説明

排気処理システム

【課題】熱交換器に対する二酸化ケイ素の堆積を確実に防止すると共に、設備のイニシャルコストやランニングコスト及びメンテナンスコストの低減化を図り、排気処理の効率を高める。
【課題を解決するための手段】
本発明に係る排気処理システム1は、有機シリコンが濃縮された濃縮排気を燃焼させて浄化処理する燃焼装置3と、燃焼装置3から排出された高温排気と受熱側ガスとの間で熱交換させる熱交換器4,5と、を備え、熱交換器4,5から排出された放熱後の排気の温度が所定温度以上となるように制御されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機シリコンを含有する排気を燃焼させて浄化処理する排気処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶製造や半導体製造などの過程において発生した有機シリコンを含有する排気を浄化処理するために排気処理システムが設置されている。
【0003】
この種の排気処理システムにおいて、排気中に含まれる有機シリコンは、吸着装置により吸着処理された後、燃焼装置により燃焼処理され、酸化分解されて浄化される。その後、燃焼処理により高温となった排気は、熱交換器において受熱側空気との間で熱交換されて冷却された後、大気中に放出される。
【0004】
この間、排気中の有機シリコンは、燃焼装置による燃焼時に二酸化ケイ素(無機シリカ)に変性し、この二酸化ケイ素は、熱交換器において排気が冷却される時に結晶化し析出するため、熱交換器の伝熱側に付着、堆積し、熱交換器が目詰まりするという問題が生じていた。
【0005】
そこで、従来、熱交換器に付着、堆積した二酸化ケイ素を除去するために、熱交換器の放熱側へ散水する散水手段及び散水後の廃水を外部へ排出するための排出手段を設けた排気ガス処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、その他の従来の方法としては、例えば、薬液による化学的洗浄や、ドライアイスやサンドブラストによる物理的洗浄により定期的に二酸化ケイ素を除去する方法や、或いは、プレート式熱交換器の場合にプレートの形状や間隔を調整する方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願平11−3092号公報(特許第4491696号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の排気ガス処理装置の場合には、散水手段や排出手段を設置する必要があるため、その設置スペースが必要となると共に、設備のイニシャルコスト及びランニングコストが増大するといった問題があった。また、散水手段により散水を行っている間、排気ガス処理装置を停止させる必要があり、その再起動を行うまでに多大な時間を要し、排気処理の効率を高めることが難しいといった問題もあった。
【0009】
また、化学的洗浄や物理的洗浄によって二酸化ケイ素の除去作業を行う方法では、作業時に熱交換器を損傷させ、該損傷箇所に二酸化ケイ素が堆積する頻度が高くなるといった問題や、二酸化ケイ素の除去作業に多大な労力を要し、メンテナンスコストが増大するといった問題もあった。
【0010】
さらに、プレート式熱交換器においてプレートの形状や間隔を調整する方法では、それだけで二酸化ケイ素を十分に取り除くことができないといった問題があった。
【0011】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、熱交換器に対する二酸化ケイ素の堆積を抑制することができると共に、設備のイニシャルコストやランニングコスト及びメンテナンスコストの低減化を図り、排気処理の効率を高めることのできる排気処理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る排気処理システムは、有機シリコンが濃縮された濃縮排気を燃焼させて浄化処理する燃焼装置と、該燃焼装置から排出された高温排気と受熱側ガスとの間で熱交換させる熱交換器と、を備え、前記熱交換器から排出された放熱後の排気の温度が所定温度以上となるように制御されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る排気処理システムは、未処理排気中に含まれる有機シリコンを吸着させて脱着処理する吸着装置と、該吸着装置から排出された有機シリコンが濃縮された濃縮排気を燃焼させて浄化処理する燃焼装置と、該燃焼装置から排出された高温排気と該燃焼装置に供給される前の前記濃縮排気との間で熱交換させる第1の熱交換器と、該第1の熱交換器から排出された高温排気と前記吸着装置により有機シリコンが脱着された脱着排気との間で熱交換させる第2の熱交換器と、を備え、前記第2の熱交換器から排出された放熱後の排気の温度が所定温度以上となるように制御されることを特徴とする。
