説明

排気センサ配置構造及び燃料噴射制御システム

【課題】多気筒内燃機関の排気センサ配置構造及び燃料噴射制御システムにおいて、排気上流側での検出を可能にしつつ排気センサの数を抑える。
【解決手段】直列四気筒エンジン1の排気装置10は、気筒毎に設けられる複数の独立管部11a〜11dを有し、前記エンジン1における左右に対称的に配置された気筒3a,3dの第一グループ5aと、同じく左右に対称的に配置された気筒3b,3cの第二グループ5bとに、O2センサ19がそれぞれ単一に設けられ、このO2センサ19が、前記各グループ5a,5bにおける左右一方の気筒に接続された前記独立管部に配置される。エンジン1のコントローラは、排気センサ19から出力される出力信号に基づいて、各グループ5a,5b毎に燃料噴射量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒内燃機関の排気装置における排気センサの配置構造、及び多気筒内燃機関の各気筒への燃料噴射量を制御する燃料噴射制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車等の車両に搭載される多気筒内燃機関において、燃料噴射量制御のために排気ガス中の酸素濃度を測定するような排気センサを設ける場合、排気装置における気筒毎に設けた独立管部ではなく、これらの集合部分に排気センサを設けることが多い(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4392315号公報
【特許文献2】特許第4643084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術において、排気センサを各気筒に近付けることで検出精度を高めたいという要望もある。しかし、気筒毎の独立管部の全てに排気センサを設けると、排気センサの数が増加してコストを上昇させるという課題がある。とりわけ、特有の外観や独特の排気音を得るべく上流側端から下流側端まで気筒毎に独立した排気管を設ける場合には大きな課題となる。
【0005】
そこで本発明は、多気筒内燃機関の排気センサ配置構造及び燃料噴射制御システムにおいて、排気上流側での検出を可能にしつつ排気センサの数を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、
多気筒内燃機関(1,21,41)の排気ガス中の状態を測定する排気センサ(19,39,59)の配置構造において、
前記多気筒内燃機関(1,21,41)の排気装置(10,30,50)は、気筒毎に設けられてこれらに接続される複数の独立管部(11a〜11d,31a〜31d,51a〜51f)を有し、前記排気センサ(19,39,59)は、前記多気筒内燃機関(1,21,41)における左右に対称的に配置された二気筒のグループ毎に単一に設けられ、この排気センサ(19,39,59)が、前記グループにおける左右一方の気筒に接続された前記独立管部に配置されることを特徴とする。
なお、前記排気センサには、O2(酸素)センサ及び排気温度センサが含まれる。
請求項2に記載した発明は、
前記排気装置(30,50)における前記各独立管部(31a〜31d,51a〜51f)の何れかを互いに合流させる最上流合流部(33a,33b,53a,53b)よりも上流側に、前記排気センサ(39,59)が配置されることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、
前記多気筒内燃機関(1)は、左右に並ぶ四つの気筒を有する直列四気筒エンジンであり、その左右外側の二気筒(3a,3d)のグループ(5a)と左右内側の二気筒(3b,3c)のグループ(5b)とに、前記排気センサ(19)がそれぞれ単一に設けられることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、
前記多気筒内燃機関(21)は、前後バンク(23,24)のそれぞれに左右に並ぶ二つの気筒(23a,23b,24a,24b)を有するV型四気筒エンジンであり、その前バンク(23)の二気筒(23a,23b)のグループ(25a)と後バンク(24)の二気筒(24a,24b)のグループ(25b)とに、前記排気センサ(39)がそれぞれ単一に設けられることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、
