説明

排気ガス浄化装置の制御装置

【課題】この排気ガス浄化装置の制御装置は,舶用等の大型ディーゼルエンジンからの排気ガス中の粒子状物質をフイルタで捕集し,フイルタの再生はグループ毎に行ってフイルタを再生する。
【解決手段】この排気ガス浄化装置の制御装置は,複数のフイルタ3から成るフイルタグループ2を複数備えている。フイルタグループ2は排気管4に並列して配設され,フイルタグループ2には排気ガスGを導入又は遮断するための開閉弁7がそれぞれ設けられている。フイルタグループ2を1グループ毎に順次に,粒子状物質が捕集されたことに応答して,フイルタグループ2に設けた開閉弁7を順次遮断してフイルタ3に設けたヒータ12を順次通電し,粒子状物質を焼却してフイルタ3の再生処理を順次に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,船舶等に使用される大型ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含有される煤,SOF等の有害物質である粒子状物質を複数のフイルタグループでそれぞれ捕集し,フイルタグループに捕集された粒子状物質をグループ毎に順次焼却して消失させてフイルタを再生することができる排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは,高い熱効率を有することから,結果的にディーゼル車の普及は地球温暖化防止に寄与することになる。また,ディーゼルエンジンから排出される炭素系の粒子状物質(PM),有機化合物等の有害物質は,人体に有害であることから,近年,その排出量を益々低減するように規制されている。そこで,ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の粒子状物質を捕集するフイルタが多数提案されている。これらのフイルタを用いた排気ガス浄化装置は,自動車用として触媒作用を利用して300℃程度から徐々に粒子状物質を燃焼させ,排気ガス中の粒子状物質を消失させることが一般的である。また,従来のディーゼルパティキュレートフィルタ即ち排気ガス浄化装置としては,セラミックス繊維を積層した構造のフィルタ,或いは多孔質セラミックスから成るハニカム構造のフィルタが使用されている。粒子状物質を捕集したフィルタは,パティキュレート物質を加熱焼却して再生する必要があり,その時にフィルタに設けたヒータに通電して粒子状物質を加熱焼却してフィルタを再生しなければならない。
【0003】
従来,開示されている停泊中の船舶排気ガス回収浄化装置として,船舶が停泊中に運転するディーゼルエンジンやボイラーから排出される排気ガスを,本船煙突の上部に排気ガス捕集器を吊り下げて収集し,該排気ガスを本船以外の場所に移送して浄化するものであり,船舶に個々に排気ガス浄化装置を設置する必要を無くしたものである(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
船舶のように,複数台のディーゼルエンジンを駆動させる機械において,簡単な構成で,効率よくNOx を還元処理して無害化する排気ガス浄化装置が知られている。該排気ガス浄化装置は,各発電用エンジンの排気経路を1つの集合経路に合流させる。集合経路には上流側から順に,尿素水噴射ノズルとNOx 触媒とを配置する。本排気ガス浄化装置は,電力トランスディーサの検出情報に基づいて尿素水噴射ノズルからの尿素水供給量を調節するように構成されている(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
SOx 規制が行われている海域に出入りする船舶において,省力化を図りつつ経済性と規制クリアとの両立を図る船舶におけるエンジンの排気ガス浄化システムが知られている。船舶には,一般燃料のC重油タンクと低硫黄燃料のA重油タンクとが搭載されている。自船位置自動検出手段と規制マップとを照合して規制対象海域までの距離が自動的に演算され,規制対象海域への到達に合わせて,燃料を自動的に一般燃料から低硫黄燃料に切り換え,排気ガスはバイパス排気管に流してSCR触媒の機能は停止させ,排気ガス浄化状態の切り換えが自動的に行われる(例えば,特許文献3参照)。
【0006】
