説明

排気ガス浄化用触媒の製造方法および自動車両

【課題】ジルコニウムを含む金属酸化物担体にロジウムが高い分散度および微小な粒子サイズで担持された排気ガス浄化用触媒を製造し得る方法を提供する。
【解決手段】本発明による排気ガス浄化用触媒の製造方法は、ジルコニウムを含む金属酸化物担体を用意する工程(a)と、ロジウムを含む溶液を用意する工程(b)と、工程(b)において用意される溶液に、工程(a)において用意される金属酸化物担体と、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水とを加え、pHが3.0以上7.5以下に調整された溶液を得る工程(c)と、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化用触媒の製造方法に関し、特に、ジルコニウムを含む金属酸化物担体にロジウムが担持された排気ガス浄化用触媒の製造方法に関する。また、本発明は、そのような製造方法によって製造された排気ガス浄化用触媒を備えた自動車両にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両の内燃機関から排出される燃焼ガス(排気ガス)を浄化するため、三元触媒が広く用いられている。三元触媒は、排気ガスに含まれるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)およびNOx(窒素酸化物)を、水や二酸化炭素、窒素に還元または酸化することによって浄化を行う。三元触媒では、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属が、金属酸化物である担体(金属酸化物担体)に担持される。
【0003】
金属酸化物担体としては、従来、大きな比表面積を得るためにアルミナ(Al23)を用いることが一般的であった。しかしながら、近年では、金属酸化物担体の化学的特性を利用して浄化性能をいっそう向上させるべく、セリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)などのアルミナ以外の金属酸化物を、アルミナに代えて、あるいはアルミナと組み合わせて用いることが提案されている。
【0004】
また、金属酸化物担体と貴金属との好ましい組み合わせ(相性)についても研究がなされている。ロジウムについては、ジルコニアを主成分として含む金属酸化物(ジルコニアやジルコニア系の複合酸化物)と組み合わせて用いることにより、優れた浄化性能を示すことが報告されている。
【0005】
従来一般的に用いられていたアルミナにロジウムを担持すると、時間の経過とともにロジウムがアルミナ中に固溶し、そのことによって触媒活性が低下してしまう。これに対し、ジルコニアを主成分として含む金属酸化物にロジウムを担持すると、ロジウムの固溶が発生しないので、ロジウム本来の高い触媒活性を利用することができる。
【0006】
しかしながら、ジルコニアを主成分として含む金属酸化物に対し、ロジウムを吸着により担持することは難しい。ジルコニアを主成分として含む金属酸化物を、市販のロジウム水溶液に単純に混合しても、ロジウムは金属酸化物担体にほとんど吸着されない。
【0007】
特許文献1および2には、ジルコニアを主成分として含む金属酸化物にロジウムを担持する手法が開示されている。
【0008】
特許文献1に開示されている手法では、硝酸ロジウム水溶液にジルコニアを加えた後に蒸発乾固させることによって、ジルコニアにロジウムを担持する。また、特許文献2に開示されている手法では、ロジウムを含むコロイド溶液に、ジルコニアを主成分として含む金属酸化物を浸漬することによって、コロイド化したロジウムを金属酸化物担体に担持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−320863号公報
【特許文献2】特開2008−284553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の手法では、蒸発乾固の過程でロジウムが凝集するので、ロジウムの分散度が低下してしまう。また、特許文献2の手法では、ロジウムのコロイド粒子を微細化することは困難なので、担持されたロジウム粒子のサイズを十分に小さくすることが難しい。ロジウムの分散度が低かったり、ロジウム粒子のサイズが大きかったりすると、触媒表面で実際に排気ガスに接触するロジウム原子の数が少なくなるので、十分に高い浄化性能が得られない。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ジルコニウム(Zr)を含む金属酸化物担体にロジウムが高い分散度および微小な粒子サイズで担持された排気ガス浄化用触媒を製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による排気ガス浄化用触媒の製造方法は、ジルコニウムを含む金属酸化物担体を用意する工程(a)と、ロジウムを含む溶液を用意する工程(b)と、前記溶液に、前記金属酸化物担体と、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水とを加え、pHが3.0以上7.5以下に調整された前記溶液を得る工程(c)と、を包含する。
【0013】
ある好適な実施形態では、前記工程(c)は、前記金属酸化物担体を前記溶液に混合する工程(c−1A)と、前記工程(c−1A)の後に、前記溶液に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を加えることによって、前記溶液のpHを3.0以上7.5以下に調整する工程(c−2A)と、を含む。
【0014】
