説明

排水処理装置

【課題】十分な可溶化効率を得ることができると共に、可溶化槽に設けられた計器類が所望に動作する排水処理装置を提供する。
【解決手段】排水に含有される固形物を固液分離手段2において分離し、この固液分離された汚泥を減容すべく可溶化槽5において当該汚泥を可溶化し、この可溶化液を可溶化液返送ラインL3を介して固液分離手段2又は固液分離手段2より前段へ返送する一方で、可溶化槽5の底部における汚泥の堆積を、汚泥堆積防止手段25によって防止するようにし、可溶化槽5底部にデッドスペースを生じることなく可溶化槽5の有効容量を確保し、十分な可溶化効率を得ると共に、レベル計や温度計等の計器類のセンサー部が汚泥に覆われることなく計器類が所望に動作するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場から排出される排水や、下水あるいはし尿等の有機性排水の処理法として、省エネルギー型処理法である嫌気性処理法が普及している。特に、有機物の濃度が高い排水には、嫌気性微生物を自己造粒させたグラニュールを利用するUASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket:上向流式嫌気性汚泥床)法や、これを改良したEGSB(Expanded Glanular Sludge Bed:膨張粒状汚泥床)法が適用されている。
【0003】
ここで、食品工場の中でも、ビール製造工場から排出される排水は、高濃度の有機性固形物を含有している。このような排水を、UASB法等のグラニュールを利用する嫌気性処理法によって処理するためには、予め何らかの手段を用いて有機性固形物の濃度を低減させる必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1に開示された廃水処理装置では、有機性廃水に無機凝集剤を添加して凝集沈殿槽で凝集沈殿処理を行い、沈殿分離された沈殿汚泥を可溶化槽にて可溶化すると共に、可溶化液を凝集沈殿槽へ返送し、このように可溶化槽での可溶化により有機性固形物濃度を低減し、後段の嫌気性処理を良好に行うようにしている。
【特許文献1】特開2005−125202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された廃水処理装置では、可溶化槽で十分な可溶化効率が得られない場合があった。また、可溶化槽に設けられた計器類が所望に動作しないという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、十分な可溶化効率を得ることができると共に、可溶化槽に設けられた計器類が所望に動作する排水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、可溶化効率の低下及び計器類の動作不良の原因は、可溶化槽の底部における汚泥の堆積であることを見出した。すなわち、可溶化槽の底部に汚泥が堆積すると、可溶化槽底部にデッドスペースが生じ、可溶化槽の有効容量が減少するため、十分な可溶化効率が得られなくなり、また、レベル計や温度計等の計器類のセンサー部が堆積した汚泥に覆われて、当該計器類が所望に動作しなくなることを見出した。
【0008】
そこで、本発明の排水処理装置は、排水を導入して排水中の固形分を分離する固液分離手段と、固液分離手段で固液分離された汚泥を導入して可溶化する可溶化槽と、可溶化槽で可溶化された可溶化液を固液分離手段又は固液分離手段より前段へ返送するための可溶化液返送ラインと、可溶化槽の底部に汚泥が堆積することを防止する汚泥堆積防止手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような排水処理装置においては、排水に含有される固形物が固液分離手段において分離され、この固液分離された汚泥を減容すべく可溶化槽において当該汚泥が可溶化され、この可溶化液が可溶化液返送ラインを介して固液分離手段又は固液分離手段より前段へ返送される一方で、可溶化槽の底部における汚泥の堆積は、汚泥堆積防止手段によって防止される。このため、可溶化槽底部にデッドスペースが生じず、可溶化槽の有効容量が確保され、十分な可溶化効率が得られると共に、レベル計や温度計等の計器類のセンサー部が汚泥に覆われず、計器類が所望に動作する。
