説明

排気浄化装置の接続部構造

【課題】複雑な構造を用いることなく、パイプ内での還元剤の堆積を防止する。
【解決手段】上流側排気浄化装置10の下流部に形成された排気流出空間14内に配設された第二パイプ16と、筒状ケーシング11の周壁に設けられた還元剤添加装置31とを備え、第一パイプは、出口パイプ17と中間パイプ19とから構成され、出口パイプ17排気上流側端部は、排気流出空間14と連通するように接続される。第二パイプ16の一端16aは、前記周壁から間隔CLをあけて配設され噴射口31aに向けて開口し、第二パイプ16の他端16bは、出口パイプ17の排気上流側の開口端から第一パイプ17,19内に挿入されて、出口パイプ17と中間パイプ19の接続部よりも排気下流側まで延在して設けられ、第一パイプ17,19の内周面と第二パイプ16の外周面との間には、排気流出空間14と第一パイプ17,19とを連通する間隙18が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気を浄化する排気浄化装置の接続部構造に関し、特に排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、NOx(窒素酸化物)を除去する選択還元型触媒とを備えた排気浄化装置の接続部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(以下、エンジンという)、中でもディーゼルエンジンの排気中には、大気汚染物質である煤等の粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)やNOx等が含まれている。そこで、エンジンの排気通路に、PMを捕集するためのパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFと略称する)を設置し、大気中にPMが放出されないようにする技術が従来知られている。さらに、エンジンの排気通路でDPFの排気下流側に、NOxを除去するための選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCRと略称する)を設置し、還元剤としての尿素水をSCRに流入する排気中に添加することにより、SCRにおいて排気中のNOxを還元して排気を浄化するようにした技術も知られている。
【0003】
SCRは、例えば、軸方向に互いに平行な微小な穴が複数連通したハニカム構造の担体に、触媒が担持されて構成されている。このSCRを用いた排気浄化装置では、排気中に尿素水を添加する尿素水添加装置としてのノズルがSCRの上流側に設けられる。ノズルから添加される尿素水は、排気管内やSCR上で排気熱によってアンモニアに分解され、NOxの還元剤として働く。SCRの近傍のアンモニアは、一旦SCRに吸着し、このアンモニアと排気中のNOxとの間の脱硝反応がSCRによって促進されることによりNOxが窒素に還元される。
【0004】
このようなPMの捕集及びNOxの還元を効率的に行うため、DPF及びSCRを組み合わせ、排気浄化装置として用いるようにしたものが、例えば特許文献1などに提案されている。特許文献1に記載の排気浄化装置は、図3に示すように、筒状の第一のケーシング61を有する上流側排気浄化装置60と、第一のケーシング61の下流側に配設された筒状の第二のケーシング71を有する下流側排気浄化装置70と、第一のケーシング61及び第二のケーシング71を連結する中間パイプ69と、還元剤を噴射する噴射ノズル65とで構成されている。
【0005】
筒状の第一のケーシング61内には、その上流側に前段酸化触媒62が配置され、前段酸化触媒62の下流側にDPF63が配置されている。また、DPF63の下流側には、排気流出空間64が設けられている。なお、前段酸化触媒62は、排気中のNOを酸化させてNO2を生成し、このNO2によってDPF63でのPMの燃焼が行われる。
一方、筒状の第二のケーシング71内には、その上流側にSCR72が配置され、下流側にSCR72から流出したアンモニアを酸化してN2とするための後段酸化触媒73が配置されている。
【0006】
第一のケーシング61と第二のケーシング71とを連通する中間パイプ69は、その上流部69aが第一のケーシング61の排気流出空間64内に貫入され、中間パイプ69の排気流出空間64内にある挿入部分には、排気流出空間64と連通パイプ69の内部とを連通させる多数の貫通孔66が貫設されている。これらの貫通孔66を介して、第一のケーシング61内に収納されているDPF63を通過した排気を中間パイプ69内部に導入して、第二のケーシング71に向けて供給する。また、還元剤としての尿素水を中間パイプ69内に噴射する噴射ノズル65は、その噴射口65aが中間パイプ69の上流端側に露出しており、中間パイプ69内の下流側に向けて還元剤を噴射する。
