説明

排出物の回収箱及び該回収箱を利用した排出物収集システム

【課題】資源ごみ等の排出物の回収を効率よく行う。
【解決手段】回収箱8は回収車により運搬可能であり、排出物を種類毎に蓄積するための複数の区画81を備えている。回収箱はさらに、蓄積された排出物蓄積量を検出するレベルセンサ82と、回収箱の位置をGPS機能によって検出する位置検出手段85とを備え、レベルセンサが、排出物の蓄積量が回収すべき所定の値であることを検出すると、制御手段87の制御の下で、回収量が適性であることを表す情報と、位置検出手段によって検出された位置情報とを、送信手段83を介して情報管理センタに送信する。記憶手段86に記憶された、回収箱を識別する回収箱識別情報も送信され、情報管理センタは、識別情報によって回収すべき回収箱の形式を識別し、その形式の未蓄積の回収箱を保有する運搬車両を回収に向かわせることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、運搬車両により運搬可能な排出物の回収箱及び該回収箱を利用した排出物収集システムに関する。より詳細には、排出物の回収箱は、種類毎に排出物を蓄積するための複数の区画を有し、かつ排出物の蓄積量を検出して情報管理センタに送信するよう構成され、かつ、排出物回収時に運搬車両により運搬されるよう構成されていることを特徴としている。
【0002】
【従来の技術】従来の排出物の収集は、複数の排出物回収所に、排出物の有無又は蓄積量に拘わらず、排出物回収車が定期的に巡回して、排出物の収集を行っている。そして、作業員が、回収所に集められた排出物を回収所に常駐の回収箱から回収車の荷台に移し、これにより、排出物のみが回収車に搭載されて、排出物処理設備に搬送されている。このような排出物回収の手法は、リサイクル可能な資源ごみにおいても同様である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように、排出物の蓄積量に拘わらず定期的に巡回収集していること、及び作業員が排出物のみを回収所から回収車に移し換えていることから、排出物の回収に多大なコストを必要としており、排出物処理の全体コストの約6割を占めている。したがって、排出物収集コストの削減のために、より効率的な排出物回収が求められている。本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、効率的に排出物収集を可能にするための排出物回収箱及び排出物収集システムを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明は、運搬可能な排出物の回収箱であって、排出物をその種類毎に蓄積するための仕切られた複数の区画と、回収箱に蓄積された排出物の蓄積量を検出するセンサ手段と、情報を情報管理センタに送信する送信手段と、回収箱の位置をGPS機能によって検出する位置検出手段と、センサ手段によって、排出物の蓄積量が回収すべき所定の値であることが検出されたときに、それを表す回収量適性情報と、位置検出手段によって検出された位置情報とを、送信手段を介して情報管理センタに送信させるよう制御する制御手段とを備えることを特徴とする回収箱を提供する。
【0005】上記した本発明に係る回収箱において、該回収箱はさらに、回収箱を識別する回収箱識別情報を備え、制御手段は、回収量適性情報及び位置検出情報とともに回収箱識別情報を、送信手段を介して情報管理センタに送信させるよう制御するよう構成されていることが好ましい。また、制御手段はさらに、センサ手段によって検出された排出物の蓄積量を、位置情報及び回収箱識別情報とともに、送信手段を介して情報管理センタに定期的に送信させるよう構成されていることが好ましい。
【0006】上記した本発明に係る回収箱において、該回収箱はさらに、回収箱に排出物を投入する利用者が利用者識別情報を入力する利用者入力手段と、回収箱の蓋を開閉駆動する蓋駆動手段と、情報管理センタからの情報を受信する受信手段とを備え、制御手段はさらに、利用者入力手段から入力された利用者識別情報を送信手段を介して情報管理センタに送信させ、かつ、情報管理センタから受信手段を介して利用者が適切な利用者であることを示す情報を受け取ったときにのみ、蓋駆動手段を制御して蓋を開放可能とするよう構成されており、これにより、適正な利用者のみが排出物を回収箱に投入可能とすることもできる。また、回収箱にさらに、回収箱に排出物を投入する利用者が利用者識別情報を入力する利用者入力手段と、回収箱の蓋を開閉駆動する蓋開閉駆動手段と、回収箱が回収位置に配置されたときに、該回収位置において回収箱を利用可能な利用者の利用者識別情報を、情報管理センタから受けとる受信手段と、受信手段によって受け取られた利用者識別情報を記憶する記憶手段とを備え、制御手段はさらに、利用者入力手段から入力された利用者識別情報を送信手段を介して情報管理センタに送信させ、かつ、利用者入力手段からの利用者識別情報が記憶手段に記憶されている場合にのみ、蓋開閉駆動手段を制御して蓋を開放可能とするよう構成することによって、適正な利用者のみが排出物を回収箱に投入可能としてもよい。
