説明

排気系用開閉バルブ

【課題】ばねの劣化を招くことなく開閉できる排気系用開閉バルブを得る。
【解決手段】内燃機関からの排気が通る流路管1の排気出口側の開口端1aに、揺動により開閉可能な弁体20を設けた。弁体20が流路管1からの排気による圧力を開弁方向に受けると共に、弁体20の重量が閉弁方向に作用し、閉弁時の弁体20は、鉛直方向に対して傾斜している。また、弁体20を支点軸18の廻りに揺動可能に支持すると共に、流路管1の開口端1aを鉛直方向に対して傾斜かつ上方に開口して設け、また、支点軸18を流路管1の開口端1aの上側に鉛直方向に直交して配置した。閉弁時の弁体20は、鉛直方向に対する傾斜角度が、10度を超え45度より小さい。更に、弁体20に重り32を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気系に設けられ、排気流路の切換等に用いられる排気系用開閉バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1にあるように、マフラ本体内を複数の部屋に仕切る隔壁を備え、隔壁に開口を形成すると共に、支点軸廻りに揺動可能に支持された弁体をばねにより開口を閉塞する方向に付勢した開閉バルブを備えたものが知られている。この開閉バルブは、内燃機関の回転数が低いときには閉弁して、排気騒音の低減を重視した排気流路となるように構成されている。内燃機関の回転数が増加して、排出される排気ガスの圧力が増加したときには、弁体がこの圧力の作用を受けて開弁し、背圧の上昇を防止して、内燃機関の出力が向上する排気流路となるように構成されている。
【0003】
また、特許文献2にあるように、排気流路に介装され、内燃機関からの排気と内燃機関の冷却水等の熱交換媒体との間で熱交換を行う排気熱回収装置が知られている。この排気熱回収装置は、排気と熱交換媒体との間で熱交換を行う排気熱回収部を備えると共に、排気を下流の排気流路に導く高流量流路と、高流量流路から上流側で分岐され排気を排気熱回収部を介して下流の排気流路に導く低流量流路と、下流側で高流量流路を弁体により遮断して、低流量流路を通る流れに切り換える開閉バルブとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−3820号公報
【特許文献2】特開2007−315370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうした従来のものでは、開閉バルブの弁体がばねにより流路を遮断する閉弁方向に付勢されており、排気圧力によりばね付勢力に抗して弁体を揺動させて流路を排気が通るようにしていた。このため、ばねが高温の排気に晒され、高温による劣化によりばね付勢力が減少してしまうおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、ばねの劣化を招くことなく開閉できる排気系用開閉バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
内燃機関からの排気が通る流路管の排気出口側の開口端に、揺動により開閉可能な弁体を設けた排気系用開閉バルブにおいて、
前記弁体が前記流路管からの前記排気による圧力を開弁方向に受けると共に、前記弁体の重量が閉弁方向に作用し、閉弁時の前記弁体は、鉛直方向に対して傾斜していることを特徴とする排気系用開閉バルブがそれである。
【0008】
また、前記弁体を支点軸の廻りに揺動可能に支持すると共に、前記流路管の開口端を鉛直方向に対して傾斜かつ上方に開口して設け、また、前記支点軸を前記流路管の開口端の上側に鉛直方向に直交して配置した構成としてもよい。更に、閉弁時の前記弁体は、鉛直方向に対する傾斜角度が、10度を超え45度より小さい構成としてもよい。
【0009】
前記流路管の排気出口側の開口端を傾斜して形成すると共に、前記開口端に支持部材を取り付け、前記支持部材に前記支点軸を配置すると共に、前記支持部材に前記弁体と対向する弁座部を形成した構成としてもよい。その際、前記支持部材は、前記流路管の開口端に装着される円筒部と、平坦な弁座部とを有し、前記弁座部に緩衝材を取り付けると共に、前記弁体は前記弁座部に対向した平坦部を有する構成としてもよい。また、前記弁体に重りを取り付けた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の排気系用開閉バルブは、弁体が排気に晒されて高温になっても、弁体の重量に変化はなく、重量による閉弁方向作用力の経時的変化がなく、一定の作用力で開閉できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態としての排気系用開閉バルブの正面図である。
【図2】本発明の一実施形態としての排気系用開閉バルブの側面図である。