また,排気ガスが低温である場合にもNOx 排出量を低減できる船舶排気ガスの浄化方法および浄化装置が知られている。該浄化方法は,エンジンと脱硝触媒との間に窒素酸化物を吸着し得る吸着剤を配置し,触媒に接触する排気ガスの温度が低いときは,排気ガス中の窒素酸化物を吸着剤に吸着させ,高温となったときに脱離させて,選択接触還元法によって,排気ガスに初期から含まれる窒素酸化物と吸着剤から脱離した窒素酸化物とを還元させるものである(例えば,特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−204023号公報
【特許文献2】特開2010−71150号公報
【特許文献3】特開2010−69999号公報
【特許文献4】特開2002−295241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで,我が国も加盟している国際海事機構(IMO)によるマルポール条約によれば,2016年からNOx の排出が現行比80%に削減する目標が決まっている。PMについては,まず燃料中の硫黄分を2015年から指定海域で0.1%以下が予定されている。PM規制は,未定であるが,自動車等の規制を考えると,近い将来規制されることは間違いないと考えられる。指定海域というのは,陸地から200海里の領域であり,この区域を過ぎると規制は緩やかになる。また,東京都が2005年に東京湾沿岸地域での船舶による煤塵排出量を発表している。自動車より少ないが固定発生源に近い排出量である。2003年より東京都は使用過程車の排ガス規制を実施しており,その効果を考えると自動車からのPM排出量は現時点では相当低減しており,船舶へのPM規制は避けられないと考えられる。
【0009】
船舶用ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の煤等の粒子状物質を捕集して焼却させる排気ガス浄化装置としては,低い排気圧力損失でありながら,煤等の粒子状物質の高い捕集効率が得られ,船舶で必要とされる離着岸時のみ粒子状物質を捕集できるように制御することが好ましいものである。自動車用では20kPaから30kPaの圧力損失であるが舶用の場合は,3kPaから5kPaと,極めて低い圧力損失に設定する必要がある。港への着岸離岸時の限定された期間のみ捕集再生を行うが排ガス中に燃料に起因する大量の硫酸が含まれるため長期にわたる停止期間中の腐食防止対策が必要である。万一の自着火が起きると,火災につながるおそれがあるので対応が必要である。数百kWから5万kW以上まで,出力範囲が広範であるが,自動車に比べ台数が少ない船舶用ディーゼルエンジンに対応するには,比較的小容量のDPFを仕様に合わせて組み合わせて対応するのがコスト低減、品質保証のためには不可欠である。しかも,DPFについては,長期間にわたり確実な捕集再生が可能な高い信頼性を確保する必要性がある。
【0010】
従来,試みられたDPFはセラミックスハニカムをフィルタに使用するものが主流で灰分による早期目詰まり捕集した煤を港まで持ち帰らなければならないなど実用性が不十分で商品化されなかった。このため,船舶用排気ガス浄化装置についての規制そのものが具体化しなかった面もあると思料される。そこで,これらの問題点を解決し,世界規模で港湾都市の環境改善に寄与し,新たな商品の創造により造船関連業界に新しい雇用を作り出すことが期待されている。舶用で燃焼による強制再生を行う方式のDPF装置は,実用化された自動車用DPFの場合は,2ユニット又は3ユニットのDPFを交互に再生するものであるが,これらのDPFは圧力損失が大きいという問題点を有していた。
【0011】
この発明の目的は,上記の問題を解決することであり,複数のフイルタから成るフイルタグループを排気管に並列して複数設置し,船舶等に搭載された大型ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる煤,SOF等の有害物質である粒子状物質(PM)を捕集し,フイルタ数を多く用いて排圧上昇を低い値に抑え,PMを焼却させるためのヒータをフイルタにそれぞれ設け,また,排気管に排気ガス浄化装置をバイパスするバイパス管を設け,排気ガスの浄化処理を行わないときには,ディーゼルエンジンからの排気ガスをバイパス管を通じて排気し,排気ガスの浄化処理を行うときには,フイルタグループに粒子状物質が予め決められた所定量以上捕集されたことに応答してフイルタグループを順次再生することができる排気ガス浄化装置の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は,大型ディーゼルエンジンからの排気ガスを排出する排気管にフイルタ装置を設け,前記フイルタ装置の上流側の前記排気管に電動バイパス弁を設置したバイパス管を分岐して接続し,前記排気ガスを前記フイルタ装置に流して前記排気ガス中に含まれる煤,SOF等の粒子状物質を前記フイルタ装置に捕集し,前記フイルタ装置に捕集された前記粒子状物質を焼却して前記排気ガスを浄化することから成る排気ガス浄化装置において,