ある好適な実施形態では、前記工程(c)は、前記溶液に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を加えることによって、前記溶液のpHを所定の範囲に調整する工程(c−1B)と、前記工程(c−1B)の後に、前記金属酸化物担体を前記溶液に混合する工程(c−2B)と、を含み、前記工程(c−1B)における前記所定の範囲は、前記工程(c−2B)の実行後に前記溶液のpHが3.0以上7.5以下となるように設定されている。
【0015】
ある好適な実施形態では、前記工程(c)において得られる前記溶液のpHは4.0以上6.5以下である。
【0016】
ある好適な実施形態では、前記工程(a)において用意される金属酸化物担体は、酸化物換算で50mol%以上95mol%以下のジルコニウムを含む。
【0017】
ある好適な実施形態では、前記工程(a)において用意される金属酸化物担体は、酸化物換算で70mol%以上90mol%以下のジルコニウムを含む。
【0018】
ある好適な実施形態では、前記工程(a)において用意される金属酸化物担体は、セリウム、ランタンおよびネオジムからなる群から選択された少なくとも1つの金属を含む。
【0019】
ある好適な実施形態では、前記工程(b)において用意される前記溶液は、波長300nmの光に対する吸光度が0.8以下である。
【0020】
ある好適な実施形態では、前記工程(b)において用意される前記溶液の塩素含有量は、1000ppm以下である。
【0021】
ある好適な実施形態では、本発明による排気ガス浄化用触媒の製造方法は、前記工程(c)の後に、前記溶液を乾燥および焼成することによって、前記金属酸化物担体にロジウムが担持された触媒粉末を得る工程(d)をさらに包含する。
【0022】
ある好適な実施形態では、本発明による排気ガス浄化用触媒の製造方法は、ハニカム状の基材の表面に、前記触媒粉末を用いて触媒層を形成する工程(e)をさらに包含する。
【0023】
本発明による自動車両は、内燃機関と、前記内燃機関からの排気ガスを外部に導く排気管と、上記の排気ガス浄化用触媒の製造方法によって製造され、前記排気管内に設けられた排気ガス浄化用触媒と、を備える。
【0024】
以下、本発明の作用を説明する。
【0025】
本発明による排気ガス浄化用触媒の製造方法は、ジルコニウムを含む金属酸化物担体を用意する工程(a)と、ロジウムを含む溶液を用意する工程(b)とを包含する。本発明による製造方法は、さらに、工程(b)において用意された溶液に、工程(a)において用意された金属酸化物担体と、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水とを加え、pHが3.0以上7.5以下に調整された溶液を得る工程(c)を包含する。工程(c)で得られる溶液のpHが3.0以上7.5以下であることにより、ジルコニウムを含む金属酸化物担体へのロジウムの吸着度を高くすることができる。従って、吸着していないロジウムを蒸発乾固により半ば無理矢理に担体に担持したり、ロジウムをコロイド化させたりする必要がないので、ジルコニウムを含む金属酸化物担体にロジウムを高い分散度および微小な粒子サイズで担持することができる。そのため、本発明によれば、排気ガス浄化用触媒の浄化性能を向上させることができる。また、本発明による製造方法では、工程(c)において、単なるアルカリ性化合物ではなく、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を用いる。このことにより、他のアルカリ性化合物を用いる場合に比べ、触媒が高温に晒された後のロジウム分散度を高く維持することができる。そのため、本発明による製造方法により製造される触媒は、耐久性に優れており、高温の排気ガスに晒される排気ガス浄化用触媒として好適に用いられる。
【0026】
工程(c)は、例えば、金属酸化物担体を溶液に混合する工程(c−1A)と、工程(c−1A)の後に、溶液に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を加えることによって、溶液のpHを3.0以上7.5以下に調整する工程(c−2A)とを含む。このように、金属酸化物担体を溶液に混合した後にpHの調整を行うと、ロジウムをより均一に分散させることができるという利点が得られる。
【0027】
あるいは、工程(c)は、溶液に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を加えることによって、溶液のpHを所定の範囲に調整する工程(c−1B)と、工程(c−1B)の後に、金属酸化物担体を前記溶液に混合する工程(c−2B)とを含む。この場合、工程(c−1B)における上記所定の範囲は、工程(c−2B)の実行後に溶液のpHが3.0以上7.5以下となるように設定されている。このように、金属酸化物担体を溶液に混合する前にpHの調整を行うと、酸に溶解しやすい成分を含む金属酸化物担体を用いることができるという利点が得られる。
【0028】
工程(c)において得られる溶液のpHは4.0以上6.5以下であることが好ましい。溶液のpHが4.0以上6.5以下であることにより、ロジウムの吸着度をいっそう高くすることができる。
【0029】
ロジウムの触媒活性を十分に発揮させるためには、工程(a)において用意される金属酸化物担体は、酸化物換算で50mol%以上95mol%以下のジルコニウムを含むことが好ましい。つまり、金属酸化物担体に占めるジルコニアの割合が50mol%以上95mol%以下であることが好ましい。金属酸化物担体に占めるジルコニアの割合が50mol%以上95mol%以下であることにより、得られた触媒によるNOx浄化率を向上させることができる。
