説明

排気浄化装置

【課題】重量増やコスト増を抑制し、圧力損失及び排気温度の低下を抑制できるようにした、排気浄化装置を提供する。
【解決手段】筒状ケーシング21の軸方向に直列に配設された少なくとも2組の触媒22,22と、筒状ケーシング21内の一端に設けられ、排気入口26及び第一連通口31を有する第一入口空間23と、筒状ケーシング21内の他端に設けられ、第二連通口32を有する第二入口空間24と、筒状ケーシング21内の2組の触媒22,22の相互間に設けられ、排気出口27を有する出口空間25と、第一連通口31と第二連通口32とを接続する連通路30と、出口空間25内に設けられ、筒状ケーシング21内を前記軸方向に二分割する仕切板33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関し、特に排気中の窒素酸化物を除去する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(以下、エンジンともいう)、中でもディーゼルエンジンの排気中には、大気汚染物質である窒素酸化物(以下、NOxという)等が含まれている。そこで、エンジンの排気通路に、NOxを浄化するための選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCRと略称する)を設置し、還元剤としての尿素水をSCRに流入する排気中に添加することにより、SCRにおいて排気中のNOxを還元して排気を浄化するようにした技術が知られている。
【0003】
SCRは、例えば、軸方向に互いに平行な微小な穴が複数連通したハニカム構造の担体に、触媒が担持されて構成されている。このSCRを用いた排気浄化装置では、排気中に尿素水を添加する尿素水添加装置としてのノズルがSCRの上流側に設けられる。ノズルから添加される尿素水は、排気管内やSCR上で排気熱によってアンモニアに分解され、NOxの還元剤として働く。SCRの近傍のアンモニアは、一旦SCRに吸着し、このアンモニアと排気中のNOxとの間の脱硝反応がSCRによって促進されることによりNOxが窒素に還元される。
【0004】
ところで、量産性の観点から、SCRは規格化されており、この規格品のSCRでは、1つのSCRで還元されるNOxの量はある程度限られている。このため、大型トラック等の排気量の多いエンジン(通常はディーゼルエンジン)の場合には、複数のSCRを搭載して触媒容量を確保する場合がある。この場合、図3(a)に示すように、複数〔図3(a)では2つ〕のSCR62を1つのケーシング61内に直列に配設されたものがある(特許文献1の図2参照)。このとき、SCR62外周のケーシング61内周に対する寸法誤差を許容するために、SCR62の外周はマット材65で包囲されている。
【0005】
また、図3(b)に示すように、複数〔図3(b)では2つ〕のSCR72をそれぞれケーシング71内に収納し、その複数のケーシング71を並列に配設して、排気入口のパイプ73a,73aの上流端を入口パイプ73に接続し集合させると共に、各ケーシング71の排気出口のパイプ74a,74aの下流端を出口パイプ74に接続し集合させたものもある(特許文献1の図3参照)。
【0006】
また、並列配設にはこの他に、図3(c)に示すように、複数〔図3(c)では2つ〕のSCR82をそれぞれケーシング81内に収納し、その複数のケーシング81を密閉した筐体86内に並列に配設して、長方形で円形の穴88を設けた2つの支持板87,87により、ケーシング81内の上流部,下流部を区画形成すると共に、ケーシング81を保持するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平10−511038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図3(a)に示すように、複数のSCR62を直列に配設したもの(直列流路方式)では、SCR単体の場合に比べ、SCRの数に応じて圧力損失が増大するという課題がある。一方、図3(b)に示すように、複数のSCR72を並列に配設したもの(並列流路方式)では、SCR単体の場合に比べ、SCRの数に応じて圧力損失は減少するという利点はあるが、複数のSCR72をそれぞれケーシング71内に収納するため、装置が大型化して重量が増大し、これに伴ってコストも増大するという新たな課題が生じる。また、図3(c)に示すように筐体86内に複数のSCR82を並列に配設する場合は、支持板87を設ける必要があるため、やはり装置が大型化して重量が増大し、コストも増大する。
【0009】
