説明

排気ガス浄化装置及びその製造方法

【課題】排気ガス浄化装置の形状自由度を確保しながら装置を小型化する。
【解決手段】排気ガス浄化装置1は、排気ガスが流れる排気通路11と、排気通路11の内部に複数充填される金属繊維31の塊状体23とを備える。排気通路の形状によらず金属繊維を内部に充填することができ、形状自由度を向上させながら排気ガス中のPMを効率よく捕捉することができる。また金属繊維を排気通路の内部に密に充填することができるので、空間を有効利用できる。さらに、金属繊維の塊状体が中空体22の内部に包含されるので、中空体の内部の空間を有効利用できるとともに、中空体によって強度が確保されるのでその分だけ金属繊維の空隙率を上げることができ、圧力損失の上昇を防止して排気ガスの浄化能力を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される排気ガス浄化装置とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の排気ガス浄化装置として、平板と波板とを交互に重ねたものを平板が外側となるように多重に巻回することでハニカム構造とし、平板と波板との間の排気ガス通路に触媒を担持させたものが知られている。また、中実球状のセラミックスなどの多孔質体の表面に触媒を担持させたものを排気通路中に多数充填した構造のものが知られている。
【0003】
しかし、ハニカム構造は湾曲させると通路の一部がつぶれるので湾曲部への搭載が困難であり、形状の自由度が小さい。また、球状多孔質体を充填する構造のものは振動や圧力により多孔質体同士が擦れ合うことで摩耗したり、多孔質体の表面に担持された触媒が剥離したりして排気ガスの浄化性能が低下する。さらに、多孔質体の熱容量が大きいので触媒の早期活性化が困難である。
【0004】
そこで、特許文献1には中空の多孔質体の内壁面に触媒を担持させたものを排気通路中に多数充填することで、多孔質体同士の擦れ合いによる触媒の剥離を防止するとともに熱容量を低下させることが記載されている。
【特許文献1】特開2007−61779公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の技術では、多孔質体が中空であるために多孔質体の内部の空間を有効利用することができない。これにより所望の浄化能力を得るためにはより多くの多孔質体を必要とするので装置が大型化する。
【0006】
本発明は、排気ガス浄化装置の形状自由度を確保しながら装置を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、排気ガスが流れる排気通路と、排気通路の内部に複数充填される金属繊維の塊状体とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、金属繊維の塊状体が、排気ガスが貫流する貫通孔を有する中空体の内部に包含され、中空体が排気通路の内部に複数充填されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、金属繊維に触媒を担持することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、金属繊維の表面にウィスカが形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、金属繊維がアルミニウムを含むことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、触媒がプラチナ、ロジウム、パラジウム及びセリウムのうち一つ以上の成分を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、排気通路が曲がり部を有し、塊状体が曲がり部に充填されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、塊状体の空隙率が、排気通路の下流側ほど小さくなるように設定されることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、塊状体の空隙率が、曲がり部の曲がり方向外側ほど小さくなるように設定されることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、排気ガスが流れる排気通路を備えた排気ガス浄化装置において、金属繊維を加圧して塊状体に成型することと、塊状体を排気通路の内部に複数充填することとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、排気通路の内部に金属繊維の塊状体が複数充填されるので、排気通路の形状によらず金属繊維を内部に充填することができ、形状自由度を向上させながら排気ガス中のPMを効率よく捕捉することができる。また金属繊維を排気通路の内部に密に充填することができるので、空間を有効利用でき装置を小型化することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、金属繊維の塊状体が中空体の内部に包含されるので、中空体の内部の空間を有効利用して装置を小型化することができるとともに、中空体によって強度が確保されるのでその分だけ金属繊維の空隙率を上げることができ、圧力損失の上昇を防止して排気ガスの浄化能力を向上させることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、金属繊維の表面に触媒を担持するので、PMに加えて排気ガス中のNOx、HC、COなどを浄化することができる。また、金属繊維は比表面積が大きいので排気ガスと触媒との接触頻度が高くなり、排気ガスの浄化性能を向上させることができる。さらに金属繊維は熱容量が低いので触媒を早期に活性化することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、金属繊維の表面にウィスカが形成されるので、触媒の担持性を向上させることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、金属繊維がアルミニウムを含むので、金属繊維の耐酸化性及び触媒の付着性を向上させることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、触媒がプラチナ、ロジウム、パラジウム及びセリウムのうち一つ以上の成分を含むので、排気ガス中のNOx、HC、COなどをより効率的に浄化することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、塊状体が排気通路の曲がり部に充填されるので、排気ガス浄化装置を所望の位置に搭載でき車両の排気系の設計自由度を向上させることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、塊状体の空隙率が、排気通路の下流側ほど小さくなるように設定されるので、排気ガスの圧力損失を排気通路の上流側から下流側へ向かって徐々に大きくすることができる。