【0030】
また、ロジウムの触媒活性を十分に発揮させるためには、工程(a)において用意される金属酸化物担体は、酸化物換算で70mol%以上90mol%以下のジルコニウムを含むことがより好ましい。つまり、金属酸化物担体に占めるジルコニアの割合が70mol%以上90mol%以下であることが好ましい。金属酸化物担体に占めるジルコニアの割合が70mol%以上90mol%以下であることにより、得られた触媒によるNOx浄化率をいっそう向上させることができる。
【0031】
工程(a)において用意される金属酸化物担体は、セリウム、ランタンおよびネオジムからなる群から選択された少なくとも1つの金属を含むことが好ましい。つまり、金属酸化物担体は、ジルコニアのみから構成されているよりも、ジルコニア系の複合酸化物であることが好ましい。金属酸化物担体がセリウムを含んでいると、雰囲気中の酸素を吸収することができるので、そのことによってNOx浄化率が向上する。また、金属酸化物担体がランタンを含んでいると、複合酸化物の表面積が増加するので、そのことによってNOx浄化率が向上する。また、金属酸化物担体がネオジムを含んでいると、ロジウムの凝集を抑制できるので、そのことによってNOx浄化率が向上する。
【0032】
工程(b)において用意される溶液は、波長300nmの光に対する吸光度が0.8以下であることが好ましい。本願発明者の検討によれば、波長300nmの光に対する吸光度が0.8以下であることにより、波長300nmの光に対する吸光度が0.8を超える場合に比べ、ロジウムの分散度を高くし得ることがわかった。これは、溶液中のロジウムイオンの状態が分散度に影響するためと考えられる。
【0033】
工程(b)において用意される溶液の塩素含有量は、1000ppm以下であることが好ましい。塩素は、触媒被毒の原因となるので、溶液の塩素含有量が1000ppmを超える場合には、ロジウムの担持後に、塩素を除去するための工程が必要となる。塩素含有量が1000ppm以下の溶液を用意することにより、そのような工程が不要となり、製造コストの低減および製造に要する時間の短縮が可能になる。
【0034】
本発明による排気ガス浄化用触媒の製造方法は、典型的には、工程(c)の後に、溶液を乾燥および焼成することによって、金属酸化物担体にロジウムが担持された触媒粉末を得る工程(d)をさらに包含する。本発明による製造方法では、工程(c)で得られる溶液のpHが3.0以上7.5以下であるので、工程(d)において得られた触媒粉末では、金属酸化物担体にロジウムが高い分散度および微小な粒子サイズで担持され得る。
【0035】
また、本発明による排気ガス浄化用触媒の製造方法は、典型的には、ハニカム状の基材の表面に、触媒粉末を用いて触媒層を形成する工程(e)をさらに包含する。ハニカム状の基材は、比表面積が大きいので、ハニカム状の基材の表面に触媒層を形成することにより、排気ガスとロジウムとが接触する面積を大きくすることができ、排気ガス浄化用触媒が好適に機能する。
【0036】
本発明による自動車両は、本発明による製造方法によって製造された、浄化性能および耐久性に優れた排気ガス浄化用触媒を備えるので、NOx等の排出量を低減することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によると、ジルコニウムを含む金属酸化物担体にロジウムが高い分散度および微小な粒子サイズで担持された排気ガス浄化用触媒を製造し得る方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好適な実施形態における排気ガス浄化用触媒の製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明の好適な実施形態における排気ガス浄化用触媒の製造方法のフローチャートである。
【図3】ロジウム溶液に金属酸化物担体を混合し、さらに種々の化合物を所定量添加したときの残留ロジウム濃度を示すグラフである。
【図4】金属酸化物担体が混合されたロジウム溶液のpHと、ロジウムの吸着度との関係を示すグラフである。
【図5】実施例1〜7および比較例1〜3の排気ガス浄化用触媒について、高温加熱後のロジウム分散度を示すグラフである。
【図6】(a)は、実施例1〜4で用いたロジウム溶液の吸光度(Abs.)を示すグラフであり、(b)は、実施例5で用いたロジウム溶液の吸光度(Abs.)を示すグラフである。
【図7】金属酸化物担体中のジルコニア比率(mol%)と、NOx排出量(g/km)との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の好適な実施形態における排気ガス浄化用触媒の製造方法のフローチャートである。
【図9】本発明の好適な実施形態における製造方法によって製造された排気ガス浄化用触媒を備えた自動二輪車100を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0040】
まず、図1を参照しながら、本実施形態における排気ガス浄化用触媒の製造方法を説明する。図1は、本実施形態における製造方法のフローチャートである。
【0041】
まず、ジルコニウム(Zr)を含む金属酸化物担体を用意する(工程S1)。この工程S1で用意される金属酸化物担体は、具体的には、ジルコニア(ZrO2)か、または、ジルコニア系の複合酸化物(つまりジルコニウム以外の金属元素も含む金属酸化物)である。
【0042】