【0007】本発明はまた、上記した構成を有する回収箱の複数からなる回収箱と、該回収箱を運搬する運搬車両と、排出物処理施設と、回収箱から回収量適性情報及び位置情報を受け取ったときに、運搬車両に対して、当該回収箱を収集するよう指示を通信する情報管理センタとからなることを特徴とする排出物収集システムを提供する。上記した本発明に係る排出物収集システムにおいて、複数の回収箱は、複数の異なる大きさにグループ分けされ、グループ毎に同一の回収箱識別番号を有しており、運搬車両は、GPS機能の位置検出手段と、該位置検出手段によって検出された運搬車両の位置情報を情報管理センタに通信する手段とを備え、情報管理システムは、回収箱から回収量適正情報、位置情報、及び回収箱識別情報を受け取ったときに、当該回収箱と同一の大きさの排出物未蓄積の回収箱を保持している運搬車両であって、当該回収箱の位置の近傍に居る運搬車両をモニタ画面に表示させる手段を備えることが好ましい。これにより、オペレータが回収箱の収集に適する運搬車両を最適に選択することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を、排出物を資源ごみとした場合の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る排出物収集システムの概略を示した図であり、該排出物収集システムは、運搬車両7と、資源ごみの回収箱8と、情報管理センタ50と、リサイクル施設60とを備えている。運搬車両7、回収箱8、及びリサイクル施設60は、情報管理センタ50に、適宜の公共通信回線又は専用通信回線を介して通信可能に接続されている。運搬車両7は、資源ごみが未蓄積の回収箱を荷台に積んで回収作業を開始し、そして、該未蓄積の回収箱を資源ごみを蓄積済のものと交換することによって、回収作業を実行する。なお、図1中、実線は情報の流れを示し、点線は運搬車両による排出物の移動を示している。
【0009】図2の(A)及び(B)はそれぞれ、本発明に係る資源ごみの回収箱8の外観図及び情報処理機能を示したブロック図を示している。図2の(A)に示すように、回収箱8は、開閉式の蓋80が設けられ、また、資源ごみ蓄積部を構成する複数の区画81を備えている。これら区画81には、資源ごみの種類、例えばプラスチック廃棄物、ペットボトル、アルミニウム、鉄、色付きガラス、及び透明ガラス等のリサイクル可能な排出物の種類毎に、投入蓄積される。区画81の仕切は移動可能であり、その地域等における蓄積される資源ごみの種類毎の蓄積見込量に応じて仕切が移動調節され、これにより、すべての区画81の資源ごみの蓄積レベルが常時ほぼ同一となるように調整することができる。
【0010】回収箱8には、図2の(B)に示すように、蓄積された資源ごみの蓄積量を検出するためのレベルセンサ82が設けられている。該レベルセンサ82は、反射型又は透過形の光電スイッチ等によって構成され、資源ごみの蓄積レベルがほぼ満杯に近くなって回収すべきレベルに達した場合に、それを検出する。回収すべきレベルの80%程度のレベルに達したときに、それを検出するようにしてもよい。レベルスイッチ82とともに、重量測定用のロードセルを備えてもよい。また、回収箱8には、図2の(B)に示すように、情報管理センタ50との間で情報を通信する通信手段(送信/受信手段)83、蓋開閉駆動手段84、GPS機能を備えた位置検出手段85、ROM/RAM等の記憶手段86、及び、制御手段87を備えている。制御手段87は、記憶手段86に予め記憶されているプログラムに基づいて、回収箱8における情報処理を行い、また、通信手段83を介する情報管理センタ50との間の通信、及び蓋開閉駆動手段84の駆動を制御する。
【0011】回収箱8の一部には、資源ごみを投入しようとする利用者が、適正な利用者であることを示すための入力を行う利用者入力手段88が備えられている。利用者入力手段88は、利用者に配布されたカードを挿入することによって該カードに記憶された利用者IDを読み取る形式のものであっても、利用者自身が利用者に割り当てられた利用者IDを入力するキーボードであってもよい。このような利用者IDは、情報管理センタ50側の記憶装置に予め記憶されており、利用者が利用者入力手段88から利用者IDを入力したときに、その利用者IDを情報管理センタ50に送って適切な利用者か否かを判定し、その結果が回収箱8に返送される。このように構成する代わりに、回収箱8を回収位置に配置したときに、情報管理センタ5から、当該位置の回収箱を利用可能な利用者のIDを回収箱に送信して、記憶手段86に予め記憶するようにしてもよい。図2の(A)の符号89は、通信手段83に付随するアンテナを示している。
【0012】記憶手段86にはさらに、回収箱8を識別するための回収箱IDも予め記憶されている。なお、回収箱8は、図1に示すように、数種類の形式(縦横比、大きさ等)のものを含んでおり、例えば、大規模集合住宅には最も大きな回収箱を配置する、等のように、配置すべき場所の資源ごみの蓄積量実績に基づく予測に応じて、回収箱8の大きさを選択できるようにしている。同一の形式の回収箱8に同一の回収箱IDを割り当ててもよく、形式に関係なく回収箱8毎に異なる回収箱IDを割り当ててもよい。
【0013】以下、利用者の資源ごみの利用者による回収箱8への投入から、運搬車両7の資源ごみの回収運搬に到るまでの動作を説明することによって、図1に示した排出物収集システム並びに図2に示した回収箱8の構成をより明確にする。資源ごみを回収箱8に投入したい利用者が、利用者入力手段88を介して利用者IDを入力する。その個所の回収箱を利用できる利用者のIDが回収箱8の記憶手段86に予め記憶されている方式の場合には、制御手段87は、入力された利用者IDが記憶手段86に記憶されているか否かを判定する。利用者IDを情報管理センタ50側にのみ記憶する方式の場合には、制御手段87は、入力された利用者IDを通信手段83を介して情報管理センタ50に送信するよう制御する。これにより、情報管理センタ50は、適切な利用者であるか否かを判定し、その結果を、回収箱8に返送する。
