説明

排出弁装置

【課題】基礎の内部に侵入した水等を外部へ排出することができる排出装置を提供する。
【解決手段】排出弁装置1は、建築物の布基礎10の地表G近くにおいて布基礎10に埋設され、布基礎10の内外を貫通して配置される。排出弁装置1の中空管の内部は排出流路8を構成し、この中空管内には蓋体7が開閉可能に配置されている。蓋体7は通常の状態で排出流路8を閉塞しており、布基礎10の内側となる流入口3から布基礎10の外側となる排出口4側に力が作用した場合にのみ回動して排出流路8を開放し、その逆の場合には回動しない。このため、同排出流路8の内側から外側への水等の移動を許容するとともに、排出流路8の外側から内側への水等の移動を阻止することとなり、布基礎10内側の水等を排出することができるとともに、布基礎10外側の水等が布基礎10内側へ積極的に流入するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎に形成された基礎貫通部に形成された排出流路に設けられ、水等の流体を排出する排出弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎として用いられる布基礎やベタ基礎等は、例えば、矩形状など内側が閉塞する状態で形成されることがある。また、基礎梁によって囲われた領域は建築物の床下部分となるため、防湿を目的として同領域を土間コンクリートで覆うことも多い。
【0003】
一方、これらの基礎の内側(基礎によって区画された領域(建築物の床下となる領域)をいう。)の除湿等を目的として基礎の外側(基礎によって区画された領域外(建築物の外部となる領域)をいう。)と連通する通風口が形成されることが多く、この通風口は地表から一定高さ位置に形成されている(特許文献1)。
【0004】
ところが、大雨等により建築物の周囲が冠水等すると建築物の基礎の外側周囲にも水が迫り、この水が通風口を介して閉塞された基礎内側に侵入する可能性がある。或いは、水かさが更に増して、床上浸水するような場合には通風口の形成位置に関わらず基礎梁を乗り越えて水が閉塞された基礎の内側に侵入することとなる。また、基礎の外側から水が侵入する場合には水だけではなく泥が混ざった泥水の状態で侵入することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−81662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従前の閉塞された基礎内側では建築物の周囲から水が引いた後に通風口を介して排水されることとなるが、通風口は地表から一定高さの位置に形成されているため完全には排水されずに閉塞された基礎内側に水や泥等が残ることとなる。また、建築物の床下が土間コンクリートで覆われている場合には、水が地面に吸い込まれることもないため、基礎内側に長期間水が残存し、建築物に悪影響を与えることが予想される。一方、通風口の位置を地表面にまで下げた場合には、地表近くに基礎の内外を連通する穴が形成されている状態となり、少量の降雨であっても基礎梁で囲われた部分に雨による水が侵入する可能性がある。
【0007】
また、この通風口に虫や小動物等の侵入を防止するための網が形成されている場合、泥が網目部分に詰まったり、或いは一旦基礎内側に侵入した土砂が逆に網に阻まれて基礎外側への排出が阻害される可能性もある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記問題に鑑み、基礎の内側に侵入した水等を外側へ排出することができ、また外側から排出流路を通って基礎部内への侵入を防止することができる排出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、建築物の基礎の地表近くにおいて基礎の内外を貫通する基礎貫通部に形成された排出流路に設けられ、同排出流路の内側から外側への流体の移動を許容するとともに、前記排出流路の外側から内側への流体の移動を阻止する逆流防止弁を備えた排出弁装置を要旨とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記逆流防止弁は、排出流路の内側から外側へ向けて圧力が作用した場合にのみ開放するものである。
