説明

排水処理方法およびその設備並びに排水処理装置

【課題】本発明は、低濃度の被処理排水および高濃度の被処理排水のそれぞれの排水性状に応じた処理方法が選択できることを課題とする。
【解決手段】低濃度の被処理排水から浮遊する汚濁物質等の被除去物質を除去するドラムフィルター7と、前記ドラムフィルターで除去された被除去物質が貯留される調整槽15と、前記調整槽に高濃度の浮遊汚濁物質を含む被処理排水が流入する配管31と、前記調整槽内の被除去物質を分離する電解式浮上分離装21とを備え、前記低濃度排水用ろ過手段により処理された処理済排水が放流されるともに、前記分離装置で処理された処理済排水が放流される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、栽培漁業センター等から排出される排水の排水排水処理方法およびその設備並びに排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
栽培漁業センター等から排出される排水は、特に処理されることなく近隣の海洋へ放流されているのが現状である。栽培漁業センター等から排出される排水は、BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)や汚濁物質等の濃度が低く、略無色の低濃度排水と、BODや汚濁物質等の濃度が高く、着色された高濃度排水とがある。そして、高濃度排水は、低濃度排水と混合希釈され海洋に放流している。
【0003】
具体的には、海産魚の種苗生産に欠かせない仔魚の餌料となるワムシは、前記センターで培養されている。このワムシの培養水が、高濃度排水として低濃度排水と混合希釈された後に放流されている。また、前記センターでは、ワムシの培養以外に、各種海産魚が水槽で種苗生産されており、水槽に大量の海水が供給されるとともに、低濃度の一般排水として放流されている。この一般排水は、ワムシ排水に比し、BOD、CODや汚濁物質等の濃度が低い。
【0004】
また、一般的に、汚濁物質の除去装置として、凝集沈殿および浮上分離方法を採用したものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−177681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記栽培漁業センターでは、低濃度排水と高濃度排水との処理が必要となり、高濃度排水に比し低濃度排水は大量に排出されるため、両方の排水処理を同一の設備で処理すると、設備が大規模化する問題がある。
【0006】
また、高濃度排水(ワムシ排水等)の場合は、低濃度排水と混合希釈され海洋に放流しているため、その割合が高い場合には、海洋に着色排水が流れてしまうおそれがあり、排水の環境負荷が高くなるとともに、環境保護の観点からも、栽培漁業センターでの排水処理は重要な問題である。
【0007】
本発明は、低濃度の被処理排水および高濃度の被処理排水のそれぞれの排水性状に応じた処理方法が選択できることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、排水処理方法およびその設備並びに排水処理装置としてなされたもので、本発明の排水処理方法は、低濃度の被処理排水に浮遊する汚濁物質等の被除去物質を、低濃度排水用ろ過手段で除去し、被除去物質を除去した処理済排水を放流するとももに、前記被除去物質を調整槽に貯留し、高濃度の浮遊汚濁物質を含む被処理排水を前記調整槽に貯留し、前記調整槽内の被除去物質を分離装置で分離し、被除去物質が除去された処理済排水を放流することにある。
【0009】
前記低濃度の被処理排水は、被除去物質を低濃度排水用ろ過手段で除去した後に放流する。この低濃度排水用ろ過手段に残存する被除去物質は、高濃度の被処理排水の被除去物質とともに分離装置で分離される。また、高濃度の被処理排水は、被除去物質が除去された処理済排水として放流される。従って、低濃度の被処理排水および高濃度の被処理排水のそれぞれの排水性状に応じた処理方法が選択できる。
【0010】
