説明

排気ターボチャージャ

【課題】
熱的負荷により早期の部品故障が生じないように、排気ターボチャージャの気密性と耐久性を向上させる。
【解決手段】
インナハウジング(3)に形成されたカラー(17)が、軸受フランジ(14)の内側に位置するエッジ(16)に、タービンホイール回転軸(13)の方向に少なくとも部分的に当接することを特徴とする、アウタハウジング(2)と、インナハウジング(3)と、タービンホイール(11)を備え、アウタハウジング(2)が、軸受フランジ(14)と母材融合により結合され、インナハウジング(3)が、係合により軸受フランジ(14)と連結されている、排気ターボチャージャ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の排気ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
特に自動車のために使用される内燃機関は、効率を更に向上させ、これにより燃料消費量を低減するために、ますます流体機械によって過給される。流体機械としてターボチャージャを使用することが、好ましい。この場合、ターボチャージャと、特にターボチャージャハウジングは、非常に正確にそれぞれのエンジンの出力特性に適合される。
【0003】
ターボチャージャ自身が高い効率で作動することができるように、運転前、運転中及び運転後の正確なクリアランスの維持が特に重要である。個々の運転状態間で、数100°Cまでの温度差が生じ、この温度差が、部品、使用される材料、及び材料の厚さが異なる場合に、互いに異なる部品の膨張を生じさせる。膨張が生じた場合、クリアランスも変化するので、望ましくないブローバイガスがターボチャージャ内に生じることがある。これにより、ターボチャージャの効率が低下する。同様に、部品が、異なる膨張によって互いに接触することがある。最悪の場合には、備品どうしの衝突が生じ、この衝突に伴って、ターボチャージャに損傷を与えることや、ターボチャージャを総合的に故障させることが生じる。
【0004】
更に、自動車技術において使用される全ての材料と構成要素の重量低減が特に重要である。この場合、排気ターボチャージャを特に重量を最適化して製造する可能性の観点で、プレート構造でターボチャージャを、特にターボチャージャハウジングを製造することがある。
【0005】
特許文献1では、排気を案内する部品と、支持もしくはシールを行なう外部構造の分離することが提案されている。ターボチャージャの排気を案内する部品が、高い熱的負荷にさらされ、これにより、これら部品が熱くなるのに対して、シールを行なう外部構造の熱的負荷は、非常に低い。但し、特にターボチャージャの軸受ケースや比較的高温の排気の流入側に接続する領域内のアウタハウジングも、非常に高い熱的及び流体技術的負荷の支配下にある。
【0006】
排気ターボチャージャのアウタハウジングは、通常、不定形の板材シェルから成り、この板材シェルは、通常、熱的接合方法を介して軸受フランジと溶接されている。同様に軸受フランジと連結されているのは、排気ターボチャージャのインナハウジングである。
【0007】
通常、インナハウジングは、軸受フランジに当接しているか、付加的にこの軸受フランジと母材融合により連結されている。しかしながら、当接の場合は、異なった熱膨張率を介して不気密性が生じ、従ってブローバイガスが生じる。母材融合による連結の場合は、熱的接合工程の熱影響ゾーンが、熱的接合工程によって形状的及び材料技術的に弱くなる。この箇所では、極端な負荷下で、疲労破壊又は亀裂が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第100 22 0 52号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、従来技術から出発して、熱的負荷により早期の部品故障が生じないように、排気ターボチャージャの気密性と耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、請求項1の特徴を有する排気ターボチャージャによって解決される。
【0011】
本発明の有利な実施形は、従属請求項に記載されている。
【0012】
アウタハウジングと、インナハウジングと、タービンホイールを備え、アウタハウジングが、軸受フランジと母材融合により結合され、インナハウジングが、係合により軸受フランジと連結されている、本発明による排気ターボチャージャは、インナハウジングに形成されたカラーが、軸受フランジの内側に位置するエッジに、タービンホイール回転軸の方向に少なくとも部分的に当接することを特徴とする。
【0013】