【0010】
また、本発明の排水処理装置は、排水を導入して排水中の固形分を分離する第1固液分離手段と、第1固液分離手段で固液分離された分離液を導入して生物処理する生物処理槽と、生物処理槽で生物処理された処理水を導入して処理水中の固形分を分離する第2固液分離手段と、第2固液分離手段で固液分離された汚泥を導入して可溶化する可溶化槽と、可溶化槽で可溶化された可溶化液を第1固液分離手段又は第1固液分離手段より前段へ返送するための可溶化液返送ラインと、可溶化槽の底部に汚泥が堆積することを防止する汚泥堆積防止手段とを備えるものであってもよい。
【0011】
このような排水処理装置においては、排水に含有される固形物が第1固液分離手段において分離され、固液分離後の分離液が生物処理され、生物処理水中の固形分が第2固液分離手段において分離され、第2固液分離手段で固液分離された汚泥を減容すべく可溶化槽において当該汚泥が可溶化され、この可溶化液が可溶化液返送ラインを介して第1固液分離手段又は第1固液分離手段より前段へ返送される一方で、可溶化槽の底部における汚泥の堆積は、汚泥堆積防止手段によって防止される。このため、生物処理した汚泥を可溶化する場合であっても可溶化槽底部にデッドスペースが生じず、可溶化槽の有効容量が確保され、十分な可溶化効率が得られると共に、レベル計や温度計等の計器類のセンサー部が汚泥に覆われず、計器類が所望に動作する。
【0012】
ここで、汚泥堆積防止手段は、可溶化液の一部を可溶化槽の底部に向けて供給する構成とすれば、可溶化液を利用し低コスト化を図りつつ、可溶化槽底部において汚泥が十分に撹拌され汚泥の堆積が十分に防止される。
【0013】
また、汚泥堆積防止手段は、可溶化槽の外部に設置され、可溶化液返送ラインを流れる可溶化液の一部を吸引するポンプと、ポンプからの可溶化液を可溶化槽の底部に向けて供給する可溶化液供給手段とを備えるのが好ましい。これによれば、ポンプを用いるという簡易な構成で低コスト化を図りつつ、ポンプを槽外に設置することで腐食の防止が図られる。
【0014】
また、上記作用を効果的に奏する構成としては、可溶化液供給手段は、上下方向に複数設けられる構成も挙げられる。
【0015】
更にまた、可溶化液供給手段のうちの上側の可溶化液供給手段は、ポンプからの可溶化液を可溶化槽の液面に向けて供給する構成とすると、上下方向の旋回循環流が形成され、撹拌効果が一層高められ汚泥の堆積が一層防止されると共に、スカムの除去効果が得られる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、十分な可溶化効率を得ることができると共に、可溶化槽に設けられた計器類が所望に動作する排水処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明による排水処理装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
(一実施形態)
図1は本発明の一実施形態に係る排水処理装置を示すブロック図、図2は図1中の可溶化槽の周辺を具体的に示す概略構成図であり、本実施形態の排水処理装置1は、ビール製造工場から排出される排水等、有機性固形物を高濃度に含有する有機性排水を処理するものである。なお、以下の説明における「排水」は「有機性排水」を意味するものとする。
【0019】
図1に示すように、排水処理装置1は、ラインL1を通して流入する排水中の固形物を沈殿分離により固液分離する最初沈殿池(固液分離手段)2、沈殿分離された分離液を酸発酵する酸生成槽3、酸発酵された有機酸をメタン発酵する上向流式嫌気性処理槽4をこの順に備えると共に、最初沈殿池2で沈殿分離された沈殿汚泥をラインL2を介して導入し可溶化する可溶化槽5を備え、更に、可溶化槽5で可溶化された可溶化液を最初沈殿池2に返送するための可溶化液返送ラインL3を備えている。
【0020】
図2に示すように、最初沈殿池2は、導入した排水中の固形分を重力沈降させて沈殿汚泥と上澄みの分離液とに分離するものであり、当該沈殿汚泥を汚泥掻寄機11により池中央底部に集泥し排出する。なお、最初沈殿池2の前段に排水の流入量を調整するための調整槽を設け、この調整槽で排水を一旦貯留するのが好ましい。
【0021】