【0014】
さらに、前記第1の熱交換器の放熱側経路には該第1の熱交換器を迂回する第1のバイパス経路が設けられると共に該第1のバイパス経路を流通する前記高温排気の風量を調整する第1の風量調整手段が設けられ、前記第2の熱交換器の放熱側には該第2の熱交換器からの排気の出口温度を検出する出口温度検出手段が設けられ、前記出口温度検出手段が検出した前記排気の出口温度が所定温度以上となるように前記第1の風量調整手段を制御して前記第1のバイパス経路を流通する前記高温排気の風量を調整するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱交換器に対する二酸化ケイ素の堆積を抑制することができると共に、設備のイニシャルコストやランニングコスト及びメンテナンスコストの低減化を図り、排気処理の効率を高めることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る排気処理システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る排気処理システムについて説明する。
【0018】
図1に示されているように、本発明の実施の形態に係る排気処理システム1は、未処理排気中に含まれる有機シリコンを吸着させて脱着処理する吸着装置2と、吸着装置2から排出されて有機シリコンが濃縮された濃縮排気を燃焼させて浄化処理する燃焼装置3と、受熱側の前記濃縮排気と放熱側の燃焼装置3から排出される高温排気との間で熱交換させる第1の熱交換器4と、第1の熱交換器4から排出された高温排気と吸着装置2により有機シリコンが脱着された脱着排気との間で熱交換させる第2の熱交換器5と、を備えて構成されている。
【0019】
吸着装置2と第1の熱交換器4の受熱部(図示省略)とは第1のダクト6により接続され、第1の熱交換器4と燃焼装置3とは第2のダクト7により接続されている。また、燃焼装置3と第1の熱交換器4の放熱部(図示省略)とは第3のダクト8により接続され、第1の熱交換器4の放熱部と第2の熱交換器5の放熱部とは第4のダクト9により接続され、第3のダクト8と第4のダクト9との間には第1の熱交換器4を迂回するように第1のバイパス経路10が分岐接続されている。この第1のバイパス経路10には、第1のバイパス経路10を流通する前記高温排気の風量を調整する第1の風量調整手段として第1の制御ダンパー11が設けられている。
【0020】
また、吸着装置2の排気塔12と第2の熱交換器5の受熱部(図示省略)とは第5のダクト13により接続され、第2の熱交換器5の受熱部と吸着装置2とは第6のダクト14により接続され、第5のダクト13と第6のダクト14との間には第2の熱交換器5を迂回するように第2のバイパス経路15が分岐接続されている。この第2のバイパス経路15には、第2のバイパス経路15を流通する前記脱着排気の風量を調整する第2の風量調整手段として第2の制御ダンパー16が設けられている。また、第6のダクト14には、吸着装置2の近接位置に吸着装置2への前記脱着排気の入口温度を検出する入口温度検出手段として入口温度センサ17が設けられている。
【0021】
さらに、第2の熱交換器5の放熱部と外部との間には第7のダクト18が接続されており、この第7のダクト18には第2の熱交換器5の放熱部からの排気の出口温度を検出する出口温度検出手段として出口温度センサ19が設けられている。
【0022】
次に、図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る排気処理システムの作用について説明する。
【0023】
液晶製造や半導体製造などの過程において発生した未処理排気が吸着装置2に供給されると、吸着装置2では、前記未処理排気中に含まれる有機シリコンが、第2の熱交換器5から第6のダクト14を通って吸着装置2に供給された脱着空気によって剥し取られて脱着処理される。該脱着処理された脱着排気は、排気塔12を通って外部に排出されると共に、一部分の脱着排気は第5のダクト13を通って第2の熱交換器5に供給される。
【0024】
