイクルを設定し、このサイクルを、例えば、1〜20回実行する。これにより、前駆体酸化物を、酸化雰囲気と還元雰囲気とに交互に暴露する。そして、前駆体酸化物の暴露中、各雰囲気温度を、例えば、300〜1000℃、好ましくは、500〜800℃に維持することにより、前駆体酸化物を各雰囲気で焼成する。
【0028】
なお、1サイクルには、酸化雰囲気での処理工程と還元雰囲気での処理工程との間に、前駆体酸化物を不活性雰囲気に暴露する処理工程を含めてもよい。また、上記した各雰囲気は、例えば、下記に示す元素が所定割合で含まれる組成ガスを供給することによって調製することができる。
1 酸化雰囲気:O(1〜100vol%)、CO(0〜99vol%)、HO(高温水蒸気)(0〜20vol%)およびN(残部)を含むガス
2 還元雰囲気:H(1〜100vol%)、CO(0〜20vol%)、CO(0〜100vol%)、HO(高温水蒸気)(0〜20vol%)およびN(残部)を含むガス
3 不活性雰囲気:CO(0〜100vol%)、HO(高温水蒸気)(0〜20vol%)およびN(残部)を含むガス
上記のように、前駆体酸化物を、大気雰囲気に暴露することなく、酸化還元雰囲気において焼成することにより、酸化還元処理の施された、本発明のCo担持アルミニウム系酸化物を得る。
【0029】
そして、本発明のCo担持アルミニウム系酸化物は、そのまま、排ガス浄化用触媒として用いることもできるが、通常、触媒担体上に担持させるなど、公知の方法により、排ガス浄化用触媒として調製される。
触媒担体としては、例えば、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス担体など、公知の触媒担体が挙げられる。触媒担体上に担持させるには、例えば、まず、上記により得られたCo担持アルミニウム系酸化物(酸化還元処理済みのもの)に、水を加えてスラリーとした後、これを触媒担体上にコーティングし、乾燥させ、その後、300〜800℃、好ましくは、300〜600℃で熱処理する。
【0030】
そして、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、前駆体酸化物が、大気雰囲気に暴露されることなく、酸化還元雰囲気において焼成され、また、Coの含有量が1〜10重量%であるため、Coの一部または全部が、アルミニウム系酸化物と固溶体を形成する。そのため、Coが、アルミニウム系酸化物に対して、酸化雰囲気下で固溶し、還元雰囲気下で析出する固溶再生(自己再生)を効率的に繰り返す。その結果、アルミニウム系酸化物に対するCoの分散状態が、良好に保持される。
【0031】
そのため、長期にわたって、Coの粒成長による触媒活性低下を防止することができ、高い触媒活性を保持することができる。
したがって、本発明の排ガス浄化用触媒を使用すれば、Coを活性成分として使用できるため、貴金属元素を低減しながら、低コストで、高温下または酸化還元変動下、長期にわたって優れた触媒活性を発現することができる。
【0032】
本発明の排ガス浄化用触媒は、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関やボイラなどから排出される排気ガスを浄化するための排気ガス浄化用触媒として、好適に使用することができる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<製造例>
製造例1(Co/Al粉末の製造 Co担持量:3.0重量%)
市販のθ−Al粉末に、硝酸コバルト水溶液を含浸させ、110℃で一昼夜乾燥後、電気炉にて、大気中、650℃で1時間熱処理(焼成)することにより、Co/Alで示されるCoが担持されたθ−アルミナ粉末を得た。Co/Al粉末において、Coの担持量(含有量)は、3.0重量%であった。
製造例2(Co/MgAl粉末の製造 Co担持量:3.0重量%)
硝酸マグネシウム Mg換算で0.10モル
硝酸アルミニウム Al換算で0.20モル
上記の成分を、500mL容量の丸底フラスコに加え、超純水100mLを加えて約30分間攪拌溶解させることにより、混合塩水溶液を調製した。次いで、混合塩水溶液を、攪拌中の10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液へ、1分間当たり20滴の速さで滴下して共沈物を得た。滴下終了後、10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の攪拌を1時間続け、その後、一晩放置した。
【0034】