前記多気筒内燃機関(41)は、左右シリンダ部(43,44)のそれぞれに前後に並ぶ三つの気筒(43a,43b,43c,44a,44b,44c)を有する水平対向六気筒エンジンであり、その最前部左右の二気筒(43a,44a)のグループ(45a)と前後中間部左右の二気筒(43b,44b)のグループ(45b)と最後部左右の二気筒(43c,44c)のグループ(45c)とに、前記排気センサ(59)がそれぞれ単一に設けられることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、
多気筒内燃機関(1,21,41)の各気筒への燃料噴射量を制御する燃料噴射制御システムにおいて、
前記多気筒内燃機関(1,21,41)の排気装置(10,30,50)は、気筒毎に設けられてこれらに接続される複数の独立管部(11a〜11d,31a〜31d,51a〜51f)を有し、前記多気筒内燃機関(1,21,41)の排気ガス中の状態を測定する排気センサ(19,39,59)は、前記多気筒内燃機関(1,21,41)における左右に対称的に配置された二気筒のグループ毎に単一に設けられ、この排気センサ(19,39,59)が、前記グループにおける左右一方の気筒に接続された前記独立管部に配置されると共に、前記多気筒内燃機関(1,21,41)のコントローラ(60)は、前記排気センサ(19,39,59)から出力される出力信号に基づいて、前記グループ毎に燃料噴射量を制御することを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、
前記コントローラ(60)は、前記排気センサ(19,39,59)から出力される出力信号に基づいて、エンジン吸気が目標空燃比に近付くように、フィードバック補正係数を算出して前記グループ毎にフィードバック制御をするフィードバック補正係数算出手段(66)を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、排気センサを気筒毎の独立管部に配置することで、多気筒内燃機関の燃焼室近傍にて排気ガスの状態を精度良く検出できる。
また、排気センサを多気筒内燃機関における左右対称な配置の二気筒のグループ毎に単一に設けることで、排気ガスの状態の検出精度を向上させながらも、気筒毎に排気センサを設ける場合と比べて部品点数を削減し、コストダウン及び軽量化を図ることができる。
請求項2に記載した発明によれば、排気装置の最上流合流部よりも上流側で排気ガスの状態を検出することで、他気筒の排気ガスの影響を受けることなく、対象とする気筒の排気ガスの状態を精度良く検出できる。
請求項3に記載した発明によれば、直列四気筒エンジンにおいて、左右外側の二気筒のグループと左右内側の二気筒のグループとにそれぞれ単一の排気センサを設け、その検出値を各グループ内で共有することで、排気センサの数を抑えた上で各気筒の排気ガスの状態を精度良く検出できる。
請求項4に記載した発明によれば、V型四気筒エンジンにおいて、前バンクの二気筒のグループと後バンクの二気筒のグループとにそれぞれ単一の排気センサを設け、その検出値を各グループ内で共有することで、排気センサの数を抑えた上で各気筒の排気ガスの状態を精度良く検出できる。
請求項5に記載した発明によれば、水平対向六気筒エンジンにおいて、最前部左右の二気筒のグループと前後中間部左右の二気筒のグループと最後部左右の二気筒のグループとにそれぞれ単一の排気センサを設け、その検出値を各グループ内で共有することで、排気センサの数を抑えた上で各気筒の排気ガスの状態を精度良く検出できる。
請求項6に記載した発明によれば、多気筒内燃機関の燃焼室近傍で排気ガスの状態を精度良く検出可能とした上で、気筒毎に排気センサを設ける場合と比べてコストダウン及び軽量化を図ることができる。そして、前記排気センサの出力信号に基づき、グループ毎の燃料噴射量を精度良くかつ簡易に制御することができる。
請求項7に記載した発明によれば、前記排気センサの出力信号に基づき、グループ毎の燃料噴射量を可及的迅速に適値に更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一実施形態の左側面図である。