前記フイルタ装置は,複数のフイルタから成るフイルタグループを複数備えており,前記フイルタグループは前記排気管に対してそれぞれ並列して配設され,前記フイルタグループには前記排気管からの前記排気ガスを導入又は遮断するための開閉弁がそれぞれ設けられており,前記フイルタグループを1グループ毎に順次に,前記フイルタグループに予め決められた所定量の前記粒子状物質が捕集されたことに応答して,前記フイルタグループに設けた前記開閉弁を順次遮断して前記フイルタに設けたヒータを順次通電し,前記フイルタグループの前記フイルタに捕集された前記粒子状物質を焼却して前記フイルタの再生処理を順次に行うことを特徴とする排気ガス浄化装置の制御装置に関する。
【0013】
また,この排気ガス浄化装置の制御装置は,前記フイルタグループのグループ数が4〜8グループである。
【0014】
また,この排気ガス浄化装置の制御装置は,船舶に搭載されて前記排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置として使用されており,前記船舶が着岸する港に予め決められた所定距離に近づいた時点で,前記フイルタグループの捕集・再生処理を手動又はGPS情報に応答して自動的に開始し,前記船舶が着岸する前記港に予め決められた所定距離離れた時点で,前記フイルタグループの捕集・再生処理を手動又はGPS情報に応答して自動的に停止するものである。
【0015】
また,前記フイルタ装置は,入口側の前記排気管に設けた入口側温度センサと出口側の前記排気管に設けた出口側温度センサとを備えており,前記入口側温度センサと前記出口側温度センサとの検出温度が予め決められた所定の温度差を越えた場合に,前記電動バイパス弁を開放し,前記排気ガスを前記バイパス管に流すと共に,前記フイルタ装置への前記排気ガスの流れを停止して前記フイルタ装置の自着火による焼損を防止する。
【0016】
この排気ガス浄化装置の制御装置は,前記フイルタ装置の捕集・再生処理を停止した直後に,各前記フイルタグループの前記フイルタを100℃〜200℃程度に加熱し,各前記フイルタグループの各前記フイルタに空気を供給して前記フイルタに存在する水分を蒸発させることによって,硫酸による前記フイルタの内部における構造部材の腐食を防止することを計るものである。
【0017】
また,この排気ガス浄化装置の制御装置は,各前記フイルタグループの再生時に,前記フイルタにそれぞれ設けた前記ヒータへの通電時の電流を個別に測定すると共に,前記フイルタに設けた前記ヒータを個別に電力制御するものである。
【0018】
また,この排気ガス浄化装置の制御装置は,各前記フイルタグループの再生時に,前記フイルタにそれぞれ設けた前記ヒータへの通電電圧の電源を変圧器により降圧して,その降圧した電圧によってゼロクロス機能付きの半導体リレーを用いて各前記フイルタグループの前記フィルタの前記ヒータへの通電電力を独立して制御するものである。
【発明の効果】
【0019】
この排気ガス浄化装置の制御装置は,上記のように構成されているので,舶用ディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる煤等の粒子状物質(PM)を,排気管に並列して複数のフイルタグループを配設して,フイルタの排圧上昇を低い値に抑えることができると共に,高い効率でそれぞれ捕集して排気管における背圧の上昇を抑制し,ディーゼルエンジンの作動を良好に保ち,また,各フイルタグループに捕集された粒子状物質をグループ毎に順次焼却してフイルタを再生し,常に良好にフイルタグループの粒子状物質の捕集・再生処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明による制御装置を備えた排気ガス浄化装置を示す基本構成を示す概念図である。
【図2】図1の排気ガス浄化装置におけるフイルタグループを示す概略図である。
【図3】図2のフイルタグループの端面図である。
【図4】図1の排気ガス浄化装置における制御装置の配線を示す説明図である。
【図5】この排気ガス浄化装置の制御装置におけるフイルタグループの再生工程を示す説明図である。
