説明

排気ガス再循環装置

【課題】 複数気筒エンジンの各吸気ポート毎にEGRガス量を精度良く供給し得る排気ガス再循環装置を提供すること。
【解決手段】 複数の気筒を有する内燃機関の複数の吸気通路32aと、吸気通路32aに独立して形成された、EGRとしての排気ガスを供給する開口部32dと、開口部32dを開閉する開閉手段45と、を備え、開閉手段45により、開口部32dの開口面積が全閉から全開まで制御されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス再循環装置に関し、詳しくは、多気筒エンジンの各吸気ポートに排気ガスを個別に供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多気筒エンジンの各吸気ポートに排気ガスを個別に供給する排気ガス再循環装置として、インテークマニホルドの外部にEGR通路を配置し、EGR通路とインテークマニホルド内の吸気通路とを開口部によって連通させ、この開口部に開閉自在にリード弁を備えたものが存在する(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、吸気行程にある気筒の吸気通路における開口部のリード弁が開くことによってEGRガスが供給され、この吸気行程では他の気筒に対応するリード弁は閉じた状態を維持する。
【0004】
また、多気筒エンジンの各吸気ポートに排気ガスを個別に供給する排気ガス再循環装置として、吸気ポートが吸気枝管を介して吸気サージタンクに連結されると共に、排気管と連結するEGRサージタンクのEGR枝管が吸気管に連結するものが存在する(特許文献2参照)。
【0005】
この特許文献2では、吸気サージタンクが、吸気の脈動を防止すると共に、吸気を各気筒の燃焼室内に正確に分配する。また、この特許文献2では、EGRサージタンクがEGRガスの脈動を防止すると共に、EGRガスを各気筒の燃焼室内に分配する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5‐312112号公報
【特許文献2】特開2000‐145548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載される構成では、エンジンの吸気ポートに接続するインテークマニホルドにEGRガスを供給する。このため、各気筒に供給するEGRガスの均等化を容易に実現できる。しかし、この構成ではエンジン排気時の圧力変動が脈動となってEGRガスの圧力に影響するため、EGRガスの供給量が不均一になることがある。しかも、リード弁を吸気通路の内部に設けるので、このリード弁の取り付けが困難となりやすい。
【0008】
また、特許文献2に記載される構成では、EGRサージタンクを備えているためエンジン排気時の脈動がEGRガスに影響し難いという良好な面を有する。しかし、EGRサージタンクと吸気タンクとを有するため、吸気系が大型化しやすい。
【0009】
特に、この特許文献2に記載されるように、吸気ポートに対して吸気サージタンクからの吸気と、EGRサージタンクからのEGRガスとが直接的に供給されるものでは、吸気速度が低下しやすい。例えば、吸気菅内に横渦流制御バルブまたは縦渦流制御バルブを備えたエンジンのように、燃焼室内に横渦流または縦渦流を発生させるものでは、必要とする横渦流または縦渦流の強度が得られず燃焼速度が低下するため燃焼効率が悪化する。
【0010】
本発明の目的は、複数気筒エンジンの複数の吸気ポート毎にEGRガス量を精度良く供給し得る排気ガス再循環装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために講じた第1の技術的手段は、複数の気筒を有する内燃機関の複数の吸気通路と、前記吸気通路に独立して形成された、EGRとしての排気ガスを供給する開口部と、前記開口部を開閉する開閉手段と、を備え、前記開閉手段により、前記開口部の開口面積が全閉から開口部の開口面積と同一の開口状態まで制御されることである。
【0012】
第2の技術的手段は、前記開閉手段は回転運動により開閉する回転弁であることである。
【0013】
第3の技術的手段は、前記開閉手段の内部に、排気ガスを前記開口部に分配する分配通路を有していることである。
【0014】