【0014】そして、利用者IDが適切である場合(記憶手段86に一致する利用者IDが存在する場合、又は情報管理センタ50から適切な利用者である旨の情報が返送された場合)には、制御手段87は、蓋開閉駆動手段84を制御して、蓋80を開放させる。これにより、利用者が資源ごみを区画81に投入することができる。利用者IDが適切でない場合、蓋80が開放されないので、資源ごみを回収箱に投入することができない。なお、それぞれの区画81には、投入すべき資源ごみの種類が表示されており、その表示に従って、利用者は資源ごみを対応する区画に投入することができる。
【0015】利用者がこのようにして資源ごみを回収箱8の区画81に投入し、資源ごみの蓄積量が回収すべきレベルである所定のレベルに到達すると、レベルセンサ82がそれを検出する。すると、制御手段87は、回収量適性情報を生成し、位置検出手段85からの回収箱8の現在位置を表す位置情報と、記憶手段86に記憶された回収箱ID情報とともに、通信手段83を介して、情報管理センタ50に送信する。レベルセンサ82を、所定のレベルに達したか否かのみを検出するセンサとして構成する代わりに、複数のレベル(アナログ的であってもよい)を検出できるようにし、その検出したレベルを、定期的に情報管理センタ50に送信するようにしてもよい。情報管理センタ50は、受け取ったこれら情報に基づいて、回収指示情報を生成し、運搬車両7に対して通信する。
【0016】このとき、各運搬車両7にもGPS機能の位置検出手段が搭載されているので、情報管理センタ50は、各運搬車両7の現在位置を把握することができる。また、情報管理センタ50は、すべての運搬車両7の回収状況を把握しており、すなわち、どの運搬車両7がどの形式の回収箱8を幾つ回収可能(すなわち、未蓄積のものと蓄積済のもの交換可能)であるかを、把握している。したがって、情報管理センタ50は、回収すべき位置の近傍に存在し、しかも該当する形式の回収箱8を未蓄積のものと交換可能な運搬車両7(1又は複数台)を特定することができ、該特定した運搬車両7を、モニタ画面に表示する。これにより、オペレータが回収箱を回収可能な運搬車両7を知ることができ、その内の1台を選択して、オペレータは回収指示情報を通知する。なお、回収可能な運搬車両の内の、回収場所に最も近い車両から順番に、自動的に回収指示情報を通信し、承諾応答が返送されるまで、このような順次通信を継続するようにしてもよい。、回収指示情報には、回収位置情報、及び回収箱の形式情報が含まれる。
【0017】回収指示情報を受け取った運搬車両7は、該情報に基づいて、資源ごみの回収に向かい、回収位置の回収箱8を荷台に積み込むとともに、未蓄積の回収箱8を回収位置に設置する。そして、回収箱8の交換が完了すると、その旨を情報管理センタ50に通知する。運搬車両7は、回収箱8を積み込むためのクレーンを備えていることが好ましい。また、回収箱8に車輪を付け、該回収箱を運搬車両7が牽引する形式としてもよい。回収された資源ごみは、資源ごみの種類毎に、該種類の資源ごみのリサイクルに適したリサイクル施設60に搬送され、リサイクル製品等に再生される。リサイクル施設60においては、運搬車両7によって搬送された回収箱を空にしたときに、自動的に水洗する水洗手段を備えていることが好ましい。これにより、飲み残し等による液唾腐敗臭を防止し、病原害虫の発生を防止することができる。また、夏場などの腐敗臭が懸念される場合、回収箱8に、簡易活性炭脱臭装置を備えることが好ましい。
【0018】このようにして、許可された利用者のみが回収箱8の各区画81に資源ごみを投入することができるので、資源ごみの種類分けが実行される確率が高まる。また、回収箱8が満杯になったときにのみ、該回収箱の配置箇所の比較的近傍にいて回収箱の交換が可能な運搬車両7により、資源ごみが蓄積された回収箱8の回収が行われるので、回収効率が極めて増大し、よって、回収コストを低減することができる。
【0019】図2の(A)において、104は、本発明の排出物回収システムに採用することが適している廃プラ容器を示しており、該廃プラ容器104は、比較的柔軟性があるプラスチック廃棄物103を詰め込むための容器である。廃プラ容器104は、このようなプラスチック廃棄物104以外の排出物を詰め込むことができないように、少なくとも入り口を小さく形成することが好ましい。廃プラ容器104の形状は、円筒状が好適であるが、場合によっては、4角柱であってもよい。このような廃プラ容器104は、地方自治体等から無償で各家庭等に配布され、利用者ができるだけ多くのプラスチック廃棄物103を該容器に詰め込んだ後、回収箱8のプラスチック廃棄物用の区画81に投入する。このような廃プラ容器104を用いることにより、プラスチック廃棄物103を再利用可能な未利用資源として弁別することが容易になる。
【0020】図3は、リサイクル施設60として採用可能なケミカルリサイクルプラントの一例を示している。図3に示したケミカルリサイクルプラントにおいては、プラスチック廃棄物を含んだ有機性排出物aを流動床式の統合型ガス化炉101においてガス化して生成ガスbを生成する。統合型ガス化炉101は、ガス化室1、チャー燃焼室2(沈降チャー燃焼室4を含む)、熱回収室3を含み、これら室それぞれの底部に流動媒体を含む流動床が形成される。これら流動床を流動させるために、これら室それぞれの底部から流動化ガスg1、g2が吹き込まれる。各室の空塔速度が各部で相対的に異なるため各室内の各部で流動状態が異なり、これにより、内部旋回流が形成され、該内部旋回流は、各室を循環する。図中、矢印の大きさは、吹き出される流動化ガスg1、g2の流速を示している。
【0021】ここで、図4を参照して、統合型ガス化炉101における各室間の流動媒体の流動状態と移動について説明する。ガス化室1の内部で沈降チャー燃焼室4との間の仕切壁15に接する面の近傍は、沈降チャー燃焼室4の流動比と比べて強い流動化状態が維持される強流動化域1bに成っている。全体としては、投入された有機性排出物と流動媒体の混合拡散が促進されるように、場所によって流動化ガスの空塔速度を変化させるのがよく、一例として、弱流動化域1aを設けて旋回流を形成させるようにする。