また、SCRによりNOxを還元するためには排気温度を高温のまま保持する必要があるが、図3(b)のような並列流路方式の場合は、複数のSCR72がそれぞれケーシング71内に収納されているため、装置全体の表面積が増大し、図3(a)のような直列流路方式のものよりも断熱性が低下してしまうという課題がある。上記に加え、図3(b)に示すような並列流路方式の場合、排気が流入するパイプ73aが接続されるケーシング71の端板71aの数がSCR72の数に応じて増加する。そのため、図中に示すような並列流路方式の場合は、高温の排気がケーシング71内に流入してきても、外気と接する端板71aの数が多いため、触媒に流入する前に排気の温度が低下してしまい、一層放熱が促進されてしまうという課題がある。
【0010】
また、排気浄化装置を車両の床下等に配置する際の搭載性についても、より配置自由度が高く車載性の良いものが要求されている。
このような課題はSCRに限らず、種々の排気浄化触媒をケーシング内に装備する排気浄化装置において生じ得るものである。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、重量増やコスト増を抑制し、圧力損失及び排気温度の低下を抑制できるようにした、排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の排気浄化装置は、筒状ケーシングの軸方向に直列に配設された少なくとも2組の触媒と、前記筒状ケーシング内の一端に設けられ、排気入口及び第一連通口を有する第一入口空間と、前記筒状ケーシング内の他端に設けられ、第二連通口を有する第二入口空間と、前記筒状ケーシング内の前記2組の触媒の相互間に設けられ、排気出口を有する出口空間と、前記第一連通口と前記第二連通口とを接続し、前記第一入口空間と前記第二入口空間とを連通する連通路と、前記出口空間に設けられ、前記筒状ケーシングの前記軸方向を二分割する仕切板とを備えることを特徴としている。
【0012】
また、前記仕切板が、複数の貫通孔を有することが好ましい。
また、前記2組の触媒は、いずれも、排気上流側に設けられた選択還元型触媒と、排気下流側に設けられた酸化触媒とから構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の排気浄化装置によれば、第一入口空間の排気入口から流入した排気が、第一入口空間に隣接する触媒へ向かう排気と、第一連通口から連通路を通り第二入口空間に流れ込み第二入口空間に隣接する触媒へ向かう排気とに分かれ、それぞれ流通する。したがって、少なくとも2組の触媒を1つの筒状ケーシング内に直列に配設しながらも、並列流路方式とすることができるため、直列流路方式はもとより触媒単体のものと比べても圧力損失を抑制することができる。
【0014】
また、並列流路方式を採用しながらも、複数の触媒を1つの筒状ケーシング内に直列に配設するため、外気と接するケーシングの表面積が小さくなり、放熱を抑制することができる。さらに、1つの筒状ケーシング内に触媒を配設するため、装置全体をコンパクトにすることができ、重量増及びコスト増を抑制することができ、搭載性を確保することができる。
【0015】
以上により、エンジン性能向上,軽量化,コスト安及び排気中のNOxの浄化率向上をバランスよく両立することができる。
また、出口空間に設けられる仕切板によって少なくとも2組の触媒を通過する排気流量を調整することができる。このとき、仕切板に多数の貫通孔が形成されている場合、仕切板のオフセット量による流量調整が過敏にならない。すなわち、仕切板を高精度に配設する必要がないため、製作コストを抑制することができる。
【0016】
また、2組の触媒は、いずれも、排気上流側に設けられた選択還元型触媒と、排気下流側に設けられた酸化触媒が一体成型されている場合、構成をよりコンパクトにすることができ、搭載性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかる排気浄化装置の構成を示す模式的な軸方向断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる排気浄化装置を説明する全体構成図である。
【図3】従来の課題を説明するための模式的な断面図であり、図3(a)は直列配置、図3(b)は並列配置、図3(c)は複数の触媒をそれぞれケーシング内に収納してさらに筐体内に並列配置したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1.構成]
[1−1.全体構成]
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0019】
本実施形態にかかる排気浄化装置について、図1及び図2を用いて説明する。本排気浄化装置は、車両だけでなくエンジンを搭載した乗り物、例えば船舶等に適用することも可能であるが、ここでは、一般的な乗用車やトラック,バス等の車両に適用した例で説明する。