図1に戻り、酸生成槽3は、酸発酵反応を行う微生物を槽内に浮遊状態で収容し当該微生物により酸発酵を行うものであり、最初沈殿池2で沈殿分離された分離液を酸発酵し有機酸等に分解する。
【0022】
上向流式嫌気性処理槽4は、嫌気性微生物であるメタン生成菌を自己造粒させた所謂グラニュールメタン菌によりメタン発酵を行うものであり、当該グラニュールメタン菌を槽の下部に層状に収容すると共に、酸生成槽3から排出された有機酸等を含む排水をグラニュール層の下部に導入し、上向させながらグラニュールメタン菌に接触させ、排水中の有機性成分をメタン発酵する。
【0023】
最初沈殿池2と可溶化槽5とを接続するラインL2は、図2に示すように、汚泥引抜ポンプ12を有している。この汚泥引抜ポンプ12は、最初沈殿池2で沈殿分離された沈殿汚泥をラインL2を介して吸引し、可溶化槽5へ供給するものである。なお、ラインL2には、図1に示すように、沈殿汚泥を排水処理装置1の外部へ適宜排出できるように別のラインが接続されている。
【0024】
可溶化槽5は、最初沈殿池2で沈殿分離された沈殿汚泥を所定の温度及びpH条件下で可溶化するものであり、図2に示すように、円筒型を成し、臭気の発散を防ぐべく上部蓋5aを有している。この可溶化槽5の上部蓋5aには、沈殿汚泥を供給するためのラインL2と共に、槽内の被処理液を加温するための蒸気供給ラインL6が貫通するようにして接続され、可溶化槽5の内部に進入配置されている。なお、上部蓋5aには、可溶化槽5で発生した臭気ガスを後段の脱臭装置へ排出すべく、排気ラインが貫通するように接続されている。
【0025】
また、可溶化槽5内には、所定の条件下で可溶化を行うための計器類が設けられている。可溶化槽5内の下部には、可溶化槽5内の液温を計測して蒸気の供給量を制御するための温度計18が設けられている。また、同じく可溶化槽5内の下部には、可溶化槽5内の液位を計測して汚泥引抜ポンプ12を制御し、最初沈殿池2からの沈殿汚泥の供給量を制御するための差圧式のレベル計19が設けられている。
【0026】
可溶化槽5とラインL1とを接続する可溶化液返送ラインL3は、可溶化槽5の底部に接続され、可溶化液返送ポンプ13を有している。この可溶化液返送ポンプ13は、可溶化槽5で可溶化された可溶化液を可溶化液返送ラインL3を介して吸引し、ラインL1を介して最初沈殿池2へ返送するものである。そして、この可溶化液返送ラインL3には、最初沈殿池2への返送流量を計測し可溶化液返送ポンプ13を制御して可溶化液の返送流量を制御するための流量計14が設けられている。なお、前述したように、最初沈殿池2の前段に調整槽が設けられる場合には、この調整槽又はラインL1の調整槽より上流側へ可溶化液を返送するのが好ましい。
【0027】
ここで、本実施形態にあっては、可溶化槽5に対して汚泥堆積防止装置(汚泥堆積防止手段)25が付設されている。この汚泥堆積防止装置25は、可溶化液返送ラインL3と可溶化槽5内とを循環すべく可溶化液返送ラインL3と可溶化槽5内とを接続する循環ラインL4と、循環ラインL4に設けられた可溶化槽撹拌ポンプ(ポンプ)15と、循環ラインL4の先端を構成する噴射ノズル(可溶化液供給手段)17と、循環ラインL4で可溶化槽撹拌ポンプ15と噴射ノズル17との間に設けられた自動弁16とを備える構成とされている。
【0028】
可溶化槽撹拌ポンプ15は、可溶化液返送ラインL3を流れる可溶化液の一部を吸引するためのものであり、可溶化槽5の外部に設置されている。なお、可溶化槽撹拌ポンプ15は、可溶化液中に含まれる固形物を破砕すべく破砕機能を有するポンプとすると、汚泥が細かく破砕されるため好ましい。
【0029】
循環ラインL4は、途中で4経路に分岐し、その内の2経路が可溶化槽5の片側(図示右側)の側面に上下方向に並んで接続されて内部に進入し、更に他の2経路が可溶化槽5の反対側(図示左側)の側面に上下方向に並んで接続されて内部に進入する構成とされている。
【0030】
噴射ノズル17は、可溶化槽5内に配置され、可溶化槽撹拌ポンプ15からの可溶化液を可溶化槽5の底部に向けて噴射口より噴射(供給)するものである。特に本実施形態では、図2に示すように、噴射ノズル17を構成する各経路の噴射ノズル17a,17b,17c,17dは、噴射口が鉛直下方45°程度に傾けて設置され、また、図3に示すように、可溶化槽5上部から見て可溶化槽5の周壁に沿うように時計周り方向に45°程度傾けて設置されている。
