説明

排ガス触媒器を支承するための支承マット

本発明は自動車の排ガスを浄化するために使用される排ガス触媒器を触媒器ケーシング内に支承するための支承マットであって、少なくとも3つの層を有し、引っ張り負荷を吸収する縫い目によって機械的に圧縮されている形式のものに関する。縫い目は耐熱性が排ガス触媒器の稼働時の支承マットの温度よりも小さい縫い糸で構成されている本発明によれば、鉱物性の繊維から成る2つの外側層(1,1′)の間に、捲縮された金属糸から成る弾性的に圧縮可能なフリース(3)が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の排ガスを浄化するために用いられる排ガス触媒器を触媒器ケーシング内に支承するための支承マットであって、少なくとも3つの層を有し、かつ引っ張り負荷を吸収する縫い目によって機械的に圧縮されており、前記縫い目が排ガス触媒器の稼働に際しての支承マットの温度よりも耐熱性の小さい縫い糸で構成されている形式のものに関する。支承マットは排ガス触媒器の周面に配置され、排ガス触媒器と触媒器ケーシングとの間のリングギャップをシールする。縫い目によって圧縮されたもしくは機械的に固められた支承マットは取付けが容易である。触媒がはじめて稼働される場合に装置は加熱され、耐熱性ではない材料から成る縫い糸は熱的に分解し、その結果、支承マットは半径方向で膨脹する。
【0002】
冒頭に記載した特徴を有する支承マットは文献DE19932255A1号明細書によって公知である。この公知の支承マットは鉱物性の繊維から成り、刺子縫いによって補強された、結合手段を持たない面構造体である。鉱物性の繊維としてはステープルファイバ粗糸から成るエンドレスヤーンが使用され、このエンドレスヤーンは引っ張り負荷のもとで刺子縫いによって面構造体に固定される。非耐熱性の縫い糸の熱的な分解によって支承マットはステープルファイバ粗糸に蓄えられた変形エネルギの解放によって膨脹する。鉱物性の繊維を引っ張り応力のもとで面構造物に固定するためには、支承マットを製造するために費用のかかる製造方法が必要である。又、支承マットの膨脹作用にも更なる改善が求められる。
【0003】
これを背景として本発明は、排ガス触媒器のための支承マットであって、排ガス触媒器の稼働開始で解放され、長い時間帯に亙って変化もしない膨脹能を有する支承マットの提供を課題としている。
【0004】
この課題は本発明によれば鉱物性の繊維から成る2つの外側層の間に、捲縮された金属繊維から成る弾性的に圧縮可能なフリースが配置されていることによって解決された。金属糸は有利には皮むきして製造されたエンドレスヤーンである。このエンドレスヤーンは例えば金属棒から皮むきされることができる。これによってきわめて強く捲縮したエンドレスヤーンが形成される。金属糸は例えば鋼から成り、合金であるステンレス鋼から成っていると有利である。
【0005】
縫い糸の熱的な分解後の支承ナットの膨脹は、金属糸から成るフリースの膨脹に起因する。この層の高い膨脹性は排ガス触媒器を持続的にかつ確実に触媒器ケーシング内に保持するために発揮される。又、排ガス触媒器と触媒器ケーシングとの間では、より大きなギャップが確実に橋絡される。
【0006】
外側層の鉱物性繊維としては特に珪酸塩繊維が適している。しかし、鉱物性繊維は、限定されることではないが、ALの高い割合を有するか又は他のセラミック材料から構成されていることもできる。本発明の枠内では、これに限定されることなしに、ステープルファイバ、フィラメント及び/又は細かく切断されたフィラメント、例えばSiOから成るフィラメントを外側層における鉱物性繊維として使用することができる。
【0007】
支承マットの機械的な硬化に必要な縫い目は刺子縫いとして構成可能である。支承マットの均等な圧縮とほぼコンスタントな厚さを保証するためには、縫い目は有利には10mmよりも小さい間隔、有利には5mmよりも小さい間隔で配置される。
【0008】
本発明の有利な実施例では支承マットは3つの層から成り、縫い糸の熱的な分解後に決定可能な圧縮されていない層の厚さ比は1:1:1と1:5:1との間にある。縫い糸によって行なわれた支承マットの圧縮は、有利にはほぼ又は完全にリバーシブルである。この場合、中央の層に使用された金属糸が強すぎる圧縮によって屈曲すること並びにこれに伴う弾性的な特性の損失は回避される必要がある。
【0009】
支承マットの厚さは例えば、排ガス触媒器と触媒器ケーシングとの製作誤差と寸法とに関連している。支承マットの厚さは、典型的な形式では3mmと10mmとの間の領域にある。縫い糸の熱的な分解後、支承マットは金属糸から成るフリースの戻り力に基づき、初期厚さの少なくとも2倍の値に相当する厚さを有する。
【0010】
縫い糸によって行なわれた機械的な圧縮によって支承マットは良好に取付けることができる。触媒器をはじめて稼働させた場合に装置は加熱され、耐熱性ではない材料から成る縫い糸は分解される。縫い糸の材料としては約250℃の温度で炭化によって分解される例えばプラスチックフィラメント又はプラスチックフィラメントから成る糸が適している。支承マットの膨脹は特に捲縮された金属糸から成る弾性的に圧縮可能なフリースによって保証されているので、外側層の鉱物性の繊維は他の観点から選択されることができる。特にステープルファイバを使用した場合には取付けられた支承マットの耐用年限は、支承マットの縁を循環する耐熱性の縫い目によって、個々の繊維が支承マットから離脱することが阻止されることで改善される。