次に、ロジウム(Rh)を含む溶液(ロジウム溶液)を用意する(工程S2)。この工程S2で用意されるロジウム溶液は、酸性(つまりpHが7未満)であり、典型的には、ロジウム塩の水溶液である。ロジウム塩の水溶液としては、例えば、硝酸ロジウム水溶液や、ヘキサアンミンロジウム水溶液を用いることができる。なお、図1には、金属酸化物担体を用意する工程S1の後に、ロジウム溶液を用意する工程S2が行われる例を示しているが、これらの工程S1およびS2を行う順序はこれに限定されるものではない。工程S1およびS2は任意の順序で行うことができる。
【0043】
続いて、金属酸化物担体をロジウム溶液に混合する(工程S3)。例えば、ロジウム溶液に対し、金属酸化物担体の粉末を加える。
【0044】
次に、金属酸化物担体が混合されたロジウム溶液のpHを3.0以上7.5以下に調整する(工程S4)。この工程S4は、具体的には、ロジウム溶液に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を加えることによって行われる。典型的には、ロジウム溶液は、上記のアルカリ性化合物を加えられた後、スターラ等によって撹拌され、その後所定温度(例えば60℃)で所定時間(例えば1時間〜5時間)放置される。この工程S4により、ジルコニウムを含む金属酸化物担体に、ロジウムが吸着される。
【0045】
続いて、ロジウム溶液を乾燥および焼成する(工程S5)。これにより、金属酸化物担体にロジウムが担持された触媒粉末が得られる。乾燥は、例えば120℃で300分行われる。焼成は、例えば600℃で60分行われる。
【0046】
その後、ハニカム状の基材の表面に、触媒粉末を用いて触媒層を形成する(工程S6)。基材は、金属やセラミックスなどの耐熱性を有する材料から形成されている。基材は、リブによって規定される多数のセルをその内部に有する。基材の表面に触媒層を形成するには、例えば、まず、触媒粉末をバインダおよび水と混合し、この混合物を粉砕してスラリーを作製する。バインダは、基材からの触媒層の剥離を防止するために添加される。バインダとしては、ベーマイト(アルミナの水和物)や硝酸アルミニウムなどを用いることができる。また、スラリーの作製の際、スラリーを安定化させるためにpHを3〜5の範囲内に調整することが好ましい。次に、スラリーを基材の表面に塗布し、その後乾燥および焼成を行う。このようにして、排気ガス浄化用触媒を製造することができる。
【0047】
上述したように、本実施形態における製造方法は、金属酸化物担体が混合されたロジウム溶液に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を加えることによって、ロジウム溶液のpHを3.0以上7.5以下に調整する工程S4を包含する。工程S4でロジウム溶液のpHを3.0以上7.5以下に調整することにより、後に検証結果を示すように、ジルコニウムを含む金属酸化物担体へのロジウムの吸着度を高くすることができる。従って、特許文献1のように吸着されていないロジウムを蒸発乾固により半ば無理矢理に担体に担持したり、特許文献2のようにロジウムをコロイド化させたりする必要がない。そのため、ジルコニウムを含む金属酸化物担体にロジウムを高い分散度および微小な粒子サイズで担持することができる。それ故、本実施形態における製造方法によれば、排気ガス浄化用触媒の浄化性能を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態における製造方法では、工程S4において、単なるアルカリ性化合物ではなく、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を用いる。このことにより、後に検証結果を示すように、他のアルカリ性化合物を用いる場合に比べ、触媒が高温に晒された後のロジウム分散度を高く維持することができる。そのため、本実施形態における製造方法により製造される触媒は、耐久性に優れており、高温の排気ガスに晒される排気ガス浄化用触媒として好適に用いられる。
【0049】
なお、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムは、アンモニア水に比べて取り扱いが容易であるので、工程S4において、炭酸アンモニウムまたは炭酸水素アンモニウムをロジウム溶液に加えることが好ましい。
【0050】
また、工程S4において、ロジウム溶液のpHは、4.0以上6.5以下に調整されることが好ましい。ロジウム溶液のpHを4.0以上6.5以下に調整することにより、ロジウムの吸着度をいっそう高くすることができる。
【0051】
ロジウムの触媒活性を十分に発揮させるためには、工程S1において用意される金属酸化物担体は、酸化物換算で50mol%以上95mol%以下のジルコニウムを含むことが好ましい。つまり、金属酸化物担体に占めるジルコニアの割合が50mol%以上95mol%以下であることが好ましい。金属酸化物担体に占めるジルコニアの割合が50mol%以上95mol%以下であることにより、得られた触媒によるNOx浄化率を向上させることができる。
【0052】
また、ロジウムの触媒活性を十分に発揮させるためには、工程S1において用意される金属酸化物担体は、酸化物換算で70mol%以上90mol%以下のジルコニウムを含むことがより好ましい。つまり、金属酸化物担体に占めるジルコニアの割合が70mol%以上90mol%以下であることが好ましい。金属酸化物担体に占めるジルコニアの割合が70mol%以上90mol%以下であることにより、得られた触媒によるNOx浄化率をいっそう向上させることができる。
【0053】
さらに、工程S1において用意される金属酸化物担体は、セリウム(Ce)、ランタン(La)およびネオジム(Nd)からなる群から選択された少なくとも1つの金属を含むことが好ましい。つまり、金属酸化物担体は、ジルコニアのみから構成されているよりも、ジルコニア系の複合酸化物であることが好ましい。
【0054】