請求項3に記載の発明は、前記排出流路は基礎に埋設される管体の内部に設けられている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記排出流路は基礎に連通形成された空間である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基礎の内側に侵入した水等を排出流路を通じて外側へ排出することができ、また外側から排出流路を通って基礎部内への侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】発明の第一実施形態の斜視図。
【図2】図1の縦断面図。
【図3】蓋体の回動を示す説明図。
【図4】布基礎への設置を示す説明図。
【図5】布基礎への設置を示す説明図。
【図6】布基礎への設置を示す説明図。
【図7】発明の第二実施形態の斜視図。
【図8】図7の断面図。
【図9】布基礎への設置を示す説明図。
【図10】布基礎へ埋設された状態を示す説明図。
【図11】発明の第三実施形態の斜視図。(a)は蓋体が閉じた状態、(b)は蓋体が開いた状態。
【図12】(a)は蓋体が閉じた状態の側面図、(b)は蓋体が開いた状態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した排出弁装置の第一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。
図1は排出弁装置を備えた流体排出管1の斜視図であり、図2はその縦断面図である。流体排出管1は、上面2aと上面2aの両側に連続する側面2b及び両側面2bの下端同士を連結する底面2cとからなる矩形筒状に形成された金属製の管体である中空管2を備えている。中空管2の両端は開口されて内部は流体の流路となっており中空管2内部が排出流路を構成する。また、両端の開口のうち一方(図中右側)が流体が中空管2内に流入される流入口3であり、他方の開口(図中左側)が中空管2に流入した流体が排出される排出口4となっている。この流入口3と排出口4との間の長さは流体排出管1が埋設される基礎梁と同じ厚さに形成されており、基礎部を打設し型枠を取り外した状態では、基礎部の両表面に流入口3と排出口4とが開口することとなる。
【0015】
中空管2には排出口4の開口端に隣接する位置にて、対向する両側面2bのうち上面2aに近似する箇所にはそれぞれ回動支持部となる貫通孔5が形成されている。中空管2の内部であってこの両貫通孔5の間には金属製の棒状をなす回動軸6が掛け渡された状態で挿入されており、この回動軸6は中空管2に対して回動自在となっている。また、回動軸6の中央部分(貫通孔5間に掛け渡されている部分)には逆流防止弁を構成する金属製の蓋体7の上端付近が溶接等により固定されている。この蓋体7は、その幅が中空管2の内部空間である排出流路8の幅と略同幅であり、高さは排出流路8の高さよりも少し長く形成された矩形状をなしている。なお、蓋体7はその背面(流入口3側を意味し、背面の反対を前面という。)が回動軸6に固定されている。
【0016】
このため、流体排出管1を水平状態としたとき、蓋体7は排出流路8内で直立することはできず、蓋体7自身の重量により回動軸6に固定された蓋体7の下端部7aが下がり、この下端部7aは回動軸6との固定箇所の鉛直下方よりも排出口4側の位置にて排出流路8内部の底面に当接する位置をとる。すなわち、蓋体7は、上端部7bに対して下端部7aが排出口4側に向いた形で傾斜して排出流路8内に配置されることとなる(図2)。なお、蓋体7の下端部7aが排出流路8の底面に当接するとき、蓋体7の上端部7bが排出流路8の上面に当接するようになっている。
【0017】
一方、蓋体7の背面側から力が作用したときは、蓋体7は自重に抗して下端部7aが回動軸6を回動支点として持ち上げられる形で回動する。つまり、蓋体7は、図3に示すように蓋体7の下端部7aが排出流路8の底面に当接する位置(図3で実線にて示す)と下端部7aが上端部7bとほぼ同じ高さとなる位置(図3に破線で示す)までの範囲が回動可能な範囲となり、下端部7aが排出流路8の底面に当接する位置よりも流入口3側へ向けて回動することはない。したがって、蓋体7は排出流路8において排出口4側にのみ回動し、排出流路8を開放することとなる。
【0018】
次に、この流体排出管1の基礎部への埋設方法について説明する。
流体排出管1を埋設する基礎部として布基礎10を想定する。布基礎10用の型枠11を設置するに際して、予め布基礎10の形成箇所に沿って地面を掘り下げた上で、この箇所に布基礎10用の型枠11を設置する。