第4の技術的手段は、前記開閉手段は、前記気筒の吸気行程時に開制御することである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、EGRとしての排気ガスを吸気通路に供給する開口部の開口面積を制御することにより、内燃機関の気筒毎に供給する排気ガス量を調整できる。したがって、内燃機関の運転状態に応じて、気筒毎の燃焼状態を精度良く制御できる。
【0016】
また、開閉手段として回転運動により開閉する回転弁とすることにより、装置の大型化を抑制することができる。
【0017】
また、開閉手段の内部に、排気ガスを前記開口部に分配する分配通路を有することにより、排ガス通路を内包することができる。したがって、EGR通路を外部に設ける必要がなく装置の小型化ができる。
【0018】
また、気筒の吸気行程時にのみ開制御するため、EGRが不要時には全閉状態とすることができる。したがって、気筒間の吸気通路が連通することなく、吸気脈動の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るエンジンの構成を示す図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】図2のIV−IV断面図である。
【図5】第2実施形態の図2に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
本実施形態では、シリンダブロックに4つのシリンダボアが形成された4気筒型、4ストロークエンジンに排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculationの略)装置を適用したものを示す。
【0022】
〔第1の実施形態〕
図1に示すように、シリンダヘッド1、シリンダブロック2、クランクケース(図示せず)夫々を上下に重ね合わせて連結すると共に、シリンダブロック2のシリンダボアに摺動自在に収容したピストン3と、クランクケース(図示せず)に回転自在に支持したクランク軸(図示せず)とをコネクティングロッド4で連結して車輌用のエンジンEが構成されている。
【0023】
シリンダヘッド1の1つの燃焼室Aには、吸気バルブ5と、排気バルブ6と、点火プラグ7とを備えている。吸気バルブ5は、クランク軸と同期回転する吸気用カム軸8に備えたカム8aによって開閉タイミングが制御される。排気バルブ6は、クランク軸と同期回転する排気用カム軸9に備えたカム9aによって開閉タイミングが制御される。
【0024】
尚、本発明は、4気筒エンジンに限るものではなく5気筒以上のエンジンや4気筒未満のエンジン等複数気筒エンジンに適用できる。
【0025】
シリンダヘッド1の一方の側面には、1つの燃焼室Aに対応して吸気ポート11が形成され、他方の側面には排気ポート12が形成されている。また、シリンダヘッド1において吸気ポート11から燃焼室に連通する吸引路に燃料噴射ノズル13を備えている。
【0026】
このエンジンでは、エアクリーナ(図示せず)から吸引された外気を吸気管21に送り、この吸気管21に配置されたスロットル弁(図示せず)で流量を制御し、吸気タンク31に供給する吸気系を備えている。
【0027】
吸気系とシリンダヘッド1の吸気ポート11との間には、排気ガス分配装置30が介装されている。
【0028】
図1、図2に示すように、排気ガス分配装置30は、ハウジング32と、シリンダヘッド1の吸気ポート11に対応した4つの通路32aと、排気ガスを導入する導入ポート32bと、導入された排気ガスを貯留し通路32aに分配する分配室32cと、通路32aと分配室32cとの間に回転自在に配設されたロータリバルブ45と、ロータリバルブ45を回転駆動するアクチュエータ45aと、から構成されている。
【0029】
ロータリバルブ45は円柱状をなし、その軸方向と直交する方向にはハウジング32の4つの通路32aと対応する位置に貫通孔45bが4箇所形成されている。貫通孔45bはハウジング32に形成されたポート32d、32eを介して、通路32aと分配室32cとを接続している。
【0030】
ロータリバルブ45の一端は、ハウジング32に締結部品(図示せず)により固定されたアクチュエータ45aに固着されており、アクチュエータ45aは制御装置(図示せず)からの信号によりロータリバルブ45を回動して貫通孔45bとハウジング32に形成されたポート32d、32eとの開口面積が調節される。ここで、図1は全開の状態、図3は略半開の状態、図4は全閉の状態を示している。この開度は角度センサ(図示せず)で計測して制御装置にフィードバックされる。