【0022】チャー燃焼室2は、中央部に弱流動化域2a、周辺部に強流動化域2bを有し、流動媒体及びチャーが内部旋回流を形成している。ガス化室1、チャー燃焼室2内の強流動化域の流動化速度は5Umf以上、弱流動化域の流動加速度は5Umf以下とすることが好適であるが、これら流動化域に相対的な差を設ければ、これ以外の範囲であってもよい。なお、Umfは、最低流動化速度(流動化が開始される速度)を1Umfとした単位であり、したがって、5Umfは、最低流動化速度の5倍の速度である。チャー燃焼室2内の熱回収室3、及び沈降チャー燃焼室4に接する部分には、強流動化域2bを配するようにするのがよい。また、必要に応じて、炉底には弱流動化域側から強流動化域側に下るような勾配を設けるのがよい。
【0023】このように、チャー燃焼室2と熱回収室3との仕切壁12近傍のチャー燃焼室側の流動化状態を、熱回収室3側の流動化状態よりも相対的に強い状態に保つことによって、流動媒体は仕切壁12の流動床の界面近傍にある上端を越えてチャー燃焼室2側から熱回収室3の側に流入し、流入した流動媒体は熱回収室3内の相対的に弱い流動化状態すなわち高密度状態のために下方(炉底方向)に移動し、仕切壁12の下端にある開口22をくぐって、熱回収室3側からチャー燃焼室2の側に移動する。
【0024】同様に、チャー燃焼室2の本体部と沈降チャー燃焼室4との仕切壁14近傍のチャー燃焼室本体部側の流動化状態を、沈降チャー燃焼室4側の流動化状態よりも相対的に強い流動化状態を保つことによって、流動媒体は、仕切壁14の流動床の界面近傍にある上端を越えてチャー燃焼室2本体部の側から沈降チャー燃焼室4の側に移動流入する。沈降チャー燃焼室4の側に流入した流動媒体は、沈降チャー燃焼室4内の相対的に弱い流動化状態すなわち高密度状態のために下方(炉底方向)に移動し、仕切壁15の下端の開口25をくぐって、沈降チャー燃焼室4側からガス化室1側に移動する。なお、ガス化室1と沈降チャー燃焼室4との仕切壁15近傍のガス化室1側の流動化状態は、沈降チャー燃焼室4側の流動化状態よりも相対的に強い流動化状態に保たれている。これにより、流動化媒体の沈降チャー燃焼室4からガス化室1への移動を誘引作用により促進する。同様に、ガス化室1とチャー燃焼室2との間の仕切壁11近傍のチャー燃焼室2側の流動化状態は、ガス化室1側の流動化状態よりも相対的に強い流動化状態に保たれている。したがって、流動媒体は、仕切壁11の流動床の界面より下方、好ましくは濃厚層よりも下方にある開口21を通って、チャー燃焼室2に流入する。
【0025】熱回収室3は、全体が均等に流動化され、通常、最大でも熱回収室3に近接したチャー燃焼室2の流動化状態よりも弱い流動化状態となるように維持される。これにより、熱回収室3の流動化ガスの空塔速度は0〜3Umfの範囲となるように制御され、流動媒体は、緩やかに流動しながら沈降流動層を形成する。なお、0Umfとは、流動化ガスが止まっている状態である。このように制御することにより、熱回収室3での熱回収を最小にすることができる。すなわち、熱回収室3での熱回収量は、流動媒体の流動化状態を変化させることによって、最大から最小までの範囲で調節することができる。熱回収室3では、流動化を室全体で一様に発停あるいは強弱を調整してもよいが、一部の領域の流動化を停止し、他を流動化状態に置くようにしてもよい。また、一部の領域の流動化状態の強弱を調整してもよい。
【0026】有機性排出物中に含まれる比較的大きな不燃物は、ガス化室1の炉底に設けた不燃物排出口33から排出される。不燃物排出口33は、ガス化室1の炉底だけでなく、チャー燃焼室2あるいは熱回収室3の炉底に設けてもよい。各室の炉底面は水平でもよいが、流動媒体の流れの滞留部を作らないようにするために、炉底近傍の流動媒体の流れに沿って炉底を傾斜させてもい。ガス化室1において、ガス化の際の吸熱反応によって流動媒体の層温が下がる場合は、チャー燃焼室2から熱分解温度よりも高温の燃焼ガスeを供給するか、あるいは、無酸素ガスに加えて、酸素ガス又は酸素を含むガス(空気等)をガス化室1に供給して、可燃性ガスbの一部を燃焼させるようにしてもよい。有機性排出物aの発熱量が低い場合には、酸素を多く供給することが好ましい。チャー燃焼室2に供給する流動化ガスは、チャー燃焼に必要な酸素を含むガス(空気等)酸素と水蒸気の混合ガスを供給する。熱回収室3に供給するガスは、空気、水蒸気、燃焼排ガス等を用いる。
【0027】ガス化室1とチャー燃焼室2の流動床の上面(スプラッシュゾーンの上面)より上方の部分すなわちフリーボード部は、仕切壁11、15で完全に仕切られている。このように、流動床の濃厚層の上面より上方の部分すなわちスプラッシュゾーン及びフリーボード部が完全に仕切られているので、チャー燃焼室2とガス化室1のそれぞれのフリーボード部の圧力のバランスが多少乱れても、両室の流動床の界面位置の差、あるいは、濃厚層の上面位置の差、すなわち層高差が多少変化するだけで、乱れを吸収することができる。すなわち、ガス化室1とチャー燃焼室2とは、仕切壁11、15で仕切られているので、それぞれの室の圧力が変動しても、この圧力差は層高差によって吸収でき、いずれかの層が開口21、25の上端に下降するまで吸収可能である。従って、チャー燃焼室2とガス化室1のフリーボード部の圧力差の上限は、仕切壁11、15の下部の開口21、25の上端からの、ガス化室1の流動床のヘッドと、チャー燃焼室2の流動床のヘッドとの差にほぼ等しい。