【0019】
この布基礎10用の型枠11を設置する際に、流体排出管1を地表G或いは布基礎10の内側に打設される土間コンクリート13の高さに合わせ、かつ流体排出管1が水平となるように型枠11間に配置する。このとき、流体排出管1の流入口3が布基礎10の内側を向く位置に配置する。流体排出管1はその流入口3と排出口4とが型枠11に圧接された状態で型枠11の所定位置に保持されることとなる(図4)。なお、流体排出管1の配置数には限定はなく、例えば布基礎10の一方向にそれぞれ少なくとも1個ずつ配置すればよい。また、流体排出管1の中空管2に形成された貫通孔5にコンクリートが流入するのを防止するため、その貫通孔5の周囲をテープ等により予め目張りしておく(図示しない)。
【0020】
この状態で布基礎10用の型枠11内部にコンクリートを打設すると、図5に示すようにコンクリート12が流体排出管1の周囲を覆うこととなるが、流体排出管1の流入口3と排出口4は型枠11に圧接されており、また貫通孔5もテープによる目張りがなされているため、流体排出管1の内部にコンクリート12は流入しない。そして、打設したコンクリート12が硬化した後に型枠11を取り外すと、図6に示すように流体排出管1の流入口3と排出口4とがそれぞれ布基礎10の壁面から露出し、流体排出管1は布基礎10を貫通した状態、すなわち、流体排出管1は布基礎10の地表G近くに形成された基礎貫通部としての貫通部14に配置されたこととなる。
【0021】
最後に、掘り下げた土を埋め戻し、また布基礎10の内側に土間コンクリート13を打設すると、図6に破線にて示すように流体排出管1の排出流路8の底面が、地表G及び土間コンクリート13の表面と略同一面となる。
【0022】
布基礎10上に建築物が建てられると、流体排出管1の排出流路8は布基礎10の内側と外側とを連通する唯一の連通路となる。そして、流体排出管1の排出流路8内には排出口4にのみ向かって開く蓋体7が設けられている。このため、例えば床下を通る水道管の破裂などの理由により布基礎10の内側に水が排出された場合には、水は床下に堆積されているコンクリート片や土砂等を巻き込んだ泥水(以下、水や泥水をまとめて「水等」という。)となって、流体排出管1の流入口3から中空管2内に侵入し、排出流路8内を通って排出口4へと向かう。排出口4の手前には蓋体7の下端部7aが排出流路8の底面に当接した状態で配置され、排出流路8が閉じられた状態となっている。この蓋体7は排出口4側に向けて開くため、流入口3側からの水圧が蓋体7の下端部7aに作用することにより蓋体7は図2中時計回りに回動して排出流路8を開放し、排出流路8内の水は排出口4を経て布基礎10の外側へと排出される。
【0023】
また、例えば大雨等により建築物の周囲が冠水した場合には、流体排出管1の排出口4の前面にも水等が押し寄せ、蓋体7は前面に押し寄せた水等により流入口3側へ向けて押し付けられる。しかし、蓋体7は下端部7aが排出流路8の底面に当接した位置から流入口3の方向へは回動しないため、蓋体7は排出流路8を閉塞した状態を維持し、排出口4から布基礎10の内側への水等の積極的な侵入を防ぐこととなる。また、蓋体7の前面の水等の量が増加すると水等が蓋体7をより強く流入口3側へ向けて押し付けるため、蓋体7による排出流路8の閉塞がより強固なものとなる。
【0024】
一方、冠水が布基礎10の高さを超えた場合には、いわゆる床上浸水となって、布基礎10の内側へと水等が侵入することとなる。しかし、布基礎10の外側の水位が下がると排出流路8の蓋体7に係る排出口4側から流入口3側への水圧が弱まり、これに伴い布基礎10の内側に侵入した水等による流入口3側から排出口4側への水圧が相対的に高まることとなる。このため、蓋体7はその水圧を受けて排出口4側へと回動し、排出流路8が開放されて布基礎10の内側に溜まっている水等を排出する。したがって、建築物外側の水位が下がるのにあわせて布基礎10の内側の水等も開放された排出流路8を経て排出され、布基礎10の内側に水等が残存することはない。
【0025】
上記実施形態の排出弁装置1によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、排出弁装置1を布基礎10の貫通部14の地表G近くに配置している。したがって、布基礎10の内側の水等を排出することができる。
【0026】