【図6】この排気ガス浄化装置の制御装置による連続捕集・再生における時間経過に対する圧力損失を示すグラフである。
【図7】この排気ガス浄化装置の制御装置による交互に再生を行った時の時間経過に対する圧力損失を示すグラフである。
【図8】この排気ガス浄化装置の制御装置によるフイルタグループの再生グループ数に対する捕集効率と圧力損失とを示すグラフである。
【図9】この排気ガス浄化装置の制御装置によるフイルタグループの捕集・再生時の捕集効率と圧力損失とを示すグラフである。
【図10】この排気ガス浄化装置の制御装置における各フイルタグループに対する処理工程を示す処理フロー図である。
【図11】図10の処理フロー図に続く処理フロー図である。
【図12】図11の処理フロー図に続く処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この排気ガス浄化装置は,船舶,産業機械等に使用される大型ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる煤,SOF等から成る有害物質である粒子状物質(PM)をハウジング内に配設したフィルタで捕集し,フィルタに捕集されたPMをフィルタに設けたヒータに通電して加熱焼却し,フィルタを再生するものであり,特に,船舶に搭載するのに最適化した排気ガス浄化装置である。この排気ガス浄化装置は,船舶を駆動する大型ディーゼルエンジンに使用される場合には,フイルタは,それを設置する例えば,甲板,収納室等のベース(図示せず),に対して垂直状態に設置して使用するのが好ましいものである。この船舶用排気ガス浄化装置は,概して,炭化珪素繊維のフェルトを使用した複数のフイルタから成るフイルタグループ,該フイルタの再生を制御する制御装置,バイパス管に配設されたバイパス弁を開閉する装置,各フィルタユニットの入口に設けた開閉弁,440V又は220Vの交流電源を20V〜50Vに降圧する変圧器,フィルタへの電力を調整するスイッチ,及びECU又はシーケンサーから構成されている。
【0022】
以下,図面を参照して,この発明による排気ガス浄化装置の制御装置について説明する。この排気ガス浄化装置の制御装置は,概して,ディーゼルエンジンから排出される排気ガスGを排気する排気管4の途中に,電動又はエアシリンダ8で駆動されるバイパス弁6設け,バイパス弁6の上流及び下流から排気管4を分岐させ,これらに排気ガス浄化装置1を接続し,必要な時のみ排気ガス浄化装置1を稼働させ,排気ガスG中の煤,SOF,塵等の粒子状物質(PM)を捕集する制御を行うものである。排気ガス浄化装置1は,例えば,船舶の甲板等のベース9に固定された支持台11にセットして適用されるものであり,排気管4には大型ディーゼルエンジンからの排気ガスGが排出されるように構成されている。排気ガス浄化装置1は,支持台11にセットされた複数のフイルタ3から成るフイルタグループ2を複数備えたフイルタ装置を設け,フイルタ装置の上流側の排気管4に電動バイパス弁6を設置したバイパス管5を分岐して接続し,排気ガスGをフイルタ装置に流して排気ガスG中に含まれる煤,SOF等の粒子状物質をフイルタ装置に捕集し,フイルタ装置に捕集された粒子状物質を焼却して排気ガスGを浄化するものである。フイルタグループ2は,特に,排気管4に対してそれぞれ並列して配設されており,フイルタグループ2のうち1つでも故障した場合には作動停止できるように構成されている。
フイルタグループ2のフイルタ3は独立してヒータ12への電流計測と通電制御が可能に構成されており,例えば,いずれかのフイルタ3が故障した場合には,故障のフイルタ3のみの作動を停止し,フイルタ3の交換や修理ができるように構成されており,その他のフイルタ3はそのまま継続して作動を続行でき,即ち,フイルタグループ2を作動させることができる。フイルタグループ2は,単数又は複数(実施例では4個)のフイルタ3から構成でき,排気管4からの排気ガスGを導入又は遮断するための開閉弁7がそれぞれ設けられている。場合によっては,フイルタ3を単数又は複数から成るフイルタユニット(図示せず)に構成し,複数のフイルタユニットをフイルタグループ2に構成することもできる。フイルタ3の組み合わせは,排気ガス浄化装置1の規模に併せて適正に選択すればよいものである。言い換えれば,開閉弁7は,フイルタ3毎に設けたり,フイルタユニット毎に設けたり,及び/又はフイルタグループ2毎に設けることができる。この排気ガス浄化装置1の制御装置は,実施例では,フイルタグループ2を1グループ毎に順次に,フイルタグループ2に予め決められた所定量の粒子状物質が捕集されたことに応答して,フイルタグループ2の各フイルタユニットに設けた開閉弁7を順次に遮断し,フイルタグループ2のフイルタ3に捕集された粒子状物質を焼却してフイルタ3の再生処理を順次に行うものである。