【0028】上記した統合型ガス化炉101では、チャー燃焼室2とガス化室1との間に大量の流動媒体循環を可能にしているので、流動媒体の顕熱だけでガス化のための熱量を十分に供給することができる。また、チャー燃焼室2からの燃焼ガスeとガス化室1で生成された燃焼ガスbとが完全にシールされるので、これら室の圧力バランスの制御が比較的十分でなくても、燃焼ガスeと可燃性ガスbとが混ざる恐れがない。よって、可燃性ガスbの性状を低下させることがない。さらに、熱媒体としの流動媒体c1とチャーhは、ガス化室1側からチャー燃焼室2側に流入するようになっており、さらに同量の流動媒体c2がチャー燃焼室2からガス化室1に戻るようになっているので、自然にマスバランスがとられ、流動媒体をチャー燃焼室2からガス化室1に戻すために、コンベア等の機械的搬送手段を設ける必要がない。また、高温粒子の取り扱い困難さ、顕熱ロスの問題も生じることがない。
【0029】図3及び図4を参照して、以上説明した統合型ガス化炉101を備えたケミカルリサイクルプラント40におけるメタノール合成について説明する。ガス化室1では、有機性排出物aが流動媒体からの熱を受けて熱分解され、ガス化される。残った乾留チャーhは、流動媒体c1とともに開口部21からチャー燃焼室2に流入して燃焼され、流動媒体c2を加熱する。加熱された流動媒体c2は、沈降チャー燃焼室4を経由してガス化室1に流入し、有機性排出物aの熱分解ガス化に必要な熱量を供給する。また、加熱された流動媒体c2の一部は、仕切壁の上端を超えて熱回収室3に流入し、層内伝熱管41で収熱され冷却される。そして仕切壁の下部の開口を通って、再びチャー燃焼室に流入する。
【0030】統合型ガス化炉101の熱回収室3から回収された熱、並びに、チャー燃焼室2及び熱回収室3から排出される燃焼ガスeの熱エネルギは、ケミカルリサイクルプラント40内で使用される他、余剰分は消費者に販売される。なお、図2中、符号102は、流動媒体c3と不燃物dとを分級する分級装置であり、分級された流動媒体c3は、ガス化室1に戻される。統合型ガス化炉101のガス化室1において生成された可燃性のガスbは、ガス洗浄装置103において、塩素及びダスト成分fが除去される。次いで、CO転化装置104において、触媒を用いて、H2+CO2 ←→ H2O+COで表されるCOシフト反応が行われ、合成ガス中のH2/CO比の調整が行われる。なお、メタノール合成の場合、H2/CO比(モル比)は、2以上であることが望ましいが、生成ガスb中のH2/CO比が2以上である場合には、CO転化装置104での処理は必要ではない。
【0031】そして、脱硫装置105においてH2Sガスを除去して硫黄成分を0.1ppm以下とし、脱炭酸装置106において余剰なCO2ガスを除去する。このようにして改質されたガスを、ガス圧縮機107を介してメタノール生成装置200に供給し、該装置200中のメタノール合成塔装置201及びメタノール蒸留装置202により、メタノールが生成される。脱炭酸装置106において除去されたCO2ガスは、液化炭酸ガスやドライアイスの形態で固定され、リサイクル化学製品又は熱エネルギ(冷熱)として消費者に販売される。
【0032】図3に示したケミカルリサイクルプラント40において、メタノール生成装置200の代わりに、ジメチルエーテル又はガソリン等の他の液体燃料の生成装置を用いてもよく、さらには、燃料電池等の燃料となる水素ガスの生成装置を用いてもよい。また、ガス改質手段として任意の手段を採用することもできる。
【0033】図5及び図6は、リサイクル施設60として採用可能なケミカルリサイクルプラントの他の実施形態を示している。この実施形態においては、ガス化炉装置202として内部旋回式流動層ガス化炉210と旋回溶融炉211(高温ガス化炉)とを備えている。高カロリーの有機性排出物aは、ガス化装置202の流動層ガス化炉210に投入され、流動層ガス化炉210の流動層212に落下する。本実施形態における流動層ガス化炉210は、内部旋回式流動層ガス化炉であり、供給された有機性排出物aの炭化物が、流動層上に堆積せず流動層内に均一に分散され、炭化物の微粉化・ガス化が促進される。このタイプの流動層ガス化炉では、原料排出物は供給時の破砕粒度を大きくでき、サイズの大きい不燃物でも排出が可能である。また、発生熱の拡散に優れているため、クリンカートラブルが少ない等の特徴を有する。
【0034】流動層ガス化炉210には酸素供給装置213からガス化のための酸素oが供給されており、流動層212に落下した有機性排出物aは、450〜650℃に保持された流動層内で酸素oと接触して速やかに熱分解ガス化される。流動層ガス化炉210では、有機性排出物aは、流動層212にて450〜650℃で1次の部分燃焼をし、次いでフリーポート部214にて600〜800℃、好ましくは650〜750℃で2次の部分燃焼をする。これにより、ガス、タール、炭化物、H2O等のガス状物質とチャー、不燃物等が生成される。なお、流動層ガス化炉210の流動層へのガス化のための送入ガス(ガス化剤)は、空気、空気とスチーム、酸素富活空気、酸素富活空気とスチーム、酸素とスチームの混合物等、任意の組合せの中から選択することができる。
【0035】ガス化温度を450℃以下にすると、熱分解ガス化の反応が極端に遅くなるために流動層内に未分解物が堆積するといった問題を生じ、燃焼速度の遅いチャーの生成量も多くなる。逆に、ガス化温度を高くすると、熱分解ガス化反応が速くなるために、流動層内に未分解物が堆積する問題は解消されるものの、有機性排出部aの供給量の変動がガス発生量の変動を招くようになる。旋回溶融炉211への送入ガス量を流動層ガス化炉210での発生ガス量に合わせて細かく調節することができないので、後段の旋回溶融炉211の運転に支障を来たす。従って、本実施形態では、熱分解ガス化の反応がある程度緩慢な650℃を上限温度としている。