(2)排出弁装置1は、排出口4側へのみ回動可能な蓋体7を備えている。このため、布基礎10の排出流路8の内側から外側への流体の移動を許容するとともに、前記排出流路8の外側から内側への流体の移動を阻止することができる。
【0027】
(3)中空管2に設けた貫通孔5に回動軸6を掛け渡してこれに蓋体7を固定している。したがって、構造が簡単である。
(4)蓋体7は、排出流路8である中空管2内部の高さよりも高い長さを有している。このため、蓋体7の回動時には蓋体7の下端部7aが中空管2の底面に当接してそれ以上回転しなくなるため、逆方向に向けて蓋体が開くことはない。
【0028】
(5)蓋体7は排出口4側からの圧力では開かないため、虫や小動物等の外部からの侵入を防止することができる。
(6)排出流路8内は直線状に形成されており、また網等が形成されていないため、排出流路8の内部で土砂等が目詰まりを起こすことが少ない。
【0029】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 中空管2内における蓋体7の位置は、上記の排出口4側のみならず流入口3側やその中央付近でもよく、また、蓋体7を中空管2内の複数箇所に設けてもよい。
【0030】
○ 蓋体7を中空管2の排出流路8の高さより少し長く形成するのに代えて、蓋体7を排出流路8の高さと略同じ高さとし、蓋体7が流入口3側へ回動しないよう規制するとともに蓋体7と当接して蓋体7と排出流路8との隙間をなくすための密着板を排出流路8の内面に突設してもよい。この場合、密着板は排出流路8を構成する中空管2の内面のうち底面及び両側面に設けると有効である。また、密着板の高さを流入口3から排出口4に向けて順次高くなるように形成すれば密着板に土砂等が堆積しにくくなる。
【0031】
○ 流体排出管1は布基礎10以外のベタ基礎等の基礎梁に設置してもよい。
○ 排出流路8の底面は流入口3と排出口4とが同じか排出口4が低い位置にあればよい。特に、排出流路8の底面を流入口3から排出口4に向けて下るように傾斜を設けると、布基礎10内側の水等を積極的に外側へ排出することができる。
【0032】
○ 上記実施形態の排出弁装置1では全体を金属製として形成したが、樹脂製(例えば塩ビ樹脂、繊維強化樹脂)で形成してもよい。また、一部(例えば中空管2)を金属製とし、一部(例えば回動軸6及び蓋体7)を樹脂製にて形成してもよい。なお、回動軸6及び蓋体7を同じ材質で形成する場合には一体成形とすると製造が容易となる。
【0033】
○ 回動支持部を貫通孔5に代えて、中空管2の両内側面に設けた凹みとしてもよい。そして、回動軸6を少し撓ませながら中空管2内に挿入させ、両凹みの間に掛け渡すものでもよい。
【0034】
次に、排出弁装置の第二実施形態について、第一実施形態と同様に布基礎に適用する例を第一実施形態との相違点を中心として説明する。図7は第二実施形態の排出弁装置21の斜視図、図8はその側面図である。
【0035】
第二実施形態の排出弁装置21は、排出流路に嵌挿される枠体22とこの枠体22に回動可能に支持される蓋体23とを備えている点で第一実施形態と異なっている。なお、本実施形態では、排出流路は布基礎10に形成された基礎貫通部としての貫通部28に形成される。
【0036】
排出弁装置21の枠体22は、矩形枠状に形成された金属製の平面板24を有しており、中央に矩形状の開口24aが形成されている。開口24aに面する各辺からは平面板24が形成する面と直交する方向に向けて矩形筒状の挿入筒体25が一体形成されている。この挿入筒体25の対向する両側面のうち上面に近似する箇所にそれぞれ貫通孔26が形成されている。
【0037】
挿入筒体25の内部であってこの両貫通孔26の間には金属製の棒状をなす回動軸27が掛け渡された状態で挿入されており、この回動軸27は挿入筒体25に対して回動自在となっている。回動軸27の中央部分には逆流防止弁を構成する金属製の蓋体23の背面側上端付近が溶接等により固定されている。この蓋体23は、その幅が挿入筒体25の幅と略同幅であり、高さは挿入筒体25の高さよりも少し長く形成された矩形状をなしている点は第一の実施形態と同様である。また、蓋体23は、上端部23bに対して下端部23aが排出口30側に向いた形で傾斜し、下端部23aが挿入筒体25の底面に当接した状態で排出流路28内に配置されており、回動軸27との固定箇所を中心として下端部23aが排出口30側に回動することも第一実施形態と同様である。
【0038】
次に、第二実施形態の排出弁装置21の基礎部への取付方法について説明する。