【0031】
自動弁16は、汚泥堆積防止装置25による汚泥堆積防止効果をより良好に発揮すべく、可溶化液を噴射する前述した経路(ライン)を適宜切り替えるためのものであり、図2に示すように、循環ラインL4を構成する4経路に各々設けられている。
【0032】
このような汚泥堆積防止装置25が付設された可溶化槽5には、可溶化槽5内を所定のpH条件に調整するためのアルカリ添加装置が付設されている。このアルカリ添加装置は、NaOH貯槽20とNaOHポンプ21とpH計22とを有する。NaOHポンプ21は、NaOH貯槽20からNaOHを循環ラインL4に導入して可溶化槽5内の被処理液のpHを所定の値に調整するためのものであり、pH計22は、可溶化液返送ラインL3と循環ラインL4とを接続するラインに設けられて可溶化液のpHを計測し、その計測値に基づいて上記NaOHポンプ21を制御しNaOHの添加量を制御する。
【0033】
次に、排水処理装置1による排水の処理について説明する。
【0034】
図1に示すように、有機性固形物を高濃度に含有する排水は、ラインL1を通して最初沈殿池2に供給され、この最初沈殿池2で有機性固形物が沈殿分離され、上澄水である分離液は、酸生成槽3で酸発酵処理されて分離液中の有機性成分が有機酸等に分解され、この処理水は、上向流式嫌気性処理槽4でメタン発酵処理され、排水中の有機性成分は水、二酸化炭素及びメタンガス等に分解され、所定の水質を満たした処理水が後段に排出され、一方、メタンガスは、脱硫処理等を経て回収されてエネルギー利用等される。
【0035】
最初沈殿池2で沈殿分離された沈殿汚泥は、レベル計19の計測値に基づき、汚泥引抜ポンプ12によってラインL2を通して可溶化槽5に供給される。この可溶化槽5では、温度計18及びpH計22の計測結果に基づいて蒸気供給量及びNaOH添加量が決定され、決定された供給量及び添加量に基づいて蒸気及びNaOHが供給、添加されて所定の温度条件及びpH条件にて可溶化が行われ、沈殿汚泥中のSS濃度が低減される。
【0036】
可溶化槽5の可溶化液は、可溶化液返送ポンプ13によってラインL1を介して最初沈殿池2に返送され、同様の処理が繰り返される。
【0037】
一方、汚泥堆積防止装置25では、図3に示すように、可溶化槽撹拌ポンプ15によって吸引された可溶化液の一部が噴射ノズル17(17a〜17d)から噴射されて、可溶化槽5内に撹拌流Xが形成される。これにより、可溶化槽5底部の汚泥の堆積が防止される。
【0038】
ここで、本実施形態では、噴射ノズル17が、可溶化槽5の底部に向けて鉛直下方且つ可溶化槽5の周壁に沿うように傾けて設置されているため、撹拌流Xは、可溶化槽5の底部に向けて旋回状に形成され、可溶化槽5底部の汚泥の堆積が一層防止される。
【0039】
このように、本実施形態に係る排水処理装置1では、汚泥堆積防止装置25によって可溶化槽5の底部における汚泥の堆積が防止されるため、可溶化槽5底部にデッドスペースが生じず、可溶化槽5の有効容量が確保され、十分な可溶化効率が得られると共に、レベル計19や温度計18等の計器類のセンサー部が汚泥に覆われず、計器類が所望に動作する。
【0040】
また、汚泥堆積防止装置25によって可溶化液の一部を可溶化槽5の底部に向けて噴射するため、可溶化液を利用し低コスト化を図りつつ、可溶化槽5底部において汚泥が十分に撹拌され汚泥の堆積が十分に防止される。
【0041】
また、可溶化槽撹拌ポンプ15が可溶化槽5の外部に設置され、可溶化液返送ラインL3を流れる可溶化液の一部を吸引し、噴射ノズル17が可溶化槽撹拌ポンプ15からの可溶化液を可溶化槽5の底部に向けて噴射するため、ポンプを用いるという簡易な構成で低コスト化を図りつつ、ポンプを槽外に設置することで腐食の防止が図られる。
【0042】
また、噴射ノズル17が上下方向に複数設けられているため、可溶化槽5底部における汚泥の撹拌効果がより一層高められる。
【0043】
また、可溶化槽5底部における汚泥の堆積が防止されて差圧式のレベル計19が所望に動作するため、汚泥引抜ポンプ12のインバータ制御によって可溶化槽5への沈殿汚泥供給流量を適切に制御することができる。
【0044】