【図2】上記第一実施形態の上面図である。
【図3】上記第一実施形態の燃料噴射制御装置の構成図である。
【図4】本発明の第二実施形態の左側面図である。
【図5】上記第二実施形態の上面図である。
【図6】本発明の第三実施形態の左側面図である。
【図7】上記第三実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0010】
<第一実施形態>
図1,2において、符号1は、自動二輪車等の鞍乗り型車両の原動機に用いられる四ストローク直列四気筒エンジン(以下、単にエンジン1ということがある)を示す。エンジン1は、クランクケース(エンジンケース)2の前部上側にシリンダ部3を立設した構成を有する。シリンダ部3内には、左右方向に沿って並ぶ四つの気筒3a〜3dが設けられる。以下、各気筒3a〜3dを左側から順に一番気筒3a、二番気筒3b、三番気筒3c、四番気筒3dとする。また、シリンダ部3の左右外側に対称的に配置される一番及び四番気筒3a,3dを第一グループ5aとし、シリンダ部3の左右内側に対称的に配置される二番及び三番気筒3b,3cを第二グループ5bとする。シリンダ部3には、不図示のスロットルボディ及びフューエルインジェクタ(燃料噴射弁)等からなる燃料供給装置が接続される。燃料供給装置は各気筒毎(或いは各グループ毎)に個別に設けられるものとする。
【0011】
この実施形態において、エンジン1の排気装置10は、気筒毎に排気管を独立させて設けた構成を有する。換言すれば、排気装置10は、各気筒3a〜3dにそれぞれ対応する第一〜第四独立管部11a〜11dを有してなる。なお、図中符号12は各独立管部11a〜11dにおけるシリンダ部3の前部に前方から接続される上流側端を、符号13は上流側端12の前方で下方に湾曲する第一湾曲部13を、符号14は第一湾曲部13の下方で後方に湾曲する第二湾曲部を、符号15は第二湾曲部14の後方に連なる触媒を、符号16は触媒15の後方に連なるクランク状湾曲部を、符号17はクランク状湾曲部16の後方に連なるサイレンサを、符号18はサイレンサ17の後端に開口する下流側端をそれぞれ示す。
【0012】
エンジン1において、各グループ5a,5b間には180°のクランク位相差が設定される。各気筒3a〜3dは、例えば一番気筒3a、二番気筒3b、四番気筒3d、三番気筒3cの順に燃焼する。各グループ5a,5b間の点火時期差は360°とされる。第一グループ5aの両気筒3a,3dは、その配置も含め、燃焼室の熱的環境が互いに同等であるといえる。同様に、第二グループ5bの両気筒3b,3cも、その配置も含め、燃焼室の熱的環境が互いに同等であるといえる。
【0013】
エンジン1は電子制御式燃料噴射装置を備え、その燃料噴射量の制御情報には排気ガス中の残留酸素量が含まれる。前記残留酸素量は、排気装置10に設けたO2(酸素)センサ19により行われる。
【0014】
ここで、図3に示すように、エンジン1の運転を制御するコントローラ(電子制御装置、ECU)60は、エンジン回転数センサ(回転数センサ)61、エンジン水温センサ(水温センサ)62、アクセル開度センサ(アクセルセンサ)63及び前記O2センサ19等からの情報に基づき、エンジン1の燃料噴射量の制御を行う。
コントローラ60は、ソフトウェア処理により異なる制御を実現可能であり、以下、所定のマップ64に基づく制御方法ついて説明する。
【0015】
コントローラ60は、回転数センサ61から得られる回転数とアクセルセンサ63から得られるスロットル開度とに基づいて前記マップ64から各グループ5a,5b毎に基本燃料噴射量を求める基本燃料噴射量算出部(基本噴射量算出手段)65と、O2センサ19から出力されるO2濃度(出力信号)に基づいてエンジン吸気が理想空燃比(目標空燃比)に近付くようにフィードバック補正係数を算出して各グループ5a,5b毎にフィードバック制御をするO2フィードバック部(フィードバック補正係数算出手段)66と、パラメータの読み書きが可能な補正量記録部67と、基本燃料噴射量に対してO2フィードバック部66で得られた補正量に基づき各グループ5a,5b毎に補正をする補正部68と、補正部68で得られた最終的な燃料噴射量に応じて各グループ5a,5b毎に燃料噴射時間(噴射量、開弁時間)を求める燃料噴射時間算出部(最終燃料噴射量算出手段)69と、を有する。