【0007】
このように構成された特許文献1に記載の排気浄化装置によれば、エンジンの排気は、排気通路59を経て第一のケーシング61に導入され、第一のケーシング61の排気流出空間64から中間パイプ69の各貫通孔66を経て中間パイプ69内に導入される。そして、中間パイプ69により第二のケーシング71へと案内されて、排気浄化装置を流通する。このとき、エンジンの排気は、中間パイプ69の各貫通孔66を経て中間パイプ69内に導入されるため、中間パイプ69内で相互に衝突して攪拌される。この攪拌中の排気に向けて噴射ノズル65から還元剤としての尿素水が噴射されるため、還元剤が十分に拡散された状態で下流側排気浄化装置70に移送され、還元剤が略均等にSCR72に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−274878号公報
【特許文献2】特開2009−97435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の排気浄化装置では、噴射ノズル65から中間パイプ69の下流側に向けて尿素水を噴射した場合、中間パイプ69に設けられた複数の貫通孔66を介して中間パイプ69内に排気が導入される際に、各貫通孔66の周辺で気流のよどみが発生するため、このよどみが起点となって、尿素水の一部が中間パイプ69に設けられた各貫通孔66の周囲に付着し、水分が蒸発することによって固形化した尿素が堆積してしまうことがある。このような堆積は、中間パイプ69の内周面に不連続な面がある場合に起こり得る課題である。
【0010】
この結果、排気の流動抵抗が増大したり、尿素水が中間パイプ69に設けられた各貫通孔66の周囲に付着することによって、SCR72に供給されるべきアンモニアの量が不足して、SCR72の排気浄化効率が低下したりするという課題が生じる。
また、複数の貫通孔66から中間パイプ69内に排気が導入されるため、噴射ノズル58から噴射された尿素水を排気中に拡散させる点では有利であるが、中間パイプ69内において還元剤の噴射口の近傍(すなわち、貫通孔66が設けられている付近)を流通する排気の流速を確保することは困難であり、尿素が堆積してしまう場合があるという課題もある。
【0011】
本件はこのような課題に鑑み案出されたもので、複雑な構造を用いることなく、パイプ内での還元剤の堆積を防止することができるようにした、排気浄化装置の接続部構造を提供することを目的とする。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここで開示する排気浄化装置の接続部構造は、上流側排気浄化装置で処理された排気を第一パイプ内に流入させ流入した前記排気に還元剤を添加して下流側排気浄化装置に送給する排気浄化装置における、前記上流側排気浄化装置と前記第一パイプとの接続部構造であって、前記上流側排気浄化装置の筒状ケーシング内の下流部に形成された排気流出空間と、前記排気流出空間内に配設された第二パイプと、前記筒状ケーシングの周壁に設けられ、前記排気流出空間内に噴射口を有し、前記第二パイプの内部に前記還元剤を添加する還元剤添加装置と、を備える。
【0013】
また、前記第一パイプは、前記筒状ケーシングに固設された排気上流側の出口パイプと、前記出口パイプと前記下流側排気浄化装置とに接続された排気下流側の中間パイプとから構成され、前記出口パイプの排気上流側端部は、前記排気流出空間と連通するように接続され、前記第二パイプの一端は、前記周壁から間隔をあけて配設され前記噴射口に向けて開口し、前記第二パイプの他端は、前記出口パイプの排気上流側の開口端から第一パイプ内に挿入されて、前記出口パイプと前記中間パイプとの接続部よりも排気下流側まで延設される。そして、前記第一パイプの内周面と前記第二パイプの外周面との間には、前記排気流出空間と前記第一パイプとを連通する間隙が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
開示の排気浄化装置の接続部構造によれば、第二パイプに従来のような複数の連通孔を設けることなく、筒状ケーシングの周壁と第二パイプの一端との間隔から排気を第二パイプ内へ導入するため、簡素な構造ながら第二パイプ内での気流のよどみの発生を防ぎ、さらに流速を確保することができ、噴射された還元剤が堆積物となって第二パイプ内に堆積することを防止することができる。
【0015】
また、第一パイプの内周面と第二パイプの外周面との間に設けられた間隙には還元剤を含まない排気が流通するため、この間隙内にも還元剤は堆積しない。つまり、この隙間の途中において出口パイプと中間パイプとの接続部にできる不連続な面での還元剤の堆積を防止することができる。