カラーは、本発明の枠内では、インナハウジングの円形の切欠きを特徴付ける突出部のことであると理解する。この場合、カラーは、その突出部が、タービンホイール回転軸の方向に整向されている。内側に位置するエッジとカラーを介した軸受フランジとインナハウジングの連結の場合には、特に、カラーが、インナハウジングの内部空間から離間するように形成されており、これにより、カラーが、軸受フランジのエッジ内に当接することが分かる。これにより、特に、半径方向と軸方向のインナハウジングの最適な位置決めが可能になり、これにより、更にまた、運転中のタービンホイールの接触も回避されるとの利点が得られる。
【0014】
カラーとエッジを介したインナハウジングと軸受フランジ間の少なくとも部分的な当接により、係合による連結が保証される。この係合による連結は、更に、排気ターボチャージャの生産プロセス内に存在する必要な製造許容差も補償する。従って、最適なクリアランスを有する排気ターボチャージャが、本発明による連結によって製造可能である。
【0015】
好ましい実施バリエーションでは、カラーが、軸受フランジ側の端部に向かってその直径が拡大ずるように形成されている。このことは、本発明の枠内では、カラーが、インナハウジングと連結すべき軸受フランジの方向に、その直径が拡大するように形成されていることであると理解する。チューリップ状にした形状を有する。これにより、更にまた、一方で流体技術上の利点が得られ、他方で、チューリップ状にしたのもしくは折り返しをした成形によって、カラー内に生じる応力変化が均一化及び/又は低下される。
【0016】
特に、カラーとエッジは、係合により当接し、これにより、カラーは、エッジの背後に回りこむように配設されている。カラーの軸受フランジ側の端部を直径が拡大するように形成することにより、カラーとエッジ間に係合の座が得られる。カラーが、エッジの背後に回りこむので、係止機能又は嵌合が形成されている。したがって、インナハウジングと軸受ハウジング間の特に不動の座は、本発明に重要な利点が生じる。
【0017】
カラーの終端領域の横断面が、曲げ半径を備えることが好ましい。カラーは、本発明の枠内では、特に貫通部として形成されている。この貫通部は、この貫通部が出発するインナハウジングに対して、終端領域を備え、この終端領域内で、貫通部は、本質的に漏斗状及び/又はシリンダ状のカラー部分に移行する。この場合、終端領域は、本発明の枠内では、特に好ましくは横断面が、曲げ半径を備え、この曲げ半径は、一定の半径である必要はなく、回転運動を介して変化する半径とすることができる。これにより、まさに終端領域において、即ちインナハウジングからカラーへの移行領域において、製造される排気ターボチャージャの特に有利な応力変化が得られる。
【0018】
更に、エッジの横断面が、曲げ半径に対応する形状を備えることは好ましい。従って、エッジとカラーは、少なくとも部分的に相並んで位置し、これにより、更にまた、特に有利な係合による連結が保証されている。これは、特に、半径方向と軸方向の内部システムの位置決めと、排気ターボチャージャの運転中のインナハウジングの寸法精度において、利点を提供する。
【0019】
本発明の特に好ましい実施バリエーションでは、エッジとカラーが、少なくとも部分的に曲げ半径内で面で当接するように配設されている。これは、排気ターボチャージャの運転に特に有利に作用する。従って、生じる部品の膨張とこれから生じる応力は、全ての運転中に、インナハウジングと軸受フランジ間に不動の密着した座が得られ、危険な応力ピークが生じることがないように、均一化される。
【0020】
別の好ましい実施バリエーションでは、エッジとカラーが、タービンホイール回転軸の方向に、部分的に面で当接し、当接面が、タービンホイール回転軸の方向に整向されている。これにより、インナハウジングのカラーが軸受フランジのエッジに面で当接する長さが得られる。この場合、当接面の中心の整向軸は、本質的にタービンホイール回転軸の方向に整向されている。これにより、インナハウジングとカラーの弾性余裕が存在するとの利点が得られる。部品の熱膨張が異なることに基づいて生じる応力は、特に、当接面において、タービンホイール回転軸の方向に分散させ、これにより、本発明による排気ターボチャージャの耐久性を高めることができる。
【0021】
更に、インナハウジングは、2つのシェルから形成されており、軸受フランジ側のハーフシェルの横断面は、S字状に形成されている。本発明の枠内では、カラーは、既に、S字状の形成の終端部分の構成要素である。これは、特に、ハーフシェル安価に製造する可能性に有利に作用する。S字状に形成することにより、ハーフシェルは、変形工具での作業工程によって製造可能である。得られる別の利点は、更にまた、インナハウジング内に生じる応力も、インナハウジングとアウタハウジング間に生じる応力も、S字状の形成によってバネ式に補償されることにある。これにより、インナハウジングは、アウタハウジングに対して相対的に膨張し、自分自身に対して絶対的に膨張する可能性を有し、この場合、排気ターボチャージャの効率もしくは作動状態にマイナスに作用することはない。
【0022】