【図3】図1のAA断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3に示すように、1は流路管で、車両の排気系に取り付けた際に、流路管1の長手方向が車両の鉛直方向(=重力方向)とほぼ直交するように配置されている。流路管1には、図3に示すように、一方から排気が流入し、排気出口側の開口端1aに、排気系用開閉バルブ2が取り付けられている。
【0013】
流路管1は、例えば、内燃機関用マフラの一つの拡張室内に開口端1aを開口させて設けられており、あるいは、複数の拡張室を連通するように、隔壁を貫通して一方の拡張室内に開口端1aを開口させて設けられており、排気系用開閉バルブ2の開閉により、排気流路を閉塞、あるいは、排気流路が切り換えられるように配置されている。また、流路管1は、例えば、排気熱回収装置の排気を下流の排気流路に導く高流量流路に設けられ、排気系用開閉バルブ2の開閉により、排気を排気熱回収部を介して下流の排気流路に導く低流量流路と、高流量流路とに切り換えられるように配置されている。
【0014】
流路管1は、排気出口側の開口端1aが、鉛直方向に対して傾斜して形成されており、本実施形態では、図3に示すように、流路管1の鉛直方向Vに対して10度から45度の傾斜角度(本実施形態では45度)で、しかも、斜め上方に開口して形成されている。
【0015】
流路管1の開口端1aには、排気系用開閉バルブ2の支持部材4の円筒部6が装着されている。円筒部6は、流路管1の外周に装着され、円筒部6は平坦な弁座部8に形成された開口10に連通して形成されている。弁座部8には、開口10の周囲にリング状のワイヤメッシュを用いた緩衝材12が取り付けられている。平坦な弁座部8は、開口端1aと同様に、流路管1の長手方向に直交して鉛直方向Vに10度から45度の傾斜角度(本実施形態では45度)で、しかも、斜め上方を向いて形成されている。尚、弁座部8等は流路管1を径方向に拡げて一体的に成形してもよい。
【0016】
弁座部8からは、一対の支持板部14,16が所定の間隔を空けて立設されており、一対の支持板部14,16は、流路管1よりも重力方向の上側に形成されている。一対の支持板部14,16には支点軸18が支持されており、支点軸18は弁座部8に平行で、また、流路管1の鉛直方向Vに直交して配置されている。
【0017】
支点軸18の廻りに、弁体20が揺動可能に支持されており、弁体20には所定間隔を空けて一対の縦板部22,24が設けられ、支点軸18が一対の縦板部22,24を貫通し、弁体20が支点軸18の廻りに揺動可能に設けられている。一対の支持板部14,16と一対の縦板部22,24との間には、ワイヤメッシュを用いた緩衝材26,28が介装されている。尚、支点軸18を用いる場合に限らず、弁体20の揺動により開口端1aを開閉できればよく、例えば、弁体20を板ばねにより揺動可能に支持した構成でもよい。
【0018】
弁体20は弁座部8に対向して平坦に形成されており、弁体20が支点軸18の廻りに弁座部8側に揺動した際には、弁体20が開口10の周囲で全周にわった緩衝材12に接触し、開口10を閉塞するように形成されている。
【0019】
また、弁体20が緩衝材12に接触して開口10を閉塞した状態のときに、弁体20が鉛直方向Vとなす傾斜角度θが10度を超え45度より小さくなるように構成されている。弁体20の傾斜角度θが10度未満では、後述する弁体20の重量により閉弁する際に、支点軸18廻りのモーメントが小さくなり、弁体20と緩衝材12との接触による良好な閉弁が達成できない場合がある。一方、弁体20の傾斜角度θが45を超えると、弁体20が緩衝材12から離間して開弁する際の排気圧力が高い。即ち、弁体20が水平に近い程、閉弁方向の作用力が大きく、開弁時の圧力が高くなりすぎ、開弁すると排気圧力が急激に低下して弁体20が閉弁方向に揺動して閉弁してしまうということを繰り返しやすくなる。
【0020】
弁体20には、弁体20の支点軸18廻りの揺動角度を規制するストッパ部30が形成されており、図3に示すように、弁体20が、閉弁状態から所定の角度、例えば、約15〜45度揺動した全開状態のときに、ストッパ部30が弁座部8に接触して、弁体20の揺動を規制するように構成されている。尚、ストッパ部30は必要に応じて設ければよく、弁体20が揺動した際に、他の部材と干渉する場合や、弁体20の揺動角度が大きくなりターンオーバーするような場合に、ストッパ部材30を設ければよい。
【0021】
弁体20には、重り32が固定されており、弁体20と重り32との重量が閉弁方向に作用するように、重り32は開口10と反対側の弁体20の背面に取り付けられている。弁体20は流路管1に流入した排気の圧力を開弁方向に受けるが、この排気圧力が所定の圧力となったときに、弁体20が開弁するように、弁体20と重り32との重量が決定されている。尚、重り32を用いることなく、弁体20の重量のみにより、排気圧力が所定の圧力となったときに開弁するようにしてもよい。