【0016】
燃料噴射時間算出部69では、得られた燃料噴射時間に基づいて、所定のタイミングでフューエルインジェクタ71を開弁して燃料噴射を行う。これにより、エンジン吸気の空燃比が変わり、その影響は排気装置のO2センサ19に検出され、もってフィードバック系が形成される。
O2フィードバック部66は、O2濃度に基づいて排気のリッチ・リーンの程度判定するリッチ・リーン判定部72と、その判定結果に基づいてフィードバック補正係数及び基本燃料噴射量を補正するパラメータを求めるパラメータ算出部(フィードバック補正学習係数記憶手段)73とを有する。なお、O2フィードバック部66は、エンジン1の運転開始時で暖機中においてはフィードバック制御を行わない。
パラメータ算出部73は、所定のパラメータを所定の周期で補正量記録部67に記録し、システム起動時(イグニッションON時)にこれらのパラメータを読み込む。補正量記録部67は不揮発性の記録手段であり、例えばEEPROMやフラッシュメモリである。
【0017】
図1,2を併せて参照し、O2センサ19は、各グループ5a,5b毎に単一に設けられる。すなわち、熱的環境が互いに同等な一番及び四番気筒3a,3dでは、その一方(例えば一番気筒3a)に接続される第一独立管部11aにO2センサ19が設けられ、このO2センサ19の検出値が他方(四番気筒3d)の制御でも用いられる。同様に、熱的環境が互いに同等な二番及び三番気筒3b,3cでは、その一方(例えば三番気筒3c)に接続される第三独立管部11cにO2センサ19が設けられ、このO2センサ19の検出値が他方(二番気筒3b)の制御でも用いられる。すなわち、エンジン1は、各グループ5a,5b毎に燃料噴射量の制御を行うので、各気筒毎に制御を行う場合と比べてコントローラ60の内部構成を簡素化している。
【0018】
そして、エンジン1の燃焼室に近くかつ気筒毎に独立した各独立管部11a〜11dにO2センサ19を設けることで、残留酸素の検出精度が高まり、かつ全気筒にO2センサ19を設ける場合と比べて部品点数が削減される。
なお、O2センサ19は第一独立管部11aではなく第四独立管部11dに設けてもよい。同様に、O2センサ19は第三独立管部11cではなく第二独立管部11bに設けてもよい。また、第一独立管部11a又は第四独立管部11dを第二独立管部11b又は第三独立管部11cと交差させてこれらの左右内方に配置するようにすれば、各グループ5a,5bにおけるO2センサ19を設ける独立管部を共に左右内側に配置することも可能である。
【0019】
以上説明したように、上記実施形態における排気センサ配置構造は、直列四気筒エンジン1の排気ガス中の状態を測定するO2センサ19の配置構造であって、前記エンジン1の排気装置10は、気筒毎に設けられてこれらに接続される複数の独立管部11a〜11dを有し、前記O2センサ19は、前記エンジン1における左右に対称的に配置された気筒3a,3dの第一グループ5aと、同じく左右に対称的に配置された気筒3b,3cの第二グループ5bとにそれぞれ単一に設けられ、このO2センサ19が、前記各グループ5a,5bにおける左右一方の気筒に接続された前記独立管部に配置されるものである。
【0020】
この構成によれば、O2センサ19を気筒毎の独立管部に配置することで、エンジン1の燃焼室近傍にて排気ガスの状態を精度良く検出できる。
また、左右外側の二気筒3a,3dの第一グループ5aと左右内側の二気筒3b,3cの第二グループ5bとにそれぞれ単一のO2センサ19を設け、その検出値を各グループ5a,5b内で共有することで、気筒毎にO2センサ19を設ける場合と比べて部品点数を削減し、コストダウン及び軽量化を図ることができる。
【0021】
なお、排気装置10は、複数の周波数を合成した排気音を発生させるべく、エンジン1との接続端(上流側端12)から排気口(下流側端18)まで気筒毎に独立した排気管を有する構成であるが、これに対し、各独立管部11a〜11dの二本以上を合流又は連通させる合流部を有する構成であっても、最上流の合流部よりも上流側(独立管部)にO2センサ19を配置した構成とすれば、本実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0022】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図4,5を参照して説明する。