これにより金属繊維全体が偏りなく排気ガスに晒されるので、金属繊維全体を効率よく使用でき排気ガスの浄化性能を向上させることができる。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、塊状体の空隙率が、曲がり部の曲がり方向外側ほど小さくなるように設定されるので、排気ガスの圧力損失を排気通路の曲がり部の曲がり方向外側ほど大きくすることができる。これにより金属繊維全体が偏りなく排気ガスに晒されるので、金属繊維全体を効率よく使用でき排気ガスの浄化性能を向上させることができる。
【0026】
請求項10に記載の発明によれば、金属繊維を加圧して塊状体に成型し、塊状体を排気通路の内部に複数充填するので、排気通路の形状によらず排気通路の内部に金属繊維を充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下では図面を参照して本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0028】
図1は本実施形態における排気ガス浄化装置の構成を示す概略構成図である。排気ガス浄化装置1は排気通路11と、球状構造体12と、隔壁13、14とから構成され、排気通路11の内部では図1の矢印の方向に排気ガスが流れる。排気通路11の内部には湾曲部15において多数の球状構造体12が密に充填され、充填部の両端からパンチングメタルなどの排気ガスを通す孔を多数有する隔壁13、14によって封止される。また排気通路11の断面形状は、目標浄化性能や目標圧力損失、搭載性などに応じて円形状、楕円形状、四角形状、六角形状などが適宜選択される。
【0029】
ここで図2を参照しながら球状構造体12について説明する。図2は球状構造体を模式的に示す模式図である。球状構造体12は、排気ガスが貫流する複数の貫通孔21を外殻に有する中空体22と、中空体22の内部に保持される球状繊維体23とから構成される。中空体22は例えばSUS(ステンレス)やセラミックスによって構成され、球状繊維体23は金属繊維31から構成される。さらに球状繊維体23には、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、セリウム(Ce)などの成分を含む触媒が担持される。
【0030】
さらにここで図3及び図4を参照しながら球状繊維体23について説明する。図3は球状繊維体を模式的に示す模式図であり、図4は図3の範囲Aの拡大図である。球状繊維体23は金属繊維31から成る不織布32を球状に成型した塊状体である。金属繊維31の材質は例えばアルミニウムを含むSUSであり、アルミニウム含有率は触媒の付着性及び耐酸化性を考慮して設定される。
【0031】
また、金属繊維31の線径は例えば10〜100μmであり、球状繊維体23の平均細孔径は例えば10〜100μm、空隙率は50〜90%である。ここで、空隙率とは球状繊維体23の全体の体積に対する空隙の体積の割合を示している。
【0032】
多数の球状繊維体23の空隙率は、例えば排気通路11の下流側ほど小さくなるように設定してもよい。これにより、排気通路11の下流側ほど排気ガスの通気抵抗が大きくなるので排気通路11の上流側から下流側にわたって金属繊維31を偏りなく排気ガスに晒すことができる。また、空隙率を排気通路11の湾曲部15の曲率半径方向外側ほど小さくなるように設定してもよい。これにより、排気ガスが偏りやすい湾曲部15の曲率半径方向外側ほど通気抵抗が大きくなるので湾曲部15の内周側から外周側にわたって金属繊維31を偏りなく排気ガスに晒すことができる。
【0033】
排気ガス浄化装置1は以上のように構成され、排気通路11を流れる排気ガス中のPMを金属繊維31によって捕捉するとともに、排気ガス中のNOx、HC、COなどを金属繊維31に担持された触媒の作用によって浄化する。
【0034】
次に上記排気ガス浄化装置1の製造方法について説明する。初めに、金属繊維31を所望の形状の型に所望の空隙率となるように複数枚敷き詰めて加熱及び加圧することで球状繊維体23を成型する。さらにこの球状繊維体23を焼成して金属繊維31の表面にウィスカを生じさせ、金属繊維31に白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、セリウム(Ce)などの成分を含む触媒を担持させる。
【0035】
続いて球状繊維体23を貫通孔21を有する中空体22で囲って球状構造体12とする。これは例えば中空体22を半割りにした半球状の金属を溶接によって接合してもよいし、スラリー状のロウ付けによって接合してもよい。また半割りにしたセラミックスを熱硬化性の接着剤によって接合してもよい。
【0036】
排気通路11の内部の所定の位置に一対の隔壁13、14のうち一方の隔壁14を溶接などによって固定し、他方側から球状構造体12を充填する。球状構造体12が密に充填されたら他方側の隔壁13を溶接などによって固定することで排気ガス浄化装置1が製造される。
【0037】
以上のように本実施形態では、排気通路11の内部に球状繊維体23が多数充填されるので、排気通路11の形状によらず金属繊維31を内部に充填することができ、形状自由度を向上させながら排気ガス中のPMを効率よく捕捉することができる。また金属繊維31を排気通路11の内部に密に充填することができるので、空間を有効利用でき装置1を小型化することができる。
【0038】
また、球状繊維体23が中空体22の内部に包含されるので、中空体22の内部の空間を有効利用して装置1を小型化することができるとともに、中空体22によって強度が確保されるのでその分だけ金属繊維31の空隙率を上げることができ、圧力損失の上昇を防止して排気ガスの浄化能力を向上させることができる。
【0039】