そして、水溶液をろ過することにより、MgAlからなる共沈物を取り出した。ろ過中、共沈物を大量の超純水で洗浄することにより、共沈物に残存するアンモニア成分を取り除いた。その後、共沈物を、110℃で12時間乾燥させた。乾燥後、共沈物を粉砕して粉末状にし、大気雰囲気、850℃で5時間熱処理して、MgAl(マグネシアスピネル)の粉末を得た。
【0035】
次いで、得られたMgAl粉末に、硝酸コバルト水溶液を含浸させ、110℃で一昼夜乾燥後、電気炉にて、大気中、650℃で1時間熱処理(焼成)することにより、Co/MgAlで示されるCoが担持されたMgAl(前駆体酸化物)の粉末を得た。Co/MgAl粉末において、Coの担持量(含有量)は、3.0重量%であった。
製造例3(Co/Ce0.50Zr0.450.05粉末の製造 Co担持量:3.0重量%)
セリウムメトキシプロピレート[Ce(OCH(CH)CHOCH]をCe換算で0.1molと、ジルコニウムメトキシプロピレート[Zr(OCH(CH)CHOCH]をZr換算で0.09molと、イットリウムメトキシプロピレート[Y(OCH(CH)CHOCH]をY換算で0.01molと、トルエン200mLとを配合して、攪拌溶解することにより、混合アルコキシド溶液を調製した。さらに、この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水80mLを滴下して、加水分解した。
【0036】
加水分解された溶液から、トルエンおよび脱イオン水を留去・蒸発乾固した。これを、60℃で24時間通風乾燥させた後、電気炉にて、450℃で3時間熱処理(焼成)することにより、Ce0.50Zr0.450.05Oxideで示されるセリア系複合酸化物の粉末を得た。
次いで、得られたCe0.50Zr0.450.05Oxide粉末に、硝酸コバルト水溶液を含浸させ、110℃で一昼夜乾燥後、電気炉にて、大気中、650℃で1時間熱処理(焼成)することにより、Co/Ce0.50Zr0.450.05Oxideで示されるCoが担持されたセリア系複合酸化物の粉末を得た。Co/Ce0.50Zr0.450.05Oxide粉末において、Coの担持量(含有量)は、3.0重量%であった。
製造例4(Co/Al粉末の製造 Co担持量:10.0重量%)
市販のθ−Al粉末に、硝酸コバルト水溶液を含浸させ、110℃で一昼夜乾燥後、電気炉にて、大気中、650℃で1時間熱処理(焼成)することにより、Co/Alで示されるCoが担持されたθ−アルミナ粉末を得た。Co/Al粉末において、Coの担持量(含有量)は、10.0重量%であった。
製造例5(Co/Al粉末の製造 Co担持量:20.0重量%)
市販のθ−Al粉末に、硝酸コバルト水溶液を含浸させ、110℃で一昼夜乾燥後、電気炉にて、大気中、650℃で1時間熱処理(焼成)することにより、Co/Alで示されるCoが担持されたθ−アルミナ粉末を得た。Co/Al粉末において、Coの担持量(含有量)は、20.0重量%であった。
製造例6(Co/MgAl粉末の製造 Co担持量:10.0重量%)
硝酸マグネシウム Mg換算で0.10モル
硝酸アルミニウム Al換算で0.20モル
上記の成分を、500mL容量の丸底フラスコに加え、超純水100mLを加えて約30分間攪拌溶解させることにより、混合塩水溶液を調製した。次いで、混合塩水溶液を、攪拌中の10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液へ、1分間当たり20滴の速さで滴下して共沈物を得た。滴下終了後、10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の攪拌を1時間続け、その後、一晩放置した。
【0037】
そして、水溶液をろ過することにより、MgAlからなる共沈物を取り出した。ろ過中、共沈物を大量の超純水で洗浄することにより、共沈物に残存するアンモニア成分を取り除いた。その後、共沈物を、110℃で12時間乾燥させた。乾燥後、共沈物を粉砕して粉末状にし、大気雰囲気、850℃で5時間熱処理して、MgAl(マグネシアスピネル)の粉末を得た。
【0038】
次いで、得られたMgAl粉末に、硝酸コバルト水溶液を含浸させ、110℃で一昼夜乾燥後、電気炉にて、大気中、650℃で1時間熱処理(焼成)することにより、Co/MgAlで示されるCoが担持されたMgAl(前駆体酸化物)の粉末を得た。Co/MgAl粉末において、Coの担持量(含有量)は、10.0重量%であった。
製造例7(Co/MgAl粉末の製造 Co担持量:20.0重量%)
硝酸マグネシウム Mg換算で0.10モル
硝酸アルミニウム Al換算で0.20モル