【0031】
また、このエンジンでは、排気ポート12に接続した排気マニホルド41から排気ガスを送り出し、触媒型の排気ガス浄化装置(図示せず)を介して外部に送り出す排気系を備えている。そして、排気マニホルド41を通過する排気ガスの一部を還元管44に送り、導入ポート32b供給する再循環系を備えている。
【0032】
尚、本実施形態の図2では、4つの貫通孔45bがすべて同一の方向(ロータリバルブ45の径方向)に形成されているが、例えば直列4気筒エンジンにおいては、1気筒目の貫通孔45b及び3気筒目の貫通孔45bと2気筒目の貫通孔45b及び4気筒目の貫通孔45bとで、ロータリバルブ45の周方向に45度位相をずらして貫通孔45bを形成してもよい。通常各気筒は、吸気行程、圧縮行程、爆発行程、排気行程の順に行われ、直列4気筒エンジンにおいては、1気筒目、3気筒目、4気筒目、2気筒目の順に吸気行程が実施される。また、ある気筒の吸気行程時の隣り合う気筒は、排気行程または爆発行程となる。このように貫通孔45bの位相を45度ずらし、各気筒の吸気行程時のみ排気ガスを通路32aに供給すれば、吸気行程時の気筒と隣り合った排気行程または爆発行程時の気筒とは連通しないため、吸気行程時の吸気脈動の低下を抑制できる。
【0033】
また、本実施形態では、導入ポート32bが2気筒目の貫通孔45bと3気筒目の貫通孔45bとの間の位置に設けられている。そのため導入ポート32bから導入される排気ガスは、導入ポート32bからの距離が長い1気筒目の貫通孔45b及び4気筒目の貫通孔45bよりも、導入ポート32bからの距離が短い2気筒目の貫通孔45b及び3気筒目の貫通孔45bに多く流れる。従って、2気筒目の貫通孔45b及び3気筒目の貫通孔45bの孔径よりも1気筒目の貫通孔45b及び4気筒目の貫通孔45bの孔径を大きくすることにより、4つの貫通孔45bに同じ量の排気ガスを流すことができ、排気ガスの供給量を最適化できる。
【0034】
排気ガス分配装置30は、排気マニホルド41に送られる排気ガスの一部をEGRガスとして取り出し、このEGRガスを還元管44、導入ポート32b、分配室32c、ポート32e、ロータリバルブ45の貫通孔45b、ポート32dを介して吸気ポート11に供給し、吸気と共に燃焼室Aに供給する循環系を備えている。
【0035】
エンジンの稼働時には、吸気管21からの吸気が吸気タンク31に送られる。この吸気量はスロットル弁の開度によって決まる。また、排気ガスの一部がEGRガスとして還元管44から吸気ポート11に送られる。この還元量はロータリバルブ45の開度によって決まる。特に、還元管44から分配室32cに送られるEGRガスの圧力は脈動するものであるが、分配室32cが脈動を吸収し、どのような吸気タイミングにおいても、ロータリバルブ45の開度によって、決まった量のEGRガスを吸気ポート11に送り出すことができる。
【0036】
この排気ガス分配装置30では、ピストン3の吸気作動に伴い、その吸気ポート11に接続する供給管34から吸気タンク31の内部空間に負圧が作用する。この負圧の作用により吸気タンク31の吸気が供給管34から吸気ポート11に引き込まれる。これと同時に、負圧の作用によりEGRガスが通路32aに引き込まれ、吸気の流れと共に通路32aから吸気ポート11に引き込まれる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、エンジンEの運転状態に応じて、ロータリバルブ45の開度を制御しEGRガスを調整できるので、気筒毎の燃焼状態を精度良く制御することができる。その結果、排気ガスに含まれるNOxを効果的に低減したり、燃費を向上したりすることができる。
【0038】
また、EGRガスが不要なエンジンEの運転状態においては、ロータリバルブ45の開度を全閉にすることができるので、気筒間の吸気通路が連通することなく、吸気速度の低下を抑制することができる。その結果、吸気を効果的に燃焼室A内に吸引し燃焼状態を好適にすることができる。
【0039】
〔第2の実施形態〕
本実施形態においては、排気ガス分配装置60が第1の実施形態とは異なり他の構成は同一であるので、重複する部分については同一の付番を付けて説明を省略する。