一方、吸着装置2において有機シリコンが濃縮された濃縮排気は、第1のダクト6を通って第1の熱交換器4の受熱部に供給され、第1の熱交換器4において燃焼装置3から排出される高温空気との間で熱交換され、受熱して昇温された後、第2のダクト7を通って、燃焼装置3に供給される。
【0025】
燃焼装置3では、前記濃縮排気が燃焼処理により所定温度まで昇温され、酸化分解され、前記濃縮排気中の有機シリコンは、二酸化ケイ素(無機シリカ)に変性される。その後、燃焼装置3から排出された高温排気は、第3のダクト8を通って第1の熱交換器4の放熱部に供給され、第1の熱交換器4において吸着装置2から排出された前記濃縮排気との間で熱交換され、放熱して冷却された後、第4のダクト9を通って、第2の熱交換器5に供給される。
【0026】
第2の熱交換器5において、第1の熱交換器から排出されて前記放熱部に供給された高温排気は、排気塔12から第5のダクト13を通って前記受熱部に供給された前記脱着排気との間で熱交換され、放熱して冷却された後、第7のダクト18を通って、大気に放出される。
【0027】
この時、第2の熱交換器5の放熱部からの排気の出口温度は、常時、出口温度センサ19により検出され、前記排気の出口温度の検出値は制御部(図示省略)に送信される。該制御部は、前記排気の出口温度の検出値を設定温度(好ましくは、250度)と比較し、前記検出値が前記設定温度より低いと判断した場合には、第1の制御ダンパー11を開放する方向に制御し、第1のバイパス経路10を流通する前記高温排気の風量を増加させる。これにより、第1の熱交換器4における前記高温排気の放熱量が減少するため、第1の熱交換器4の放熱部から排出される前記高温排気の温度は上昇する。
【0028】
一方、前記制御部は、前記検出値が前記設定温度より高いと判断した場合には、第1の制御ダンパー11を絞る方向に制御し、第1のバイパス経路10を流通する前記高温排気の風量を減少させる。これにより、第1の熱交換器4における前記高温排気の放熱量が増加するため、第1の熱交換器4の放熱部から排出される前記高温排気の温度は下降する。
【0029】
このように、出口温度センサ19の検出値に基づき第1の制御ダンパー11の開度を制御することにより、第2の熱交換器5の放熱部から排出される前記高温排気の温度が、常時、所定温度以上(250度程度)に保持されると共に、第1の熱交換器4の放熱部から排出される前記高温排気の温度が前記所定温度以上の温度に保持される。これにより、第1の熱交換器4及び第2の熱交換器5において前記高温排気が冷却される時に二酸化ケイ素が結晶化、析出して第1の熱交換器4及び第2の熱交換器5の各放熱部に付着、堆積するのを抑制することができる。
【0030】
また、吸着装置2への前記脱着排気の入口温度は、常時、入口温度センサ17により検出され、前記脱着排気の入口温度の検出値は前記制御部に送信される。該制御部は、前記脱着排気の入口温度の検出値を設定温度と比較し、前記検出値が前記設定温度より低いと判断した場合には、第2の制御ダンパー16を絞る方向に制御し、第2のバイパス経路15を流通する前記脱着排気の風量を減少させる。これにより、第2の熱交換器5における前記脱着排気の受熱量が増加するため、第2の熱交換器5の受熱部から排出される前記脱着排気の温度は上昇する。
【0031】
一方、前記制御部は、前記検出値が前記設定温度より高いと判断した場合には、第2の制御ダンパー16を開放する方向に制御し、第2のバイパス経路15を流通する前記脱着排気の風量を増加させる。これにより、第2の熱交換器5における前記脱着排気の受熱量が減少するため、第2の熱交換器5の受熱部から排出される前記脱着排気の温度は下降する。
【0032】
このように、入口温度センサ17の検出値に基づき第2の制御ダンパー16の開度を制御することにより、吸着装置2への前記脱着排気の入口温度が、常時、所定温度に保持されるため、吸着装置2において未処理排気中の有機シリコンを確実に脱着処理することができる。
【0033】
また、仮に、出口温度センサ19の検出値に基づき第2の制御ダンパー16の開度を制御する等、第2の熱交換器5の放熱部からの放熱量を第2の熱交換器5だけで制御した場合には、第2の熱交換器5の放熱部から排出される前記高温排気の温度を所定温度以上に保持することはできるが、吸着装置2への前記脱着排気の入口温度を所定温度に保持することができなくなるおそれがある。したがって、上記した実施の形態のように、出口温度センサ19の検出値に基づき第1の制御ダンパー11の開度を制御すると同時に、入口温度センサ17の検出値に基づき第2の制御ダンパー16の開度を制御するのがより好ましく、これにより、第2の熱交換器5の放熱部から排出される前記高温排気の温度を所定温度以上(250度程度)に確実に保持し、且つ、吸着装置2への前記脱着排気の入口温度を所定温度に確実に保持することができる。なお、この場合、第1の制御ダンパー11を開放する方向に制御し、第1のバイパス経路10を流通する前記高温排気の風量を増加させると、第1の熱交換器4における前記濃縮排気の受熱量が減少するが、第1の熱交換器4での前記濃縮空気の受熱は、燃焼装置3による燃焼処理前に予備昇温させる目的であるため、例えここでの受熱量が減少したとしても、燃焼装置3での燃焼ガスの消費量が若干増加するだけであり、システム上で特に問題が生じることはない。