図4,5において、符号21は、自動二輪車等の鞍乗り型車両の原動機に用いられる四ストロークV型四気筒エンジン(以下、単にエンジン21ということがある)を示す。エンジン21は、クランクケース(エンジンケース)22の上部に前後バンク(前後シリンダ部)23,24を立設した構成を有する。前後バンク23,24内には、それぞれ左右に並ぶ二つの気筒23a,23b,24a,24bが設けられる。以下、前バンク23の各気筒23a,23bを左側から順に二番気筒23a、四番気筒23bとし、後バンク24の各気筒24a,24bを左側から順に一番気筒24a、三番気筒24bとする。また、前バンク23の左右に対称的に配置される両気筒23a,23bを第一グループ25aとし、後バンク24の左右に対称的に配置される両気筒24a,24bを第二グループ25bとする。前後バンク23,24には、不図示のスロットルボディ及びフューエルインジェクタ(燃料噴射弁)等からなる燃料供給装置が接続される。燃料供給装置は各気筒毎(或いは各グループ毎)に個別に設けられるものとする。
【0023】
エンジン21の排気装置30は、各気筒23a,23b,24a,24bにそれぞれ対応する第一〜第四独立管部31a〜31dを有する。前バンク23に接続される第二及び第四独立管部31b,31dは、前バンク23の下部に下方から接続される前上流側端32aから下方に延びた後に後方に湾曲して延び、クランクケース22下方の前合流部33aで互いに合流した後にその後方の前集合管部34aに連なる。一方、後バンク24に接続される第一及び第三独立管部31a,31cは、後バンク24の後部に後方から接続される後上流側端32bから後方に延びた後に下方に湾曲して延び、クランクケース22後方の後合流部33bで互いに合流した後にその斜め前前方の後集合管部34bに連なる。
【0024】
クランクケース22の斜め下後方には触媒を内蔵したチャンバー36が配置され、このチャンバー36の前端に各集合管部34a,34bが接続される。チャンバー36の後部左側にはサイレンサ接続部37が突設される。
エンジン21において、第一グループ25aの両気筒23a,23bは、その配置も含め、燃焼室の熱的環境が互いに同等であるといえる。同様に、第二グループ25bの両気筒24a,24bも、その配置も含め、燃焼室の熱的環境が互いに同等であるといえる。
【0025】
排気装置30には、エンジン21の燃料噴射量制御用のO2センサ39が設けられるが、このO2センサ39は、各グループ25a,25b毎に単一に設けられる。すなわち、熱的環境が互いに同等な前バンク23の二番及び四番気筒23a,23bでは、その一方(例えば二番気筒23a)に接続される第二独立管部31bにO2センサ39が設けられ、このO2センサ39の検出値が他方(四番気筒23b)の制御でも用いられる。同様に、熱的環境が互いに同等な一番及び三番気筒24a,24bでは、その一方(例えば三番気筒24b)に接続される第三独立管部31cにO2センサ39が設けられ、このO2センサ39の検出値が他方(二番気筒23a)の制御でも用いられる。
これにより、第一実施形態と同様、残留酸素の検出精度が高まり、かつ全気筒にO2センサ39を設ける場合と比べて部品点数が削減される。なお、エンジン21の燃料噴射装置は、図3に示す構成と同様の構成を有するものとする。
【0026】
以上説明したように、上記実施形態における排気センサ配置構造は、V型四気筒エンジン21の排気ガス中の状態を測定するO2センサ39の配置構造であって、前記エンジン21の排気装置30は、気筒毎に設けられてこれらに接続される複数の独立管部31a〜31dを有し、前記O2センサ39は、前記エンジン21における前バンク23に左右に対称的に配置された気筒23a,23bのグループ25aと、後バンク24に左右に対称的に配置された気筒24a,24bのグループ25bとにそれぞれ単一に設けられ、このO2センサ39が、前記各グループ25a,25bにおける左右一方の気筒に接続された前記独立管部に配置されるものである。
【0027】
この構成によれば、O2センサ39を独立管部に配置することで、エンジン21の燃焼室近傍にて排気ガスの状態を精度良く検出できる。