【0036】流動層ガス化炉210の流動層212は、還元雰囲気のため、原料中の金属のうち融点が流動層温度より高いものは、未酸化でクリーンな状態でガレキ、石、ガラス等と共に不燃物215として炉底から排出される。このため、金属地金として再利用が可能となり、材料リサイクルを行うことができる。流動層ガス化炉210の炉底からロックホッパ216を介して流動媒体の硅砂が不燃物と共に排出され、トロンメル217により不燃物215が系外に排出される。トロンメル217により分離された硅砂218は、バケットコンベア219により上方へ搬送された後、流動層ガス化炉210に戻される。流動媒体に固い硅砂218を用いることで、炭化物の粉砕は促進される。なお、流動媒体としては砂(硅砂、オリビン砂など)、アルミナ、鉄粉、石灰石、ドロマイト等を使用することができる。回収できる金属は、その融点がガス化温度以下のものに限られる。
【0037】このように、有機性排出物の低温ガス化に流動層ガス化炉を用いたことにより、多様な排出物、例えば、数mmサイズ〜数十mmのものの処理が可能で、しかも処理能力が高く、スケールアップが容易となる。また、機械的な駆動部がなく、温度等の調整操作が容易で、熱媒体との間の伝熱が良く層内温度を均一に保ち易い。更に、流動層ガス化炉として内部旋回式流動層ガス化炉を用いると、排出物の無破砕処理が可能となり、流動層内で炭化物が効率良く粉砕されてチャーとなり、流動層内でのチャーの分散が良いため、処理能力が高く、層内温度が均一に保たれ、ガス化効率が高い等の作用がある。
【0038】流動層ガス化炉210において生成されたガス状物質とチャーは、旋回溶融炉211の1次燃焼室220に供給される。旋回溶融炉211の1次燃焼室220にはガス化のための酸素oが供給されており、1次燃焼室220に供給されたガス状物質とチャーは、酸素oと旋回流中で混合しながら、1300℃以上の高温で高速酸化される。これにより、タールやチャーは完全にガス化され、チャーに含まれる灰分はスラグミストとなる。スラグミストは、旋回流の遠心力と濡れ壁効果により炉壁上のスラグ相に捕捉され、炉壁を流下して2次燃焼室221に入り、スラグ分離室222の炉底からロックホッパ223を介して水室224に投入されて急冷され、溶融スラグ225として排出される。これにより、有害な重金属はスラグ225中に封じ込まれ、溶出しなくなる。また、1300℃以上という高温燃焼により、ダイオキシン類及びその前駆体並びにPCB等がほぼ完全に分解されてしまう。高温ガス化の酸化反応は、2次燃焼室221で完結し、H2、CO、CO2とH2Oからなる中カロリーガス(2500〜4500kcal/Nm3)が生成され、生成されたガス230は、ガス精製装置204に送られる。
【0039】なお、使用できる溶融炉としては、好ましくは、旋回溶融炉、即ち、ガス状物質とチャーがガス化のための送入ガスと共に燃焼室中に旋回流を形成しながら高温ガス化して、灰分を溶融し、熔融した灰分を分離排出する形式の溶融炉を用いるのがよい。旋回溶融炉を用いることにより、高負荷・高速燃焼が可能となり、ガスの滞留時間分布が狭くなり、旋回流による遠心力の作用により、カーボン転換率、スラグミスト捕集率が高く、しかも溶融炉本体のコンパクト化が図れる。
【0040】また、溶融炉211へのガス化のための送入ガスは、酸素富活空気、酸素の中から選択することができる。送入ガス中の酸素量は、流動層ガス化炉210へのガス化のための送入ガスを合わせて、全酸素量が排出物aを完全燃焼させるために必要な理論酸素量の0.1〜0.6の範囲とするのがよい。このようにして、溶融炉211から、低カロリ(1000〜1500kca1/Nm3(dry))もしくは中カロリ(2500〜4500kca1/Nm3(dry))の可燃性ガスを得ることができる。これらのガス中には、CO、H2といった有用ガス成分が多く含まれている。即ち、排出物からCO、H2主体のガスを得、工業用燃料ガスあるいは化学工業の原料とすることができる。後段の溶融炉211で流動層ガス化炉210から導出されるチャー中の灰分をスラグ化することにより、有害な重金属はスラグ225中に封じ込められ、溶出しなくなる。また、1300℃以上という高温燃焼により、ダイオキシン類及びその前駆体並びにPCB等がほぼ完全に分解されてしまう。
【0041】ガス化装置202により得られた生成ガス230は、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、蒸気等を主成分とするガスであるが、廃棄物中の塩素分、硫黄分に起因する塩化水素ガス、硫化水素ガス等を不純物として含んでいるため、これらの成分を除去する必要がある。本実施形態では、以下に述べるガス精製装置204においてこれらの不純物を除去している。図5に示すように、ガス精製装置204は、生成ガス230中の塩素分及びダスト分を洗浄除去するスクラバ240と、生成ガス中のCOとH2のモル比を調整するCO転化器241と、CO2及びH2Sを除去する酸性ガス除去装置242と、酸性ガス除去装置242により得られたCO2を放散するCO2放散塔243と、酸性ガス除去装置242により得られたH2Sを放散する硫化水素放散塔244と、CO2放散塔243に接続されたCO2液化装置245と硫化水素放散塔244に接続された硫黄回収装置246と、ガス圧縮機247とを備えている。ガス化装置202により得られた生成ガス230はスクラバ240に送られ、このスクラバ240において、ガス中の塩素分及びダスト分が洗浄除去される。スクラバ240には洗浄水250が供給されており、スクラバ240から抜き出した洗浄後の水は水槽251に送られ、水槽251においてダスト分252が沈降分離される。