図2に示すように、エンジン40は、ここでは直列6気筒機関のディーゼルエンジンとして構成されている。エンジン40の各気筒には燃料噴射弁41が設けられ、各燃料噴射弁41はコモンレール42から加圧燃料を供給され、開弁に伴って対応する気筒の筒内に燃料を噴射する。なお、エンジン40はガソリンエンジンでもよく、気筒数はこれに限定されない。
【0020】
エンジン40の吸気側には吸気マニホールド43が装着され、吸気マニホールド43に接続された吸気通路44には、上流側よりエアクリーナ45,ターボチャージャ46のコンプレッサ46a及びインタークーラ47が設けられている。また、エンジン40の排気側には排気マニホールド48が装着され、排気マニホールド48には、コンプレッサ46aと同軸上に連結されたターボチャージャ46のタービン46bが接続されている。タービン46bには排気通路49が接続されている。この排気通路49の途中に、排気浄化装置1が設けられている。
【0021】
排気浄化装置1は、排気上流側に設けられた上流側排気浄化装置10と、上流側排気浄化装置10の排気下流側に設けられた下流側排気浄化装置20とから構成され、上流側排気浄化装置10と下流側排気浄化装置20とは、中間パイプ19により接続されている。
上流側排気浄化装置10は、筒状のケーシング11内に、上流側に配置される前段酸化触媒12と、下流側に配置されるパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFと略称する)13とが内蔵されて構成されている。なお、以下、上流側排気浄化装置10をDPF装置10という。
【0022】
下流側排気浄化装置20は、円筒状の筒状ケーシング21内に、筒状ケーシング21の軸方向に直列に2組の触媒22,22が配設されている。この触媒22は、1つの担体に異なる触媒物質が担持(コート)されたもの、いわゆるゾーンコート触媒であり、排気上流側は選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCRと略称する)22aとして、下流側は後段酸化触媒22bとして構成されている。なお、以下、下流側排気浄化装置20をSCR装置20という。
【0023】
また、DPF装置10の排気下流側であって、中間パイプ19の上流側には、尿素水添加ノズル15が設けられ、尿素水添加ノズル15は、図示しないタンクから圧送される還元剤としての尿素水をSCR装置20に向かう排気中に噴射し添加する。この尿素水の添加量や添加のタイミングは、コントローラ(ECU,Engine (electronic) Control Unit)50により制御される。
【0024】
コントローラ50は、エンジン制御や排気浄化制御等にかかる各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等を備えて構成されている。
【0025】
[1−2.DPF装置]
DPF装置10は、排気中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)を捕集する機能と、捕集したPMを連続的に酸化させて除去する機能とを併せ持つ。なお、PMとは、炭素からなる黒煙(すす)の周囲に燃え残った燃料や潤滑油の成分,硫黄化合物等が付着した粒子状の物質である。
【0026】
前段酸化触媒12は、排気中の成分に対する酸化性能を持った酸化触媒であり、金属,セラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持したものである。前段酸化触媒12によって酸化される排気中の成分には、NOや未燃燃料中の炭化水素等及び一酸化炭素が挙げられる。例えば、NOが前段酸化触媒12で酸化されるとNO2が生成される。
【0027】
DPF13は、PMを捕集する多孔質フィルタ(例えば、セラミックフィルタ)である。DPF13の内部は、多孔質の壁体によって排気の流通方向に沿って複数に分割されている。この壁体には、PMの微粒子に見合った大きさの多数の細孔が形成される。排気が壁体の近傍や内部を通過する際に壁体内,壁体表面にPMが捕集され、排気が濾過される。このようなDPF13の再生制御は、コントローラ50によって制御される。
【0028】
DPF13の下流側には混合室14と称される空間が形成されている。混合室14内には、ケーシング11の周壁を貫通するように中間パイプ19が配設されている。中間パイプ19は排気通路49の一部を構成するものであり、ここでは最も一般的な円筒状パイプである。本実施形態にかかる排気浄化装置1では、中間パイプ19の上流側19aがケーシング11の周壁を貫通し、ケーシング11の周壁に片持ち支持されるように配設されており、尿素水添加ノズル15側を開放端にして混合室14と中間パイプ19とが連通されている。
【0029】