上記の成分を、500mL容量の丸底フラスコに加え、超純水100mLを加えて約30分間攪拌溶解させることにより、混合塩水溶液を調製した。次いで、混合塩水溶液を、攪拌中の10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液へ、1分間当たり20滴の速さで滴下して共沈物を得た。滴下終了後、10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の攪拌を1時間続け、その後、一晩放置した。
【0039】
そして、水溶液をろ過することにより、MgAlからなる共沈物を取り出した。ろ過中、共沈物を大量の超純水で洗浄することにより、共沈物に残存するアンモニア成分を取り除いた。その後、共沈物を、110℃で12時間乾燥させた。乾燥後、共沈物を粉砕して粉末状にし、大気雰囲気、850℃で5時間熱処理して、MgAl(マグネシアスピネル)の粉末を得た。
【0040】
次いで、得られたMgAl粉末に、硝酸コバルト水溶液を含浸させ、110℃で一昼夜乾燥後、電気炉にて、大気中、650℃で1時間熱処理(焼成)することにより、Co/MgAlで示されるCoが担持されたMgAl(前駆体酸化物)の粉末を得た。Co/MgAl粉末において、Coの担持量(含有量)は、20.0重量%であった。
<実施例および比較例>
下記実施例および比較例において実施された処理の方法を以下に示す。
1 1000℃酸化還元処理(R/L処理)
不活性雰囲気5分、酸化雰囲気10分、不活性雰囲気5分および還元雰囲気10分の計30分を1サイクルとし、このサイクルを10サイクル、合計5時間繰り返して、酸化物の粉末を、酸化雰囲気と還元雰囲気とに交互に暴露した後、還元雰囲気のまま室温まで冷却する。
【0041】
なお、各雰囲気は、高温水蒸気を含む下記表1に示した組成のガスを、300×10−3/hrの流量で供給することによって調製する。また、雰囲気温度は、約1000℃に維持する。
【0042】
【表1】

【0043】
2 1000℃酸化還元処理(R/L耐久処理)
不活性雰囲気5分、酸化雰囲気10分、不活性雰囲気5分および還元雰囲気10分の計30分を1サイクルとし、このサイクルを10サイクル、合計5時間繰り返して、酸化物の粉末を、酸化雰囲気と還元雰囲気とに交互に暴露した後、還元雰囲気のまま室温まで冷却する。
【0044】
なお、各雰囲気は、高温水蒸気を含む上記表1に示した組成のガスを、300×10−3/hrの流量で供給することによって調製する。また、雰囲気温度は、約1000℃に維持する。
3 1000℃大気処理(Air処理)
酸化物の粉末を、電気炉にて、大気中、1000℃で5時間熱処理(焼成)する。
実施例1(Co/Al粉末 Co担持量:3.0重量% 1000℃R/L処理)
製造例1で得られたCo/Al粉末に対して、上記1000℃R/L処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
実施例2(Co/MgAl粉末 Co担持量:3.0重量% 1000℃R/L処理)
製造例2で得られたCo/MgAl粉末に対して、上記1000℃R/L処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
実施例3(Co/Al粉末 Co担持量:3.0重量% 1000℃R/L処理→1000℃R/L耐久処理)
製造例1で得られたCo/Al粉末に対して、上記1000℃R/L処理を施し、処理後、さらに上記1000℃R/L耐久処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
実施例4(Co/MgAl粉末 Co担持量:3.0重量% 1000℃R/L処理→1000℃R/L耐久処理)
製造例2で得られたCo/MgAl粉末に対して、上記1000℃R/L処理を施し、処理後、さらに上記1000℃R/L耐久処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
実施例5(Co/Al粉末 Co担持量:10.0重量% 1000℃R/L処理)
製造例4で得られたCo/Al粉末に対して、上記1000℃R/L処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
比較例1(Co/Ce0.50Zr0.450.05粉末 Co担持量:3.0重量% 1000℃R/L処理)
製造例3で得られたCo/Ce0.50Zr0.450.05粉末に対して、上記1000℃R/L処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