【0022】
次に、前述した本実施形態の排気系用開閉バルブ2の作動について説明する。
流路管1に上流側から排気が流入すると、弁体20に排気圧力が開弁方向に作用する。弁体20には、弁体20と重り32との重量が閉弁方向に作用し、重量による閉弁方向の作用力が排気圧力による開弁方向の作用力を上回るときには、弁体20は緩衝材12に接触した閉弁状態を維持する。これにより、流路管1の排気の流れが遮断され、例えば、別の排気流路を排気が流れる。
【0023】
一方、排気圧力による開弁方向の作用力が重量による閉弁方向の作用力を上回るときには、弁体20は排気圧力を受けて、緩衝材12から離間するように、支点軸18の廻りに揺動して、図3に二点鎖線で示すように、開弁する。
【0024】
開弁により、排気は流路管1を流れて、開口10を通り、下流側の排気流路に流出する。弁体20はストッパ部30が弁座部8に突き当たると、揺動が規制される。弁体20や重り32が排気に晒されて高温になっても、弁体20と重り32との重量に変化はなく、重量による閉弁方向の作用力が、経時的に変化しない。
【0025】
また、弁体20と重り32との重量により閉弁方向の作用力を生じさせるので、簡単な構造で、流路管1を開閉できる。更に、弁体20と重り32との重量による閉弁方向の作用力は、ばね等の付勢部材の場合と異なり、非線形開度・荷重特性を得ることができる。例えば、ばね等の付勢力により弁体を揺動させるバルブと比較した場合、開弁初期のばね付勢力と重量による作用力とが同じであると、最大開弁時の重量による閉弁方向の作用力を小さくでき、これにより、最大開弁時の背圧を小さくできる。
【0026】
更に、内燃機関用マフラをバイパスする他の排気流路を設けずに、前述した排気系用開閉バルブ2を内燃機関用マフラのインレットパイプの開口端に取り付ける。これにより、減速時の原音を完全遮断することで気柱共鳴を効率よく低減することが可能となる。従来のバルブでも同様の効果が得られるが、前述した排気系用開閉バルブ2によると、減速時に完全に閉まるだけの付勢力であれば加速時のバルブによる背圧上昇はほとんどなく、減速だけに効果を発揮する。また、排気系用開閉バルブ2は構造が簡単であるので安価であり、排気系用開閉バルブ2の追加によるコストアップを抑えることができる。
【0027】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0028】
1…流路管 1a…開口端
2…排気系用開閉バルブ 4…支持部材
6…円筒部 8…弁座部
10…開口 12…緩衝材
14,16…支持板部 18…支点軸
20…弁体 22,24…縦板部
30…ストッパ部 32…重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気が通る流路管の排気出口側の開口端に、揺動により開閉可能な弁体を設けた排気系用開閉バルブにおいて、
前記弁体が前記流路管からの前記排気による圧力を開弁方向に受けると共に、前記弁体の重量が閉弁方向に作用し、閉弁時の前記弁体は、鉛直方向に対して傾斜していることを特徴とする排気系用開閉バルブ。
【請求項2】
前記弁体を支点軸の廻りに揺動可能に支持すると共に、前記流路管の開口端を鉛直方向に対して傾斜かつ上方に開口して設け、また、前記支点軸を前記流路管の開口端の上側に鉛直方向に直交して配置したことを特徴とする請求項1に記載の排気系用開閉バルブ。
【請求項3】
閉弁時の前記弁体は、鉛直方向に対する傾斜角度が、10度を超え45度より小さいことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の排気系用開閉バルブ。
【請求項4】
前記流路管の排気出口側の開口端を傾斜して形成すると共に、前記開口端に支持部材を取り付け、前記支持部材に前記支点軸を配置すると共に、前記支持部材に前記弁体と対向する弁座部を形成したことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の排気系用開閉バルブ。
【請求項5】
前記支持部材は、前記流路管の開口端に装着される円筒部と、平坦な弁座部とを有し、前記弁座部に緩衝材を取り付けると共に、前記弁体は前記弁座部に対向した平坦部を有することを特徴とする請求項4に記載の排気系用開閉バルブ。
【請求項6】
前記弁体に重りを取り付けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の排気系用開閉バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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