なお、中間パイプ19は一般的な円筒状パイプに限られず、その他の筒状のパイプであってもよい。また、混合室14と中間パイプ19との連通構造はこれに限られず、例えば、中間パイプ19の混合室14内への露出部分(挿入部分)に、中間パイプ19の内外を連通させる孔(図示略)が複数貫設され、これらの孔を介して混合室14内と中間パイプ19内とを相互に連通するようにしてもよい。
【0030】
[1−3.SCR装置]
SCR22aは、尿素添加型の窒素酸化物選択還元型触媒であり、上流側から添加される尿素水をアンモニアに加水分解するとともにアンモニアを吸着する機能を持ち、さらに吸着したアンモニアによる還元作用を用いて排気中のNOxをN2へと還元するものである。なお、SCR22aに担持される触媒の種類は任意であり、例えばゼオライト系,バナジウム系等を用いることが考えられる。また、還元剤として尿素水以外を用いるものでもよい。
【0031】
後段酸化触媒22bは、SCR22aでの還元反応における余剰分のアンモニアを除去するための酸化触媒である。
図1に示すように、SCR装置20の筒状ケーシング21内には、SCR22a及び後段酸化触媒22bをセットにした触媒22が、筒状ケーシング21の軸方向に間隔をあけて直列に2組配設されており、これら2組の触媒22,22の相互間の空間には排気出口27が設けられている。以下、この相互間の空間を出口空間25という。2組の触媒22,22は、排気出口27を挟んで向かい合わせになるように配設されている。排気出口27には、排気パイプ29が接続される。この排気パイプ29は排気通路49の一部を構成するものであり、ここでは最も一般的な円筒状パイプであるが、これに限られず、その他の筒状のパイプであってもよい。
【0032】
触媒22は、筒状ケーシング21の軸方向端部内面からそれぞれ離隔して配設することにより、筒状ケーシング21の両端にそれぞれ空間が設けられている。このうち、筒状ケーシング21の一端に設けられた一方の空間には、筒状ケーシング21の周壁に排気入口26が設けられている。排気入口26には、DPF装置10と連通する中間パイプ19が接続される。以下、排気入口26が設けられたこの空間を第一入口空間23という。
【0033】
2組の触媒22,22のうち第一入口空間23側の触媒22は、第一入口空間23と隣接する側にSCR22aが設けられ、出口空間25と隣接する側に後段酸化触媒22bが設けられて構成されている。
第一入口空間23には、さらに筒状ケーシング21の周壁に第一連通口31が設けられている。本実施形態では、図1に示すように、第一連通口31は排気入口26と略対向する位置に設けられている。このように第一連通口31を設けることにより、流路抵抗を抑制することができ、排気入口26から筒状ケーシング21内に流入した排気がSCR22aと第一連通口31と向けて円滑に流れることができる。
【0034】
なお、車両等への搭載性や周囲の装置との配置関係等も考慮する場合は、例えば、排気入口26を筒状ケーシング21の端壁に設け、第一連通口31を周壁に設ける構成も可能である。また、逆に排気入口26を筒状ケーシング21の周壁に設け、第一連通口31を端壁に設ける構成でも可能である。
筒状ケーシング21の他端に設けられた他方の空間には、筒状ケーシング21の周壁に第二連通口32が設けられている。以下、この空間を第二入口空間24という。2組の触媒22,22のうち第二入口空間24側の触媒22は、第二入口空間24と隣接する側にSCR22aが設けられ、出口空間25と隣接する側に後段酸化触媒22bが設けられて構成されている。
【0035】
第一入口空間23に設けられた第一連通口31と第二入口空間24に設けられた第二連通口32には、連通パイプ(連通路)30の両端がそれぞれ接続され、第一入口空間23と第二入口空間24とが、第一連通口31及び第二連通口32を介して連通パイプ30により連通されている。連通パイプ30は、ここでは最も一般的な円筒状のパイプであり、筒状ケーシング21の軸方向に延在している。なお、連通パイプ30は一般的な円筒状パイプに限られず、その他の筒状のパイプであってもよい。
【0036】
出口空間25には、筒状ケーシング21の内部をその軸方向に二分割する仕切板33が配設されている。仕切板33は、出口空間25に設けられた排気出口27を二分割する位置に設けられ、筒状ケーシング21の内部を、排気出口27を挟んで2つの空間に仕切る板である。つまり、仕切板33により、筒状ケーシング21の内部が、第一入口空間23に隣接して配設された触媒22の空間と、第二入口空間24に隣接して配設された触媒22の空間とに分割される。
【0037】