本発明の別の好ましい実施バリエーションでは、インナハウジングが、1.5mm以下の、好ましくは1mm以下の肉厚を備える。軸受フランジとインナハウジングの本発明による連結により、特に小さい肉厚のインナハウジングを製造することが可能である。その結果、インナハウジング内に少ない残留応力が生じ、まさにエンジンスタート状態でも、熱い肉厚に比して少ないインナハウジングへの熱入力しか生じない。その結果、排気ターボチャージャは、迅速に運転温度になり、従って、最適な効率領域になる。更に、内燃機関と排気後処理との全システムは、同様に迅速に運転温度になるので、まさに、例えば触媒作動開始状態で、スタート工程中のエミッション値の明らかな低減を実現することができる。
【0023】
別の好ましい実施バリエーションでは、カラーとエッジが、母材融合により、特に環状の半径方向の接合シームを介して、互いに連結されている。インナハウジングと軸受フランジ間の連結を更に補強するために、嵌合による結合に加えて、母材融合による結合も形成される。これは、更にまた、結合部の耐久性と結合部の気密性にプラスに作用する。
【0024】
特に好ましい別の実施バリエーションでは、カラーが、エッジの背後に回りこみ、カラーの軸受フランジ側の端部の接合部内で、カラーが、エッジと、環状の熱的接合によって連結されている。これにより、接合シームが、高温の排気の直接的な流れにさらされないことが保証されている。従って、熱的接合プロセスの熱影響ゾーンと、接合プロセスの接合シームによって生じたこの領域内の部品の弱い部分は、高温で腐食性の高い排気の直接的な流れにさらされない。これは、更にまた、本発明による排気ターボチャージャの耐久性に特に有利に作用する。
【0025】
本発明の別の利点、特徴、様相及び特性を、以下で、概略図に図示した実施形に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による排気ターボチャージャを断面図で示す。
【図2】軸受フランジとインナハウジング間の連結部の詳細断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
各図において、簡素化の理由から繰返しの説明が省略されている場合であっても、同じ又は同様の部品に対して同じ符号が使用される。
【0028】
図1は、本発明による排気ターボチャージャ1の断面図を示す。この場合、排気ターボチャージャ1は、アウタハウジング2とこのアウタハウジング2内に配設されたインナハウジング3とから成る。アウタハウジング2もインナハウジング3も、2つのシェルから構成されており、アウタハウジング2は、図の左側のハーフシェル4と右側のハーフシェル5から成り、インナハウジング3は、左側のハーフシェル6と右側のハーフシェル7から成る。
【0029】
これらハーフシェル4,5,6,7は、横断面をそれぞれ本質的にS字状に形成されている。それぞれの連結領域のところで、インナハウジングのハーフシェル6,7も、アウタハウジングのハーフシェル4,5も、オーバラップするように配設されている。オーバラップ部8は、ここに示した実施例では、それぞれ右側のハーフシェル5,7が左側のハーフシェル4,6に重なるように、それぞれ形成されている。更に、それぞれのハーフシェル4,5,6,7は、環状の接合シーム9によって互いに母材融合により連結されている。インナハウジング3は、スライド座10が、図の左側で、アウタシェル2内に配設されている。
【0030】
タービンホイール11は、インナハウジング3内に存在し、ここに図示したタービンホイール軸12を介して排気ターボチャージャ1内に軸受けされている。従って、タービンホイール軸12は、タービンホイール回転軸13を決定する。アウタハウジング2は、図の右側で軸受フランジ14と連結されている。連結は、一方で、当接領域15内で係合により形成され、他方で、環状の接合シーム9を備えている。更に、軸受フランジ14には、内側に位置するエッジ16が形成されている。従って、このエッジ16は、軸受フランジ14内の開口Oを定義する。この開口Oは、インナハウジング3のカラー17を通るので、カラー17は、エッジ16に当接する。このため、カラー17は、内径DIと、軸受フランジ14の方向に拡大する外径DAを備える。従って、カラー17が、エッジ16の領域で軸受フランジ14の背後に回りこみ、これが、係合による不動の固定部を生じさせる。更に、このように形成された位置決め部は、環状の接合シーム18によって付加的に補強されている。
【0031】
図2は、カラー17とエッジ16間の連結領域の詳細図を示す。エッジ16は、ここに図示した実施バリエーションでは、曲げ半径Rを有するように図示されており、この曲げ半径は、軸受フランジ14の方向に延在する。この場合、曲げ半径Rは、機能として変更可能であり、一定の曲げ半径に定める必要はない。カラー17は、終端領域19内に、曲げ半径Rに対応する輪郭を備えるので、本質的に面での当接が形成されている。