布基礎10用の型枠11を設置するに際して、予め布基礎10の形成箇所に沿って地面を掘り下げた上で、この箇所に布基礎10用の型枠11を設置する点は第一実施形態と同様である。この布基礎10用の型枠11を設置する際に、第一実施形態にて使用した流体排出管1に変えて、布基礎10に排出流路となる貫通部28を形成するための貫通部用筒体(図示略)を地面或いは布基礎10の内側に打設される土間コンクリート13の高さに合わせ、かつ貫通部用筒体が水平となるように型枠11間に配置する。なお、この貫通部用筒体はその断面が前記挿入筒体25と略同一に形成された部材であり、布基礎10のコンクリート12が硬化した後に除去するものである。
【0039】
貫通部用筒体を型枠11に設置した後、第一実施形態と同様の手順でコンクリート12を打設し、コンクリート12が硬化したところで型枠11を取り外すともに貫通部用筒体を設置箇所から抜き取る。また、布基礎10周囲の土を埋め戻し、布基礎10の内側に土間コンクリート13を打設することは第一実施形態と同じである。これにより、地面近くには布基礎10の内外を貫通して開口する基礎貫通部である貫通部28が形成された布基礎10が形成される(図9)。この貫通部28内が水等の流体が通る排出流路であり、貫通部28のうち布基礎10の内側が流入口29となり、外側が排出口30となる。
【0040】
続けて、図10に示すように貫通部28に排出弁装置21を装着する。具体的には排出弁装置21の挿入筒体25を貫通部28の排出口30側に内嵌させて平面板24の背面が布基礎10の表面に当接するまで押し込めばよい。なお、平面板24が地面に干渉する場合には適度に地面を掘り下げておき、貫通部28に排出弁装置21を装着した後に埋め戻せばよい。
【0041】
そうすると、布基礎10の貫通部28でもある排出流路の排出口30側には、排出口30にのみ向かって開く蓋体23を備えた排出弁装置21が設けられたこととなる。蓋体23は、第一実施形態と同様に流入口29から排出口30方向への流体の力を受けた場合にのみ排出流路を開放するため、上記第一実施形態と同様の作用を発揮することとなる。
【0042】
上記実施形態の排出弁装置1によれば、第一実施形態の効果に加え以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、布基礎10に直接貫通部28を形成した後、すなわち布基礎10の打設・硬化後に排出弁装置21を設置することができる。このため、後付けすることができる。また、取り付け後の取り外しも容易となる。
【0043】
(2)排出弁装置21は貫通部28でもある排出流路の排出口30側に取り付けられているため状態等を目視することができ、メンテナンス等が容易である。
(3)また、排出弁装置21の大きさもコンパクトになるため、運搬や保管の取り扱いが容易となり、製造コスト等が低廉となる。
【0044】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 貫通部28に挿入する部分を挿入筒体25としたが、筒体形状に限られず、例えば対向する側面部だけでもよい。貫通孔26を形成し、回動軸27を回動自在に支持させることができる形状であればよい。
【0045】
○ 挿入筒体25はこれを貫通部28に内嵌させて排出弁装置21を貫通部28に固定させる機能も有しているが、例えば、平面板24を布基礎10表面にネジ等で固定する等の手法によって排出弁装置21を貫通部28に対して固定させてもよい。
【0046】
○ 排出弁装置1を排出口30側に設置したが、流入口29側に設けてもよく、また排出口30側と流入口29の双方に配置してもよい。なお、流入口29側に排出弁装置1を設ける場合には枠体22は同じものを使用することができるが、蓋体23の枠体22に対して回動方向を逆となるように設ける必要がある。
【0047】
○ 枠体22の平面板24は、排出弁装置1の貫通部28(排出流路)への挿入位置を規定するものであるため平面板24を省略してもよい。
次に、排出弁装置の第三実施形態について、上記各実施形態と同様に布基礎部に適用する例を第二実施形態との相違点を中心として説明する。図11は第三実施形態の排出弁装置の斜視図、図12はその側面図である。
【0048】