さらに、金属繊維31が表面に触媒を担持しているので、PMに加えて排気ガス中のNOx、HC、COなどを浄化することができる。また、金属繊維31は比表面積が大きいので排気ガスと触媒との接触頻度が向上し、排気ガスの浄化性能を向上させることができる。さらに金属繊維31は熱容量が低いので触媒を早期に活性化することができる。
【0040】
さらに、金属繊維31の表面にウィスカが形成されるので、金属繊維31の表面積が拡大して排気ガス浄化性能を向上させることができるとともに触媒の担持性を向上させることができる。
【0041】
さらに、金属繊維31がアルミニウムを含むので、金属繊維31の耐酸化性及び触媒の付着性を向上させることができる。
【0042】
さらに、プラチナ、ロジウム、パラジウム及びセリウムのうち一つ以上の成分を含む触媒を熱容量の小さい金属繊維に担持するので、排気ガス温度が低い領域でも排気ガス中のNOx、HC、COを効率的に浄化することができる。
【0043】
さらに、球状繊維体23が排気通路11の湾曲部15に充填されるので、排気ガス浄化装置1を所望の位置に搭載でき車両の排気系の設計自由度を向上させることができる。
【0044】
さらに、球状繊維体23の空隙率が、排気通路11の下流側ほど小さくなるように設定されるので、排気ガスの圧力損失を排気通路11の上流側から下流側へ向かって徐々に大きくすることができる。これにより金属繊維31全体が偏りなく排気ガスに晒されるので、金属繊維31全体を効率よく使用でき排気ガスの浄化性能を向上させることができる。
【0045】
さらに、球状繊維体23の空隙率が、排気通路11の湾曲部15の湾曲方向外側ほど小さくなるように設定されるので、排気ガスの圧力損失を湾曲部15の湾曲方向外側ほど大きくすることができる。これにより金属繊維31全体が偏りなく排気ガスに晒されるので、金属繊維31全体が効率よく使用され排気ガスの浄化性能を向上させることができる。
【0046】
さらに、金属繊維31を加圧して球状繊維体23に成型し、球状繊維体23を排気ガスが流れる排気通路11の内部に複数充填することによって排気ガス浄化装置1を製造するので、排気通路11の形状によらず排気通路11の内部に金属繊維31を充填することができ、形状自由度を向上させながら排気ガス中のPMを効率よく捕捉することができる。
【0047】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
【0048】
例えば、本実施形態では球状繊維体23を中空体22の内部に包含した球状構造体12を排気通路11の内部に充填しているが、中空体22を用いることなく球状繊維体23を排気通路11の内部に充填してもよい。
【0049】
また、本実施形態では排気通路11が曲げられた曲がり部として湾曲した形状の湾曲部15を示しているが、屈曲形状や3次元的にねじれた形状などのいかなる形状であってもよい。
【0050】
さらに、球状構造体12は湾曲部15に充填されているが、排気通路11の直線部に充填されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態における排気ガス浄化装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】球状構造体を模式的に示す模式図である。
【図3】球状繊維体を模式的に示す模式図である。
【図4】図3の範囲Aの拡大図である。
【符号の説明】
【0052】
1 排気ガス浄化装置
11 排気通路
15 湾曲部
21 貫通孔
22 中空体
23 球状繊維体
31 金属繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流れる排気通路(11)と、前記排気通路(11)の内部に複数充填される金属繊維(31)の塊状体(23)とを備えることを特徴とする排気ガス浄化装置(1)。
【請求項2】
前記金属繊維(31)の塊状体(23)は、排気ガスが貫流する貫通孔(21)を有する中空体(22)の内部に包含され、前記中空体(22)が前記排気通路(11)の内部に複数充填されることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置(1)。
【請求項3】
前記金属繊維(31)に触媒を担持することを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化装置(1)。
【請求項4】
前記金属繊維(31)の表面にはウィスカが形成されることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置(1)。
【請求項5】
前記金属繊維(31)はアルミニウムを含むことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置(1)。
【請求項6】
前記触媒はプラチナ、ロジウム、パラジウム及びセリウムのうち一つ以上の成分を含むことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置(1)。
【請求項7】
前記排気通路(11)は曲がり部(15)を有し、
前記塊状体(23)は前記曲がり部(15)に充填されることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置(1)。
【請求項8】
前記塊状体(23)の空隙率は、前記排気通路(11)の下流側ほど小さくなるように設定されることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置(1)。
【請求項9】
前記塊状体(23)の空隙率は、前記曲がり部(15)の曲がり方向外側ほど小さくなるように設定されることを特徴とする請求項7又は8に記載の排気ガス浄化装置(1)。
【請求項10】
排気ガスが流れる排気通路(11)を備えた排気ガス浄化装置(1)の製造方法であって、
金属繊維(31)を加圧して塊状体(23)に成型することと、
前記塊状体(23)を前記排気通路(11)の内部に複数充填することとを含むことを特徴とする方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−90762(P2010−90762A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260425(P2008−260425)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】