また、前バンク23の二気筒23a,23bのグループ25aと後バンク24の二気筒24a,24bのグループ25bとにそれぞれ単一のO2センサ39を設け、その検出値を各グループ25a,25b内で共有することで、気筒毎にO2センサ39を設ける場合と比べて部品点数を削減し、コストダウン及び軽量化を図ることができる。
【0028】
また、上記排気センサ配置構造は、前記排気装置30は、前記各独立管部31a,31bを互いに合流させる前合流部33a、及び前記各独立管部31c,31dを互いに合流させる後合流部33bを有し、これら各合流部33a,33bよりも上流側に前記O2センサ39が配置されるものである。
【0029】
この構成によれば、排気装置30における各独立管部31a〜31dの最上流合流部となる各合流部33a,33bよりも上流側で排気ガスの状態を検出することで、他気筒の排気ガスの影響を受けることなく、対象とする気筒の排気ガスの状態を精度良く検出できる。
【0030】
なお、左右バンクを有する所謂縦置きのV型四気筒エンジンの場合、左右バンク前側の二気筒のグループと左右バンク後側の二気筒のグループとにそれぞれ単一のO2センサを設ける構成とすればよい。
【0031】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、図6,7を参照して説明する。
図6,7において、符号41は、自動二輪車等の鞍乗り型車両の原動機に用いられる四ストローク水平対向六気筒エンジン(以下、単にエンジン41ということがある)を示す。エンジン41は、クランクケース(エンジンケース)42の左右にそれぞれ左右シリンダ部43,44を突設した構成を有する。左右シリンダ部43,44内には、それぞれ前後に並ぶ三つの気筒が設けられる。以下、左シリンダ部43の各気筒を前側から順に一番気筒43a、三番気筒43b、五番気筒43cとし、右シリンダ部44の各気筒を前側から順に二番気筒44a、四番気筒44b、六番気筒44cとする。また、左右シリンダ部43,44に跨って左右に対称的に配置される一番および二番気筒43a,44aを第一グループ45aとし、三番及び四番気筒43b,44bを第二グループ45bとし、五番及び六番気筒43c,44cを第三グループ45cとする。左右シリンダ部43,44には、不図示のスロットルボディ及びフューエルインジェクタ(燃料噴射弁)等からなる燃料供給装置が接続される。燃料供給装置は各気筒毎(或いは各グループ毎)に個別に設けられるものとする。
【0032】
エンジン41の排気装置50は、各気筒43a,44a,43b,44b,43c,44cにそれぞれ対応する第一〜第六独立管部51a〜51fを有する。左シリンダ部43に接続される第一、第三及び第五独立管部51a,51c,51eは、左シリンダ部43の下部に下方から接続される左上流側端52aから下方に延びた後に後方に湾曲して延び、クランクケース42の後端部左方の左合流部53aにて互いに合流した後にその後方の左集合管部54aに連なる。同様に、右シリンダ部44に接続される第二、第四及び第六独立管部51b,51d,51fは、右シリンダ部44の下部に下方から接続される右上流側端52bから下方に延びた後に後方に湾曲して延び、クランクケース42の後端部右方の右合流部53bにて互いに合流した後にその後方の右集合管部54bに連なる。
【0033】
エンジン41の後方両側には触媒を内蔵した左右チャンバー55a,55bが配置され、これら左右チャンバー55a,55bの前端に左右集合管部54a,54bがそれぞれ接続される。左右チャンバー55a,55bの後端部間は連通管56により接続される。左右チャンバー55a,55bの後端には左右サイレンサ接続部57a,57bがそれぞれ突設される。
エンジン41において、第一グループ45aの両気筒43a,44aは、その配置も含め、燃焼室の熱的環境が互いに同等であるといえる。同様に、第二グループ45bの両気筒43b,44bも、その配置も含め、燃焼室の熱的環境が互いに同等であるといえる。また、第三グループ45cの両気筒43c,44cも、その配置も含め、燃焼室の熱的環境が互いに同等であるといえる。
【0034】