金属酸化物担体がセリウムを含んでいると、雰囲気中の酸素を吸収することができるので、そのことによってNOx浄化率が向上する。また、金属酸化物担体がランタンを含んでいると、複合酸化物の表面積が増加するので、そのことによってNOx浄化率が向上する。また、金属酸化物担体がネオジムを含んでいると、ロジウムの凝集を抑制できるので、そのことによってNOx浄化率が向上する。
【0055】
工程S2において用意されるロジウム溶液は、波長300nmの光に対する吸光度が0.8以下であることが好ましい。本願発明者の検討によれば、波長300nmの光に対する吸光度が0.8以下であることにより、波長300nmの光に対する吸光度が0.8を超える場合に比べ、ロジウムの分散度を高くし得ることがわかった。この理由については後に詳述する。
【0056】
また、工程S2において用意されるロジウム溶液の塩素含有量は、1000ppm以下であることが好ましい。塩素は、触媒被毒の原因となるので、ロジウム溶液の塩素含有量が1000ppmを超える場合には、ロジウムの担持後に、塩素を除去するための工程が必要となる。塩素含有量が1000ppm以下のロジウム溶液を用意することにより、そのような工程が不要となり、製造コストの低減および製造に要する時間の短縮が可能になる。
【0057】
本実施形態における製造方法では、工程S4でロジウム溶液のpHが3.0以上7.5以下に調整されるので、工程S5において得られた触媒粉末では、金属酸化物担体にロジウムが高い分散度および微小な粒子サイズで担持され得る。ロジウムの分散度は、ロジウムの全原子数に対する、表面に露出しているロジウム原子の数の比と定義される。ロジウムの分散度は、例えばCOパルス法による測定することができる。十分に高い浄化性能を実現するためには、触媒粉末におけるロジウムの分散度は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0058】
なお、図1には、貴金属としてロジウムのみを用いる場合の製造方法を例示したが、ロジウムに加えて他の貴金属を用いてもよい。CO、HCおよびNOxのすべてを高効率で浄化するためには、ロジウムに加えて白金およびパラジウムを用いることが好ましい。図2に、ロジウム、白金およびパラジウムを用いる場合の製造方法のフローチャートを示す。
【0059】
図2に示すように、この場合、金属酸化物担体にロジウムが担持された触媒粉末を得るための一連の工程S1〜S5とは別に、金属酸化物担体に白金が担持された触媒粉末を得るための一連の工程S7〜S10と、金属酸化物担体にパラジウムが担持された触媒粉末を得るための一連の工程S11〜S14とが行われる。
【0060】
まず、白金を含む触媒粉末を得るための工程S7〜S10を説明する。
【0061】
まず、金属酸化物担体を用意する(工程S7)。この工程S7で用意される金属酸化物担体は、例えば、アルミナ系酸化物やセリア系酸化物である。
【0062】
次に、白金を含む溶液(白金溶液)を用意する(工程S8)。この工程S8で用意される白金溶液は、典型的には、白金塩の水溶液である。白金塩の水溶液としては、例えば、ジニトロジアンミン白金水溶液やヘキサアンミン白金水溶液を用いることができる。なお、工程S7およびS8は任意の順序で行うことができる。
【0063】
続いて、金属酸化物担体を白金溶液に混合する(工程S9)。白金溶液に対し、金属酸化物担体の粉末を加えるか、あるいは、あらかじめ水に分散された金属酸化物担体を水ごと加える。典型的には、白金溶液は、その後、スターラ等によって撹拌され、その後所定温度で所定時間放置される。この工程S9により、金属酸化物担体に白金が吸着される。
【0064】
続いて、白金溶液を乾燥および焼成する(工程S10)。これにより、金属酸化物担体に白金が担持された触媒粉末が得られる。乾燥は、例えば120℃で300分行われる。焼成は、例えば600℃で60分行われる。
【0065】
次に、パラジウムを含む触媒粉末を得るための工程S11〜S14を説明する。
【0066】
まず、金属酸化物担体を用意する(工程S11)。この工程S11で用意される金属酸化物担体は、例えば、アルミナ系酸化物やセリア系酸化物である。
【0067】
次に、パラジウムを含む溶液(パラジウム溶液)を用意する(工程S12)。この工程S12で用意されるパラジウム溶液は、典型的には、パラジウム塩の水溶液である。パラジウム塩の水溶液としては、例えば、硝酸パラジウム水溶液やジニトロジアンミンパラジウム水溶液を用いることができる。なお、工程S11およびS12は任意の順序で行うことができる。
【0068】
続いて、金属酸化物担体をパラジウム溶液に混合する(工程S13)。パラジウム溶液に対し、金属酸化物担体の粉末を加えるか、あるいは、あらかじめ水に分散された金属酸化物担体を水ごと加える。典型的には、パラジウム溶液は、その後、スターラ等によって撹拌され、その後所定温度で所定時間放置される。この工程S13により、金属酸化物担体にパラジウムが吸着される。
【0069】
続いて、パラジウム溶液を乾燥および焼成する(工程S14)。これにより、金属酸化物担体にパラジウムが担持された触媒粉末が得られる。乾燥は、例えば120℃で300分行われる。焼成は、例えば600℃で60分行われる。
【0070】
上述したようにして、ロジウムを含む触媒粉末、白金を含む触媒粉末およびパラジウムを含む触媒粉末を得た後、これらの触媒粉末を用いて、ハニカム状の基材の表面に触媒層を形成すればよい(工程S6)。例えば、まず、ロジウムを含む触媒粉末、白金を含む触媒粉末、パラジウムを含む触媒粉末、バインダおよび水を混合し、この混合物を粉砕してスラリーを作製する。この際、スラリーを安定化させるために、混合物にさらに別の金属酸化物(例えばアルミナ)を加えてもよい。また、既に述べた理由から、スラリーの作製の際、pHを3〜5の範囲内に調整することが好ましい。次に、スラリーを基材の表面に塗布し、その後乾燥および焼成を行う。このようにして、貴金属としてロジウム、白金およびパラジウムを含む排気ガス浄化用触媒を製造することができる。