【0042】生成ガスからメタノールの合成を行う場合には、生成ガス中のCOとH2のモル比が約2であることが好ましい。これは、メタノールの合成反応が次式で表されることによる。
CO+2H2 → CH3OHこのように生成ガス中のCOとH2のモル比を2前後に調整するため、スクラバ240において洗浄された後の合成ガスの一部がCO転化器241に送られる。CO転化器241においては、触媒の存在のもとで、次式のCOシフト反応によって生成ガス中のCOの一部をH2に変換し、モル比を調整している。
CO+H2O → CO2+H2モル比を適切に調整するためには、旋回溶融炉211において生成された合成ガス230の組成をガス組成測定装置(図示せず)によって測定し、この測定値に基づいて調整ダンパ253、254の開度をそれぞれ調整し、CO転化器241に送られる合成ガス255の量とCO転化器241を経由しない合成ガス256の量とを調整するのがよい。
【0043】このようにしてモル比が調整された合成ガス256は、酸性ガス除去装置242に送られる。この酸性ガス除去装置242においては、二酸化炭素及び硫化水素を吸収液に吸収させて、合成ガス256中から二酸化炭素及び硫化水素を除去する。吸収液中に吸収された二酸化炭素はCO2放散塔243において放散され、放散された二酸化炭素257はCO2液化装置245によって圧縮及び液化されて液化炭酸258として回収される。なお、必ずしも液化炭酸として回収する必要はなく、液化することなくそのままCO2ガスとして大気に放散してもよいし、あるいは冷却してドライアイスとして回収利用してもよい。また、吸収液中に吸収された硫化水素は、硫化水素放散塔244において放散され、放散された硫化水素259は、硫黄回収装置246において硫黄260として回収される。酸性ガス除去装置242において酸性ガス成分が除去された合成ガス261は、ガス圧縮機247に送られ、ガス圧縮機247により、次段のメタノール合成装置206における最適な圧力(好ましくは5〜10MPa)に圧縮される。ガス圧縮機247によりメタノール合成反応圧力まで昇圧されたガス262は、メタノール合成装置206に送り込まれる。
【0044】メタノール合成装置206として断熱クエンチ型反応装置を用いた実施形態を説明する。図7に示すように、メタノール合成装置206は、遠心ブロワなどの循環機270と、銅や亜鉛を主成分とする触媒層を有するメタノール合成塔271と、熱交換器などの熱回収器272と、高圧分離器273と、初留塔(図示せず)と精留塔(図示せず)とを備えた蒸留塔274とを備えている。メタノール合成装置206に送り込まれたガス262は、未反応循環ガス275と合流し、循環機270の吸込側に供給される。断熱クエンチ型反応装置では、合成ガスは、熱回収器272により反応に必要な温度まで予熱される。そして、全原料合成ガス量の40〜60%のガス276が、メタノール合成塔271内の第1触媒層に供給される。残りのガス277は、クエンチガスとして、第2触媒層以下の触媒層の温度を適正な温度に制御するため、各触媒層間へ供給され、上部触媒層を通過してきたガスと均一に混合される。これにより、触媒層での断熱反応により上昇した反応ガスの温度が低下し、次の触媒層の温度が適正に制御される。
【0045】メタノール合成塔271内では、一酸化炭素と水系を主成分とする合成ガスを、圧力5〜10MPa、温度200〜300℃の条件下で、銅・亜鉛を主成分とする触媒層と反応させ、メタノールを合成する。この反応は発熱反応であり、大量の熱が発生する。この反応熱は、熱回収器272において回収され利用されるが、この反応熱を効率的に除去することが反応効率を高める上で有効であるため、熱回収のために供給管(図示せず)を介して熱回収器272にボイラ水を供給し、反応熱を中圧の200℃前後の蒸気として熱回収を行い、この中圧の蒸気をガス化装置202において利用することとしてもよい。
【0046】メタノール合成塔271から出たガス278の保有熱は、熱回収器272において、メタノール合成塔271へ供給する原料合成ガスの予熱等により熱回収され、ガス278が冷却される。この冷却されたガス279は、高圧分離器273によって粗メタノール280と未反応ガス281とに分離される。未反応ガス281からは一定量のガスがパージガス282として抜き出され、未反応ガス281中に蓄積されるメタン、窒素等の不活性成分の濃度が一定レベルに抑えられる。残りの未反応ガス275は、上述したように、循環ガスとして、ガス精製装置204から送られてきた合成ガス262に合流する。
【0047】分離された粗メタノール280は、蒸留塔274において蒸留され、製品メタノール283となる。即ち、ほぼ常圧で運転される初留塔において、粗メタノール280からギ酸メチル、ジメチルエーチル、アセトン等の低沸点成分284及びパラフィン類が留去され、ほぼ常圧又は0.1MPa程度の加圧下で運転される精留塔において、水及び高級アルコール等の高沸点成分285が除去され、製品メタノール283が得られる。メタノール合成反応は平衡反応であるため、メタノール合成塔271を1回通過しただけでは、収率はそれほど高くない。従って、上述したように循環機(循環ブロア)270を用いて反応ガスを循環させることが行われる。この循環系からは、反応に関与しない窒素やアルゴンなどの不活性成分を常に抜き出す必要がある。上述したように、不活性ガス成分はパージガス282として系外に排出されるが、不活性ガス成分だけを反応系から取り除くことはできないため、循環ガス281から一定量のガス282を抜き出し、このガス282に含まれる不活性ガス成分の量が投入した量と等しくなるようにすることで、反応系内の不活性ガス成分の濃度が一定に保たれている。