【0023】
また,排気ガス浄化装置1は,フイルタグループ2のグループ数が4〜8グループである。また,この排気ガス浄化装置の制御装置は,船舶に搭載されて排気ガスGを浄化する排気ガス浄化装置として使用して好ましく,船舶が着岸する港に予め決められた所定距離に近づいた時点で,フイルタグループ2の捕集・再生処理を手動又はGPS情報に応答して自動的に開始し,船舶が着岸する港に予め決められた所定距離離れた時点で,フイルタグループ2の捕集・再生処理を手動又はGPS情報に応答して自動的に停止するものである。更に,フイルタ装置は,入口側の排気管4に設けた入口側温度センサ(図示せず)と出口側の排気管に設けた出口側温度センサ(図示せず)とを備えており,入口側温度センサと出口側温度センサとの検出温度が予め決められた所定の温度差を越えた場合に,電動バイパス弁6を開放し,排気ガスGをバイパス管5に流すと共に,フイルタ装置への排気ガスGの流れを停止してフイルタ装置の自着火による焼損を防止するものである。
【0024】
この排気ガス浄化装置の制御装置は,フイルタ装置の捕集・再生処理を停止した直後に,各フイルタグループ2のフイルタ3を100℃〜200℃程度に加熱し,各フイルタグループ2の各フイルタ3に空気を供給してフイルタ3に存在する水分を蒸発させることによって,硫酸によるフイルタ3の内部における構造部材の腐食を防止することを計るものである。排気ガス浄化装置1において,フイルタグループ2におけるフイルタ3に設けたヒータ12の配線図は,図4に示されている。また,この排気ガス浄化装置の制御装置は,各フイルタグループ2の再生時に,フイルタ3にそれぞれ設けたヒータ12への通電時の電流を個別に測定すると共に,フイルタ3に設けたヒータ12を個別に電力制御するものである。更に,この排気ガス浄化装置の制御装置は,各前記フイルタグループ2の再生時に,フイルタ3にそれぞれ設けたヒータ12への通電電圧の電源を変圧器15により降圧して,その降圧した電圧によってゼロクロス機能付きのソリッドステートリレー即ち半導体リレー13を用いて各フイルタグループ2のフィルタ3のヒータ12への通電電力を独立して制御するものである。
【0025】
この排気ガス浄化装置の制御装置は,再生処理工程として,フイルタ3による粒子状物質(PM)の捕集中は,再生するフイルタユニット即ちフイルタグループ2を1グループずつ再生するように制御するものであり,フイルタグループ2の再生は,入口16に設けた開閉弁7を閉じ,フイルタ内部のヒータ12に通電し,所定の温度まで加熱し,適切な流量の空気を導入して粒子状物質を燃焼させる制御を行うものである。この排気ガス浄化装置の制御装置は,PMの所定の燃焼期間が経過したらヒータ12への通電を停止し,一定の冷却時間経過後に,空気の導入を停止し,開閉弁7を開放して排気ガスG中の粒子状物質を捕集する処理を再開すると共に,次のフイルタグループ2の再生を開始する。このようにして1 グループずつ,フイルタグループ2を順次に再生をし,連続的な捕集を可能とするものである。
【0026】
大型ディーゼルエンジンは,補機エンジンの500kWから50000kW以上まで大きさが極めて広範囲にわたっている。従って,図1に示すように,比較的に小型のフイルタユニット即ちフイルタグループ2を複数組み合わせて,小型から大型まで対応することが現実的になる。この場合,同時に再生するフイルタグループ2の数の設定が圧力損失の低減に有効であることが分かった。フイルタグループ2の再生時間が一定の条件で,同数のフイルタグループ2からなるフイルタ3をグループ毎に順次再生する場合に,フイルタグループ2のグループ数が少ないと,フイルタ3による捕集に使用できるグループの割合が小さいため圧力損失が大きくなる。グループ数が逆に大き過ぎると,再生と再生の間の時間が長くなり,やはり圧力損失が大きくなることが分かった。
【0027】