排気装置50には、エンジン41の燃料噴射量制御用のO2センサ59が設けられるが、このO2センサ59は、各グループ45a〜45c毎に単一に設けられる。すなわち、熱的環境が互いに同等な一番及び二番気筒43a,44aでは、その一方(例えば一番気筒43a)に接続される第一独立管部51aにO2センサ59が設けられ、このO2センサ59の検出値を他方(二番気筒44a)の制御でも用いられる。同様に、熱的環境が互いに同等な三番及び四番気筒43b,44bでは、その一方(例えば四番気筒44b)に接続される第四独立管部51dにO2センサ59が設けられ、このO2センサ59の検出値が他方(三番気筒43b)の制御でも用いられる。また、熱的環境が互いに同等な第五及び第六気筒43c,44cでは、その一方(例えば第五気筒43c)に接続される第五独立管部51eにO2センサ59が設けられ、このO2センサ59の検出値が他方(第六気筒44c)の制御でも用いられる。
これにより、第一実施形態と同様、残留酸素の検出精度が高まり、かつ全気筒にO2センサ59を設ける場合と比べて部品点数が削減される。なお、エンジン41の燃料噴射装置は、図3に示す構成に対して、フューエルインジェクタ及びO2センサの数(気筒のグループ数)が異なる点を除き、同様の構成を有するものとする。
【0035】
以上説明したように、上記実施形態における排気センサ配置構造は、水平対向六気筒エンジン41の排気ガス中の状態を測定するO2センサ59の配置構造であって、前記エンジン41の排気装置50は、気筒毎に設けられてこれらに接続される複数の独立管部51a〜51fを有し、前記O2センサ59は、前記エンジン41における左右に対称的に配置された気筒43a,44aのグループ45a、気筒43b,44bのグループ45b及び気筒43c,44cのグループ45cにそれぞれ単一に設けられ、このO2センサ59が、前記各グループ45a〜45cにおける左右一方の気筒に接続された前記独立管部に配置されるものである。
【0036】
この構成によれば、O2センサ59を独立管部に配置することで、エンジン41の燃焼室近傍にて排気ガスの状態を精度良く検出できる。
また、最前部左右の二気筒43a,44aのグループ45aと前後中間部左右の二気筒43b,44bのグループ45bと最後部左右の二気筒43c,44cのグループ45cとにそれぞれ単一のO2センサ59を設け、その検出値を各グループ45a〜45c内で共有することで、気筒毎にO2センサ59を設ける場合と比べて部品点数を削減し、コストダウン及び軽量化を図ることができる。
【0037】
また、上記排気センサ配置構造は、前記排気装置50は、前記各独立管部51a,51c,51eを互いに合流させる左合流部53a、及び前記各独立管部51b,51d,51fを互いに合流させる右合流部53bを有し、これら各合流部53a,53bよりも上流側に前記O2センサ59が配置されるものである。
【0038】
この構成によれば、排気装置50における各独立管部51a〜51fの最上流合流部となる各合流部53a,53bよりも上流側で排気ガスの状態を検出することで、他気筒の排気ガスの影響を受けることなく、対象とする気筒の排気ガスの状態を精度良く検出できる。
【0039】
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、例えば四気筒未満あるいは四気筒を超える直列又はV型の多気筒エンジンや、六気筒以外の水平対向エンジン等、各種の多気筒エンジンに適用してもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、自動二輪車ではなく三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両にも適用できる等、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 直列四気筒エンジン(多気筒内燃機関)
3a〜3d 気筒
5a,5b グループ
10,30,50 排気装置
11a〜11d、31a〜31d、51a〜51f 独立管部
19,39,59 O2センサ(排気センサ)
21 V型四気筒エンジン(多気筒内燃機関)
23 前バンク
23a,23b 気筒
24 後バンク
24a,24b 気筒
25a,25b グループ
33a,33b 合流部(最上流合流部)
41 水平対向六気筒エンジン(多気筒内燃機関)
43 左シリンダ部
43a,43b,43c 気筒
44 右シリンダ部
44a,44b,44c 気筒
45a,45b,45c グループ
53a,53b 合流部(最上流合流部)