【0048】抜き出したパージガス282は、可燃性成分を多く含んでいるため、燃料として利用できるが、その抜き出し量が多い程、本来メタノール合成に用いるべき有効成分を抜き出してしまっていることになり、メタノール収率が低下してしまう。従って、最初の合成ガスには、不活性ガス成分がなるべく含まれていないことが好ましい。なお、以上の説明においては、ケミカルリサイクルプラントにおける最終的な化学製品がメタノールである場合について述べたが、エタノール、ガソリン、ジメチルエーテル等の他の燃料合成を行ってもよく、あるいは水素、アンモニア、酢酸等の化学工業原料の合成を行ってもよい。これらの場合も、ガス化及びガス精製までのプロセスは基本的に同一であり、最終的な製品の合成プロセスが若干異なるのみである。
【0049】以上、図3〜図6を参照して説明したケミカルリサイクルプラントの実施形態を例示説明したが、これら実施形態に限らず、有機性排出物をガス化してリサイクル化学製品を生成することができるプラントであれば、例えば、2塔循環ガス化プラント等の任意のものをケミカルリサイクルプラントとして採用可能である。リサイクル施設60としての、このようなケミカルリサイクルプラントに、図2の(A)に示した廃プラ容器104に詰め込まれたプラスチック廃棄物103等が、運搬車両7によって搬送され、プラスチック廃棄物がガス化されて化学製品等にリサイクルされる。したがって、プラスチック廃棄物を未利用資源として効率よく利用することができる。
【0050】上記説明においては、資源ごみの回収及びその処理について説明したが、資源ごみに限らず、一般家庭ごみや産業廃棄物の回収及び処理にも本発明を適用可能であることは言うまでもない。この場合、それぞれのごみの特質に合致するように回収箱を形成する必要がある。本発明は以上のように構成されているので、資源ごみ等の排出物の回収を効率的に行うことができ、よって回収コストを低減することができる。また、回収された排出物をケミカルリサイクルプラント等において処理することにより、有用な化学製品等としてリサイクルすることができ、もって、排出物を未利用資源として利用することが促進される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排出物収集システム構成の概略を示したブロック図である。
【図2】本発明に係る回収箱の外観図及び信号処理部の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明に係る排出物収集システムのリサイクル施設として採用可能なケミカルリサイクルプラントの一例を示す説明図である。
【図4】図3に示したプラントにおいて用いられているガス化炉の構成及び機能を説明するための説明図である。
【図5】本発明に係る排出物収集システムのリサイクル施設として採用可能な他のケミカルリサイクルプラントの内の、ガス化装置及びガス生成装置を示す説明図である。
【図6】本発明に係る排出物収集システムのリサイクル施設として採用可能なケミカルリサイクルプラントの内の、メタノール合成装置を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 運搬可能な排出物の回収箱であって、排出物をその種類毎に蓄積するための仕切られた複数の区画と、回収箱に蓄積された排出物の蓄積量を検出するセンサ手段と、情報を情報管理センタに送信する送信手段と、回収箱の位置をGPS機能によって検出する位置検出手段と、センサ手段によって、排出物の蓄積量が回収すべき所定の値であることが検出されたときに、それを表す回収量適性情報と、位置検出手段によって検出された位置情報とを、送信手段を介して情報管理センタに送信させるよう制御する制御手段とを備えることを特徴とする回収箱。
【請求項2】 請求項1記載の回収箱において、該回収箱はさらに、回収箱を識別する回収箱識別情報を備え、制御手段は、回収量適性情報及び位置検出情報とともに回収箱識別情報を、送信手段を介して情報管理センタに送信させるよう制御するよう構成されていることを特徴とする回収箱。
【請求項3】 請求項2記載の回収箱において、制御手段はさらに、センサ手段によって検出された排出物の蓄積量を、位置情報及び回収箱識別情報とともに、送信手段を介して情報管理センタに定期的に送信させるよう構成されていることを特徴とする回収箱。
【請求項4】 排出物収集システムであって、請求項1〜3いずれかに記載の回収箱の複数からなる回収箱と、該回収箱を運搬する運搬車両と、排出物処理施設と、回収箱から回収量適性情報及び位置情報を受け取ったときに、運搬車両に対して、当該回収箱を収集するよう指示を通信する情報管理センタとからなることを特徴とする排出物収集システム。
【請求項5】 請求項4記載の排出物収集システムにおいて、複数の回収箱は、請求項2又は3記載の回収箱であって、複数の異なる大きさにグループ分けされ、グループ毎に同一の回収箱識別番号を有しており、運搬車両は、GPS機能の位置検出手段と、該位置検出手段によって検出された運搬車両の位置情報を情報管理センタに通信する手段とを備え、情報管理システムは、回収箱から回収量適正情報、位置情報、及び回収箱識別情報を受け取ったときに、当該回収箱と同一の大きさの排出物未蓄積の回収箱を保持している運搬車両であって、当該回収箱の位置の近傍に居る運搬車両をモニタ画面に表示させる手段を備えており、これにより、オペレータが回収箱の収集に適する運搬車両を最適に選択できるようにしたことを特徴とする排出物収集システム。

【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図6】
image rotate


【図5】
image rotate