実験結果を使った詳細な検討の結果の一例を,図6,及び図7に示した。図6は,排気ガス浄化装置1を船用補機エンジンに設けたものであり,フイルタ3による粒子状物質の連続捕集・再生の場合であり,時間経過におけるフイルタグループ2の圧力損失と捕集効率との関係を示すグラフである。図7は,フイルタグループ2の再生処理を交互に行った場合であり,時間経過におけるフイルタグループ2の圧力損失と捕集効率との関係を示すグラフである。排気ガス浄化装置1の詳細なモデル化と,いくつかの実験定数の調整により,計算値が実験値と十分な精度で一致していることが分かった。この計算手法を用いて現実的なディーゼルエンジンの運転条件と,排気ガス浄化装置1の仕様を選定し,フイルタグループ2の再生グループ数を2から16まで広い範囲で変化させ,捕集再生中の捕集効率と排気圧力の変化を計算した。この計算結果を図8に示す。図8は,フイルタグループ2の再生グループ数に対するフイルタグループ2の圧力損失と捕集効率との関係を示すグラフである。図8から分かるように,フイルタグループ2のグループ数が4から8の間に選ぶことにより,フイルタグループ2の圧力損失を最も低くできることが分かった。
【0028】
排気ガス浄化装置1は,船舶の就航時に着岸と離岸の一定期間のみ作動させるため,煤等の粒子状物質(PM)を捕集再生する運転時間より排気ガスGをバイパスする停止時間の方が長い。燃料のC重油には,大量の硫黄が含まれており,該硫黄が排気ガスG中では亜硫酸ガスとなり,排気ガスG中の水分には硫酸が含まれ,該水分は強い酸化性がある。ディーゼルエンジンの停止中に,排気ガス温度が下がると,フイルタ3を構成する金属部材の腐食が懸念される。そこで,ディーゼルエンジンの停止直後に,水分を蒸発させるため,フイルタ3を空気でパージすることにより,水分による金属部材の腐食を防止することができる。
【0029】
1000kWの船用ディーゼルエンジンからの排気ガスGを排出する排気管4に4個のフイルタグループ2から構成された排気ガス浄化装置1を装着した。1 個のフイルタグループ2は,4個のフィルタ3から構成されている。再生の4グループ数は,4とし,1グループずつ4グループを順次再生した。起動、停止は起動ボタンを手動で操作する方式とした。装置の概略図を図1に示している。捕集再生時の排気圧力と捕集効率の検討結果を図9に示す。図9は,排気ガス浄化装置1について,フイルタ3の再生を行った場合の経過時間に対する圧力損失と捕集効率を示すグラフである。図9から分かるように,フイルタ3の再生処理を行う毎に,フイルタ3による圧力損失が大きく低下していることが分かる。
【0030】
電気ヒータ12を組み込んだSiCフェルトから構成したフィルタ3とする排気ガス浄化装置1において,着岸一定距離前の時点から離岸後一定距離に到達するまでの間,粒子状物質(PM)の捕集と再生を行うと共に,4グループから8グループに分けた排気ガス浄化装置1をグループ毎に順次再生することにより,舶用エンジンに要求されるPM捕集効果を許容排圧損失内で実現できることが分かった。また,各フイルタ3を独立して電力制御することにより,万一どれかのフイルタグループ2に不具合が発生した場合,不具合のフイルタ3(又はフイルタユニット)の開閉弁7を閉止し,ヒータ2への通電を停止すれば,残りのフイルタグループ2は正常に運転可能であり,排気ガス浄化の機能を維持することが可能である。大型船舶の大部分が大陸間を往復する外航船であり,1回の航海が1ヶ月以上であり,不具合発生から修理までの期間が長期化することが多いが,その間も煤等の粒子状物質をフイルタグループ2のフイルタ3で捕集する捕集効果を維持することができる。
【0031】
この排気ガス浄化装置の制御装置における制御フローは,図10,図11及び図12に示している。
まず,図10を参照して,この排気ガス浄化装置の制御装置における捕集・再生処理工程を説明する。排気ガス浄化装置1の主電源をONし(S1),次いで,排気ガス浄化システムにおけるフイルタグループ2のフイルタ3の捕集・再生処理の起動スイッチをONする(S2)。フイルタ捕集・再生のため,起動スイッチ又はGPSによる自動起動したか否かを判断し(S3),排気ガス浄化装置1がON状態であれば,再生を行うフイルタグループ2以外のフイルタグループ2の開閉弁7を開放して排気ガスGを捕集する状態にして排気ガスGを浄化する(S4)と共に,ディーゼルエンジンからの排気ガスGを全て排気ガス浄化装置1に流すため,バイパス管5に設けたバイパス弁6を閉鎖する(S5)。そこで,フイルタ3を再生するグループ番号Nのフイルタグループ2に対して,フイルタグループ2におけるフイルタ3に設けたヒータ12に通電する電気量をヒータON―OFFの比率デュ−ティを計算し(S6),その電気量をフイルタグループ2のフイルタ3に設けたヒータ12に通電し,フイルタ3に捕集されている粒子状物質の焼却処理を行う(S7)。次いで,ヒータ12への通電時間が予め決められた設定時間に達したか否かを判断し(S8),ヒータ12への通電時間が予め決められた設定時間に達していない時には,ステップ6に戻る。