図4は、汚泥堆積防止装置の他の例を示す概略構成図である。図4に示す汚泥堆積防止装置30が汚泥堆積防止装置25と違う点は、上側の噴射ノズル27c及び27dの噴射口を、可溶化槽5の液面に向けて設置した点である。
【0045】
このような構成とすれば、下側の噴射ノズル17(17a,17b)及び上側の噴射ノズル27(27c,27d)によって上下方向の旋回循環流が形成され、撹拌効果が一層高められる。また、これにより、可溶化槽5内の液面付近にスカムが生じた場合でも、当該スカムを流動させ、図示しないスカム除去装置によって当該スカムを除去できる等の効果が得られる。
【0046】
また、図4に示す構成の場合、自動弁16をタイマー制御によって開閉し、可溶化液を噴射ノズル17,27から千鳥状に交互に噴射させてもよい。すなわち、噴射ノズル17a及び27dからの噴射と、噴射ノズル17b及び27cからの噴射とを交互に繰り返すことにより、上下撹拌流がより効率的に形成され、汚泥の堆積防止及びスカムの除去をより一層効果的に行うことができる。
【0047】
(他の実施形態)
図5は、本発明の他の実施形態に係る排水処理装置を示すブロック図である。
【0048】
図5に示す本実施形態の排水処理装置10が、図1に示した排水処理装置1と違う点は、上向流式嫌気性処理槽4の後段に、活性汚泥による好気性処理を行う好気性処理槽6と、好気性処理された処理水中の固形分を沈殿分離により固液分離する最終沈殿池(第2固液分離手段)7とを備え、更に最終沈殿池7で沈殿分離された沈殿汚泥を可溶化槽5へ導入するためのラインL5を備えた点である。ここでは、酸生成槽3と上向流式嫌気性処理槽4と好気性処理槽6とが生物処理槽に相当する。
【0049】
好気性処理槽6は、曝気により好気性処理を行うものであり、最終沈殿池7は、好気性処理槽6から排出された処理水中の固形分を重力沈降させて余剰汚泥と上澄みの浄化水とに分離するためのものである。なお、ラインL5には、余剰汚泥を外部へ適宜排出するためのラインが接続されている。
【0050】
このような構成を有する排水処理装置10によれば、上向流式嫌気性処理槽4において嫌気性処理された排水が、更に好気性処理槽6において活性汚泥によって好気性処理され、排水中の有機性成分の濃度がより一層低減され、最終沈殿池7において活性汚泥処理水中の固形分が沈殿分離され、より清澄な処理水が上澄水として後段へ排出される。一方、最終沈殿池7で固液分離された余剰汚泥は、最初沈殿池2で固液分離された初沈汚泥と混合して可溶化槽5にて可溶化されるため、より一層汚泥の減容化が図られる。また、汚泥堆積防止装置25が、先の実施形態と同様な作用効果を奏することは言うまでもない。
【0051】
なお、本実施形態では、最初沈殿池(第1固液分離手段)2の初沈汚泥と最終沈殿池7の余剰汚泥とを可溶化槽5へ導入するためのラインL2,L5を設けるようにしているが、ラインL5のみを設けて最終沈殿池7の沈殿汚泥のみを可溶化する構成としてもよい。
【0052】
以上、本発明による排水処理装置の好適な実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では可溶化槽撹拌ポンプ15及び噴射ノズル17等から構成される汚泥堆積防止装置25を備えることとしたが、汚泥堆積防止手段として可溶化槽5内に機械式の撹拌機を設置してもよく、また、汚泥堆積防止装置25と機械式撹拌機とを併用してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では可溶化液供給手段として噴射ノズル17,27を備えることとしたが、可溶化液を供給できるものであれば噴射ノズルに限定されるものではない。また、上記実施形態では可溶化槽5における可溶化条件として、蒸気及びアルカリによる温度及びpH調整を行うこととしたが、蒸気及びアルカリのいずれか一方を供給又は添加して、温度及びpHのいずれか一方を調整してもよい。
【0054】
また、上記実施形態ではpH計22による計測値に基づいてアルカリ添加量を制御することとしたが、流量計14によって計測される可溶化槽5からの可溶化液返送流量(又は可溶化槽5への沈殿汚泥の流入量)と、pH測定値との2値に基づく制御を行ってもよい。このようにすれば、可溶化槽5内の被処理液の粘度が高い場合でも、十分な可溶化効率を得ることができる。
【0055】