比較例2(Co/Al粉末 Co担持量:3.0重量% 未処理)
製造例1で得られたCo/Al粉末を、そのまま評価用サンプルとして用いた。
比較例3(Co/MgAl粉末 Co担持量:3.0重量% 未処理)
製造例2で得られたCo/MgAl粉末を、そのまま評価用サンプルとして用いた。
比較例4(Co/Al粉末 Co担持量:3.0重量% 1000℃Air処理)
製造例1で得られたCo/Al粉末に対して、上記1000℃Air処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
比較例5(Co/MgAl粉末 Co担持量:3.0重量% 1000℃Air処理)
製造例2で得られたCo/MgAl粉末に対して、上記1000℃Air処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
比較例6(Co/Ce0.50Zr0.450.05粉末 Co担持量:3.0重量% 1000℃Air処理)
製造例3で得られたCo/Ce0.50Zr0.450.05粉末に対して、上記1000℃Air処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
比較例7(Co/Ce0.50Zr0.450.05粉末 Co担持量:3.0重量% 1000℃R/L処理→1000℃R/L耐久処理)
製造例3で得られたCo/Ce0.50Zr0.450.05粉末に対して、上記1000℃R/L処理を施し、処理後、さらに上記1000℃R/L耐久処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
比較例8(Co/Al粉末 Co担持量:20.0重量% 1000℃R/L処理)
製造例5で得られたCo/Al粉末に対して、上記1000℃R/L処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
比較例9(Co/MgAl粉末 Co担持量:20.0重量% 1000℃R/L処理)
製造例7で得られたCo/MgAl粉末に対して、上記1000℃R/L処理を施すことにより、評価用サンプルを調製した。
比較例10(Co/Al粉末 Co担持量:10.0重量% 未処理)
製造例4で得られたCo/Al粉末をそのまま評価用サンプルとして用いた。
比較例11(Co/MgAl粉末 Co担持量:10.0重量% 未処理)
製造例6で得られたCo/MgAl粉末をそのまま評価用サンプルとして用いた。
比較例12(Co/Al粉末 Co担持量:20.0重量% 未処理)
製造例5で得られたCo/Al粉末をそのまま評価用サンプルとして用いた。
比較例13(Co/MgAl粉末 Co担持量:20.0重量% 未処理)
製造例7で得られたCo/MgAl粉末をそのまま評価用サンプルとして用いた。
<評価試験>
1 NOx浄化率
上記実施例および比較例で得られた各粉末を、常圧固定床流通反応装置内に配置した。触媒床に、下記表2に示す組成のモデルガスを流通させ、前処理として、表2に示す空気燃料比(A/F)14.0のリッチガス中で、600℃10分間保持した後、室温まで一度冷却した。
【0045】
次いで、触媒床温度を室温から600℃まで1800秒で昇温させた後、A/Fを表2に示すように、14.0から15.2まで各A/F保持時間を300秒として変化させ、その間のNOx浄化率を連続的に測定した。各粉末におけるA/F=14.6での浄化率を下記表3および図1に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alを含有する酸化物にCoを混合することにより前駆体を調製し、前記前駆体を、酸化還元雰囲気において焼成することにより得られ、Coの含有量が1〜10重量%であることを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
Alを含有する前記酸化物が、スピネル構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2011−41913(P2011−41913A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192227(P2009−192227)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 文部科学省科学技術振興費 元素戦略プロジェクト『脱貴金属を目指すナノ粒子自己形成触媒の新規発掘』研究による成果
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】