【0032】
制御処理工程のステップ8において,ヒータ12への通電時間が設定時間を経過した時には,図11に示すように,ヒータ12への通電を停止し,ヒータ12による加熱を停止する(S9)。フイルタ3の再生により高温になったフイルタ3に排気ガスGを流入させると,異常燃焼を起こしてフィルタ3が焼損するおそれがあるので,フイルタ3を冷却する必要がある。そこで,フイルタ3の再生時のフイルタグループ2のヒータ12への通電を停止し,フイルタグループ2のフイルタ3を冷却する(S10)。フイルタ3の再生後のフイルタグループ2のフイルタ3を冷却するため,ヒータ12への通電を停止した状態で,予め決められた設定時間だけヒータ12の加熱を停止したか否かを判断し(S10),ヒータ12への通電を停止した冷却時間が設定時間を経過すると,再生していたフイルタグループ2の開閉弁7を開放する(S11)。そこで,処理システムにおいて,グループ番号Nのフイルタグループ2の再生処理が終わったところで,次に再生処理を行うフイルタグループ2に処理がスムーズに移行できるように,グループ番号Nを1つ増やしたグループ番号Nに設定する。増やした後のNがNの最大値Nmax,即ち,排気ガス浄化装置1に設置されいるフイルタグループ2の数を越えたかどうかを判断し(S13),グループ番号がNmaxを越えた場合は,グループ番号を1とする(S14)。次に再生を行うフイルタグループ2のグループ番号Nの開閉弁7を閉止する(S15)。フイルタグループ2のヒータ12への起動ボタンがOFFになっているか又はGPSによる自動停止をONしているか否かを判断し(S16),OFF又は自動停止がONしていない時には,捕集・再生処理工程のステップ6に戻り,次に再生を行うフイルタグループ2のグループ番号Nのフイルタ3の再生処理を行なうと共に,他のフイルタグループ2のフイルタ3で排気ガスG中の粒子状物質を捕集する排気ガス浄化を行う。
【0033】
フイルタグループ2の捕集・再生処理工程のステップ16において,フイルタグループ2のヒータ12への起動ボタンをOFF,又はGPSによる自動停止をONしているときには,船舶がフイルタグループ2の捕集・再生を行う必要がない海域即ち領域を通過中であるので,図12に示すように,バイパス弁6を開放し,排気ガス浄化装置1への排気ガスGの流れを絶って,排気ガスGがバイパス管5へ流れるように制御し(S17),ディーゼルエンジンからの排気ガスGをバイパス管5を通して排出し,フイルタグループ2の開閉弁7を閉鎖し,フイルタグループ2の排気ガス浄化処理を停止する(S18)。次いで,粒子状物質を捕集中のフイルタ3には,水分が溜まっていると考えられるので,全フイルタ3を200℃に加熱し,場合によってはヒータ12に通電して全フイルタ3を200℃に加熱し(S19),フイルタ3に存在する水分を蒸発させるため,フイルタ3に対してエアパージをONしてフイルタ3の水分を蒸発させ,フイルタ3を乾燥させる(S20)。次いで,エアパージ時間が予め決められた設定時間に達したか否かを判断し(21),エアパージ時間が設定時間を経過すると,フイルタ3のヒータ12への通電を停止して(S22),フイルタ3に対するエアパージを停止する(S23)。次いで,システムの起動ボタンがOFFになっているか否かを判断し(S24),起動ボタンがOFFの場合には,電源をOFFし,フイルタグループ2による排気ガスの浄化処理を終了する(S25)。起動ボタンがOFFになっていない場合には,フイルタグループ2の排気ガスGの浄化処理を行うため,捕集・再生処理工程のステップS3へ進んで,排気ガスGの浄化を行う。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明による排気ガス浄化装置の制御装置は,船舶等に使用される大型ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる煤,黒煙等の粒子状物質(PM)を捕集して該粒子状物質を焼却してフイルタを再生して排気ガスを浄化するのに使用して好ましいものである。
【符号の説明】
【0035】
1 排気ガス浄化装置
2 フイルタグループ
3 フイルタ
4 排気管
5 バイパス管
6 バイパス弁