仕切板33は、筒状ケーシング21の軸方向と直交する断面と略同一の形状で形成され、筒状ケーシング21の内周壁に固定される。本実施形態では、仕切板33は、筒状ケーシング21の軸方向中心に設けられている。また、この仕切板33には、小さな貫通孔33hが複数貫設されている。この複数の貫通孔33hは、例えば、略均一に分散されて設けられていてもよいし、特定の部分に密に設けられていてもよく、その配置や数については限定されない。
【0038】
また、2組の触媒22,22は、その外周をそれぞれマット材28,28で包囲されており、触媒22の外周の筒状ケーシング21の内周に対する寸法誤差が許容されている。なお、本実施形態では、2組の触媒22,22は断面円形に形成されているが、触媒の形状はこれに限られない。
なお、本実施形態にかかるSCR装置20は、排気入口26を除いて出口空間25を中心に面対称に形成されている。つまり、円筒状の出口空間25の軸方向の中心部において、その軸方向と直交する面を中心として面対称に形成されている。
【0039】
[2.作用]
本実施形態にかかる排気浄化装置1は、上述のように構成されているので、以下のようにして排気は浄化される。
エンジン40の運転中において、エンジン40から排出された排気は、排気通路49の上流部を経てDPF装置10内に導入され、前段酸化触媒12及びDPF13を通過した後に混合室14内に移送され、中間パイプ19内に導入される。そして、中間パイプ19の内部を流通して排気入口26からSCR装置20内に導入され、SCR22a及び後段酸化触媒22bを通過した後に排気出口27から排気パイプ29を通過し大気中に排出される。このとき、DPF13では排気中のPMが捕集され、SCR22aでは排気中のNOxが還元され、これらの作用により大気中への有害成分の排出が防止される。
【0040】
以下、詳しく説明すると、DPF13で排気中のPMが捕集された後、中間パイプ19の上流側に設けられた尿素水添加ノズル15から、還元剤としての尿素水がSCR装置20に向かう排気中に添加される。添加された尿素水は、中間パイプ19内で排気と混合されながら、排気熱により加水分解されてアンモニアを生じ、排気入口26からSCR装置20内へ導入される。
【0041】
排気入口26から導入されたアンモニアを含んだ排気は、まず第一入口空間23へ流入し、第一入口空間23に隣接するSCR22aへ向かう排気と、第一連通口31から連通パイプ30を通り第二入口空間24へ向かう排気とに分かれる。第一入口空間23から直接SCR22aに流入した排気は、SCR22a及び後段酸化触媒22bを流通し、出口空間25へ抜けた後、排気出口27から排気パイプ29を通り大気中へ排出される。
【0042】
一方、第一入口空間23から連通パイプ30を通り第二入口空間24へ流入した排気は、第二入口空間24に隣接するSCR22aに流入し、SCR22a及び後段酸化触媒22bを流通して出口空間25へ抜けた後、排気出口27から排気パイプ29を通り大気中へ排出される。
このとき、排気中に含まれるアンモニアが2組のSCR22a,22aに吸着し、排気中のNOxを還元し排気を浄化する。また、SCR22a,22aで吸着されなかった余剰アンモニアは、2組の後段酸化触媒22b,22bによって除去され、大気中にアンモニアが排出されることを防ぐ。
【0043】
[3.効果]
したがって、本実施形態にかかる排気浄化装置によれば、2組の触媒22,22を1つの筒状ケーシング21内に直列に配設しながらも、並列流路方式とすることができるため、直列流路方式はもとより触媒単体のものと比べても圧力損失を抑制することができる。また、並列流路方式を採用しながらも、2組の触媒22,22を筒状ケーシング21内に直列に配設するため、外気と接する筒状ケーシング21の表面積が小さくなり、放熱を抑制することができる。さらに、SCR装置20全体をコンパクトにすることができ、重量増及びコスト増を抑制することができ、搭載性を確保することができる。
【0044】
また、2組の触媒22,22がそれぞれ、排気上流側にSCR22a、排気下流側に後段酸化触媒22bとなるように、1つの担体に異なる触媒物質を担持(コート)したゾーンコート触媒として構成されているため、排気浄化装置1全体の構成をよりコンパクトにすることができ、さらに搭載性が向上する。
また、出口空間25に設けられた仕切板33により、排気が抜ける空間である出口空間25の広さと、排気出口27の面積を規定することができるため、第一入口空間23に隣接する触媒22へ向かう排気と、第一連通口31から連通パイプ30を通って第二入口空間24へ向かう排気との流量を調整することできる。なお、本実施形態では、図1に示すように筒状ケーシング21の軸方向中心に仕切板33を設置しているが、2組の触媒22,22を通過する際の流路抵抗が大きい方の触媒の出口空間25を広くするように、筒状ケーシング21の軸方向中心から偏倚させて、両触媒に均等に排気が流通するようにしてもよい。
【0045】