【0071】
既に説明したように、工程S4でロジウム溶液のpHを3.0以上7.5以下に調整することにより、ジルコニウムを含む金属酸化物担体へのロジウムの吸着度を高くすることができる。また、工程S4において、単なるアルカリ性化合物ではなく、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を用いることにより、他のアルカリ性化合物を用いる場合に比べ、触媒が高温に晒された後のロジウム分散度を高く維持することができる。以下、これらの点を検証した結果を説明する。
【0072】
図3に、ロジウム溶液に金属酸化物担体を混合し、さらに種々の化合物を所定量添加したときの残留ロジウム濃度(金属酸化物担体に吸着されず、溶液中に残留しているロジウムの濃度)を示す。図3は、具体的には、ジルコニア(ZrO2)およびセリア(CeO2)に加えて少量のランタニア(La23)およびネオジア(Nd23)を含むジルコニア系複合酸化物を硝酸ロジウム水溶液に混合し、さらに種々の化合物を添加して80℃で1時間放置したときの残留ロジウム濃度を示している。残留ロジウム濃度は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。なお、添加化合物のうち、炭酸アンモニウムについては、2倍量、3倍量、5倍量、10倍量添加した場合も示している(図中に「×2」、「×3」、「×5」、「×10」と表記している)。
【0073】
図3からわかるように、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ性化合物を添加すると、化合物を添加しない場合に比べて残留ロジウム濃度が低くなる。つまり、金属酸化物担体へのロジウムの吸着量が増加する。これに対し、クエン酸、シュウ酸、エタノール、酢酸のような酸性化合物を添加すると、残留ロジウム濃度は、化合物を添加しない場合とほぼ同じか、あるいは化合物を添加しない場合に比べて高くなる。つまり、金属酸化物担体へのロジウムの吸着量はほとんど変化しないか、あるいは減少する。
【0074】
図4に、金属酸化物担体が混合されたロジウム溶液のpHと、ロジウムの吸着度との関係を示す。図4は、具体的には、硝酸ロジウム水溶液に、図3に示した場合と同じジルコニア系複合酸化物を混合し、温度を80℃に保ったときのpHと吸着度との関係を示している。pHの調整は、溶液に加える炭酸アンモニウムの量を変化させることにより行った。また、吸着度は、残留ロジウム濃度から算出した。
【0075】
市販の硝酸ロジウム水溶液に、ジルコニア系複合酸化物を単に混合した場合(つまりpH調整を行わない場合)のpHは、約1.2であり、このとき、図4からわかるように、ロジウムはほとんど金属酸化物担体に吸着されない。特許文献1に開示されているように、溶液を蒸発乾固させることによって無理矢理担持を行うことも可能ではあるが、ロジウムが金属酸化物担体に吸着されていない状態で溶媒を飛ばすと、その過程でロジウムが凝集するので、分散度が低下してしまう。
【0076】
これに対し、図4からわかるように、pHが3.0以上7.5以下であると、約80%以上の吸着度を実現することができる。そのため、ジルコニウムを含む金属酸化物担体にロジウムを高い分散度で担持することができる。また、図4からわかるように、pHが4.0以上6.5以下であると、約97%以上の吸着度を実現することができる。そのため、ジルコニウムを含む金属酸化物単体にロジウムをいっそう高い分散度で担持することができる。
【0077】
表1に、金属酸化物担体が混合されたロジウム溶液にアルカリ性化合物として炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を添加した実施例1〜5、アルカリ性化合物を添加しなかった比較例1、アルカリ性化合物としてそれぞれ水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを添加した比較例2および3について、初期状態のロジウム分散度と、高温加熱(800℃で5時間加熱)後のロジウム分散度とを示す。なお、初期状態においても、スラリー焼成の際にロジウムが担持された金属酸化物担体は既に600℃で1時間加熱されている。分散度の測定は、COパルス法により行った。また、表1には、工程S2において用意されるロジウム溶液の波長300nmの光に対する吸光度(Abs.)と、工程S1において用意される金属酸化物担体中のジルコニア比率(mol%)とを併せて示している。さらに、表1中に示されている高温加熱後のロジウム分散度を、図5にグラフとして示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示すように、実施例1〜5および比較例2、3における初期状態のロジウム分散度は、比較例1における初期状態のロジウム分散度よりも高い。これは、アルカリ性化合物の添加により、金属酸化物担体へのロジウムの吸着度が高くなるからである。
【0080】
また、表1および図5に示すように、実施例1〜5における高温加熱後のロジウム分散度は、比較例1〜3における高温加熱後のロジウム分散度よりも高い。このように、アルカリ性化合物として、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を用いることにより、触媒が高温に晒されてもロジウム分散度を高く維持することができる。アルカリ性化合物として水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いると高温加熱後にロジウム分散度が大きく低下してしまう理由は、高温でナトリウムやカリウムが触媒成分と反応してしまうためと考えられる。