60 コントローラ
66 O2フィードバック部(フィードバック補正係数算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多気筒内燃機関(1,21,41)の排気ガス中の状態を測定する排気センサ(19,39,59)の配置構造において、
前記多気筒内燃機関(1,21,41)の排気装置(10,30,50)は、気筒毎に設けられてこれらに接続される複数の独立管部(11a〜11d,31a〜31d,51a〜51f)を有し、
前記排気センサ(19,39,59)は、前記多気筒内燃機関(1,21,41)における左右に対称的に配置された二気筒のグループ毎に単一に設けられ、
この排気センサ(19,39,59)が、前記グループにおける左右一方の気筒に接続された前記独立管部に配置されることを特徴とする排気センサ配置構造。
【請求項2】
前記排気装置(30,50)における前記各独立管部(31a〜31d,51a〜51f)の何れかを互いに合流させる最上流合流部(33a,33b,53a,53b)よりも上流側に、前記排気センサ(39,59)が配置されることを特徴とする請求項1に記載の排気センサ配置構造。
【請求項3】
前記多気筒内燃機関(1)は、左右に並ぶ四つの気筒を有する直列四気筒エンジンであり、その左右外側の二気筒(3a,3d)のグループ(5a)と左右内側の二気筒(3b,3c)のグループ(5b)とに、前記排気センサ(19)がそれぞれ単一に設けられることを特徴とする請求項1に記載の排気センサ配置構造。
【請求項4】
前記多気筒内燃機関(21)は、前後バンク(23,24)のそれぞれに左右に並ぶ二つの気筒(23a,23b,24a,24b)を有するV型四気筒エンジンであり、その前バンク(23)の二気筒(23a,23b)のグループ(25a)と後バンク(24)の二気筒(24a,24b)のグループ(25b)とに、前記排気センサ(39)がそれぞれ単一に設けられることを特徴とする請求項1に記載の排気センサ配置構造。
【請求項5】
前記多気筒内燃機関(41)は、左右シリンダ部(43,44)のそれぞれに前後に並ぶ三つの気筒(43a,43b,43c,44a,44b,44c)を有する水平対向六気筒エンジンであり、その最前部左右の二気筒(43a,44a)のグループ(45a)と前後中間部左右の二気筒(43b,44b)のグループ(45b)と最後部左右の二気筒(43c,44c)のグループ(45c)とに、前記排気センサ(59)がそれぞれ単一に設けられることを特徴とする請求項1に記載の排気センサ配置構造。
【請求項6】
多気筒内燃機関(1,21,41)の各気筒への燃料噴射量を制御する燃料噴射制御システムにおいて、
前記多気筒内燃機関(1,21,41)の排気装置(10,30,50)は、気筒毎に設けられてこれらに接続される複数の独立管部(11a〜11d,31a〜31d,51a〜51f)を有し、
前記多気筒内燃機関(1,21,41)の排気ガス中の状態を測定する排気センサ(19,39,59)は、前記多気筒内燃機関(1,21,41)における左右に対称的に配置された二気筒のグループ毎に単一に設けられ、
この排気センサ(19,39,59)が、前記グループにおける左右一方の気筒に接続された前記独立管部に配置されると共に、
前記多気筒内燃機関(1,21,41)のコントローラ(60)は、前記排気センサ(19,39,59)から出力される出力信号に基づいて、前記グループ毎に燃料噴射量を制御することを特徴とする燃料噴射制御システム。
【請求項7】
前記コントローラ(60)は、前記排気センサ(19,39,59)から出力される出力信号に基づいて、エンジン吸気が目標空燃比に近付くように、フィードバック補正係数を算出して前記グループ毎にフィードバック制御をするフィードバック補正係数算出手段(66)を有することを特徴とする請求項6に記載の燃料噴射制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−246882(P2012−246882A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120942(P2011−120942)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】