本発明の排水処理設備は、低濃度の被処理排水から浮遊する汚濁物質等の被除去物質を除去する低濃度排水用ろ過手段と、前記低濃度排水用ろ過手段で除去された被除去物質が貯留される調整槽と、前記調整槽に高濃度の被処理排水が流入する配管と、前記調整槽内の被除去物質を分離する分離装置とを備え、前記低濃度排水用ろ過手段により処理された処理済排水が放流されるともに、前記分離装置で処理された処理済排水が放流される構成である。本発明の排水処理設備は、前記排水処理方法の実施を容易に行なえる。
【0011】
本発明の排水処理設備は、前記被処理排水が海水からなり、海水が貯留される水槽を備え、前記水槽から低濃度の被処理排水が、低濃度排水用ろ過手段に供給され、前記低濃度排水用ろ過手段でろ過された被除去物質を前記調整槽に移行させるように、ろ過海水もしくは上水を低濃度排水用ろ過手段に供給する逆洗ポンプが設けられるのが好ましい。
【0012】
本発明の排水処理設備は、前記被処理排水が海水からなり、海水が流入するろ過装置を備え、前記ろ過装置でろ過された海水中の被除去物質を前記調整槽に移行させるように、逆洗水貯留槽に貯留されたろ過海水もしくは上水を低濃度排水用ろ過手段に供給する逆洗ポンプが設けられるのが好ましい。
【0013】
本発明の排水処理設備は、前記分離装置は、電解式浮上分離装置からなり、前記調整槽には、前記調整槽内の被除去物質の濃度を検出するための濃度センサが設けられ、前記濃度センサの情報に基づいて電解式浮上分離装置への電流供給量を制御する制御装置が設けられている。かかる場合には、調整槽内の被除去物質の量に応じた電流を電解式浮上分離装置に供給でき、効率の良い運転が可能である。
【0014】
本発明の排水処理設備は、前記電解式浮上分離装置で分離された被除去物質をかきとる除去装置と、前記除去装置から供給された被除去物質を処理する汚泥処理装置が設けられ、前記汚泥処理装置は、被除去物質が貯留される汚泥貯留槽と、前記汚泥貯留槽の汚泥が汚泥ポンプを介して供給される脱水手段と、前記脱水手段で汚泥を分離した際に発生する水分を前記調整槽に戻すための配管とを備えていることにある。
【0015】
かかる場合には、処理された汚泥物の回収を確実に行なえるとともに、汚泥処理装置から出た排水を再処理できる。
【0016】
本発明の排水処理設備の前記高濃度の被処理排水が、ワムシ培養槽から排出されるワムシ排水であるのが好ましい。
【0017】
本発明の排水処理設備の前記分離装置から排出される処理済排水は、前記低濃度排水用ろ過手段から排出される処理済排水と混合して放流されるのが好ましい。かかる場合には、仮に高濃度排水中の溶存性成分濃度が高く、分離装置での浮遊汚濁物質除去のみでは、放流水質が満足できない場合でも、低濃度排水用ろ過手段から排出される処理済排水に希釈されるため、水質を放流基準内におさえることができる。
【0018】
本発明の排水処理装置は、被処理海水が貯留される調整槽と、前記調整槽から供給された被処理海水に凝集剤を混入して攪拌する槽と、前記槽から供給された被処理海水内の被除去物質を浮上させて分離する電解式浮上分離装置とを備え、前記調整槽には、前記調整槽内の被除去物質の濃度を検出するための濃度センサが設けられ、前記濃度センサの情報に基づいて電解式浮上分離装置への電流供給量を制御する制御装置が設けられていることにある。
【0019】
かかる本発明の排水処理装置は、電解対象液体が海水であるため、電気分解により発生する次亜塩素酸ナトリウムにより、放流される海水の殺菌効果も期待できる。また、海水は、淡水に比し、ミネラル、イオン分、不純物が多く、電気伝導率が高く電気が流れやすいため、電解式浮上分離装置を少ない電力で運転することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、低濃度の被処理排水および高濃度の被処理排水のそれぞれの排水性状に応じた処理方法が選択できる。従って、例えば海水を大量に使用して放流する栽培漁業センター等の設備に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態では、例えば栽培漁業センターにおいて、ワムシ培養等により発生する高濃度の被処理排水と、各種海産魚の種苗生産等により発生する低濃度の被処理排水とを処理する排水処理設備を例示する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る排水処理設備の概略示す図である。同図に示すように、排水処理設備1は、低濃度排水処理設備2と、高濃度排水処理設備3とから主構成されている。