【0081】
なお、実施例1〜4と、実施例5とでは、異なるロジウム溶液を用いた。図6(a)に、実施例1〜4で用いたロジウム溶液の吸光度(Abs.)を示し、図6(b)に、実施例5で用いたロジウム溶液の吸光度(Abs.)を示す。図6(a)からわかるように、実施例1〜4で用いたロジウム溶液の波長300nmの光に対する吸光度は0.2である。これに対し、図6(b)からわかるように、実施例5で用いたロジウム溶液の波長300nmの光に対する吸光度は1である。表1における実施例1〜4と実施例5との比較から、工程S2において用意されるロジウム溶液の波長300nmの光に対する吸光度が0.8以下であることにより、波長300nmの光に対する吸光度が0.8を超える場合に比べ、ロジウムの分散度を高くし得ることがわかる。これは、溶液中のロジウムイオンの状態が分散度に影響するためと考えられる。
【0082】
続いて、工程S1において用意される金属酸化物担体中のジルコニア比率(つまり酸化物換算でのジルコニウム比率)と、得られた触媒によるNOx浄化率との関係を検証した結果を説明する。
【0083】
図7に、金属酸化物担体中のジルコニア比率(mol%)と、NOx排出量(g/km)との関係を示す。NOx排出量の測定は、排気量が125ccの自動二輪車を使用し、EU3排ガステスト条件で行った。また、図7中に例示する2点A、Bについて、用いた金属酸化物担体の化学組成を表2に示し、CO排出量、THC排出量およびNOx排出量を表3に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
図7から、金属酸化物担体中のジルコニア比率が50mol%以上95mol%以下であることにより、NOx排出量を低減でき、NOx浄化率を向上させ得ることがわかる。また、図7から、金属酸化物担体中のジルコニア比率が70mol%以上90mol%以下であることにより、NOx排出量をいっそう低減でき、NOx浄化率をいっそう向上させ得ることがわかる。例えば、図7中の2点A、Bを比較すると、点Aすなわちジルコニア比率が54.7mol%の場合よりも、点Bすなわちジルコニア比率が78.1mol%の場合の方が、NOx排出量が少なく、また、CO排出量およびTHC排出量も少ない。
【0087】
なお、ここまでの説明では、ロジウム溶液に金属酸化物担体を混合した後にpHの調整を行う例を示したが、図8に示すように、ロジウム溶液に金属酸化物担体を混合する前にpHの調整を行ってもよい。
【0088】
図8に示す例では、まず、ジルコニウムを含む金属酸化物担体を用意し(工程S1)、次に、ロジウム溶液を用意する(工程S2)。なお、工程S1およびS2は、任意の順序で行うことができる。
【0089】
続いて、ロジウム溶液に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を加えることによって、ロジウム溶液のpHを所定の範囲に調整する(工程S3’)。
【0090】
次に、金属酸化物担体をロジウム溶液に混合する(工程S4’)。工程S3’における所定の範囲(ロジウム溶液のpH範囲)は、この工程S4’の実行後にロジウム溶液のpHが3.0以上7.5以下となるように設定されている。つまり、金属酸化物担体をロジウム溶液に混合することによるpHの変動を見越した上で、工程S3’においてpHの調整が行われる。典型的には、ロジウム溶液は、金属酸化物担体を加えられた後、スターラ等によって撹拌され、その後所定温度(例えば60℃)で所定時間(例えば1時間〜5時間)放置される。この工程S4’により、ジルコニウムを含む金属酸化物担体に、ロジウムが吸着される。
【0091】
続いて、ロジウム溶液を乾燥および焼成し(工程S5)、その後、得られた触媒粉末を用いて、ハニカム状の基材の表面に触媒層を形成する(工程S6)。
【0092】
上述したように、ロジウム溶液に金属酸化物担体を混合した後にpHの調整を行ってもよいし、ロジウム溶液に金属酸化物担体を混合する前にpHの調整を行ってもよい。つまり、金属酸化物担体およびロジウム溶液を用意した後、ロジウム溶液に、金属酸化物担体と、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水とを加え、pHが3.0以上7.5以下に調整されたロジウム溶液を得る工程を実行すればよく、この工程は、図1に示した工程S3およびS4を含んでいてもよいし、図8に示した工程S3’およびS4’を含んでいてもよい。得られるロジウム溶液のpHが3.0以上7.5以下であることにより、ジルコニウムを含む金属酸化物担体へのロジウムの吸着度を高くすることができる。
【0093】
図1に示したように、金属酸化物担体をロジウム溶液に混合した後にpHの調整を行うと、ロジウムをより均一に分散させることができるという利点が得られる。また、金属酸化物担体を溶液に混合する前にpHの調整を行うと、酸に溶解しやすい成分を含む金属酸化物担体を用いることができるという利点が得られる。
【0094】
本実施形態における製造方法によって製造された排気ガス浄化用触媒は、浄化性能および耐久性に優れるので、各種の自動車両に好適に用いられる。図9に、本実施形態における製造方法によって製造された排気ガス浄化用触媒を備えた自動二輪車100を示す。
【0095】