【0040】
本実施形態の排気ガス分配装置60は、図5に示すように、シリンダヘッド1の吸気ポート11に対応した4つの通路32aを有するハウジング62と、ハウジング62の内部に回転自在に保持されている中空の円柱状をなすロータリバルブ55と、ハウジング62に締結部品(図示せず)により固定されたアクチュエータ45aと、で構成されている。
【0041】
ロータリバルブ55の一端はアクチュエータ45aに固着されており、他端には排気ガスを導入する導入ポート62bと連通する小穴55cが開口している。ロータリバルブ55の中空部62cは、導入された排気ガスを貯留し通路32aに分配する第一の実施例の分配室32cとしての役目をする。
【0042】
ロータリバルブ55は、その軸方向と直交する方向にはハウジング62の4つの通路32aと対応する位置に貫通孔55bが4箇所形成されている。貫通孔55bはハウジング62に形成されたポート62dを介して、通路32aと中空部62cとを接続している。
【0043】
アクチュエータ45aは制御装置からの信号によりロータリバルブ55を回動して、貫通孔55bとハウジング32に形成されたポート62dとの開口面積が調節される。
【0044】
尚、本実施形態によれば、ロータリバルブ55の内部をEGRガスが流れるようにしたので、第1の実施形態の奏する効果に加え、さらに装置の小型化ができる。
【0045】
また、本実施形態でも第1の実施形態で述べたように、例えば直列4気筒エンジンにおいては、1気筒目の貫通孔55b及び3気筒目の貫通孔55bと2気筒目の貫通孔55b及び4気筒目の貫通孔55bとで、ロータリバルブ55の周方向に位相を45度ずらして貫通孔55bを形成してもよい。
【0046】
更に、本実施形態では、導入ポート62bが1気筒目の貫通孔55bよりも図5において左側の位置に設けられている。そのため、導入ポート62bからの距離が一番短い1気筒目の貫通孔55bよりも導入ポート62bからの距離が一番長い4気筒目の貫通孔55bにいくにつれ、徐々に貫通孔55bの孔径を大きくするとよい。
【符号の説明】
【0047】
11・・・吸気ポート(吸気通路)
12・・・排気ポート
13・・・燃料噴射ノズル
21・・・吸気管
30、60・・・排気ガス分配装置
31・・・吸気タンク
32、62・・・ハウジング
32a・・・通路(吸気通路)
32b、62b・・・導入ポート
32c・・・分配室
32d、62d・・・ポート(開口部)
34・・・供給管(吸気通路)
41・・・排気マニホルド
44・・・還元管
45、55・・・ロータリバルブ(開閉手段)
45a・・・アクチュエータ(開閉手段)
45b、55b・・・貫通孔(開閉手段)
62c・・・中空部(分配通路)
A・・・燃焼室
E・・・エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有する内燃機関の複数の吸気通路と、
前記吸気通路に独立して形成された、EGRとしての排気ガスを供給する開口部と、
前記開口部を開閉する開閉手段と、を備え、
前記開閉手段により、前記開口部の開口面積が全閉から開口部の開口面積と同一の開口状態まで制御されることを特徴とする排気ガス再循環装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記開閉手段は回転運動により開閉する回転弁であることを特徴とする排気ガス再循環装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記開閉手段の内部に、排気ガスを前記開口部に分配する分配通路を有していることを特徴とする排気ガス再循環装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、
前記開閉手段は、前記気筒の吸気行程時にのみ開制御することを特徴とする排気ガス再循環装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223173(P2010−223173A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74115(P2009−74115)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】