【0023】
低濃度排水処理設備2は、ろ過装置5と、水槽6a、6bと、低濃度排水用ろ過手段としてのドラムフィルター7とを備えている。ろ過装置5は、流入される海水を砂でろ過し、ろ過された海水を水槽6a、6bに供給するものである。水槽6a、6bは、例えば、各種海産魚を種苗生産するもので、複数個配置されている場合を例示する。なお、水槽は単体であってもよい。
【0024】
各水槽6a、6bとドラムフィルター7とは、配管9a、9bを介して接続されており、各水槽6a、6bから出る低濃度の被処理排水(被処理海水)としての一般排水は、各ドラムフィルター7に供給されるようになっている。なお、一般排水は、CODが略10mg/リットルで、海産魚の糞、餌、ごみ等の汚濁物質(被除去物質)が浮遊物(SS)として混在している。
【0025】
ドラムフィルター7は、各水槽6a、6b毎に一対(2基)設置されており、一方を択一的に使用できる。ドラムフィルター7は、一般排水からSSを除去するフィルター(図示省略)を備えており、このフィルターでSSが除去された低濃度の一般排水は、放流管10、11を介して海洋に放流される。SSが除去された一般排水は、CODおよびBOD等が低濃度であり、ほとんど無色の状態である。
【0026】
前記ろ過装置5には、逆洗水貯留槽12が設けられ、海水をろ過した砂に付着しているSSは、ポンプ13により、既設ろ過槽12a内の海水とともに逆洗水貯留槽12に貯留される。逆洗水貯留槽12に設けられた逆洗ポンプ14aと前記配管9aとは、分岐配管14で接続されており、逆洗水貯留槽12の貯留水は、分岐配管14および配管9aを流れてドラムフィルター7に流入するようになっている。
【0027】
高濃度排水処理設備3は、調整槽15と、反応槽16と、凝集槽17と、pH調整剤槽18、第1凝集剤槽19と、第2凝集剤槽(高分子凝集剤槽)20と、分離装置としての電解式浮上分離装置21と、SS除去装置22と、汚泥処理装置23とを備えている。
【0028】
調整槽15は、配管25a、25bを介してドラムフィルター7と接続されている。具体的には、水槽6a側のドラムフィルター7は、配管25aと接続され、水槽6b側のドラムフィルター7は、配管25bと接続されている。
【0029】
ドラムフィルター7は、ろ過海水もしくは上水等のろ過水が貯留された貯留槽27と、逆洗ポンプ29が介在された配管28を介して接続されている。この逆洗ポンプ29により、貯留槽27内のろ過海水は、ドラムフィルター7に適宜供給される。ろ過海水は、ドラムフィルター7のフィルターろ過時とは反対方向に流れることにより、フィルターに付着しているSSを除去し、このSSは配管25a、25bを介して調整槽15に流入し貯留されるようになっている。
【0030】
ワムシを培養するワムシ培養槽30から排出される高濃度の浮遊汚濁物質を含む被処理排水(ワムシ培養排水)は、配管31を流れて調整槽15に貯留される。ワムシ培養排水は、前記一般排水に比し、COD、汚濁物質等の濃度が高く、着色状態でワムシ培養槽30から排出される。調整槽15には、排水移送ポンプ32が設置されており、この排水移送ポンプ32は、調整槽15内の高濃度の被処理排水を、配管33を介して反応槽16に供給する。
【0031】
反応槽16内には、モータにより回転するプロペラ35が設けられている。また、反応槽16には、第1凝集剤槽19から例えばポリ塩化アルミニウム(PAC)が注入されるとともに、pH調整剤槽18から水酸化ナトリウム等のpH調整剤が注入される。プロペラ35で攪拌される被処理排水は中性となり、微細なSSは核となる大きさまで凝集される。
【0032】
凝集槽17に、反応槽16で凝集されたSSが混在する被処理排水が移行される。この凝集槽17に、第2凝集剤槽20から高分子凝集剤が注入されるようになっている。凝集槽17内の被処理排水は、モータにより回転するプロペラ36により、攪拌される。なお、凝集槽17のプロペラ36の回転速度は、反応槽16のプロペラ35の回転速度よりも遅く設定されている。このように、反応槽16のプロペラ35の回転速度を速く設定することにより、凝集剤およびpH調整剤の攪拌を迅速に行い、凝集槽17のプロペラ36の回転速度を遅く設定することにより、SSを所定の大きさまで成長させることができる。