【0011】
以下、本発明の1実施例を示す図に基づき詳細に説明する。
【0012】
図1によれば鉱物性の繊維2から成る2つの外層1,1′の間には捲縮された金属糸4から成る弾性的に圧縮可能なフリース3が配置されている。金属糸は、皮むき、例えば金属棒からの皮むきによって製作可能な強く捲縮されたエンドレスヤーンである。材料としては例えば鋼、特に合金であるステンレス鋼を使用することができる。金属糸から成るフリース3は大きな弾性領域を有し、この弾性領域でフリース3は大きく可逆可能にかつ金属糸の屈曲なしに弾性的に圧縮可能である。これに対し外層1,1′はほぼ非弾性であり、例えば珪酸塩繊維から成っている。
【0013】
圧縮されていない層の厚さ比は1:1:1と1:5:1との間にある。実施例の場合には捲縮された金属糸から成るフリースは圧縮されていない状態で約10mmの厚さを有しているのに対し、外層は例えば約3mmの厚さを有している。
【0014】
図1に示された層から構成された支承マットは図2に示されている。層は刺子縫いとして構成されかつ引っ張り負荷を吸収する縫い目6によって機械的に圧縮されている。縫い目6には、排ガス触媒器が稼働させられている場合の支承マットの温度よりも小さい耐熱性を有する縫い糸7が使用される。縫い糸7としては250℃の温度で炭化によって分解されるプラスチックフィラメント又はプラスチック繊維から成る糸が使用可能である。刺子縫いは10mmよりも小さい間隔で、有利には5mmよりも少ない間隔で配置され、これによって支承マットの一様な圧縮とコンスタントな厚さとが保証される。
【0015】
縫い糸により圧縮された支承マットは本実施例では3mmと10mmとの間の厚さを有している。縫い糸の熱的な分解の後で支承マットは半径方向に膨脹し、圧縮されていない状態で初期厚さの少なくとも2倍の厚さを有している。
【0016】
さらに本実施例では支承マットはその縁部に、支承マットの縁部における個々の鉱物性の繊維の離脱又は突出を長期的に回避するために金属糸から成る環状の耐熱性の縫い目を有していることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】支承マットを構成している層を圧縮されていない状態で示した図。
【図2】断面された本発明による支承マットの1部分の斜視図。
【符号の説明】
【0018】
1,1′ 層
2 鉱物性の繊維
3 フリース
4 金属糸
5 支承マット
6 縫い目
7 縫い糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の排ガスを浄化するために使用される排ガス触媒器を触媒器ケーシング内に支承するための支承マットであって、該支承マットが少なくとも3つの層を有し、引っ張り負荷を吸収する縫い目によって機械的に圧縮されており、前記縫い目が排ガス触媒器の稼働に際しての支承マットの温度よりも耐熱性が小さい縫い糸によって構成されている形式のものにおいて、鉱物性の繊維から成る2つの外側層(1,1′)の間に、捲縮された金属糸から成る弾性的に圧縮可能なフリースが配置されていることを特徴とする、支承マット。
【請求項2】
金属糸(4)が皮むきによって製作されたエンドレスヤーンである、請求項1記載の支承マット。
【請求項3】
外側層の鉱物性の繊維が珪酸塩繊維である、請求項1又は2記載の支承マット。
【請求項4】
前記縫い目が刺子縫いとして構成され、10mmよりも小さい間隔、有利には5mmよりも小さい間隔で配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の支承マット。
【請求項5】
支承マットが3つの層から成り、縫い糸の熱的な分解のあとで決定可能な、圧縮されていない層の厚さ比が1:1:1と1:5:1との間にある、請求項1から4までのいずれか1項記載の支承マット。
【請求項6】
縫い糸によって圧縮された支承マットが3mmと10mmとの間の厚さを有し、縫い糸の熱的な分解後に、金属糸から成るフリースの戻り力に基づき、初期厚さの少なくとも2倍に相当する厚さを有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の支承マット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−517587(P2009−517587A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542625(P2008−542625)
【出願日】平成18年11月11日(2006.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010836
【国際公開番号】WO2007/059869
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508158942)ランゲンドルフ テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】Langendorf Textil GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Grossvichtach 2 u. 4, D−96364 Marktrodach, Germany
【Fターム(参考)】