7 開閉弁
13 半導体リレー
15 変圧器
16 入口
17 出口
G 排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型ディーゼルエンジンからの排気ガスを排出する排気管にフイルタ装置を設け,前記フイルタ装置の上流側の前記排気管に電動バイパス弁を設置したバイパス管を分岐して接続し,前記排気ガスを前記フイルタ装置に流して前記排気ガス中に含まれる煤,SOF等の粒子状物質を前記フイルタ装置に捕集し,前記フイルタ装置に捕集された前記粒子状物質を焼却して前記排気ガスを浄化することから成る排気ガス浄化装置において,
前記フイルタ装置は,複数のフイルタから成るフイルタグループを複数備えており,前記フイルタグループは前記排気管に対してそれぞれ並列して配設され,前記フイルタグループには前記排気管からの前記排気ガスを導入又は遮断するための開閉弁がそれぞれ設けられており,
前記フイルタグループを1グループ毎に順次に,前記フイルタグループに予め決められた所定量の前記粒子状物質が捕集されたことに応答して,前記フイルタグループに設けた前記開閉弁を順次遮断して前記フイルタに設けたヒータを順次通電し,前記フイルタグループの前記フイルタに捕集された前記粒子状物質を焼却して前記フイルタの再生処理を順次に行うことを特徴とする排気ガス浄化装置の制御装置。
【請求項2】
前記フイルタグループのグループ数が4〜8グループであることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置の制御装置。
【請求項3】
船舶に搭載されて前記排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置として使用されており,前記船舶が着岸する港に予め決められた所定距離に近づいた時点で,前記フイルタグループの捕集・再生処理を手動又はGPS情報に応答して自動的に開始し,前記船舶が着岸する前記港に予め決められた所定距離離れた時点で,前記フイルタグループの捕集・再生処理を手動又はGPS情報に応答して自動的に停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化装置の制御装置。
【請求項4】
前記フイルタ装置は,入口側の前記排気管に設けた入口側温度センサと出口側の前記排気管に設けた出口側温度センサとを備えており,前記入口側温度センサと前記出口側温度センサとの検出温度が予め決められた所定の温度差を越えた場合に,前記電動バイパス弁を開放し,前記排気ガスを前記バイパス管に流すと共に,前記フイルタ装置への前記排気ガスの流れを停止して前記フイルタ装置の自着火による焼損を防止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置の制御装置。
【請求項5】
前記フイルタ装置の捕集再生処理を停止した直後に,各前記フイルタグループの前記フイルタを100℃〜200℃程度に加熱し,各前記フイルタグループの各前記フイルタに空気を供給して前記フイルタに存在する水分を蒸発させることによって,硫酸による前記フイルタの内部における構造部材の腐食を防止することを計ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置の制御装置。
【請求項6】
前記フイルタグループの再生時に,前記フイルタにそれぞれ設けた前記ヒータへの通電時の電流を個別に測定すると共に,前記フイルタに設けた前記ヒータを個別に電力制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置の制御装置。
【請求項7】
各前記フイルタグループの再生時に,前記フイルタにそれぞれ設けた前記ヒータへの通電電圧の電源を変圧器により降圧して,その降圧した電圧によってゼロクロス機能付きの半導体リレーを用いて各前記フイルタグループの前記フィルタの前記ヒータへの通電電力を独立して制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−236865(P2011−236865A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110843(P2010−110843)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(509185192)株式会社 ACR (9)
【Fターム(参考)】