【0033】
電解式浮上分離装置21は、上方に向けて拡径する電解浮上槽40と、この電解浮上槽40の下部に設けられた電極41とから主構成されている。電解浮上槽40の下部に、凝集槽17内の被処理排水が、配管43を介して供給されるようになっている。電極41は、被処理排水を電気分解して酸素ガスおよび水素ガスの気泡からなる微細な気体を発生させるものである。
【0034】
電極41への電流の供給量は、制御装置44により制御されている。すなわち、調整槽15には、槽内の被処理排水に含まれるSS濃度を検出する濃度計等の濃度センサ37が設けられている。制御装置44は、濃度センサ37からの情報に基づいて電極41への電流の供給量を制御するようになっている。気体の発生量は、電極41に供給される電流密度に比例するため、例えば、調整槽15のSS濃度が高い場合、制御装置44は、電極41への電流供給量を増加させ、反対にSS濃度が低い場合、電極41への電流供給量を減少させる。
【0035】
SS除去装置22は、電解浮上槽40上部に配置され、微細な気体とともに浮上してきたフロック(気体に付着したSS)を自動回収し、SSを除去するもので、例えば、フロックをかきとるように回転する無端体を有する装置である。SSが除去された処理済排水は、水位調整管45を通過し、放流管46を介して放流される。なお、この放流管46は、前記低濃度排水処理設備2の放流管10に接続されており、放流管46を流れる処理済排水は、放流管10を流れる大量の処理済排水と混合して放流されるようになっている。
【0036】
汚泥処理装置23は、SS除去装置22で分離回収されたSSを汚泥処理するもので、SS除去装置22から排出された汚泥を貯留する汚泥貯留槽47と、遠心分離機50とを備えている。汚泥貯留槽47は、汚泥ポンプ49が介在された配管48により脱水手段としての遠心分離機50と接続されている。遠心分離機50は、汚泥貯留槽47に貯留された汚泥を脱水し、汚泥の水分を除去する。容積が小さくされた汚泥は産業廃棄物として処理される。
【0037】
遠心分離機50には、汚泥貯留槽47に水分を戻す戻し配管51が接続されている。汚泥ポンプ49には、汚泥貯留槽47内の貯留液を調整槽15に戻す戻し配管52が接続されている。なお、55、56は切換弁である。汚泥の脱水は、遠心分離以外にも通常の脱水機等も使用することができ、特に限定されるものではない。
【0038】
次に、以上の構成からなる排水処理設備における排水処理方法について、図1を参照しながら説明する。
【0039】
先ず、低濃度排水処理方法について説明する。大量の海水は、ろ過装置5に流入し、このろ過装置5でろ過された後に、各水槽6a、6bに供給される。各水槽6a、6bから出る低濃度の一般排水は、配管9a、9bを介してドラムフィルター7に供給される。一般排水がドラムフィルター7を通過する際に、一般排水内のSSがフィルターに付着しSSが除去される。ドラムフィルター7を通過した一般排水は、ほとんど無色の処理済排水として、放流管10、11を介して海洋に放流される。
【0040】
各水槽6a、6bには、一対のドラムフィルター7が設けられているため、一方のドラムフィルター7を使用していても、使用していない他方のドラムフィルター7を洗浄することができる。また、一方のドラムフィルター7が故障しても他方のドラムフィルター7で排水処理を続けることができる。すなわち、貯留槽27内のろ過海水が、この他方のドラムフィルター7に供給され、フィルターに付着したSSを除去する。そして、ろ過海水もしくは上水は、除去されたSSとともに配管25a、25bを流れ、調整槽15に貯留される。
【0041】
また、ろ過装置5に流入する海水を、ポンプ13で逆洗水貯留槽12に流すことにより、ろ過装置5に付着した汚濁物質等も除去できる。逆洗水貯留槽12に貯留された海水は、逆洗ポンプ14aにより、分岐配管14および配管9aを流れ、ドラムフィルター7でろ過された後に放流される。なお、このドラムフィルター7に付着した汚濁物質等が、調整槽15に供給されるのは、前記一般排水の場合と同様である。