この第三実施形態は、逆流防止弁を構成する蓋体を排出流路の外側に設置した点に特徴がある。第三実施形態の排出弁装置31は枠体32と蓋体33とを備えていることは第二実施形態と同じであるが、この両者の配置関係が異なっている。図11(a)に示すように、枠体32は平面板34を有している。この平面板34の中央には開口34aが形成され、開口34aに面する各辺からは平面板34が形成する面と直交する方向に向けて矩形筒状の挿入筒体35が一体形成されている。
【0049】
平面板34における開口34a上部の両側には取付部36が突出形成されておりその中心には支持孔36aが形成されている。この両支持孔36aの間には回動軸37が回動可能に掛け渡されており、回動軸37に蓋体33の上端33b付近の背面が固定されていることは上記各実施形態と同様である。
【0050】
図11(b)に示すように、蓋体33は平面板34の開口34aよりも大きく形成されており、かつ蓋体33の表面側の下端部33aには錘38が突出して取り付けてある。また、平面板34の開口34a周囲には蓋体33との重なり部分を周回する形で盛り上がり形成された密着板39が配置されている。この密着板39は蓋体33が回動軸37から垂下された状態で蓋体33の背面に密着し、蓋体33と平面板34との間の隙間を塞ぎ、平面板34に形成された開口34aを閉止するものである。
【0051】
また、蓋体33の下端部33aには錘38が外側に突出して形成されているため、この錘38により蓋体33は下端部33aが平面板34側に傾いた状態で垂下されることになり、密着板39との密着をより確実なものとすることができる(図12(a)(b))。
【0052】
第三実施形態の排出弁装置31の基礎部への取付方法については第二実施形態と同様であり、作用も同様である。
但し、第三実施形態では、蓋体33が排出流路の外側に取り付けられる構成となるため、挿入筒体35の形状も容易に変更することができ、また挿入筒体35それ自体を省略することもでできる。このようにすれば、排出流路の形状に影響されず、例えば排出流路が円形の場合でも使用することができる。また、錘38により蓋体33の閉止が確実となる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 蓋体33の形状は、排出流路の排出口を覆うことができればよいため、形状は上記矩形状に限られない。例えば排出流路が円形であれば蓋体33も円形とすることができる。
【0054】
○ 蓋体33に設けた錘38に代えて、蓋体33を下端部33aに向かうほど肉厚とすることにより蓋体33が垂下された状態でその背面が平面板34側に傾いた状態とし、密着板39と密着させる構成でもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、21、31・・排出弁装置、2・・中空管、3・・流入口、4・・排出口、7、23、33・・逆流防止弁としての蓋体、8・・排出流路である中空管の内部空間、10・・基礎部としての布基礎、14・・基礎貫通部としての貫通部、28・・基礎貫通部及び排出流路としての貫通部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎の地表近くにおいて基礎の内外を貫通する基礎貫通部に形成された排出流路に設けられ、同排出流路の内側から外側への流体の移動を許容するとともに、前記排出流路の外側から内側への流体の移動を阻止する逆流防止弁を備えた排出弁装置。
【請求項2】
前記逆流防止弁は、排出流路の内側から外側へ向けて圧力が作用した場合にのみ開放するものである請求項1に記載の排出弁装置。
【請求項3】
前記排出流路は基礎に埋設される管体の内部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排出弁装置。
【請求項4】
前記排出流路は基礎に連通形成された空間であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排出弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−159583(P2010−159583A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2525(P2009−2525)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(305044235)株式会社WASC基礎地盤研究所 (9)
【出願人】(000128038)株式会社エヌ・エス・ピー (33)
【Fターム(参考)】