以上により、排気の流動抵抗が増大することを防止でき、また、供給されるべき還元剤の量が不足することもないため、排気浄化効率の低下も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態にかかる排気浄化装置の接続部構造を説明する図であり、図1(a)は図1の(b)のA−A矢視断面図、図1(b)は図2の部分拡大断面図である。
【図2】一実施形態にかかる排気浄化装置を示す全体概略構成図である。
【図3】従来の課題を説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.構成]
[1−1.全体構成]
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0018】
本実施形態にかかる排気浄化装置について、図2を用いて説明する。本排気浄化装置は、車両だけでなくエンジンを搭載した乗り物、例えば船舶等に適用することも可能であるが、ここでは、一般的な乗用車やトラック,バス等の車両に適用した例で説明する。
図2に示すように、エンジン40は、ここでは直列6気筒機関のディーゼルエンジンとして構成されている。エンジン40の各気筒には燃料噴射弁41が設けられ、各燃料噴射弁41はコモンレール42から加圧燃料を供給され、開弁に伴って対応する気筒の筒内に燃料を噴射する。なお、エンジン40はガソリンエンジンでもよく、気筒数はこれに限定されない。
【0019】
エンジン40の吸気側には吸気マニホールド43が装着され、吸気マニホールド43の上流端に接続された吸気通路44には、上流側よりエアクリーナ45,ターボチャージャ46のコンプレッサ46a及びインタークーラ47が設けられている。また、エンジン40の排気側には排気マニホールド48が装着され、排気マニホールド48の下流端には、コンプレッサ46aと同軸上に連結されたターボチャージャ46のタービン46bが接続されている。タービン46bには排気通路49が接続されている。この排気通路49の途中に、排気浄化装置1が設けられている。
【0020】
排気浄化装置1は、排気上流側に設けられた上流側排気浄化装置10と、上流側排気浄化装置10の排気下流側に設けられた下流側排気浄化装置20とから構成され、上流側排気浄化装置10と下流側排気浄化装置20とは、第一パイプにより接続されている。なお、ここでは、第一パイプは、排気上流側に配設された出口パイプ17と、排気下流側に配設され、出口パイプ17に接続された中間パイプ19とから構成されている。
【0021】
上流側排気浄化装置10は、円筒状の筒状ケーシング11内に、上流側に配置される前段酸化触媒12と、下流側に配置されるパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFと略称する)13とが内蔵されて構成されている。なお、以下、上流側排気浄化装置10をDPF装置10という。
下流側排気浄化装置20は、筒状のケーシング21内に、ケーシング21の軸方向に直列に2つの触媒が配設されている。この触媒は、1つの担体に異なる触媒物質が担持(コート)されたもの、いわゆるゾーンコート触媒であり、排気上流側は選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCRと略称する)22として、下流側は後段酸化触媒23として構成されている。なお、以下、下流側排気浄化装置20をSCR装置20という。
【0022】
また、DPF装置10の排気下流側には、尿素水添加ノズル(還元剤添加装置)31が設けられ、尿素水添加ノズル31は、図示しないタンクから圧送される還元剤としての尿素水をSCR装置20に向かう排気中に噴射し添加する。この尿素水の添加量や添加のタイミングは、コントローラ〔ECU,Engine (electronic) Control Unit〕30により制御される。
【0023】
コントローラ30は、エンジン制御や排気浄化制御等にかかる各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等を備えて構成されている。
【0024】
[1−2.排気浄化装置]
DPF装置10は、排気中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)を捕集する機能と、捕集したPMを連続的に酸化させて除去する機能とを併せ持つ。なお、PMとは、炭素からなる黒煙(すす)の周囲に燃え残った燃料や潤滑油の成分,硫黄化合物等が付着した粒子状の物質である。
【0025】
前段酸化触媒12は、排気中の成分に対する酸化性能を持った酸化触媒であり、金属,セラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持したものである。前段酸化触媒12によって酸化される排気中の成分には、一酸化窒素(NO)や未燃燃料中の炭化水素(HC)等及び一酸化炭素(CO)が挙げられる。例えば、NOが前段酸化触媒22で酸化されると二酸化窒素(NO2)が生成される。