【0042】
次に、高濃度排水処理方法について説明する。ワムシ培養槽30から排出されるワムシ培養排水は、配管31を流れて調整槽15に貯留される。排水移送ポンプ32は、調整槽15内の高濃度の被処理排水である被処理海水を、配管33を介して反応槽16に供給する。反応槽16および凝集槽17において、被処理排水のSSは凝集され、配管43を流れて電解浮上槽40の下部に供給される。電極41への電流の供給量は、制御装置44により制御されており、被処理排水を電気分解して酸素ガスおよび水素ガスの気泡からなる微細な気体を発生させる。SSはフロックになって気泡とともに浮上する。
【0043】
そして、浮上してきたSSを、SS除去装置22により回収し除去する。SSが除去された処理済排水は、水位調整管45を通過し、放流管46を介して放流される。かかる処理済排水は、ほとんど無色な低濃度排水となっているが、仮に夏期のように被処理排水の水温が高かったり、電解浮上槽40内にSSが長期間放置されたりした場合、凝集されたSSからBOD成分やCOD成分が分解して被処理排水に溶け出すおそれがある。かかる場合には、処理済排水の濃度が高くなるが、放流管46を流れる処理済排水は、放流管10を流れる低濃度で大量の処理済排水に混合、希釈されて放流される。
【0044】
SS除去装置22で回収したSSは、汚泥処理装置23に移送する。SSを汚泥貯留槽47に汚泥として貯留し、汚泥貯留槽47内の汚泥を、遠心分離機50で脱水する。脱水された汚泥は、産業廃棄物として廃棄する。一方、遠心分離機50から出た水分は、汚泥貯留槽47に戻される。汚泥貯留槽47内の貯留排出液は、汚泥ポンプ49により、戻し配管52を介して調整槽15に流入する。
【0045】
以上のように本実施の形態の排水処理設備は、低濃度排水処理設備2および高濃度排水処理設備3において、被処理排水の量に応じてそれぞれSS分を除去することができる。この結果、大量の一般排水は、ドラムフィルター7を通過させて大量に処理するとともに、ワムシ培養排水は、一般排水から除去されたSSとともに電解式浮上分離装置21等で処理するため、低濃度排水処理方法と高濃度排水処理方法とで、それぞれの排水を同時に処理でき、SSに起因していたBOD、COD、窒素、リン等を除去でき、放流水の環境負荷を低減することができる。
【0046】
高濃度排水処理に適した電解式浮上分離装での電解浮上方式は、電解対象液体が海水であるため、電気分解により発生する次亜塩素酸ナトリウムにより、放流される海水の殺菌効果も期待できる。また、海水は、淡水に比し、ミネラル、イオン分、不純物が多く、電気伝導率が高く電気が流れやすいため、電解式浮上分離装置を少ない電力で運転することができる。なお、低濃度排水処理設備2の放流管10、11を流れる処理済排水を殺菌装置で殺菌することも可能である。
【0047】
分離装置は、電解式浮上方式のものに限定されないが、浮上方式は、凝集方式に比し、設備の設置面積が小さく、なおかつユニット化が可能であるため、土木工事を最小限に抑えることができる。特に、栽培漁業センターは、海に近いため、土木工事が少ないことはメリットを有する。また、放流管46を流れる処理済排水は、放流管10を流れる低濃度で大量の処理済排水に混合、希釈されて放流されるため、放流近辺の海水が汚れるのを防止でき、きれいな放流近辺の海水を使用することができる利点もある。
【0048】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、図1に仮想線で示すように、第2凝集剤槽20と電解浮上槽40とを、配管53で接続し、第2凝集剤槽20内の凝集剤を電解浮上槽40に直接供給するようにしてもよい。かかる場合には、高濃度の被処理海水を電気分解により発生する気泡により、凝集剤を攪拌する効果があり、前記凝集槽17が不要となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る一実施の形態を示す排水処理設備の概略図である。
【符号の説明】
【0050】
1 排水処理設備
2 低濃度排水処理設備
3 高濃度排水処理設備
5 ろ過装置
6a、6b 水槽
7 ドラムフィルター(低濃度排水用ろ過手段)
9 配管