【0034】
このように上記した本発明の実施の形態に係る排気処理システム1によれば、熱交換器4,5の放熱部から排出される前記高温排気の温度を所定温度以上に保持することができるため、二酸化ケイ素が熱交換器4,5の放熱部において結晶化、析出して付着、堆積するのを抑制することができる。また、熱交換器4,5に付着、堆積した二酸化ケイ素を除去するための散水手段や排出手段を設置する必要がないため、省スペース化を図ることができ、設備のイニシャルコスト及びランニングコストの低減化を図ることができる。さらに、化学的洗浄や物理的洗浄によって二酸化ケイ素の除去作業を行う必要がないため、作業時に熱交換器を損傷させるおそれがなく、メンテナンスコストの低減化を図ることができる。さらにまた、散水中や化学的洗浄などによる二酸化ケイ素の除去作業中に排気ガス処理装置を停止させる必要がないため、排気処理の効率を高めることができる。
【0035】
なお、上記した本発明の実施の形態の説明は、本発明に係る排気処理システムにおける好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。さらに、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 排気処理システム
2 吸着装置
3 燃焼装置
4 第1の熱交換器
5 第2の熱交換器
10 第1のバイパス経路
11 第1の制御ダンパー(第1の風量調整手段)
15 第2のバイパス経路
16 第2の制御ダンパー(第2の風量調整手段)
17 入口温度センサ(入口温度検出手段)
19 出口温度センサ(出口温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機シリコンが濃縮された濃縮排気を燃焼させて浄化処理する燃焼装置と、
該燃焼装置から排出された高温排気と受熱側ガスとの間で熱交換させる熱交換器と、
を備え、
前記熱交換器から排出された放熱後の排気の温度が所定温度以上となるように制御されることを特徴とする排気処理システム。
【請求項2】
未処理排気中に含まれる有機シリコンを吸着させて脱着処理する吸着装置と、
該吸着装置から排出された有機シリコンが濃縮された濃縮排気を燃焼させて浄化処理する燃焼装置と、
該燃焼装置から排出された高温排気と該燃焼装置に供給される前の前記濃縮排気との間で熱交換させる第1の熱交換器と、
該第1の熱交換器から排出された高温排気と前記吸着装置により有機シリコンが脱着された脱着排気との間で熱交換させる第2の熱交換器と、
を備え、
前記第2の熱交換器から排出された放熱後の排気の温度が所定温度以上となるように制御されることを特徴とする排気処理システム。
【請求項3】
前記第1の熱交換器の放熱側経路には該第1の熱交換器を迂回する第1のバイパス経路が設けられると共に該第1のバイパス経路を流通する前記高温排気の風量を調整する第1の風量調整手段が設けられ、前記第2の熱交換器の放熱側には該第2の熱交換器からの排気の出口温度を検出する出口温度検出手段が設けられ、前記出口温度検出手段が検出した前記排気の出口温度が所定温度以上となるように前記第1の風量調整手段を制御して前記第1のバイパス経路を流通する前記高温排気の風量を調整することを特徴とする請求項2に記載の排気処理システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−15243(P2013−15243A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147312(P2011−147312)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000191319)新菱冷熱工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】