【0026】
DPF13は、PMを捕集する多孔質フィルタ(例えば、セラミックフィルタ)である。DPF13の内部は、多孔質の壁体によって排気の流通方向に沿って複数に分割されている。この壁体には、PMの微粒子に見合った大きさの多数の細孔が形成される。排気が壁体の近傍や内部を通過する際に壁体内,壁体表面にPMが捕集され、排気が濾過される。このようなDPF13の再生制御は、コントローラ30によって制御される。
【0027】
DPF13の下流側には混合室と称される排気流出空間14が形成されている。排気流出空間14内には、DPF装置10で処理された排気がSCR装置20へ流出するための内側パイプ(第二パイプ)16が設けられ、この内側パイプ16には、出口パイプ17を介して中間パイプ19が接続されている。なお、詳細な接続部構造については後述する。
SCR装置20は、ここでは、そのケーシング21の軸方向がDPF装置10の筒状ケーシング11の軸方向に対して直交するような向きで設けられ、平面視でT字型の配置となっているが、SCR装置20の配置はこれに限られず、車両等への搭載性や周囲の装置との配置関係等によって適宜設定可能である。
【0028】
SCR装置20に内蔵されたSCR22は、尿素添加型の窒素酸化物選択還元型触媒であり、尿素水添加ノズル31から添加される尿素水をアンモニアに加水分解するとともに、アンモニアを吸着する機能を持ち、さらに吸着したアンモニアを還元剤として排気中のNOxをN2へと還元するものである。なお、SCR22に担持される触媒の種類は任意であり、例えばゼオライト系,バナジウム系等を用いることが考えられる。また、還元剤として尿素水以外を用いるものでもよい。
【0029】
後段酸化触媒23は、SCR22での還元反応における余剰分のアンモニアを除去するための酸化触媒である。
なお、ここでは、SCR装置20は、SCR22と後段酸化触媒23とをケーシング21の軸方向に直列に2組ずつ配設され、中間パイプ19がケーシング21の軸方向中心部に接続されている。また、排気出口はケーシング21の両端部に設けられ、SCR装置20を通過した排気は出口パイプ29から大気中へ放出されるよう構成されているが、SCR装置20の構成はこれに限られない。例えば、SCR22及び後段酸化触媒23を1つずつ内蔵して構成されていてもよく、ケーシング21の一端に排気入口を設け、他端に排気出口を設けて構成されていてもよく、また、ゾーンコート触媒でなくてもよい。
【0030】
[1−3.排気浄化装置の接続部構造]
次に、DPF装置10と、内側パイプ16,出口パイプ17及び中間パイプ19との接続部の構造について、図1(a)及び図1(b)を用いて説明する。
図1(a)に示すように、内側パイプ16,出口パイプ17及び中間パイプ19は、排気上流側からこの順に設けられ、それぞれの軸心を略一致させた状態で接続されている。
【0031】
出口パイプ17は、DPF装置10の筒状ケーシング11と中間パイプ19とを接続するパイプである。出口パイプ17の排気上流端17aは、筒状ケーシング11の周壁を貫通して挿入され、排気流出空間14内に突出して配設されており、筒状ケーシング11の周壁に溶接によって固設されている。また、出口パイプ17の排気下流側は二重構造になっており、耐摩耗性を有する材質の球面ブッシュ(球面滑り軸受け)33が、出口パイプ17の内周面と中間パイプ19の外周面との間に設けられている。球面ブッシュ33は、耐摩耗性と気密性を有するリング状の部材である。
【0032】
出口パイプ17の二重構造になっている排気下流側は、球面ブッシュ33の曲面部に摺接するように出口パイプ17の外部へ向けて凸状になるように湾曲している。これにより、出口パイプ17は、中間パイプ19に対してフレキシブルに接続され、中間パイプ19に曲げ変位が発生しても、フレキシブルにより曲げ変位を吸収できる。また、凸状に湾曲した部分から出口パイプ17の外部に向けて垂直方向にフランジ17fが設けられている。
【0033】
中間パイプ19は、筒状ケーシング11に固設された出口パイプ17とSCR装置20のケーシング21とを接続し、DPF装置10を流通した排気をSCR装置20へ移送する、出口パイプ17と内径の大きさが同一のパイプであり、排気上流側の一端の外周面に球面ブッシュ33が設けられ、球面ブッシュ33の排気下流側の側面に当接する位置から中間パイプ19の外部に向けて垂直方向にフランジ19fが設けられている。中間パイプ19のフランジ19fは、出口パイプ17のフランジ17fと複数のボルトとスプリングとからなる接続部材32によりフレキシブルに接続され、排気が流通する流路を形成する。また、中間パイプ19の排気下流側の他端にも、図2に示すようにフランジが設けられ、SCR装置20のケーシング21に取り付けられたパイプと接続されている。