また、上記実施形態では排水が流れるラインL1を介して可溶化液を最初沈殿池2へ返送することとしたが、ラインL1を介さずに直接最初沈殿池2へ返送してもよいし、最初沈殿池2の前段に調整槽等が設けられる場合には当該調整槽又はラインL1の調整槽より上流側へ返送してもよい。また、上記実施形態では固液分離手段として最初沈殿池2及び最終沈殿池7を備えることとしたが、沈殿池に限定されるものではなく、例えば膜分離装置を備えることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る排水処理装置を示すブロック図である。
【図2】図1中の最初沈殿池、可溶化槽、可溶化液返送ライン、及びその周辺を具体的に示す概略構成図である。
【図3】図2中の可溶化槽、噴射ノズル、及び可溶化槽内の撹拌流を示す平面図である。
【図4】汚泥堆積防止装置の他の例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る排水処理装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1,10…排水処理装置、2…最初沈殿池(固液分離手段、第1固液分離手段)、3…酸生成槽(生物処理槽)、4…上向流式嫌気性処理槽(生物処理槽)、5…可溶化槽、6…好気性処理槽(生物処理槽)、7…最終沈殿池(第2固液分離手段)、15…可溶化槽撹拌ポンプ(ポンプ)、17,27…噴射ノズル(可溶化液供給手段)、25,30…汚泥堆積防止装置(汚泥堆積防止手段)、L3…可溶化液返送ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を導入して前記排水中の固形分を分離する固液分離手段と、
前記固液分離手段で固液分離された汚泥を導入して可溶化する可溶化槽と、
前記可溶化槽で可溶化された可溶化液を前記固液分離手段又は前記固液分離手段より前段へ返送するための可溶化液返送ラインと、
前記可溶化槽の底部に汚泥が堆積することを防止する汚泥堆積防止手段と、
を備えることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
排水を導入して前記排水中の固形分を分離する第1固液分離手段と、
前記第1固液分離手段で固液分離された分離液を導入して生物処理する生物処理槽と、
前記生物処理槽で生物処理された処理水を導入して前記処理水中の固形分を分離する第2固液分離手段と、
前記第2固液分離手段で固液分離された汚泥を導入して可溶化する可溶化槽と、
前記可溶化槽で可溶化された可溶化液を前記第1固液分離手段又は前記第1固液分離手段より前段へ返送するための可溶化液返送ラインと、
前記可溶化槽の底部に汚泥が堆積することを防止する汚泥堆積防止手段と、
を備えることを特徴とする排水処理装置。
【請求項3】
前記汚泥堆積防止手段は、前記可溶化液の一部を前記可溶化槽の底部に向けて供給することを特徴とする請求項1又は2記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記汚泥堆積防止手段は、
前記可溶化槽の外部に設置され、前記可溶化液返送ラインを流れる前記可溶化液の一部を吸引するポンプと、
前記ポンプからの可溶化液を前記可溶化槽の底部に向けて供給する可溶化液供給手段と、
を備えることを特徴とする請求項3記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記可溶化液供給手段は、上下方向に複数設けられることを特徴とする請求項4記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記可溶化液供給手段のうちの上側の可溶化液供給手段は、前記ポンプからの可溶化液を前記可溶化槽の液面に向けて供給することを特徴とする請求項5記載の排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−69397(P2010−69397A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238453(P2008−238453)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【Fターム(参考)】