10 放流管
11 放流管
12 逆洗水貯留槽
14a 逆洗ポンプ
15 調整槽
16 反応槽(槽)
17 凝集槽
21 電解式浮上分離装置(分離装置)
22 SS除去装置(除去装置)
23 汚泥処理装置
29 逆洗ポンプ
30 ワムシ培養槽
31 配管
37 濃度センサ
44 制御装置
46 放流管
47 汚泥貯留槽
49 汚泥ポンプ
50 脱水手段(遠心分離機)
52 戻し配管(配管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低濃度の被処理排水に浮遊する汚濁物質等の被除去物質を、低濃度排水用ろ過手段で除去し、被除去物質を除去した処理済排水を放流するとももに、前記被除去物質を調整槽に貯留し、高濃度の浮遊汚濁物質を含む被処理排水を前記調整槽に貯留し、前記調整槽内の被除去物質を分離装置で分離し、被除去物質が除去された処理済排水を放流することを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
低濃度の被処理排水から浮遊する汚濁物質等の被除去物質を除去する低濃度排水用ろ過手段と、前記低濃度排水用ろ過手段で除去された被除去物質が貯留される調整槽と、前記調整槽に高濃度の被処理排水が流入する配管と、前記調整槽内の被除去物質を分離する分離装置とを備え、前記低濃度排水用ろ過手段により処理された処理済排水が放流されるともに、前記分離装置で処理された処理済排水が放流される構成であることを特徴とする排水処理設備。
【請求項3】
前記被処理排水が海水からなり、海水が貯留される水槽を備え、前記水槽から低濃度の被処理排水が、低濃度排水用ろ過手段に供給され、前記低濃度排水用ろ過手段でろ過された被除去物質を前記調整槽に移行させるように、ろ過海水もしくは上水を低濃度排水用ろ過手段に供給する逆洗ポンプが設けられた請求項2に記載の排水処理設備。
【請求項4】
前記被処理排水が海水からなり、海水が流入するろ過装置を備え、前記ろ過装置でろ過された海水中の被除去物質を前記調整槽に移行させるように、逆洗水貯留槽に貯留されたろ過海水もしくは上水を低濃度排水用ろ過手段に供給する逆洗ポンプが設けられた請求項2または3に記載の排水処理設備。
【請求項5】
前記分離装置は、電解式浮上分離装置からなり、前記調整槽には、前記調整槽内の被除去物質の濃度を検出するための濃度センサが設けられ、前記濃度センサの情報に基づいて電解式浮上分離装置への電流供給量を制御する制御装置が設けられている請求項2〜4の何れかに記載の排水処理設備。
【請求項6】
前記電解式浮上分離装置で分離された被除去物質をかきとる除去装置と、前記除去装置から供給された被除去物質を処理する汚泥処理装置が設けられ、前記汚泥処理装置は、被除去物質が貯留される汚泥貯留槽と、前記汚泥貯留槽の汚泥が汚泥ポンプを介して供給される脱水手段と、前記脱水手段で汚泥を分離した際に発生する水分を前記調整槽に戻すための配管とを備えている請求項5に記載の排水処理設備。
【請求項7】
前記高濃度の被処理排水は、ワムシ培養槽から排出されるワムシ排水である請求項3〜6の何れかに記載の排水処理設備。
【請求項8】
前記分離装置から排出される処理済排水は、前記低濃度排水用ろ過手段から排出される処理済排水と混合して放流される請求項2〜7の何れかに記載の排水処理設備。
【請求項9】
被処理海水が貯留される調整槽と、前記調整槽から供給された被処理海水に凝集剤を混入して攪拌する槽と、前記槽から供給された被処理海水内の被除去物質を浮上させて分離する電解式浮上分離装置とを備え、前記調整槽には、前記調整槽内の被除去物質の濃度を検出するための濃度センサが設けられ、前記濃度センサの情報に基づいて電解式浮上分離装置への電流供給量を制御する制御装置が設けられていることを特徴とする排水処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−319817(P2007−319817A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154689(P2006−154689)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】