【0034】
内側パイプ16は、その外径の大きさが出口パイプ17の内径よりも小さい平滑なパイプである。内側パイプ16は、排気流出空間14内であって、筒状ケーシング11の軸方向と直交する方向に設けられている。内側パイプ16は、その外周面が2つの支持部材15によって筒状ケーシング11の端壁11aに支持されることにより、排気流出空間14内に配設される。
【0035】
内側パイプ16の排気上流側の一端(以下、上流端という)16aは、筒状ケーシング11の周壁から間隔CLをあけて配設され、尿素水添加ノズル31の噴射口31aに向けて開口している。この間隔CLは、DPF装置10で処理された排気が内側パイプ16及び出口パイプ17を介して中間パイプ19内へ流入するためのものであり、その大きさは、流入する排気とその排気中に添加される尿素水の両方を考慮して適宜設定される。
【0036】
内側パイプ16の下流側は、筒状ケーシング11の周壁から貫入された出口パイプ17の排気上流端17aの開口から出口パイプ17内へ挿入される。そして、内側パイプ16は、その排気下流側の他端(以下、下流端という)16bが出口パイプ17と中間パイプ19との接続部よりも排気下流側に位置するように延設されている。また、内側パイプ16は、その軸心と出口パイプ17及び中間パイプ19との軸心が略一致するように配設されている。
【0037】
内側パイプ16の外径の大きさは、出口パイプ17内に挿入された状態で出口パイプ17の内周面と内側パイプ16の外周面との間に間隙18が形成される程度に小さいものである。ここでは、内側パイプ16は出口パイプ17と同心状に配置されており、この間隙18は、内側パイプ16の全周に略同一の大きさで形成され、排気流出空間14と中間パイプ19とを連通し、排気流出空間14内の排気であって、尿素水を含まない排気を間隙18内に流通させる。
【0038】
なお、出口パイプ17の二重構造部分の内側のパイプ(すなわち、筒状ケーシング11の周壁から貫入されているパイプ)の排気下流端と、中間パイプ19の排気上流端との間には、フレキシブルジョイントの構造上ギャップGがあるが、間隙18内を流通する排気には尿素水が含まれていないため、このギャップGに尿素水が堆積することはない。
内側パイプ16の軸心上であって筒状ケーシング11の周壁には、SCR装置20内のSCR22へ尿素水を添加する尿素水添加装置31が固定され、その噴射口31aが内側パイプ16の軸心上に尿素水の噴射中心を向けて設けられている。尿素水添加装置31の噴霧口31aから噴射される尿素水は、図1(a)中に二点鎖線で範囲を示すように、内側パイプ16内の上流部分へと流入される。
【0039】
[2.作用,効果]
本実施形態にかかる排気浄化装置の接続部構造は上述のように構成されているので、還元剤としての尿素水の添加は以下のように実施される。
DPF装置10内において、前段酸化触媒12及びDPF13を通過した排気は、DPF装置10の下流部に形成された排気流出空間14内に流入し、内側パイプ16の上流端16aの開口から内側パイプ16内に流れ込む。一方、内側パイプ16の軸心上且つ筒状ケーシング11の周壁に設けられた尿素水添加ノズル31により、内側パイプ16の軸心方向へ還元剤としての尿素水が添加されると、図1(a)中に二点鎖線で範囲を示すように、還元剤は内側パイプ16内へ進入していく。
【0040】
添加された還元剤は、内側パイプ16の上流端16aから流入する排気の流れに包み込まれ、排気とともに内側パイプ16内を流通し、中間パイプ19内へ流れ込む。このとき、添加された尿素水は、内側パイプ16及び中間パイプ19内で径方向に拡散し、排気熱によって加水分解してアンモニアが生成される。生成されたアンモニアは、SCR装置20のSCR22に供給され、NOxの還元が行われる。
【0041】
排気流出空間14内の排気は、内側パイプ16の上流端16aからだけでなく、出口パイプ17の内周面と内側パイプ16の外周面との間隙18へも流れ込む。この排気には尿素水は含まれておらず、間隙18を流通する補助流となって、内側パイプ16の下流端16bにおいて内側パイプ16内を流通した尿素水を含む主流の排気と混ざり合い、中間パイプ19内を流通する。
【0042】
すなわち、筒状ケーシング11と内側パイプ16,出口パイプ17及び中間パイプ19との接続部では、内側パイプ16内を流通する排気流(主流)から分流した、間隙18内を流通する排気流(補助流)が生成される。このとき、間隙18は、内側パイプ16の全周に略同一の大きさで形成されているため、補助流は均一な流れとなって間隙18内を流通する。
【0043】