【0032】
更に、カラー17とエッジ16は、当接面20において面で当接し、この当接面20は、本質的にここに示してない多ビンホイール回転軸13の方向に整向された中心軸21を備える。更に、インナハウジング3は、好ましくは1.5mm以下の厚さの肉厚Wを備える。軸受フランジ14とインナハウジング3間には、熱膨張時の、応力除去、軸受フランジ14におけるインナハウジング3の十分な座及び高い気密性を保証する除荷間隙22が設けられている。
【符号の説明】
【0033】
1 排気ターボチャージャ
2 アウタハウジング
3 インナハウジング
4 2の左側のハーフシェル
5 2の右側のハーフシェル
6 3の左側のハーフシェル
7 3の右側のハーフシェル
8 オーバラップ部
9 2,3及び15の接合シーム
10 スライド座
11 タービンホイール
12 タービンホイール軸
13 タービンホイール回転軸
14 軸受フランジ
15 当接領域
16 エッジ
17 カラー
18 17の接合シーム
19 終端領域
20 当接面
21 20の中心軸
22 除荷間隙
W 肉厚
DI 内径
DA 外径
O 開口
R 曲げ半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタハウジング(2)と、インナハウジング(3)と、タービンホイール(11)を備え、アウタハウジング(2)が、軸受フランジ(14)と母材融合により結合され、インナハウジング(3)が、係合により軸受フランジ(14)と連結されている、排気ターボチャージャにおいて、
インナハウジング(3)に形成されたカラー(17)が、軸受フランジ(14)の内側に位置するエッジ(16)に、タービンホイール回転軸(13)の方向に少なくとも部分的に当接することを特徴とする排気ターボチャージャ。
【請求項2】
カラー(17)が、軸受フランジ側の端部に向かってその直径が拡大ずるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項3】
カラー(17)とエッジ(16)が、係合により当接し、これにより、カラー(17)が、エッジ(16)の背後に回りこむように配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項4】
カラー(17)の終端領域(19)の横断面が、曲げ半径(R)を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気ターボチャージャ。
【請求項5】
エッジ(16)の横断面が、曲げ半径(R)に対応する形状を備えることを特徴とする請求項4に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項6】
エッジ(16)とカラー(17)が、少なくとも部分的に曲げ半径(R)内で面で当接するように配設されていることを特徴とする請求項5に記載の排気ターボチャージャ。
【請求項7】
エッジ(16)とカラー(17)が、タービンホイール回転軸(13)の方向に、部分的に面で当接し、当接面(20)が、タービンホイール回転軸(13)の方向に整向されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の排気ターボチャージャ。
【請求項8】
インナハウジング(3)が、2つのシェルから形成されており、軸受フランジ側のハーフシェルの横断面が、S字状に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の排気ターボチャージャ。
【請求項9】
インナハウジング(3)が、1.5mm以下の、好ましくは1mm以下の肉厚(W)を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の排気ターボチャージャ。
【請求項10】
カラー(17)とエッジ(16)が、母材融合により、特に環状の半径方向の接合シーム(18)を介して、互いに連結されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の排気ターボチャージャ。
【請求項11】
カラー(17)が、エッジ(16)の背後に回りこみ、カラー(17)の軸受フランジ側の端部の接合部内で環状の熱的接合によってエッジ(16)と連結されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の排気ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−241835(P2011−241835A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112261(P2011−112261)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】