自動二輪車100は、内燃機関1と、内燃機関1の排気ポートに接続された排気管7と、排気管7に接続された消音器(マフラ)8とを備えている。内燃機関1からの排気ガスは、排気管7によって外部に導かれる。排気管7内には、上述した製造方法によって製造された排気ガス浄化用触媒が設けられている。自動二輪車100は、浄化性能および耐久性に優れた排気ガス浄化用触媒を備えるので、NOx等の排出量を低減することができる。
【0096】
なお、ここでは、自動二輪車を例示したが、本実施形態における製造方法によって製造された排気ガス浄化用触媒は、自動二輪車に限定されず、自動車両全般に好適に用いられる。例えば、バギーなどのATVにも用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によると、ジルコニウムを含む金属酸化物担体にロジウムが高い分散度および微小な粒子サイズで担持された排気ガス浄化用触媒を製造し得る方法を提供することができる。本発明による製造方法によって製造された排気ガス浄化用触媒は、自動二輪車をはじめとする各種自動車両に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0098】
1 内燃機関
7 排気管
8 消音器
100 自動二輪車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウムを含む金属酸化物担体を用意する工程(a)と、
ロジウムを含む溶液を用意する工程(b)と、
前記溶液に、前記金属酸化物担体と、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水とを加え、pHが3.0以上7.5以下に調整された前記溶液を得る工程(c)と、
を包含する排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項2】
前記工程(c)は、
前記金属酸化物担体を前記溶液に混合する工程(c−1A)と、
前記工程(c−1A)の後に、前記溶液に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を加えることによって、前記溶液のpHを3.0以上7.5以下に調整する工程(c−2A)と、
を含む請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項3】
前記工程(c)は、
前記溶液に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたはアンモニア水を加えることによって、前記溶液のpHを所定の範囲に調整する工程(c−1B)と、
前記工程(c−1B)の後に、前記金属酸化物担体を前記溶液に混合する工程(c−2B)と、
を含み、
前記工程(c−1B)における前記所定の範囲は、前記工程(c−2B)の実行後に前記溶液のpHが3.0以上7.5以下となるように設定されている請求項1に記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項4】
前記工程(c)において得られる前記溶液のpHは4.0以上6.5以下である請求項1から3のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項5】
前記工程(a)において用意される金属酸化物担体は、酸化物換算で50mol%以上95mol%以下のジルコニウムを含む請求項1から4のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項6】
前記工程(a)において用意される金属酸化物担体は、酸化物換算で70mol%以上90mol%以下のジルコニウムを含む請求項5に記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項7】
前記工程(a)において用意される金属酸化物担体は、セリウム、ランタンおよびネオジムからなる群から選択された少なくとも1つの金属を含む請求項1から6のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項8】
前記工程(b)において用意される前記溶液は、波長300nmの光に対する吸光度が0.8以下である請求項1から7のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項9】
前記工程(b)において用意される前記溶液の塩素含有量は、1000ppm以下である請求項1から8のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項10】
前記工程(c)の後に、前記溶液を乾燥および焼成することによって、前記金属酸化物担体にロジウムが担持された触媒粉末を得る工程(d)をさらに包含する請求項1から9のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項11】
ハニカム状の基材の表面に、前記触媒粉末を用いて触媒層を形成する工程(e)をさらに包含する請求項10に記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項12】
内燃機関と、
前記内燃機関からの排気ガスを外部に導く排気管と、
請求項1から11のいずれかに記載の排気ガス浄化用触媒の製造方法によって製造され、前記排気管内に設けられた排気ガス浄化用触媒と、を備える自動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−120940(P2012−120940A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271266(P2010−271266)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】