したがって、本実施形態の排気浄化装置の接続部構造によれば、内側パイプ16に従来技術のような複数の孔を設けることなく、筒状ケーシング11の周壁と内側パイプ16の上流端16aとの間隔CLから排気を内側パイプ16内へ導入するため、簡素な構造ながら内側パイプ16内での気流のよどみの発生を防ぎ、流速を確保することができ、噴射された尿素水が堆積物となって内側パイプ16内に堆積することを防止することができる。
【0044】
また、出口パイプ17の内周面と内側パイプ16の外周面との間に設けられた間隙18には尿素水を含まない排気が流通するため、間隙18にも尿素水が堆積物となって堆積することはない。さらに、間隙18に流通する排気は均一な補助流となるため、内側パイプ16の下流端16bの下流側において、内側パイプ16内を流通した排気と間隙18を流通した排気とが混合され、中間パイプ19内での尿素の堆積も防止することができる。
【0045】
また、内側パイプ16の下流端16bが、出口パイプ17と中間パイプ19との接続部よりも排気下流側まで延設されているため、出口パイプ17と中間パイプ19の接続部にできる不連続な面での尿素の堆積も防止することができる。
以上より、排気の流動抵抗が増大することを防止でき、また、供給されるべき還元剤の量が不足することもないため、排気浄化効率の低下を防止することができる。
【0046】
[3.その他]
以上、一実施形態を説明したが、本構造は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上記実施形態では、出口パイプ17が筒状ケーシング11内に突出して設けられているが、出口パイプ17は筒状ケーシング11内に突出せずに設けられていてもよい。この場合であっても、間隙18内を排気が流通し、補助流を形成することができる。
【0047】
また、内側パイプ16と、出口パイプ17及び中間パイプ19との軸心は、完全に一致していなくてもよく、内側パイプ16の外周面と出口パイプ17の内周面との間に間隙18が形成されていればよい。
また、上記実施形態では、出口パイプ17が筒状ケーシング11へ水平方向よりもやや下方から斜め上向きに貫入しているが、出口パイプ17の筒状ケーシング11への貫入する方向は上記実施形態のものに限られず、周囲のフレームや装置等との配置関係により種々変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 排気浄化装置
10 DPF装置(上流側排気浄化装置)
11 筒状ケーシング
12 前段酸化触媒
13 DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)
14 排気流出空間
16 内側パイプ(第二パイプ)
16a 上流端(第二パイプの一端)
16b 下流端(第二パイプの他端)
17 出口パイプ(第一パイプ)
18 間隙
19 中間パイプ(第一パイプ)
20 SCR装置(下流側排気浄化装置)
22 SCR触媒(選択還元型触媒)
23 後段酸化触媒
30 コントローラ
31 尿素水添加ノズル(還元剤添加装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側排気浄化装置で処理された排気を第一パイプ内に流入させ流入した前記排気に還元剤を添加して下流側排気浄化装置に送給する排気浄化装置における、前記上流側排気浄化装置と前記第一パイプとの接続部構造であって、
前記上流側排気浄化装置の筒状ケーシング内の下流部に形成された排気流出空間と、
前記排気流出空間内に配設された第二パイプと、
前記筒状ケーシングの周壁に設けられ、前記排気流出空間内に噴射口を有し、前記第二パイプの内部に前記還元剤を添加する還元剤添加装置と、をそなえ、
前記第一パイプは、前記筒状ケーシングに固設された排気上流側の出口パイプと、前記出口パイプと前記下流側排気浄化装置とに接続された排気下流側の中間パイプとから構成され、前記出口パイプの排気上流側端部は、前記排気流出空間と連通するように接続され、
前記第二パイプの一端は、前記周壁から間隔をあけて配設され前記噴射口に向けて開口し、前記第二パイプの他端は、前記出口パイプの排気上流側の開口端から第一パイプ内に挿入されて、前記出口パイプと前記中間パイプとの接続部よりも排気下流側まで延設され、
前記第一パイプの内周面と前記第二パイプの外周面との間には、前記排気流出空間と前記第一パイプとを連通する間隙が形成される
ことを特徴とする、排気浄化装置の接続部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−92769(P2012−92769A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242043(P2010−242043)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】