出口空間25の広さ及び排気出口27に直行する通路面積を大きくすれば排気は流通しやすくなるため、排気流量を増加させることができ、逆にこれらを小さくすれば排気が流通しにくくなるため、排気流量を減少させることができる。さらに、この仕切板33には、小さな貫通孔33hが複数貫設されているため、排気は、複数の貫通孔33hを通って出口空間25内をわずかに流通することができるようになっている。そのため、仕切板33の偏倚量、すなわち仕切板33の設置位置による排気流量の調整が過敏にならず、仕切板33を筒状ケーシング21内に高精度に設置する必要がなく、製作コストを抑制することができる。
以上により、エンジン性能向上,軽量化,コスト安及び排気中のNOxの浄化率向上をバランスよく両立することができる。
【0046】
[4.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0047】
上記実施形態では、DPF装置10とSCR装置20が、それぞれのケーシングの軸方向を揃えて隣り合って配置されているが、DPF装置10とSCR装置20の配置はこれに限られず、例えば、DPF装置10とSCR装置20をそれぞれの軸方向が交差するように配置し、湾曲した中間パイプにより接続するようにしてもよい。
また、上記実施形態にかかるSCR装置20は、排気入口26を除いて、円筒状の出口空間25の軸方向の中心部において、その軸方向と直交する面を中心として面対称に形成されているが、2組の触媒22,22の配置や、第一連通口31及び第二連通口32の位置は必ずしも面対称に形成されていなくてもよい。
【0048】
また、触媒の数は2組に限られず、筒状ケーシング21内に2組以上の触媒が配設されていてもよい。また、触媒はゾーンコート触媒に限られず、後段酸化触媒を筒状ケーシング21内ではなくSCR装置20の下流側に別体として設けてもよい。
また、2組の触媒に流れる排気の経路が不均等なため、仕切板33の設置位置が、筒状ケーシング21の軸方向中心であったり排気出口27の面積を等分する位置であったりすると、2組の触媒に等分の排気を流すことはできない。したがって、2組の触媒に等分の排気を流すには、あえて仕切板33の設置位置を筒状ケーシング21の軸方向中心や排気出口27の面積を等分する位置からずらすことが必要になる。
【0049】
また、仕切板の貫通孔は必須のものではなく、貫通孔が形成されていないものでもよい。また、触媒はSCRや後段酸化触媒に限られず、種々の排気浄化触媒を少なくとも2組ケーシング内に装備するものであれば、ケーシングの軸方向に直列に配置しながら並列流路方式を構成することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 排気浄化装置
10 DPF装置(上流側排気浄化装置)
12 前段酸化触媒
13 DPF(パティキュレートフィルタ)
15 尿素水添加ノズル
19 中間パイプ
20 SCR装置(下流側排気浄化装置)
21 筒状ケーシング
22 触媒
22a SCR(選択還元型触媒)
22b 後段酸化触媒
23 第一入口空間
24 第二入口空間
25 出口空間
26 排気入口
27 排気出口
29 排気パイプ
30 連通パイプ(連通路)
31 第一連通口
32 第二連通口
33 仕切板
33h 貫通孔
40 エンジン
49 排気通路
50 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ケーシングの軸方向に直列に配設された少なくとも2組の触媒と、
前記筒状ケーシング内の一端に設けられ、排気入口及び第一連通口を有する第一入口空間と、
前記筒状ケーシング内の他端に設けられ、第二連通口を有する第二入口空間と、
前記筒状ケーシング内の前記2組の触媒の相互間に設けられ、排気出口を有する出口空間と、
前記第一連通口と前記第二連通口とを接続し、前記第一入口空間と前記第二入口空間とを連通する連通路と、
前記出口空間に設けられ、前記筒状ケーシング内を前記軸方向に二分割する仕切板とを備える
ことを特徴とする、排気浄化装置。
【請求項2】
前記仕切板が、複数の貫通孔を有する
ことを特徴とする、請求項1記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記2組の触媒が、いずれも、排気上流側に設けられた選択還元型触媒と、排気下流側に設けられた酸化触媒とから構成されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−67697(P2012−67697A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213987(P2010−213987)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】